15号 - 畜産技術協会

生 産 と 消 費 をつなぐ
身近 な 畜産技術
(雛の写真 提供:(独)畜産草地研究所)
目次
●ニュース/トピックス
・日本のホルスタイン種の能力は世界のトップ水準
●技術講座
・牛乳は機械で搾る
ー ミルカー(搾乳機)の話 ー
●Q&A
・カシミヤとモヘアってなんの毛?
●畜産おもしろばなし
・鶏の消化のしくみは、牛、豚と違う
●畜産物あれこれ
・育児用調製粉乳
●現場紹介
・牛海綿状脳症(BSE)の研究の最前線
(独)農業・食品産業技術総合研究機構
動物衛生研究所 プリオン病研究センター
●みなさまの声
・畜産理解に向けて牧場体験では何が必要か
社団法人 畜産技術協会
第
15 号
2006年10月
ニュース
トピックス
日本のホルスタイン種の能力は世界のトップ水準
日本にいる乳牛(牛乳を生産するための牛)
では日本のホルスタイン種の泌乳能力は世
の代表はホルスタイン種です。白と黒の斑紋
界的に見てどのくらいなところに位置づけさ
で体が覆われており、成熟した雌の体重は約
れるのでしょう。現在では世界の各国で飼育
700kgになります。ホルスタイン種はインドや
されているホルスタイン種の雄牛の遺伝的な
パキスタンのような熱帯地方の国を除いては
泌乳能力を公平に評価するための国際組織(イ
世界の多くの国でもっとも代表的な乳牛です。
ンターブル)が出来ています。雄牛は自分で
国によって呼び名が違ったり、特徴が少し違
牛乳を生産するわけではないので、どのくら
ったりします。例えば、アメリカやカナダで
い能力のある娘牛を生産できるかが雄牛の能
はホルスタイン、イギリスではブリティッシュ・
力の指標となります。インターブルにはホル
フリーシアン、ドイツでは黒白斑種と呼ばれ
スタイン種の能力が高いことで知られている
ます。ヨーロッパ型はアメリカ・カナダ型よ
オランダ、アメリカ、カナダ、フランスを始め、
りはやや小型です。日本では終戦後、酪農振
日本も含めて世界の26か国が加盟しています。
興のかけ声と共に、ホルスタイン種の改良の
インターブルによる国際評価値のトップ
基礎となる雄牛や雌牛を主にアメリカやカナ
100の雄牛の中に日本の雄牛が何頭入って
ダから輸入してきたために、日本のホルスタ
いるかみますと、最近のデータでは、乳量で
イン種はアメリカ・カナダ型に近いものです。
は38頭、乳脂量では36頭、乳蛋白質量では44
ホルスタイン種の泌乳能力の向上について
頭となり、世界的に見て日本の雄牛の遺伝的
は日本も独自の改良計画を立て、国、県、生
能力が世界のトップ水準であることが示され
産農家が協力しながら改良を推進してきました。
ています。人工授精用の精液は、外国から輸
昭和50年には子牛分娩後305日間の牛乳生産量
入したものより、国産のものの方が泌乳能力
が平均5,800kg程度であったものが、平成17年
に優れている娘牛を生産する可能性が高いと
には平均9,100kgにまで泌乳能力が向上してい
言うことであり、外国に精液を輸出できる能
ます。
力水準であると言うことでもあります。
技術講座
牛乳は機械で搾る
ー ミルカー
(搾乳機)の話 ー
紀 元 前から人とともに暮らしてきた乳 牛は、
乳 頭を吸うのと同じように牛 乳を吸 引すること
その間たくさんの牛 乳を生 産できるように延々
が出 来ます 。また、切り替え弁( パルセータ)を
と改良されてきました。また乳 牛の雌 牛は後 脚
使ってライナーシェルに空 気を流 入させると、
の間に4 つの大きな乳 房を持ち、人は2 本の手
ゴム製ライナーが 閉じて乳 頭を包 み 込 み 、牛
で4つの 乳 頭からの 牛 乳を搾る作 業を長 年に
乳 流出を止めることが出来ます 。これを繰り返
わたり続けてきました。しかし、現 在わが国
で飼われている搾 乳 牛は、一日に3 0 k gの
牛 乳( 1 k g 紙 パックで3 0 本 分 、2 0 0 mr入
【パルセータの圧力変動パターン】
牛 乳ビンで1 5 0 本 分 )を生 産 する能 力を持
っています 。このたくさんの 牛 乳を手 搾り
することは 肉 体 的にも時 間 的にも大 変な
作 業であり、現 代 酪 農では牛 乳は機 械で
搾る時代になっています 。
搾 乳のための機 械をミルカー( 搾 乳 機 )
と呼んでいますが 、
この構 造は図に示 すよ
乳頭
ライナーシェル
ゴム製ライナー
うに 、4 つの 乳 頭 毎にこれを包むゴム製 の
筒 (ライナー )とこれを取り囲む 金 属ないし
プラスチック製 の 殻(ライナーシェル )から
空気を吸引
空気を流入
なっています 。電 動モータで動く真 空ポン
プを使って 、このゴム製ライナー 内 部を大
気 圧の半 分 程 度の圧 力とし、
ライナーのシ
ェルの 空 気も引いて同じ圧 力にするとライ
ナーが 開 いた 状 態となり、子 牛 が 母 牛 の
図
図 搾乳機
図 搾乳機(ミルカー)の構造と仕組
搾 乳 機(ミルカ ー )の構造
の 構 造と仕組
仕組み
すことでミルカーはリズミカルに牛 乳を吸 引し、
クーラー )が 設 置され 、一 旦 搾られ た 牛 乳 が
乳頭をマッサージする仕組みになっています 。
人や外 気に触れることなく短 時 間に冷 却され
ミルカーは、手 搾りより子 牛の飲み方に近い
る衛生的な搾乳システムへと発展しました。
搾り方をし 、牛 乳を外 気に 触 れさせ ずに 集 め
さらに最 近では牛 舎 天 井にレールを配 置し
ることを可 能とし、
また乳 頭を痛めることがすく
て重いミルカーを牛のところまで自動 的に運ぶ
なく、4 乳 頭を同 時に搾ることができて、1 分 間
搾 乳 ユニット自動 搬 送 装 置 が 開 発され 、これ
に4kg以 上の牛 乳を搾る能 力を有しています 。 を使うと1 人の作 業 者が1 時 間に5 0 頭もの牛を
当初のミルカーは、搾った牛 乳を溜めるバケ
搾乳できます 。
ツと一 体となっていて、バケツが 満 杯になると
ここで述 べた以 外にも、搾 乳 専 用施 設(ミル
これを開けて、人 力で牛 乳を運 ぶ 作 業をする
キングパーラ)で搾 乳 することで、作 業 者 が 衛
ものでした 。搾 乳 牛 の 頭 数 が 多くなると運 ぶ
生 的な環 境 で多 頭 数を能 率 的に 搾 乳 するこ
だけでも重 労 働となり、牛 舎 の 中に 牛 乳を運
とが出来るようにしたシステム、
さらには乳牛の
ぶ パイプを設 置したパイプラインミルカーの 導
授 乳 本 能を利 用して自発 的に 搾 乳 場 所に 来
入が進められました。さらにこのパイプラインの
たときに、その 牛の 状 況に応じてミルカーの 取
先には搾られた牛 乳を冷やす 冷 却 槽( バルク
付け作 業を無 人で行う搾 乳ロボットのシステム、
写 真 パイプラインミルカ ー
などが酪農場の現場に導入されています 。
当初に述 べたミルカーの構 造と搾 乳の仕 組
みは1 0 0 年も前に考 案されたのですが 、1 世 紀
を経た現 代でも基 本 的な仕 組みが変わってい
ないことには驚かされます 。
しかしこのミルカーを中心とした搾 乳 作 業シ
ステムについては 、沢 山 の 乳 牛を飼わなけれ
ばならない酪 農 家の 労 働を軽 減し、乳 牛 が 心
地よく搾られる環 境や搾 乳 機 条 件を作り、
さら
に高 品 質の 牛 乳を効 率 的に生 産できるように、
数多くの技術革新が進められています 。
長谷川 三喜(はせがわ さんき)
畜産草地研究所
Q
A
搾 乳 ユニット 自 動 搬 送 装 置
カシミヤとモヘアってなんの毛?
哺 乳 動 物 の 毛 は、ヘアー( 刺 毛 )とダウン( 綿 毛 )に 分けられます 。ヘアー は 太くてダウンを覆い、
雨や 雪で体が濡れ ることを防ぎ、ダウンは細く密生し、空気を抱き込んで保温の 役目をします。
ダウンはウールとも呼 ばれ、その 代 表が羊 のウールです 。羊 以 外にも、山 羊、ラクダ、ウサギ、水きん 鳥 類 な
どのダウンが繊 維として利 用され、山 羊のダウンが、カシミヤと呼 ばれます。カシミヤは羊のウールより細く
軽く、インド、パキスタン、中 国にまたがる山 岳 地 帯、カシミール地 方 起 源のカシミヤ山 羊から取られます。カ
シミヤは、春に脱 毛した毛を櫛で梳いて集めますが、
1頭から取 れ る量 は少 なく、
1枚のセーターを編むのに
4頭 分、コートでは30頭 分のカシミヤが必 要です。また、山 羊のヘアーからは高 級 な夏 物 服 地、セーター など
に利 用され るモヘアも生 産されます。モヘアは、
トルコ原 産のアンゴラ山 羊だけがもつ 特 殊 な長いヘアーを
年に2回 刈り取ったものです。繊 維の 鱗片が薄く滑らかでスムースであり、フェルト状に なるウールの 特 性を
欠いています。繊 維の 太さはカシミヤより太いですが、動 物 繊 維 の 中で最も光 沢があり、弾 力 性に富む強い
繊 維で、非 常によく染 色する特 徴があります。モヘアの なかでも、子 山 羊から取 れ る細く柔らかなモヘアは、
キッドモヘアと呼 ばれ、高価で取引されます。
三上 仁志(みかみ ひとし)
農林漁業金融金庫
畜産おもしろばなし
鶏の消化のしくみは、牛、豚と違う
鶏には歯があるでしょうか? 答えは「ありません」。 やかに体外へ排泄することにより、体重を軽くしよ
その代わりに嘴(くちばし)があります。鶏は嘴を
うと進化してきた結果でしょう。
使って、餌をついばんだり、穀物などの堅いものを
2.
口腔とそ嚢
砕いたりします。それでは、
胃の形態はわれわれヒ
鶏の舌は固く、
自由に動かすことができません。
トと同じでしょうか? 答えは「違います。鶏の胃は
また、
鶏では唾液を分泌する腺があまり発達してい
2つに分かれています」。生活圏や食性の違いに
ません。
したがって、
口腔に餌が入った後は、
あまり
より、鶏を含む鳥類は種固有の摂食、消化システ
砕かれることは無く、
多少の湿り気を与えられた後、
ムを獲得してきました。
もちろん、牛や豚などの哺
そのまま食道に送られます。
乳類と共通する点も沢山あります。ここでは、鶏特
鶏はそ嚢と呼ばれる、
哺乳類には見られない消
有の消化のしくみを紹介したいと思います。
化管構造をもっています。これは食道の一部が拡
1.
全体構造
張したものであり、摂取した餌を一時的に貯留し、
栄養素の消化・吸収は、動物が生存していく上
餌の軟化を助けます。おそらく、
胃での消化を円滑
で必要不可欠な生理作用です。動物は消化管を
に進める為にそ嚢が発達したものと思われます。
通して種々の栄養素や水分を体内に取り込みます。 3.
胃
消化管は、
口から肛門に至る一続きの曲がりくね
前述した通り、
鶏の胃は2つの構造に分かれてい
った中空の管です(図参照)。その部位により形、
ます。
これらは腺胃と筋胃と呼ばれています。食道に
構造、生理機能が異なり、口腔、食道、
胃、小腸、
つながる腺胃は、
われわれの胃の酸を分泌する部分
大腸に大別されます。牛や豚と比べると、鶏の相
に相当します。一方、
筋胃は腺胃から分泌された酸
対的な腸の長さは大変短く、
よくぞこれだけの長
と餌を混和する場で、
筋層が大変良く発達しています。
さの腸で消化・吸収がスムーズにおこなわれるも
筋胃は砂嚢(さのう)
とも呼ばれ、
放し飼いにした鶏
のだと感心させられます。鶏では、すでに飛翔す
などでは、
しばしばその内部に砂や小石(グリット)
が
る能力が退化していますが、
もともとは空を飛ぶた
見られます。筋胃の強力な収縮運動によって、
餌とグ
めに、
消化管を出来るだけ短くし、
摂取した餌も速
リットが撹拌研磨され、
物理的な力で消化を助けます。
焼き鳥で食べる砂肝(すなぎも)
はこの筋胃にあたり
哺乳類と同様に鶏にも盲腸があります。哺乳類
ます。筋組織が大変発達し赤みがかった色をしてい
の盲腸は非対称で1つの管しかありませんが、
鶏の
るため、
一見すると肝臓のようにも見える事から、
この
盲腸は左右対称で2つの管に分かれています。盲
名がついたのではないかと言われています。
腸の消化に対する役割は良くわかっていませんが、
4.
腸
盲腸を摘出しても成長や産卵に影響は見られませ
鶏の小腸は牛や豚に比較して大変短いもので
ん。
しかし、
微生物が沢山存在し、
これらが未消化
すが、
栄養素の吸収は活発に行われています。小
の餌を発酵することにより、
栄養面で何らかの貢献
腸の構造にはさほど変わった点は見られませんが、
をしているのかもしれません。ちなみに、
鶏は2種類
小腸の中央部にメッケル憩室と呼ばれる突起状の
の糞を排泄します。
1つは腸糞と呼ばれ、
一般的な
構造が見られます。これは、
孵化する前の卵の中で、
糞がこれに当たります。
もう1つは盲腸糞と呼ばれ、
胚体の栄養源となる卵黄を蓄えてあった袋の名残
盲腸内に入った消化物や未吸収の物質が排泄さ
です。生まれたばかりのヒナでは、
まだ卵黄の一部
れたもので、
べっ甲色をしています。一度、
鶏の糞を
が体内に残っており、
そのサイズもかなり大きなもの
じっくりと眺めてみるのも良いかもしれません。
です。この残存卵黄は孵化後のヒナの貴重なエネ
ルギー源となっています。
村井 篤嗣(むらい あつし)
名古屋大学大学院生命農学研究科
畜産物あれこれ
育児用調製粉乳
1.日本における育児用人工栄養の変遷
した。併せて、ビタミン類や鉄の添加、
新生児・乳児の栄養は母乳が基本ですが 、 β 乳 糖 の 配 合 、 さ ら に は ソ フ ト カ ー ド 化
様々の理由から母乳が十分与えられない
などの処理もなされました。
新生児・乳児のために考えられたのが人
[特殊調製粉乳時代](昭和35年∼53年):
工栄養であり、主役的な役割を果たして
昭和34年に乳等省令の改正があり、「調
いるのが育児用粉乳類です。明治後半以
製粉乳」のほかに「特殊調製粉乳」の規
降から今日までの日本の人工栄養の歴史
格が設けられ、母乳化のための牛乳の成
は次のように要約されます。
分 変 換 が 可 能 に な り ま し た 。こ れ に 伴 い、
[牛乳希釈時代](明治後半∼昭和25年):
調乳濃度の低減、タンパク質の置換、脂
この時期は希釈した牛乳に糖質を加える
肪の置換それに電解質の低減などの処理
方法が人工栄養の基本で、乳児の月齢に
をした育児用調製粉乳が各メーカーから
よって牛乳の希釈度と糖質の添加量を変
販売されました。また、昭和50年∼56年
えて与えました。しかし、殆どの家庭が
にかけて離乳後期調製粉乳(フォローア
冷蔵庫をもっていない時代であったため
ップミルク)が発売されました。
腐敗し易い牛乳は回避され、加糖練乳を
[新調製粉乳時代](昭和54年∼現在):
7∼9倍に希釈して使用するのが一般的
昭和54年の乳等省令改正により、「調製
でした。
粉乳」と「特殊調製粉乳」の規格が新「調
[調製粉乳時代](昭和26年∼34年):
製粉乳」に一本化されました。また、昭
昭和26年に「乳および乳製品の成分規格
和56年には栄養改善法(現在 健康増進法)
等に関する省令」(乳等省令)が公布さ
が改正されて「乳児用調整粉乳」は「特
れて、省令に基づいた調製粉乳が生産さ
殊栄養食品」としての許可を得ることが
れました。全粉70%+添加糖類30% が基
義務づけられ、乳児栄養の基本成分面に
本で月齢により調乳濃度を変えるもので
おいて共通の基準が設けられるようにな
りました。これによりメーカーによって
います。薬局の店頭でもっとも見かける
栄養成分が大きく異なることがなくなり
のがⅠの乳児用調製粉乳です。
ました。さらに、天然タウリン、ラクト
3. 母乳へ限りなく近づけるために
フェリン、ビフィズスファクター、ω-3
第6次改定日本人の栄養所要量、
系脂肪酸、DHA、β-カロチン、その他の
FAO/WHO勧告値、ESPGAN(欧州小児
生理活性物質などが添加されて育児用調
消化器病栄養学会)推奨値、AAP(米国
製粉乳の一層の母乳化が図られ、かつ溶
小児委員会)推奨値、母乳の栄養組成な
け易くするために粉乳は顆粒状になり今
どを考慮して育児用調製粉乳の基準が定
日に至っています。
められます。その基準を遵守しつつ、微
2. 育児用粉乳類の分類
量の生理活性物質を見出してそれを添加
育児用粉乳類は表のように大別して育児
するなどの努力が今も各メーカーにより
用粉乳(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ)と治療を目的
はらわれています。
とした治療乳(Ⅴ)に分けられます。こ
細野 明義(ほその あきよし)
(財)日本乳業技術協会
れらの多くは食品衛生法、乳等省令、健
康増進法の管理下におかれ、製造されて
育児用粉乳類の分類
製 品 群
調整粉乳
育
児
用
粉
乳
Ⅳ 調整粉乳
(市販品)
育
児
用
治
療
乳
食
品
衛
生
法
乳
等
省
令
︵
特
別
用
途
食
品
︶
健
康
増
進
法
Ⅰ 乳児用調整粉乳
適用
(調整粉乳)に該当
(育児用調整粉乳)に該当
Ⅱ フォローアップミルク
適用
(調整粉乳)に該当
該当しない(一般食品)
Ⅲ 低体重出生児用調整粉乳
適用
(調整粉乳)に該当
該当しない(一般食品)
タンパク質分解乳
無乳糖粉乳
低ナトリウム粉乳
大豆乳
適用
該当しない
適用
該当しない
Ⅴ 特殊粉乳
(市販外)
︵
乳
製
品
の
適
用
︶
(病者用食品)に該当
該当しない(一般食品)
現場紹介
牛海綿状脳症(BSE)の研究の最前線
( 独 )農業・食品産業技術総合研究機構
動物衛生研究所 プリオン病研究センター
我が国では2 0 0 1 年の初 発 生 以 来 、2 0 0 6 年
と開 発 、
2)蛋 白 質 の 異 常 化 機 構 の 解 明 、
3)
8 月までに 2 8 頭 の 牛 海 綿 状 脳 症( b o v i n e
プリオン病 発 病 機 構 の 解 明 、
4)プリオンの 不
s p o n g i f o r m e n c e p h a l o p a t h y ; B S E )牛
活 化 技 術の開 発などです 。2 0 0 4 年 3月には動
が 確 認されています 。この 間 、農 林 水 産 省と
物 衛 生 高 度 研 究 施 設 が 竣 工し 、同 年 8月より
厚 生 労 働 省では、B S Eの 発 生と蔓 延 防 止 、
ヒ
本 格 稼 働 が 開 始しました 。ウイルスや 細 菌な
トへ の感 染 防 止のために様々な対 策を行って
どの 病 原 体は 、バイオセーフティレベル( b i o -
きました 。B S Eの 原 因となるプリオンは不 明な
safety level; BSL )
という安 全 基 準により4
点が多い病 原 体で、そのことがB S Eの不 安の
段 階に区 分されています 。当施 設はその中で、
一 因ともなっています 。本 病の発 生を契 機とし
2 番目に厳しいB S L 3という基 準に適 合してい
て、食 の 安 全と安 心に関わる研 究 が 注目され
ます 。施 設 内には実 験 室 、動 物 室( マウスから
るようになりました 。B S E 、羊 のスクレイピーな
牛まで飼 育 可 能 )、解 剖 室ならびに排 水 や 廃
どはプリオン病または伝 達 性 海 綿 状 脳 症と呼
棄物の不活化のための設備が設置されており、
ばれますが 、
これら動 物のプリオン病を研 究 す
プリオン病 の 実 験を行うためにハードとソフト
る中 核 拠 点となっているのが 、農 林 水 産 省 の
の両 面から安 全 性の確 保に配 慮しています 。
所 管 する農 業・食 品 産 業 技 術 総 合 研 究 機 構
2 0 0 4 年 8月には 、
この 施 設を活 用してB S E の
動 物 衛 生 研 究 所に設 置されたプリオン病 研 究
牛 への経口感 染 実 験を開 始しました。B S Eは
センターです 。センターは2002年10月に発足し、 潜 伏 期が長いため、実 験 感 染 牛の発 症までに
プリオン病 研 究センター長のもと8 名の研 究 員
はまだ時 間 が 必 要です 。B S Eプリオンの 謎の
および 2 0 名のスタッフを配 置して、B S E 等プリ
解 明には 、息 の 長い 研 究 が 求められます 。マ
オン病 研 究に取り組んでいます 。主な研 究 の
ウス、遺 伝 子 組 換えマウス等を用いたプリオン
テーマは、
1)動 物プリオン病の診 断 法の改良
の感 染 実 験も継 続 中で、
これら実 験 動 物の飼
育 管 理には8 名の動 物 管 理 科 職員も従 事して
動 物 衛 生 研 究 所は今 後とも「 動 物を衛る、
います 。
人を衛る」をモットーに、疾 病の 防 除と衛 生 問
当センターのもう一つの役割として、
プリオン病
題の改 善に関わる研 究を推 進し、健 康な家 畜
に関する技術サービスを行っています。主に、動
と安 全か つ安 心な畜 産 物の 生 産 技 術の 開 発
物プリオン病のサーベイランス、国内でのBSEの
に取り組んでいきます 。当 研 究 所の 研 究 内 容
確 定 検 査のほか 、研 修や国 内 外の企 業 、研 究
について、詳しくお知りになりたい方は、一 度 、
機関との共同研究の推進、
プリオン研究の人材
動 物 衛 生 研 究 所のホームページもご参 照 下さ
育成に携わっています 。また、国際獣疫事務局
い。
( http://www.niah.affrc.go.jp/index-
(Office International des Epizooties; OIE)
のリファレンス研究所として国際貢献にも努める
とともに、動物プリオン病研究の世界的拠点とな
ることを目指しています。
j .ht m l . )
横山 隆 (よこやま たかし)
動物衛生研究所 プリオン病研究センター
みなさまの
VOICES
畜産理解に向けて牧場体験では
何が必要か
作る側(農業者)
と食べる側(消費者)の乖離が食の乱れを生んでいると言われて久しい。特に乳製品の
生産過程を知る消費者はそんなに多くない。その間を埋める一つの方法として牧場体験が試みられてきた。
私どもの牧場でも、種々の牧場体験を行っているが、一番うけるのは本物のバター作り体験である。これはク
リームを瓶に入れ、ひたすら振るという単純労働を強いるもので、約30分位かかる。私はこのバター作り体験
のお相手をするのが好きである。その理由はじっくりと消費者と向き合って対話ができるからである。まず、
この体験に引っ張り込むのにはあの手この手の呼び込みが必要である。牧場に来たのだからと興味を示す
人とそうでない人に分かれる。興味を示す人でも30分もかかるというとやめてしまう人も多い。ようやくや
ってみるかと取りかかっても必ず途中で我慢ができなくて文句が出てくる。しかし、ここでめげずに、この30
分間に空いている耳と口を貸してもらって、牧場や牛の話、食べ物の話、お客さんのこだわりの話等々、いろ
んな話をしかけてみる。すると大抵の人が牧場や畜産に関して大きく認識を新たにしてくれる。じっくりと対
話をすることは非常に有意義だと実感できる。
そうしているうちに、瓶の中では突然バターが出来上がる。水洗いをして売っているのと同じゴールデン
バターが見えたときは、それまでの辛抱が一挙に吹き飛び感嘆の声が上がる。どうしたらバターができるか
理解できて、しかも実用規模の製品が手に入って満足される。神津牧場では、このバター作りの体験者は年
間1500人を越える。さらに、体験したリピーターがバター教室の看板を見て、同伴者に、振る身振りをしなが
ら「これは大変なんだよ」と説明している姿に接すると輪が広がっているなと嬉しくなってくるのである。
ここから見えてくるものは、体験といっても相互交流のコミュニケーションがあると一挙に距離が縮まるこ
と、具体的な成果物を提示できればかなりのインパクトを体験者に与えることができるということである。本
当の意味の畜産理解につなげるには、対話と本物を体験してもらうことが大切である。皆さんも牧場に出か
けてみませんか。
清水 矩宏(しみず のりひろ)
(財)神津牧場
お 知ら せ コ ー ナ ー
・みんなで紙面を作る Q andA 欄をご用意。皆様からのご質問を募集して います。
乳や肉、卵の生産に役立っている畜産の技術について、常日頃より「どうしてなのか?」と疑問に感じていたり、
「もっと詳しく」知っておきたい
と思う事柄が多いと思われます。
質問の主旨を簡略にまとめていただき「Q and A」欄までお寄せ下さい。リーフレットの紙面上でできる限り分かりやすくお答えしてまいりま
す。それと同時に、消費者の皆様の関心事がどのようなところにあるのかを教えていただくことにもなりますので、それらをもとに今後の紙面作
りにも役立ててゆきます。
質問状の宛先:〒113-0034 東京都文京区湯島3-20-9(社)畜産技術協会
消費者向けリーフレット「生産と消費をつなぐ 身近な畜産技術 Q and A」欄
Fax. 03-3836-2302 e-mail:[email protected]
・このリーフレットをご希望の方は下記までお申し込み下さい。
社団法人 畜産技術協会
〒113-0034 東 京 都 文 京 区 湯 島 3 - 2 0 - 9
TEL 03-3836-2301 FAX 03-3836-2302
ホームページ
http://jlta.lin.go.jp./