3.Pseudolymphoma

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日皮会誌:117(3)
,265―274,2007(平19)
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3.Pseudolymphoma
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渡辺 大輔(愛知医科大学)
はじめに
Cutaneous pseudolymphoma(CPL)とは,ある特定
の疾患を指すものではなく,様々な原因を契機に起こ
る良性反応性のリンパ増殖性疾患の総称であり,臨床
的・組織学的に悪性リンパ腫に類似するため,その鑑
別が問題となる.CPL の概念は 1891 年 Kaposi による
sarcomatosis cutis の記載が最初である.その後も組織
学的に B 細胞の浸潤が主体の CPL(CBPL)
に対して,
cutaneous lymphoid hyperplasia,lymphadenosis benigna cutis,lymphocytoma cutis な ど の 名 称 が つ け
られてきたが,これらは本質的に同一の疾患概念を表
す1).一方,T 細胞性の CPL
(CTPL)
については,1969
年に光線性類細網症が報告された後2),lymphomatoid
papulosis や薬剤誘発性の CPL とあわせて 1980 年代
以降にその疾患概念が広く認識されてきている.
CPL と皮膚悪性リンパ腫との鑑別は臨床及び病理
組織像,またリンパ球表面抗原の違いや遺伝子再構成
の有無により行われるが,時に鑑別が困難であったり,
また CPL から悪性リンパ腫に進展する症例もあるた
表 1 Pseudol
ymphomaの分類(文献 1より引用)
Cut
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め,診断に苦慮する事もある.本稿では,CPL の発症
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要因,また臨床的及び病理学的な特徴について述べる
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とともにリンパ腫との鑑別や治療法についても概説す
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る.
Cl
onalCBPL
1.定義及び分類
前述のように CPL とは「一見リンパ腫様に見えるが
韓国のグループからの報告では,CPL 症例 42 名にお
実際は反応性リンパ球増殖症である良性疾患」と定義
いて,男女比はほぼ 1:1,
罹患年齢は 2 歳から 88 歳で
される1).また主たる浸潤細胞の違いにより CBPL と
あり平均年齢は 47.9 歳,皮疹の出現期間は平均 18 カ
CTPL に大別されるが,CBPL はさらに組織学的な T
月となっている3).
細胞の浸潤パターンから bandlike(帯状浸潤型)CPCL
と nodular
(結節型)
CPCL に分けられる.一方,CBPL
は nodular パターンのみを示す(表 1)
.
2.疫
学
3.原因と臨床的特徴
CPL は原因不明の事も多いが,CBPL についてはそ
の発症要因として様々な外来刺激が関与している事,
また CTPL に関してもその病型ごとに異なる誘発,発
CPL に 関 し て わ が 国 で の 疫 学 的 報 告 は な い が,
症機序が分かってきている.また 近 年,acral pseu-
CBPL に関する欧米での報告では,男女比は約 2:1
dolymphomatous angiokeratoma of children や,pseu-
で,白人!
黒人比は 9:1 であるとされている1).また,
dolymphomaotus folliculitis が新たに CPL の範疇に入
266
皮膚科セミナリウム
第 24 回
偽癌
図 1 CPLの疾患スペクトラム
る疾患概念として認識されてきている4)5).原因別に
考えられている8).それ以外の金属製ピアスで生じる
見た CPL のスペクトラムを図 1 に示すとともに,以下
CPL においても,パッチテストでコバルト,ニッケル
に CPL の臨床・病理学的特徴について述べる.
等の陽性例が報告されており9),長期間の金属抗原と
の接触が CPL の発症要因と考えられる.
1)外来抗原
b)ワクチン
外来抗原刺入による CPL は基本的にいわゆる cuta-
ワクチン接種も CBPL の原因となる.Marubec ら10)
neous lymphoid hyperplasia(CLH)の臨床,組織像を
は肝炎ワクチン接種後の CBPL をまとめ,報告してい
取る.すなわち,臨床像は紅色の丘疹∼結節が単発す
る.それによると臨床像は単発もしくは多発の皮下結
る事が多いが,時に多発する6).組織学的には B リン
節で,白班を伴う例もあった.ワクチン接種後から発
パ球よりなるリンパ濾胞構造の周囲に T 細胞領域を
症までの期間はほとんどが 1 年未満(平均 3 カ月)で
伴う反応性の所見をとるが,非典型例も多い(図 2)
.
あった.病理学的には典型的な CLH の像であったが,
一方,接触抗原によるものは CTPL の形態を取る.
全例でワクチン刺入部に水酸化アルミニウムの沈着像
a)金属
が見られ,アジュバントとして用いられた水酸化アル
金製剤は CPL の原因物質として知られていて,過去
ミニウムが発症に関わっていると考えられる.
に金製ピアス,金製剤局注,金製の鍼治療などによる
c)その他の抗原刺激による CBPL
発症が報告されている7).金製剤が CPL を起こしやす
減感作療法の抗原刺入,異物,刺青などの抗原刺激
い理由として,金成分は皮膚に貯留し,マクロファー
ジを集積させる事で持続的な免疫反応を起こさせると
も CBPL の原因となる事が分かっている1).
3.Pseudolymphoma
267
3)ウイルス感染症
d)接触アレルギー
一方,接触アレルギーが原因で起こる CPL は Lym-
HTLV-1 による成人性 T 細胞白血病,EV ウイルス
phomatoid contact dermatitis と呼ばれる.原因物質と
によるバーキットリンパ腫やホジキンリンパ腫など,
しては金,ニッケルなどの金属のほか,ホルマリン,
リンパ腫とウイルス感染との関わりは深い16).リンパ
グルタールアルデヒド,パラフェニレンジアミン等が
腫を含む皮膚リンパ増殖性疾患とウイルス感染との関
11)12)
報告されている
.臨床像は搔痒を伴う全身性の丘
係についても様々な知見が得られつつある.
疹,紅斑局面で時に紅皮症を呈する.病理学的には,
a)HIV
真皮浅層に T 細胞主体のリンパ球の帯状に浸潤する
1995 年の Zhang らの報告以来17),HIV による CPL
像が特徴的であり,表皮内浸潤も見られることから,
の報告は約 20 例に上る.
臨床的には広範囲の局面ある
菌状息肉症(MF)との鑑別が問題になることがある.
いは紅皮症といった,MF やセザリー症候群に似た像
本態は抗原物質との長期間の接触による遅延型反応
をとる.また好酸球増多症を伴う事が多い.組織学的
(DTH)であり,抗原物質のパッチテストは陽性とな
には T 細胞が真皮乳頭層に帯状に浸潤する像を取り,
浸 潤 細 胞 が CD8 陽 性 で あ る 事 が 特 徴 的 で あ る18).
る.
HIV による CTPL の病因はよく分かっていないが,皮
膚病変中から分離された CD8 陽性細胞障害性 T 細胞
2)虫刺症,スピロヘーター感染症
a)Borrelia burgdorferi 感染
(CTL)が HIV-1 の gag,pol,env といったウイルス
Borrelia burgdorferi はスピロヘータ科に属し,野鼠
タンパクに対し特異的な細胞障害活性を持つ事19)20),
や小鳥などを保菌動物とし,マダニによって媒介され
また HAART 療法中に皮疹が改善した症例がある事
るライム病の病原体である.欧米では現在でも年間数
から18),HIV 特異的 CTL が反応性に増殖する事で臨
万人のライム病患者が発生し,社会的にも重大な問題
床像が形成されるのではないかと推察される.
となっている.
わが国でも 1986 年に初発例が報告され
b)ヘルペスウイルス
ているが,欧米に比べ症例数は少ない.Borrelia 感染に
Herpetic folliculitis は水疱形成を欠き,毛囊脂腺系
1)
よる CLH の頻度は約 1% と言われている .2004 年
での水痘―帯状疱疹ウイルス(VZV)再活性化が見ら
のオーストリアのグループ13)から報告された Borrelia
れる,帯状疱疹の稀な病型である.臨床像は疼痛を伴
による CBPL の 106 症例に対する検討では,病変部は
う紅斑局面で,水疱形成を伴う事無く治癒する.病理
ダニ刺傷部位に一致し,好発部位は乳房,耳介,陰部
学的には,毛囊,血管周囲の密なリンパ球浸潤であり
の順に多かった.血清抗体価はほとんどの症例で陽性,
時に CPL 様の像を取る.浸潤細胞は B,T 両細胞が見
PCR では約 3 分の 2 の症例に Borrelia DNA が検出さ
られるが,CD30 陽性細胞も見られることがある21).
れている.
また,毛囊脂腺部に核内封入体を持つ単核及び多核の
ウイルス感染細胞を認めるが,VZV 感染に特徴的な表
b)結節性梅毒
梅毒 2 期疹の特殊な症状として,結節性梅毒結節が
皮の変化は見られない
(図 3)
.Herpetic follicutitis が起
ある.臨床的に紅色局面を呈し,組織学的には真皮内
こる理由として,VZV は再活性化時に毛囊へ向かう比
にリンパ球,形質細胞,多核巨細胞,好酸球,組織球
較的太い有髄神経を利用するため,表皮細胞への感染
14)
が瀰漫性に浸潤する .
前に毛囊部での感染・炎症が起こるためと言われてい
c)疥癬その他の節足動物
る.実際に Muraki ら22)23)は,帯状疱疹の初期病変病理
疥癬による結節性病変は臨床的には紅色から茶褐色
像でウイルスタンパク及び再初期遺伝子(IE63)の毛
で搔痒を伴い,疥癬治療後も長期間結節が残るのが特
囊及び脂腺部での存在を示している.
徴的である.原因は虫体の死骸による DTH とされ,病
また,帯状疱疹皮疹部では治癒後に肉芽腫性毛囊炎
理学的には真皮浅層もしくは深層の血管周囲の T 細
や CLH が発症する事も知られている.この原因とし
胞優位のリンパ球,組織球の強い浸潤像であり,形質
ては VZV のエンベロープ糖タンパクが感染後も存在
細胞や好酸球が見られる事もある.虫体,虫卵が病変
するために起こる DTH 反応と考えられている24).
部に見られる事もあるが,検出できない事の方が多
15)
単純ヘルペスウイルス(HSV)感染による Herpetic
い .他の節足動物による CPL も同様の臨床,病理組
folliculitis や CPL も存在するが,VZV によるものと比
織像を取る.
べその報告は非常に少ない.これは HSV が再活性化
268
皮膚科セミナリウム
図 2
a
.鼻部に生じた CBPL.
b.線状配列を呈した CBPL.
c
.bの病理組織像(HE染色,弱拡大像).真皮浅層か
ら深層にかけ境界明瞭,結節状の細胞浸潤がみら
れる.
d.強拡大像.小型のリンパ球を主体に形質細胞,組
織球が混在する.
(b,c
,dは文献 6より引用)
第 24 回
偽癌
図 3 Her
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.臨床像.左側頭部の結節.水疱は認めない.
b.病理像.真皮浅層から深層にかけ,血管及び皮膚
付属器周囲に密なリンパ球浸潤が見られる.
c
.毛嚢部にすりガラス状の封入体を持つ VZV感染細
胞及び,変性した細胞が見られる.
時に,表皮へ直接向かう細い無髄神経を経由するため
薬 に よ る も の は Anticonvulsant-induced pseudolym-
毛囊炎を起こしにくい事や,HSV には宿主の免疫反応
phoma syndrome(APS)
,Anticonvulsant hypersensi-
を回避するための様々なメカニズムがあり,VZV に比
tivity syndrome と呼称されている27)28).APS は稀な
べ局所の強い炎症反応を起こしにくいのではないかと
疾患でありその発症率は約 0.1∼0.01% とされる.薬剤
いった事が考えられる25).
投与後数週間から 3 カ月後に,発熱(30∼40℃)
の後,
c)その他のウイルス
皮膚症状が出現する.皮疹は麻疹様の紅斑丘疹が限局
伝染性軟属腫(MC)ウイルス感染症においても CPL
性あるいは全身性に広がる(図 4)
.また顔面浮腫も出
の病理像を取る事がある26).組織学的には molluscum
現する事が多い.組織学的には血管周囲の密なリンパ
body 直下の真皮に異型リンパ球を含んだ大小さまざ
球浸潤像で,T 細胞性のものは帯状浸潤型,B 細胞型性
まなリンパ球の浸潤が見られる.表皮向性は見られな
のものは結節型の組織像を取る事が多い.また MF
い.浸潤リンパ球は T 細胞優勢で,CD30 陽性 T 細胞
の様に異型リンパ球が表皮内に微小膿瘍を作る事もあ
も認められる.リンパ球以外にも形質細胞,好酸球及
る.血液学的所見として白血球増多,好酸球増多,異
び異物巨細胞が見られる事もある.
型リンパ節出現等がある.全身症状としてはリンパ節
腫脹があるが,その組織像は良性リンパ節過形成もし
4)薬 剤
くは偽リンパ腫の像を取る.また肝脾腫,肝機能障害
臨床的,組 織 学 的 に CPL の 像 を 取 る 薬 疹(Lym-
を合併する事が多く,肝機能障害が高度な場合は致死
phomatoid drug eruption)は過去に多数の薬剤で報告
的となる.この様に,APS は原因薬剤,臨床経過,病
されているが(表 2)
,その中でもフェニトイン,フェ
理学的所見ともに Drug-induced hypersensitivity syn-
ノバルビタール,カルパマゼピンに代表される抗痙攣
drome(DIHS)と酷似しているが,
Lymphomatoid drug
3.Pseudolymphoma
269
図 4 カルパマゼピンによる DI
HSの臨床像.全身の
癒合性紅斑
図 6
a
.右頬部の CBPL,PDT治療前.
b.PDT治療後.病変部は消失している.
c
.治療前の組織像.真皮内のリンパ濾胞様構造.
d.CD2
0陽性細胞は胚中心に局在.
e
.CD8陽性細胞は周辺に局在.
(文献 3
9より引用)
では UVB に対する最小紅斑量(MED)が低下してい
るが,UVA や可視光線に対する MED が低下している
図 5 Act
i
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et
i
cul
oi
dの臨床像.項部の苔癬化局
面.
例もあり,作用波長は広い領域に及ぶ.AR での光線過
敏の原因は不明であるが,光アレルギー性接触性皮膚
炎やアトピー性皮膚炎が先行病変として存在する例も
eruption と,HHV-6 をはじめとするヘルペスウイルス
ある事から29)30),内因性の光アレルゲンあるいは外因
再活性化との関連については今のところ報告は無い.
性アレルゲンによる慢性の DTH がその本態であると
おもわれる.
5)光 線
光線性類細網症(Actinic retiduloid,AR)は 1969
6)その他の病型
年 Ive ら2)により提唱された,慢性の高度の日光過敏と
その他,原因不明ではあるが CPL をきたす疾患概念
ともにリンパ腫様症状を呈する疾患である.中年から
として確立されているもの,新しい疾患概念としてと
老年男子に好発し,著明な光線過敏状態を示す.臨床
らえられてきているものを以下に示す.
症状は顔面・項部・手背などの露光部にみられる搔痒
a)Lymphomatoid papulosis(LyP)
感の強い浸潤性の紅斑,苔癬化局面であり,皮疹が拡
LyP は慢性の経過をとり,自然治癒傾向のある多発
大すると全身のリンパ節腫脹と供に紅皮症となる事も
性の丘疹結節である.臨床的には良性だが病理組織学
ある(図 5)
.病理学的には血管周囲または帯状のリン
的にはリンパ腫を思わせる異型細胞が浸潤するのが特
パ球浸潤であり,表皮向性はあっても軽微である.浸
徴である31).
潤細胞は CD8 陽性 T 細胞が優位である.光線テスト
臨床的には数 mm から数十 mm の多発する紅色丘
270
皮膚科セミナリウム
第 24 回
偽癌
表 2 Lymphomat
oi
ddr
uger
upt
i
onの原因薬剤(文献 30より引用,一部改編)
分類
薬剤
抗てんかん剤
フェニトイン,カルパマゼピン,ヒダントイン,トリメタジオン,フェノバルビタール,
プリミドン,フロナゼパム
精神神経用剤
クロルプロマジン,チオリダジン,塩酸ブロメタジン,塩酸アミノトリプチン,炭酸リチ
ウム,ロラゼパム
血圧降下剤
アンジオテンシン変換酵素阻害剤
カプトプリル,マレイン酸エナラプリル,塩酸ベナゼプリル
β遮断剤
アテノロール,塩酸ラベタロール
Ca拮抗剤
塩酸ベラパミル,塩酸ジルチアゼム
サイアザイド系高圧利尿薬
ヒドロクロロサイアザイド
免疫抑制剤
シクロスポリン,メソトレキセート,アザチオプリン
抗リウマチ剤
金チオリンゴ酸ナトリウム,サリチル酸ナトリウム,ペニシラミン,非ステロイド系抗炎
症剤
高尿酸血症治療剤
アロプリノール
抗生物質
ペニシリン系抗生物質,ミノサイクリン,ダブソン,ジアフェニルスルフォン
合成抗菌剤
スルファメトキサゾール・トリメトプリム
サルファ剤
スルファメトキサゾール
抗ヒスタミン剤
ジフェンヒドラミン
H2受容体拮抗剤
シメチジン,ラニチジン
不整脈治療剤
塩酸メキシチレン,塩酸プロカインアミド
局所治療剤
Lメントール
性ホルモン剤
エストロゲン,プロゲステロン
高脂血症治療剤
ロバスタチン
抗 HI
V薬
ジダノシン
白血病治療薬
メシル酸イマニチブ
疹として初発する.皮疹ははじめは表面平滑だが,次
関わっているのではないかという仮説が提唱されてい
第に痂皮,壊死を伴う様になり,数週間で色素沈着を
る32).
伴う瘢痕を残して治癒する.発症部位は体幹四肢が主
体であるが,体のどの部分でも発症しうる.
b) Acral pseudolymphomatous angiokeratoma of
children(APACHE)
病理学的には,A,B,C の 3 型に分類され,A 型は
APACHE は angiokeratoma に類似し,四肢片側の
中から大型の異型リンパ球が好中球,リンパ球,組織
末梢に表面やや角化性の丘疹が多発,集簇する特徴的
球とともに真皮に楔状に浸潤する像が見られる.B 型
な臨床像を持つ4).病理学的には表皮の過角化,
錯角化
では小から中型の異型リンパ球が真皮に帯状に浸潤,
と真皮浅層から中層までの密なリンパ球主体の細胞浸
一部は表皮向性を持ち,MF の組織像に類似する.C
潤で T,B 細胞が混在する.表皮基底層の液状変性や
型では大型の異型細胞が真皮に瀰漫性に浸潤し,組織
シバット小体が見られる例もあり,苔癬型反応の一種
学的には未分化大細胞リンパ腫(ALCL)に類似する.
ではないかとも言われている33).
また T cell receptor(TCR)遺伝子の再構成も高率に認
められるため,
CTCL との鑑別がしばしば問題となる.
c)Pseudolymphomatous folliculitis(PLF)
PLF は,毛囊脂腺系に強い細胞浸潤が見られる CPL
実際,LyP が MF や ALCL に合併あるいは移行する例
の一亜型である.Arai ら34)は PLF の 15 例について臨
は稀ではないが,そのメカニズムとして,LyP に浸潤
床,組織学的所見をまとめている.それによると PLF
している CD30 陽性細胞は制御性 T 細胞として機能
の臨床的特徴は,顔面に好発する単発性の紅色小結節
し,LyP の自然消退及び再発,また ALCL への移行に
で,生検後急速に退縮する.好発年齢や性差はなく,
3.Pseudolymphoma
271
図 7 CD30皮膚リンパ増殖症鑑別のアプローチ(文献 38を改編)
外傷,虫刺傷などの先行病変も無い.病理学的には ac-
weber ら37)は Borrelia 感 染 に よ る CLH と FCCL,
tivated pilocebasceous units とよばれる不整に拡大,
MZL の病理学的差異を検討している.それによると,
変形し,境界不明瞭な壁を有する毛胞組織の T-cell as-
CLH と FCCL の 鑑 別 に は 組 織 学 的 に Tingible body
sociated dendritic cell の浸潤が見られる事が特徴的で
macrophage,濾胞内の MIB-1 陽性細胞,濾胞内の Bcl-
ある.
2 陽性細胞の有無,また PCR による IgH 遺伝子再構成
4.リンパ腫との鑑別
の 確 認 が 鑑 別 に 有 用 だ と 結 論 づ け て い る.表 3 に
CBPL と CBCL の鑑別を示す.
一般に CPL と皮膚リンパ腫との鑑別は臨床経過及
び病理組織像の両者を加味して行われるが,症例に
b)CTPL
よっては免疫組織化学や遺伝子再構成の有無の検索お
Bandlike な病理組織像を持つ CTPL の場合,臨床経
よび長期間の臨床経過の観察が必要な例もある35).以
過と供に,病理学的に海綿状態や表皮向性の有無,ま
下に,CBPL,CTPL に分けリンパ腫との鑑別のポイ
たリンパ球表面マーカーや TCR 遺伝子の再構成の有
ントを述べる.
無によって鑑別が行われる.CD30 陽性細胞の浸潤が
多い LyP はしば し ば ALCL と の 鑑 別 が 問 題 と な る
a)CBPL
が,最近,CD30 陽性皮膚リンパ増殖症に対する診断の
CBPL は顔面,頸部に単発し,小型である事が多いの
ためのアプローチが提唱されている38)39)
(図 7)
.
に対し,CBCL は大型で,潰瘍形成を伴う.また CBCL
には発症前に何らかの誘因がある事や,自然退縮傾向
5.治
療
があるが,CBCL にはそれらがない.病理学的に問題と
CTPL の場合,原因がはっきりしているもの(Lym-
なるのは,濾胞構造を持つリンパ腫である primary cu-
phomatoid drug eruption,AR)については原因の除
taneous follicle center cell lymphoma(FCCL)や,pri-
去とともにステロイド剤の内服・外用などが行われ
mary cutaneous marginal zone lymphoma(MZL)with
る.限局性の病変(CLH,LyP)の場合,確立された治
reactive germinal center と の 鑑 別 で あ る が36),Lein-
療法はなく,ステロイド剤の外用,局注,液体窒素療
272
皮膚科セミナリウム
好発部位
皮疹
CBCL
頭頚部
頭部,体幹
小型,限局性
大型,潰瘍形成
れる.最近ではタクロリムス軟膏が奏効した例も報告
されている40).また,光線力学的療法(Photodynamic
therapy,PDT)
は皮膚悪性腫瘍以外に,皮膚リンパ腫
やサルコイドーシスといった疾患に対しても応用され
てきているが,我々は顔面の CBPL に対し 5-アミノレ
組織所見
構築
浸潤細胞
芽中心形成
偽癌
法,インターフェロン療法や,外科的切除などが行わ
表 3 CBPLと CBCLの鑑別(文献 35より引用,
改編)
CBPL
第 24 回
ブリン酸(5-ALA)外用を用いた PDT が奏効した症
t
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bot
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m heavy
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例41)を経験している(図 6)
.
65%
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20%
(-)
を繰り返し経過が遷延したり,悪性リンパ腫への移行
28%
94%
研究が進み,CPL から皮膚リンパ腫移行への inducer
自然退縮
緩徐に進行
が明らかになれば,癌化のメカニズム解明にも寄与す
付属器の破壊
t
i
ngbl
ebo
dy
6.おわりに
CPL についてその発症要因別の臨床・組織像,また
免疫組織化学的所見
遺伝子再構成
経過
鑑別診断及び治療法について概説した.CPL は炎症性
疾患であるが,LyP を初め一部の病型では縮小や再発
があるという特徴的な側面を持つ.今後のこの分野の
るものと思われる.
文
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