中小企業モデル定款―株式譲渡制限会社定款参考例―の利用方法 【本モデル定款の特徴】 ① アーリーステージから会社の成長に応じてステップ・アップできる 株式会社の機関設計の柔軟化にあわせて、従来の有限会社並みの最 も簡素な「株主総会+取締役1人」の基本型(定款例A参照)から、 会社の成長に応じて、 「取締役会」 「監査役」 「会計監査人」など各ステー ジにおいて必要とされる機関を選択しながら、ステップ・アップして いくことができる道筋(定款例B〜E参照)を示すとともに、考慮す べき事柄や留意点など、適切なアドバイスを含んでいる。 <本書における株式会社の機関設計> ・定款例A:株主総会+取締役+会計参与(3ページ参照) ・定款例B:株主総会+取締役+監査役+会計参与(54ページ参照) ・定款例C:株主総会+取締役会+会計参与(81ページ参照) ・定款例D:株主総会+取締役会+監査役+会計参与(110ページ参 照) ・定款例E:株主総会+取締役会+監査役+会計監査人+会計参与 (140ページ参照) ② ガバナンスの強化、コンプライアンスの徹底及び会社の計算の適正 性の確保ができる 最も簡素な型からガバナンスを徐々に高めていき、コンプライアン スの徹底や会社の計算の適正性の確保も図られるなど、株主・債権者 のみならず、これから新たな取引関係に入ろうとする者(新規取引予 定先)からも信頼を得られるまでに成長していくことに即した内容と なっている。 中小企業モデル定款−株式譲渡制限会社定款参考例−の利用方法 ③ 定款自治範囲の拡大にあわせ、さまざまな創意工夫ができる 会社法、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律、会社 法施行令、会社法施行規則等に従っているが、定款自治範囲の拡大に あわせ、さまざまな創意工夫ができる内容となっている。 ④ 会計参与の設置について 会計参与は、原則として、 会社法による株式会社の機関設計(226ペー ジ参照)に加えて、いずれも任意に設置できることとなっている(非 公開会社である取締役会設置会社において、監査役を設置しない機関 設計を選択しようとするときは、会計参与の設置が必須である:定款 例C)が、本書では、中小企業における会計参与の設置を勧奨するた め、定款例A〜Eのすべてにおいて採用している。なお、会計参与を 設置しない場合は、該当部分を削除されたい(44ページ、103ページ参 照)。 Ⅰ 株式譲渡制限会社定款参考例(解説編) (株式の相続制限) 第7条 当会社は、相続により当会社の株式を取得した者に対し、 当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。 〔解説〕 1 規定の趣旨 会社法174条の規定に基づき、株式の相続制限を定めるものである。 2 相続制限の明定 会社法174条は、譲渡制限株式につき、相続その他の一般承継により これを取得した者に対し、株式会社から売渡しを請求することができ る旨を定款で定めることができるものとする。従来の株式譲渡制限制 度では、相続その他の一般承継による取得を制限することができない とされていたが、閉鎖的な会社において、会社の運営上好ましくない 者が株主となることを防ぐ必要があることは、相続その他の一般承継 による場合も同様であり、このような要請に応えるため、会社法は、 明文をもって、定款による相続制限を認めたとされる。なお従来、相 続制限の必要性を主張する見解においては、合併を含め、包括承継な いし一般承継すべてについて制限する必要があるという立場が当然の 前提とされていたと考えられるが、この点の解決が真に問題となるの は相続の場合であって、合併等の場合にまで規制を広げると、かえっ て弊害を生ずる事態も考えられる。比較法的にみても、ドイツでは、 相続の場合にのみ認められており、フランスにおいても、相続による 場合と夫婦共有財産の清算の場合にのみ許容されている。本条は、売 渡請求が認められる場合を、相続の場合に限定する趣旨によるもので ある。 Ⅰ 株式譲渡制限会社定款参考例(解説編) 第3章 株主総会 (権限) 第12条 株主総会は、法令に規定する事項及び当会社の組織、運営、 管理その他当会社に関する一切の事項について決議をすることが できる。 〔解説〕 1 規定の趣旨 会社法295条1項の規定の内容を、確認的に規定するものである。 2 取締役会を設置しない会社の株主総会 昭和25年改正商法は、取締役会制度を導入し、これに伴って、株主 総会の権限を縮小した。改正前の株主総会は、株式会社のあらゆる事 項を決議することができる「万能の機関」とされていたが、改正後の 株主総会の権限は、商法又は定款に定める事項に限定されることに なった(旧商法230条ノ10)。これに対し、有限会社の社員総会につい ては、旧有限会社法上、旧商法230条ノ10に対応する規定は置かれてお らず、社員総会は、依然として、 「万能の機関」とされていた。この相 違は、有限会社には取締役会が原則として設置されないことに対応す るものと考えられる。 会社法は、このような扱いを踏まえ、取締役会が設置されるかどう かにより、規制を変えている。すなわち、取締役会を設置しない会社 (以下、「取締役会非設置会社」という。 )の株主総会は、会社法に規 定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する 一切の事項について決議をすることができるものとし (会社法295条1 項)、取締役会設置会社の株主総会は、会社法に規定する事項及び定款 で定めた事項に限り、決議をすることができるものとする(会社法295 1.定款例A【株主総会+取締役+会計参与】 5年間、原則としてその写しを支店に備え置き、株主及び債権者は、 株式会社の営業時間内、いつでも、議事録の書面等の閲覧等を請求す ることができる(会社法318条2項ないし4項) 。旧商法244条と異なり、 会社法及び会社法施行規則は株主総会議事録への議長・出席取締役の 署名等を要求していないので、本条もこの点には触れていない。もっ とも、本条は、署名等を禁止する趣旨を含むものではない。したがっ て、本条のもとにおいて、従来同様、書面をもって株主総会議事録を 作成し、議長等が記名押印する運用方法をとっても、定款違反の問題 は生じない。 第4章 取締役 (取締役の員数) 第20条 取締役は、1名以上とする。 〔解説〕 1 規定の趣旨 取締役の員数の下限を定めるものである。 2 取締役の権限 株式会社の取締役は、旧商法では、取締役会の構成員のことであり、 会社の業務執行の意思決定に参加するが、業務の執行自体は代表取締 役があたるから、単なる取締役はそれ自身としては会社の機関ではな いとされていた(旧商法260条参照) 。また、単なる取締役には、代表 権限が与えられていなかった(旧商法261条3項、78条) 。 会社法では、取締役会非設置会社においては、株式会社の取締役を、 従来の有限会社の取締役と同じように(旧有限会社法26条、27条1項 参照)、会社の業務執行に当たる機関とする(会社法348条1項)とと Ⅰ 株式譲渡制限会社定款参考例(解説編) もに、個々の取締役に代表権限を付与している(会社法349条1項本 文)。 3 取締役の員数 取締役の員数は、旧商法では、株式会社においては3名以上とされ (旧商法255条)、有限会社においては1人で足りる(旧有限会社法25 条)とされていた。 会社法では、取締役の員数は、従来の有限会社と同じく1人で足り るとする(会社法326条1項)。本条は、員数の下限を定めているが、 「何名以内」と上限を定める方法もある。 なお、取締役の員数の下限を定めた場合は、その員数を欠くことに なったときは、臨時総会を開催して新たな取締役を選任するか、仮取 締役の選任を裁判所に申請するか(会社法346条2項) 、のいずれかを とる必要がある。 (選解任の方法) 第21条 取締役は、当会社の株主の中から選任する。ただし、必要 があるときは、株主以外の者から選任することを妨げない。 2 取締役を選任する株主総会の決議は、議決権を行使することが できる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、出席 した当該株主の議決権の過半数をもって行わなければならない。 3 取締役を解任する株主総会の決議は、議決権を行使することが できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当 該株主の議決権の過半数をもって行わなければならない。 4 取締役の選任については、累積投票によらない。
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