第 0回 糖 質制限 ダイエットに励 む患者 さん に、 なんと言えば……。 私 の患者 さん (女 性 )が 最近、糖質制 限 によるダイエ ットを始 めたと言 つ て います。 以 前 か ら肥 満 を気 にして い ました。 たしか に体重 は減 少 したようで す が、 牌 胃の虚 弱 がみ られ ます。 糖 質制 限とは一 体何 か、私 も書 店 で 関連 本 を買 い 込 み、 「体 質 が 変 わ るJな インターネ ットで検 索 してみました。「ダイエ ットに効果 てきめん」 どの謳 い文 句 があります が 、主食 を 「糖 質」 として、や めるよう促す もの もあります。 主食 をや めることが本 当に身体 によいのか、疑 間で仕方 ありませ ん。情報 もたくさんあっ て、患者 さんに 「糖 質制 限 につ いて、どう思 います か」 と聞 かれ 、 困っています。 をみてみると、まず よいところは、食 べ る量が 良 い面と悪 い面が あります 制 限 され ることです。 現 代 人 の 多くが 食 べ 過 ぎによる肥満 、病 、症状を引き起 こしています。 「腹 八 分 に医 者 要 らず」 と昔 か ら言 われ てい ダイエ ットに関す る情報 は氾濫して いて、真 るように、食 べ る量 が 制 限 され、特 に過 剰 に 逆 の説 も散 見され るので迷 ってしまいますね。 間食を摂 って いる人 が砂糖 や異性 化糖 などの 今は特 に 「糖 質制 限 ダイエ ット」 が流 行 して 大量 に入っている飲料 や お菓 子類 を減 らす ダ い るようです。 食養生的 に糖 質制 限ダイエ ット イエ ット効果は大 きいです。 辻野将之 (っ じの 。まさゆき) 食事療法士。 1996年 、がんなどの難病患者を治療する菅野賢―医学博士のもとで菅野式 食事療法を学ぶ。赤門鍼灸柔整専門学校卒業。はり師きゅう師、あん摩マッサ=ジ 指圧師、 「星のや竹富島」にて「空 柔道整復師、2007年 に「そら鍼灸食養生治療院」を開院。現在、 「キアラリゾー ト&ス パ浜名湖」にて「浜名湖養生」の企画・運営を行う。 また日 、 色養生」 本食事療法士協会を立ち上 :λ 食養生コーディネーターの育成に従事。著書に『お米を食 べるだけでこんなにやせた』(講 談社)、『からだと心を整える「食養生」 』(技 術評論社)な a 問題 は、炭水化物 を動物性 たんぱく質や脂 後、同様 の内容 のダイエ ット本、宮本美智子 質 に置 き換 えた際 にあらわれ ます。 それ らの 氏の『世 にも美しいダイエット』 が大ベ ストセ 摂取割合が増 えるほど、腎臓疾患や心血管疾 ラーになったのですが、著者 が51歳 のとき脳 患死 亡 リスクなども増 えることが分 かって きて 盗血で死亡し、ブームは去ったとい う歴史が い ます。 食 事 の 三 大 栄 養 素 〔た ん ぱ く質 あります。 (Protein)。 脂質 (Fat)・ 炭水化物 (Carbo― 糖質制限 に限らずダイエットで気をつ けな の バ ランスが 崩れ ると、痩せ るこ ければならないのは、2種 類 の痩 せ方がある とと引きかえに身体 の不具 合や突然死 のリスク とい うことです。健康的な痩せ方は必要な栄 を背負 います 養をしっかり摂り、体内の気血がしっかり巡っ hydrate)〕 (卜 )。 適切 な三大栄養素 の摂取割 合として厚生労 て い る状態で、不要なものが排泄されます。 働 省 は 「PFCバ ランス」 を提 唱 しています 。 一方、不健康な痩せ方は、入 つて くるものが PFCバ ランスが適 す る範 囲は、「日本 人 の食 少ないと確 かに体重 は減 りますが、やつ れま 事 摂 取 基 準 (2010年 版 )」 の 30歳 以上 の 目 す。気血の巡りが悪いので、食事制限を緩 め 標 量 を参 考 に す るとP:9∼ 20%、 F:20∼ た際 にリバウンドしてしまいます。糖質制限ダ C:50∼ 70%が 大 まかな 目安 です 。 つ イエットは、厳密 に行えば行うほど必須 の栄養 まり国 の見解 として、全 摂取 エ ネ ル ギーの 50 素である炭水化物が制限され、本来 の気血 の ∼70%は 炭水 化物 から摂 るのが健康 バ ランス 巡 りを作り出せず後者 のヤツレるダイエットに に適 していると示 して い るのです。 炭 水 化物 なりやす いのです。 25%、 抜 きダイエ ットは現代栄養学 にも真 っ向か ら反 する、奇をてらったインパ クト重視 の一 発屋的 ダイエ ット法 です。 そ の割 には意外 と息が長 く 驚 いて います。 『粗食 のすす め』(新 潮文 庫 )の 著者 として も有名な幕 内秀夫氏 に、本誌 2014年 5月 号で お会 いして教 えて い ただ い た ので す が、 ごは んや パ ン、 イモ 類 を食 べ るなとい う糖 質 制 限 食 ダイエ ットとして 「和 田式 ダイ エ ット」 が 1956年 にも大 ブームになったそ うです 。 そ の 卜「栄養学分野のアインシュタイン」と称さ れる栄養学の世界的権威、T・ コリン 。キャ ンベルコーネル大学栄養生化学部名誉教授 は、動物性たんぱく質の摂取が多 くなると がんが誘発されることを証明している。発が ん性の物質を摂取 しても動物性タンパク質 が全摂取の 5%以 下ならがんは進 行せま 20%の 場合ならがんは増殖するという実験 結果が得 られたという。植物性のたんぱく 質では 20%を 超えても影響が少なかつた。 。 食物繊維と糖質です。 炭水化物はしっかり摂り、 糖質単体摂取を控える 糖質制限をするの なら、食物繊維や ビタミ ン・ミネラルなどを合む米や パ ンを抜くのでは なく、他 の栄養素が欠落した砂糖や異性化糖 あなたの患者 さんは、糖 質 制限イコール 炭 などの精製された不 自然な糖質を抜 くことが 水 化物抜 き、 あるいは米や パ ンなどの主 食 を 一番効果的ですし、これなら食養生的にもお 減 らす と誤解 して い ませ んか? お米 は 100% 勧めです。 食養生では 「一物全体食」(ト 炭 水 化物 で は なく、 35.6%が 炭 水 化 物 です。 食 パ ンは 46.7%、 うどん (ゆ で)21.6%で す。 ) ー を大切にしています。「一 物全体」 の反対 は 和牛 ヒレ0.3%、 牡蠣 4.7%、 大 根 4.1%な どに 「精製」 です。それを特 にうまく活用したのが 比 べ ると圧倒 的 に多 くはな ります が、炭 水 化 西洋医学 の薬 の考え方です。 漢方薬 が木 の 物 はあらゆる食 品 に合 まれ る栄 養 素 です 。 さ 皮や根だけを使うのも、ある意味で効果効能 つ まい も (焼 き)は 39.0%、 栗 (ゆ で)は 36.7%、 の部分のみを取り出しています。精製 の特徴 干 し柿 は 71.3%が 炭 水 化物 です。 い くら主 食 は、その原材料 が持つ効果効能を際立たせる の米 を抜 いて も厳 密 に炭 水 化 物 を抜 くことは ことができます。その反面、副作用も強くなり 不可 能 でしょう。 ちなみ に炭 水化物 の 内訳 は ます。 全体食 は 中庸 に保ちやす いので効果 ■日 訓円 日■ H ― 物全体食 辻野将之氏 0謳 雰 [百 罹 :ξ 種 謝 最 り入れているとしています。 この精 は「命」ある 自然なものを自然なまま取 り入れることで得られま す。例えば水に浸した自米は腐りますが、玄米は 芽を出します。 そして春に発芽 したひと粒が最大 限にその能力を引き出せば、秋には 3000の 米粒 になる可能性を秘めています。 この次世代につな がるのが 「命」です。 ジヤガイモも皮ごとなら数力 月は保ちますが、皮を剥いたり切つたりすると傷み 始め、命が失われていきます。 つまり、一つの物 を皮や根、胚芽など全体をまるごと食す。それが 命のある食物から「精」をいただくことになります。 通常の食事は全体を食し、極端に偏らない中庸を 保つのが好ましいです。皮だけとか、根だけとか、 部分になればなるほど性質にも偏りが出てきます。 お米は玄米が「―物全体」。辻野家で は子どもも玄米を食べる _// は緩 慢 ですが、そ のぶ ん副 作 用も少 なく、専 糖 類 が 占める割合 を 5%未 満 に抑 えるよう呼 び 門的な知識 がなくても利用 できます。 か ける指 針 案 を発 表 しました (2002年 に出さ れ た 現行 の指 針 では、糖 分 由来 のカロリーは 特 に人工 的 に過 度 に精 製 した砂 糖 や精 製 塩 は本来専門家 が処 方す べ きもので 、常食 は 10%未 満 にす べ きとされて い ます )。 危険なものとなります。 細 かい性 質 は知 らず と 患者 さんが糖 質制 限をどの程度 取 り組 んで も「一 物全体 食」 をして い れ ば 自然 と中庸 に い るのか 、具体 的 に何 を制 限して い るのか を 保 てます。 確 認 し、主 食 を減 らして動 物性 が 増 えて い る 誤解 のないように繰 り返 します が 、炭 水 化 ようなら要 注 意 です 。 制 限対 象 を砂糖 などの 物 はしつか りと摂 ること、砂 糖 は制 限す べ き、 精 製糖 にで きるだけしぼるように誘 導 できると が 常 識 な の で す。 WHO(世 界 保 健 機 関 ) よいでしょう。 は 2014年 に、1日 の摂取 カロリーに砂糖 などの 理 想 と妥 協 の「糖 質制 限」 食事量の半分以上 は主食であるお米を食 べ ることで魂 その際玄米を食 べ ると一物全体 いる糖 質は無 視 して摂 取 し、 食にもなり、なおよいで丸 自然な米や野菜 ―物全 体食 に反する精製され 類に含まれている糖質は無視 して摂取 し、一 た砂 糖 や異性化 糖 の摂 取量 物全体食 に反する精製 された砂 糖や異性化 を、まずは半分に減らすこと 糖から糖質を摂 らないようにしま丸 ただ し を目指しましょう。また、砂糖 現在砂 糖 類 を多用 している人 は、 まず半分 を摂るなら黒砂糖などショ糖 以外のミネラルも含む精製度 にするところから始め、徐々 に減 らすように 自然な米や野菜類に含まれて れた身体 に急 に消 化 を求 めるのは難 しいで の低 いものを選び、精製度の 高 い グラニュー糖、自砂 糖、 丸 適応には時間がか かるので 3カ 月ごと 三温糖、氷砂糖などは避ける に半減させていくのがよいで しょう。 ようにしましょう。 してください。消化の必要のない糖補給 に慣 参考文献】 【 1)T・ コリン・キャンベル、 トーマス・M・ キャンベル 著,松 田麻美子訳 葬られた「第二のマクガバン報告」 グスコー出版,2009
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