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711
HCV 抗体スクリーニング検査法の比較
大阪大学医学部附属病院臨床検査部1),大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻生体・病態情報学領域2),
大阪府赤十字血液センター研究部3),大阪大学医学部保健学科検査技術科学専攻病態生体情報学講座4)
出口 松夫1)2) 鍵田 正智1) 山下 順香3) 中野
田原 和子1) 浅利 誠志1)2) 岩谷 良則2)4)
卓1)
(平成 14 年 3 月 14 日受付)
(平成 14 年 7 月 1 日受理)
Key words:
HCV, anti-HCV antibody, screening test, RIBA
要
旨
8 種類の HCV 抗体スクリーニング(SC)試薬[Ortho Quick Chaser HCV Ab(QC)
,Ortho HCV Ab
ELISA III(ELISA)
,Ortho HVC Ab PA test III(PA)
,Lumipulse II Ortho HCV(LUMI)
,IMx HCV・
DAINAPACKII(IMx)
,ARCHITECT HCV(ARCH)
,Immucheck・F-HCV C50 Ab(Immu)
,RANREAM HCV Ab Ex II(RAN)
]
の比較評価を行った.患者 600 人の血清を用いて 8 種の SC 試薬を比較し
たところ,陽性率は 9.0%〜13.2% であり,その内の 45 例は試薬間で判定が不一致となった.その判定不
一致例における陽性結果の約半数は反応性が弱かった.また,その 45 例中 25 例は抗体確認検査法カイ
ロン RIBA テスト III(RIBAIII)によって HCV 抗体が検出されず,44 例は PCR 法によって HCV-RNA
が検出されなかった.2 試薬間の判定一致率は 95.5%〜99.2% であり,使用抗原が類似しているものが,
必ずしも判定一致率が高いわけではなかった.抗体確認検査法である RIBAIII を用いて,感度と特異度
を評価したところ,ともに優れた成績を示した試薬は ELISA,LUMI,IMx,ARCH および Immu であっ
た.HCV 感染初期に経時的に採取された検体(BBI seroconversion panel)3 セットを用いた比較評価で
は ELISA と ARCH で最も早期に陽性化が認められ,次いで IMx,LUMI=RAN,PA,QC,Immu の順
であった.以上の結果より,HCV 抗体 SC 試薬として ELISA と ARCH が感度,特異度および HCV 感染
症の早期診断に優れていた.しかし,どの SC 試薬においても陽性結果の反応性が弱い時には,偽陽性の
可能性もあるので注意を要した.
〔感染症誌
はじめに
76:711〜720,2002〕
3,
NS4,
NS5 領域より得られた多種多様の抗原が
C 型肝炎ウイルス(HCV)の抗体検査は 1989
使用されている3)4).さらに,検出原理も従来の酵
年に HCV 遺伝子配列が決定されたのを機会に開
素免疫法や粒子凝集法に加え,最近ではイムノク
発された1).当初,HCV 抗体検査における HCV
ロマト法や蛍光・化学発光を利用した新しい測定
抗体捕捉抗原は HCV 構造領域の一部である NS4
法が次々と開発されており,20 種類以上の様々な
領域より得られたリコンビナント抗原(c100―3)の
試薬が市販されている.これに伴って,試薬の抗
NS
みが使用されていた2).しかし,現在では core,
体検出感度は飛躍的に向上し,一様に HCV 感染
別刷請求先:(〒565)吹田市山田丘 2―15
大阪大学医学部附属病院臨床検査部
出口 松夫
平成14年 9 月20日
症における HCV 抗体検出率も上昇した.しかし,
各試薬の反応性も多様化したことから試薬間での
判定不一致も増加しており,多くの臨床家を悩ま
712
出口
松夫 他
'イムチェック・F-HCV C50 Ab(Immu;国際
せる原因となっている.
我々はその市販 HCV 抗体測定試薬の現状を把
握するために,使用抗原や検出原理の異なる 8 種
類の HCV 抗体測定試薬を用いて,基本性能の比
8)
を 用 い,全 自 動 酵 素 免 疫 測 定 装 置
試薬(株)
)
ELSIA-F300(国際試薬(株)
)
にて測定した.
(ランリーム HCV Ab EXII(RUN;シスメッ
9)
を 用 い,全 自 動 免 疫 凝 集 測 定 装 置
クス(株)
)
較を行った.
材料および方法
PAMIA(シスメックス(株)
)
にて測定した.
1.材料
2)HCV 抗体確認検査法
大阪大学医学部附属病院臨床検査部に HCV 抗
カイロン HCV RIBA テスト III(RIBA;オ ー
体検査依頼があった入院および外来患者血清 600
ソ・ク リ ニ カ ル・ダ イ ア グ ノ ス テ ィ ッ ク ス
例 と BOSTON BIOMEDICA INC.
(BBI)の 3 種
10)
を用いて,HCV 特異抗体の検出を行った.
(株)
)
類
の seroconversion panel(PHV905,PHV906,
操作法は添付文書に従い用手法にて実施した.判
PHV909)を 用 い た.な お,BBI seroconversion
定基準は二つ以上の特異抗体(陽性バンド)を認
panel とは HCV に感染した一個人の血清あるい
めた場合を HCV 抗体陽性,一つの特異抗体を認
は血漿を経時的に採取したものである.
めた場合を判定保留,まったく認めなかった場合
2.方法
を陰性とする.また,試薬の特徴については Ta-
1)HCV 抗体スクリーニング法
ble 1 に記載した.なお,今回の検討において本試
以下に示す 8 種類の HCV 抗体スクリーニング
薬による測定結果は HCV 抗体の有無を示す基準
(SC)
試薬を添付文書に従って使用した.なお,各
値とした.
3)HCV-RNA 検査法
試薬の特徴は Table 1 にまとめた.
!オーソクイックチェイサー HCV Ab(QC;
アンプリテックス HCV(PCR;ロシュ・ダイア
オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス
11)
を用いて HCV-RNA の
グノスティックス(株)
)
5)
を用い,用手法にて測定した.
(株)
)
抽出を行い,PCR(Polymelase chain reaction)を
"オーソ HCV Ab ELISA テスト III(ELISA;
測定原理とするコバスア ン プ リ コ ア HCV(ロ
オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス
12)
にて測定
シュ・ダイアグノスティックス(株)
)
6)
を用い,マイクロプレート ELISA 自動測
(株)
)
定 装 置 Behring ELISA Processer III(デ イ ド・
ベーリング(株)
)
にて測定した.
した.
成
績
1.日常依頼検体における判定結果の比較
#オーソ HCV Ab PA テスト II(PA;オーソ・
7)
当院における HCV 抗体検査依頼検体 600 例を
クリニカル・ダイアグノスティックス(株)
)を用
用いて,8 種 SC 試薬の判定結果を比較検討した.
い,用手法にて測定した.
さらに,SC 試薬のいずれか 1 試薬でも陽性を示し
$ルミパルス II オーソ HCV(LUMI;オーソ・
た試料については RIBA による特異抗体の検出
7)
を用
クリニカル・ダイアグノスティックス(株)
)
を実施した.さらに,SC 試薬間で判定不一致を示
い,全自動化学発光酵素免疫測定装置ルミパルス
した全ての試料と SC 試薬の全てが陽性を示した
f(富士レビオ(株)
)
にて測定した.
一部の試料については PCR による HCV-RNA の
%IMx HCV・ダイナパック―II(IMx;ダイナ
7)
検出を実施した.それらの結果については Table
ボット(株))を用い,IMx アナライザー(ダイナ
2 に示すように,SC 試薬の陽性結果は RAN の 79
ボット(株)
)
にて測定した.
例 が 最 も 多 く,次 い で ARCH の 73 例,ELISA
&アーキテクト HCV(ARCH;ダイナボット
7)
(株)
)を用い,全自動化学発光免疫測定装置アー
および PA の 70 例,Immu の 68 例,LUMI の 66
例,IMx の 65 例,QC の 54 例であった.また,8
キテクトアナライザー i2000(ダイナボット(株))
種 SC 試薬の判定結果を Fig. 1 にまとめた と こ
にて測定した.
ろ,600 例中 503 例(A 群)はすべての SC 試薬が
感染症学雑誌
第76巻
第9号
HCV 抗体スクリーニング検査法の比較
Table 1
713
Characteristic of eight screening tests and one confirmatory test for detection of anti-HCV antibody.
coated antigen
principle
core
NS3
1 191
Quick Chaser
HCV Ab(QC)
1000
immunochromatography
2−120
assay
NS4
NS5
1500
1192
1960
1931
microplate
EIA
c22−3
HCV Ab PA
test À(PA)
particle
agglutination
assay
2−120
1192
2054
2995
NS5
magnetic
microparticle
CLEIA
1931
2054
2995
NS5
c200
c25
1192−1457 1596−1931
c33c
c100−3
c100−3
1192
1−150
1931
tube
EIA
RUNREAM
HCV Ab Ex À
(RAN)
particle
agglutination
counting
immunoassay
c100−3
strip
immonoblot
assay
?
?
1.0
S/C
ALP conjugated
anti-human IgG
polyclonal Ab
(goat)
1.0
S/CO
ACD conjugated
anti-human IgG & M
monoclonal Ab
(mouse)
1.0
S/CO
POD conjugated
anti-human IgG
monoclonal Ab
(mouse)
1.0
COI
?
1.0
COI
?
1649−1735
1192−1457 1920−1935 2054
2995
NS5
c33c
c22p
c50 antigen
1690−1713
1716−1750
?
10−53
ALP
conjugated
anti-human IgG
monoclonal Ab
(mouse)
1238−1313 1670−1713
1363−1460 1712−1750
66−80
?
CHIRON HCV
RIBA test Á
(RIBA)
1192−1457 1596−1931
HC−43
1−43
66−80
Immucheck・F −
HCV C50 Ab
(Immu)
1.0
COI
1192−1457 1569−1931
HC−43
microparticle
EIA
magnetic
microparticle
CLIA
POD conjugated
anti-human IgG
monoclonal Ab
(mouse)
1:32
titer
c200
ARCHITECT
HCV(ARCH)
positive
band
1931
1192
1−150
IMx HCV・
DAINAPACK
À(IMx)
gold colloid
conjugated
HCV Ag
c200
c22−3
2−120
Lumipulse À
HCV(LUMI)
cut off
value
3011aa
c200
HCV Ab ELISA
Á(ELISA)
conjugated
Ag and Ab
1649−1735
c100p
5−1−1p
POD conjugated
anti-human IgG
polyclonal Ab
(goat)
■;ricombinant antigen of yeast origin, ■;ricombinant antigen of E. coli origin, ■;synthetic peptide.
ALP;alkaline phosphatase, POD;peroxidase, ACD;acridinium.
平成14年 9 月20日
two
positive
bands
714
出口
松夫 他
Table 2 Results of eight screening tests for anti-HCV antibody in 600 sera from patients
No
A
B
screening test
RIBA
QC
ELISA
PA
LUMI
IMx
ARCH
Immu
RAN
1〜503
−
−
−
−
−
−
−
−
504
+
−
−
−
−
−
−
−
505〜507
−
−
+
−
−
−
−
−
508
−
−
−
+
−
−
−
−
509〜510
−
−
−
−
+
−
−
PCR
core
NS3
NS4
NS5
RNA
NT
―
―
―
―
NT
NEG
−
−
−
−
NEG
NEG
−
−
−
−
NEG
NEG
−
−
−
−
NEG
−
NEG
−
−
−
−
NEG
511
−
−
−
−
−
+
−
−
NEG
−
−
−
−
NEG
512〜515
−
−
−
−
−
−
+
−
NEG
−
−
−
−
NEG
516〜524
−
−
−
−
−
−
−
+
NEG
−
−
−
−
NEG
525
−
−
−
−
−
+
−
−
IND
−
2+
−
−
NEG
526
−
−
−
−
−
+
−
−
IND
−
3+
−
−
NEG
527
−
−
+
−
−
−
−
+
NEG
−
−
−
−
NEG
528
−
+
+
−
−
+
−
+
NEG
−
−
−
−
NEG
529
−
+
+
+
−
+
−
−
NEG
−
−
−
−
NEG
530
−
+
+
+
+
+
−
−
NEG
−
−
−
−
NEG
531
−
−
+
−
−
−
−
+
IND
1+
−
−
−
NEG
532
−
−
−
−
−
−
+
+
IND
1+
−
−
−
NEG
533
−
+
−
−
−
−
+
−
IND
2+
−
−
−
NEG
534
−
+
−
+
−
+
+
−
IND
−
1+
−
−
NEG
535
−
+
+
−
−
+
−
+
IND
1+
−
−
−
NEG
536
−
+
−
−
−
+
+
+
IND
3+
−
−
−
NEG
537
−
−
+
−
−
+
+
+
IND
3+
−
−
−
NEG
538〜539
−
+
+
+
+
+
−
+
IND
1+
−
−
−
NEG
540
−
+
−
+
+
+
+
+
IND
2+
−
−
−
NEG
541
−
+
−
+
+
+
+
+
IND
3+
−
−
−
NEG
542
−
+
−
+
+
+
+
+
IND
4+
−
−
−
NEG
543
−
+
+
+
+
+
+
+
IND
1+
−
−
−
NEG
544
−
+
+
+
+
+
+
+
IND
2+
−
−
−
NEG
545
−
+
+
+
+
+
+
+
IND
4+
−
−
−
NEG
546
+
+
+
+
+
+
−
+
IND
−
1+
−
−
NEG
547
−
+
+
+
+
+
−
+
POS
1+
2+
−
−
POS
548
−
+
+
−
−
+
+
+
POS
2+
−
2+
−
NEG
549
+
+
+
+
+
+
+
+
IND
2+
−
−
−
NEG
550〜555
+
+
+
+
+
+
+
+
POS
―
―
―
―
NEG
556〜583
+
+
+
+
+
+
+
+
POS
―
―
―
―
POS
584〜600
+
+
+
+
+
+
+
+
POS
―
―
―
―
NT
NEG
546
530
530
534
535
527
532
521
―
―
―
―
―
―
POS
54
70
70
66
65
73
68
79
―
―
―
―
―
―
POS rate
(%)
9.0
11.7
11.7
11.0
10.8
12.2
11.3
13.2
―
―
―
―
―
―
C
D
A; All eight screening tests are negative, B; One of eight screening tests is positive,
C; Two to seven screening tests are positive, D; All eight screening tests are positive,
POS; positive, IND; indeterminate, NEG; negative, NT; not tested.
感染症学雑誌
第76巻
第9号
HCV 抗体スクリーニング検査法の比較
715
陰性を示し,残りの 97 例はいずれかの SC 試薬で
は B 群ではすべて陰性,C 群では 1 例(No 547)
を
陽性を示した.さらに,この 97 例を詳細に分類す
除き陰性,D 群では 35 例中 28 例(80%)が陽性
ると,23 例(B 群)は 1 種 SC 試薬のみが陽性,他
を示した.
の 22 例(C 群)は 2〜7 種 SC 試薬が陽性,残りの
SC 試薬の抗体検出感度を比較するために,SC
52 例(D 群)は全ての SC 試薬が陽性であった.
試薬のいずれかで陽性を示し,RIBA により何ら
すなわち,45 例が試薬間での判定不一致を認め
かの特異抗体(陽性バンド)が認められた 72 例に
た.また,B,C,D 群における RIBA および PCR
おける判定結果を Table 3 にまとめたところ,そ
判定結果についても Fig. 1 にまとめたところ,
れぞれの感度は 73.6〜95.8% であり,最も高い感
RIBA は B 群では陰性,C 群では判定保留,D 群で
度を示したのは ARCH,ついで RAN,ELISA,
は陽性が極めて高頻度に認められた.一方,PCR
Immu,LUMI および PA,IMx,QC の順であった.
つぎに,特異度を比較するために,RIBA により
まったく特異抗体が認められなかった 25 例にお
Fig . 1 Relationship between the results of eight
screening tests, RIBA test and PCR method in 600
sera.
ける判定結果を Table 4 にまとめたところ,それ
ぞれの特異度は 56.0〜96.0% であり,最も高い特
異度を示したのは QC,ついで IMx,ELISA およ
び LUMI,ARCH および Immu,PA,RAN の順
であった.なお,偽陽性を示した 7 種 SC 試薬(QC
を除く)の測定値についても Table 4 に記載した
が,RAN を除く 6 種 SC 試薬の測定値は,いずれ
も基準値の 4 倍未満と低い値であった.
2 種 SC 試薬間の判定結果を比較するために,そ
れぞれの判定一致率を Table 5 にまとめたとこ
ろ,それぞれの判定一致率は 95.5〜99.2% であり,
判定一致率の最も高い組み合わせは ELISA と
ARCH 間および LUMI と IMx 間の 99.2%,最も
Table 3 Sensitivity of eight screening tests in 72 sera positive or indeterminate for RIBA test and
positive for one or more screening tests
n = 72
QC
ELISA
PA
LUMI
IMx
ARCH
Immu
RAN
positive
negative
53
19
67
5
63
9
63
9
62
10
69
3
64
8
68
4
positive rate(%)
73.6
93.1
87.5
87.5
86.1
95.8
88.9
94.4
Table 4 Specificity of eight screening tests in 25 sera negative for RIBA test and positive for one or
more screening tests
n = 25
positive
negative
negative rate(%)
*1;
*5;
QC
ELISA
PA
LUMI
IMx
ARCH
Immu
RAN
1
24
96
3*1
7*2
3*3
3*4
4*5
4*6
11*7
14
56
22
88
18
72
22
88
22
88
1.04 〜 1.45 COI, *2; 1 : 32 〜 1 : 64 titer, *3; 1.1 〜 3.8 S/C, *4; 1.00 〜 1.18 S/CO,
1.24 〜 1.73 S/CO, *6; 1.12 〜 2.58 COI, *7; 1.10 〜 12.19 COI.
平成14年 9 月20日
21
84
21
84
716
出口
松夫 他
Table 5 Agreement ratios of the results of eight screening tests
QC
ELISA
PA
LUMI
IMx
ARCH
Immu
RAN
n = 600
+
−
+
−
+
−
+
−
+
−
+
−
+
−
+
−
+
−
−
53
1
53
1
53
1
53
1
53
1
52
2
53
1
−
−
−
17
529
17
529
13
533
12
534
20
526
16
530
26
520
QC
agreement rate
―
97.0%
+
53
17
−
−
1
529
−
97.0%
97.7%
97.8%
96.5%
97.0%
95.5%
−
64
6
65
5
63
7
69
1
62
8
66
4
−
6
524
1
529
2
528
4
526
6
524
13
517
ELISA
agreement rate
97.0%
―
98.0%
99.0%
98.5%
99.2%
97.7%
97.2%
+
53
17
64
6
−
−
61
9
60
10
65
5
57
13
65
5
−
1
529
6
524
−
−
5
525
5
525
8
522
11
519
14
516
PA
agreement rate
97.0%
98.0%
―
97.7%
+
53
13
65
1
61
5
−
−
1
533
5
529
9
525
−
97.5%
97.8%
96.0%
96.8%
−
63
3
65
1
59
7
62
4
−
2
532
8
526
9
525
17
517
LUMI
agreement rate
97.7%
99.0%
97.7%
―
99.2%
+
53
12
63
2
60
5
63
2
−
−
1
534
7
528
10
525
3
532
−
98.5%
97.3%
96.5%
−
63
2
58
7
62
3
−
10
525
10
525
17
518
IMx
agreement rate
97.8%
98.5%
97.5%
99.2%
―
98.0%
97.2%
96.7%
+
53
20
69
4
65
8
65
8
63
10
−
−
62
11
67
6
−
1
526
1
526
5
522
1
526
2
525
−
−
6
521
12
515
ARCH
agreement rate
96.5%
99.2%
97.8%
98.5%
98.0%
―
97.2%
+
52
16
62
6
57
13
59
9
58
10
62
6
−
−
2
530
8
524
11
519
7
525
7
525
11
521
−
97.0%
−
62
6
−
17
515
Immu
agreement rate
97.0%
97.7%
96.0%
97.3%
97.1%
97.2%
―
96.2%
+
53
26
66
13
65
14
62
17
62
17
67
12
62
17
−
−
−
1
520
4
517
5
516
4
517
3
518
6
515
6
515
−
−
RAN
agreement rate
95.5%
97.2%
96.8%
96.5%
96.7%
97.0%
96.2%
―
低い組み合わせは RAN と QC 間の 95.5% であっ
97.0,
98.0,
98.0%(平均 97.7%)
であった.さらに,
た.また,判定不一致結果の発生頻度が SC 試薬間
使用抗原がまったく異なる組み合わせは Immu
で大きく異なる原因については,各試薬の使用抗
と他の 6 種 SC 試薬であり,判定一致率は 96.0〜
原に起因するのではないかと考え,各試薬の使用
97.7%(平均 97.1%)であった.このことからも明
抗原を比較した.なお,抗原を比較するにあたり
らかなように,同一あるいは類似抗原を使用した
RAN については正確なアミノ酸配列が公表され
試薬間の判定一致率が必ずしも高いという訳では
ていないことから比較対象外とした.7 種 SC 試薬
なかった.また,各試薬の測定原理と判定一致率
中で使用抗原のアミノ酸配列および発現系(宿主)
の関係についても比較したが,両者の間に特別な
が同じである組み合わせは QC と ELSA のみで
関係は認められなかった.
あり,判定一致率は 97.0% であった.一方,使用
2.HCV 感染初期検体における測定値の比較
抗原の半分以上が同じ抗原(類似抗原)を使用し
HCV 感染初期より経時的に採取された 3 種類
ている組み合わせは PA と QC,PA と ELISA,
の BBI seroconversion panel を用いて,各試薬に
IMx と ARCH であり,それぞれの判定一致率は
おける陽性化を比較した.その結果は Table 6 に
感染症学雑誌
第76巻
第9号
HCV 抗体スクリーニング検査法の比較
717
Table 6 Serial readings of by eight screeninng tests and RIBA test in BBI seroconversion panels showing the initial
stage of HCV infection
PHV905
Confirmatory test
Screening test
No.
PCR
Days
RIBA
QC
ELISA
PA
LUMI
IMx
ARCH
Immu
RAN
core
NS3
NS4
NS5
RNA*
1
0
−
−
−
−
−
−
−
−
NEG
−
−
−
−
+
2
4
−
−
−
−
−
−
−
−
NEG
−
−
−
−
+
3
7
−
−
−
−
−
−
−
−
NEG
−
−
−
−
+
4
11
−
−
−
−
−
−
−
−
IND
−
1+
−
−
+
5
14
−
+
−
−
+
+
−
−
IND
−
1+
−
−
+
6
18
−
+
−
−
+
+
−
−
IND
−
1+
−
−
+
7
21
+
+
+
+
+
+
−
+
POG
1+
2+
−
−
+
8
25
+
+
+
+
+
+
+
+
POG
4+
4+
−
−
+
9
28
+
+
+
+
+
+
+
+
POG
4+
4+
−
−
+
1
0
−
+
−
+
+
+
−
−
IND
−
4+
−
−
+
2
2
−
+
+
+
+
+
−
−
IND
−
4+
−
−
+
3
7
+
+
+
+
+
+
−
+
POG
−
4+
2+
−
+
4
10
+
+
+
+
+
+
−
+
POG
−
4+
3+
−
+
5
14
+
+
+
+
+
+
+
+
POG
−
4+
4+
−
+
6
17
+
+
+
+
+
+
+
+
POG
−
4+
4+
−
+
7
21
+
+
+
+
+
+
+
+
POG
−
4+
4+
−
+
1
0
−
−
−
−
−
−
−
−
NEG
−
−
−
−
+
2
28
−
+
−
−
−
+
−
+
IND
1+
−
−
−
+
3
30
−
+
−
−
−
+
−
+
IND
2+
−
−
−
+
PHV906
PHV909
*;
Results were taken from the package insert of each BBI panel, POS; positive, IND; indeterminate, NEG; negative.
示すように, PHV905 における陽性化は ELISA,
検討を行った.
IMx および ARCH が早く,RIBA においても NS
当院における HCV 抗体検査依頼検体 600 例に
3 抗体が検出された.また,PHV906 における陽性
おける 8 種 SC 試薬の陽性結果は RAN の 79 例が
化は ELISA,LUMI,IMx および ARCH が早く,
最も多く,QC の 54 例が最も少なかった.すなわ
RIBA においても NS3 抗体が検出された.さら
ち,どの試薬を導入するかによって,日常検体の
に,PHV909 おける陽性化は ELISA,ARCH およ
陽性率には約 1.5 倍の差が生じることが明らかと
び RAN が早く,RIBA においても core 抗体が検
なった.また,8 種 SC 試薬の 1 法以上が陽性を示
出された.
した 97 例について,RIBA による抗体確認検査と
考
察
PCR による HCV-RNA の検出を行ったところ,
我々は現在市販されている HCV 抗体スクリー
SC 試薬間で判定不一致を示した検体の約半数
ニング(SC)
試薬の現状と問題を把握するために,
(25!
45 例)
において HCV 抗体は存在せず,また,
使用抗原や検出原理の異なる 8 種 SC 試薬の比較
そのほとんど(44!
45 例)において HCV-RNA も検
平成14年 9 月20日
718
出口
松夫 他
出されなかった.一方,すべての SC 試薬が陽性を
しも感染初期においても早期に陽性化するとは限
示した全ての検体(52!
52 例)において HCV 抗体
らなかったことである.すなわち,陽性率が高い
は確認されたが,HCV-RNA の検出率は 80%(28!
にもかかわらず感染初期における陽性化の遅かっ
35 例)
であった.しかし,PCR が陰性を示した 20
た SC 試薬は,感染既往抗体16)の検出率あるいは偽
%(7!
35 例)の中には 3 例の INF 治療患者検体が
陽性の出現率が高いと考えられる.その反面,
含まれており,これらの患者のうち 2 名は INF
ELISA のように陽性率が高くないにもかかわら
投与終了後に再度 HCV-RNA が検出されている.
ず感染初期における陽性化の早かった SC 試薬
すなわち,少なくともこの 2 例は HCV-RNA は検
は,現在の感染を鋭敏に反映すると考えられる.
出されなかったが,HCV 持続感染者であった.
以上の結果をまとめると,8 種 SC 試薬の反応性
8 種 SC 法 の HCV 抗 体 検 出 感 度 に つ い て は
は様々であり,試薬間での使用抗原や測定原理が
73.6〜95.8% であり,QC を除く 7 種 SC 試薬が 80
類似してるからといって,試薬間の判定一致率が
%以上の良好な成績を示した.一方,特異度につ
必ずしも高い訳ではなかった.感度および特異度
いては 56.0〜96.0% であり,PA および RAN を除
の検討より,いずれも良好な成績を示した測定法
く 6 種 SC 試薬の特異度は 80% 以上の良好な成
は ELISA,LUMI,IMx,ARCH お よ び Immu
績を示した.また,これら 6 種 SC 試薬の偽陽性値
であり,その中でも ELISA および ARCH は HCV
は基準値の 4 倍未満と極めて低い値であった.
感染症の早期診断にも優れていた.しかし,いず
2 種 SC 試薬間での判定一致率については 95.5
れの測定法でもその測定値が低い陽性結果につい
%〜99.2% となり,最も判定一致率の高い組み合
ては偽陽性の可能性もあることから,SC 試薬のみ
わせでも 120 例に 1 例,最も低い組み合わせでは
による結果から HCV 感染症と診断するには問題
22 例に 1 例の判定不一致が認められた.判定不一
が残されており,HCV 抗原検査や患者の臨床的背
致発生頻度が SC 試薬間で大きく異なる原因につ
景を含めた総合的な診断が必要である.
いては,各試薬の使用抗原さらには測定原理など
が関与するのではないかと考え,判定一致率との
関係を調べたが,両者の間に一定の関係は認めら
れなかった.すなわち,試薬の反応性を決定する
要因には測定原理や使用抗原の種類はもとより,
抗原感作量,固相の材質,感作条件,抗原抗体反
応の条件などが複雑に関与していると思われ,各
試薬の添付書上に記載された測定原理や使用抗原
の種類から,試薬の反応性を推測することは困難
であった.なお,HCV の抗原性に関する基礎的研
究については数多く報告されているが13)〜15),抗原
感作時における固相の材質や感作条件・方法によ
る抗原性の変化などに関する詳細な報告はされて
いない.
HCV 感染初期患者血清(3 種類の BBI Seroconversion panel)
を用いた検討において,早期に陽性
化した SC 試薬は ELISA と ARCH であり,次い
で IMx,LUMI=RAN,PA,QC,Immu の順であっ
た.ここで注目すべきことは,RAN のように日常
検体において高い陽性率を示した SC 試薬が必ず
文
献
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720
出口
松夫 他
Comparison of Eight Screening Tests for Ant-HCV Antibody
Matsuo DEGUCHI1)2), Masanori KAGITA1), Naoko YAMASHITA3), Takasi NAKANO1),
Kazuko TAHARA1), Seishi ASARI1)2)& Yoshinori IWATANI2)4)
1)
The Laboratory for Clinical Investigation, Osaka University Hospital
Division of Laboratory Science, Course of Health Science, Graduate Schools of Medicine, Osaka University
3)
Osaka Red Cross Blood Center
4)
Department of Clinical Laboratory Science, School of Allied Health Science,
Faculty of Medicine, Osaka University
2)
We compared eight HCV screening tests for detection of anti-HCV antibody ; Ortho Quick
Chaser HCV Ab(QC)
, Ortho HCV Ab ELISA III(ELISA),Ortho HVC Ab PA test III(PA),Lumipulse II Ortho HCV(LUMI)
, IMx HCV・DAINAPACKII(IMx),ARCHITECT HCV(ARCH),Immucheck・F-HCV C50 Ab(Immu),RANREAM HCV Ab Ex II(RAN).Sera from six hundred patients were examined by these eight screening tests. The positive rates of the eight screening tests
were from 9.0% to 13.2%. Forty-five sera showed discrepant results between the eight screening
tests, and about half of them showed weak positive reaction and!or false positive. Twenty-five of the
forty-five sera were negative for ant-HCV antibody in the CHIRON RIBA III confirmatory test, and
forty-four of them were negative for HCV-RNA in the PCR method. The agreement rates between
the two reagents were from 95.5% to 99.2%, but were not always high between the two reagents
that used similar antigen. The specificities and sensitivities evaluated by using the RIBA III confirmatory test were excellent in ELISA, LUMI, IMx, ARCH and Immu. Three BBI seroconversion panels were used to compare the positive readings in the initial stage of HCV infection by eight screening tests. ELISA and ARCH showed the earliest positive readings, and then IMx, LUMI=RAN, PA,
QC and Immu in this order. These findings indicate that ELISA and ARCH were the most excellent
in the sensitivity, specificity and early diagnosis of HCV infection. However, we must pay attention to
the weak positive reaction in the screening tests, because there is a possibility of false positive .
感染症学雑誌
第76巻
第9号