目 次 会長挨拶 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 開催記録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 開催概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 会場への交通のご案内 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 日程表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 プログラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 参加者・司会・演者の先生へのご案内 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 投稿規定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 講演抄録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 国際シンポジウム抄録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 教育講演抄録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 一般演題抄録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 協賛企業一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48 -1- 会 長 挨 拶 舘田一博 (東邦大学医学部微生物・感染症学講座) Clostridium difficile 感染症の疫学・臨床・研究 第45回日本嫌気性菌感染症学会 学術集会の会長を仰せつかり、2015年2月27日∼28日に品 川プリンスホテルで開催させていただくことになりました。このような機会を与えてくださいました三 鴨廣繁理事長に感謝するとともに、企画・準備に関してご指導・ご協力をいただきました会員の先生方 に改めて厚くお礼申し上げます。 今回の講演会では、Clostridium difficile 感染症の疫学・臨床・研究 をメインテーマとして、第1日目に 国際シンポジウムを企画させていただきました。ご承知の通り、近年欧米を中心に C. difficile 感染症(CDI) の増加が報告されております。その理由の1つとして、027 株をはじめとするバイナリ̶毒素産生株の 出現と蔓延が問題となっております。日本ではまだ報告例は少ないですが、重症 CDI 例も散見されてお り、その動向には十分注意しておく必要があります。本シンポジウムでは、CDI に関して世界をリード する研究者にご発表いただけることになっております。欧米における CDI の現状、病態・診断、そして 新しい治療戦略まで最新の情報をご講演いただけるのではないかと楽しみにしております。 第2日目は、嫌気性菌感染症の診断、治療、発症病態、そして耐性菌の問題に関して、各分野の第一線 でご活躍の先生による教育講演をお願いしております。教育講演をお願いする先生方におかれまして は、限られた時間ではありますが、それぞれの分野の現状・問題点から研究的なヒントまで嫌気性菌感 染症の臨床と研究の魅力をお話しいただきますよう宜しくお願い申し上げます。また、教育講演に引き 続いて、関連する内容の一般演題のご発表を組み入れております。一般演題の先生方におかれましては、 教育講演の先生の前で、教育講演の先生への逆質問も用意しながらご発表を楽しんでいただければと考 えております。嫌気性菌感染症に関するさまざまな問題を共有しながら、質の高い議論と活発な意見交 換が進むことを期待しております。 嫌気性菌感染症学会においては、臨床・研究に従事する医師・研究者はもちろんのこと、微生物検査技 師、薬剤師、そして製薬・食品関連企業の方々のご参加がもっとも重要です。第45回日本嫌気性菌感 染症学会 学術集会に多数の方々がお集まりいただき、嫌気性菌感染症の基礎と臨床に関して学際的・ 国際的な情報交換が行われることを祈念してご挨拶の言葉とさせていただきます。 -2- 日本嫌気性菌感染症学会 開催記録 第 1 回から第 43 回までは日本嫌気性菌感染症研究会として開催され、第 44 回からは日本嫌気性菌感染症学会として開催する。 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第 10 回 第 11 回 第 12 回 会長名 石山 俊次 石山 俊次 石山 俊次 石山 俊次 石山 俊次 石山 俊次 小酒井 望 小酒井 望 小酒井 望 小酒井 望 小酒井 望 小酒井 望 所 属 日本大学医学部 第三外科学教室 日本大学医学部 第三外科学教室 日本大学医学部 第三外科学教室 日本大学医学部 第三外科学教室 日本大学医学部 第三外科学教室 日本大学医学部 第三外科学教室 順天堂大学医学部 臨床病理学教室 順天堂大学医学部 臨床病理学教室 順天堂大学医学部 臨床病理学教室 順天堂大学医学部 臨床病理学教室 順天堂大学医学部 臨床病理学教室 順天堂大学医学部 臨床病理学教室 会 期 1971.2.27 1972.3.4 1973.2.24 1974.2.23 1975.3.1 1976.2.21 1977.2.26 1978.2.25 1979.2.24 1980.2.23 1981.2.21 1982.2.20 開催地 東 京 東 京 東 京 東 京 東 京 東 京 東 京 東 京 東 京 東 京 東 京 東 京 第 13 回 第 14 回 第 15 回 第 16 回 第 17 回 第 18 回 第 19 回 第 20 回 第 21 回 第 22 回 第 23 回 第 24 回 第 25 回 第 26 回 第 27 回 第 28 回 第 29 回 第 30 回 第 31 回 第 32 回 第 33 回 第 34 回 第 35 回 第 36 回 第 37 回 第 38 回 第 39 回 第 40 回 第 41 回 第 42 回 第 43 回 第 44 回 第 45 回 小酒井 望 小酒井 望 小酒井 望 小酒井 望 小酒井 望 小酒井 望 小酒井 望 上野 一恵 上野 一恵 上野 一恵 上野 一恵 上野 一恵 松田 静治 猪狩 淳 中村 功 中山 一誠 那須 勝 品川 長夫 大石 正夫 渡邉 邦友 横山 隆 舟田 久 鈴木 賢二 菅野 治重 三笠 桂一 坂本 春生 三鴨 廣繁 小栗 豊子 竹末 芳生 門田 淳一 中村 敦 藤田 次郎 舘田 一博 順天堂大学医学部 臨床病理学教室 順天堂大学医学部 臨床病理学教室 順天堂大学医学部 臨床病理学教室 順天堂大学医学部 臨床病理学教室 順天堂大学医学部 臨床病理学教室 順天堂大学医学部 臨床病理学教室 順天堂大学医学部 臨床病理学教室 岐阜大学医学部附属嫌気性菌実験施設 岐阜大学医学部附属嫌気性菌実験施設 岐阜大学医学部附属嫌気性菌実験施設 岐阜大学医学部附属嫌気性菌実験施設 岐阜大学医学部附属嫌気性菌実験施設 江東病院 産婦人科 順天堂大学医学部 臨床病理学教室 山口県立中央病院 日本大学医学部 第三外科学教室 大分医科大学 第二内科 名古屋市厚生院 白根健生病院 眼科 岐阜大学医学部附属嫌気性菌実験施設 広島大学医学部附属病院 総合診療部 富山医科薬科大学 感染予防医学講座 藤田保健衛生大学第二教育病院 耳鼻咽喉科 医療法人社団徳風会 高根病院 奈良県立医科大学 感染症センター 東海大学医学部付属八王子病院 口腔外科 愛知医科大学大学院 感染制御学 医療法人鉄焦会亀田総合病院 臨床検査部 兵庫医科大学 感染制御学 大分大学医学部 総合内科学第二 名古屋市立大学 腫瘍·免疫内科学 琉球大学大学院 感染症·呼吸器·消化器内科学(第一内科) 東邦大学医学部 微生物・感染症学講座 1983.2.19 1984.2.18 1985.2.23 1986.2.22 1987.2.14 1988.2.20 1989.2.25 1990.2.17 1991.2.23 1992.2.22 1993.2.27 1994.3.5 1995.2.25 1996.2.24 1997.3.8 1998.3.13-14 1999.3.6 2000.3.11 2001.3.3 2002.3.2 2003.3.22 2004.3.13 2005.3.12 2006.3.11 2007.3.3 2008.3.1 2009.3.7 2010.3.20-21 2011.3.11-12 2012.3.17 2013.3.29-30 2014.2.22 2015.2.27-28 東 京 東 京 東 京 東 京 東 京 東 京 東 京 東 京 東 京 東 京 東 京 東 京 東 京 東 京 山 口 東 京 大 分 名古屋 新 潟 岐 阜 広 島 富 山 名古屋 千 葉 奈 良 東 京 岐 阜 東 京 兵 庫 大 分 名古屋 沖 縄 東 京 -3- 第 45 回日本嫌気性菌感染症学会 学術集会 概要 会 長 : 舘田 一博 (東邦大学医学部微生物・感染症学講座) 会 期 : 平成 27 年 2 月 27 日(金)∼2 月 28 日(土) 会 場 : 品川プリンスホテル 〒108-8611 東京都港区高輪 4-10-30 (代表)TEL:03-3440-1111 テーマ : 「Clostridium difficile 感染症の疫学・臨床・研究」 理事会 : 2 月 27 日(金) 15:00∼16:00 (3F 「しゃくなげ+りんどう」) 幹事会 : 2 月 27 日(金) 16:00∼17:00 (3F 「しゃくなげ+りんどう」) 懇親会 : 2 月 27 日(金) 19:30∼21:00 (30F「ダイヤモンド 30」) 総 : 2 月 28 日(土) 10:00∼10:30 (32F「アクアマリン 32」) 会 編集委員会: 2 月 28 日(土) 学会事務局: 第 45 回日本嫌気性菌感染症学会事務局 東邦大学医学部 15:00∼15:30 (3F 「しゃくなげ+りんどう」) 微生物・感染症学講座内 〒143-8540 東京都大田区大森西 5-21-16 TEL:03-3762-4151(内 2396) FAX:03-5493-5415 E-mail: [email protected] -4- 会 場 への交 通 のご案 内 会場は、品川プリンスホテル メインタワー32F 「アクアマリン 32」です。 ホテルメインタワー2F より、宴会場専用エレベータで 32F までお越しください。 品川プリンスホテル 〒108-8611 東京都港区高輪 4-10-30 (代表)TEL:03-3440-1111 電車の場合 ・新幹線・JR 線・京急線の品川駅(高輪口)徒歩約 2 分。 ・京急線 羽田空港国内線ターミナル駅から最速 15 分、国際線ターミナル駅から最速 12 分。 ・品川プリンスホテルは、品川駅から徒歩約 2 分とアクセスが大変便利です。 駐車場には限りがございますので、電車・バスをご利用ください。 お車の場合 ・ 羽田空港から約 30 分。 ・ 東京シティエアターミナル(箱崎)から約 20 分。 ・ 東京駅から約 20 分。 ・ 銀座から約 15 分。 -5- 第 45 回日本嫌気性菌感染症学会 学術集会 日程表 講演会場は 32F「アクアマリン 32」 2 月 28 日(土) 2 月 27 日(金) 第一部:嫌気性菌感染症の診断と治療 8:30∼10:00 嫌気性菌感染症の診断と治療Ⅰ 8:30∼ 9:00 教育講演 共催:ファイザー株式会社 「嫌気性菌の分離・同定」 司会: 原克紀 演者:田中香お里 9:00∼10:00 一般演題 司会:国広誠子、 原克紀 09:00 10:00 10:00∼10:30 総会 10:30∼12:15 嫌気性菌感染症の診断と治療Ⅱ 10:30∼11:00 教育講演 共催:第一三共株式会社 「呼吸器における嫌気性菌感染症の治療」 司会:三笠桂一 演者:比嘉 太 11:00∼12:15 一般演題 司会:三笠桂一、平松和史 11:00 12:00 12:15∼13:15 教育(ランチョン)セミナー 「外科領域における嫌気性菌を考慮した予防と治療」 司会:鈴木賢二 演者:竹末芳生 共催:大日本住友製薬株式会社 13:00 第二部:嫌気性菌感染症の発症病態と耐性菌の問題 13:15∼15:00 嫌気性菌感染症の発症病態と耐性菌の問題Ⅰ 13:15∼13:45 教育講演 共催:塩野義製薬株式会社 「嫌気性菌感染症の発症病態と治療の現状」 司会:渡邉邦友 演者:菅野治重 13:45∼15:00 一般演題 司会:渡邉邦友、中村 敦 14:00 15:00 15:00∼15:30 15:30∼17:30 嫌気性菌感染症の発症病態と耐性菌の問題Ⅱ 15:30∼16:00 教育講演 共催:大正富山医薬品株式会社 「嫌気性菌における抗菌薬耐性菌研究の現状と今後の展望」 司会:稲松孝思 演者:石井良和 16:00∼17:30 一般演題 司会:稲松孝思、大毛宏喜 16:00 17:00 18:00 Coffee Break 開会のご挨拶 17:00∼19:30 国際シンポジウム 「All About Clostridium difficile Infection in the World」 司会:舘田一博、三鴨廣繁 演者:Thomas V. Riley Ellen Jo Baron Mark H. Wilcox 加藤はる 共催:アステラス製薬株式会社 大塚製薬株式会社 セフィエド合同会社 17:30∼17:40 19:00 19:30∼21:00 30F「ダイヤモンド 30」 懇親会 20:00 21:00 -6- 閉会のご挨拶 第 45 回日本嫌気性菌感染症学会 学術集会 プログラム 第 1 日目 2 月 27 日(金) 開会のご挨拶 17:00∼19:30 国際シンポジウム (共催:アステラス製薬株式会社、大塚製薬株式会社、セフィエド合同会社) All About Clostridium difficile Infection in the World 司 会: 舘田 一博(東邦大学) 三鴨 廣繁(愛知医科大学) 「The world-wide epidemiology Clostridium difficile infection: is the worst still to come?」 Thomas V Riley (The University of Western Australia) 「Diagnosis of Clostridium difficile infection」 Ellen Jo Baron (Stanford University ) 「Treatment of C. difficile infection(CDI)」 Mark H.Wilcox (University of Leeds) 「What is going on about Clostridium difficile infection in Japan?」 Haru Kato(National Institute of Infectious Diseases) 19:30∼21:00 懇親会 (30F 「ダイヤモンド 30」) -7- 第 2 日目 2 月 28 日(土) 第一部: 嫌気性菌感染症の診断と治療 8:30∼10:00 嫌気性菌感染症の診断と治療Ⅰ 8:30∼9:00 教育講演 (共催:ファイザー株式会社) 「嫌気性菌の分離・同定」 司 会: 原 克紀 (長崎大学) 演 者: 田中 香お里(岐阜大学) 9:00∼10:00 一般演題 司 会: 国広 誠子(前山口県立総合医療センター) 原 克紀(長崎大学) 1. Clostridium innocuum による化膿性骨髄炎の 1 例 平井 潤(愛知医科大学病院 感染症科、同 感染制御部、 琉球大学大学院医学系研究科 2. 感染症・呼吸器・消化器内科学) 感染創から Clostridium hydorogeniformans が検出された 1 症例 佐々木 雅一(東邦大学医療センター大森病院臨床検査部) 3. 歯周病原菌の関与が疑われた脳膿瘍の一例 関谷 亮(東海大学医学部附属八王子病院 4. 口腔外科) 血液培養より Alistipes onderdonkii が分離・同定された一例 野口 穣(東京都健康長寿医療センター 臨床検査科) 10:00∼10:30 総会 10:30∼12:15 嫌気性菌感染症の診断と治療Ⅱ 10:30∼11:00 教育講演 (共催:第一三共株式会社) 「呼吸器における嫌気性菌感染症の治療」 司 会: 三笠 桂一(奈良県立医科大学) 演 者: 比嘉 太 11:00∼12:15 (琉球大学) 一般演題 司 会: 三笠 桂一(奈良県立医科大学) 平松 和史(大分大学) -8- 5. 妊娠母体が Clostridium butyricum 製剤服用中に新生児腹水から C.butyricum が検 出された一例 山岸 由佳(愛知医科大学病院 感染症科、同 感染制御部) 6. Clostridium difficile 検出症例の臨床的検討 橋永 一彦(大分大学医学部 7. 呼吸器・感染症内科学講座) 一市中病院における Clostridium difficile 関連腸炎の臨床像 新里 敬(中頭病院感染症・総合内科) 8. 本邦における Clostridium difficile 感染症の疫学情報ならびに患者臨床像の検討 宮崎 泰斗(東邦大学医療センター大森病院総合診療・急病センター) 9. 36 年間に経験した高齢者剖検例における偽膜性大腸炎の検討 板倉 泰朋(東京都健康長寿医療センター 感染症内科) 12:15∼13:15 教育(ランチョン)セミナー (共催:大日本住友製薬株式会社) 「外科領域における嫌気性菌を考慮した予防と治療」 司 会: 鈴木 賢二(藤田保健衛生大学) 演 者: 竹末 芳生(兵庫医科大学) 第二部: 嫌気性菌感染症の発症病態と耐性菌の問題 13:15∼15:00 嫌気性菌感染症の発症病態と耐性菌の問題Ⅰ 13:15∼13:45 教育講演 (共催:塩野義製薬株式会社) 「嫌気性菌感染症の発症病態と治療の現状」 司 会: 渡邉 邦友(木沢記念病院) 演 者: 菅野 治重(鹿島病院) 13:45∼15:00 一般演題 司 会: 渡邉 邦友(木沢記念病院) 中村 敦(名古屋市立大学) 10. フィダキソマイシンが Clostridium difficile バイオフィルム形成に及ぼす効果 濱田 将風(東邦大学医学部 微生物・感染症学講座) 11. 当院における Clostridium difficile 分離株の病原遺伝子保有状況と臨床解析 森永 芳智(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態解析・診断学) 12. 当院における Clostridium difficile の Binary toxin 産生遺伝子保有状況 原 稔典(広島大学病院 診療支援部) -9- 13. ドラフトゲノムシークエンスによる毒素産生 Clostridium difficile の分子疫学的菌株 タイピングおよび薬剤耐性因子解析 青木 弘太郎(東邦大学医学部微生物・感染症学講座) 14. 剖検例のゲノム解析からみた C. difficile の疾患感受性遺伝子の検討 吉田 敦(獨協医科大学感染制御・臨床検査医学講座) 15:00∼15:30 Coffee Break 15:30∼17:30 嫌気性菌感染症の発症病態と耐性菌の問題Ⅱ 15:30∼16:00 教育講演 (共催:大正富山医薬品株式会社) 「嫌気性菌における抗菌薬耐性菌研究の現状と今後の展望」 司 会: 稲松 孝思(東京都健康長寿医療センター) 演 者: 石井 良和(東邦大学) 16:00∼17:30 一般演題 司 会: 稲松 孝思(東京都健康長寿医療センター) 大毛 宏喜(広島大学) 15. 化膿性唾液腺炎 12 例の臨床的・細菌学的検討 小松 祐子(奈良県立医科大学 感染症センター、同 口腔外科学講座) 16. 当院における嫌気性菌の薬剤感受性成績 宮本 仁志(愛媛大学医学部附属病院検査部) 17. 当院における Bacteroides fragilis の薬剤感受性推移と菌血症症例の検討 小佐井 康介(長崎大学病院検査部) 18. 富山大学病院における 5 年間(2009-2013 年)の嫌気性菌分離状況に関する検討 鳴河 宗聡(富山大学医学部 感染予防医学/感染症科) 19. 肺非結核性抗酸菌症における嫌気性菌の関与 山 啓(産業医科大学呼吸器内科学) 20. MALDI-TOF MS を用いた嫌気性細菌の同定 林 将大(岐阜大学 17:30∼17:40 生命科学総合研究支援センター) 閉会のご挨拶 -10- 参 加 者 へ のご案 内 1) 参加受付 品川プリンスホテル メインタワー32F 「アクアマリン 32」前 【時間】2 月 27 日(金)16:00∼19:00 /2 月 28 日(土)8:00∼15:00 2) 学会参加費 学会参加当日、受付にお支払いください。引き換えにネームプレートをお渡しいたします。 ・会員および非会員 【参加費】 5,000 円 ・学生・大学院生・留学生・研修医 【参加費・懇親会費】無料 【懇親会費】 2,000 円 (学生証あるいは留学生の証明書を当日受付にご提示ください) 3) プログラム・講演記録集 当日、受付にて 1 部 1,000 円で販売いたします。 会員の方は事前にお送りしたものをお持ちください。 4) クローク メインタワー32F にはクロークがございません。 お手数ですが、メインタワー2F クロークにお預けください。 司会の先生へのお願い 1) 司会の先生は、担当セッション開始 15 分前までに次司会席にお着きください。 2) 定刻通りの進行をお願いいたします。 演者の先生へのお願い PC 受付 【場所】品川プリンスホテル メインタワー32F 「アクアマリン 32」前 【時間】2 月 27 日(金)16:00∼19:00/2 月 28 日(土)8:00∼17:00 1) 発表形式:すべて液晶プロジェクターによるPCを用いた発表です。 操作は講演台上のキーボードとマウスで行っていただきます。 2) 一般演題は、発表時間 10 分、討論時間 5 分(計 15 分)です。 発表の 10 分前までに次演者席にお着きください。 3) 講演予定の 30 分前までにメディアか PC 本体を PC 受付までご持参いただき、試写を行いご確認く ださい。 4) PC 本体持参の場合は、試写後、会場内の PC デスクへご自身でお持ちください。 -11- 5) 発表データは USB メモリまたは CD-R(RW 不可)に保存してご持参ください。 PC 本体をご持参いただく場合も、バックアップメディアを必ずご用意ください。 6) データファイル名は「演題番号」「氏名」の順で付けてください。 【例】10 山田宏治 7) 当日会場に設置される PC の OS は Windows7 です。 ※なお、ハードディスク上に取り込まれたデータは、学会終了後に責任を持って一括消去いたします。 [PC 発表用データ作成上のお願い] ・ 使用できるアプリケーション:Windows Power Point 2003/2007/2010/2013 ・ フォントは文字化け防止のため、OS 標準のみご使用ください。 ・ 画面の解像度は XGA(1024 768)でお願いします。 ・ PC 受付でのデータ修正はできませんのでご了承ください。 ・ Mac OS で作成されたスライドは、あらかじめ Windows の PowerPoint で試写の上、 USB メモリあるいは CD-R でご持参ください。 PC を持参される先生へのお願い ・ Macintosh および動画を含む場合には PC 本体をご持参ください。音声の出力には対応いたしません。 動画は Windows Media Player で再生できるように作成してください。WMV 形式を推奨いたします。 ・ PC 受付にて映像のチェックを必ず行ってください。 ・ PC の機種や OS により出力設定方法が異なりますので事前に確認しておいてください。 ・ 接続ケーブルは Dsub-15 ピン(ミニ)を用意してあります。(写真a,b) 写真 b 写真a ・ PC によって専用のコネクターが必要となりますのでその場合は、必ずご持参ください。 特に VAIO あるいは Mac などの PC は別途コネクターが必要な場合が多いのでご注意ください。 ・ スクリーンセーバー、省電力設定はあらかじめ解除しておいてください。 解除されておりませんと、発表中にスクリーンセーバーが作動してしまうことがあります。 ・ コンセント用電源アダプタは必ずご持参ください。 バッテリーのみの場合、トラブルの原因になることがあります。 -12- 「日本嫌気性菌感染症学会雑誌」投稿規定 (平成 26 年 11 月) 本誌に投稿、掲載を希望する論文は、嫌気性菌感染症に関する内容を有するもので、他誌に発表され ていない、かつ投稿中でないものとする。正し、他誌に英文で掲載されたものは同一内容を和文で本誌 に投稿することは許可する。二重投稿および同時投稿でない旨を明記し、著者全員が署名した誓約書を 添付すること。筆頭または論文の責任者(Corresponding author)は投稿時に日本嫌気性菌感染症学会会 員であることが必要である(Letter to the editor は本学会会員でなくても良い)。入会手続きは、日本嫌気 性菌感染症学会事務局(愛知医科大学病院感染症科内:Tel. 0561-61-1842)まで問い合わせのこと。論 文は、原則として、和文または英文とする。 和文投稿規定 1. 原著、症例報告の投稿形式は、論文題名、著者名、所属施設名(和、英併記のこと)、和文要旨、英 文抄録、索引用語(4 語以内、日本語) 、本文、文献とする。図表の説明は特に問わない。Letter to the editor は、本文、図表、索引用語とする(本学会誌に掲載された論文以外の内容に関する letter も掲 載対象とする)。原著の論文形式は、はじめに、対象および方法、成績(結果)、考察、結論の順に 記載する。著者連絡先は、住所、電話番号を併記する。論文の著者数については人数制限を設けない。 2. 用語は新仮名遣いを用い、本文中の外国人名は原語で、薬品については一般名で掲載する。細菌学 名は学名を用いイタリック体とする。また、論文中にしばしば繰り返し登場する用語については略 語を用いて差し支えないが、とくに慣用されているものを除き、初出の際は完全な用語を記載し、 以後、略語を使用する旨記述する。 (例)minimum inhibitory concentration(最小発育阻止濃度;以下、MIC) 3. 英文抄録は、論文タイトル、著者名、所属施設名を含めて、A4 用紙に 10.5 ポイント文字ダブルス ペース 1 枚とする。 4. 文献の記載方法: a) 記載順序の引用順とし、本文中に肩付き番号を付すこと。 b) 欧文誌は Index Medicus にならい、著者名、題名、雑誌名、西暦年号、巻数、頁数(始―終)の 順に記載する。 c) 和文誌についても欧文誌に準ずる。 d) 誌名略記は、邦文文献は医学中央雑誌刊行会の略とし、外国文献については国際略語規約に準 じた Index Medicus 所載のものとする。 (例)1) 三鴨廣繁、山岸由佳、澤村治樹、他.癌性腹膜炎患者に認められた Clostridium sordellii に よる菌血症の一例.日本嫌気性菌感染症研究 2011; 41: 117-125 (例)2) Mikamo H, Kawazoe K, Sato Y, et al: Preterm labor and bacterial intra-amniotic infection: arachidonic acid liberation by phospholipase A2 of Prevotella bivia. Anaerobe 1998; 4: 209-212. e) 単行本については、著者名、題名、編者名、書名、巻、版、発行地、発行所、西暦年号、頁数 (始―終)(和文以外のものでは編者名と書名、巻、版を逆の順とする)。 -13- (例)3) 三鴨廣繁:3. 感染症 クロストリジウム感染症.山口徹、北原光男、福井次夫編.今日の 治療指針 私はこう治療している、2012 年版.東京、医学書院、2012 年 1 月 1 日.pp. 218-219 (例)4) Thielman NM, Wilson KH. Antibiotic-associated colitis (chapter 96). In: Mandell GL, Bennett JE, Dolin R, eds. Mandell, Douglas, and Bennetts Principles and Practice of Infectious Diseases. 7th ed. Philadelphia: Elsevier Churchill Livingstone, 2010; 1375-1388. f) 5. 著者名は 3 名までは併記し、それ以上は「ほか」または「et al」として記載する。 投稿要領について: a) 原稿は横書き 400 字詰 A4 判の原稿用紙様式とし、投稿形式を明記する。ワートプロセッサー 使用の場合、1 頁 400 字とし、活字は A4 判、MS 明朝、10.5 ポイント、ダブルスペースとする。 b) 図(写真も含む)、表は A4 判大の用紙に貼付し、そのまま印刷可能な明瞭なものが望ましい。 トレースを必要とする場合は実費を徴収する。写真は原則的にはモノクロとし、図表は 1 枚に つき原稿用紙 1 枚分とする。 c) 著者校正は 1 回限りとする。校正用ファイル(ゲラ刷り)について、誤字・脱字・写真画像の 鮮明度等、正確に粗版されていることを確認する。返送期日を厳守すること。 d) 論文の枚数の制限は問わない。 【表】 論文形式 総説 トピックス 原著 症例報告 Letter to the editor 6. 本文 図表 枚数不問 和文要旨 英文抄録 字数不問 索引用語 4語 投稿料については、別途定める。カラー掲載を希望する場合には投稿者の実費負担とする。別冊に ついては実費(依頼論文は 30 部まで無料とする)とし、料金徴収後に送付する。希望別冊数は 50 部単位で校正刷に明記の上、申し込むこと。 7. 投稿論文の採否は編集委員会の審査により決定し、可及的速やかに筆頭論文著者に通知する。 8. 投稿規定は、改正することがある。 9. 論文の送付先: 〒480-1195 愛知県長久手市岩作雁又 1 番地 1 愛知医科大学病院 感染症科内 10. 電話・FAX:0561-61-1842 日本嫌気性菌感染症学会 事務局 メール:[email protected] 11. 原稿ファイルの作成について: 著者は、本文、文献、和文要旨、英文抄録を以下の規定に従って入力し、提出するものとする。 欧文、数字、小数点、斜線(/)などは半角を使用 句読点はピリオド(.)とコンマ(, )を使用 データはメールに添付して送付するか、CD または DVD に保存して郵送する。データファイル には氏名、入力機種、システム名、Version を明記する。また合わせて印刷したものを一部送付 する。 12. 臨床研究の場合にはヘルシンキ宣言に基づいて行わなければならない。動物実験の場合には動物実 験の適正な実施に向けたガイドラインなどを参照して、科学的および倫理的規範に準じて行い、施 設のガイドラインに準拠することとする。 -14- 英文投稿規定 Journal of Japanese Association for Anaerobic Infection Research INSTRUCTIONS FOR AUTHORS Japanese Association for Anaerobic Infection Research will accept original manuscripts which contain material that has not been reported elsewhere. Authors and coauthors should be a member of this society. Manuscript Submission and Copyright Agreement Form The Copyright Agreement form should be submitted once your paper has been accepted for publication. Manuscripts cannot be published without this form. The corresponding author is responsible for obtaining signatures of coauthors and affirming that the manuscript is original, that all statements asserted as facts are based on author (s) careful investigation and research for accuracy, that the manuscript dose not, in whole or in part, infringe any copyright or violate any law of privacy or other personal or property right whatsoever; that it has not been published in total or in part; is not being submitted and/or considered for publication in total or in part elsewhere; and that the author (s) has full authority to enter into this copyright agreement and to make the grants contained herein. Preparation of Manuscript Type the manuscript on white bond paper ISO A4 (212 x 297 mm), with margins of at least 25 mm (1 in). Type only on one side of the paper. Use double spacing throughout with 12 points font, including title page, abstract, text, acknowledgements, references, tables, and legends for illustrations. Being each of the following sections on separate pages: title page, abstract and key words, text, acknowledgements, references, individual tables, and legends. Be prepared to submit: The manuscript title All author (s) names, valid email address and affiliations. Corresponding author information, including name, address, and phone numbers. The structured abstract should consist of Background, Methods, Results, and Conclusions. At the end of the paper, give the name and address of the individual to whom reprint requests should be directed. Key words Less than 4 key words should be listed below the abstract for indexing purposes. Table and Illustrations Prepare each table with its title as a separate file. Use Arabic numerals to number tables. Each table must stand alone –i.e., contain all necessary information in the caption, and the table itself must be understood independently of the text. Details of experimental conditions should be included in the table footnotes. Information that appears in the text should not be repeated in a table, and tables should not contain data that can be given in the text in one or two sentences. In principle, color photographs are not be acceptable. -15- References The Vancouver system of referencing should be used (example are given below). In the text, references should be cited using superscript Arabic numerals in the order in which they appear. If cited in tables or figure legends, number according to the first identification of the table or figure in the text. Names of journals should be abbreviated in the style used in Index Medicus. Authors are responsible for the accuracy of the references. Journal papers: Mikamo H, Kawazoe K, Sato Y, et al. Preterm labor and bacterial intra-amniotic infection: arachidonic acid liberation by phospholipase A2 of Prevotella bivia. Anaerobe 1998; 4: 209-212. Books: Thielman NM, Wilson KH. Antibiotic-associated colitis (chapter 96). In: Mandell GL, Bennett JE, Dolin R, eds. Mandell, Douglas, and Bennetts Principles and Practice of Infectious Diseases. 7th ed. Philadelphia: Elsevier Churchill Livingstone, 2010; 1375-1388. When a citation has more than four authors, list the first three and use “et al.” If it is necessary to cite an abstract, this should be designated. Abbreviations of journal titles should follow MEDLINE. Authors are responsible for the accuracy of the references, and are reminded that inaccurate references are highly frustrating to the reader, the cited authors, and indexing services. Within the text, citations should be identified by numbers in brackets, and the list of references at the end of the paper should be numbered by order of citation. Ensure that issue numbers are omitted from the reference citation. Only works referred to in the text and already accepted for publication can be included. The regulation of the number of pages of the paper and the number of words of the abstract Type of article Review article Topic article Original article Case report Lettert the editor Text Table and figure Abstract Key word Not restricted Not restricted Not restricted 4 words Publishing charge Publishing charge of all articles are free. Reprints Reprints may be ordered 50 prints and charged actual expenses. Please use the order form that will accompany the proofs. Ordered after the issue is printed will be charged at a substantially higher rate. Addressee of the manuscript submission The editorial board of Journal of Japanese Association for Anaerobic Infection Research 1-1 Yazakokarimata, Nagakute, Aichi, 480-1195, Japan. Telephone/fax: (+81)-561-61-1842; Email: [email protected] In addition to the printed manuscript, please submit text of manuscripts in Microsoft Word which is recorded in CD or DVD with the label indicating author’s name, type and version of OS (Windows or Macintosh), and version of Microsoft Word. -16- [講演抄録] 国際シンポジウム 教育講演 -17- 国際シンポジウム All About Clostridium difficile Infection in the World The world-wide epidemiology Clostridium difficile infection: is the worst still to come? Thomas V Riley 1) 2) Microbiology & Immunology, The University of Western Australia, Ned lands 6009, Western Australia 1) Department of Microbiology, PathWest Laboratory Medicine (WA), Queen Elizabeth II Medical Centre, Ned lands 6009, Western Australia 2) Clostridium difficile infection (CDI) has come to prominence as major human epidemics caused by the PCR ribotype (RT) 027 strain of C. difficile have occurred in North America and Europe over the last 15 years. The main virulence factors of C. difficile are two toxins, TcdA (an enterotoxin) and TcdB (a cytotoxin), while the role of a third “binary” toxin remains controversial. Contamination of the environment with C. difficile spores plays a critical role in transmission as spores remain in the environment for months. C. difficile also causes infectious diarrhoea in animals and is found in pigs, horses, and cattle, suggesting a potential reservoir for human infection, and in food, suggesting the possibility of food-borne transmission. It is likely that excessive antimicrobial exposure is driving the amplification of C. difficile in animals rather than the organism just being normal flora of the animal gastrointestinal tract. Outside Australia, RT 078 is the most common RT of C. difficile found in pigs (83% in one study in the USA) and cattle (up to 100%) and this RT is now the third most common RT of C. difficile found in humans in Europe. Human and pig strains of C. difficile are genetically identical in Europe confirming that a zoonosis exists. Rates of community-acquired CDI are increasing world-wide and environmental contamination may play a role in this. C. difficile spores survive in treated piggery effluent, the by-products of which are used to irrigate crops and pasture, and manufacture compost. There is abundant evidence that food products intended for human consumption contain toxigenic strains of C. difficile but food-borne transmission remains unproven. Thus world-wide there are three problems that require resolution: a human health issue, an animal health issue and the factor common to both these problems, environmental contamination. The situation in Asia regarding CDI is less clear. RT 027, which is still a major RT in North America, has been reported only sporadically in Hong Kong, Japan, Korea, Singapore and, more recently, China. Similarly, RT 078 has only been reported in Korea and China. The RTs most commonly reported in Asia are 017, 018, 014, 002 and 001. These RTs are among the top 10 most commonly found RTs in Europe. Of note, RT 017, which is a toxin A-negative, toxin B-positive (A−B+) strain, has been the predominant strain in China and Korea, and is prevalent in Japan, Taiwan and Hong Kong. This RT has also caused epidemics in The Netherlands and Ireland, and is an emerging RT in Australia. Only one study investigating C. difficile in production animals in Asia has been published, reporting a low prevalence of 0.8% (2/250) among finishing pigs in Japan. While more work is required, there is good evidence that C. difficile in production animals is spilling over into humans by an as yet undetermined mechanism. While the organism will be new to many proponents of “One Health”, the concept will not and it will require a multi-disciplinary approach to prevent animal strains of C. difficile infiltrating human health systems as appears to have happened in North America. and urgently required. -18- Better surveillance for CDI in Asia is essential, 国際シンポジウム All About Clostridium difficile Infection in the World Diagnosis of Clostridium difficile infection Ellen Jo Baron Stanford University (Medicine; Pathology) Medical Affairs, Cepheid, USA This presentation will outline the early discoveries that led to the recognition of Clostridium difficile, an anaerobic spore-forming rod, as the major microbial cause of antibiotic-associated diarrhea. Over time, Staphylococcus aureus was found to be less important and a Clostridium species was identified to cause disease in hamsters that were injected intracecally with patient samples or broth cultures containing the organism, soon after identified as C. difficile by pioneering work of Dr.’s John Bartlett, Sherwood Gorbach, and Andy Onderdonk. Now we recognize that the disease is a biofilm-based syndrome, which explains how fecal transplants have been the most successful treatment methods for otherwise intractable cases. The various pathogenic mechanisms of the organism will be described, including a discussion of all three important toxins: enterotoxin (toxin A), cytotoxin (toxin B), and binary toxin. Knowledge of toxin activity led to the development of various laboratory test methods for diagnosis of C. difficile infection (CDI). Each method, starting from the gold standard toxigenic culture, moving to cell culture cytotoxin neutralization, enzyme immunoassays for toxins A and B, enzyme immunoassays for glutamate dehydrogenase (GDH), loop-mediated nucleic acid amplification (LAMP), and finally other nucleic acid amplification methods for genetic markers of C. difficile, will be presented and briefly described. The presentation will end with an example of one healthcare system’s efforts to control a C. difficile outbreak and the laboratory-based intervention that resulted in a turning point in decreasing cases and serious patient outcomes caused by this clever bacterium. -19- 国際シンポジウム All About Clostridium difficile Infection in the World Treatment of C. difficile infection (CDI) Mark H. Wilcox Leeds Teaching Hospitals & University of Leeds, Leeds, UK Public Health England CDI should be managed according to disease severity and risk of recurrence. Severe CDI is characterised by at 9 least one of: white blood cell count >15 x 10 /L, acute rising serum creatinine (i.e. >50% increase above baseline), temperature >38.5°C, or abdominal or radiological evidence of severe colitis. There are currently two main treatment options for severe CDI; either oral vancomycin 125 mg qds for 10–14 days, or fidaxomicin. Fidaxomicin should be considered for patients with severe CDI who are considered at high risk for recurrence (e.g. elderly patients with multiple comorbidities who are receiving concomitant antibiotics). Metronidazole monotherapy should be avoided in patients with severe CDI because of increasing evidence that it is inferior to vancomycin (or fidaxomicin). In severe CDI cases who not responding to oral vancomycin 125 mg qds, oral fidaxomicin 200 mg bd is an alternative; or high-dosage oral vancomycin (up to 500 mg qds, if necessary administered via a nasogastric tube), +/- iv metronidazole 500 mg tds. Evidence is lacking regarding the efficacy of oral rifampicin or iv immunoglobulin as adjunctive options in severe CDI. Tigecycline has been used to treat severe CDI not responding to conventional options, but is an unlicensed indication. In life-threatening CDI (i.e. hypotension, partial or complete ileus or toxic megacolon) oral vancomycin up to 500 mg qds for 10–14 days via naso-gastric and/or rectal installation plus iv metronidazole 500 mg tds are used, but there is a poor evidence base in such cases. These patients require close monitoring, with specialist surgical input. Colectomy should be considered, especially if caecal dilatation is >10 cm, or for perforation or septic shock. Colectomy is best performed before blood lactate rises > 5 mmol/L, when survival is extremely poor. Total colectomy with end ileostomy has been the preferred surgical procedure. An alternative approach, diverting loop ileostomy and colonic lavage, has been reported to be associated with reduced morbidity and mortality. There is a healthy pipeline of novel treatment (and prevention) options for CDI. -20- 国際シンポジウム All About Clostridium difficile Infection in the World What is going on about Clostridium difficile infection in Japan? Haru Kato Department of Bacteriology II, National Institute of Infectious Diseases, Japan Clostridium difficile is well known as one of the most common organisms to cause healthcare-associated infection. A global spread of a hypervirulent strain, PCR ribotype 027 (BI/NAP1/027) that is resistant to new fluoroquinolones has been reported in recent decades although variation on the prevalence of 027 among countries was noted. In Japan, while outbreaks due to 027 C. difficile have not documented so far, there were a few reports of sporadic cases. Of these, a report documented that a young woman without any previous medical history suffered from fulminant colitis caused by 027 C. difficile, which was susceptible to gatifloxacin and moxifloxacin. It was suggested that PCR ribotype 027 has the potential virulence factors that are not associated with a fluoroquinolones resistance-conferring mutation. We have identified a PCR ribotype, named as type smz, which has been prevalent in multiple Japanese hospitals since the 1990s. PCR ribotype smz strain, which is toxin A-positive, toxin B-positive, binary toxin-negative was found to be epidemic as well as endemic in Japan. Also, PCR ribotype trf strain, which is toxin A-negative, toxin B-positive, binary toxin-negative has caused outbreaks at some Japanese hospitals. Our recent study showed that among 120 isolates collected from 15 hospitals in non-outbreak settings, only 5 (4%) were binary toxin-positive and one of these was 027. Nucleic acid amplification test (NAAT) detecting presumptive 027 C. difficile may be introduced to Japan soon. The test results should be read in view of the difference in molecular epidemiology between in countries where 027 is epidemic and in Japan. At Japanese hospitals, enzyme immunoassay (EIA) detecting toxin A and/or toxin B, EIA detecting glutamate dehydrogenase (GDH), and C. difficile-culture are available as laboratory tests for CDI. According to the results of questionnaire study (General Meeting of Japanese Society for Clinical Microbiology, 2013), GDH test is performed in 128 (77%) of 166 clinical laboratories responding. However, results of GDH test are not necessarily reported to physicians at some hospitals, because some physicians cannot read the test results. It may highlight the fact that laboratory testing is not always performed properly. Since awareness of CDI considerably varies among hospitals in Japan, not negligible CDI cases may be overlooked. Recently new therapies, new laboratory tests, vaccines and so on are being introduced to Japan from one to the next. Before introducing those, there is an urgent need to increase awareness of CDI. -21- 教育講演 1 嫌気性菌の分離・同定 田中 香お里 1) 2) 岐阜大学生命科学総合研究支援センター嫌気性菌研究分野 岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科 2) 1) 検体から病原体の存在をしめす直接的・間接的な情報を得ることは、確定診断につながる重要な手がかり となる。嫌気性菌感染症では嫌気性菌の分離・同定が、そのための主要な役割を担っているが、嫌気性菌の 検査については、一般好気性菌に比べて分離に手間と時間がかかる、同定が容易ではない、費用が嵩むとし て敬遠されがちである。人員、費用の削減という厳しい現状のもとでは、さらに実施しづらい検査になって いる。一方、嫌気性菌検査の必要性も認識されており、このことが嫌気性菌の検査マニュアルの発刊や検査 技術セミナーの需要に現れていると考えられる。 嫌気性菌検査ガイドライン、検査技術セミナーは、制約のある中でも出来るだけ効率のよい、有用な結果 を得ることを目標に構成されている。そのための大切なステップとして、嫌気性菌の検査に適した検体の選 択と検査方針に関わる検体のカテゴリー分類がある。また、より検査に適した検体を得るために適切な検体 採取・輸送・検体に関する情報が大切である。分離菌の同定については、出来るだけ経済的に、また診断に 必要な限定的な情報を得る手段として、下記のレベル別同定の考え方が導入されている。 ・ レベル 1(同定キットを使用しない) 1a:寒天平板上での集落の特徴、グラム染色性と菌形の特徴、簡易性状試験から菌群を推定同定 1b:選択・確認培地を利用したグループ分けと 1a の形態・簡易性状試験を組み合わせて菌群を推定同定 ・ レベル 2(同定キットを使用する) レベル 1 の情報に加えて、必要と考えられる場合(カテゴリーA:嫌気性菌培養の価値がある臨床材料) に、適用可能な菌群について同定キットを用いて行うより詳細な同定 ・ レベル 3(遺伝子解析による同定) レベル 3 については、通常実施しない検査であるが、レベル 1、レベル 2 では必要な情報が十分に得ら れない場合、治療に難渋し医師からの要望がある場合、今後の症例情報として詳細同定を実施する必要が ある場合など可能な機関等に依頼して実施する。 通常検査室で実施するレベル 1、2 の検査では、レベル 1 の手技が土台であり、主要な嫌気性菌の嫌気性 血液寒天培地と選択分離培地上での集落の特徴、グラム染色所見の特徴を把握しておくことは、同定精度、 効率の向上を図る上で大切である。内因性の嫌気性菌感染症では、通性菌を含む複数菌が関与する場合が 一般的であること、微少でも無視できない菌種があることから、集落を見る目を養っておくことが、見落 としを防ぎ、また、部分同定で止める株、より詳細な同定を試みる株の選択にも影響する。ここ数年、一 部の施設では細菌同定用の MALDI TOF-MS が導入され、同定精度と同定効率は画期的に向上しつつある。 より多くの菌株が低コストで同定可能となっており、こういった施設では菌の分離により重点を置くこと が課題となったともいえる。 ところで MALDI TOF-MS は迅速同定、同定精度の上で画期的な機器であるが、データベースに登録さ れていない菌種は同定できない。抵抗力の低下した患者の血液培養からときに分離される菌種は、通常感 染症材料からの分離頻度が低い常在菌種であることが多く、同定キット、MALDI TOF-MS とも同定不能で ある場合がある。確定同定にはレベル 3 の同定が必要になるが、形態・性状に特徴がある菌種であれば、 レベル 1、あるいは同定キットの性状試験項目を利用して推定同定可能な場合もある。この場合、拠り所 となるのは、菌株の正確な同定と目に見える形態・性状情報を伴った症例報告である。症例情報について は、同定の段階のみならず、分離培地の選択、培養日数、菌分離の際に注意すべき点などを考慮するのに 有用な情報が含まれるものもある。制約の多い中での検査からより多くの結果を得るために、症例情報や 過去の経験を取り入れて行くことが必要であり、今後より多くの症例報告が蓄積されることが望まれる。 -22- 教育講演 2 呼吸器における嫌気性菌感染症の治療 比嘉 太 琉球大学医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学講座(第一内科) 感染性肺炎は実地臨床でよく遭遇する common disease の一つであると同時に、患者の臨床背景、起炎微生 物の病原性や治療抵抗性、により極めて多様な病態を呈する。感染性肺炎は発症する場によって、市中で自 立して生活している人々に発症する市中肺炎(Community- acquired pneumonia; CAP)と入院患者に発症する 院内肺炎(Hospital- acquired pneumonia; HAP)に大別することができるが、両者は患者背景、病原微生物の疫 学、診断体系、治療薬の選択方針が全く異なっている。さらに、近年増加傾向にある長期療養施設入所者や 濃厚な外来診療・ケアを受ける人々に発症する肺炎は医療・介護関連肺炎(Nursing and Healthcare- associated pneumonia; NHCAP) 1) と呼称され、従来の市中肺炎や院内肺炎とは異なる診療体系の構築が求められている。 一方で、肺炎は時に致命的な状態に陥る可能性がある。肺炎は我が国における死因の第 4 位を占め、国民全 死亡数の 9.9%、118,888 名にのぼる(平成 22 年)。 高齢者における市中肺炎では高率に不顕性誤嚥が認められる。高齢者の市中肺炎と誤嚥性肺炎は病態的に 相似している。本邦における調査では、誤嚥性肺炎は極めて高頻度に発生しており、市中肺炎の 60.1%、院 内肺炎の 86.7%を占めている。誤嚥のリスク要因は、嚥下機能障害、胃食道逆流、口腔喉頭領域の解剖学的 異常、が挙げられる。高齢者は嚥下障害と胃食道逆流の有病率が増加し、誤嚥による肺疾患のリスクが高い 集団になる。誤嚥性肺炎の多くは NHCAP に分類される。 呼吸器感染症の起炎微生物の頻度は患者の生活環境によって、起炎微生物の頻度にも大きな相違がみられ、 また背景にある基礎疾患の有無あるいは重症度に応じても異なる。起炎菌サーベイランスは既に多く報告さ れているが、その殆どにおいて起炎菌不明例が半数近くに及ぶことに留意する必要がある。従来の起炎菌不 明例の中には嫌気性菌を含む口腔内常在菌が関与している可能性がある。より正確な起炎菌同定法として、 経気管的吸引法や経皮的肺穿刺による肺炎および肺化膿症の病原微生物の同定が行われる。我々の施設での 肺炎・肺化膿症における肺穿刺吸引による検討では Streptococcus milleri group(現在は S. anginosus group)6 件、α-streptococci 7 件、嫌気性菌 22 件(Peptostreptococcus spp., Prevotella spp., Fusobacterium spp.)などが検 出された。また、我々の検討では、呼吸器系ウイルスも起炎菌不明例に関与している可能性を示す成績が得 られている。 最近の分子生物学的手法を用いた研究により、呼吸器感染症における嫌気性菌の臨床的意義が改めて注目 されている。肺炎・膿胸における嫌気性菌を含む口腔内常在菌の重要性、慢性気道感染症急性増悪における 嫌気性菌の関与が示唆され、新たな展開をもたらしている。 -23- 教育講演 3 嫌気性菌感染症の発症病態と治療の現状 菅野治重 公益財団法人 鹿島病院 感染症診療支援センター Ⅰ.嫌気性菌感染症の発症病態 嫌気性菌感染症には破傷風やボツリヌス症など Clostridium 属菌が産生する特殊な毒素による外因性感染 と、人体の粘膜面に大量に常在する嫌気性菌が原因となる内因性感染がある。嫌気性菌は酸素の存在下では 発育できないため発症には嫌気的条件が必要である。破傷風では外傷をきっかけとして好気性菌が皮膚軟部 組織に感染し、その結果生じた壊死組織に土壌中に棲息する Clostridium tetani の芽胞が付着・増殖すること によって毒素が血中に入り破傷風を発症する。また元来嫌気的条件下にある腸管では抗菌薬投与などによっ て常在菌が減少すると Clostridium difficile が過剰に増殖し、偽膜性大腸炎を含む下痢症を発症する。嫌気性菌 が発症に関与する可能性が高い深部膿瘍や誤嚥性肺炎でも血行障害や壊死組織の存在が嫌気性菌の増殖に必 要であり、好気性菌の先行感染がそのきっかけとなる場合が多い。このような理由から嫌気性菌は好気性菌 の同時に検出される場合が多く、原因菌の決定が困難な症例が多く、同時に検出された好気性菌を考慮した 治療が必要な症例が多い。 Ⅱ.嫌気性菌の抗菌薬耐性 嫌気性菌の抗菌薬に対する耐性の問題は Bacteroides fragilis group に高率にみられる clindamycin に対する耐 性、Prevotella 属菌にみられるペニシリナーゼ産生によるペニシリン系薬に対する耐性などが代表的である。 Bacteroides fragilis group のカルバペネム系薬やオキサセフェム系薬に対する耐性株が報告されているがまだ 検出は稀であり、現在は臨床上の驚異にはなっていない。なお clindamycin 耐性株は Clostridium perfringens にも検出されるなどグラム陽性菌にも広がっている。しかし嫌気性菌感染症は感染病巣に壊死組織や血流障 害が存在する症例が多いため、血流に介して病巣に移行するβーラクタム系薬よりも好中球に良好に移行する clindamycin が 治 療 に 有 効 な 場 合 が あ り 、 抗 菌 薬 の 使 い 分 け が 必 要 で あ る 。 グ ラ ム 陽 性 球 菌 で は Peptostreptococcus anaerobius のペニシリン系薬に対する MIC が少し上昇傾向にあるがまだ治療上の問題には なっていない。このように嫌気性菌の抗菌薬に対する耐性化は好気性菌に比べて進んでいない。なお昨年日 本でも metronidazole がようやく発売された。今後は metronidazole に対する耐性も経時的に調査する必要があ る。 -24- 教育講演 4 嫌気性菌における抗菌薬耐性菌研究の現状と今後の展望 石井 良和 東邦大学医学部微生物・感染症学講座 編性嫌気性菌の耐性因子に関する研究は、通性嫌気性菌と比較すると多くの報告があるとは言えない。β ラクタム系薬に対するグラム陰性菌の主要な耐性因子である、βラクタマーゼは、2014 年 8 月までに 1600 を上回る種類が報告されている。 一方、嫌気性菌の中で報告が多い Capnocytophaga や Prevotella、Fusobacterium などの口腔内に生息するグラム陰性の嫌気性菌は、主として Ambler 分類によるクラス A に属する CepA, CblA, CfxA, CSP-1 and TEM などのβラクタマーゼを産生することが報告されている。一方、Bacteroides fragilis で は CfiA と呼ばれるクラス B に属するβラクタマーゼが報告されている。さらに Fusobacterium nucleatum で は FUS-1 と呼ばれるクラス D に属する酵素産生株が報告されている。非常に興味深いことに B. fragilis や Clostridium spp.はモノバクタム系薬であるアズトレオナムに自然耐性を示すことが知られている。嫌気性菌の βラクタムに対する感受性は様々であるが、βラクタム系薬に対する耐性は主としてプラスミドまたは他の 可動性遺伝因子上に存在する耐性遺伝子よってもたらされると考えられている。 口腔内には 700 以上の細菌種がバイオフィルムを形成して生息しているが、そのうちの半数は培養不能菌 種である。このバイオフィルムという特殊な環境が遺伝子の形質転換や接合伝達、形質導入などをより容易 にしていると考えられる。口腔は、グラム陰性嫌気性菌におけるβラクタム耐性遺伝子の重要なリザーバで あるとともに遺伝子交換のための重要な場として認識する必要がある。 また、多剤耐性に関与する多剤排出ポンプに関する研究も進められている。すなわち、臨床材料から分離 された多剤耐性の B. fragilis において、緑膿菌の MexAB-OprM (RND 型の排出ポンプ)のアナログである BmeABC をコードする遺伝子が過剰に発現されていることが報告されている。 本発表では嫌気性菌における抗菌薬耐性の研究、特にβラクタマーゼを中心に現在までに到達点と今後の 展望に関して私見を交えて議論する。 -25- -26- [講演抄録] 一般演題 -27- 1. Clostridium innocuum による化膿性骨髄炎の 1 例 ○平井 潤 1) 2) 3) 、山岸 由佳 1) 2) 、三鴨 廣繁 1) 2) 愛知医科大学病院 感染症科 1) 愛知医科大学病院 感染制御部 2) 琉球大学大学院医学系研究科 感染症・呼吸器・消化器内科学 3) 【緒言】Clostridium innocuum(C. innocuum)は Clostridium 属に分類されているが、ほとんどがグラム染色で 陰性桿菌として観察される芽胞非形成菌である。C. innocuum は、Clostridium 属の中でも C. ramosum、C. clostridioforme group の一部(C. clostridioforme、C. bolteae、C. hathewayi など)と同様に多くの抗菌薬に耐性 を示す菌種である。近年、白血病患者や臓器移植患者などの免疫不全患者における日和見病原体として感染 症例の報告が散見される。今回、健常者の外傷後に発症した C. innocuum による難治性の骨髄炎症例を経験し たため報告する。 【症例】特記すべき既往歴がない 18 歳男性。大学からの帰宅途中に後方より原付バイクに衝突され、排水溝 に転落後、右前腕切創と右尺骨骨幹部骨折のため当院救急外来受診となった。右尺骨骨幹部骨折に対して観 血的整復固定術を施行後に退院となっていたが、退院後 28 日目より創部に腫脹・熱感・圧痛が出現し、退院 後 33 日目には発熱に加え、術創部より排膿も認められるようになったため当院再受診。画像上、皮下膿瘍の 存在と骨髄炎が疑われ、緊急で壊死・汚染組織のデブリドメンと大量の生食によるジェット洗浄が施行され た。術中に腐骨とプレート周囲の膿汁様混濁浸出液の存在が確認されたため、プレート上にドレーンを 2 本 留置後に手術終了となった。術後 3 日目に、術中検体として提出した膿からガス産生を伴うグラム陽性桿菌 が検出されたため感染症科介入。主科で LZD+RFP が投与されていたが、嫌気性菌カバーのための TAZ/PIPC と、塗抹上疑われた Clostridium 属による毒素産生予防のため CLDM の併用を推奨した。その後、検出した嫌 気性菌が C. innocuum と判明し、腐骨の培養検査でも C. innocuum が検出された。C. innocuum の抗菌薬感受性 判明後に、治療レジメンを SBT/ABPC+LZD(毒素産生予防目的も期待)へ変更するも、術後 10 日目のドレ ーン培養より C. innocuum に加え Citrobacter koseri(C. koseri)が検出された。ドレーンからの逆行性感染が 疑われ、再度緊急で洗浄と不良肉芽組織の除去を徹底的に行い、尺骨の固定に使用したプレートの抜去を行 った。術後は C. koseri に対して MEPM も追加投与となった。この際の術中検体培養からは再度 C. innocuum のみが検出された。そのため、SBT/ABPC による治療不良を考慮して、抗嫌気性抗菌薬は SBT/ABPC から MNZ へ変更し、MNZ+LZD+MEPM のレジメンで治療継続を行った。その後、経過良好で、術後 25 日目に STFX 単剤、術後 63 日目には AMPC+CVA/AMPC の 2 剤へ切り替え、今後は骨癒合が起こるまで治療を行う 予定である。現在のところ内服薬切り替え後に再燃を認めず、外来通院中である。 【考察】C. innocuum による感染症はこれまで腹腔内感染、心内膜炎、菌血症などの報告があり、特に菌血症 の予後は他の Clostridium 属と比較して死亡率が高いことが報告されている。過去には C. innocuum による化 膿性骨髄炎の報告は 1 例も認められておらず、本例は貴重な症例と考えられた。化膿性骨髄炎は再燃するこ とが多く、本例でも長期間の注意深い経過観察を行っていきたい。 -28- 2. 感染創から Clostridium hydorogeniformans が検出された 1 症例 ○佐々木 雅一 1) 、青木 弘太郎 2) 、村上 日奈子 1) 、安井 久美子 1) 、福澤 滋 前原 和花 1) 、湯元 重雄 1) 、岩田 守弘 1) 、石井 良和 2) 、舘田 一博 2) 東邦大学医療センター大森病院臨床検査部 東邦大学医学部 微生物・感染症学講座 2) 1) 、榎園 恭子 1) 、 1) 【はじめに】Clostridium 属は偏性嫌気性菌に分類されるが、C. tertium など一部に耐気性を示す菌種が知られ ている。2010 年に地下水から分離された Clostridium hydorogeniformans が耐気性を示す新しい菌種として報告 された。今回、我々は左母指指尖部挫創部位より同定に難渋した C. hydorogeniformans を検出したので報告す る。 【症例】78 歳男性。電動のこぎりで作業をしていたところ、誤って左母指を切った。形成外科を受診、洗浄 後に縫合し破傷風トキソイドを接種した。受傷後 6 日目から悪臭を認め、部分抜糸し排膿・洗浄を実施した。 Cefazolin の投与を開始し、受傷後 11 日目にも少量の排膿が認められ培養に提出された。その後、改善傾向の ため Amoxicillin/Clavulanic acid 内服に変更し、受傷後 1 ヶ月で抗菌薬治療は終了した。 【微生物学的検査】血液寒天・BTB 寒天培地に検体を接種し、それぞれ 5%炭酸ガス培養、好気培養にて 35℃ の条件で培養を実施した。翌日、血液寒天培地に 0.5 - 1mm 程度の微小コロニーの発育を認め、48 時間まで 培養を継続すると直径 2mm 程度の溶血を示す目玉焼き状コロニーとなった。グラム染色を実施したところや や太めのグラム陽性桿菌であり、好気培養で発育したことから CrystalGP(日本ベクトン・ディッキンソン)、 Api Coryne(シスメックス・ビオメリュー)を用いて同定を行った。Crystal GP では Helcococcus kunzii 、Api Coryne では Propionibacterium avidum の同定結果となった。性状・形態などの矛盾から再同定を行うために継 代培養を繰り返すうちにグラム染色で芽胞の存在を認め、嫌気培養を実施したところラフ型の 5mm 前後のコ ロニーを形成し、嫌気培養で良好な発育を認めることから耐気性 Clostridium 属の可能性が疑われた。Crystal ANR を用いて同定を行ったところ Lactobacillus 属を示唆したが芽胞の存在などから否定的であった。 16SrRNA 塩基配列解析による精査を実施したところ最終的に C. hydorogeniformans と同定された。薬剤感受 性検査はまた、ドライプレート(栄研化学)を用いて実施した。Penicillin G、Ampicillin、Piperacillin/Tazobactam、 Ceftriaxon、Cefepime、Imipenem、Meropenem、Clindamycin、Vancomycin、Ciprofloxacin に低い MIC を示し、 耐性傾向は認められなかった。 【考察】C. hydorogeniformans は新しい菌種で、現在市販されている同定試薬のデータベースに存在しないた め同定不能である。従って最終的な同定は 16SrRNA などの遺伝子検査が必要となる。本症例のように外傷な どにより環境由来の C. hydorogeniformans を検出する機会は比較的稀であると考えられるが、顕微鏡的な形態 と芽胞を確認し嫌気培養での発育態度を観察することで Clostridium 属と推定することは可能と考えられる。 -29- 3. 歯周病原菌の関与が疑われた脳膿瘍の一例 ○関谷 亮 1) 、坂本 春生 1) 、大野 啓介 林 将大 4) 、田中 香お里 4) 1) 、唐木田 一成 1) 東海大学医学部附属八王子病院 口腔外科 1) 東海大学医学部付属八王子病院 神経内科 2) 東海大学医学部付属八王子病院 脳神経外科 3) 岐阜大学生命科学総合研究支援センター嫌気性菌研究分野 、安田 高志 2) 、徳岡 健太郎 2) 、小松 文成 3) 、 4) 頭蓋内膿瘍には脳膿瘍、硬膜下膿瘍、硬膜外膿瘍があり、原因の多くは近接感染巣からの直接感染が多くを 占め、その他血行感染、直接外傷があり、歯性感染症が原因となることはまれである。今回われわれは、歯 周病原菌の関与が疑われた脳膿瘍の一例を経験したのでその概要を報告する。 患者:55 歳 女性 初診:2014 年 2 月 主訴:視力障害、頭痛 既往歴・家族歴:特記事項なし 現病歴: 初診 7 日前、起床後、目のかすみおよび痛みが出現し持続していた。 初診当日、昼頃テレビを見ていたらぼやけてテレビ画面の右側が外側に見えた。 左眼の奥の痛みが残存するため、同日夜間、当院眼科救急外来を受診。しかし眼科領域の異常を認めなかっ た。翌日、精査のため撮影した MR にて左後頭葉の浮腫上変化を伴う腫瘤性病変を認めた。 初診から 2 日目、脳腫瘍疑いのため精査加療目的に当院神経内科入院。 処置および経過: 腫瘍性病変による出血を疑い、入院初日より止血剤および抗脳浮腫薬投与開始。第9病日、造影 MR にて脳 膿瘍を疑う所見を認めた。髄液検査にて細胞数 148、蛋白 98mg/dl と上昇を認めたことより、脳膿瘍の診断に て抗菌薬(MEPM+VCM)点滴投与開始。 同日、主科より歯性病巣感染精査のため紹介となり当科初診。15,16,47 に歯周病を疑う X 線所見を認めた。 患部の洗浄・消毒処置を行い、以後口腔清掃指導など口腔ケアの介入を開始した。 第 17 病日 MR にて膿瘍の脳室穿破を認め、脳神経外科による膿瘍ドレナージが施行された。膿瘍腔より粘調 黄色調の排液4ml を認めた。VCM の髄注併用投与も行ったが、薬疹を疑う皮疹出現のため VCM 中止し、 ABPC+MEPM 投与に変更した。脳膿瘍の細菌培養検査結果にて Actinomyces cardiffensis、Parvimonas micra の 2 菌種が同定された。MEPM 高感受性にて、MEPM 単剤投与に変更し投与を行うも高度の薬疹を認めた。第 40 病日に投与中止後は ABPC+MNDZ に変更した。以後、画像所見、髄液所見ともに改善した。第 88 病日に 15,16,47 の抜歯を行い、MNDZ 内服継続とし第 93 病日に退院となった。 退院 18 日後、自宅にて痙攣発作出現したため来院。脳膿瘍後の症候性てんかんの診断にて再入院となった。 抗けいれん薬投与開始後発作は消失。第 7 病日 経過良好にて退院。以後状態は安定し、現在外来通院にて 経過観察中である。 -30- 4. 血液培養より Alistipes onderdonkii が分離・同定された一例 ○野口 穣 1) 、古川 友子 吉田 敦 3) 4) 、小池 宰子 1) 、安中 めぐみ 、菱沼 昭 4) 1) 東京都健康長寿医療センター 臨床検査科 東京都健康長寿医療センター 感染症内科 獨協医科大学感染制御センター 3) 獨協医科大学感染制御・臨床検査医学講座 1) 4) 、浅見 諒子 1) 、板倉 泰朋 2) 、増田 義重 2) 、稲松 孝思 2) 、 2) 4) 【緒言】 Alistipes onderdonkii は嫌気性グラム陰性桿菌である。糞便からの分離報告があるが血液培養から分離された 報告はない。今回、血液培養から分離され、質量分析器および 16S rRNA 遺伝子解析を用い同定に至ったの で報告する。 【症例】 91 歳女性。2014 年 8 月に高カルシウム血症による意識混濁があり、当センター総合診療科を受診された。脱 水・腎前性腎不全の精査目的で入院。入院時の血液検査で、末梢血中に形質細胞の出現、連銭形成にて多発 性骨髄腫が疑われ、血液内科に転科した。Vd 治療にて効果乏しく、10 月 24 日に自宅退院した。その後、家 族の原病治療の希望強く 29 日再入院。12 月 2 日より腸の蠕動運動低下傾向があり、12 月 3 日腹部所見はや や膨満、圧痛はなかったが、発熱し、尿培養、血液培養 2 セット採取後 Sulbactam / Ampicillin 開始。4 日から 解熱傾向で経過。原病のコントロール不良により自宅介護の方針となり、12 月 15 日退院となった。 提出された尿培養より Pseudomonas aeruginosa、Enterococcus faecium が検出された。血液培養より 120 時間で 嫌気ボトル 1 本陽性となり、嫌気性グラム陽性桿菌が発育した。生化学的性状では同定できなかった。 MALDI-TOF にて本菌が示唆され、16S rRNA 遺伝子解析を用いたところ、Alistipes onderdonkii JCM 16771 株 (Accession No. NR_113151)と 100%一致し本菌と同定した。 【考察】 本菌はグラム陰性桿菌だが、今回のグラム染色所見はグラム陽性桿菌であった。生化学的性状は、α-ガラク トシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリホスファターゼなどが陽性を示し、過去の報告と一致した。しか し、データベースにないため、同定できない。同定不明菌として報告され見逃されていた可能性や Bacteroides 属や Prevotella 属、Porphyromonas 属と性状が似ているため、これらの菌として判定され報告していた可能性 も示唆される。今回、質量分析器と遺伝子検査によって稀な菌種が同定できた一例であった。 -31- 5. 妊娠母体が Clostridium butyricum 製剤服用中に新生児腹水から C. butyricum が検出された一例 ○山岸 由佳 1) 2) 、三鴨 廣繁 1) 2) 愛知医科大学病院 感染症科 1) 愛知医科大学病院 感染制御部 2) 【緒言】Clostridium butyricum は整調薬に含まれる成分の一つである。今回、妊婦が本菌を含む整調薬を内服 中に出生した児の腹水から C. butyricum が検出された事例を経験した。 【症例】在胎 25 週、506 g の新生児。母体は、在胎 22 週より前置胎盤のため入院管理を行っていたが、在胎 25 週 0 日に早期破水し、妊娠継続困難となったため緊急帝王切開術が施行された。新生児は、出生後即座に 肺サーファクタントが投与され、人工呼吸管理、循環管理に加え、急性肺障害改善目的でシベレスタットナ トリウム水和物の投与も実施された。新生児には、画像上、ウイルソン・ミキティ症候群と一致する所見も 認められた。新生児に対しては早期から TPN 療法が実施され、同時に高血糖に対する治療も実施された。日 齢 10 に NO 吸入療法が必要となり、以後の呼吸状態は不安定となり、日齢 17 に腹部膨満と嘔吐が出現し画 像上、胃・腸管穿孔破裂を疑われたが、急速に全身状態が悪化したため、手術療法を実施前に同日永眠とな った。死後に児から採取した腹水から Enterococcus faecalis、C. butyricum が検出された。腹水由来 C. butyricum、 後日母体の便から採取した C. butyricum、母体が内服していたミヤ BM 製剤に含まれる C. butyricum について 検討したところ、PFGE 解析ではすべて同一株と判定された。 【考察】妊娠母体の C. butyricum 製剤の内服により、C. butyricum が胎児に移行する場合があることが確認さ れた。今後、妊娠母体での移行条件などについて基礎的および臨床的に検討する必要があることが示唆され た。 -32- 6. Clostridium difficile 検出症例の臨床的検討 ○橋永 一彦 門田 淳一 1) 1) 、吉川 裕喜 1) 、串間 尚子 1) 大分大学医学部 呼吸器・感染症内科学講座 、鳥羽 聡史 1) 、梅木 健二 1) 、安東 優 1) 、平松 和史 1) 、 1) 【目的】Clostridium difficile(CD)感染症の診断は、抗菌薬関連下痢症の約 2 割を占めるとされ、時に全身状 態悪化の契機となりうるため、その適切な診断と治療は重要である。CD 感染症の診断に際しては、侵襲的な 大腸内視鏡検査まで行われることは少なく、便培養または便毒素検査が臨床における主な検査法であるが、 無症候性の CD 保菌者も存在しており、その検査結果の解釈は容易ではない。今回、当院で入院加療した便 培養 CD 陽性または便 CD 毒素陽性症例の臨床的検討を行った。 【方法】2013 年 1 月から 2014 年 12 月までの間に当院検査部に便検体が提出され、培養または CD 毒素が陽 性であった症例のうち、下痢や腹痛等の腸炎症状を呈する 57 症例を対象とした。これらの症例の背景因子や 治療、予後などについて検討を行った。 【結果】CD が便培養のみ陽性であったのは 30 例、便毒素のみ陽性であったのは 7 例、培養・毒素とも陽性 であったのは 20 例であった。発症前 1 ヶ月間の抗菌薬投与日数は平均 17.5 日、7 日以上の抗菌薬投与を受け た症例は 34 例であった。CD 感染症に対する治療は、バンコマイシン(VCM)単独が 20 例、メトロニダゾ ール(MNZ)単独が 12 例、VCM+MNZ 併用が 3 例、無治療が 24 例であった。1 ヶ月以内の再発が 4 例認 められたが、治療薬との関連はなかった。発症 1 ヶ月以内の死亡が 2 例認められた。なお、抗癌化学療法施 行中の症例は 18 例であったが、そのうち 5 例は抗癌剤による腸管粘膜障害が下痢の主たる原因と考えられ、 うち 4 例は VCM、MNZ が投与されることなく軽快していた。その他、潰瘍性大腸炎や腸管 GVHD が下痢の 原因として考えられ、これらに対する治療により軽快した症例も認められた。 【結語】CD 感染症の危険因子である抗菌薬の長期投与を要する症例は、その患者背景から CD 感染症以外の 原因による腸管炎症の可能性も考慮する必要がある。CD 感染症の臨床的検討も含め、症例検討の蓄積が必要 と考えられる。 -33- 7. 一市中病院における Clostridium difficile 関連腸炎の臨床像 ○新里 敬 1) 、山口 裕崇 1) 、大城 雄亮 中頭病院 感染症・総合内科 1) 中頭病院 検査部 2) 琉球大学 感染症・呼吸器・消化器内科 1) 、金城 正樹 2) 、古謝 幸恵 2) 、藤田 次郎 3) 3) 【目的】Clostridium difficile 関連腸炎(CDAD)の頻度が増加しつつある。その臨床的背景を明らかにするた め、2年間に経験した臨床例の検討を行った。 【対象と方法】2012 年 8 月から 2014 年 7 月までに当院で CDAD と診断された全症例について後ろ向きに検 討した。CDAD の診断は、下痢症を来した患者の便検査で、CD 抗原と toxin A/B 検出が可能な検査キット(C. DIFF QUIK CHEK コンプリート®)での抗原陽性・トキシン陽性例とした。抗原陽性・トキシン陰性例では 便の嫌気培養を行い、分離された C. difficle からのトキシン陽性となった場合には CDAD に含めた。重症例 の定義は、60 歳以上、体温 38.5℃以上、血清アルブミン 2.5mg/dl 未満、末梢血 WBC 1.5 万/μL 以上の2項 目が認められた場合、あるいは内視鏡検査で偽膜が確認された場合とした。CDAD 劇症型は中毒性巨大結腸、 イレウス、ショックなどの合併症が生じた場合とし、治療不応性はメトロニダゾールあるいはバンコマイシ ンに反応しない場合とした。再燃は最初の治療開始後 60 日以内に再度トキシン陽性となった場合とした。外 来患者からの陽性例では1ヶ月以内の入院歴がないものを市中感染とし、そうでない場合は医療関連感染と した。 【結果】CDAD と診断された患者数は 259 名、376 エピソード。市中感染 4 名、院外発症の医療関連感染は 31 名(41 エピソード)、抗菌薬投与歴がない院内発症が 3 名。基礎疾患では慢性腎不全(透析)、悪性腫瘍、 糖尿病が多く、122 名で経管栄養が施行されていた。制酸剤の投与を受けていたのは 172 名(66%:プロト ンポンプ阻害薬 130 名、H2 拮抗薬 42 名)。重症例は 80 名(31%)だった。軽症∼中等症例では全例でメト ロニダゾール内服から開始され、28 名は症状の増悪によりバンコマイシンに変更された。29 名は CDAD 既 往や重症のため最初からバンコマイシン投与を受けた。再燃は 48 名(18%)、CDAD での死亡は 10 名(4%) 、 基礎疾患の増悪や他の感染症の合併による 30 日死亡は 32 名だった(12%)。 【結論】当院での検討では、市中感染や交差感染は限定的であった。発症前に投与された抗菌薬は第三世代 セファロスポリン系、カルバペネム系、およびβ-ラクタム阻害剤配合ペニシリン系の抗菌薬が多かった。重 症例・再燃例では PPI 投与歴が高頻度だった。 -34- 8. 本邦における Clostridium difficile 感染症の疫学情報ならびに患者臨床像 の検討 ○宮崎 泰斗 1) 、前田 正 1) 、佐藤 高広 2) 、福井 悠人 2) 、吉澤 定子 山口 哲央 4) 、嵯峨 知生 4) 、石井 良和 4) 、舘田 一博 4) 東邦大学医療センター大森病院総合診療・急病センター 東邦大学医療センター大森病院感染管理部 2) 東邦大学医療センター大森病院臨床検査部 3) 東邦大学医学部微生物・感染症学講座 4) 2) 、安井 久美子 3) 、村上 日奈子 3) 、 1) 【背景・目的】Clostridium difficile(以下、CD)感染症(CD infection:以下、CDI)は、世界中で増加してお り、欧米を中心に大きな問題となっている。本邦も決して例外でないが、詳細な疫学調査は行われておらず、 その実態に不明な点が多いのが現状である。我々は、本邦における CDI の疫学情報と CDI 患者の臨床像を明 らかにするため調査研究を行っている。 【方法】東邦大学医療センター大森病院(東京都大田区、972 床)にて、2014 年 4 月 1 日から 2014 年 12 月 9 日までの 252 日間に、894 検体の患者便にて Glutamate dehydrogenase(以下、GDH)抗原・トキシン A/B 検 査(C. DIFF QUIK コンプリートⓇ)を、166 株の患者便由来 CD 培養菌株にてトキシン検査を、それぞれ施 行した(患者重複あり)。GDH 抗原陽性・トキシン A/B 陰性の 43 検体に対しては GeneXpertⓇ System(Cepheid 社)を用い、便中の CD トキシンをコードする遺伝子の検出を試みた。更に、便中 GDH 抗原・トキシン A/B 検査、培養菌株の CD トキシン検査、便中 CD トキシン遺伝子検査のいずれかひとつでも陽性となった患者 のうち、1 日 3 回以上の下痢などの臨床症状から CDI と診断され、かつ本人(ないし代諾者)から同意を得 た 31 症例について、基礎疾患・投薬歴・転帰などの臨床情報を調査した。 【結果】便中トキシン陽性数は 67 検体/894 検体(7.5%)、患者数として 48 名(重複あり)だった。培養菌 株からのトキシン陽性数は 94 株/166 株(56.6%) 、患者数として 88 名(重複あり)であった。便中トキシン 遺伝子検査では陽性数 24 検体/43 検体(55.8%)で、このうち培養菌株トキシン検査と便中遺伝子検出を同 時に施行した 16 検体において、両検査結果の一致率は 87.5%(14 検体/16 検体)であった。便中トキシン検 査、培養菌株の CD トキシン検査、便中 CD トキシン遺伝子検査のいずれかひとつでも陽性となった患者数 は 86 名だった(重複なし)。この 86 名の内訳は、男性 47 名、女性 39 名で男女比 1.2:1、年齢分布は 15 歳 以下の小児 12 名(8 ヵ月∼12 歳)、65 歳未満の成人 18 名(22∼64 歳)、65 歳以上の高齢者 56 名(66∼92 歳) で、比は 1:1.5:4.7 であった。担当診療科は内科系・小児科 60 名、外科系・救命救急センター26 名で、入 院中に検査陽性となった者が 88.4%(76 名/86 名)を占めていた。このうち症状を伴い CDI と診断され、か つ同意を頂けた 31 症例について基礎疾患(特に悪性疾患の有無) 、副腎皮質ステロイド剤や抗悪性腫瘍剤の 使用の有無、先行する抗菌薬の投与歴、CDI に対する投薬状況、再発、転帰について検討し報告する。なお 現在も症例を蓄積中であるため本研究会では更に症例数を追加し報告する。 -35- 9. 36 年間に経験した高齢者剖検例における偽膜性大腸炎の検討 ○板倉 泰朋 稲松 孝思 1) 1) 、吉田 敦 2) 、野口 穣 3) 、古川 友子 東京都健康長寿医療センター 感染症内科 獨協医科大学感染制御・臨床検査医学講座 東京都健康長寿医療センター 臨床検査科 3) 、浅見 諒子 3) 、安中 めぐみ 3) 、増田 義重 1) 、 1) 2) 3) 【はじめに】C.difficile が偽膜性腸炎の原因と判明したのは 1970 年代の後半であり、我々の施設では 1979 年 の 5 月に偽膜性腸炎患者の便から C. difficile の培養に成功している。一方、我々の施設では当時から剖検で の偽膜性腸炎例を集積している。今回、剖検で偽膜性腸炎を認めた症例について、その疫学と臨床的特徴を まとめたので、報告する。 【対象と方法】対象は、健康長寿医療センター(旧:養育院附属病院、老人医療センター)の 1975 年から 2010 年までの剖検例で、剖検時に偽膜性腸炎の所見を認めた例である。年齢、性別、基礎疾患、C. difficile infection(CDI)の症状・所見・診断・治療について集計し、さらに各種の検査診断が可能になった時期から は、それによる寄与についてもまとめた。 【結果】全剖検率は、1970 年代は約 80%であったが、2010 年には 10%台へ低下していた。1975 年から 1983 年を I 期、2000 年から 2003 年を II 期、2006 年から 2010 年を III 期とし、この 3 期について比較を行った。 死亡例はそれぞれ 2,760 例、2,100 例、2,468 例であり、剖検例(率)は 2,000 例(72%) 、670 例(32%) 、498 例(20%)であった。偽膜性腸炎例(率)は、32 例(1.6%)、27 例(4%)、14 例(2.8%)であり、頻度に は差が認められなかった。しかしながら、既に生前に CDI の診断がなされていた例をみると、II 期では 18 例(33%)、III 期では 10 例(71%)を占めた。 さらに II 期と III 期について、偽膜性腸炎が直接死因となった例はそれぞれ 7 例(26%)、2 例(14%)で あり、III 期の方が少なかった。ただし III 期であっても死亡 1 週間以内に CDI と診断された例が、21%を占 めた。また、CDI に対する生前の治療が完遂されていた割合は、II 期では 43%、III 期では 50%であり、生前 に治療がまったく行われていなかった例は、II 期 29%、III 期 20%であった。III 期で偽膜性腸炎が直接・間 接死因となった 4 例では、全例で器質的あるいは機能的な腸管病変を認め、CDI の治療に対する反応は乏し かった(反応なし 1 例、やや改善 1 例、再発 1 例)。 【考察】C.difficile に関する細菌学的診断の普及により、生前診断率が上がり、さらに抗原・毒素検査の進歩 とともに、毒素陰性・培養陽性例が減少していた。 一方、診断できても根治できない例が相対的に多くなり、特に再発例や、基礎疾患重篤例、腸管運動機能の 低下例、抗菌薬継続使用例では偽膜性大腸炎が死因に関与することがあると考えた。 -36- 10. フィダキソマイシンが Clostridium difficile バイオフィルム形成に及ぼす効果 ○濱田 将風 1) 、山口 哲央 1) 、梶原 千晶 東邦大学医学部 微生物・感染症学講座 1) 、石井 良和 1) 、舘田 一博 1) 1) 【目的】Clostridium difficile 感染性腸炎 (CDI)は抗菌薬関連腸炎の 1 つであり、腸内細菌叢の乱れが C. difficile の増殖・毒素産生を導くことで発症する。この CDI に対する抗菌薬としてバンコマイシンやメトロニダゾー ルが従来用いられてきたが、2011 年に欧米でフィダキソマイシンが新規抗菌薬として承認された。フィダキ ソマイシンはマクロサイクリック系抗菌薬で RNA ポリメラーゼ阻害活性を示す。これまでに、その良好な抗 菌活性及び毒素産生抑制効果が報告されており、第 III 相臨床試験において CDI の治療効果及び再発抑制効 果が確認されている。しかしながら、CDI の病態には依然不明な点が多く、その病態に対するフィダキソマ イシンの効果に関しても検討すべき点が多い。本研究では C. difficile の腸管内での定着・感染に影響すると 示唆されているバイオフィルム形成に着目し、フィダキソマイシンが C. difficile バイオフィルム形成に及ぼ す効果について検討した。 【方法】PCR リボタイプ 027 の C. difficile を嫌気・37°C の条件下で静置培養した。マルチウェルプレートも しくはガラスベースディッシュを用いて培養を行った。増殖培地として、BHI に L-システイン・酵母エキス・ グルコースを添加した BHIS 培地を用いた。培養開始時にフィダキソマイシンを添加した。この添加区とは 別に、バンコマイシンの添加区を比較として設定した。両抗菌薬の濃度は 1 μg/ml 以内とした。培養後、クリ スタルバイオレット染色法を用いて、バイオフィルム形成量を測定した。さらに、共焦点反射顕微鏡法を用 いて、バイオフィルム構造を観察した。また、バイオフィルム形成時の増殖量として培養液の濁度を測定し た。 【成績】フィダキソマイシンは濃度依存的に C. difficile のバイオフィルム形成を抑制した。共焦点反射顕微 鏡法を用いることで、バイオフィルム構造の明瞭な形成不全が観察された。フィダキソマイシンはバイオフ ィルム形成時における C. difficile の増殖も抑制していた。バンコマイシン添加条件下では、バイオフィルム 形成量は C. difficile の増殖量に依存していた。その一方で、フィダキソマイシン添加条件下では、C. difficile の増殖量当たりのバイオフィルム形成量 (バイオフィルム形成率)が低下傾向にあった。 【結論・考察】フィダキソマイシンは C. difficile に対して増殖抑制効果だけでなくバイオフィルム形成抑制 効果を発揮する可能性が示唆された。バンコマイシンは C. difficile の増殖に影響してバイオフィルム形成を 抑制するが、フィダキソマイシンは C. difficile の付着などのイベントにも影響してバイオフィルム形成を抑 制することが期待される。さらに、形成された成熟バイオフィルム構造に対してもフィダキソマイシンの効 果が期待され、現在、検討中である。 -37- 11. 当院における Clostridium difficile 分離株の病原遺伝子保有状況と臨床解析 ○森永 芳智 長谷川 寛雄 1) 1) 、岡田 侑也 1) 、赤松 紀彦 、 原克紀 1) 1) 、松田 淳一 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態解析・診断学 1) 、宇野 直輝 1) 、小佐井 康介 1) 、 1) 【はじめに】Clostridium difficile は、グラム陽性の嫌気性菌で、抗菌薬関連下痢症/腸炎の原因菌の主要な原 因菌である。C. difficile 感染症(CDI)の発症には toxin A、toxin B が重要な毒素である。また、近年では第3 の毒素と言われる binary toxin が病態への関与の可能性や、世界的な強毒素株の拡大も問題となっている。し かしながら、わが国における状況は不明な点が多く、日常検査室における病原遺伝子の保有状況を解析した。 【対象ならびに方法】2013 年 1 月から 2013 年 12 月までに当院検査部において糞便より分離培養された C. difficile 保存菌株を対象とした。保存菌株を再度 CCMA 培地で 72 時間嫌気培養し、発育を認めた 86 株より 核酸を抽出した。toxin A、toxin B、binary toxin、tcdC 抑制遺伝子を multiplex PCR 法により検出した。Binary toxin 陽性株については、患者診療録を利用して後方視的に検証した。 【結果】PCR の結果は toxin A(+) B(+)・binary toxin(+)が 2 例、toxin A(+) B(+)・binary toxin(-)が 51 例、toxin A(-) B(+)・binary toxin(-)が 2 例、toxin A(-) B(-)・binary toxin(-)が 31 例であった。binary toxin 陽性 2 症例は、検出 された時期が異なり、明らかな接触歴なども確認できなかった。 【考察】日常診療の中に、binary toxin 保有株が潜在していることが示唆された。必ずしも重篤な臨床経過を たどっておらず、遺伝子学的な背景とともに症例の集積が必要と考えられた。 -38- 12. 当院における Clostridium difficile の Binary toxin 産生遺伝子保有状況 ○原 稔典 1) 、小野寺 一 1) 広島大学病院 診療支援部 広島大学病院 検査部 2) 広島大学病院 感染症科 3) 、横崎 典哉 2) 、大毛 宏喜 3) 1) 【目的】 Clostridium difficile (C. difficile )は、抗菌薬関連下痢症や偽膜性腸炎の主要な原因菌であり、toxin A (腸管毒素) や toxin B (細胞毒素)を産生する。 近年では、第 3 の毒素とも呼ばれる Binary toxin (actin-specific ADP‒ribosyltransferase)を産生する強毒性の C. difficile (BI/NAP1/ 027 株や BI/NAP1/ 078 株)が臨床上問題となっている。 今回、当院における C. difficile 毒 素遺伝子型および Binary toxin 産生遺伝子の有無について調査を行ったので報告する。 【対象】 第 1 期調査期間を 2010 年 4 月から 2011 年 3 月までの 1 年間とし、第 2 期調査期間を 2012 年 7 月から 2012 年 12 月までの半年間とし C. difficile infection(CDI)が疑われ、検出キットを用いた C. difficile toxin (toxin)検査 の依頼があった糞便 587 検体を対象とした。 【方法】 1)培養・同定 培養検査は CCMA(日水製薬)に接種して 36℃、48 時間嫌気培養を行った。同定検査には Rap ID 嫌気性細菌 同定キット(アムコ)を使用した。 2)toxin 検出 第 1 期調査期間の toxin 検出キットは TOX A/B QUIK CHEK (日水製薬)を用い、第 2 期調査期間 C.DIFF QUIK CHEK COMPLETE (アリーアメディカル)を用いた。 3)毒素遺伝子検査 toxin A 遺伝子の検出には、NK9-NK11-NKV011 (tcdA)のプライマーを、toxin B 遺伝子検出には NK104-NK105 (tcdB)のプライマーを用いて PCR 検査を行った。 4)Binary toxin 産生遺伝子検出 Binary toxin 産生遺伝子(cdt)の検出は、cdtApos-cdtArev (cdtA)と cdtBpos-cdtBrev (cdtB)のプライマーを用い PCR 検査を行った。また、Binary toxin 産生遺伝子が陽性の株については、SlpA Sequence typing と PCR ribotyping 解析を国立感染症研究所に依頼した。 【結果】 1.培養成績と毒素遺伝子型の内訳 第 1 期調査と第 2 期調査を総合的に見た結果、糞便検体 587 件中の培養陽性は 18.9%(111 件)、培養陰性は 81.1%(476 件)であった。そのうち、保存が可能であった菌株 107 株について遺伝子検査を実施した。toxin 遺 伝子型の内訳は、toxin A+B+が 60.7%(65 株)、toxin A−B+が 15.0%(16 株)、toxin A−B−が 24.3%(26 株)で あった。 2.Binary toxin 産生遺伝子の検出 Binary toxin 産生遺伝子の陽性株は1株認められ、toxin A+B+であった。さらに slpA sequence typing および PCR ribotyping による解析では、slpA sequence type y05-02/PCR ribotype hu13027 と同定された。 【結語】 今回の調査で Binary toxin 産生遺伝子保有株は 1 件検出されたものの、PCR ribotyping は BI/NAP1/ 027 株や BI/NAP1/ 078 株とは異なるパターンであり、北米や欧州で強毒株として問題となっている株ではなかった。 今後も分子疫学解析による強毒株を含む流行株の監視の継続が必要と考える。 -39- 13. ドラフトゲノムシークエンスによる毒素産生 Clostridium difficile の分子 疫学的菌株タイピングおよび薬剤耐性因子解析 ○青木 弘太郎 1) 、石井 良和 1) 、舘田 一博 東邦大学医学部微生物・感染症学講座 1) 1) 【背景】Clostridium difficile は院内感染および抗菌薬関連下痢症の主要な原因菌である。C. difficile ではトキ シン A およびトキシン B 産生株が病原性を示し、強毒株では第 3 のトキシンであるバイナリートキシンを産 生することが知られている。2002 年以降、欧米でのアウトブレイクの原因となった強毒株は、制限酵素断片 長多型解析、パスルフィールドゲル電気泳動解析および PCR リボタイピングにより BI/NAP1/027 型と呼ばれ ているが、これらの菌株はフルオロキノロン系薬にも耐性を獲得している。 【対象と方法】我々は、2014 年に日本(3 株)および台湾(7 株)で臨床分離された C. difficile 10 株につい て、次世代 DNA シークエンサーMiSeq(illumina)によるドラフトゲノムシークエンスを行い、得られた塩基 配列情報に基づいて Multilocus sequence typing (MLST)解析、gyrA 全長配列を用いた分子系統解析、獲得性薬 剤耐性因子の検索、gyrA および gyrB のキノロン耐性決定領域(QRDR)の変異検出、およびトキシンをコー ドする遺伝子(tcdA および tcdB)とそれらをネガティブに調節する tcdC、バイナリートキシンをコードする遺 伝子(cdtA および cdtB)の検出を行なった。上述のトキシンをコードする 4 遺伝子については PCR も合わせて 実施した。 【結果】供試菌株は 7 つの sequence type (ST)および 3 つの clonal complex (CC)に分類され、そのうちの 7 株が CC28 に属する菌株であった。gyrA 塩基配列に基づいた分子系統樹では、CC28 に属する 8 株が主要なクラス タを形成し、CC11 および CC37 に属する各 1 株がそれぞれ独立していた。CC28 に属する菌株のうち 5 株が アミノグリコシド系薬耐性に寄与する aac(6 )-aph(2 )、4 株がエリスロマイシン耐性に寄与する erm(B)、2 株 がテトラサイクリン系薬耐性に寄与する tet(M)を保有していた。GyrA の QRDR の Thr82Ile の変異を有する株 が 3 株認められた。うち 2 株は GyrB の Asp426Asn の変異も有していた。GyrB の QRDR、Ser366Val に変異 を有する株は 2 株認められ、うち 1 株は Ser416Als も変異していた。tcdA および tcdB はリファレンス配列へ のマッピングによって全株で全長(それぞれ 8,133bp および 7,101bp)検出され、PCR でも同様に検出可能で あった。だたし、1 株のリードはリファレンスに用いた"C. difficile 630"株の tcdB にマッピングされない箇所 が複数存在し、さらに tcdC には構造遺伝子中にナンセンス変異(Gln62X)が存在した。cdtA および cdtB は同株 のみで全長検出され、PCR でも同様に検出された。 【考察】日本および台湾で分離された tcdA および tcdB が同時に陽性菌株は多くが CC28 に属し、流行のクロ ーンであることが示唆された。また、CC28 に属する 7 株中 4 株は erm(B)を、うち 2 株は tet(M)も合わせて保 有しており、リファレンスに使用した"C. difficile 630"株は CC28 (ST54)に属する菌株でテトラサイクリンおよ びエリスロマイシン耐性と報告されており、同クローンはいずれかの薬剤への耐性を示しうる。また、日本 で分離された CC28 の 3 株は GyrA に 1 つのアミノ酸変異を、うち 2 株は GyrB にも 1 つの変異を有していた ため、フルオロキノロン系薬にも耐性を示しうる。台湾で分離された 1 株(ST11, CC11)は gyrA 全長塩基配 列に基づいた分子系統樹において CC28 のクラスタからは外れた場所に位置し、唯一バイナリートキシン遺 伝子 cdtA および cdtB が合わせて陽性であったことから、強毒株と言われる菌株は CC28 とは異なったクロー ンに属していることが示唆された。 -40- 14. 剖検例のゲノム解析からみた C. difficile の疾患感受性遺伝子の検討 ○吉田 敦 村松 正明 1) 4) 、板倉 泰朋 、田中 雅嗣 2) 2) 、増田 義重 2) 獨協医科大学感染制御・臨床検査医学講座 東京都健康長寿医療センター 2) 東京医科歯科大学大学院 3) 東京医科歯科大学難治疾患研究所 4) 、新井 富生 2) 、稲松 孝思 2) 、森 聖二郎 2) 、沢辺 元司 3) 、 1) 【はじめに】C. difficile infection(CDI)の罹患および重症度、再発に関して、宿主側の感受性が異なると予 想されるが、感受性遺伝子を検討した報告は、我々の知る限り非常に少ない。健康長寿医療センターでは、 養育院附属病院時代の 1970 年代から剖検での偽膜性腸炎例を集積している。今回、剖検で偽膜性腸炎を認め た症例において、ゲノムのエクソーム解析を行い、対照群と比較することで疾患感受性を調べた。 【対象と方法】健康長寿医療センター(旧:養育院附属病院、老人医療センター)の 1975 年から 2014 年ま での剖検例で、剖検時に偽膜性腸炎の所見を認めた例を偽膜性腸炎群(n=206)、その所見を認めなかった例 を対照群(n=8,245)とした。両群の腎組織から DNA を抽出し、エクソーム解析によって網羅的にゲノム多 型を判定した。偽膜性腸炎群と対照群を比較し、偽膜性腸炎群の保有が高い SNP とその遺伝子を SNP2 プロ グラムによって抽出し、DAVID Bioinformatics Resources (ver.6.7) によって pathway 解析を行った。統計的解 析は優性モデルに基づく Fisher の正確確率検定を適用した。 【結果】DNA の保存状態がよく、解析可能であったのは、偽膜性腸炎群 96 例、対照群 2246 例であった。偽 膜性腸炎群と対照群の間で頻度が異なり、アミノ酸置換を伴う多型としては、RABL6 p.D598N [P = 4.35 10‒5, OR = 3.78 (95% CI 2.14‒6.67)], ETFB p.P52L [P = 8.64 p.G368S [P = 2.66 10‒5, OR = 0.37 (95% CI 0.22‒0.63)],SLC26A1 10‒4, OR = 5.74 (95% CI 2.58‒12.73)]があった。これらの遺伝子はそれぞれ、GTP・GDP に結合する Ras superfamily、ミトコンドリアの電子伝達フラビン蛋白質、chloride/bicarbonate exchanger をコー ドしている。 【考察】C. difficile toxin B は、glucosyltransferase 活性を有し、Rho と Ras family GTPase の働きを修飾し、細 胞骨格のアクチンを障害することが明らかになっている。一方これ以外に、toxin B は宿主上皮細胞の NADPH オキシターゼを集合させ、活性酸素を産生することで、細胞障害を引き起こすと想定され、細胞膜の電子伝 達系のフラボエンザイム阻害剤(diphenylene iodonium, DPI)によって、toxin B による細胞障害活性が阻害さ れたという報告がある(PNAS 2013; 110(46): 18674-9)。今回の検討で、Toxin B の作用に関する遺伝子で有意 差をもって関与が示されたことは、剖検例における偽膜性腸炎の発症と、その重症化を考える上で興味深い。 今後さらに、症例の集積・コホート研究が必要であるとともに、SNP 多型性で説明可能かどうか、分子メカ ニズムの解明も求められる。 -41- 15. 化膿性唾液腺炎 12 例の臨床的・細菌学的検討 ○小松 祐子 1) 2) 、笠原 敬 1) 、柳生 貴裕 奈良県立医科大学感染症センター 奈良県立医科大学口腔外科学講座 2) 、上田 順宏 2) 、桐田 忠昭 2) 、三笠 桂一 1) 1) 2) 【目的】化膿性唾液腺炎は比較的まれな疾患であるが、その大部分が口腔内からの逆行性感染が原因である といわれている。原因菌は Staphylococcus aureus が最も多く、ついで口腔内の連鎖球菌が多い。わが国では嫌 気性菌が検出されることはまれとされているが、嫌気性菌を想定した検体採取および培養検査が行われてい ないことが原因ではないかという指摘もある。今回我々は当院における化膿性唾液腺炎患者について臨床 的・細菌学的検討を行ったので報告する。 【方法】対象は 2008 年 1 月から 2013 年 12 月までに奈良県立医科大学口腔外科を受診した化膿性唾液腺炎患 者 12 名で、臨床的検討として患者背景を、細菌学的検討として細菌の分離頻度と薬剤感受性を検討した。検 体採取の方法としては、導管開口部を十分に消毒し、唾液腺部を圧迫後、新たに流出した膿汁を吸引し嫌気 ポーターに採取し、速やかに好気及び嫌気培養を行った。 【結果】男性 4 名女性 8 名で、平均年齢は 62.8 歳であった。化膿性耳下腺炎 3 例(うち 2 例が唾石あり)、化 膿性顎下腺炎 9 例(うち 3 例が唾石あり)であり、5 例(41.6%)が唾石を伴っていた。10 例(83.3%)が何ら かの基礎疾患を保有していた。入院加療が必要であった患者は 5 例(41.6%)であった。検出菌は 12 症例か ら 27 菌株が分離・同定された。検出菌の内訳は好気性菌が 21 株(77.7%)、嫌気性菌が 6 株(22.2%)であった。 好気性菌では Streptococcus 属が 11 株(40.7%)と最も多く、8 例(66.6%)の患者で検出された。Staphylococcus aureus が検出されたのは 1 株(3.7%)、1 例(8.3%)だけであった。嫌気性菌では Prevotella 属、Peptostreptococcus 属がそれぞれ 3 株(11.1%)、3 例(25%)で検出され、嫌気性菌が検出された症例は 6 例(50.0%)であった。 単独感染は 3 例(25.0%)で、混合感染は 9 例(75%)で最大 4 菌種検出された。平均検出菌数は 2.6 株であっ た。うち 5 例(41.6%)は好気性菌と嫌気性菌の、残りの 4 例(33.3%)は好気性菌同士の混合感染であった。 11 例(91.6%)の患者に検出前に抗菌薬の前投与が行われていた。またβ-ラクタマーゼ産生菌は 3 例(25.0%) の患者で分離され、Prevotella 属(2 例) 、Staphylococcus 属(1 例)であった。 【考察】化膿性唾液腺炎では半数の患者で嫌気性菌が検出された。歯性感染症においては Prevotella 属におけ るβ-ラクタマーゼ産生が増加しており、また嫌気性菌における CLDM、キノロン系薬の耐性株が 20%前後に みられている。化膿性唾液腺炎においても抗菌薬の選択においては Prevotella 属をはじめとする嫌気性菌の関 与を十分に考慮すべきと考えられた。 -42- 16. 当院における嫌気性菌の薬剤感受性成績 ○宮本 仁志 1) 、村上 忍 1) 、福岡 史奈 愛媛大学医学部附属病院検査部 1) 、田中 友理 1) 、近藤 拓弥 1) 、西宮 達也 1) 、大澤 春彦 1) 1) 【はじめに】嫌気性菌の薬剤感受性については大きな耐性化はみられていないが、一部の菌種では徐々に低 感受性株、耐性株の増加が認められている。従って、院内でのアンチバイオグラムを含めた薬剤感受性の状 況把握は治療においても必要である。 今回我々は、当院で分離された嫌気性菌の薬剤感受性成績について報告する。 【対象および方法】2014 年 1 月から 2014 年 12 月の間に当院細菌検査室に提出され各種臨床材料より分離し た嫌気性菌、すなわち Bacteroides fragilis group 83 株、Prevotella spp.61 株、Fusobacterium nucleatum 15 株、グ ラ ム 陽 性 球 菌 (Finegoldia magna 104 株 ,Parvimonas micra 37 株 , Peptoniphilus asaccharolyticus 37 株 , Peptostreptococcus anaerobius 24 株)、Clostridium perfringens 8 株を対象とした。嫌気性菌は MALDI Biotyper と Rap ID ANAII SYSTEM を使用し同定を行った。薬剤感受性試験は、PCG、ABPC、S/A、T/P、CTRX、CMZ、 MEPM、CLDM についてブルセラブロスを用いたドライプレートを使用し、嫌気環境下で 46∼48 時間培養し 測定した。今回の検討では、感性 susceptible(S)、中間 intermediate(I)、耐性 resistant(R)のうち、I および R を耐性として集計した。 【結果】MEPM 耐性は B. fragilis group で 3 株(3.6%)認められた。CLDM 耐性は B. fragilis group で 37 株 (44.5%)、Prevotella spp.で 17 株(27.9%)認められた。グラム陽性球菌では F. magna で 30 株(28.8%)、P. micra で 2 株(5.4%)、P. asaccharolyticus で 12 株(32.4%)、P. anaerobius で 3 株(12.5%) CLDM 耐性が認められ、菌種 による耐性率の差が確認された。F. nucleatum および C. perfringens において耐性は認められなかった。 【考察】今回の成績では、カルバペネム系薬に耐性を示したのは、B. fragilis group の 3 株のみであり、治療 薬としての効果が期待できる結果であった。また、CLDM では耐性傾向が認められており、薬剤の使用には 感受性結果の確認が必要であると考えられた。今後、感受性の変動には注意を払う必要があり、サーベイラ ンスの重要性が示唆された。 -43- 17. 当院における Bacteroides fragilis の薬剤感受性推移と菌血症症例の検討 ○小佐井 康介 1) 、川元 康嗣 長崎大学病院検査部 1) 、赤松 紀彦 1) 、松田 淳一 1) 、森永 芳智 1) 、 原 克紀 1) 1) 【背景・目的】Bacteroides 属の菌血症では適切な治療がなされない場合、治療の失敗や死亡率の上昇に関与 すると報告されている。今回、我々は Bacteroides 属の中で重要である Bacteroides fragilis(B. fragilis)につい て薬剤感受性の経年的推移と菌血症症例の検討を行い、それらの現状把握と細菌学的検査の役割について考 察を行った。 【方法】薬剤感受性検査は 2003 年から 2013 年までのデータを収集、解析した。菌血症症例は 2010 年から 2013 年までに血液培養で B. fragilis が分離された 13 例を対象とした。 【結果】B. fragilis の 2013 年の薬剤耐性率は、SBT/ABPC、IPM ではそれぞれ 4.5%、0.0%で経年的に大きな 変化は認めなかったが、CMZ、MEPM はそれぞれ 31.8%、10.9%といずれも上昇傾向であった。菌血症例に ついては、性別は男性 7 例、女性 6 例で偏りはなく、年齢については 15 歳∼99 歳まで幅があったものの、 ほとんどは 50 代以上の基礎疾患を有する患者であった。基礎疾患(重複を含む)は、悪性腫瘍 6 例、肝胆道 系疾患 4 例、消化管疾患、糖尿病がそれぞれ 3 例、婦人科疾患 2 例などであった。侵入門戸は、消化管(消 化管手術や術後感染を含む)、胆道、婦人科臓器、褥瘡などが疑われたが、侵入門戸が明らかでない症例もあ った。7 例で血液培養から複数菌が分離され、菌種は Escherichia coli や Streptococcus 属などであった。敗血 症性ショックを合併したのは 5 例であった。経験的治療に用いられた抗菌薬はカルバぺネム系薬が 7 例 (MEPM6 例、IPM/CS1 例)で最も多く、次いでβラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン系薬の 3 例(TAZ/PIPC2 例、SBT/ABPC1 例)であった。これらの症例では外科的処置を並行して行ったものも含めて効果はいずれも 良好であった。一方で、初期治療に第 2、3 世代セフェム系薬を使用した 2 例では効果が乏しく、MEPM、 TAZ/PIPC へ変更が必要であった。 【考察】当院の 4 年間の検討で菌血症症例は 13 例と多くなかった。しかし、複数菌感染の影響もあったと考 えられるが、そのうち 5 名で敗血症性ショックを伴っており、正確な菌種の同定、感受性検査が重要である と考えられた。今回の検討では、経験的にカルバぺネム系薬、βラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン系薬が 投与された症例では治療成績は良好であった。しかし、耐性化が進めば治療に影響することも予想され、今 後も薬剤感受性の動向を注視していきたい。 -44- 18. 富山大学病院における 5 年間(2009-2013 年)の嫌気性菌分離状況に 関する検討 ○鳴河 宗聡 1) 、河合 暦美 1) 、芦澤 信之 富山大学医学部 感染予防医学/感染症科 1) 、山本 善裕 1) 1) 【背景と目的】 近年、ヒトの常在菌叢や環境常在菌など弱毒菌による感染症が多くみられる時代になった。嫌気性菌はヒト の常在菌叢を構成する主要な細菌群であり、口腔、上気道、腸管、膣などの粘膜面に多い。嫌気性菌感染症 は好気性菌を含めた複数菌感染例が多く、顕微鏡検査や培養検査で多種の細菌が認められ原因菌の推定が困 難な例が多い。また、近年、業務の効率化など病院環境の変化に伴い細菌検査を外注委託する施設が増加し ており、保存条件の影響により嫌気性菌の検出はいっそう困難となった。そこで、われわれは嫌気性菌感染 症が疑われる場合の原因菌推定や抗菌薬選択の一助となるよう当院で検出された嫌気性菌の分離状況を解析 した。 【方法】 富山大学病院で 2009 年 1 月 1 日から 2013 年 12 月 31 日までの 5 年間に外来および入院患者から分離された 嫌気性菌分離株 6584 株を対象に解析を行った。 【結果】 5 年間で分離された嫌気性菌の検出率は 6.1%(6584 株/108262 株)であった。材料別検出頻度は膿が最も多 く 25.9%、次いで生殖器 25.1%、便 12.3%の順であった。分離菌の頻度では、Peptostreptococcus 属 398 株、 21.2%と最も多く、次いで Clostridium 属 16.7%(1099 株)、Bacteroides 属 16.1%(1060 株)、Prevotella 属 12.0% (789 株)、Actinomyces 属 6.1%(399 株)の順であった。材料別菌種の割合では、血液・髄液で Propionibacterium acnes が 38.4%と最も多かったが、皮膚の常在菌であり検体採取時の contamination が考えられた。次いで Bacteroides 属 23.3%、Clostridium 属 16.3%の順であった。呼吸器検体では、Actinomyces 属が 69.1%と最も多 く、生殖器では Peptostreptococcus 属が 31.1%と最も多かった。Bacteroides 属の内訳は、B. fragilis が 46.5%と 最も多く、次いで B.thetaiotaomicron 22.1%であった。Clostridium 属は C.perfringens が 54.1%と最も多く、次 いで C.difficile 28.4%であった。Prevotella 属は P.bivia が 53.1%と最も多かった。B. fragilis に対する感性率は PIPC/TAZ 90.0%、ABPC/SBT 70.0%、CMZ 64.0%、 IPM/CS 85.1%、MEPM91.0%、CLDM69.8%であった。 Prevotella 属に対する感性率は CMZ 99.0%、CLDM 71.8%であった。TAZ/PIPC や ABPC/SBT に対する感性率 は良好であった。 【まとめ・結語】 すでに報告されているように、当院においても B. fragilis に対する CLDM や CMZ の感性率低下がみられた。 Prevotella 属については、CLDM の感性率が低下していたが、CMZ に対する感性率は保たれていた。今後も サーベイランスを継続し、分離状況や耐性化の動向などの解析が重要である。 -45- 19. 肺非結核性抗酸菌症における嫌気性菌の関与 ○山 啓 西田 千夏 1) 1) 、矢寺 和博 1) 、川波 敏則 1) 、内藤 圭祐 1) 、赤田 憲太朗 、渡橋 剛 1) 、川波 由紀子 1) 、石本 裕士 1) 、迎 寛 1) 産業医科大学呼吸器内科学 1) 産業医科大学若松病院呼吸器内科 1) 、野口 真吾 2) 、生越 貴明 1) 、 2) 【背景・目的】近年、慢性下気道感染症の病態について、例えば嚢胞性線維症(CF)患者の気管支肺胞洗浄 液(BALF)の分子生物学的手法を用いた解析で、これまで病原性や疾患の増悪の中心として考えられていた 緑膿菌以外にも、種々の嫌気性菌の検出頻度が多いことが分かってきており、CF の病態生理に嫌気性菌も深 く関与している可能性が示唆されている。また、非結核性抗酸菌症(NTM)を含めた慢性下気道感染症にお ける気管支拡張所見の進行などの詳細な機序は分かっていない。このため、NTM を含めた慢性下気道感染症 の症例の BALF を用いて、培養法に依存しない分子生物学的手法を用いて網羅的細菌叢解析を行い、下気道 の細菌叢の培養法との比較に加えて、臨床および画像所見との関連性について検討した。 【対象・方法】病歴および胸部 CT 所見から NTM が疑われた気管支拡張症例に対し、気管支鏡により病変部 から気管支肺胞洗浄を施行した。BALF から DNA を抽出し、16S rRNA 遺伝子の部分断片を PCR 法で網羅的 に増幅後、PCR 産物のクローンライブラリーから無作為に 96 クローン選択して、各々の塩基配列を決定し、 Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)により基準株の塩基配列との相同性検索を行った。同一検体を用 いて抗酸菌塗抹、培養、特異的 PCR および一般細菌塗抹・培養も行った。これらの細菌叢解析結果と胸部 CT 画像所見との関連性について解析した。 【結果】16S rRNA 遺伝子を用いた網羅的細菌叢解析では、気管支拡張症群(非 NTM 群)と比較して NTM 群において嫌気性菌が有意に多く認められた。また、胸部 CT 所見における collapse/consolidation の程度は、 NTM 群でのみ気管支洗浄液中の Prevotella 属の割合と有意な相関を認めた。 【考察】NTM の collapse/consolidation などの肺病変の形成には、非結核性抗酸菌のみならず、Prevotella 属な どの嫌気性菌が関与している可能性が推測された。 -46- 20. MALDI-TOF MS を用いた嫌気性細菌の同定 ○林 将大 1) 、松野 有美 1) 、澤村 治樹 2) 、三鴨 廣繁 岐阜大学 生命科学総合研究支援センター 1) 一宮西病院 検査科 細菌検査室 2) 愛知医科大学大学院医学系研究科 臨床感染症学 3) 、田中 香お里 1) 3) 【はじめに】 近年、MALDI-TOF MS を用いた質量分析に基づく細菌同定法は、その精度、測定の簡便さ、迅速性および コストの面から注目されている。しかしながら、本手法を用いた嫌気性細菌の同定については好気性菌に比 べ利用実績が少ないのが現状である。今回、嫌気性細菌の同定について2種類の解析プログラムを用いて同 定精度を検証したので報告する。 【材料および方法】 本検証には、当研究室に保存されている嫌気性細菌の臨床分離株 10 属、約 300 株を用いた。アルコール・ ギ酸抽出法によって調製した解析試料は、 VITEC MS Plus(Sysmex Biomerieux 社)を用いて測定し、解析ソ フトウエアには同社の MYLA および SARAMIS プログラムを用いた。同定不能株および登録菌名との結果が 異なる株については 16S rRNA 遺伝子配列解析を実施した。 【結果および考察】 Bacteroides fragilis、Fusobacterium necrophorum、Propionibacterium acnes および Peptostreptococcus anaerobius については両ソフトウエアともに同等の同定精度を示した。一方、Finegoldia magna や Prevotella 属の解析で は、データベースに菌種データが登録されているにもかかわらず、同時に解析した成績に差が見られ、 SARAMIS プログラムの方が高い同定精度を示した。本検証の結果から、SARAMIS は MYLA に比べ、嫌気 性菌の同定に有用であることが示唆された。発表では追加検討した成績や、生化学性状での同定が困難な菌 群についての解析結果についても合わせて報告する。 -47- 協賛企業一覧 アステラス製薬株式会社 栄研化学株式会社 エーディア株式会社 大塚製薬株式会社 極東製薬工業株式会社 杏林製薬株式会社 シーメンスヘルスケア・ダイアグノティクス株式会社 塩野義製薬株式会社 シスメックス・ビオメリュー株式会社 セフィエド合同会社 第一三共株式会社 大正富山医薬品株式会社 大日本住友製薬株式会社 大鵬薬品工業株式会社 日本ベクトン・ディッキンソン株式会社 ファイザー株式会社 ミヤリサン製薬株式会社 Meiji Seika ファルマ株式会社 (五十音順 平成 26 年 12 月 20 日現在) 本学会・学術集会を開催するにあたり、ご支援いただき心より感謝申し上げます。 -48-
© Copyright 2024 Paperzz