■ Volume 2 No8; 22 February y 2008 原文:http://www.hpa.org.uk/hpr/archives/2008/news0808.htm ○Clostridium difficile infection: how to deal with the problem – a board to ward approach Clostridium difficile 感染:感染予防・管理のための取り組み ー施設内感染対策協議会 2008 年 4 月 23 日まで HPA のウェブサイトにおいて、Clostridium difficile 感染に関す るガイドライン、 「Clostridium difficile 感染:感染予防・管理のための取り組み ー施 設内感染対策協議会」に対する意見を受け付けている。Clostridium difficile 感染の予防・ 管理ガイドラインは、1994 年に保健省(Department of Health)の依頼で院内感染防止に関 する運営グループ(SG-HCAI)内の部門により改訂されており、今回この 1994 年版が改訂 される。新ガイドラインは、文献や専門家の意見を幅広く網羅した結果得られた科学的根 拠 に 基づ い て策 定さ れ てお り、 イ ギリ ス NHS (National Health Service) にお け る Clostridium difficile 感染予防・管理のための最も有効な対策および指針を示している。 このガイドライン、およびこのガイドラインに対するコメントの方法については以下の ウェブサイトに掲載されている。 http://www.hpa.org.uk/consultations/default.htm ○Report on a national outbreak of Vero cytotoxin-prducing E.coli O157 ベロ毒素産生型病原性大腸菌 O-157 アウトブレークに関する報告 HPA は、2007 年 6~7 月に発生したベロ毒素産生型病原性大腸菌 O-157 アウトブレークに 関する最終報告を発表した。この報告により、同様のアウトブレークに対する現行の対応 および調査方法が有効かつ必要であることが確認された。この調査は当初、Greater Manchester Health Protection Unit が 2 日間で 3 例の感染者を同定したことに端を発し、 その後、England の NHS(National Health Services)5区域および Wales においても感染例 が 発 生 し た 。 HPA の Local and Regional Services(LARS) 部 門 、 Food, Water and Environment(FWE) laboratories network により行われた患者対照研究によると、某スーパ ーマーケットチェーンで販売された、ある特定の種類のチキンとハーブのラップ・サンド イッチがアウトブレークの感染源であった。しかし、どのように汚染がおこったか、また ラップ・サンドイッチの材料のうちのどれが汚染されていたかを特定することはできなか った。このアウトブレーク調査が成功したことにより FWE network 業務の利点が明らかに なった。それは、製造管理をいかに厳しくしても、今回のケースのように生鮮惣菜がベロ 毒素産生型病原性大腸菌 O-157 に汚染される可能性は完全に否定できないからである。現 時点では惣菜のサラダやハーブ製品の調理に際してある特定の対策が有効ということはな く、この報告ではハーブ等の食品の洗浄方法を再検討することを推奨している。 ○Confirmed measles, mumps and rubella cases in 2007: England and Wales 2007 年の麻疹、流行性耳下腺炎および風疹確定例:イングランド・ウェールズ England および Wales 地方における 2007 年の麻疹患者数は、1995 年に現行のサーベイラ ンスが開始されて以来、過去最高の数字となった(2007 年 971 例、2006 年 740 例) 。一方、 流行性耳下腺炎および風疹例は 2006 年よりも少なかった(流行性耳下腺炎:2007 年 1442 例、2006 年 4381 例、風疹:2007 年 27 例、2006 年 32 例) 。 麻疹患者のうち、届け出例の約 20%(3310 例中 672 例)のみが口腔液検査で確定診断され た(さらに 342 例が他の検査法により診断された) 。同様に流行性耳下腺炎の届け出例のう ち、診断が確定したのは検査が施行された例の 20%(5333 例中 1062 例)であったのに対 し、風疹の診断確定例は届け出例のわずか1%のみであった。 2007 年における麻疹症例は概して、古くからワクチン接種率が低い流浪集団や教団で遷 延しているアウトブレークと関連したものであった。それに加えて、保育園や学校でも小 規模のアウトブレークが多発している。これらのアウトブレークのほとんどは、野生株ウ イルス D4 genotype(MVs/Enfield. GBR/14.07)によるものであった。麻疹患者の多く(79%) は 15 歳以下の小児で、1 歳以下は 90 例、1-4 歳は 312 例、5-9 歳は 237 例、そして 10-14 歳は 128 例という年齢分布であった。 2007 年の報告例のうち、73%はイギリス南西部、例えばロンドン(424 例)、サウスイー スト(102 例)、イングランド東部(159 例)から報告されている。その他では、136 例がヨー クシャー・ハンバーサイドから、62 例がイーストミッドランドからであった。残りの 88 例 は、ノースウェスト(31 例)、ウェストミッドランド(26 例)、ウェールズ(13 例) 、ノース イースト(12 例)、およびサウスウェスト(6 例)からの報告例であった。 流行性耳下腺炎の診断確定例は 2006 年には 4381 例であったが、2007 年は 1442 例まで減 少した。また、2007 年下半期の流行性耳下腺炎診断確定例は、同年上半期の患者数の約半 数程度であった。この減少にも関わらず、1980 年~1992 年の期間に生まれた患者における 診断率は依然高く、流行性耳下腺炎例全体の 66%を占める。わずか 157 例が 15 歳以下の小 児であった。患者はあらゆる地域で認められたが、ノースウェスト地区(246 例)が最多であ り、最も少なかったのはウェールズであった。 2007 年の風疹診断確定例はわずか 27 例のみであった。これらのほとんどは 20-29 歳(14 例)で、27 例のうち 11 例がロンドンからであった。風疹例のうち 5 例は出産適齢期の女性 であった。 ■ Volume 2 No 9; 29 February 2008 原文:http://www.hpa.org.uk/hpr/archives/2008/news0908.htm ○Outbreak of infection with Salmonella Anatum in England, Wales and Scotland, ongoing analytical study イングランド、ウェールズおよびスコットランド地方における Salmonella Anatum 感染症 アウトブレークについての解析研究 Health Protection Agency(HPA)、National Public Health Service for Wales(NPHS)、 および Health Protection Scotland(HPS)は、イングランド、ウェールズおよびスコットラ ンド地方で発生した Salmonella Anatum アウトブレークの原因を調べるため、患者対照研 究を施行する。2007 年 11 月 1 日以降、イングランドおよびウェールズ地方で 87 例、スコ ットランド地方で 44 例の国内感染例を認めており、最新の報告例は 2008 年 2 月 11 日発症 の例である。患者はウェールズ地方、およびイングランド内の9つの HPA 地区に分布して おり、ノースウェスト(33%) 、ノースイースト(16%) 、ヨークシャー・ハンバーサイド (15%)に多くみられる。2007 年 12 月 23 日~2008 年 1 月 30 日の期間に、選ばれた症例 を対象とした詳細な聞き取り調査が行われた。これらの聞き取り調査をもとにたてられた 仮説を検証するため、アウトブレークコントロールチームが患者対照研究を行うこととな った。この研究は HPA、HPS、NPHS からのメンバーを含んだチームによる共同研究になる予 定である。 ○ONS data on healthcare associated infection mortality 感染症による死亡率に関する ONS(Office for National Statistics)のデータ ONS から出された最新の統計によると、イングランドおよびウェールズ地方において、死 因を Clostridium difficile 感染症とする死亡診断書の数が 2005 年から 2006 年にかけて 72%増加していることが明らかになった。2005 年に死亡診断書作成法のガイドラインが改訂 され、死因に関連する院内感染を記載することが強調されており、このことが今回の増加 につながったと考えられている。全例報告が義務付けられたサーベイランスによると、65 歳 以 上の Clostridium difficile 関連 疾 患は 前年 の 同時 期 より 7% 増 加し てい た 。 Clostridium difficile に関する記載がある死亡診断書の総数は 2006 年に 6480 例で、その 約半数(3490 例、55%)は Clostridium difficile が死因の基礎疾患とされていた。2002~ 2006 年の期間に NHS 総合病院で発生した全死亡例のうちの 0.99%が Clostridium difficile に関連していた。 Clostridium difficile に関連した死亡は主に高齢者に多くみられた。2006 年の 85 歳以上の年齢層における Clostridium difficile 関連死亡率は、男性が 2795 人/ 人口 100 万人、女性が 2785 人/人口 100 万人であった。一方、45 歳以下では男性が 0.2 人 /人口 100 万人、女性が 1.3 人/人口 100 万人であった。Clostridium difficile における このような傾向とは対照的に、MRSA に関連した死亡例は 2005 年と 2006 年でほとんど変化 がみられなかった。 ○HPA website relaunch HPA のウェブサイトが再開 HPA のウェブサイトが 2 月 29 日(金)正午にアップグレードされて再開する。このサイ トのデザインが新しくなったことにより、HPA の活動に関する情報がより簡単に見られるよ うになり、またコンテンツをより早くアップデートできるようになる。HPR の読者にはこの 新しいサイトを見ていただき、ホームページの右下にある「HPA Website Feedback」のリ ンクからアクセスできるオンライン・サーベイランスにお答えいただきたい。HPR はこれま でどおり、www.hpa.org.uk/hprのアドレスで、現行のフォーマットのまま発行される。 ■ Volume 2 No 10; 7 March 2008 原文:http://www.hpa.org.uk/hpr/archives/2008/news1008.htm ○Canine rabies in France フランスで発生したイヌ狂犬病 先月パリ郊外でイヌ狂犬病例が発生したことから HPA は、フランスの 3 地域でここ数週 間に犬と濃厚な接触があった者は暴露後予防治療の必要性について速やかに診察を受ける ように勧めている。以下に示す地域でそれぞれ特定の期間内に犬に噛まれたり搔かれたり した人、また粘膜やダメージのある皮膚をなめられた人は、低いながらも持続的な狂犬病 発症のリスクを有している。医療関係者に対しても、これまで感染リスクのある地域で発 生した犬咬症の患者の診療録を調べ、再度暴露後予防治療の必要性を検討するよう勧告し ている。感染リスクのある地域および期間は以下のように考えられる。 ・Gers(Auch 市とその近郊) 、2007 年 11 月 1 日以降 ・Grandpuits, Seine-et-Marne(パリの約 30 マイル南東) 、2007 年 12 月 15 日以降 ・Calvados(Lisieux 市、Thury Harcourt 村およびその近郊) 、2007 年 12 月 15 日以降 問題となっている犬(下記の dog3)は、2008 年 2 月 26 日にパスツール研究所の national reference laboratory で狂犬病と診断された。ウイルス株はモロッコ由来の genotype 1、 African 1 系列であった。現地調査により他 2 匹の犬が関係した、10 月 25 日に始まる感染 経路の存在が考えられた。 ・Dog1:[コリー雑種]10 月末にモロッコから Gers(フランス南西部、 Toulouse と Aquitaine 近郊)に輸入され、当地で 11 月 12 日に死亡した。ウイルス排泄期間は 10 月末から 11 月 12 日と推定される。犬は火葬、検体は得られていない。 ・Dog2:[黒の交雑ラブラドール]Gers で dog1 との接触があり、その後 11 月 29 日に家族 とともに Grandpuits に戻った。1 月 5 日に死亡、ウイルス排泄期間は 12 月 15 日から 1 月 5 日と推定される。犬は火葬、検体は得られていない。この犬は、Calvados 地区(Normandy) にいた 3 日間(12 月 15‐17 日)を除き、1 月 5 日に安楽死されるまで Seine-et-Marne 地区 にいた。Dog1 と dog2 は狂犬病に一致する症状で死亡した。 ・Dog3:[雑種、年少メス] Seine-et-Marne 地区 Grandpuits で dog2 と同じ家族に飼われ ていた。初発症状は 2 月 15 日に出現し、2 月 19 日に死亡した。ウイルス排泄期間は 2 月 1 ~19 日と推定される。確定診断され、2008 年 2 月 26 日に報告された。 今までフランスには陸生生物の狂犬病は存在しないと考えられていた。フランスの専門家 によると、この状況が今後変化していくものかはまだ不明としている。しかし、詳細な情 報が得られるまでフランス当該地区に渡航する人は可能な限り動物との接触を避け、また 犬に噛まれる、掻かれる、また舐めらるといった場合は速やかに診察を受けるよう勧めら れる。 このニュースに関する情報: French Ministry of Health、Youth and Sports. Health alert -Case of animal rabies[on line].2008 年 3 月 6 日発表・掲載. 地図を含んだ、本事例に関する情報が記載されている。 http://www.sante-jeunesse-sports.gouv.fr/alertes-sanitaires/ [フランス語] The National Travel Health Network and Centre (NaTHNaC): News- Canine rabies in France.2008 年 3 月 4 日発表、3 月 6 日掲載. http://www.nathnac.org/travel/news/rabies_040308.htm Rabies incidents-update.HPA website[on line] 2008 年 3 月 5 日発表、3 月 6 日掲載. http://hpa.org.uk/infections/topics_az/rabies/menu.htm ○Yellow fever in south America –travel advice update 南米における黄熱病 ―最新の旅行者情報 ブラジルとパラグアイで黄熱病の流行が報告されたことから、旅行者に勧められるワク チン接種法が 2008 年 2 月に変更されていた。パラグアイではいまだ流行が続いており、ま た現在はアルゼンチンでも流行の報告があることから、今回、ワクチン接種法がさらに変 更された。 パラグアイ パラグアイでの確定診断例数は 16 例に増加し、 このうち 3 例が死亡した。患者は Asuncion 郊外、San Pedro Department および San Lorenzo municipality の農村部から報告されてい る。米国 CDC、WHO は黄熱病に対するワクチン接種法をすでに変更しており、2008 年 2 月 22 日、National Travel Health Network and Centre(NaTHNaC)もこれと同様にワクチン接 種法の変更を行った。現在、パラグアイを訪れる生後 9 カ月以上の旅行者全員に黄熱病ワ クチンの接種が勧められる。この勧告はさらなる通知があるまで適用される。 アルゼンチン 2008 年 1 月、Misiones 州 Pinalito Park で 17 匹の猿の死体が発見され、そのうちの1 匹が黄熱病と診断された。2008 年 3 月 3 日、保健省は Misiones 州 San Vicente で診断され た最初のヒト黄熱病例を報告した。NaTHNaC は 2 月 29 日にアルゼンチン保健省と同様に黄 熱病ワクチン接種法を変更していたが、現在はアルゼンチンの Chaco, Corrientes, Formosa, Salta 州のパラグアイ・ブラジル国境に接する地域、および Misione 州全域を訪れる生後 9 カ月以上の旅行者全員に黄熱病ワクチンの接種が勧められている。この勧告はさらなる通 知があるまで適用される。 黄熱病ワクチン接種に際しては禁忌となる病態や副作用に対する注意が必要である。十 分にリスクアセスメントを行い、必要に応じて専門家の意見を求めなければならない。 黄熱病およびその予防についての情報は、NaTHNaC の黄熱病に関する health information sheet を参照されたい。http://www.nathnac.org/pro/factsheets/yellow.htm 世界各地への旅行者健康情報は NaTHNaC ウェブサイトの各国情報ページに紹介されてい る。https://www.nathnac.org/ds/map_world.aspx. ○Seasonal influenza and resistance to oseltamivir in influenza A(H1N1) viruses –an update 今シーズンのインフルエンザ動向とインフルエンザA(H1N1)ウイルスのオセルタミビ ル耐性 -最新情報 2007 年 12 月下旬から 2008 年 1 月上旬にかけて上がったイギリス国内のインフルエンザ 流行レベルは、現在北アイルランドではまだ流行が持続しているが、イングランド、スコ ットランドおよびウェールズではベースラインレベルに低下した。イギリス国内における 今シーズンのインフルエンザ流行に関する情報は以下のウェブサイトで入手できる。 http://www.hpa.uk/infections/topics_az/seasonal/default.htm 2008 年 3 月 6 日までのデータによると、今シーズンにヨーロッパ全域で検査したインフ ルエンザ A(H1N1)ウイルスのうち、約 20%は抗ウイルス薬オセルタミビルに耐性を示した。 その耐性の程度は国によって大きく異なっている。イギリス国内で分離され、検査が施行 されたインフルエンザ A(H1N1)ウイルス 316 株のうち、29 株(9.2%)に耐性が報告された。 これまでヨーロッパ全域で分離され、検査されたウイルス株はすべて、もう一剤の抗ウイ ルス薬ザナミビルに対しては十分な感受性を維持している。HPA はインフルエンザウイルス 株の薬剤耐性について強化サーベイランスを続けており、患者の経過追跡も準備中である。 現在、イギリス国内におけるインフルエンザ流行レベルは低く、また薬剤耐性インフル エンザウイルス株は少ないことから、HPA は現在のインフルエンザ管理ガイドラインを引き 続き推奨している。 ヨーロッパにおけるオセルタミビル耐性インフルエンザについての情報は以下のウェブ サイトで入手可能である。 http://www.ecdc.europe.eu/Health_topics/influenza/antivarals.html また、世界各地における情報は WHO のウェブサイトで入手できる。 http://www.who.int/csr/disease/influenza/h1n1_table/en/index.html ■ Volume 2 No 11; 14 March 2008 原文:http://www.hpa.org.uk/hpr/archives/2008/news1408.htm ○National increase in new salmonella strain 国内全域で新しい salmonella 菌株が増加 HPA の Laboratory of Enteric Pathogens(LEP)によると、2008 年 2 月 22 日以降、同じ未 登録のファージ型パターンを示す Salmonella Typhimurium の分離菌株数が増加している。 このファージ型パターンは S. Typhimurium ファージタイピング法によって現在認識されて いるどのパターンとも異なっており、PT U320 と命名された。LEP はこれまで、イングラン ドとウェールズで 51 例の S. Typhimurium PT U320 感染例を確認している。現在の分離株 はいずれも検査した抗菌薬すべてに十分な感受性を示している。症例の年齢は生後 10 ヶ月 から 92 歳にわたり(中間値 44 歳) 、68%が女性であった。暫定の調査結果によると、31 例中 30 例は 2 月 17 日~25 日の期間に発症、残り 1 例はこの推定されるアウトブレーク期 間外に発症しているが、この症例はエジプトに渡航していたことが報告されている。これ まで確認された症例は全国的に分布しており、国内全域で発生している。HPA の Centre for Infection は現在、イングランドとウェールズで症例の追跡を行っており、これらの症例の 感染源を調査中である。
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