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第 1 課 翻訳仏文法とは?

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◆第 1 課 翻訳仏文法とは?
さあ、これから翻訳仏文法のオンライン講座で勉強していただくことになりました。あな
たは大学の語学授業や専門学校の教室などで、すでに初級のフランス語を一通り習っておら
れることと思います。初級文法と平行してやさしい詩や短篇小説を読んだという人もけっし
て少なくないでしょう。この「翻訳仏文法」の講座は、あなたがこれまでに身につけたフラン
ス語に関する知識や経験をフルに活用しながら、フランス語で書かれた文章をさらに正確に、
さらに深く読み、そして読みとったものを今度は誰にでもわかるこなれた日本語で正しく表
現することをじっくり勉強していただくためのものなのです。その意味で、翻訳仏文法とい
うのは従来の語学文法とはまったく違います。フランス文を読むばかりでなく、日本語に移
しかえることが目的なのですから、むしろ表現文法といってよいでしょう。もっとも、表現
するということを「仏文和訳」のことだと勘違いされても困ります。あなたがこれまでにフラ
ンス語の教室で習ってきた仏文和訳は、あくまでも原文を語学的・文法的に正しく把握する
ための方便にすぎません。仏文和訳の日本語は、どこまでもフランス文を直訳しただけで、
それ自体はまことに奇妙な日本語であることはあなたもお気づきでしょう。仏 文 和 訳 は 翻 訳
で は な い の で す。
Il est plongé dans la lecture d'un gros livre.
あなたなら、この文章をどう訳しますか? plongé は動詞 plonger (沈める、漬ける)の過去分
詞で、ここでは形容詞的に用いられ、être plongé dans で「∼に没頭している」の意味になり
ます。lecture は「読書」、gros は本が「部厚い」ということでしょう。そこで、まず仏文和訳
――〔彼は 1 冊の部厚い本の読書に没頭している。
〕そう、これでいいのです、仏文和訳の答
案としては。試験であれば満点が貰えるでしょうね。
ところで、今度は「翻訳」という観点からの今の日本語訳をもう 1 度眺めてみるとこれでは
まったく物にならないことは一目瞭然です。だって考えてもごらんなさい。夢中になって本
を読んでいる人のことを誰かに向って話すのに、あなたは「彼は 1 冊の部厚い本の読書に没頭
している」などといえるでしょうか? 現実にあなた自身がしゃべったり、書いたりしないよう
な日本語は、翻訳の日本語ではありません。くだんの 1 行を「翻訳」するとしたら〔あの人は
部厚い本を読みふけっている〕ぐらいの日本語にしないとどうにも落ち着きが悪いのです。
翻訳仏文法が表現文法であることの意味が少しは納得いただけたと思います。
これから、3 分冊全 27 課の翻訳仏文法と、さらに 1 分冊の長文練習という長丁場におつき
あいいただくわけですが、全課程を通じてお願いしたいことが 1 つあるのです。どうか、辞
1
書 を 敬 遠 し な い で 、 徹 底 的 に 利 用 し て 下 さ い。はじめのうちは手頃なサイズの仏和で結構で
す。ある単語や言いまわしの翻訳に関する確実な情報やヒントが得られるまでは、何度でも
しつこく辞書を引くようにして下さい。辞書の正しい使い方を覚えてしまうこと――これが
翻訳仏文法の第 1 歩です。なお、テキストの巻末に索引をつけましたのでこれもぜひ活用し
て下さい。
Ⅰ.フランス語の単語は多義的である
フランス文を翻訳しようとする人が辞書を引く際に何よりも頭に入れておくべきことは、
フランス語は語彙の数が少ない言語であるだけに、1 つ 1 つ の 単 語 が い ろ い ろ な 意 味 で 用 い
ら れ る こ と が 多 い、という事実です。1 つの単語には 1 つの訳語(ないしは意味)が対応するも
のと思いこんでいると、とんでもない誤訳をしてしまうことがよくあるのです。辞書で形容
詞 cher の項目をよく読んでから、次を訳してみて下さい。
(1) La liberté nous est plus chère que la vie.
(2) La vie est très chère ici.
よく意味を取り違えてしまう単語です。(1)は〔私たちにとって自由は生命よりも大切なも
のだ〕でいいでしょう。ところが(2)も同じだろうと見当をつけて〔ここでは生命はきわめて
大切である〕とやると、これが誤訳なのです。正解は〔当地は物価がひどく高い〕です。仏
和辞典で cher や vie に与えられるさまざまな意味を、1 つ 1 つ比較吟味することがどれほ
ど必要か、これでおわかりいただけたと思います。
講釈が長くなりました。例文でおさらいしてから、ご自分でも練習問題をやってみて下さ
い。訳例は 8 ページにありますが、最初は自分で辞書を引き、うまく訳し分けてみることで
す。
(3)
a) On peut trahir un auteur en le traduisant trop littéralement.
試訳〔あまりの直訳は、作者の意図を歪曲しかねない。
〕
b) Judas fut celui qui trahit Jésus.
試訳〔ユダはイエスを裏切った男だった。〕
c) Les coins de sa bouche trahissaient son émotion.
試訳〔口の端が感動を表わしていた。〕
練習問題 1
a) Il fut déclaré battu par abandon au cinquième round.
2
b) L'abandon de matériaux sur la voie publique est interdit.
c) Elle est renversée dans son fauteuil, avec abandon .
【 語 注 】 a) ( ボ ク シ ン グ の 話 で す ) déclarer: 宣 す る
b) matériaux: 資 材 、
voiepublique: 公道、 interdire: 禁じる c) renversé: 仰向けに倒れこんでいる
練習問題 2
a) Il tournait le bouton de son poste .
b) Il est titulaire d'un poste important au ministère.
c) Je lui ai envoyé un mandat par la poste .
【語注】 a) bouton: スイッチ、b) titulaire de: 肩書などを有する、 ministère: 本省、
c) mandat: 為替
どうです、お出来になりましたか。練習問題 1 は辞書の同じ見出し語のところだけを読め
ばだいたいわかるのですが、練習問題 2 の poste という名詞は a と b が男性名詞、c は
女性名詞で、単語そのものが違います。辞書には poste 1、 poste 2 という具合に並べて区
別してあるはずです。フランス語の名詞にはつづりが同じで性も意味も別というのがよくあ
りますから注意しないといけません。
練習問題 3
a) Cette industrie a étendu son rayon d'action.
b) A la suite d'une chute plusieurs rayons de sa bicyclette ont été cassés.
c) Elle s'était haussée sur la pointe des pieds e t levait les bras pour atteindre le rayon
supérieur.
d) Le rayon est égal à la moitié du diamètre.
e) Les rayons X ont reçu de nombreuses applications médicales à la fois pour explorer
le corps humain et pour soigner certaines maladies.
【語注】 a) industrie: 企業、 étendre: 広げる
b) à la suite de: ∼のために、
bicyclette: 自転車 c) se hausser: 伸びあがる、 pointe des pieds: つま先、 atteindre:
手を届かせる d) égal à: ∼に等しい、 moitié: 半分、 diamètre: 直径 e) application:
応用、 explorer: 精密検査する、 soigner: 治療する
II.フランス語は抽象度の高い言語である
フランス語の単語が多義的であるということは、それだけいろいろな事物や状況に当ては
めることができる、つまり単 語 の 意 味 内 容 が 抽 象 的 で 一 般 性 を も ち う る ということでもあり
3
ます。そのよい例が、mettre、 faire、 tenir、 être、 avoir などの、あなたが初級文法の
はじめにいやでも活用を覚えさせられた基本動詞です。mettre という動詞はどういう意味内
容をもっているか、ちょっと思い浮べてみて下さい。manger が「食べる」、chanter が「歌う」
という具合に簡単にはいかないでしょう。mettre sur la table は「テーブルの上に置く」です。
では「置く」で覚えればいいかというと、mettre dans la poche は「ポケットに入れる」、mettre
en bouteille は「びんにつめる」となる。さらにこの動詞は「着衣」の意味でも使えるのですが、
これがまたいろいろで、mettre son manteau は「コートを着る」、mettre ses gants は「手袋
をは め る」、mettre ses lunettes は「眼鏡をかける」と、いちいち訳語が違います。日本語は
どちらかというと眼に見える動作の違いに着目して、その都度動詞を使い分ける傾向があり
ますが、フランス語の場合は「ある一定の場所にないものを持ってくる」という共通性さえあ
れば、一見異質な動作をすべて mettre という動詞 1 つで表現できるのです。では、今度は
同じ mettre を使ったもう少しむつかしい文例にアタックしてみて下さい。
練習問題 4
a) J'ai mis la radio sur France I.
b) Il s e m e t à pleuvoir.
c) Il a mis une grosse somme sur le no 8, aux courses.
d) La viande a mis longtemps à cuire.
e) Elle n'a plus rien à se mettre .
【語注】 a) France I: フランス第 1 放送 b) pleuvoir: (非人称動詞で) 雨が降る c)
somme: 金額、 courses: 競馬 d) viande: 肉、 cuire: (自動詞で)煮える
最後にもう 1 つ、tenir という動詞で練習してみましょう。前置詞との組み合わせなどに
も気をつけて下さい。
(4)
a) J'espère que le beau temps tiendra jusqu'à dimanche !
試訳〔天気が日曜までもてばいいんだけど。〕
b) Ne tiens pas ton verre comme ça, tu vas le faire tomber.
試訳〔グラスそんな持ちかたじゃだめだよ。落しちまうよ。〕
c) Ah ! toi, tu tiens de ton père ! Tu as tous ses défauts !
試訳〔まったく、親父さんそっく りだね。悪いところまでみな同じだ。〕
d) Elle tient bien sa maison.
4
試訳〔彼女は家をきちんとしている。〕
e) Tu tiens vraiment à nous accompagner à la gare ?
試訳〔ど う し て も駅まで送るっていうの。
〕
《練習問題訳例》
1.
a) 彼は第 5 ラウンドで試合放棄によるノックアウト負けを宣せられた。
b) 公道に資材の放置を禁ず。
c) 彼女は肘掛椅子にぐ っ た り と倒れこんでいる。
2.
a) 彼はラ ジ オのスイッチを入れた (または「スイッチを切った」)。
b) 彼は本省で要職についている。
c) 私は彼(女)に郵便為替を送った。
3.
a) この企業は活動範囲を広げた。
b) 転倒したため、彼の自転車はスポークが何本か折れてしまった。
c) 彼女はつま先立ちになり、上の棚のものを取ろうとして両腕を伸ばした。
d) 半径は直径の半分に等しい。
e) エックス線は人体の精密検査と若干の病気の治療のために、医学でいろい
ろに応用された。
4.
a) ラジオを (フランス) 第 1 放送に合わせた。(「フランス」はなくてもいいで
しょう。場所がフランスであればわかりきった話ですから)
b) 雨が降りはじめた。(訳す時はどうしても過去形になりますね)
c) 彼は競馬で 8 番に張 り こ ん だ。
d) 肉は煮えるのに時間がかかった。
e) 彼女はもう着るものが 1 つもない。
5
《演習》
この講座では、本文中の練習問題のほかに、課ごとに演習をやっていただくことになって
います。訳例は次のページにありますが、とにかくまずはご自分の力で挑戦してみて下さい。
この課は何よりも辞書を上手に引くことが狙いです。(1)の仏文和訳は「なんだ、やさしいじゃ
ないか」と馬鹿にしないで適切な訳語を見つけて下さい。(2)の和文仏訳は肩ならしのつもりで
どうぞ。
(1)仏文和訳
a) Tournez le bouton dans le sens de la flèche.
b) Ta tante avait trop le sens de la famille pour donner ses meubles aux hospices.
c) Les plaisirs des sens .
d) Les synonymes sont des mots qui ont le même sens .
e) On distingue traditionnellement cinq sens : la vue, l'ouïe, le toucher, le goût et l'odorat.
あくまで辞書を引く練習ですからこの課の演習だけは語注や解説は一切つけません。その
かわり、なるべく引き間違えないように。
(2)和文仏訳
「ビンの中の水にローソクを浮べて燃やすと、ローソクの炎はだんだん弱くなります。丈も
短くなって、じきに炎は消えてしまいます。」
【語注】ビン: bocal《男》
、ローソク: bougie《女》、燃やす: 主語を on にして faire brûler、
炎: flamme《女》、だんだん: de moins en moins とマイナスで表現、弱くなる: devenir
brillant をマイナスで表現、丈: hauteur《女》 (h は無音ですので要注意)、短くなる:
diminuer、じきに: bientôt、消える: s'éteindre
「ビンの中の水にローソクを浮べて」 のところは動詞を使わず前置詞でアッサリ処理して下
さい。ピンは底のぬけたものを水に入れる形になりますので、「中」 は dans よりもふさわし
い前置詞があります。「浮べて」も簡単な前置詞 1 つでまとめられます。名詞の前につける冠
詞、その他の単語にも神経を使うこと。フランス語はこれが意外とやかましいのです。
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《演習訳例》
(1) 仏文和訳
a) 矢印の方向にスイッチをひねって下さい。(tournez: 動詞 tourner の vous に対する命令
形)
b) 君の伯母さんはお家第一で (あまりにも家族精神が強くて) 施設に家具を寄贈しなかった
んだね。(trop ∼ pour: ∼すぎて∼しない)
c) 官能のよろこび。(sens は複数形で「人間の肉体的・性的快楽に関する感覚」という限定さ
れた意味をもつことが多いのです。e と比べて下さい。)
d) 同義語とは、同じ意味をもつ単語のことである。
e) 昔から五感ということが言われている (人は昔から五感を区別している)。視覚、聴覚、触
覚、味覚、嗅覚である。(on はふつう「人は」と訳さず、消すのがコツです。ここの sens は c
よりも広い意味で、感覚機能一般を指しています)
(2)和文仏訳
Quand on fait brûler une bougie sur l'eau, sous un bocal, la flamme de la bougie devient
de moins en moins brillante; sa hauteur diminue et bientôt, la flamme s'éteint.
前置詞処理のところは「浮べて」が sur、「中に」は sous です。sous は意外に思われるかも
しれませんが、底のないビンですのでコップを伏せたイメージが強いのです。「燃やす」を「火
をつける」ととれば on allume も使えます。「だんだん弱くなる」のプラスとマイナスを逆に
して「より少なく輝きが増す」としたのはきわめてフランス語的発想です。その後に「短くな
る」「消える」とマイナスの動詞が続くだけになおさらそういう配慮が必要なのです。冠詞の点
検に入りましょう。bougie と bocal にはじめ不定冠詞がついているのは、任意のローソク
やビンでよいからです。
それに対して eau や flamme はつねに「水」や、「炎」であって任意というわけにいきません
から定冠詞をつけます。bougie の 2 回目はもう決まった「ローソク」を指しますので、当然定
冠詞です。
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