死刑廃止論

日本模擬国連神戸研究会
平成 24 年 9 月 22 日(土)
第 3 回後期勉強会
死刑廃止論
文責・プレゼンテーター:川上 真弥
プレゼンの目的
・死刑廃止を巡る現状を知る。
・なぜ死刑廃止論が提唱されたのかを理解する。
目次
1:死刑廃止の現状
2:死刑廃止論の歴史
3:死刑廃止の主張
4:死刑廃止を取り決める条約
1.死刑制度を巡る現状
現在、アムネスティ・インターナショナルによると・・・
198 カ国中(1: 140
)カ国が死刑を実施していない。
また、アムネスティは、死刑廃止国を三パターンに分類している。
1.完全廃止・・・文字通り完全廃止。例外なし。97 カ国が該当。
2.通常廃止・・・原則廃止だが、軍法などの一部例外あり。8 カ国が該当。
3.事実上廃止・・・
(2: 10
)年以上死刑執行がない。35 カ国が該当。
・地理的な特色
1.ヨーロッパはほとんどが完全廃止
理由:
(3: EU
)の加盟要件に死刑廃止がある。
2.アフリカの南部は法律上廃止、北西部は事実上廃止が多い。
理由:宗教の問題。
3.南米のほとんどは通常廃止。
理由:軍事独裁政権の崩壊に伴う民主化政策の一環。
まとめ
世界 198 カ国のうち大多数が死刑を廃止しており、また法律の文言を削除していなくと
も、事実上死刑を行っていない国も考慮すると、死刑廃止国は全体の 71 パーセントもの
割合を占める。
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2.死刑廃止論の歴史
・いつから死刑廃止論が唱えられ始めたのか?
18 世紀までは世界中で死刑は行われていた。特に、
(4: 政治犯
)は特に残虐な方
法で死刑とされていた。
しかし、18 世紀初頭、イタリアの法学者ベッカーリアが死刑廃止論を提唱。
死刑より終身奴隷労働のほうが有意義。そのほうが犯罪抑止になる。
By ベッカーリア
ベッカーリアの主張
ベッカリーアの主張…社会契約論によると死刑は正当なものではなく、社会契約の本来の
趣旨に反する。抑止力の点でも、奴隷労働のほうが効果ある。
この考えはフランス革命以降ヨーロッパに普及。
まとめ
死刑廃止運動が高まったのは 18 世紀からであり、それ以前は当たり前のように死刑は行
われていた。
3.死刑廃止論の根拠
では、次に死刑廃止論の根拠として以下の四つがあげられる。
1.目的刑論
①応報刑論・・・罪に対して罰を与えるという考え。現在では少数派。
②目的刑論・・・刑罰によって犯罪は抑止され、かつ犯罪者の更正教育となるという考え。
多数派。
現在では②の考えが主流。ところが・・・・
「死刑は更正を目的としていない。」
まとめ
更正を目的とする刑罰の中でも更正が不可能な死刑は、異質である。
よって廃止すべき。
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2.生命権
生命権は民主主義国家において最大限に尊重されるべき権利。
→日本国憲法でも(5: 基本的人権
)は永久不可侵の権利と明記。
これは「犯罪者」も同じ。
※生命権は基本的人権に含まれる。
「人の人権を奪う≠人権が剥奪されて当然」
しかし死刑制度は生命権を侵害。
つまり、永久不可侵な権利が侵害されるという矛盾が発生!
まとめ
生命権は永久不可侵の権利であり、犯罪者も同様。しかし、死刑制度はその権利を侵害す
るので矛盾発生。よって死刑制度は廃止すべき。
3.冤罪
人間が不完全である以上、冤罪は不可避。
しかし、もし冤罪でもその分の賠償はしてもらえる。
「しかし、死刑になれば賠償することはできない。」
実際にイギリスでは、エヴァンズ事件(後期 BG 70 ページ参照)により死刑廃止運動が
高まり、その後廃止。
まとめ
死刑はほかの刑罰と違い、取り返しがつかない。その一方で冤罪や誤判は起こりうるもの
だし、実際に冤罪による死刑が起こっている以上、死刑は廃止すべき。
4.社会契約論
ここではベッカーリアの主張を解説する。
社会契約論とは・・・個人の利益(財産、身体)を保障するために、社会・国家に自己の
権利を一部譲渡し、契約を結ぶという考え。
.
-権利を一部譲渡→
国家
←身体・財産を保護-
社会
個人
ベッカーリアの主張
人間は本能ゆえに自己の生命権までも契約という形で譲渡したりしない。
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つまり、国民の生命権まで国家は保持しないので、国家が生命権を扱うのはおかしい!
「国家が死刑という刑罰を定めることは不適当。」
まとめ
社会契約では生命権まで契約の材料とはなりえない。つまり、国家は生命権を扱えないの
で、死刑制度も扱うべきではない。
5.その他の議論
抑止力について・・・数的根拠が不明確。存在するかどうかは現在も議論が分かれる。
4.死刑廃止を取り決める条約
代表的なものを列記すると・・・
・市民的及び政治的権利に関する国連人権規約(1976 年発効)
・欧州人権条約第六議定書(1985 年発効)
・児童の権利条約(1990 年発効)
・国際人権規約死刑廃止議定書(1991 年発効)=第 2 選択議定書
・米州人権条約死刑廃止議定書(1993 年発効)
・独立国家共同体人権条約(1995 年締結)
・国際人権規約の製作過程
1948 年、世界人権宣言が採択
ところが、世界人権宣言には法的拘束力がなかった。
↓そこで・・・
条約の形(国連人権規約)にして拘束力を付与。
社会権規約(A 規約)
、自由権規約(B 規約)を 1966 年採択、1979 年批准
規約について
社会権規約・・・労働・社会保障・教育などの経済的・文化的権利を保障。
自由権規約・・・身体・思想の自由、差別禁止など市民的・政治的権利を保障。
このうち、B 規約第六条に関連する選択議定書の起草が 1980 年の国連総会で決定。
→第 2 選択議定書が 1991 年に発効。
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批准国
自由権規約:署名国数 72 か国 締約国数 165 か国
第 2 選択議定書:署名国数 35 か国 締約国 75 カ国(死刑廃止を規定)
・B 規約第 6 条について
自由権規約第 6 条
1 すべての人間は、生命に対する固有の権利を有する。この権利は、法律によって保護
される。何人も、恣意的にその生命を奪われない。
2 死刑を廃止していない国においては、死刑は、犯罪が行われた時に効力を有しており、
かつ、この規約の規定及び集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約の規定に抵触しない
法律により、最も重大な犯罪についてのみ科することができる。この刑罰は、権限のある
裁判所が言い渡した確定判決によってのみ執行することができる。
5 死刑は、十八歳未満の者が行った犯罪について科してはならず、また、妊娠中の女子
に対して執行してはならない。→先週の保護規定につながる。
まとめ
1991 年の国際人権規約は 165 カ国が締約しており、死刑廃止は国際的潮流。
参考文献
・ジャン=マリ=カルバス著 『死刑制度の歴史』 白水社 2006 年
・団藤重光 『死刑廃止論』 有斐閣 2000 年
・三原憲三 『死刑存廃論の系譜』 成文堂 2003 年
http://homepage2.nifty.com/shihai/shiryou/death_penalty/ratification.html
・松岡孝編 神戸研究会 2012 年後期会議 BG
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