海外修学旅行の 効果を考える - 公益財団法人国際文化フォーラム

ISSN 0919-7265
68
2005年
10月発行
no.
特集
海外修学旅行の
効果を考える
中国・韓国修学旅行の実践例から
高校生が修学旅行で海外に行くことは、もはや特別なことでは
現地の人たちとコミュニケーションするには、ことばや文化を理
なくなってきました。海外修学旅行を実施している学校はいずれも
解することが鍵となります。今号では、長年にわたって中国と韓国
国際理解・国際交流の促進、外国語教育の充実を図ることをその
への修学旅行を実施している学校を取り上げ、中国語、韓国朝
目的としています。国際理解を深めるためには、同世代の高校生
鮮語を担当している先生方に、外国語の授業と修学旅行をどの
をはじめ訪問先の人々と交流することが望ましいとの考えから、修
ように結びつけているか、また事前事後の学習の中で、どういう
学旅行に現地校との交流を組み込む学校も増えてきています。
実践を行っているかを語ってもらいました。
特集
TJFニュース p.12
p.1
海外修学旅行の効果を考える
高校中国語担当教員の研修を中国と大阪で開催しました
中国・韓国修学旅行の実践例から
第2回全中国小学校日本語教師研修会を開催しました
英語の授業で
「中国効果」
修学旅行は授業のクライマックス
中国語を学んで中国へ
「であいフォトエッセイカフェ」
韓国朝鮮語教師のための研修会を開催しました
「第9回高校生のフォトメッセージコンテスト」作品募集を開始しました
手づくり感覚の修学旅行を
実施事業一覧(2005年7月・8月・9月)
シリーズ
お知らせ p.16
p.10
見る聞く考えるやってみる授業@9
キャンパスライフ・プロジェクト
「中学生が大学生になった」――未来の自分に会いにいく
ことばではないもので、
「がんばれ」
と伝えたかった。
国際文化フォーラム通信 no. 68 2005年10月
英語の授業で
「中国効果」
さいたま市立浦和高等学校
教諭
西岡民子[英語・中国語担当]
鄭州の代表生徒との交流会で記念撮影。
実際には次のような手順で授業を進めていきます。
教材『Good Morning China』の内容
修学旅行プロフィール
Lesson 1, Lesson 2 (手紙の書き方)
■海外修学旅行の開始時期:1987年
■行き先:中国
サンプルの文章や関連単語を提示し、自分の趣味、家族、学校生活のこと
■時期:2年生の11月か12月
を中心とした自己紹介の手紙の書き方を指導する。生徒の下書きを英語教
師がチェックしたうえで、生徒が清書する。個人写真を同封した手紙を、夏
■形態:学年全員が参加
休みに下見で鄭州を訪れる教師が持参し、鄭州市側に渡す。
■特色:姉妹都市の高校生と事前に英語で文通
Lesson 3, Lesson 4 (交流場面の会話)
交流相手に最初に出会ったときや、お土産の交換時によく使う表現などを
提示し、ロールプレイで会話の練習をする。
[公立高校初の中国修学旅行]
市立浦和高校で中国への修学旅行の話がでたのは1985年
(当時)
初めのことでした。翌86年は、浦和市
と河南省鄭州市と
Lesson 5 (自分たちの文化紹介と別れのあいさつ)
日本の文化や年中行事に関するキーワードを例示して、英語で説明できる
よう練習する。
の姉妹都市提携5周年に当たっており、中国の修学旅行を市
日本の文化:朝食
(和食と洋食)
、風呂、靴脱ぎ、布団とベッド
立高校としての特色づくりの一つとして進めることになりました。
年中行事:正月、節分、七夕、月見、七五三
当時、修学旅行に関する県の基準には、期間は4泊5日以内、
最後に、別れるときの表現を学ぶ。
費用は6万円以内、行き先は本州・四国に限る、航空機使用
は不可という規定があり、まずこれを乗り越えなければなりま
教材には、中国の有名人や祝祭日のことを紹介する「ここが
せんでした。まずは、4泊5日、費用は県の基準の約2倍程度、
ポイント」
というコラムや簡単な中国語会話も掲載し、生徒が楽
行き先は上海、無錫、南京方面に限定、鄭州から高校生の代
しく学べるように工夫しました。
表を滞在先に招く、中国の高校生との交流を主眼にするとい
とはいえ、英語で自己紹介の手紙を書かせても、2、3行し
う条件で、県をはじめ関係方面に働きかけました。その結果、
か書いてこない生徒もいます。そんな生徒たちの目が輝くのは、
1987年3月に全国の公立高校のトップをきって中国への修学
中国の高校生から返事が届いたときです。手紙には写真も同
旅行が実現しました。
封されており、自分の交流相手が見えると、一気にテンション
その後、行き先が北京に変更となり、北京で鄭州の代表生
が高まり、返事を書くのにも力が入ります。そして、修学旅行か
徒を迎えたり、こちらが鄭州まで訪問して交流したりと、行程を
ら帰ってくると、交流場面で思ったように英語を話せなかった
変更したことはありますが、中国への修学旅行は今年で16回
もどかしさ、中国の高校生たちの英語力を見せつけられたこ
を迎えることになります。
と、中国の生徒たちが明確な未来像を持っていること、何事に
も一生懸命取り組んでいるという姿勢に刺激を受け、多くの生
[英語の授業で文通を]
徒が
「自分たちももっと英語を勉強しなければ」
という気持ちに
中国側と交流の持ち方などについていろいろ話し合いを行
なります。実際、修学旅行実施の翌年から生徒たちの英語の
った結果、生徒同士の交流は英語がよいだろうということにな
成績がぐんぐん上がってきました。このことを、教師の間で
「中
りました。校内の交流係で内容を検討し、事前に交流相手の
国効果」と言っています。
生徒と英語で手紙を交換することが決まりました。
英語の授業では、交流校の生徒への手紙の書き方を指導
するとともに、中国文化の基礎知識を教えています。そのため
に、AETや国語の教師とともに『 Good
Morning China』
(B5判、48頁、5課構成)
というオリジナルの教材を作成しました。
2
[早くから始める中国の具体的なイメージづくり]
生徒たちの反応は、最初から良かったわけではありません。
「どうして中国なの?」という質問が必ず出ます。そこで、少し
でも早く中国や中国修学旅行の具体的イメージをつくってもら
国際文化フォーラム通信 no. 68 2005年10月
西岡民子(にしおか・たみこ)
英語の授業で中国の生徒との
文通を指導するほか、中国か
らの文書の翻訳や代表団受け
入れ時の通訳など、中国修学
旅行関連の仕事に多く関わっ
ている。
『中国修学旅行記録集』。感想文や広報誌『我愛
』
、壁新聞なども記録されている。
うため、以下のような事前研修を実施してきました。
事前研修の内容
旅のしおり。挿し絵は生徒の作品。
ありました。そのたびに、異文化に触れるだけでなく、同世代の
生徒との交流を通して、文化、伝統、生活習慣などの違いを理
1年次の目標➢文化が異なる人たちと接触する機会があまり多くない生徒た
解し、さらにその異なる文化を受け入れ尊重しようとする寛容さ
ちに、異文化との出会いの場を提供し、多文化共生について考えてもらう。
を身につけるという、中国修学旅行の意義が再確認され、今に
■2学期: 1泊2日の集団宿泊研修で長野県へ行き、ファームステイを体験
至っています。今年の4月に北京と上海などで起こった反日デモ
する。冬休みには地理の宿題として、中国関係の新聞記事を切
り抜き、コメントをつける。
■3学期: 埼玉大学の協力を得て留学生
(あえて中国人以外の人)
を招き、
が原因で、中国修学旅行を中止した学校もあるようですが、今
のところ私たちの学校では中止という話は出ていません。
クラスごとに交流する。
2年次の目標➢中国に対するイメージを少しずつつくっていく。
■1学期: 総合学習の時間を利用して、横浜中華街の歴史と華僑の人々
の暮らしを学ぶ。
5月の最終週に横浜に遠足に行き、中華街などを訪れ、日本の
中での中国文化に触れる。その後、事後レポート集を作成する。
■夏休み:中国関連の本を読んでA4判1枚のレポートを書く。クラスごとにレ
[ことばの学習は修学旅行前に]
市立浦和高校では中国語の授業が開設されていますが、進
学に関係ある科目との時間調整がつかないため、現状では、
3年文系クラスの選択授業になっています。中国の高校生から
ポート集を作成し、読み合わせて情報を交換する。
の返事がくる頃が次年度の選択科目を決める時期と重なること
■2学期: 日本史Aで数時間かけて日中間の歴史問題について学ぶ。教
もあり、文系クラスの約半数が中国語を選択しています。事後
材として『日本は中国になにをしたの』
(映画「侵略」上映全国連
絡会)を利用する。
研修という意味では、生徒たちの学習意欲は高いのですが、
埼玉大学の協力を得て中国人留学生を招き、クラスごとに交流
私個人としては、修学旅行前の1年生と2年生で中国語が選択
し、旅行のアドバイスを受ける。
できるようになればと思っています。
事前研修は教員主導のものばかりではありません。修学旅
[中国理解の輪を広げる]
行委員の生徒たちが、旅行や訪問地に関するB4判の広報誌
修学旅行で私たちのお世話をしてくれた現地の通訳ガイド
(本頁上参照)を発行します。多い年は7月から出発までの約3ヵ
が、別れ際、北京空港へ向かうバスの中でこう言いました。
「今
月間に40号近く発行されることもあります。修学旅行直前には、
回、皆さんは中国へ来て、自分自身の目で生の中国を見まし
放送部が作製した前年度修学旅行のビデオを上映しますが、
たね。中国の生徒との交流会もとても感動的でした。皆さん
これも具体的なイメージづくりに大きく貢献しています。
は日本へ帰ると、家族やたくさんのお友だちがいます。皆さん
が中国で体験したことをぜひその人たちに語ってください。中
[修学旅行の意義を再確認しながら]
国を理解してくれる人の輪をもっともっと広げてくださいね!」
。
20年近く続いてきた中国修学旅行ですが、これまでに何度か
思わず拍手が起こりました。中国修学旅行の意義はここに尽
中止に追い込まれる事態もありました。上海で修学旅行生が乗
きると思います。お互いが理解し合い、尊重し合って平和な未
った列車が事故を起こし多数の死傷者が出たときには、PTAか
来を築く次の世代を育てる。大変だけれどやりがいのある仕
ら心配の声が上がりましたが、学校側が安全には万全を期す
事ではありませんか。
ということで了解を得て実施しました。天安門事件が発生した
1989年、9.11同時多発テロが起こった2001年、SARSが発生
した03年は中止しましたが、いずれもその後再開しています。
教職員の間では、3年ごとに修学旅行について総括していま
す。これまでにも費用が高いわりに、準備が大変だといった理
由から国内修学旅行にしてはどうかという意見が出されたことも
中国修学旅行日程例[2004年度実施]
11月29日(月) 成田空港→北京空港→雑技鑑賞
11月30日(火) クラス別行動→天安門広場→鄭州市交流団と交流会
12月1日(水) 鄭州市交流団とともに万里の長城と明の十三陵→ホテルで
12月2日(木)
12月3日(金)
交流夕食会
クラス別行動→昼食→故宮、王府井
頤和園→北京空港→成田空港
3
国際文化フォーラム通信 no. 68 2005年10月
修学旅行は授業の
クライマックス
大阪府立佐野工業高等学校
定時制の課程
教諭
左美和子・林章子
[韓国朝鮮語担当]
交流会のあいさつは韓国朝鮮語で。
英語が嫌いだからという理由で選ぶ生徒も少なくありません。
修学旅行プロフィール
■海外修学旅行の開始時期:1997年
■行き先:韓国
■時期:2年生
■形態:希望者が参加
■特色:姉妹校と相互訪問
そんな生徒たちが、同じスタートラインに立って学ぶことがで
き、自信を持ってもらえるのが、韓国朝鮮語の授業だと考えて
います。
習った韓国朝鮮語を修学旅行で実践するとすれば、会話
の学習が中心になると考える方が多いかもしれませんが、私
たちの学校では、1年生は、ハングルの読み書きを中心に勉強
します。話す・聞くは、授業でできてもその場だけで終わって
[韓国朝鮮語開講、そして交流校探しへ]
学校の職員会議で、英語一辺倒の外国語教育を見直し、隣
それに対して、ハングルという文字を覚えれば、自分の名前を
国のことばを多くの生徒が選択できる機会をつくるため、韓国
書けるようになったり、好きな人の名前を書けるようになったり、
朝鮮語の授業を開講することに決めたのは、1990年のことでし
応用がきくと同時に達成感も味わうことができます。
た。その後、生徒の中から「韓国に行きたい」という希望が出
たとえば、韓国朝鮮語を履修した生徒は、修学旅行に行っ
てきたことを受け、94年に大阪府教育委員会に韓国修学旅行
たとき、ハングルで書かれた交流相手の高校生の名前を読む
許可の要望を出しました。当時、大阪府は現地校と交流するこ
ことができます。このことだけで、相手の高校生が親近感を持
とを条件に、海外修学旅行を許可していたため、韓国朝鮮語
ってくれると同時に、みんなにはできないことが自分たちにはで
(当時)
の専任教員
の韓洋春先生が中心となり、姉妹校探しを始
きるんだという自信を持つことができます。
めました。
もう一つ、韓国朝鮮語の授業では、異文化を知るということに
相談にいった大阪韓国総合教育院の担当者が韓国忠清南
重点を置いています。私たちの学校には、在日コリアンの生徒
(テジョン)
道の大田
出身だったことから、大田市教育委員会の協
は少ないので、在日コリアンの私たちが教えることで、普段から
力を得られることとなりました。同教育委員会より同じ工業高校
生徒たちは直接
「在日」
と接するいい機会となっていますが、修
で、日本語教育を実施している大田工業高等学校(2002年に西大
学旅行ははさらに大きな効果があります。姿形はよく似ているけ
田工業高等学校より改称)
はどうだろうかと提案があり、96年に同校と
れど、話していることばは違うし、考え方や行動も、似ているよう
姉妹校提携を結ぶことになりました。
で違うということを、実際に見て感じられますから、1年にわたる
97年に大阪府の韓国修学旅行モデル実施が許可となり、第
1回の修学旅行で大田工業高校との交流会が実現しました。
異文化理解の授業の集大成になっていると思います。
生徒から「なんで韓国朝鮮語なんか勉強せなあかんねん」
2000年からは、同校の生徒も隔年で来日し、私たちの学校を
といわれることが少なからずありますが、韓国修学旅行は、彼ら
訪問するようになり、双方向の交流が続いています。
がその答えを見つける格好の機会なのです。
[旅行で韓国朝鮮語を学ぶ意味を見つける]
4
しまいがちです。また、なかなか声が出せない生徒もいます。
[一人でも多くの生徒に参加してもらうために]
本校定時制の課程は今年度から総合学科になりました。新
修学旅行に参加した生徒たちはみな「行ってよかった」と言
しいカリキュラムでは、1年生の外国語が必修科目で英語と韓
います。
「学校では笑った顔を見たことがないのに、修学旅行中
国朝鮮語のどちらかを選択します。2年生、3年生では外国語は
は、よく笑ってよくしゃべっていた」
という担任の先生の報告もよ
選択科目となっており、韓国朝鮮語もそれぞれ開講されていま
く聞きます。一生懸命もてなそうという交流相手の気持ちに応え
す。したがって、3年間継続して学習すれば、6単位履修するこ
ようとすれば、自然にそうなるのだと思います。日本にいると問題
とになります。
行動を起こす生徒も多いのですが、これまで修学旅行でトラブ
国際文化フォーラム通信 no. 68 2005年10月
左美和子(ちゅぁ・みふぁじゃ)
林章子(いむ・ちゃんじゃ)
学校での韓国朝鮮語教育に携
わるかたわら、大阪府立学校
在日外国人教育研究会や高等
学校韓国朝鮮語教育ネットワー
クの活動にも積極的に関わっ
ている。
大田工業高校でソフトボールの試合。スポーツ交流はすぐ溶け込める。 大田工業高校の生徒を迎えて。2時間しか滞在時間がないのが残念。
ルが起きたことは一度もありません。
続するためには、人的つながりが大事だという考えに基づき、
また修学旅行から帰ってくると、韓国朝鮮語の授業にのぞむ
専任の修学旅行委員を置いています。委員を引き受けてい
姿勢もずいぶん変わります。
「もっと勉強しておけばよかった」と
(左)
る私
は、毎年必ず引率者の一人として韓国を訪れるように
感じた生徒の中には、卒業してからも聴講生として韓国朝鮮語
しています。2001年に
「新しい歴史教科書」
問題で、保護者や
の授業を受ける例もあるくらいです。
一部教職員から交流を疑問視する声が出ているので、今年の
これだけ意味のある修学旅行ですが、おもに経済的な理由
交流を保留したいとの連絡が大田工業高校から入ったときに
から、参加する生徒は学年の半分くらいにとどまっています。行
は、当校ではその教科書を採択していないし、多くの教職員
きたいという気持ちがあっても、それが行動(修学旅行の費用を確保
がその教科書を採択することに反対しているということを手紙
する)につながらないという現実があるのです。新聞広告にある
で説明して、交流を希望し、先方も理解してくれ、継続できる
「韓国3泊4日29,800円」
に比べると高いと考えてしまったり、携帯
ことになりました。残念ながらその年に起こったアメリカの9.11
電話の通話料や自動車運転免許を取得する費用がかかるとい
同時多発テロのため、5回めの修学旅行は中止になりました
う理由で修学旅行に参加しない生徒もいます。
「観光旅行では
が、翌年1月には管理職と教員が訪韓し、交流を継続しまし
学校訪問や高校生との交流はできひんやろ」
と生徒たちには言
た。今年も竹島問題が起こりましたが、これまでの交流の実績
っているのですが、なかなか理解してもらえないのが悩みです。
があるので、そう簡単にこの関係が揺らぐようなことはないと
定時制の課程では、クラブ活動などの縦のつながりが薄い
信じています。
ため、先輩の話を聞いて修学旅行の参加を決めるというような
機会もあまりありません。仲のいい友だちが参加するかどうか
[一過性の交流としないための工夫が課題]
が、参加を決める大きな要因にもなります。
「みんなで修学旅行
今後の課題としては、修学旅行時や大田工業高校の生徒の
に行くぞ」
というリーダーシップを発揮する生徒がいる年は参加
来訪時だけにとどまっている交流を、事前から進める工夫がで
者も自然と多くなりますが、毎年そういう生徒がいるわけではあ
きないかということです。修学旅行の前にビデオレターの交換
りません。
などを行っているのですが、カメラの前に立つとなかなか普段
それでも、少しでも多くの生徒に参加してもらおうと、これまで
どおりに話しかけることができません。
3年生で実施していた修学旅行を、昨年度から2年生で実施す
せっかく修学旅行や交流会で感じた友情を、手紙やメール
ることにしました。2年生の時に参加しなかった生徒が、修学旅
をやりとりして持続できるようにしたいとも思っています。手紙を
行に行った生徒の話を聞いて参加したいと思うようになります。
書くことに慣れていなかったり、メールを打つ言語の問題もあり、
そういう生徒が1年遅れで参加できるようにするためです。また、
そう簡単にはいかないのが現実ですが、交流を深めることで、
修学旅行でせっかく高まった韓国朝鮮語学習に対するモティベ
韓国朝鮮語の授業をより活性化することができますし、生きた
ーションを維持させたいということも、2年次における実施に踏み
異文化理解にもつながると思っています。
切った大きな理由の一つでした。
韓国修学旅行日程例[2004年度実施]
[交流相手校との人的つながりが長続きする秘訣]
私たちの学校では、当初から50名弱の教職員が一丸とな
11月30日(火) 関西空港→金海空港[釜山]→慶州石窟庵・仏国寺見学→市
内レストランで夕食→慶州コンコードホテル泊
12月1日(水)
って、韓国修学旅行に取り組んできました。修学旅行の主眼
である交流を継続するために、さまざまな努力もしてきました。
訪問先の学校の下見とは別に、これまで何人もの教員が個人
旅行で大田工業高校を訪問しています。姉妹校との交流を継
ホテル→大田市内のレストランで昼食→学校交流《大田工業
高校》→ソウル→豊田ホテル泊
12月2日(木)
ホテル→班別自由行動《グループごとにボランティアガイドと
共にソウル市内見学》→午後:自由行動→豊田ホテル泊
12月3日(金)
ホテル→板門店→仁川空港→関西空港
費用の関係で、2005年度は日程を2泊3日に短縮。
5
国際文化フォーラム通信 no. 68 2005年10月
中国語を学んで
中国へ
大東文化大学第一高等学校
教諭
小寺研[中国語担当]
歓迎式典で胡弓を演奏する回民学校の生徒。
です。このように、q中国の同世代から多くを学ぶことができる
修学旅行プロフィール
■海外修学旅行の開始時期:1992年
■行き先:中国
こと、w日中間の友好と平和について考える機会となること、e
視点を変えて、隣国から日本を見ることができること、r歴史的
■時期:2年生の3月
に最も関係の深い国を自分の目で見ることができることが、中国
■形態:学年全員が参加
修学旅行の意義であると私は考えています。本校では、1年生
■特色:姉妹校と相互交流。全員が中国語を学んで修学旅行に参加
全員が必修科目として
「中国語」
を学びますので、もちろん学習
成果を試すまたとない機会にもなります。
[最も重要な学校行事]
[中国語で自己紹介ができることを目標に]
(東京)
大東文化大学第一高等学校
の中国修学旅行は、早い
大東文化大学第一高等学校では、各学年に中国語が設定
時期から検討されていましたが、1988年に上海郊外で起こっ
されています。1年生は必修科目の
「中国語」
が1単位、2年生は
た列車事故と翌89年の天安門事件で足踏みしたあと、92年度
総合的学習の時間の選択科目「ニイハオから始めよう」が2単
にようやくスタートしました。今では、中国の歴史や現状につい
位、3年生は選択科目の
「中国語」が2単位です。
て理解を深めるとともに、今日の日本の現状や文化を発信する
1年生全員が学ぶ「中国語」は、1クラスを二分割し、小人数
国際理解教育の場として、また、日中の高校生同士の友好関係
のクラスで授業を行います。中国語や中国の地理、日中間の歴
を構築する機会として、最も重要な学校行事の一つとして位置
史など中国に関する基礎知識、発音の基礎、声調を教えること
づけられています。
から始め、ピンインで表記された単語が読め、日常会話ができ
9.11同時多発テロが起こった2001年には実施をめぐって賛
るようになることが目標です。
否両論がありましたが、海外を見ておくことは、学校の一貫した
3学期の初めには、中国語で自己紹介ができるようになり、最
教育方針であるとして、翌年3月、予定どおり中国修学旅行を実
後の2ヵ月は、空港、ホテル、見学地、学校交流、買い物など修
施しました。これまで、SARSが発生した03年度に行き先をニ
学旅行の場面を想定して、意思表示ができるように会話練習を
ュージーランドに変更した以外は毎年、中国への修学旅行を
繰り返し行います。
行ってきました。
今年の4月に北京や上海で起きた反日行動を受け、保護者
私は、学んだことばを使う場面がなければ、外国語学習は自
己満足で終わってしまうと考えています。もちろん、最近では、
の中から中国修学旅行に対して不安の声が上がりましたが、そ
生徒が暮らす環境の中でも外国語を使う場面が増えてきまし
の後現地の安全性に問題がないことを確認したうえで、中国修
た。公共の表示にも中国語をはじめ、諸外国のことばが用いら
学旅行を実施する予定にしています。
れていますし、身の周りには Made in Chinaの製品があふ
れ、スポーツ、経済などを通じて人的交流も増え続けています。
[同世代に刺激され自分を見つめなおす]
中国にアレルギーを持ち、いやいやながら修学旅行に参加
それでも、学年全員が参加する修学旅行は、習ったことを実践
する格好の場であることに変わりありません。
した生徒たちも、中国の文物や人々に接して感動し、満足感を
抱いて帰国するものが大半です。
6
[修学旅行の事前学習は自分たちで]
生徒たちは、将来を見据えて現実に対応している中国の若い
2年生の「ニイハオから始めよう」は、学年の生徒400名強のう
人たちの姿に大いに刺激されます。中国では人口の増加を抑制
ち、例年20〜30名の生徒が選択しています。以前は、学年全体
するため、一人っ子政策がとられていますが、本校の生徒の中に
を対象に教員主導型の事前研修を数多く行ってきましたが、最
も一人っ子が多く、一人っ子の大変さに共感することも多いよう
近はその回数を減らしました。代わって、修学旅行に向けて生徒
国際文化フォーラム通信 no. 68 2005年10月
小寺研(こでら・けん)
1971 年の中国語講座開設以
来30年以上中国語教育に関わ
っているベテラン教師。中国修
学旅行、語学研修旅行等、中
国関連の行事を中心になって
進めている。
回民学校の生徒がグループごとに出迎え。
ことばが通じないときは筆談で。
たちが情報発信をするようになりました。その中心になっているの
スコミで大きく取り上げられることにより、ステレオタイプのイメー
が、2年生の総合選択科目で中国語を選択した生徒たちです。
ジがつくられるという弊害も出てきています。
修学旅行に向けて中国の地理や歴史を学び、文化祭などでそ
インターネット等で自由に情報が収集できるようになり、学習
の成果を展示、発表することも学習の目標の一つにしています。
環境が整ったようにもみえますが、一方では情報過多の状況
1年間を通じて、生徒たちは授業で以下のことに取り組みます。
を招いているようにみえます。
「ニイハオから始めよう」での取り組み
■中国関連記事の切り抜きファイル作成
今後は、文化・学術的なものを含めて総合的に中国を理解
する教材をどのように提示できるかが課題だと思っています。
中国およびアジアに関する新聞記事を切り抜き、スクラップブックを作る。
■中国関連情報の発信
2学期になると2週間に1回のペースで、中国に関する情報を模造紙に書い
て張り出す。10月の文化祭では、政治、経済、文化、芸術、食文化、遊びな
どの学習テーマに沿って研究した結果を発表する。
■生徒用しおりの作成
学年の修学旅行委員と協力しながら、修学旅行で訪れる見学地の歴史を
研究する。お勧め情報や買い物・お土産情報、中国語会話等を掲載したし
おりを作成し、印刷して学年全員に配布する。
希望者は8月中旬に、修学旅行で訪れる姉妹校での夏季語学研修
(5泊6日
程度)に参加し、姉妹校の様子などをフィードバックする。
[楽しみは姉妹校との交流]
中国修学旅行を最も重要な学校行事として位置づけてきた
結果、本校に子弟を入学させる理由として、中国修学旅行があ
ることを挙げる保護者が少しずつ多くなってきました。また、ほと
んどの生徒が部活に参加しているため、先輩から修学旅行の
話を聞き、それが期待感を高めることにつながっているようです。
修学旅行の中でも生徒たちが特に楽しみにしているのが、姉
1
妹校である回民学校★注(北京市宣武区)
の生徒との交流です。ス
(綾球★注2、バレーボール、卓球、陸上)
ポーツ交流
、文化交流(折り紙、切り
絵、書道)のグループごとに、半日を共に過ごします。中国修学旅
行を開始した92年の翌年から回民学校との交流は定例化して
いますが、2001年には回民学校が初めて日本への修学旅行を
実施し、私たちの学校を訪問してくれました。
[総合的に中国を理解する教材の制作が課題]
2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博を控え、発
展する中国が注目されています。一方で、中国の人たちによる
犯罪や危険なダイエットなど中国に関するマイナスの情報がマ
★注1:1925年に少数民族のための学校として設立された学校。外国語教育に力
を入れているエリート校の一つ。http://xw.bjhmxx.com
★注2:中国の少数民族の伝統的なスポーツの一つ。ハンドボールとバスケットボ
ールをミックスしたような球技で、回民学校の提案によりスポーツ交流の種目に取
り入れられた。
中国修学旅行日程例[2005年度3月実施]
1日目 成田空港→北京空港→天安門登
楼→ホテル
2日目 ホテル→万里の長城→選択コー
ス《胡洞巡り・自然博物館と動物
園・天壇公園と市場》→雑技鑑賞
→ホテル
3日目 ホテル→故宮博物院→学校交流
《姉妹校:北京回民学校》→ホテル
4日目 ホテル→天津市内観光《テレビ
塔・南市食品街・鼓楼》→ホテル
5日目 ホテル→頤和園・蘇州街→自由行
動《王府井》→北京友誼商店→ホ
テル
6日目 ホテル→中国国家博物館→天安
門広場→北京空港→成田空港
生徒作成のしおり。
生徒の感想[これまでの修学旅行の感想から]
■修学旅行で中国に行ったことは、ニュージーランド留学を終えた私に、
さらに多くの歴史的衝撃と驚き、文化の違いや言語のすばらしさを教えて
くれました。姉妹校である回民学校で一日現地の高校生と交流した際、大
東一高代表として片言の中国語と英語でスピーチをしました。学校見学や
スポーツ交流での身ぶり手ぶりを交えての会話は、私たちにことばの壁を
感じさせ、悔しさもありましたが、それ以上に理解しようとしてくれた彼らの
態度にとても感動しました。私たちにとって第二外国語である中国語を使
って交流したことは、語学を学ぶに当たって今まで以上に広い視野を与え
てくれました。ことばよりも心が通じ合えたことでより深い友情が生まれ、世
界中に友だちをつくることのできる可能性を感じました。修学旅行で学ぶ
ことができた世界観を将来に生かしていきたいと思います。
■今、日本と中国は友好関係を築けているとはいえない。事実、電波
を通じて知る中国は政治的な報道が主だ。そんな中国の先入観をぶち
破る機会になったのが今回の修学旅行だった。一番強い印象を持った
のは、現地の学生と交流する回民学校訪問だった。彼女たちは、思い
のほか明るく私たちを受け入れてくれた。限られた時間ではあったが、
中国の方々の優しさに触れ、満足感を得ることができた。歴史的認識
の差が日中関係の背景にあるようだが、まずは一歩踏み込んでお互い
に理解を深めていくことが大事だと考えさせられた修学旅行だった。
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国際文化フォーラム通信 no. 68 2005年10月
手づくり感覚の
修学旅行を
神奈川県立鶴見総合高等学校
教諭
山下誠[社会・韓国語担当]
しい王宮群はもちろん、ソウルの渋谷とよばれる明洞や噂の「ナンタ」公演
など、現代韓国の人気スポットまでもれなくチェック! 実物大の韓国に大
接近します。なかでも目玉は3日目のホームステイ。ちょっぴりドキドキだけど、
J-POPSからアニメ、ドラマにいたるまで、日本のことなら何でも興味津々の
彼らは君たちを大歓迎してくれるはず。
えっ? 言葉が心配だって? そこは、気持ちでカバーすればノープロ
ブレム、その方がかえって解かりあえるということだってある。 情
(じょう)
の
国 韓国ならではのホットなもてなしに、君たちの心も舌も大満足間違いな
し! さあ君も、海の向こうの友だちに会いに行かないか!
第1次希望調査で240名中20名が韓国コースを希望したの
で、来年12月に韓国研修旅行を催行することが決定しました。
[新しい試みとしての選択制研修旅行]
海外修学旅行の実施が全国の中でも遅れていた神奈川県
実施までにさらに計画をつめ、4月早々には事前学習に取りか
かる予定です。生徒たちには、
「韓国的なもの」
に触れる楽しさ、
の公立高校でも、2001年から学校の特色づくりの一環として海
ときめきを通して、異なるものに関心をもち、関わっていくチャン
外修学旅行の試行が始まりました。翌々年から本格実施となり、
ネルを開いてもらうことが大事だと考えています。したがって食
2004年度中に海外修学旅行を実施した県立高校は、160校中
べ物や歌など身近なものに目を向けるのはもちろん、1年次の
13校です。行き先を見ると韓国が4校で最も多く、05年度は実
必修科目である
「産業社会と人間」
や国際文化系列の選択科目
施校23校のうち6校が韓国に行く予定です。
「鶴見川崎地域研究」
における在日コリアンに関する学習内容と
これまで勤務した学校では、地理における文化学習の一環
研修旅行を関連づけることも必要になるでしょう。また、来年4月
として韓国語を学んでいる生徒たちを私個人の発案で韓国に
から韓国語講座を開講することが決まっていますので、韓国研
連れて行ったこともありましたが、海外修学旅行の解禁により、
修旅行選択者の多くが、履修を希望すると予想されます。韓国
制度的な保障が得られたので、今後県立高校生が韓国を体験
語学習と研修旅行をどのように結びつけるのかも課題です。
できる機会が飛躍的に増えると大いに期待しています。
私が現在勤務する鶴見総合高等学校は、昨年春に開校し
いずれにしても、似ているけどやっぱり違う日本と韓国。そんな
ところにエキサイティングなものを感じてくれたらと思っています。
た単位制の総合学科高校です。環境科学・国際文化・健康福
祉・情報ビジネス・造形表現の五つの系列に約80の選択科目
[これからの修学旅行に求められること]
群があります。さらに、本校の特徴としては、各系列での学習内
生徒に選択させたからには、彼らの期待に応える内容を提
容を実体験すべく、選択制の研修旅行を設定しています。学年
供する責任があります。私なりにこれからの修学旅行に求めら
全体で行き先を一つに決めていた従来型の修学旅行にかわ
れることを考えてみました。
る、新しい試みといえるでしょう。今年度当初から、具体的な内
たとえば、ホームステイを行う場合、姉妹校交流など現地と直
容の検討を始め、私が担当する国際文化系列では、沖縄、中
接パイプがある場合は別として、通常は旅行業者を通して、現
国、韓国の3方面を候補とし、最終的に韓国に決まりました。
地のホームステイ協会などから受け入れ家庭を紹介してもらうこ
とになります。神奈川では韓国を専門とする旅行業者が現地と
[韓国修学旅行の意義]
の独自のコネクションを活用して、ある団地の自治会とタイアップ
韓国修学旅行の意義は、q最も近い外国である韓国は国際
し、地域ぐるみのホームステイと交流を実現した例もあります。こ
理解の入口であること、w平和学習の絶好のフィールドであるこ
のようにさまざまなチャンネルを活用することで、実のある旅行
とだと考えています。最近は、生徒たちの韓国に対する関心も
をリーズナブルな旅費で実現することが可能になります。これか
高まっており、モティベーションの初期値が高いことからよい成果
らの修学旅行に求められるのは、前例や形式にとらわれること
をあげることが期待されます。今回は、私が国際交流委員とし
なく、こうした手づくり感覚を追求していく精神だと思います。型
て関わった、神奈川県高文連総合文化祭を通じて培った韓国
にはまらない発想を大事にし、ちょっとした工夫と労力をいとわ
の高校とのネットワークを生かして、学校交流やホームステイを
ないことが、中身のある修学旅行につながるのです。
企画できたので、中身のある研修となることが見込まれます。
こうしたことを踏まえ、生徒には次のような案内文を配りました。
日本から一番近い外国、韓国をめぐる旅行です。3泊4日の短い日程なが
ら、目の前に北朝鮮を望む統一展望台や、600年続いた李王朝が誇る美
韓国修学旅行の拡大も韓流バブルの一端と見る向きもある
ようですが、単なるブームで終わらせてはもったいないと思いま
す。そうしないために私たちができることは何でしょうか。まず、
「なぜ、そこに行くのか」
は、
「そこに行って何をするのか」
「それを
することにどういう意味があるのか」
といった、内容を議論して決
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国際文化フォーラム通信 no. 68 2005年10月
めるべきだという認識を教師たちの間で共有することが肝要で
考えているわけではありません。先ほどあげた沖縄だけでなく、
す。何年か韓国が続いたからそろそろ別のところに……というよ
同じ東アジアの一員として、中国との交流も大事なのは言うまで
うな理由で行き先を変更するようでは、全くお話になりません。
もありません。一方で、韓国という異文化との接触が、生徒の心
目の前にいる生徒たちにとって意義を見出せる限り、継続すべ
とからだに、他では得られない変化をもたらすという事例を目の
きです。反対に、たとえば沖縄に行くことに韓国以上の意味が
当たりにしてきた私としては、できるだけ多くの高校生に韓国に
あると判断されるのならば、躊躇せずにそうすべきでしょう。絶
行く機会を提供してあげたいとも思うのです。そういう意味では、
えず修学旅行の意義を追求しようとする教員側のモティベーシ
十分なガイダンスを行ったうえでの選択制という方法は、今後の
ョンを維持することが大きな課題だと思います。
修学旅行のひとつのあり方を示唆していると思っています。
山下誠(やました・まこと)
[旅行先の選択肢の提供]
私は、ただ単に韓国修学旅行が拡大されさえすればいいと
日韓合同授業研究会、高等学校韓国朝鮮語教育ネットワーク、朝鮮語教育研究会
などの活動に積極的に関わっている。
[資料]海外修学旅行を取り巻く状況
2000年度まではほぼ順調な伸びを見せていた海外修学旅行ですが、
国、シンガポール・マレーシア、オーストラリアであるのに対し、私立で
2001年の同時多発テロ、03年のSARS発生の翌年には半減しています。
は、02年度がオーストラリア、中国、韓国、04年度がオーストラリア、韓
しかし、いずれの場合もその翌年にはまた回復を見せています。2004
国、ハワイとなっています。この背景には、表1にあるように、公立高校の
年度に海外修学旅行を実施した件数は855件、129,616人の生徒が参
場合、行き先、期間、旅費など修学旅行実施に関し都道府県、政令指
加しています(財団法人日本修学旅行協会調べ)。
定都市の許可基準が設定されていることがあると思われます。
行き先別に見ると公立と私立では違いが見られます。トップ3は、公
とはいえ、多くの自治体で海外修学旅行実施の条件が整ってきました
立が02年度は韓国、中国、シンガポール・マレーシアの順、04年度は韓
ので、今後公立高校の海外修学旅行の拡大が期待できると思います。
表■都道府県・政令指定都市の海外修学旅行許可・事前協議等の状況
(公立高等学校)
都道府県
[2004年4月時点]
条件(行き先/期間/旅費*)
都道府県
条件(行き先/期間/旅費*)
北海道
韓国/5泊6日以内/
島根
なし/5泊6日以内/
青森
なし/5泊6日以内/なし
岡山
なし/5泊6日以内/
岩手
なし/5泊6日以内/
広島
なし/4泊5日以内/
宮城
なし/4泊5日以内/標準150,000円
山口
なし/5泊6日以内/
秋田
なし/4泊5日以内/
徳島
なし/4泊5日以内/
山形
なし/4泊5日以内/110,000円以内
香川
なし/4泊5日以内/
福島
近隣諸国/4泊5日以内/
愛媛
なし/5泊6日以内/
高知
なし/5泊6日以内/
福岡
原則として環太平洋地域/5泊6日以内/
佐賀
韓国、中国、東アジア/5泊6日以内/
茨城
〔平成17年度より許可
栃木
〔海外修学旅行は許可していない〕
群馬
埼玉
千葉
なし/4泊5日以内/〕
近隣のアジア諸国/144時間以内/なし
〔海外修学旅行は許可していない〕
政情の安定した近隣諸国/4泊5日以内/
長崎
韓国、中国/5泊6日以内/韓国78,000円以内、中国115,000円以内
熊本
原則は韓国、中国/5泊6日以内/韓国85,000円程度、中国110,000円程度
東京
なし/原則96時間以内/100,000円以内(試行校)
大分
なし/5泊6日以内/
神奈川
政情が安定した国と地域/5泊6日
(144時間)以内/
宮崎
なし/6泊7日以内/
新潟
当面韓国と中国
(西安・上海)
のみ、発着は原則新潟空港/4泊5日以内/
鹿児島
富山
なし/5日以内/
石川
韓国など近隣諸国/4泊5日以内/
沖縄
なし/6泊7日以内/
福井
県教委と事前協議/110時間以内/
札幌市
アジア、オセアニア/ 4 泊 5日以内、オセアニアは5 泊 6日まで可/アジア
山梨
近隣諸国/5泊6日以内/なし
長野
/3泊4日以内/
仙台市
岐阜
県教委と事前協議/3泊4日以内/
さいたま市 姉妹都市のある諸外国/4泊5日以内/
静岡
なし/なし/国内旅費67,000円の5割増を限度
千葉市
事前に教育委員会と相談
愛知
現地事情を調査して決定/4泊5日以内/97,500円以内
川崎市
/5泊6日以内/
三重
効果的な国際理解教育ができる目的地/
横浜市
なし/5泊6日以内/
滋賀
県教委と協議/4泊5日以内/国内旅費72,000円の2割増まで可
名古屋市
事前に教育委員会と相談
京都
なし/6泊7日以内/
京都市
設置学科の特色を生かす行き先/4泊5日以内/89,000円以内
大阪
効果的な国際理解教育ができる条件を完備/4泊5日以内/
大阪市
兵庫
なし/7日以内/国内旅費80,000円の3割増程度まで
なし/5泊6日以内/韓国90,000円以内、中国・東南アジア110,000円以
内、その他は130,000円以内
140,000円以内、オセアニア160,000円以内
/128,000円以内
なし/4泊5日以内/標準150,000円以内
原則として韓国、中国/4泊5日以内/韓国90,000円程度、中国120,000
円程度
奈良
なし/4泊5日以内/80,000円以内
神戸市
なし/120時間以内/国内旅費73,000円の2割増程度
和歌山
なし/4泊5日以内/74,000円を限度
広島市
事前に教育委員会と相談
韓国、中国などアジアの近隣諸国。外国語関連学科・コースはオセアニア
北九州市
/5泊6日以内/
諸国/5泊6日以内/
福岡市
環太平洋地域/4泊5日以内/
鳥取
*旅費は具体的な数字が公表されている場合のみ表示。
参考資料:
『修学旅行のすべて』Vol.24 財団法人日本修学旅行協会発行(2005年)
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