OPEC減産合意に対する見方とMLP市場の見通し

2016年10月6日
Goldm an Sachs Asset M anagem ent
MLP市場見通し
OPEC減産合意に対する見方とMLP市場の見通し
情報提供資料
概要
 2016年9月28日のOPEC減産合意は、短期的に原油価格の下支え要因になるも、中長期的な実効性は
不透明
 OPEC減産有無にかかわらず、足元の世界の原油市場は供給過剰の解消が着実に進展。原油価格は米
シェールの損益分岐原油価格に収斂する形で、2017年以降に1バレル50ドル台前半で安定化すると予想
 MLPのバリュエーションは依然として魅力的。資金調達環境が改善したことで、今後M&Aや業界再編が活
発化する見込み
OPEC(石油輸出国機構)の減産合意と原油市場の見通し
OPEC 8年ぶりの減産で合意
2016年9月28日、アルジェリアの首都アルジェ
で開催されたOPEC臨時総会において、加盟国
の原油生産量を日量3,250-3,300万バレルに削
減することで合意したと発表されました(2016年
8月時点で3,369万バレル)。会合直前まで「増産
凍結」すら合意は困難とみられていたところ、結
果的に「減産」まで踏み切ったことで、金融市場
にはポジティブ・サプライズとなり、同日の原油
価格は前日比+5.3%と急反発しました(WTIス
ポット)。
OPEC減産合意に対する当社の見方
2016年初来 MLP市場と原油価格の推移
(米ドル/バレル)
1,400
60
MLP市場(左軸)
1,300
原油価格(右軸)
50
1,200
1,100
40
1,000
900
30
800
今回のOPEC減産合意が原油相場に与える 700
20
2015/12
2016/3
2016/6
2016/9
影響について、短期的には、原油価格の下支え
要因になるとみています。しかし、中長期的な実 出所:ブルームバーグ、期間:2015年12月31日~2016年9月30日
MLP:アレリアンMLP指数(配当込み)、原油価格:WTIスポット(共に米ドルベース)
効性は、以下の理由から不透明と考えています。
原油価格およびOPEC加盟国原油生産量の推移
1)イラン、リビア及びナイジェリアは減産免除とさ
れる可能性が高く、その他加盟各国の減産規模 (米ドル)
など詳細の決定は11月30日開催のOPEC総会 120
原油価格(左軸)
に先送りされ、減産そのものの実現性が依然と
して不透明であること。
100
2)仮に減産が実現したとしても、中長期的には
米国のシェア拡大に帰結する可能性が高く、減 80
産による効果の持続可能性に疑問が残ること。
世界の原油需給見通し
60
2016/9
2014/11
OPEC臨時総会
OPEC総会 生産合意レンジ
(万バレル/日)
3,400
3,300
3,250
3,200
OPEC加盟国
原油生産量
(右軸)
3,100
当社では、OPECによる減産の実現可否にか
かわらず、足元の世界の原油市場は供給過剰 40
3,000
の解消を着実に達成しつつあるとみています。
2014年末以降の原油価格急落は、世界の原油
2,900
開発プロジェクトを凍結させ、米国をはじめとす 20
2012/12
2013/12
2014/12
2015/12
2016/12
る非OPEC諸国では減産の動きが広がってきま
出所:ブルームバーグ 期間:2012年12月~2016年9月(OPEC原油生産量は2016年
した。
8月まで) 原油価格:WTIスポット
本資料は、情報提供を目的としてゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」といいます。)が作成した資料であり、特定の金融
商品の推奨(有価証券の取得の勧誘)を目的とするものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した情報等に基づいて作成されています
が、当社がその正確性・完全性を保証するものではありません。上記は経済や市場等の過去のデータおよび一時点における予測値であり、将来の動
向を示唆あるいは保証するものではありません。経済、市場等に関する予測は資料作成時点のものであり、情報提供を目的とするものです。予測値
の達成を保証するものではありません。本資料に記載された見解は情報提供を目的とするものであり、いかなる投資助言を提供するものではなく、ま
た個別銘柄の購入・売却・保有等を推奨するものでもありません。記載された見解は資料作成時点のものであり、将来予告なしに変更する場合があり
ます。本資料の一部または全部を、当社の書面による事前承諾なく(I)複写、写真複写、あるいはその他いかなる手段において複製すること、あるいは
(Ⅱ)再配布することを禁じます。 © 2016 Goldman Sachs. All rights reserved. <68106-OTU-379128>
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MLP市場見通し
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OPEC減産合意に対する見方とMLP市場の見通し
加えて、2016年にはカナダの大規模な山火事に始
まり、ナイジェリアの反政府組織による石油施設攻
撃やリビアの内紛による港湾施設封鎖など、原油
供給が一時的に停止する事象が頻発し、足元の原
油需給は急速にタイト化に向かったとみられます。
もっとも、それら一時的な供給停止はいずれ再開
される性質のものです。しかし、中長期的には、産
油国による増産投資が大幅に削減されたため、既
存油井では経年による生産減(通常年率4-5%程
度)が続く一方、世界経済成長に伴う需要増(通常
年率1%強)が見込まれるなか、原油市場はむしろ
供給不足に陥る可能性すらあると考えています。
原油相場を事実上動かす米国シェール
世界の原油需給の推移(予想)
(百万バレル/日)
2.5
予想
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
-0.5
当社では、OPECによる減産が実現しないとの前
-1.0
提に立っても、世界の原油需給のタイト化を背景に、
1Q14
1Q15
1Q16E
1Q17E (期/年)
原油価格は徐々に下値を切り上げる形で安定化す
出所:国際エネルギー機関、ゴールドマン・サックス・グローバル投資調査
るとの見方を維持します。具体的には、2017年の
部、GSAM 期間:2014年第1四半期~2017年第4四半期(2016年第1四
平均原油価格を52.5ドル、2018年以降は同55ドル
半期以降は予想) 2016年5月15日時点予想
と予想しています(WTIスポット)。
米国シェールは、投資から生産へのリードタイムが在来型原油と比べて著しく短いことなどから、原油価格が
回復する局面ではいち早く生産を再開させることが可能です。技術革新等により生産性を大きく向上させた米
国シェール企業の足元の平均的な損益分岐原油価格は1バレル50-60ドル程度とみられることから、原油価格
が1バレル55ドル以上に上昇すると過半のシェール油井が再稼働すると予想され、それが原油価格の事実上
の上値になり得るとの見方です。米国シェールは、世界の原油相場を事実上主導する生産主体と言えます。
MLPのファンダメンタルズ見通し
キャッシュフローは高水準の成長続く
MLP キャッシュフロー(調整後EBITDA)の推移(予想)
探鉱・生産等を営む川上セクターの設備投資削減
により、当面はインフラ運営を行うMLPの設備投資も (億ドル)
減少傾向が続く見通しです。2015年には川中セク 900
予想
ター全体で460億ドルもの設備投資を行いましたが、
2018年には300億ドル未満まで縮小するとみられて
800
います。その一方、過去に投資したプロジェクトの稼
働開始等に伴い、キャッシュフローの拡大基調は持
続すると見られています。2015-18年のEBITDAは年 700
率+14.5%で成長する見込みです。
財務基盤の強化で中長期の配当成長力も拡大
600
足元では保守的な運営をするMLP経営陣が多く、
増大するキャッシュフローは財務基盤の強化が優先 500
され、配当成長は一時的に減速する見込みです。
2015
2016
2017
2018 (年)
2016年の配当成長は+3-5%程度に止まるとみられ 出所:ブルームバーグ、GSAM 期間:2015年~2018年(2016年以降はブルー
ますが、2017-18年以降には長期的な平均配当成長 ムバーグ予想(2016年10月4日時点))
率である+7-8%程度に回帰する可能性が高いと考え GSAMの定義するMLPユニバース(MLP関連証券含む)のうち、時系列データ
が取得可能な67銘柄の調整後EBITDA合計値
ています。
本資料は、情報提供を目的としてゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」といいます。)が作成した資料であり、特定の金融
商品の推奨(有価証券の取得の勧誘)を目的とするものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した情報等に基づいて作成されています
が、当社がその正確性・完全性を保証するものではありません。上記は経済や市場等の過去のデータおよび一時点における予測値であり、将来の動
向を示唆あるいは保証するものではありません。経済、市場等に関する予測は資料作成時点のものであり、情報提供を目的とするものです。予測値
の達成を保証するものではありません。本資料に記載された見解は情報提供を目的とするものであり、いかなる投資助言を提供するものではなく、ま
た個別銘柄の購入・売却・保有等を推奨するものでもありません。記載された見解は資料作成時点のものであり、将来予告なしに変更する場合があり
ます。本資料の一部または全部を、当社の書面による事前承諾なく(I)複写、写真複写、あるいはその他いかなる手段において複製すること、あるいは
(Ⅱ)再配布することを禁じます。 © 2016 Goldman Sachs. All rights reserved. <68106-OTU-379128>
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2016年10月6日
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MLP市場の見通し
依然として魅力的なバリュエーション
MLP配当利回りと10年国債利回りのスプレッド推移
MLPが堅調なファンダメンタルズを維持する 12%
なか、足元のバリュエーションは依然として極
めて魅力的です。MLPの配当利回りは7%台 10%
で高止まりしており、低水準で推移する米国
10年債利回りとのスプレッド(利回り格差)は、 8%
金融危機以来の水準で高止まりしています。
資金調達環境が回復
10年国債利回り
MLP配当利回り
6%
巨額の設備投資を必要とし、キャッシュフロー
スプレッド 長期平均
の多くを投資家に還元するビジネスモデルを有 4%
するMLPにとって、健全な資金調達環境は、事
業運営に必須のものです。MLP市場のセンチ 2%
メントが最も悪化した2015年末から2016年
スプレッド(MLP-10年国債)
初にかけて、資本市場による資金調達は事 0%
実上殆ど閉ざされた状態に陥りましたが、市
2006/6
2008/6
2010/6
2012/6
2014/6
2016/6
場が落ち着きを取り戻し始めた4-6月期以降、 出所:ブルームバーグ、GSAM 期間:2006年6月~2016年9月
MLP:アレリアンMLP指数
公募増資や起債による資金調達は徐々に増
加しつつあります。
MLP 資本市場からの資金調達額の推移
そして2016年9月14日には、1年3ヶ月ぶり
に新規株式公開(IPO)が成功し、資金調達機 (億ドル)
250
228.3
能がより一層健全化した証左となりました。
活発化するM&Aと業界再編への期待
MLPのバリュエーションが低いなか、資金
調達環境が回復したことは、M&Aが活発化
する条件を満たした形となります。実際に9月
6日、カナダのMLP投資会社エンブリッジが
米国のMLP投資会社スペクトラ・エナジーを
2.9兆円で買収することを発表しました。この
M&Aは、両社の株価が大幅上昇するなど市
場に好感され、今後の更なる業界再編への
期待値を高める形となりました。
200
166.5
150
120.2
100
56.4
50
42.1
52.2
0
1Q15
2Q15
3Q15
4Q15
1Q16
2Q16
出所:ブルームバーグ、バークレイズ、UBS、US Capital Advisors、GSAM
期間:2015年第1四半期~2016年第2四半期
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向を示唆あるいは保証するものではありません。経済、市場等に関する予測は資料作成時点のものであり、情報提供を目的とするものです。予測値
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