米国 IT 業界動向 2007 年 6 月 JETRO, New York 1.企業動向 (1

米国 IT 業界動向 2007 年 6 月
JETRO, New York
1.企業動向
(1)アップルコンピュータ
アップルは、携帯電話機 i フォンのバッテリが当初発表したより 3 時間長く持つことを
明らかにした。その結果、通話時間(トーク・タイム)は最長で 8 時間になった。また、
ネット使用時間は 6 時間、動画再生時間は 7 時間、音声再生時間は 24 時間となった。専
門家は、バッテリ寿命の延長によって、需要が高まると見ている。
同社は、また、サード・パーティによる i フォンのアプリケーション開発も認めて行く。
これまでは、セキュリティ上の問題から自社以外のプログラムをサポートしない方針を打
ち出していたが、愛好者の間から不満の声が出たため、これに対応する格好となった。
【6 月 12 日】
スティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)は、自社製ブラウザ「サファリ」をウィ
ンドウズ搭載パソコン向けに無償提供していく。サファリをより多くのユーザーに利用し
てもらうことによって、最終的にマックへの乗り換えを狙う考え。ブラウザ市場シェアは、
マイクロソフトのインターネット・エクスプローラ(IE)が 78%でダントツのシェアを誇
る。しかし、モジラの「ファイアー・フォックス(15%)」やサファリ(5%)も追い上
げている。【6 月 12 日】
アップルは、オンライン映画レンタル配信サービスをめぐり、米大手映画製作会社と協
議している。すでに、同件に関してウォルト・ディズニーやバイアコム傘下のパラマウン
トと配信契約を結んだという。他の映画会社は、DVD の販売不振を懸念し、これまでアッ
プルとの提携を渋っていたが、レンタル・サービスとなると、影響が少ないため契約に積
極性を示すとの見方もある。アップルは、サービスの開始時期を今秋に予定している。
【6 月 11 日】
アップルの新製品「アップル TV」の利益率は、同社としては珍しく非常に低いことが、
民間調査会社の調べでわかった。調査会社 i サプライは、アップル TV 製造に使用する部
品や資材のコストを 237 ドルと見積もっている。これに対して小売り販売価格は 299 ドル
のため、粗利益が約 20%の 62 ドルになる。同社平均粗利益率の 50%を大きく下回ってい
る。
一方、アップルは、グーグル傘下のユーチューブが配信する動画をアップル TV 経由で
テレビ再生できるようにする。同社はこの提携発表に先立ち、内蔵ハードディスク・ドラ
イブ(HDD)の容量を 160 ギガバイトに増やしたアップル TV の発売を発表した。価格は
399 ドル。【6 月 7 日、5 月 31 日】
アップルは、英音楽大手の EMI グループが不正コピー防止技術 DRM の組み込みの撤廃を
発表したのを受けて、DRM を取り除いた楽曲のオンライン販売を開始したことを明らかに
した。これにより、i チューンズで購入した曲を他の携帯プレーヤで聞く事が可能になる。
ただし、1曲当たりの価格は 1.29 ドルと、従来の 0.99 ドルより割高となっている。【5
月 30 日】
(2)デル
デルは、世界各国の小売店鋪で新型パソコンを販売していく。消費者市場において巻き
返しを図るのが狙い。また、マイケル・デル最高経営責任者(CEO)によると、消費者市
場での販促強化に向けて、パソコンのデザインを最優先し、投資額を 50%以上増やしてい
くという。折しも、同社は、世界のパソコン販売でトップの座を仇敵ヒューレット・パッ
カード(HP)に奪われたばかり。専門家は、直販事業モデルに依存してきた同社が、在庫
を抱えるという問題をどう解決していくのかが成功のカギと見ている。同社は先に、小売
り世界最大手ウォルマート・ストアーズの店頭でパソコンを販売すると発表したばかり。
ウォルマートは北米を中心に約 3500 店舗で、デル製デスクトップ型パソコン2機種を販
売する。価格は 700 ドルから。【6 月 11 日、5 月 26 日】
デルの 2-4 月期の売り上げは予想を上回り微増となった。部品価格の低下や平均販売価
格の上昇が奏功した。同社は業績が悪化するなか、リストラを進めており、その一環とし
て今後1年間で全従業員の約 10%に当たる 8800 人程度を削減する計画を明らかにしてい
る。
また、関係筋の話によると、2003 年から参入した液晶テレビ市場からも撤退する。【6
月 7 日、1 日】
(3)IBM
IBM は、スウェーデンの企業向けソフト会社テレロジックを現金 52 億クローナ(7億
4869 万ドル)で買収する。セキュリティ・ソフトの強化が狙い。同社は、カリフォルニア
州に米国本社を持ち、20 カ国に 900 人の従業員を抱えている。
また IBM は 先に、同様にウォッチファイアー(Watchfire)を買収している。
IBM は 2001 年以来、42 社のソフトウェア会社を買収しており、今回のテレロジックが
43 社目となる。今後も 2010 年までに利益の半分をソフト事業で賄うよう買収戦略を進め
て行く考えだ。【6 月 12 日、11 日】
(4)ヒューレット・パッカード(HP)
1-3 月期におけるノート型パソコン(ラップトップ)の世界市場シェアは、出荷ベース
で HP が 3 四半期連続で 1 位 となった。米調査会社のディスプレイサーチが発表した。デ
ィスプレイサーチの報告によると、同期における HP の出荷台数は 460 万台で、19.9%の
シェアを占めた。一方、2 位のデルは 4%増の 320 万台で、シェアは 14.0%にとどまった。
【6 月 15 日】
HP は、米航空宇宙局(NASA)と技術サービスの契約を結んだ。契約期間は 7 年間で、
規模は最大 56 億ドル相当になる見込み。契約により、同社はデスクトップ型パソコンや
ワークステーション、プリンタなどを納入していく。【5 月 24 日】
(5)インテル
インテルは、新興企業のジーバ・デザイン(Ziba Design)と提携し、ファッショナブル
かつ世界最薄のノート型パソコン(ラップトップ)を開発中だ。製品は、「モバイル・メ
トロ」というコード名で、厚さは 0.7 インチ以下。これは、モトローラの極薄携帯電話機
「レイザー(Razr)」に比べて 4 分の 1 インチほど厚い程度。重量は 2.25 パウンドとなっ
ている。もう1つの特徴は、ワイヤレス技術によるネットへの常時接続。同機種では、
Wi-Fi ほか、携帯電話網や WiMax にも接続できる。また、ディスプレイには、E インクの
開発した素材を利用する。E インクは、インテル投資部門のインテル・キャピタルが出資
している。【5 月 29 日】
(6)マイクロソフト
マイクロソフトは、デスクトップ向け Linux「リンスパイア(Linspire)」を供給するリ
ンスパイアに、自社の技術をライセンス供与していく。この提携により、マイクロソフト
は、自社が保有する VoIP 関連の特許をはじめ、ウィンドウズ・メディア・ファイルズや
トゥルータイプ・フォントのソース・コードを提供する。これにより、リンスパイアの利
用者は、ウィンドウズ・ライブ・メッセンジャー利用者と音声チャットができるようにな
る。さらに、ウィンドウズ・メディアのファイルを再生できる。また、リンスパイアは、
マイクロソフトの検索エンジンを標準搭載するほか、オープン XML とオープン・ドキュ
メント・フォーマットの互換性を確立していく。【6 月 16 日】
グーグルが、「ウィンドウズ・ビスタ」の検索機能が他社検索サービスを使いにくくし
ていると米司法省に申し立てたの受けて、マイクロソフトがビスタの機能を一部修正して
いたことが明らかになった。一方、マイクロソフトは、グーグルによるダブルクリック買
収が独禁法に抵触すると批判しており、双方の競合はより一層の激しさを増しているよう
だ。【6 月 11 日】
マイクロソフトは、スクリーン付きテーブル「マイクロソフト・サーフェイス
(Microsoft Surface)」を出荷する計画だ。同社の「デジタル家具(digital furniture)」の
コンセプトを反映させた初の製品となった。詳細は明らかにされていない。製品の天版部
分には、30 インチのディスプレイが埋め込まれている。ディスプレイに触るだけで操作で
きる。使い方としては、例えば、Wi-Fi 対応のデジタル・カメラを天版ディスプレイに置
くと、テーブルがカメラを認識する。後は、スクリーンに触って操作するだけでデジタル
画像やデジタル動画をダウンロードし、それらを天版に映し出せるという。また、製品は
バー・コードや ID カードを読み取れる。会員カードなどにチップを埋め込み、同製品に
読ませるといった用途も考えられる。【5 月 31 日】
(7)グーグル
グーグルとインテルは、「クライメート・セイバーズ・コンピューティング・イニシア
チブ(Climate Savers Computing Initiative)」を発足、パソコン・メーカーと消費者に省エ
ネ技術を積極的に採用するよう働きかけていく。このイニシアチブでは、パソコンおよび
サーバ・システムの消費電力削減量に年間目標を設定していく。すでに、マイクロソフト
やデル、ヒューレット・パッカード、IBM、アドバンスド・マイクロ・デバイシズ
(AMD)、サン・マイクロシステムズ、世界自然保護基金(WWF)、米環境保護局
(EPA)が参加している。参加企業は、電力効率目標を満たすシステムや部品の生産に努
めなければならない。また、パソコン購入企業は、省電力製品やそれを可能にするソフト
を購入・使用しなければならない。【6 月 13 日】
グーグルは、検索エンジン利用者の検索履歴保存期間を、現行の 24 ヵ月から 18 ヵ月に
短縮する方針を打ち出した。欧州連合(EU)のプライバシー監視団体「アーティクル
29・データ保護ワーキング・パーティー(Article 29 Data Protection Working Party)」宛て
の書簡で明らかにした。ただし、書簡の中で、データ保存期間のこれ以上の短縮を「固く
拒否する」とも述べている。【6 月 13 日】
グーグルは、オンライン顧客情報管理(CRM)サービスを提供する Salesforce.com と提
携した。Salesforce.com の製品に、自社の検索連動型広告サービスである「アドワーズ」を
組み込んで提供する。これにより、Salesforce.com のサービスを活用する企業がアドワーズ
を使ってネット広告を提供するのが容易になる。
グーグルは同時に、ソフト会社のピークストリーム(PeakStream)を買収する計画を明
らかにした。同社のツールは、グラフィック・プロセッサ・ユニットを含む高速マルチコ
ア・プロセッサ向けのソフトを開発するのに役立つ。【6 月 7 日】
グーグルは、ファッションとライフ・スタイルの専門サイト、グラム・メディア(Glam
Media)と複数年にわたる契約を結んだ。提携により、グーグルはグラムとリッチ・メデ
ィア広告の掲載を手がけて行く。また、グラムが保有するディスプレイ広告および動画広
告を部分的に販売していく。グーグルはリッチ・メディア広告市場への参入を狙っていた
が、その意味でグラムは、格好の提携相手と言えそうだ。調査会社コムスコア・メディ
ア・メトリックス(comScore Media Metrix)によると、グラムは 4 月、自社サイト
(Glam.com)および 300 以上の提携サイトを合わせ、米国内で 1220 万人の新規訪問者
(unique visitors)を記録している。【6 月 5 日】
グーグルは、携帯電話向けアプリケーションを拡大していく方針を発表した。まず、世
界に 20 億人のユーザーを抱える携帯電話市場向けに、周辺サービスおよび広告事業を展
開する。さらに、開発者が共有できるプラットフォームの構築やアプリの開発に向けて通
信事業者と提携していく方針も明らかにした。一方、関係筋の話によると、同社は将来的
に携帯電話向け OS を独自に開発する計画もある模様。【6 月 5 日】
グーグルは、RSS フィードの管理や広告サービスを手がける新興企業のフィードバーナ
ー(FeedBurner)を買収する。同社は現在、42 万 2000 の RSS 発行者が手がける 72 万 1000
件のフィードを管理している。RSS フィードとは、ウェブサイトが更新情報を RSS(RDF
Site Summary あるいは Rich Site Summary)形式のデータで提供する。RSS は主にブログの
更新通知に利用されている。【6 月 5 日】
グーグルは、オフライン時に電子メールやカレンダーといったウェブ・サービスを操作
できる「グーグル・ギアズ(Gears)」の開発を進めている。今後は、ギアズの技術をオー
プン・ソース化して、他のソフトウェア・メーカーが改善のために利用できるようにして
いく考えだ。同技術は、すでにアドビ・システムズが搭載を予定している。また、携帯電
話用ブラウザを開発するノルウェイのオペラ・ソフトウェア、ブラウザを提供するモジラ
も協力している。【5 月 31 日】
連邦取引委員会(FTC)は、グーグルによるダブルクリック買収の調査を開始した。独
占禁止法の抵触が焦点となるが、同社に対してすでに 2 回目の情報提供を要請した模様。
同買収については、ネットおよびメディ業界から慎重な検証を要請する声があがっていた。
また、消費者団体からは、ダブルクリックの買収によって、膨大な量の消費者動向情報が
1 社に集中することが懸念されている。【5 月 30 日】
グーグルは、セキュリティ・ソフト会社、グリーンボーダー・テクノロジーズ
(GreenBorder Technologies)を買収した。買収金額などの詳細は明らかにされていない。
グリーンボーダー社は電子メールやウェブ利用者を不正なコードから保護する技術を開発
している。具体的には、ユーザーがウェブを閲覧するごとに一時的な仮想セッションを構
築し、閲覧終了と同時にデータを廃棄する仕組みだ。【5 月 30 日】
主な企業の決算報告:
企業名
デル
四半期売上高
146.22億ドル
前年同期比
2.80%
2. パーソナル・コンピュータ(PC)と OS
四半期純益
7.59億ドル
前年同期比
-0.30%
(1)ソフト会社クリアスプリング・テクノロジーズ(Clearspring Technologies)は、NBC の
ウェブサイト向けにニュースおよびスポーツのビデオを扱うウィジェットを開発すること
で合意した。ウィジェットとは、ウェブサイトに組み込んで使うプログラムの総称。最近
では、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)サイトなどでも利用されている。
クリアスプリングのウィジェットは、マイスペースやフェイスブック、グーグルとの互換
性があるのが特徴だ。【6 月 13】
(2)ゼネラル・ダイナミクス・アイトロニクス(General Dynamics Itronix)は、携帯機器の
長所を持つ小型パソコンを 9 月に市場に投入する。新製品「ゴーブック(GoBook)MR1」は重さ約 2 ポンドで、サイズは 6×4×1.5 インチと、ジャケットのポケットに収納でき
る大きさ。液晶モニタは 5.6 インチで、OS に「ウィンドウズ XP プロフェッショナル」を
採用する。ビスタ搭載版は、年末にも発売される予定。同製品はまた、インテル製プロセ
ッサ「コア・ソロ U1400」を採用。1 ギガバイトのメモリほか、40 ギガバイトのハードデ
ィスクを搭載する。オプションでフラッシュメモリに交換することも可能だ。【6 月 11
日】
(3)インテルと台湾のマザーボードメーカー、アスステック・コンピュータは、格安ノート
型パソコンを開発していく。製品は画面を小さくし、低価格のプロセッサを搭載すること
で 199〜299 ドルで販売していく。製品は、アスステックのブランドとして 7〜8 月から出
荷する予定。【6 月 7 日】
(4)携帯情報端末(PDA)メーカー大手のパーム(Palm)は、スマートフォンと連動する
Linux ベースの携帯機器「フォレオ(Foleo)」を発表した。同製品は、10 インチのスクリ
ーンやフルサイズのキーボードを備え、ブルートゥースや Wi-Fi 機能を内蔵する。スマー
トフォンと連動して利用でき、電子メールの送受信やファイル編集を簡単にできる。パー
ムにとって、リナックス対応製品はフォレオが初めてとなる。【5 月 31 日】
3.インターネットとメディア・ビジネス
(1)ビデオ・レンタル最大手ブロックバスターは、競合のオンライン業者、ネットフリック
スより格安のオンライン DVD レンタル・サービスを開始した。新サービスでは、1 度に 3
枚の DVD をレンタルできるプランで月額 16.99 ドルとなっている。また、月に最高 2 枚ま
でレンタルできるプランの最低料金は 4.99 ドルと、ネットフリックスの 14.99 ドルより割
安。さらに、ブロックバスター店内で映画やゲームをレンタルできるクーポン(月 1 枚)
を提供することで差別化を図っている。ブロックバスターはまた、ネットで借りた DVD
を店頭で返却した顧客を対象に、店内無料レンタル・サービス「トータル・アクセス・プ
ラン」を提供している【6 月 15 日】
(2)動画配信サービス大手ユーチューブは、違法にアップロードされた動画を識別する新技
術を近く導入する計画だ。これには、タイムワーナーとウォルト・ディズニーの両メディ
アが協力する。技術は、「ビデオ指紋」と呼ばれるもので、グーグルの技術者らが開発し
た。【6 月 12 日】
(3)米モバイル広告市場では、新興企業が相次ぎ参入し新たな競争が起こりつつある。さら
に、それらの新興企業を買収して同市場への本格参入を狙う大企業も活発に動き始めた。
例えば、タイムワーナー傘下の AOL は、出版社および広告主向けのネットワークを提供
するサード・スクリーン・メディア(Third Screen Media)を買収した。また、マイクロソ
フトもフランスのスクリーントニック(ScreenTonic)を買収しているほか、ヤフーも新興
企業数社に目をつけている。一方、市場が未成熟ということもあり、新興企業も相次ぎ参
入している。例えば、若い携帯電話利用者層をターゲットにしたミレニアル・メディア
(Millennial Media)のほか、モバイル広告マーケットプレスのアドモブ(AdMob)、携帯
電話用ゲームに広告を組み込むグレイストライプ(Greystripe)などがある。調査会社 e マ
ーケターによると、米広告代理店がモバイル広告に費やす額は 2006 年の 4 億 2100 万ドル
から 2011 年には 50 億ドルに達する見通しだ。【6 月 11 日、8 日】
(4)ネット配信技術およびサービスを提供するアカマイ・テクノロジーズ(Akamai
Technologies)は、ネットのトラフィック状態を速報で伝える無料サービスを提供する。
例えば、ネット接続が通常より遅い場合、同サービスを使って、ネットの接続状況を把握
できる。原因が全体のネットワークなのか、ISP に問題が発生しているのかなどが追跡で
きるという。サービスは、世界規模でネットのトラフィックをリアル・タイムに測定する。
【6 月 7 日】
(5)ワーナー・ミュージック・グループは、中古 CD 交換サイト Lala.com と楽曲配信で提携
した。同社のサイトを通じて、ワーナーが保有する楽曲の大半を無料のストリーミング配
信サービスを提供していく。ワーナーは、無料配信が楽曲販売を押し上げると判断したよ
うだ。ただし、Lala.com はワーナーに対し、利用者が曲を聴くたびにロイヤルティを支払
う。Lala.com はまた、他の大手レコード会社との間でも同様の提携に向けて協議中だ。
【6 月 7 日】
(6)英音楽大手 EMI グループは、グーグルと広範なライセンス契約を結んだ。金額などの
詳細は明らかにしていない。契約により、ユーチューブの利用者は、EMI が著作権を保有
する音楽ビデオの合法的なダウンロードが可能になる。すでに、ワーナー・ミュージッ
ク・グループ、ユニバーサル・ミュージック・グループ、ソニーBMG ミュージック・エ
ンタテインメントは、同社と契約を結んでいた。【6 月 1 日】
4.電子商取引
(1)年間成長率 25%超の急成長を遂げてきたオンライン小売市場がここにきて減速してい
る。市場調査会社フォレスター・リサーチは、オンライン書籍販売の伸び率が、昨年の約
40%増から今年は 11%増に鈍化すると予想している。また、アパレル販売は 61%増から
21%増に、同様にペット用品販売が 81%増から 30%増に減速する見通しだ。フォレスタ
ーは調査対象となった 24 分野のうち、18 分野で売上成長率が減速すると見ている。こう
した動きを反映するかのように、オンライン事業者が実在店舗での販促を強化している。
ジュピター・リサーチも、オンライン市場全体の伸び率が、2004 年の 25%増から今後 10 年
以内に年間 9%増に落ち込むと見ている。【6 月 18 日】
(2)e ベイは、グーグルとの広告契約を破棄した。これにより、グーグルは、最大規模の広
告顧客を失ったことになる。事の発端となったのは、グーグルが独自に立ち上げた決済シ
ステム「チェックアウト(Checkout)」。e ベイは、すでにペイパル(PayPal)を提供して
いたため、チェックアウトが市場で直接競合する。
e ベイはまた、ラジオの広告放送枠を販売するビッドフォースポッツ(Bid4Spots)との
提携で、2300 に上るラジオ局の広告枠の競売販売を開始した。「メディア・マーケットプ
レイス」というサービスを介して販売していく。ここでも市場に参入しているグーグルと
直接競争することになる。e ベイは、「メディア・マーケットプレイス・フォー・ケーブ
ル TV」を介してテレビ広告枠の販売事業にも進出しようとしている。【6 月 14 日、7
日】
(3)e ベイは、ウェブサイトのブックマークを利用したソーシャル・ネットワーキング・サ
ービス(SNS)サイト、スタンブルアポン(StumbleUpon)を 7500 万ドルで買収する。ス
タンブルアポンでは、ユーザーがウェブサイトに対する好き嫌いを表明し、ネットワーク
上の友人とその情報を共有できる。現在 250 万人近くの会員がいる。【5 月 31 日】
5.半導体
(1)イーストマン・コダックは、デジカメの感光度を向上させるセンサー技術を開発した。
これにより、フラッシュがほぼ不要になるという。【6 月 15 日】
(2)イスラエルの新興半導体メーカー、アルテア・セミコンダクター(Altair
Semiconductor)は、ベンチャー・キャピタル(VC)から第 2 ラウンドの資金調達として
1800 万ドルを調達した。同社の技術は、WiMax を利用することで移動中でもネットに常
時無線接続できるチップの実現を目指す。時速 65 マイルで走行する車でネット常時接続
を維持するのはこれまで技術的に困難だった。【6 月 13 日】
(3)携帯電話機メーカー最大手ノキアは、半導体メーカーのクアルコム(Qualcomm)を特
許侵害で逆提訴した。同社は、損害賠償と特許侵害製品差し止めによる救済を求めている。
争点となっている製品は、クアルコムのスマートフォン用半導体セット製品「ブリュー
(Brew)」と同テレビ用「メディアフロー(MediaFlo)」。ノキアは販売の差し止めを求
めている。一方のクアルコムは 4 月、GSM 対応端末に関する特許侵害でノキアを訴えてい
る。
クアルコムはまた、ブロードコムとも訴訟を起こしているが、ITC は先日、問題のクア
ルコム製半導体を実装した携帯電話端末の輸入禁止を命じた。対象となる電話機は、ブロ
ードコムの特許を侵害していると判断されたクアルコム製チップを搭載した携帯電話機。
【6 月 12 日、8 日】
(4)シリコンバレーの新興企業アイ・ファイ(Eye-Fi)は、無線通信回路とメモリチップを
小型カード 1 枚に収めることで、利用者のパソコンや指定の共有サイトにデジタル画像を
自動無線転送できるサービスの提供を開始した。ただし、利用者は、ソフトやウェブサイ
トの各種設定を行う必要がある。製品は、今年秋に同カードを発売する予定で、価格につ
いては約 100 ドルを考えているという。【6 月 11 日】
(5)2007 年における世界半導体市場の総売上高は、以前の予想を下回る前年比 2.5%成長の
2692 億ドルににとどまる見込みだ。調査会社大手ガートナーが報告した。同社は、DRAM
チップの平均販売価格が下がり続け、価格競争がさらに激しくなることを要因として挙げ
ている。【6 月 1 日】
6.その他
(1)衛星テレビ放送大手ディレク TV グループとエコスター・コミュニケーションズは、無
線ブロードバンド・サービスを手がけるクリアワイヤー(Clearwire)と提携した。クリア
ワイヤーは、WiMAX 技術に似た技術を使った広域無線ブロードバンド・サービスを提供
している。衛星放送事業者の 2 社は、これまで衛星ネットサービスのワイルドブルー・コ
ミュニケーションズ(WildBlue Communications)のサービスを使っていたが、ケーブルテ
レビ会社のサービスよりも通信速度が劣っていた。【6 月 15 日】
(2)米ハイテク企業は、ブラジルへの投資を増やしている。ブラジルは、これまでにも次の
ハイテク市場になると期待されていたが、経済が不安定だったため投資が消極的だった。
しかし、ここに来て状況が変わっているという。調査会社 IDC はブラジルにおける IT 支
出が今年の 205 億ドルから 2011 年には 323 億ドルに急増すると予測している。すでに今年
5 月にデルがサンパウロ近郊に大規模な工場を建設している。そのほか、シリコンバレー
のベンチャー・キャピタルも地元のベンチャー会社と提携し投資信託を設立している。イ
ンテルも 5000 万ドルでベンチャー基金を設立した。【6 月 7 日】
(3)米国やカナダ、日本でおよそ 20 万人の加入者を有する仮想移動体通信事業者(MVNO=
mobile virtual network operator)のアンプド・モバイル(Amp'd Mobile)は、日本の
会社更生法にあたる米破産法第 11 条の適用を申請した。MVNO は、他社の携帯電話ネット
ワークを借り受けて、携帯電話向けの音声およびデータ通信サービスを再販する。MVNO で
は、モバイル ESPN がすでにサービスを中止している。また、バージン・モバイルも、過
去 5 年間で黒字が一度もなく、5 億 5300 万ドルの負債を抱えている。一方、ベンチャー・
キャピタルから 1270 万ドルを調達したソノピア(Sonopia)のような企業も出てきている。
【6 月 5 日】