パナソニック - モーニングスター

株式レポート 2008.10.8
6752・東証1部、電気機器
パナソニック (旧:松下電器産業)
デジタル革命での勝者を目指す
株価
適正株価
モーニングスターレーティング
1,484 円
(08/10/8 終値)
2,065 円
(08/10/8)
★★★★★
発行済み株式数
時価総額
245,305 万株
36,403 億円
(08/10/8)
事業への参入障壁
平均
(08/10/8)
(08/10/8)
事業リスク
平均
(08/10/8)
(08/10/8)
単位株数
連結PER(会社側予想)
(実績)
連結PBR
(実績)
ROE
1,000 株
10.06 倍
(08/10/8)
0.83 倍
(08/10/8)
7.36%
(08/10/8)
■分析コメント
●投資判断
投資判断は「5つ星」とする。我々の考える妥当株
価 2,065 円に対し、現在の株価は 28.14%のディスカ
ウントになっており、割安感が強まっているためであ
る。
デジタル家電業界では、自社でキーとなる部品を生
産せず、その調達を外部に依存する水平分業モデル
をかかげ、新規参入する企業も散見される。この事業
の参入障壁はその意味で高いとは言い切れない。また、
それにより、競争が激化し、製品価格が下落するとい
う事業リスクもある。ただ、水平分業型企業のリスク
は、部品の調達がスムースに行かないケースがあるこ
とだ。これに対し、当社は自社で半導体や薄型パネル
を生産することで、市場の需給に応じ、柔軟に部品等
を調達できるというメリットを有している。また、デ
ジタル家電業界は生産・販売面で本質的に豊富な資金
力を必要とする。当社の保有する1兆円超の現金預金
は、それ自体が大きな武器となっている。これらを総
合的に勘案し、事業リスク、参入障壁とも「平均」と
する。ちなみに、FCF 成長率の前提は 0.5%、WACC
は 6.63%とした。
●直近の業績動向
09 年3月期 ・ 第1四半期の営業利益は 1,096 億円
(前年同期比 48.3%増)と好調。ビクターの連結除外
や特許係争清算益等の特殊要因もあるが、主力のデジ
タル AVC ネットワーク(デジタル家電等)が同 41%増、
アプライアンス(白物家電等)が同 75%増と大幅な
増益となった。会社側では中間期には連結営業利益で
2,000 億円を見込んでいるが、第1四半期終了時点で
は、計画ラインを 300 億円前後上回っている模様で、
スタートとしては順調である。
懸案の日本ビクター再編を果たし、大坪社長のもと、
攻めの経営を強化する。会社側では 2009 年3月期は
営業利益で 5,600 億円と同 7.8%増を目指す。
■業績予想
実績
【連結・3月期】
売上高・営業収益(百万円)
営業利益(百万円)
前期比(%)
経常利益(百万円)
前期比(%)
当期純利益(百万円)
前期比(%)
EPS(円)
BPS(円)
06/3
8,894,329
414,273
34.29
371,312
50.38
154,410
164.03
69.88
1,714
会社側予想
07/3
08/3
9,108,170
459,541
10.93
439,144
18.27
217,185
40.65
101.19
1,825
9,068,928
519,481
13.04
434,993
- 0.95
281,877
29.79
134.16
1,781
モーニングスター予想
09/3
9,200,000
560,000
7.80
500,000
14.94
310,000
10.00
147.54
-
モーニングスター予想
10/3
9,200,000
570,000
9.72
510,000
17.24
306,000
8.60
145.64
-
(1/3)
本資料は投資判断の参考としての情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的とするものではありません。銘柄の選択、投資判断の最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。本資料に掲載
された意見は作成日における判断であり、予告なしに変更される場合があります。本資料に掲載されたデータ・意見は、当社が信頼できると判断したデータ等により作成いたしましたが、その正確性、完全性等について
保証するものではありません。著作権、知的所有権等一切の権利はモーニングスター株式会社並びに Morningstar,Inc に帰属しますので、許可なく複製、転載、引用等を行うことを禁じます。
9,660,000
598,920
5.07
538,920
5.67
323,352
5.70
153.90
-
株式レポート 2008.10.8
パナソニック(6752・東証1部)
■株価
パナソニック(週足)
26 週線
出来高
■主要財務指標・株価指標比較(07 年度)
パナソニック 東
証1部・電気機器
パナソニック 東
証1部・電気機器
売上高営業収益伸び率(%)
- 0.43
4.01
流動比率(%)
195.93
186.62
営業利益伸び率(%)
13.04
14.33
デッド・エクイティ・レシオ(倍) 0.10
0.36
売上高営業利益率(%)
5.73
6.12
PER(会社側予想、倍)
10.06
11.49
%)
ROA(総資産事業利益率、
7.36
6.80
E
V/EBITDA(倍)
4.41
3.67
%) R
OE(自己資本当期純利益率、
7.36
8.01
PCFR(倍)
7.81
4.71
(08/10/8 現在)
■企業情報
●会社概要
我が国を代表する民生用電機メーカー。PDP テレビ
やデジタルカメラなどのデジタル家電を主に生産・販
売する「デジタル AVC ネットワーク」が、売上高・営
業利益の約4割(前期・消去前)を占めるけん引役と
なっている。このうち、PDP テレビの売上高は 6,268
億円(前期)を占め、世界シェアは約3割とトップ級
である。中国売上高も 9,417 億円(前期)と、我が国
企業では屈指である。
●ビジネスモデル
選 択と集中を一 層進める。現 在は 2007 年 度~
2009 年度を対象とする中期経営計画「GP3 計画」が
進行中。最終年度である 2009 年度(2010 年3月期)
に売上高 10 兆円、ROE10%を目指している。この計
画のけん引役となるのは海外である。3年間で目標と
なる増収額は北米・欧州で 3,100 億円、アジア・中国
で 3,400 億円、
エマージングで 2,000 億円である。
また、
PDP テレビと液晶テレビを合計した薄型テレビについ
て、37 型以上の分野で世界シェア 25%を目指す。
●今期の会社側業績見通し
2009 年3月期は売上高9兆2千億円と今期比微増
ながら、営業利益は 5,600 億円と同 7.8%増を目指す。
主力の「デジタル AVC ネットワーク」は前期比6%増
の営業増益を予想。その他全セグメントで営業増益を
目指す。為替前提は1ドル 100 円(1円変動の営業利
益への感応度は 25 億円の見込み)
、
1ユーロ 155 円
(同
16 億円)となっている。
●財務状況
【成長性】
過去5年間の年平均増収率は 4.1%と決して高くな
いが、事業再構築で撤退・売却した事業等もあり、致
し方のない所か。営業利益の伸びは同 32.6%、経常
利益は同 44.6%と高い成長を続けている。
【収益性】
売上高営業利益率は 03 年3月期の 1.7%から、08
年3月期の 5.7%まで、毎期向上してきている。注力
する PDP テレビが、開発期から回収期に入っているこ
とや、事業構造改革の成果が表れていること等が要因
か。
【安全性】
08 年 3 月期末の有利子負債は 3,886 億円であるが、
現金及び現金同等物は1兆 2,148 億円に達している。
資産圧縮を伴う構造改革で財務体質は堅固になってお
り、デッド・エクイティ・レシオを含め、安全性指標
の高さは業界トップクラス。
(2/3)
本資料は投資判断の参考としての情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的とするものではありません。銘柄の選択、投資判断の最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。本資料に掲載
された意見は作成日における判断であり、予告なしに変更される場合があります。本資料に掲載されたデータ・意見は、当社が信頼できると判断したデータ等により作成いたしましたが、その正確性、完全性等について
保証するものではありません。著作権、知的所有権等一切の権利はモーニングスター株式会社並びに Morningstar,Inc に帰属しますので、許可なく複製、転載、引用等を行うことを禁じます。
株式レポート 2008.10.8
パナソニック(6752・東証1部)
■財務諸表
損益計算書
04/3
05/3
06/3
07/3
08/3
売上高
7 ,479,744 8,713,636 8,894,329 9,108,170 9,068,928
2,166,679 2,537,590 2,739,032 2,713,752 2,691,688
売上総利益
29.12
30.80
29.79
29.68
売上高総利益率(%) 28.97
販売費および一般管理費 1,971,187 2,229,096 2,324,759 2,254,211 2,172,207
195,492 308,494 414,273 459,541 519,481
営業利益
経常利益
170,822 246,913 371,312 439,144 434,993
売上高経常利益率(%) 2.28
2.83
4.17
4.82
4.80
当期純利益
42,145 58,481 154,410 217,185 281,877
キャッシュフロー計算書
04/3
05/3
06/3
07/3
08/3
税引き前当期純利益 63,305 115,286 225,158 217,185 281,877
減価償却費
278,177 325,465 309,399 317,685 320,534
運転資本の増減 85,458 71,336 117,796 - 11,144 - 135,617
その他営業活動による
62,192 - 47,525 - 76,935
8,831
- 736
キャッシュフロー
営業活動による
489,132 464,562 575,418 532,557 466,058
キャッシュフロー合計
有形固定資産に対する投資 -
275,544- 352,203 - 356,751 - 411,309 - 418,730
のれんおよびその他の
0
0
0
0
0
無形資産に対する投資
その他投資活動による
190,099 173,907 763,842 - 156,499 357,359
キャッシュフロー
投資活動による
- 85,445- 178,296 407,091- 567,808 - 61,371
キャッシュフロー合計
フリーキャッシュフロー 403,687 286,266 982,509 - 35,251 404,687
貸借対照表
04/3
05/3
3 ,774,977 4,030,532
流動資産
1,445,061 1,314,537
現金・預金
1,067,667 1,251,738
売上債権
2,684
11,978
有価証券
777,540 893,425
棚卸し資産
その他の流動資産 482,025 558,854
3 ,663,035 4,026,349
固定資産
1,209,502 1,658,080
有形固定資産
0
0
のれんおよび無形固定資産 2 ,453,533 2,368,269
投資その他資産
0
0
投資有価証券
0
0
長期貸付金(含む関連会社)
2,453,533 2,368,269
その他の資産
0
0
繰り延べ資産
7 ,438,012 8,056,881
資産合計
2 ,569,786 2,828,891
流動負債
短期有利子負債 290,208 385,474
その他流動負債 2,279,578 2,443,417
1 ,288,535 1,187,797
固定負債
長期有利子負債 460,639 477,143
その他固定負債 827,896 710,654
3 ,858,321 4,016,688
負債合計
3 ,451,576 3,544,252
純資産合計
7 ,438,012 8,056,881
負債・純資産合計
06/3
07/3
08/3
4,406,553
1,678,397
1,146,815
56,753
915,262
609,326
3,558,087
1,632,339
0
1,925,748
0
0
1,925,748
0
7,964,640
2,885,068
339,845
2,545,223
790,360
264,070
526,290
3,675,428
3,787,621
7,964,640
4,198,849
1,462,097
1,141,010
93,179
949,399
553,164
3,698,109
1,642,293
0
2,055,816
0
0
2,055,816
0
7,896,958
2,741,867
223,190
2,518,677
687,196
226,780
460,416
3,429,063
3,916,741
7,896,958
3,799,194
1,284,924
1,085,183
47,414
864,264
517,409
3,644,420
1,757,373
0
1,887,047
0
0
1,887,047
0
7,443,614
2,560,959
156,260
2,404,699
625,706
232,346
393,360
3,186,665
3,741,329
7,443,614
(単位:百万円)
■リスク要因等
●バリュエーション評価の前提
●リスク要因
第1四半期こそ好調なスタートを切ったものの、世
界的な景気後退懸念や円高を背景に、第2四半期以降
は業績下振れリスクが残る。しかし、来期以降は安定
的に利益成長し、08 年3月期なみの利益率も維持す
ると予想した。FCF 成長率の前提は 0.5%、WACC は
6.63%。
経営資源を傾けた PDP テレビの市場が縮小するこ
とが最大のリスク要因か。その場合、尼崎におけるこ
れまでの莫大な設備投資が重荷になる。そうした中、
当社は日立(6501)から液晶パネル製造の「IPS アル
ファ」を買収。
「分散投資」に転じ始めた。
中国市場でのプレゼンスが強い分、同国経済の減速
もリスク要因。現在、中国市場では株価の大きな下落
が続いており、消費減速につながらないかどうかが懸
念される。
(3/3)
本資料は投資判断の参考としての情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的とするものではありません。銘柄の選択、投資判断の最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。本資料に掲載
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株式レポート 読み方ガイド
■投資判断
当社の投資判断は、原則として当社のアナリストがフリーキャッ
シュフローに基づいて算出した予想フェアバリュー(適正株価)
と市場価格との比較によって決定されます。市場価格がフェアバ
リューと比べて割安と判断されれば、
「5つ星」または「4つ星」
となり、
その逆の場合には「1つ星」または「2つ星」となります。
リスク等
レーティング
低い
株価の評価にあたっては、キャッシュフローの評価には織り込
みにくい、事業への参入障壁、事業リスクなど当社のアナリスト
が総合的に判断して、当該企業の属する業界において比較的競争
力が「高い」
、その逆の場合には「低い」として評価しています。
具体的には以下のとおりです。
平均
高い
★★★★★
10%超割安
15%超割安
20%超割安
★★★★
5%超から 10%以内割安
5%超から 15%以内割安
5%超から 20%以内割安
★★★
-5~5%以内
-5~5%以内
-5~5%以内
★★
5%超から 10%以内割高
5%超から 15%以内割高
5%超から 20%以内割高
★
10%超割高
15%超割高
20%超割高
■事業への参入障壁および株価リスクについて
■主要財務指標について
事業への参入障壁やリスクについては、キャッシュフローの評
価には織り込み難い面があることも否めません。そこで、当社の
アナリストが当該企業の属する業界での市場シェア、競争力、事
業環境などを総合的に考慮して、事業への参入障壁を「高い」
、
「平
均」
、
「低い」の3段階で評価しております。事業リスクにつきま
しても、3段階で評価しております。
主要財務指標につきましては、以下の計算式に基づいて計算し
ております。
■DCF法について
当社のフェアバリューの算出にあたっては、DCF 法(ディスカ
ウントキャッシュフロー法)を用いております。その他のフェア
バリューの算出方法としては、DDM(配当割引モデル)や超過利益
モデルなどがあります。また、
代表的な株価指標としては、
PER(株
価収益率)
、PBR(株価純資産倍率)
、PCFR(株価キャッシュフロー
倍率)
、EV/EBITDA 倍率などがあります。したがって、DCF 法はあ
くまでもフェアバリューを導くための方法の一つにすぎません。
米国モーニングスター社では、フリーキャッシュフローを基に
独自の株価モデルに基づくフェアバリューを算出しておりますが、
米国モーニングスター社と当社のフェアバリューの算出方法は同
一のものではありません。したがいまして、仮に米国モーニング
スター社と当社が同一企業の評価を行った場合であっても、投資
判断やフェアバリューが異なる可能性があります。
①ROA
=事業利益(営業利益+受取利息・受取配当金)÷資産合計(期
首・期末平均値)
②ROE
=当期純利益÷自己資本(期首・期末平均値)
自己資本=純資産-新株予約権-少数株主持分
③EV / EBITDA
EV
=時価総額+有利子負債- ( 現金・預金+有価証券 )
+少数株主持分
EBITDA
=当期利益+少数株主損益+支払利息・割引料
+法人税・住民税及び事業税
+法人税等調整額+減価償却実施額
④PCFR(株価営業キャッシュフロー倍率)
=株価÷1株当たり営業キャッシュフロー