はじめに 携帯電話、PHS, SS 無線 LAN などで使用されている 1GHz を越える電波は、400MHz 帯の電波に比 べて直進性が強く、また回析効果がすくないなどの性質があります。このため、障害物が多く見通しの効 かない地形や建築物内では使用できないことが多々あり、このようなときは 400MHz 帯の周波数が有効な 場合があります。また見通しで室内 100m、屋外 300m 以上の到達距離が必要な場合、微弱無線機では 困難で、より出力の大きい特定小電力無線機が必要です。 この 400MHz 帯特定小電力無線局で、社団法人電波産業会(ARIB)によるテレメータとテレコントロール 用の標準規格STD−16 に準拠した連続通信用無線モジュールを設計製作したので紹介します。また標準 規格STD−16 について、この無線モジュールの製作に必要な部分を抜き出して説明します。 標準規格STD−1 6 3 . 0 版の概要 STD-16 は、400MHz 帯の特定小電力 7 無線局無線設備の中でも、テレメータおよびテレコントロール 用について規定したものです。なお、「テレメータ」とは電波を利用して遠隔地点の測定結果を表示/記 録するもの、「テレコントロール」とは遠隔地の装備を制御する、いわゆるリモコンのことです。 l 適用範囲 線局は図 1 に示す無線設備と付属装置(電気通信回線設備を通して接続されるものを含む)から構成さ れます。 <図1>テレメータおよびテレコントロール用無線設備の構成 無線設備 付属装置 制御装置 ・混信防止機能 ・送信時間制限装置 ・キャリア・センス 送信装置 受信装置 適用範囲 l 一般条件 電波形式…F1D,F1F,F2D,F2Fなどがあります。本機はF1D(FSK)を採用しました。 通信方式…単向通信方式または単信方式による連続通信を使用します。 周波数…429.2500∼429.7375MHz で 12.5kHz 間隔の 40 波(チャンネル)です。 l 送信設備 空中線電力…10mW+20%/−50% の範囲 発振方式…水晶発振方式または、水晶発振制御による周波数シンセイザ方式 周波数の許容偏差…標準符号化試験信号を変調入力信号とし、平均値で測定±4ppm 以内 周波数偏移…±2.5kHz 以内(変調によって生ずる搬送波の偏移) 変調速度…4800bps,1200bps または 2400bps. 符号形式…NRZ. 隣接チャネル漏えい電力…標準符号化試験信号を変調入力とした搬送波の周波数から 12.5kHz 離 れた周波数の±4.5kHz 帯域内に輻射される電力が、搬送波電力より 40dB 以上低いこと。 占有周波数帯幅の許容値…標準符号化試験信号により変調した場合に 8.5kHz. スプリアス発射の強度の許容値…標準符号化試験信号により変調した場合において、平均電力で 測定して 2.5μW 以下。 l 受信装置 副次的に発する電波等の限度は、擬似空中線回路を使用した測定で 400pW 以下。 l 制御装置 混信防止機能 ① 主として同一の構内で使用される無線局の無線設備であって、識別符号を自動的に送信し、または 受信する機能です。 ② 利用者による周波数の切り替えまたは電波の発射の停止が容易に行うことができる機能です。 送信時間制御装置…429.25∼429.7375MHz の周波数を使用するものでは、送信時間制御装置は 不要です。 キャリア・センス…無線通信回線の設定に先立ち、ほかの無線局の電波を受信した場合、当該無線 局の発射する電波と同一の周波数の電波の発射を行わないこととされています。空き状態の判定は、 絶対利得が 2.14dB の空中線に誘起する電圧が 2μW 以下とし、応答時間は 20ms 以内です。 回線接続手順…相手局と回線を接続する手段として、以下の方式が規定されています。 ① 単信方式(固定/手動チャネル切り替え) ② 複信方式(固定/手動チャネル切り替え) ③ 複信方式(周波数制御チャネルによる自動チャネル切り替え) l 空中線 空中線とはアンテナのことです。 構造…給電線や接地装置をもちません。 利得…絶対利得 2.14dB 以下 空中線の使用区分…送信用および受信用の空中線は同一でなくてもかまいません。ただし受信用 とキャリア・センス用の空中線は同一であることが必要です。 l 筐体など 無線設備は一つの筐体に収められており、かつ、空中線端子を備えず、容易に開けることができないこ とと規定されています。 技術基準適合証明取得済みの無線モジュール l 無線モジュールの仕様 仕様を表 1 に示します。無線モジュールの基本性能、使い勝手の良さ、周辺回路、機器からのノイズ耐 力、耐震性など仕様で表現できないことが多いと思います。 一般的にこの種の製品の仕様に盛り込まれている項目は、性能を表現できる一握りの部分にすぎませ ん。ほとんどの特性が周辺回路の部品レイアウト、パターン・レイアウトやモジュールを組み込んだ製品の 設置場所などの影響を受けながら、ある性能レベルに落ち着く(設計者が観念する)といったほうが、正し いかもしれません。 それから、無線モジュールを安定動作させることは、厄介だと感じる設計者が多いと思います。 ここで紹介するモジュールは技術基準適合証明を取得済みであり、モジュール単体の性能を組み込み 後の状態で容易に実現できることを願って、設計開発したものです。 <表1>特定小電力無線通信モジュールの設計仕様値 (a) 送信装置 項 目 空中線電力 周波数の許容偏差 周波数偏移 スプリアス発射強度 占有周波数帯幅 隣接チャネル漏洩電力 FM変調SN比 送信立ち上がり チャネル切り替え 設計規格値 0.01W +5%、−20% ±2ppm以内 ±2.5kHZ以内 −60dBm以下 8.5kHz以下 40dB以上 30dB以上 30ms以内 25ms以内 技術基準 0.01W +20%、−50% ±4ppm以内 2.5μW以下 8.5kHz以下 40dB以上 - (b) 受信装置 項 目 設計規格値 技術基準 副次発射強度 −65dBm以下 4000pW以下 キャリア・センス・レベル +3dBμVEMF±3dB +6dBμVEMF以下 基準感度 −6dBμVEMF以下 受信通過帯域幅 8kHz以上 隣接チャネル選択度 45dB以上 スプリアス・レスポンス 50dB以上 相互変調特性 50dB以上 総合歪みおよび雑音 35dB以上 1%感度 0dBμVEMF以下 - l 備 考 511PN, 4800bps 511PN, 4800bps 511PN, 4800bps 511PN, 4800bps 511PN, 4800bps 511PN, 4800bps 511PN, 4800bps PLL設定後 Δf=100kHz 備 考 12dB SINAD 6dB帯域幅 2信号法 2信号法 3信号法 511PN, 4800bps モジュールの基本構成 無線モジュールで技術基準適合証明を取得すること、無線モジュールの取り扱いを簡単にし周辺回路 や機器からのノイズの影響を受けがたくすることの 2 点に留意し、何回かのデザイン・レビューの結果、図 2 に示すブロック図のような構成となりました。 <図2>特定小電力無線通信モジュールのブロック図 送信電力:最大10mW アンテナ 送信周波数:429.25∼429.7375MHz SAWフィルタ NS429C 1SS312 LPF アンテナ スイッチ RF アンプ FI L3 Tr 9 2SC4226 21.7MHz μPC8108 RSSI MCF 21C1KJ 21. 7MHz I C3 1st MI X I C1 BA4116FV 2nd I F 2nd OSC RSS.AF FIL4 2nd MI X VR4 出力調整 送信 アンプ 2SC4226 LPF VCO1 429MHz I C21 I C21 PLL周波数 シンセサイザ MB15U10 X3 水晶発振子 21.25MHz 変調レベ ル 設定(VR1) RSSI LPF FSK レベ ル 設定 I C7 LMV324 VCO2 VC-2R2A10 407MHz VC-2ROA10 I C7 LMV324 Tr 1 2SK1830 Tr 13 RN1309 LPF BUFF AF OUT DATA OUT DATA I N CH0∼5(設定入力) T/R(送信/受信) RDY(CLK) LD LE CAR (受信機電界信号) I C21 CPU μPD78P018FGK TK113XX I C6 AK93C45AF 識別符号 メモリ ( PLL,マイコン) 2. 7V ( RX)2. 2V ( TX AMP)2. 5V ( TX VCO)2. 0V DC I NPUT レギ ュレータ DC GND 周波数シンセサイザ回路コントロール、各回路電源コントロール、キャリア・センス機能などを制御する専 用マイコンをモジュールに取り込みました。 余談ですが、これが結構難物で、試作基板ではマイコンのクロックや制御信号用クロックなどの影響をR F回路が受け、良い性能が得られない部分がありました。原因は限られたスペースのなかで、プリント基板 のA面側をRF部、B面側をマイコン/ディジタル部とし、内層はグラウンド(GND),一部は信号線の構成 をとったことにありました。 ビアの関係でA面からのGNDビアが、B面側で制御信号用クロック用FETのソース端子と共通インピー ダンスをもっていたり、GNDビア(回路上ではどちらもGND)がA面からB面に接続される部分をすべて 確認し、レイアウトを数回変更しました。 RFとディジタル混在した両面実装基板の設計では十分な確認と、パターン設計者の協力、設計者の体 力、何よりも基板の試作費を惜しまない環境が不可欠なのかも知れません。 回路の解説 前ページに回路図を示します。 n 周波数の安定化 送信周波数および受信機局部発振周波数の基準発振器は、高精度ATカットの水晶振動子X3、PLL周 波数シンセサイザMB15U10(IC21 )の内部発振回路を使い、周波数の安定な信号を得ています。 経年変化を考慮して十分なエージングを実施し、初年 1∼2ppm 以内を実現しました。また、可変容量ダ イオードやトリマ・コンデンサなどの回路素子の温度特性を考慮した上で、水晶振動子の特性変曲点付 近の温度での周波数偏差に範囲を設け、基準値内のものを使用することにより、−10∼+60℃で±4ppm 以内の周波数偏差を実現しています。 n スプリアス輻射抑圧 VCO1 の出力をそのまま送信周波数とする方式をとったので、スプリアス成分は基本波の高次のスプリ アスに限られます。アンテナと送信回路の間にバターワース特性のLPFを挿入して、2f 点で 40∼45dB の 減衰値を実現しています。同調型増幅器とLPFで総合減衰値 70dBc を確保しています。 また、回路はI−ETS300 220(欧州 400MHz 帯規格)取得の目的があり(意外に簡単な)アンテナ端で の抑圧ではなく、放射レベルが一定値以内であることが求められます。これは回路図では表現されにくい のですが、次の3点に配慮することが大切です。 ① 基本的に増幅部トランジスタ(Tr5 とTr6)の動作点の最適化を図り、それによりSパラメータを導き、S パラメータ解析によって整合すること。 ② 次に増幅部トランジスタ、エミッタ接地部と負荷回路側パスコン(C36 とC39)接地部を最小ループで接 続すること。 ③ 最後にLPFフィルタを含めた回路部品のグラウンドから(高周波電流が大きい部分)、筐体(シール ド・ケース)へ、高周波電流が流れ出さないよう注意し測定、微調すること。 n 変調制限 外部付属装置から入力されるディジタル信号の振幅制限のためにTr3 が設けてあります。Tr3 の後、占 有周波数帯幅が必要以上に広がらないように、Tr1 によるベッセル特性のLPFを挿入して、高い周波数 成分を抑圧しています。カットオフ周波数をおおよそ 3200Hz に設定し、標準符号化信号(4800dps)で規 格値内に入るよう微調整します。 一般的にスペアナ法による測定が行われるので、規格値よ5dB 程度の余裕があることが望まれます.規 格値の余裕はFSK変調による 4800dbs での無線伝送のほぼ限界点にあり、規格と伝送速度の間で程よ く動作するよう、検証してあります。また、振幅制限器(VR1)により、変調周波数変移を±2.5kHz 以下に 抑えています。 n 送信電力制限 送信出力は微調整用VR4 によって送信増幅部Tr 5 のコレクタ電圧を調整して設定します。増幅部の電 源には定電圧回路TK11325BM(IC4)で安定化された 2.5Vの電源を使用し送信電力の安定化を図って います。 増幅部トランジスタ(Tr5 とTr6)は電流帰還型バイアスで動作させます。これによりトランジスタの電流が 増加した場合、コレクタ電圧が低下し、同時にベース電圧も低下するため、トランジスタのベース、エミッタ 間電圧が下がり、電流増加を防ぎます。 n 受信装置の副次的に発する電波などの抑圧 受信機の局部発振信号の逆流によるスプリアス成分が、アンテナ回路から輻射されないようにするため アンテナ回路と受信ミキサ部間に、SAWフィルタ(FIL3)を挿入して減衰させ、不要輻射を抑圧していま す。 SAWフィルタ単体の減衰値は、通過帯域の中心周波数から 21.7MHz 離れた点で 60dB 以上確保され ますが、SAWフィルタの配置や、ほかの回路部品および、筐体(シールド・ケース)への電気的干渉に十 分考慮してパターンを設計する必要があります。 製作した回路は、副次発射強度測定値で−75dBm 以下の実力があります。 n 受信感度と総合雑音指数(2 ) 「受信感度の良い」受信機を設計する上で重要項目です。これをより効果的に実現するために、雑音指 数(NF)について降れます。 回路図上でアンテナ入力部から、ダイオードD1 までの入力フィルタ部の挿入損失をL1、増幅器(Tr) 9 の 雑音指数をF1、利得をG1、SAWフィルタの挿入損失をL2、ミキサ(IC3)の雑音指数をNF2,変換利得をG 2、水晶フィルタ(FIL4)の挿入損失をL3 とします。この系の総合雑音指数(Fo)は次式で与えられます。 FO=F1 /L1 + (F2 -1/L1 G1 L2 ) + (1/L1 G1 L2 G2 L3 )……………(1) 表2の値を代入すると、 FO=1.41/0.50 + 3.98-1/0.50x19.95x0.50 +1/0.50x19.95x0.50x31.62x0.50 ≒ 3.43 となります。デシベルに換算するとFo≒5.4dB です。第3項以降は分母値がおおきくなりますから、加算さ れる値はわずかなので、水晶フィルタ以降の数値は無視してかまいません。なお、熱雑音などの有能雑 音電力については省略しました。 次に 12dB SINADの受信感度―118dBm を実現するための総合雑音指数を求めてみます。通過帯域 幅B=16kHz、周波数偏移Δf=5kHz、最大信号周波数 fs=3kHz とします。 FM受信機の復調出力のSN比は、受信入力信号の強さに応じて、次のような三つの領域に分けられま す。 領域Ⅰ…入力信号が微弱で、雑音の振幅が信号の振幅を上まわっており、雑音による変調が支配的な ので、復調出力が生じる領域。 領域Ⅱ…信号レベルが雑音レベルより大きくなり、雑音による変調が信号レベルの増加にとともに減少 する領域。 領域Ⅲ…復調器以降において発生する雑音が支配的になり、信号レベルの大小によらず一定となる領 域。 このうち領域Ⅰと領域Ⅱの境界点をFM受信機のスレッショルドと呼びます。このときのSN比をαSN(th) と表すと、次式で求めることができます。 αSN(th)[dB]=10log3 10log(PC/PN) + + 20log(Δf/fs) + 10log(B/2fs)……………………………(2) ただし、fs:最大信号周波数[ ],PC:信号力[W],PN:雑音電力[W] スレッショルド点では、信号と雑音の値が等しくなっています。受信機雑音が白色雑音であれば、この点 では、PC=8PNの関係が知られていますから, PC/PN=8…………………………………………………………………………(3) です。これらの数値を式(2)に代入すると、 αSN(th)≒ 4.8 + 4.4 + 9.0 + 4.3 = 22.5dB となります。 なお、スレッショルド点以下の受信信号レベルは傾きが 1:3と仮定し、受信信号レベルが 1dB 上がるとS N比は 3dB 改善するものとします。 目標とする 12dB SINAD時の受信信号レベルは−118dBm です。このときのSN比をαtとすれば、 αSN(th) − αt=(22.5-12)/3=3.5dB です。したがってαSN(th)での受信信号電力PC(th)は PC(th)=−118 + 3.5 = −114.5dBm です。 入力での有能雑音電力Niは次式で表されます。 Ni=KTB………………………………………………………………………………(4) K : ボルツマン定数(1.380622 x T : 絶対温度[K], B : 10-23 [J/K], 通過帯域幅[Hz] 通過帯域幅がB,雑音指数がFの受信機の雑音電力の入力換算値PNは、 PN=KTBF……………………………………………………………………………(5) です。したがって、式(3)からスレッショルド点における受信信号電力PC(th)は次式で表されます。 PC(th)=8KTBF………………………………………………………………………(6) これから、 F=PC(th)/8KTB=−114.5[dBm]/8KTB ≒3.548x10-15 /8x1.380622x10-23 x300x16000≒8.3dB から、F=8.3dB となり、受信感度−118dBm を実現するためには、FO=8.3dB 以下にする必要がある ことがわかります。 前の計算結果から受信部の総合雑音指数FO=5.4dB なので、−118dBm の受信感度を得るための 条件は整っていることになります。 <表 2>受信部にNFに関与する諸特性の値 項 目 値 RFフィルタの挿入損失 L1 =−3dB 増幅器のNF F1 =1.5dB 増幅器の利得 G1 =13dB SAWフィルタの挿入損失 L2 =−3dB ミキサのNF F2 =6dB ミキサの変換利得 G2 =15dB 水晶フィルタ挿入損失 L3 =−3dB n 選択度 l イメージ周波数に対する選択度 真 値 0.50 1.41 19.95 0.50 3.98 31.62 0.50 スーパーヘテロダイン方式はミキサを使うので,イメージ周波数と呼ばれる周波数の信号も中間周波数 帯に入ってきます。本モジュールの代表的なイメージ周波数は以下のようになります。 fi1 =fr−(21.7X2)[MHz] fi2=fr−(0.45X2)[MHz] ただし、fi1 :1stミキサ・イメージ、fi2 :2nd ミキサ・イメージ、fr:受信周波数 1stミキサ・イメージはSAWフィルタ(FIL3)の特性に依存し、その特性改善により良い結果が得られます。 2ndミキサ・イメージはセラミック・フィルタ(FIL)の特性改善により効果があります。いずれも設計値で 2 50dB 以上が好ましい値といえます。 l 相互変調に対する抑圧 目的の周波数の信号以外に二つ以上の異なる周波数の入力信号を増幅回路に入力すると、増幅回路 の非直線性によって信号が歪んで、目的信号に妨害を与える現象です。とくに奇数次の相互変調が問 題となります。 受信通過帯域内では、有効な改善手段は少なく、また低電圧動作のトランジスタ回路では不利です。 相互変調性能を良くするには、インターセプト・ポイントが高い値になるように設計することが重要です。 n 送信系のループ特性とループ・フィルタ、変調特性 ループ・フィルタの構成は、ラグ・リード特性のフィルタ(R9 、R10 、C84 )としました。 基本的な特性パラメータとして、固有周波数wn,減衰定数ζ、VCO感度Kv,位相比較器ゲインKpを 求めておく必要があります。次に、発振周波数、周波数ステップ、ロック誤差周波数を決定し、あとはひた すら計算と実験を繰り返すだけです。通常、ロックアップ・タイムを中心に定数を求めますが,キャリアのC N比、変調特性などを総合的に検証した結果、おおよそ、カットオフ周波数fc=60∼80Hz、ζ≦0.7∼1、 Kv≦3MHz/V以内としました。 そしてループ特性に影響を与えない範囲(カットオフ周波数の 10 倍程度)でのフィルタ回路(R10,C88, C89)を挿入し、ロックアップ・タイム30ms 程度、CN比は約−99 c/Hz (側波帯雑音オフセット周波数 8kHz)となります。 変調特性は前述したようにfc=60Hz なので、固有周波数は高めの設定です。したがって、それ以下D Cまでの変調信号はループ特性によって抑えこまれてしまいます。511PN(9段のシフトレジスタによる 511 ビット長の疑似雑音)でFSK変調できる程度にループ特性と変調特性を回路的に工夫する必要がありま す。
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