シニアリビングの鑑定評価

シニアリビングの鑑定評価
目次
1. シニアリビングに係る鑑定評価を取り巻く状況
2
(1)シニアリビングとは
2
(2)シニアリビング評価の特徴
3
2. 価格形成要因分析
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(1)一般的要因の分析
5
(2)地域分析
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(3)個別分析
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3. 鑑定評価手法及び鑑定評価額の決定
12
(1)賃料査定について
13
(2)還元利回り(キャップレート) 査定について
14
<弊社における最近の取り組み>
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1
1.シニアリビングに係る鑑定評価を取り巻く状況
(1)シニアリビングとは
・医療
病院,診療所(医療モール),老人保健施設など
・介護
高齢者向け住宅,老人ホームなど
・保育
幼稚園,保育所,託児所など
・保健
スポーツジムなど
● ここでは介護分野の高齢者向け住宅や老人ホーム等について、
「シニアリビング」と呼ぶことにします
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(2)シニアリビング評価の特徴
①オペレーショナルアセット
高齢者施設においては、賃料の支払い原資がその施設での事業収益に依存しているため、オペレ
ーターの運営能力に依存することとなる。したがって、鑑定評価に当たっては、当該事業収支の
分析が重要となる。
②介護報酬制度等、行政的条件による制約
介護事業者の収益の一定割合を占める介護報酬は、3年毎に改定され、 地域区分(1単位当たり
の単価)の変更を伴うケースもあり、収益の変動要因に繋がる。そのため、これらの現状・改定
状況等についての分析が必要となる。また、助成制度の創設等による、施設の新規供給量への影
響等についても注視することが必要である。
③用途転換の困難性
シニアリビングは、事業の継続性が必須であることから、事業を中止して、不動産の用途を変更
することは困難である。また、ハード面からも、用途転換への柔軟性は高くない。一方、このよ
うな特性から、事業者が一括賃貸借形式で利用する場合には長期安定的な契約が締結されること
が一般的であり、事業継続を前提とするM&Aも顕著である。
④社会的インフラとしての機能
少子高齢化社会において、シニアアセットは社会的インフラとしての側面を有し、また、高い外
部成長が期待されている用途である等、今後マーケットの成長・変化が予測されるアセットであ
る。そのため、タイムリーな情報収集・分析が不可欠である。
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2.価格形成要因の分析
一般的要因の分析
経済情勢・法令等、
マクロ的な状況等の分析
地域分析
地域特性・マーケットボ
リューム等のエリア分析
個別分析
土地の形状・建物グレー
ド・オペレーションの状況
等の個別的な特性の分析
最有効使用の判定
鑑定評価手法の適用
試算価格の調整及び鑑定評価額の決定
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(1)一般的要因の分析
人口等の社会的要因、財政・金融、物価等の経済的要因のほか、特に介護
保険制度、施設の供給規制等の行政的要因の調査も重要となる。
①人口の状態
(千人)
高齢者人口は、2045年
まで増加
高齢者の割合
総人口・高齢者人口
140,000
100%
総数
15~64歳
65歳以上
120,000
90%
80%
100,000
70%
80,000
60%
(2)人口の推移
60,000
高齢者割合
20%→30%
50%
40%
40,000
30%
20,000
20%
その他割合
高齢者割合
10%
1950
1955
1960
1965
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
2015
2020
2025
2030
2035
2040
2045
2050
2055
2060
2065
2070
2075
2080
2085
2090
2095
2100
2105
0
0%
2005
2010
2015
2020
2025
2030
総人口・生産年齢人口は
既にピークアウト
● 人口が減る中で、高齢者数は急激に増加(約1,000万人)
● 高齢者割合は3人に1人に
(注)高齢者・・・65歳以上
(出所)国立社会保障・人口問題研究所推計に基づき弊社作成
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②高齢者人口の推移
(千人)
高齢者人口の推移(都道府県別)
4,000
1都3県で
約400万人増加
3,500
2030(推計)
2005
3,000
大都市圏は
増加数も多い
2,500
2,000
1,500
1,000
沖縄
宮崎
鹿児島
大分
熊本
長崎
佐賀
福岡
高知
愛媛
香川
徳島
山口
広島
岡山
島根
鳥取
奈良
和歌山
兵庫
大阪
京都
滋賀
三重
愛知
静岡
岐阜
長野
山梨
福井
石川
富山
新潟
千葉
神奈川
埼玉
東京
群馬
栃木
茨城
福島
山形
秋田
宮城
岩手
青森
0
北海道
500
● 高齢者人口の増加は、大都市圏に集中
(注)高齢者・・・65歳以上
(出所)国立社会保障・人口問題研究所推計に基づき弊社作成
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③高齢者人口の増加率
高齢者人口の増加率
90.0%
大都市は
増加率も高い
80.0%
70.0%
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
沖縄
宮崎
鹿児島
大分
熊本
長崎
佐賀
福岡
高知
愛媛
香川
徳島
山口
広島
岡山
島根
鳥取
奈良
和歌山
兵庫
大阪
京都
滋賀
三重
愛知
静岡
岐阜
長野
山梨
福井
石川
富山
新潟
千葉
神奈川
埼玉
東京
群馬
栃木
茨城
福島
山形
秋田
宮城
岩手
青森
0.0%
北海道
10.0%
● 増加率でみても、大都市圏が高い
(注)高齢者・・・65歳以上
(出所)国立社会保障・人口問題研究所推計に基づき弊社作成
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④行政1
~ 介護施設から住宅へ ~
2025年度
(現状投影)
2011年度
2025年度
(改革シナリオ)
利用者数
426万人
647万人
在宅介護
304万人分
434万人分 +130万人分 (+43%)
+221万人
641万人
-6万人分
449万人分
+15万人分
61万人分
+9万人分
31万人分
52万人分
特定施設
15万人分
25万人分
+10万人分
24万人分
-1万人分
グループホーム
16万人分
27万人分
+11万人分
37万人分
+10万人分
92万人分
161万人分
131万人分
-30万人分
48万人分
44万人分
86万人分
75万人分
72万人分
59万人分
-14万人分
-16万人分
居住系サービス
介護施設
特養
老健,介護療養
介護職員
140万人
+21万人分 (+68%)
+69万人分 (+75%)
+38万人分
+31万人分
213万人
+73万人~84万人
~224万人
232万人
+19万人~20万人
~244万人
● 現状のペースでは、介護施設が急速に増加 → 介護保険財源の圧迫
● 改革シナリオでは、介護施設を抑えて居住系サービス・在宅介護を拡充
(出所)第4回 民主党 社会保障と税の一体改革調査会総会 厚生
労働省提出資料「医療・介護制度改革について」(平成23
年11月16日)に基づく。
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④行政2
~ ヘルスケアリート設立へ ~
「ヘルスケア施設供給促進のための不動産証券化手法の活用
及び安定利用の確保に関する検討委員会」(国土交通省)
平成24年10月5日第一回会議
平成24年12月7日第二回会議
平成25年 2月8日第三回会議
平成25年 3月6日第四回会議
・介護事業者、医療法人、金融機関、投資家、弁護士等の有識者が参加
・全4回の会議を終え、検討委員会は、課題やその解決方法の方向性をと
りまとめた報告書を発表。
本報告書において、ヘルスケア施設を投資対象としたREIT創設のメリット
として、資金調達が多様化することや、施設経営の透明化の確保、不動産
の長期安定保有が可能となることなどが報告されている。
(出所)第1回 「ヘルスケア施設供給促進のための不動産証券化
手法の活用及び安定利用の確保に関する検討委員会」
(国土交通省)発表資料及び傍聴等に基づく。
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(2)地域分析
都市部、郊外部等の立地特性、介護度の高低などによって、その影響の
程度は異なるが、居住用の建物であるため、概ね賃貸住宅等と類似の要
因が重要となる。
なお、都市部立地の施設について、重要な要因を例示すれば以下のもの
等が挙げられる。
・最寄駅からの距離等の交通利便性
・商業施設、公共・公益的施設等の配置の状態
・居住環境、住宅地としての品等 など
上記のとおり、重視すべき要因について、住宅用途との類似性を確認す
ることができる。但し、賃貸住宅とは異なり、オフィスエリアとの接近性(職
住近接)の程度等は通常重視されない。
その他、シニアリビングに特有の主な地域要因としては、各エリアにおけ
るマーケットボリュームの把握等に係る次頁のものなどが挙げられる。
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【シニアリビング評価に係る特徴的な要因】
需要
量
質
・高齢者人口
・要介護者認定数
・高齢化率及びその将来予測
(高齢化スピード等) など
・年金受給額,所得水準 など
供給
・介護施設等設置数
・介護施設定員数
・競合物件の供給動向(供給規制)
及び稼働状況 など
・介護保険制度における
地域区分(1単位当たりの単価)
・競合施設の利用料水準 など
(3)個別分析
通常の個別的要因(地勢・地質・画地規模・道路接面状況等の土地に係る要因、築
年数・面積・構造・施工の質等の建物に係る要因)のほか、当該施設の運営状況(利
用料水準、定員数、稼働状況、運営会社の属性)の分析が重要となる。
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3.鑑定評価手法及び鑑定評価額の決定
価格を求める鑑定評価手法
原価法
【原価方式】
土地の取得価格+建物の再調達原価
±減価修正
積算価格
取引事例比較法
【比較方式】
類似の取引事例の取引価格との比較
比準価格
収益還元法
【収益方式】
直接還元法
鑑定評価額
年間当たりの純収益÷
還元利回り(キャップレート)
収益価格
DCF法
保有期間中のCF+転売価格
を現在価値に割り戻す
鑑定評価額の決定に当たっては、特にその収益性に基づく価格(収益価格)を
重視して決定するケースが多い。特に証券化対象不動産等の賃貸用不動産につい
ては、通常の場合、収益価格を標準として鑑定評価額が決定される。
その場合、賃料と利回りが特に重要な要素となる。
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(1)賃料査定について
適正な賃料の査定に当たっては、特にその収益性に着目したアプローチ(収益
方式)が重要となる。
介護報酬
費用
入居一時金償却
売上
人件費
外注費
食材費
広告費
水道光熱費
修繕費
リース料
その他
月額管理料等
利益
その他
設備機器等積立金
運営者の適正利益
リスクバッファー
負担可能賃料
シニアアセットの中でも、介護型有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、
サービス付高齢者住宅等、それぞれの用途毎に異なる事業収支内容となり、その
賃料負担力も異なるものとなるため、各施設の個別性、地域性等に応じた分析が
必要となる。
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(2)還元利回り(キャップレート) 査定について
① キャップレートの査定
取引事例における取引利回りとの比較を中心に、一定の類似性を有すると考えられる他用途
の不動産に係る取引利回りとの比較、取引事例に係る取引単価(一床当たり単価)による検証
を行う等、多面的な検討を行った上、査定する。
シニアリビングの
取引事例における
取引利回り
多面的な検討
・一定の類似性を有する他用途の不動産に係る取引利回り
・取引事例に係る取引単価(一床当たり単価)
・割引率との関連など
還元利回り
(キャップレート)
② 取引事例
利回りを推定できる資料は、公開情報の多いリートの取得物件が中心となる。国内における
リートの取得事例は以下のとおりである。
【国内リートの取引事例】
REIT名
施設名
所在地
種類
取得日
推定取得時
NCF利回り
直近期末評価
推定NOI利回り
ボンセジュール千歳船橋
東京都世田谷区
船橋1丁目
介護付
有料老人ホーム
2006/5/25
6.3%
5.9%
ボンセジュール四つ木
東京都葛飾区
東四つ木3丁目
介護付
有料老人ホーム
2006/5/25
6.7%
6.2%
ボンセジュール日野
東京都日野市
落川
介護付
有料老人ホーム
2006/5/25
6.9%
6.2%
ボンセジュール武蔵新城
神奈川県川崎市
高津区千年
介護付
有料老人ホーム
2006/11/24
6.6%
6.1%
ボンセジュール小牧
愛知県小牧市
城山
住宅型
有料老人ホーム
2007/5/22
6.4%
7.6%
ボンセジュール秦野渋沢
神奈川県秦野市
渋沢上1丁目
介護付
有料老人ホーム
2007/5/22
6.9%
7.0%
メディカルホームボンセジュール伊丹
兵庫県伊丹市
中央1丁目
住宅型
有料老人ホーム
2007/5/22
6.4%
6.6%
アドバンス・レジデンス投資法人
ライフ&シニアハウス港北2
神奈川県横浜市
介護付
都筑区茅ヶ崎南2丁目 有料老人ホーム
2007/3/16
6.3%
(※)7.2%
オリックス不動産投資法人
グッドタイムリビング新浦安
千葉県浦安市
明海6丁目
2012/9/6
6.9%
6.5%
インヴィンシブル投資法人
介護付
有料老人ホーム
神奈川県川崎市
介護付
2012/4/26
-
-
宮前区犬蔵2丁目
有料老人ホーム
※各投資法人発表資料、各施設HP記載情報等に基づき弊社作成。なお、「ライフ&シニアハウス港北2」については、NCF利回りを記載。
ケネディクス・レジデンシャル投資法人 ニチイホームたまプラーザ(底地)
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<弊社における最近の取り組み>
弊社では、ヘルスケアチームを中心として、ヘルスケアアセットに係る調査、分析、コン
サルティング等に取り組んでおります。
また、公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会でのヘルスケアワーキンググルー
プへの参加や弊社主催のセミナー(※)での情報発信等、積極的に当該分野に取り組ん
でおります。
※平成24年10月22日東京
(講師:KPMGヘルスケアジャパン株式会社 取締役・パートナー 松田 淳 氏)
平成24年12月14日福岡
(講師:株式会社アクシンパシー 代表取締役CEO 山下 友利 氏)
昨年は、上記2回に渡り、シニアリビングについての有識者をお招きし、シニアリビングの展望につい
てのご講演を頂きました。また、これと併せて弊社 東京本社 証券化2部 ヘルスケアチームより、シニア
リビングの鑑定評価についての講演を行いました。
なお、弊社では、有料老人ホーム、介護老人保健施設、サービス付高齢者向け住宅等
のシニアリビングのほか、病院、診療所等のその他のヘルスケアアセットにつきましても、
多くの実績がございます。
また、関連会社である株式会社ユニオンリサーチにおきましては、病院のER作成業務
につきましても豊富な実績がございます。
The Tanizawa Sogo Appraisal Co.,Ltd. All Rights Reserved 2013.3
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株式会社 谷澤総合鑑定所 東京本社
〒100-0005
東京都千代田区丸の内2丁目1番1号
明治安田生命ビル
TEL:03-3215-2033(代表) FAX:03-3215-2366
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