3年次前期 専門科目群Ⅰ (必修科目) 2単位 医療薬剤学Ⅰ 12回目 生物薬剤学講座 児玉庸夫 1 医療薬剤学Ⅰは医薬品の有効性と 安全性を基礎から理解するための学問 医薬品 有効性 安全性 2 講義の内容(1) • • • • • • • 第1回 薬物の生体内運命 第2回 薬物の副作用(薬物有害反応)(小テスト) 第3回 薬物の循環系移行と排泄(小テスト) 第4回 薬物の投与方法と経口投与製剤(小テスト) 第5回 薬物の吸収と影響因子(1) (小テスト) 第6回 薬物の吸収と影響因子(2) (小テスト) 第7回 薬物の運命、副作用(薬物有害反応)、及び 吸収のまとめと演習(中間テスト) 3 講義の内容(2) • 第8回 薬物の生体内分布(小テスト) • 第9回 薬物の体液中での存在形態と分布容積 (小テスト) • 第10回 薬物代謝と薬効(小テスト) • 第11回 薬物の排泄(小テスト) • 第12回 薬物の相互作用(小テスト) • 第13回 演習 4 第12回 薬物の相互作用 • 薬物動態に起因する相互作用の代表的な例を 挙げ、回避のための方法を説明できる。また薬 効に起因する相互作用の代表的な例を挙げ、回 避のための方法を説明できる。 • 薬剤師国家試験 医1T-b、副作用(薬物有害反応)発現に影響 する因子 医2A-b、吸収 医2A-c、分布 医2A-d、代謝 医2A-e、排泄 5 薬物の生体内運命 吸収・分布・代謝・排泄(ADME) 腎臓 尿 肝臓 糞便 血液・ リンパ 吸収 薬物投与部位 経口・ 非経口 薬物作用部位 脳、腎臓、肝臓、骨、 皮膚、眼、毛髪など 6 医薬品と医薬品の飲み合わせで 起こること • 有効性(効果)が高まる • 有効性(効果)が低下する • 副作用(薬物有害反応)が強まり安全性 が低下する • 副作用(薬物有害反応)が抑制され安全 性が高まる 7 医薬品と食品の併用による 相互作用 8 ヒト血液中の薬の濃度と用法・用量の関係 血液中の薬の濃度 中毒をおこす濃度 効きすぎる濃度(副作用(薬物有害反応) も出やすい) ちょうどよい濃度(用法・用量) 薬を飲む 薬が効いている時間 効かない濃度 時間 9 薬物の相互作用 • 薬物と薬物との相互作用drug-drug interaction (一般に、薬物相互作用drug interactionと呼ば れる) • 薬物と食品・嗜好品との相互作用 drug-food interaction • 臨床では、薬物と薬物との相互作用(薬物相互 作用)による副作用(薬物有害反応)の発現が 適正使用上の問題となることが多い 10 わ生薬 薬物相互作用(薬物と薬物との相互作用) • 薬動学的相互作用(薬物動態学的相互作用) pharmacokinetic interaction • 薬力学的相互作用 pharmacodynamic interaction • 臨床では、薬動学的相互作用(薬物動態学的 相互作用)による副作用(薬物有害反応)の発 現が適正使用上の問題となることが多い • 臨床では、薬動学的相互作用(薬物動態学的 相互作用)と薬力学的相互作用の複合による 副作用(薬物有害反応)の発現が適正使用上 の問題となることがある 11 わ生薬 薬動学的(薬物動態学的)相互作用 pharmacokinetic interaction • • • • • 吸収(absorption)過程における相互作用 分布(distribution)過程における相互作用 代謝(metabolism)過程における相互作用 排泄(excretion)過程における相互作用 臨床では、代謝(metabolism)過程における相互 作用による副作用(薬物有害反応)の発現が適 正使用上の問題となることが多い 12 わ生薬 薬物相互作用(薬物と薬物との相互作用) の発現頻度 • 臨床では、薬動学的相互作用(薬物動態学的相互作 用)による副作用(薬物有害反応)の発現が適正使用 13 上の問題となることが多い わ生薬 吸収過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用 • • • • • キレート形成や複合体形成による相互作用 消化管内のpH変化による相互作用 消化管の運動性の変化による相互作用 トランスポーターとの相互作用 消化管での代謝過程の修飾による相互作 用 14 わ生薬 キレート形成による吸収過程における薬 動学的(薬物動態学的)相互作用(1) • テトラサイクリン系抗生物質(テトラサイクリン、ドキシサ イクリンなど)は、Fe2+(硫酸鉄など)、 Al3+(制酸剤、ス クラルファートなど) 、Mg2+(制酸剤など) 、Ca2+とキレー トを形成し、不溶性となるか、あるいは水溶性のキレー トであっても消化管粘膜透過性が低下する。そのため、 消化管吸収の低下により血漿中濃度が低下し薬効が 低下する→薬剤の服用間隔を十分にとる必要がある • テトラサイクリン系抗生物質(テトラサイクリン、ドキシサ イクリンなど)は、食品の牛乳(Ca2+)、ミルク(Ca2+)中 のCa2+とキレートを形成し、消化管吸収が低下する。そ のため血漿中濃度が低下し薬効が低下する→両薬剤 わ生薬 の服用間隔を十分にとる必要がある 薬6-Ⅰ 15 キレート形成による吸収過程における薬 動学的(薬物動態学的)相互作用(2) • ニューキノロン系(ピリドンカルボン酸系)抗菌薬(オフロキサシ ン、エノキサシン、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン)は、 Fe2+、 Al3+(制酸剤、スクラルファートなど) 、Mg2+(制酸剤など)と キレートを形成し、消化管吸収が大きく低下する。そのため、血 漿中濃度が大きく低下し、薬効が低下する→薬剤の服用間隔を 十分にとる必要がある • ノルフロキサシンの吸収は、水酸化アルミニウムゲルを含む制 酸薬と併用すると、キレート形成のために低下する • アルミニウム含有制酸剤により、エノキサシンの作用が減弱す る • ニューキノロン系(ピリドンカルボン酸系)抗菌薬(ロメフロキサシ ン、スパルフロキサシン、フレロキサシン)は、Fe2+、 Al3+(制酸剤、 スクラルファートなど) 、Mg2+(制酸剤など)とキレートを形成する が、消化管吸収への影響は少ない わ生薬 薬6-Ⅰ 16 キレート形成による吸収過程における薬 動学的(薬物動態学的)相互作用(3) • セフェム系抗生物質のセフジニル(セフゾンカプ セル)は、Fe2+、 Fe3+とキレートを形成し、消化管 吸収が大きく低下する。そのため、血漿中濃度 が大きく低下し、薬効が低下する→薬剤の服用 間隔を十分にとる必要がある 17 わ生薬 吸着による吸収過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用 • 高コレステロール血症治療に使用される陰イオン交換 樹脂性薬物(高分子)のコレスチラミン(クエストラン)は、 腸管内で胆汁酸を吸着して胆汁酸の糞便中への排泄 を促進し、外因性コレステロールの吸収を阻害する • コレスチラミン(クエストラン)は、 酸性薬物(ワルファリ ンなど)や脂溶性の高い中性薬物を吸着し、消化管吸 収が大きく低下する。そのため、血漿中濃度が大きく低 下し、薬効が低下する • ワルファリンカリウムは、陰イオン交換樹脂性であるコ レスチラミンとの併用によって、吸収が低下する • コレスチラミンにより、ワルファリンの作用が減弱する わ生薬 薬6-Ⅰ 18 消化管内のpH変化による吸収過程にお ける薬動学的(薬物動態学的)相互作用 • テトラサイクリン(アクロマイシンV)は、炭酸水 素ナトリウムなどの制酸薬との併用により胃液 のpHが上昇し溶解性が低下する。そのため、 血漿中濃度が低下し、薬効が低下する • 抗真菌薬イトラコナゾール(イトリゾール)は、H2 受容体遮断薬(シメチジン、ファモチジンなど) との併用により胃内pHが上昇し(pH3~5)溶解 性が低下する。そのため、血漿中濃度が低下 わ生薬 し、薬効が低下する 薬6-Ⅰ 19 消化管の運動性の変化による吸収過程における 薬動学的(薬物動態学的)相互作用(1) • 胃内容物排出速度(GER、gastroemptying rate)の上 昇もしくは低下に基づく相互作用である • 解熱鎮痛薬アセトアミノフェン(カロナール)は、胃腸機 能調整薬メトクロプラミド(プリンペラン)との併用によ り胃内容物排出速度(GER)が上昇し、血漿中濃度が 上昇する • アセトアミノフェンの吸収は、メトクロプラミドとの併用 により促進される • 解熱鎮痛薬アセトアミノフェン(カロナール)は、抗コリ ン薬プロパンテリン(プロ・バンサイン)との併用により 胃内容物排出速度(GER)が低下し、血漿中濃度が低 下する 20 わ生薬 消化管の運動性の変化による吸収過程における 薬動学的(薬物動態学的)相互作用(2) • リボフラビン(ハイボン、フラビタン)は、抗コリン 薬プロパンテリン(プロ・バンサイン)との併用に より胃内容物排出速度(GER)が低下するが、 リボフラビンの吸収部位である小腸上部での 通過時間が遅延するため、輸送系が飽和せず、 吸収率が上昇する 21 わ生薬 トランスポーターとの相互作用による吸収過程に おける薬動学的(薬物動態学的)相互作用(1) • 小腸上皮細胞膜に存在するペプチドトランスポーター (PEPT1)を介した相互作用として、併用された薬物が PEPT1によって輸送される場合、競合的阻害が発現 し、吸収が低下することがある • 小腸上皮細胞刷子縁膜に存在するトランスポーター である異物排出タンパクのP-糖タンパク質(P-gp)を 介した相互作用として、薬物がP-gp によって細胞外 に排出される場合、 P-gpを阻害する薬物との併用に より、吸収が上昇することがある 22 わ生薬 トランスポーターとの相互作用による吸収過程に おける薬動学的(薬物動態学的)相互作用(2) • βラクタム抗生物質(セファドロキシル、セファレキシ ンなど)は、主に小腸上皮細胞膜に存在するペプチド トランスポーター(PEPT1)を介して吸収される。このた め、 セファドロキシルの吸収は、セファレキシンの併 用によるPEPT1への競合により低下する • アンジオテンシン変換酵素阻害薬(カプトプリル、リシ ノプリル)、レニン阻害薬(開発中)、抗悪性腫瘍薬ベ スタチンなどの薬物もペプチドトランスポーター (PEPT1)を介して吸収されると考えられているため、 これらの併用によるPEPT1への競合により、吸収が低 下する可能性がある 23 わ生薬 トランスポーターとの相互作用による吸収過程に おける薬動学的(薬物動態学的)相互作用(3) • 抗悪性腫瘍薬エトポシド(ラステット)は、異物 排出タンパクであるP-糖タンパク質(P-gp)の 阻害薬である抗不整脈薬キニジン(硫酸キニジ ン)との併用により、消化管吸収が増加する 24 わ生薬 消化管での代謝の修飾による吸収過程におけ る薬動学的(薬物動態学的)相互作用 • 抗生物質の併用により、腸管内での薬物代謝 が抑制されると、全身循環への移行量が増加 することがある • 強心薬ジゴキシン(ジゴシン)は、経口投与され たうちの約40%が腸内細菌により不活性な還元 代謝物に変化するが、マクロライド系抗生物質 エリスロマイシンやテトラサイクリン系抗生物質 などを併用すると還元体への変化が抑制され、 バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)が上 昇する 25 わ生薬 血漿タンパク結合の競合的阻害による分布過程 における薬動学的(薬物動態学的)相互作用 • 血漿タンパク結合の競合的阻害による相互作用により 血漿中非結合形薬物濃度が上昇し、薬物の体内分布 が変化し、薬物動態及び有効性・安全性が影響を受け る場合があるが、一般的には、血漿タンパク結合の競 合的阻害による相互作用のみで重篤な副作用(薬物 有害反応)が発現する可能性は低い • 高クリアランス薬物(肝抽出率の高い薬物>0.7)と低ク リアランス薬物(肝抽出率の低い薬物<0.3)で、有効 性・安全性に及ぼす影響は異なる わ生薬 薬6-Ⅰ 26 臓器・組織タンパク結合の競合的阻害による分布 過程における薬動学的(薬物動態学的)相互作用 • 強心薬ジゴキシン(ジゴシン)の血漿中総濃度 はキニジンの併用で上昇する。原因の一つに、 ジゴキシンの組織タンパク質への結合をキニジ ンが阻害するため、組織中の非結合形ジゴキシ ン濃度が上昇し、それに伴い血漿中総濃度が 上昇することが指摘されている • ワルファリンカリウムとインドメタシンを併用する と、血漿タンパク非結合形ワルファリン濃度が増 大し、効果が増強する 27 わ生薬 代謝過程における薬動学的(薬物動態学的) 相互作用(1) • 代謝過程における薬動学的(薬物動態学的)相互作用 は、薬物相互作用(薬物と薬物との相互作用)の中で 最も頻度が高い • 代謝過程における薬動学的(薬物動態学的)相互作用 は、2種類に分類される→シトクロムP450(CYP)が関 与する場合が多い 代謝阻害(代謝酵素阻害:enzyme inhibition) 代謝促進(代謝酵素誘導:enzyme induction) • 併用薬物による代謝阻害により血漿中薬物濃度が上 昇するため、副作用(薬物有害反応)発現の頻度が増 加する→投与量を減量もしくは休薬する • 併用薬物による代謝促進により血漿中薬物濃度が低 下するため、有効性が低下する 28 わ生薬 代謝過程における薬動学的(薬物動態学的) 相互作用(2) • 1つの薬物が、シトクロムP450に対して誘導作 用と阻害作用を示す場合がある • 2つの薬物を同時に投与したとき、同一のシトク ロムP450分子種で代謝される場合には、薬物 相互作用の原因となることがある 29 シトクロムP450(CYP)阻害による代謝過程における 薬動学的(薬物動態学的)相互作用 • 同じ分子種による競合的阻害→CYPによる代謝 は基質特異性が低いため頻度が高い • CYP3A4は臨床使用される薬物の多くの代謝に 関与しているため、代謝阻害により副作用(薬 物有害反応)が発現しやすい わ生薬 薬6-Ⅰ 30 CYP3A4阻害による代謝過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用(1) • イミダゾール骨格をもつシメチジン(タガメット錠)、ケト コナゾール(日本で内用薬は市販されていない)などや、 トリアゾール骨格をもつイトラコナゾール(イトリゾール カプセル)などがP450のヘム鉄に可逆的に結合するこ とによる阻害→CYP3A4に対する阻害作用が強い • シメチジンは、シトクロムP450(CYP)のヘム鉄と複合体 を形成し、シトクロムP450(CYP)の代謝活性を阻害す る • マクロライド系抗生物質のエリスロマイシン(エリスロシ ン錠)などはCYP3A4により代謝され、その代謝物が CYP3Aの還元型ヘム鉄とニトロソアルカン複合体を形 成することによりCYP3A4を阻害する わ生薬 薬6-Ⅰ 31 CYP3A4阻害による代謝過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用(2) • ベンゾジアゼピン系睡眠薬トリアゾラム(ハルシ オン錠)とケトコナゾール(日本で内用薬は市販 されていない)を併用すると、ケトコナゾールによ るCYP3A4阻害作用により、血漿中トリアゾラム 濃度が上昇する • クロトリマゾールは、シトクロムP450(CYP3A4 の代謝活性を阻害するため、タクロリムスの代 謝が抑制され血中濃度が上昇する 32 わ生薬 CYP3A4阻害による代謝過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用(3) • 胃腸機能調整薬シサプリド(アセナリン錠、製造中止) とイトラコナゾール(イトリゾールカプセル)を併用すると、 イトラコナゾール(イトリゾールカプセル)によるCYP3A4 阻害作用により血漿中シサプリド濃度が上昇し、心血 管系の副作用(薬物有害反応)が発現するため、併用 禁忌である • 抗アレルギー薬テルフェナジン(トリルダン錠、製造中 止)とイトラコナゾール(イトリゾールカプセル)を併用す ると、イトラコナゾール(イトリゾールカプセル)による CYP3A4阻害作用により血漿中テルフェナジン濃度が 上昇し、心血管系の副作用(薬物有害反応)が発現す 33 るため、併用禁忌である わ生薬 CYP3A4阻害による代謝過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用(4) • 抗アレルギー薬アステミゾール(ヒスマナール錠)とイト ラコナゾール(イトリゾールカプセル)を併用すると、イト ラコナゾール(イトリゾールカプセル)によるCYP3A4阻 害作用により血漿中アステミゾール濃度が上昇し、心 血管系の副作用(薬物有害反応)が発現するため、併 用禁忌である • 統合失調症薬ピモジド(オーラップ錠)とイトラコナゾー ル(イトリゾールカプセル)を併用すると、イトラコナゾー ル(イトリゾールカプセル)によるCYP3A4阻害作用によ り血漿中ピモジド濃度が上昇し、心血管系の副作用 (薬物有害反応)が発現するため、併用禁忌である 34 わ生薬 CYP3A4阻害による代謝過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用(5) • 免疫抑制剤シクロスポリン(サンディミュン)とイ トラコナゾール(イトリゾールカプセル)を併用す ると、イトラコナゾールによるCYP3A4阻害作用 により、血漿中シクロスポリン濃度が上昇する • イトラコナゾールにより、シクロスポリンの作用 が増大する わ生薬 薬6-Ⅰ 35 CYP3A4阻害による代謝過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用(6) • ベンゾジアゼピン系睡眠薬トリアゾラム(ハルシオン錠) とフルコナゾール(ジフルカンカプセル・注)を併用する と、フルコナゾール(ジフルカンカプセル・注)によるCYP 3A4阻害作用により血漿中トリアゾラム濃度が上昇し、 睡眠作用増強の副作用(薬物有害反応)が発現するた め、併用禁忌である • 胃腸機能調整薬シサプリド(アセナリン錠、製造中止) とフルコナゾール(ジフルカンカプセル・注)を併用する と、フルコナゾール(ジフルカンカプセル・注)によるCYP 3A4阻害作用により血漿中シサプリド濃度が上昇し、 心血管系の副作用(薬物有害反応)が発現するため、 36 併用禁忌である わ生薬 CYP3A4阻害による代謝過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用(7) • マクロライド系抗生物質のエリスロマイシン(エリ スロシン錠)と、抗アレルギー薬テルフェナジン (トリルダン錠、製造中止)、抗アレルギー薬アス テミゾール(ヒスマナール錠)、胃腸機能調整薬 シサプリド(アセナリン錠、製造中止)、もしくは 統合失調症薬ピモジド(オーラップ錠)を併用す ると、エリスロマイシンによるCYP3A4阻害作用 により併用薬の血漿中濃度が上昇し、副作用 (薬物有害反応)が発現するため、併用禁忌で わ生薬 ある 薬6-Ⅰ 37 CYP3A4阻害による代謝過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用(8) • マクロライド系抗生物質のエリスロマイシン(エリスロシ ン錠)と、免疫抑制剤シクロスポリン(サンディミュン)、 抗てんかん薬カルバマゼピン(テグレトール錠)、ベンゾ ジアゼピン系睡眠薬トリアゾラム(ハルシオン錠)、もし くは全身麻酔薬ミダゾラム(ドルミカム注)を併用すると、 エリスロマイシンによるCYP3A4阻害作用により併用薬 の血漿中濃度が上昇し、副作用(薬物有害反応)が発 現する可能性がある • エリスロマイシンは、シトクロムP450(CYP3A4)の代謝 活性を阻害するため、カルバマゼピンの血中濃度が上 昇する わ生薬 38 薬6-Ⅰ CYP1A2やCYP3A4阻害による代謝過程における 薬動学的(薬物動態学的)相互作用 • 気管支喘息治療薬テオフィリン(テオドール錠) とニューキノロン系抗菌薬を併用すると、ニュー キノロン系抗菌薬によるCYP1A2阻害作用によ り血漿中テオフィリン濃度が上昇し、副作用(薬 物有害反応)が発現する可能性がある • テオフィリンの血中濃度は、シメチジンによる CYP3A4阻害作用により上昇する • SSRIフルボキサミン(デプロメール錠)は、 CYP1A2やCYP3A4に対する阻害作用により併 用薬物の血漿中濃度を上昇させる 39 薬6-Ⅰ CYP2C9阻害による代謝過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用 • サルファ剤と、経口糖尿病薬トルブタミド(ヘキス トラスチノン錠)、抗てんかん薬フェニトイン(アレ ビアチン細粒)、もしくは抗凝血薬ワルファリン (ワーファリン錠)を併用すると、サルファ剤によ るCYP2C9阻害作用により併用薬物の血漿中 濃度が上昇し、副作用(薬物有害反応)が発現 する可能性がある 40 薬6-Ⅰ CYP2D6阻害による代謝過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用 • β遮断薬と、H2受容体遮断薬シメチジン(タガ メット錠)もしくは抗不整脈薬キニジン(硫酸キニ ジン錠)を併用すると、シメチジンもしくはキニジ ンによるCYP2D6阻害作用により血漿中β遮断 薬濃度が上昇し、副作用(薬物有害反応)が発 現する可能性がある • SSRIパロキセチン(パキシル錠)は、CYP2D6阻 害作用により併用薬物の血漿中濃度を上昇さ せる 41 薬6-Ⅰ キサンチンオキシダーゼ阻害による代謝過程にお ける薬動学的(薬物動態学的)相互作用 • 代謝拮抗薬6-メルカプトプリン(ロイケリン散)と、高尿 酸血症薬アロプリノール(ザイロリック錠)を併用すると、 アロプリノールによるキサンチンオキシダーゼ阻害作 用により血漿中6-メルカプトプリン濃度が上昇し、骨髄 抑制の副作用(薬物有害反応)が発現する可能性があ る→ 6-メルカプトプリンの用量を1/3~1/4に減量する • 免疫抑制剤アザチオプリン(イムラン錠)は、生体内で 6-メルカプトプリンに代謝されるため、高尿酸血症薬ア ロプリノール(ザイロリック錠)を併用すると、アロプリ ノールによるキサンチンオキシダーゼ阻害作用により 血漿中6-メルカプトプリン濃度が上昇し、骨髄抑制の 副作用(薬物有害反応)が発現する可能性がある 42 わ生薬 ジヒドロチミンデヒドロゲナーゼ阻害による代謝過 程における薬動学的(薬物動態学的)相互作用 • 帯状疱疹治療薬ソリブジン(ユースビル錠、発売 中止)と抗悪性腫瘍薬フルオロウラシル(5-FU、 5-FU錠)を併用すると、ソリブジン代謝物(ブロ モビニルウラシル)によるジヒドロチミンデヒドロ ゲナーゼ阻害作用により血漿中フルオロウラシ ル(5-FU)濃度が上昇し、重篤な骨髄抑制(白血 球減少、血小板減少)の副作用(薬物有害反 応)が発現する可能性がある 43 わ生薬 シトクロムP450(CYP)誘導による代謝過程におけ る薬動学的(薬物動態学的)相互作用 • CYPは、薬物投与、喫煙、アルコール摂取、環 境物質などにより誘導され酵素量が増大するた め、薬物代謝が促進される • CYP3A4、CYP2C9、CYP2C19などの分子種が 誘導を受けやすい • 喫煙により、CYP1A1、CYP1A2の分子種が誘導 を受ける 44 わ生薬 CYP3A4誘導による代謝過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用(1) • CYP3A4で代謝される薬物の種類は多いため、CYP3 A4を誘導する薬物の併用が臨床上の問題となる • 抗てんかん薬のフェニトイン(アレビアチン細粒)、フェノ バルビタール(フェノバール散)、カルバマゼピン(テグ レトール錠)、及びプリミドン(プリミドン細粒)、抗結核 薬リファンピシン(リファジンカプセル)、 糖質コルチコイ ドのデキサメタゾン(デカドロン錠)などは、CYP3A4を誘 導する • カルバマゼピンは連用によって代謝酵素の誘導を起こ し、同じ投与量をくり返し投与した場合、血中濃度は低 下する→(CYP3A4を誘導する) 45 わ生薬 CYP3A4誘導による代謝過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用(2) • ベンゾジアゼピン系睡眠薬トリアゾラム(ハルシ オン錠)と抗結核薬リファンピシン(リファジンカ プセル)を併用すると、リファンピシンによるCYP 3A4誘導作用(肝臓での代謝、腸管での初回通 過効果)により血漿中トリアゾラム濃度は低下し、 有効性が低下する可能性がある • リファンピシンにより、トリアゾラムの作用が減弱 する 46 わ生薬 CYP2C9誘導による代謝過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用(1) • 抗凝血薬ワルファリン(ワーファリン錠)と抗結核薬リ ファンピシン(リファジンカプセル)を併用すると、リファ ンピシンによるCYP2C9誘導作用により血漿中ワル ファリン濃度は低下し、有効性が低下する可能性があ る • リファンピシンにより、ワルファリンの代謝酵素が誘導さ れ効果が減弱する→(CYP2C9の誘導) • 経口糖尿病薬トルブタミド(ヘキストラスチノン錠)と抗 結核薬リファンピシン(リファジンカプセル)を併用する と、リファンピシンによるCYP2C9誘導作用により血漿 中トルブタミド濃度は低下し、有効性が低下する可能 性がある 47 わ生薬 CYP2C9誘導による代謝過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用(2) • ワルファリンの消失半減期は、フェノバルビター ルの併用により短縮する→(CYP2C9による代 謝の亢進) 48 わ生薬 他の酵素による代謝過程における薬動学的(薬 物動態学的)相互作用 • パーキンソン病治療薬レボドパ(ドパゾール錠、 メネシット錠)とピリドキシン(アデロキシン散)を 併用すると、ピリドキサールリン酸を補酵素とす る芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素による代謝促進 のため血漿中レボドパ濃度は低下し(活性代謝 物ドパミンの血漿中濃度は上昇するが、ドパミン は血液脳関門を通過しにくい)、有効性が低下 する可能性がある 49 わ生薬 排泄過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用 • 薬物の腎排泄過程では、尿細管分泌や尿細管 再吸収に輸送体(トランスポーター)が関与する ため、薬動学的(薬物動態学的)相互作用には、 重篤な影響を及ぼすものがある • 薬物の胆汁中排泄過程での薬動学的(薬物動 態学的)相互作用は、明確になっていない 50 わ生薬 糸球体ろ過を介した排泄過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用 • 正常な糸球体では血漿中非結合形薬物がろ過 されるため、糸球体ろ過能が変化しない限り相 互作用は発現しないと考えられる 51 わ生薬 尿細管分泌を介した排泄過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用 • 尿細管分泌を担う各輸送系(有機アニオン輸送 系、有機カチオン輸送系、P-糖タンパク質)を併 用薬が阻害することにより薬物の尿細管分泌が 抑制され、血漿中濃度が上昇し、副作用(薬物 有害反応)が発現する可能性がある 52 わ生薬 有機アニオン輸送系の尿細管分泌を介した排泄過 程における薬動学的(薬物動態学的)相互作用(1) • β-ラクタム系抗生物質(ペニシリンやセファロ スポリン)や葉酸代謝拮抗薬メトトレキサート(メ ソトレキセート錠、リウマトレックスカプセル)と、 高尿酸血症・痛風治療薬プロベネシド(ベネシッ ド錠)を併用すると、プロベネシドにより有機アニ オン輸送系による分泌が阻害され、併用薬物の 血漿中濃度の持続化や作用増強もしくは副作 用(薬物有害反応、メソトレキサートによる汎血 球減少症)が発現する→投与量減量もしくは休 薬する 53 わ生薬 有機アニオン輸送系の尿細管分泌を介した排泄過 程における薬動学的(薬物動態学的)相互作用(2) • 抗エイズ薬ジドブジン(レトロビルカプセル)と高 尿酸血症・痛風治療薬プロベネシド(ベネシッド 錠)を併用すると、プロベネシドにより有機アニ オン輸送系による分泌が阻害され、ジドブジン の血漿中消失半減期が延長する 54 わ生薬 有機アニオン輸送系の尿細管分泌を介した排泄過 程における薬動学的(薬物動態学的)相互作用(3) • 葉酸代謝拮抗薬メトトレキサート(メソトレキセー ト錠、リウマトレックスカプセル)と非ステロイド系 抗炎症薬(NSAID)を併用すると、NSAIDにより 有機アニオン輸送系による分泌が阻害され、血 漿中メトトレキサート濃度が上昇する 55 わ生薬 有機カチオン輸送系の尿細管分泌を介した排泄過 程における薬動学的(薬物動態学的)相互作用 • 抗不整脈薬プロカインアミド(アミサリン錠)とH2 受容体遮断薬のシメチジン(タガメット錠)やラニ チジン(ザンタック錠)などを併用すると、 H2受 容体遮断薬により有機カチオン輸送系による分 泌が阻害され、血漿中プロカインアミド濃度及び 活性代謝物である血漿中N-アセチルプロカイン アミド濃度が上昇する 56 わ生薬 P-糖タンパク質による尿細管分泌を介した排泄過 程における薬動学的(薬物動態学的)相互作用 • 強心薬ジゴキシン(ジゴシン錠)と、抗不整脈薬キニジ ン(硫酸キニジン錠)もしくはCa拮抗薬ベラパミル(ワソ ラン錠)を併用すると、キニジンもしくはベラパミルによ り腎尿細管上皮細胞刷子縁膜(尿細管管腔側)に存在 するP-糖タンパク質(P-gp)による分泌が阻害され、血 漿中ジゴキシン濃度が上昇する→治療薬物モニタリン グ(TDM)により減量し、ジギタリス中毒を回避する • ジゴキシンの血中濃度が、キニジンとの併用によって 上昇するのは、尿細管のP-糖タンパク質の競合に由 来する • ベラパミルは、P-糖タンパクの基質であるため、ジゴキ シンの尿細管分泌を阻害する わ生薬 薬6-Ⅰ 57 尿細管再吸収を介した排泄過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用(1) • 尿細管再吸収には、pH分配仮説に基づく単純 拡散とトランスポーター(輸送担体)が関与する 場合とがある • pH分配仮説に基づく単純拡散により尿細管再 吸収を受ける薬物は、薬物の脂溶性及びpKaと 尿細管管腔中のpHにより再吸収性が決定され るため、尿のpH変化は薬物の尿細管再吸収に かなりの影響を及ぼす 58 わ生薬 尿細管再吸収を介した排泄過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用(2) • 尿のpHは4.5~7.0(平均6.0)の弱酸性を示す • 弱酸性薬物(サリチル酸など)の場合、炭酸水素ナトリ ウムなどの制酸薬の投与により尿がアルカリ側になる と、尿細管再吸収量が減少して血漿中サリチル酸濃度 が低下する • 弱塩基性薬物(プソイドエフェドリンなど)の場合、尿が アルカリ側になると、尿細管再吸収量が増加して血漿 中プソイドエフェドリン濃度が上昇する わ生薬 薬6-Ⅰ 59 尿細管再吸収を介した排泄過程における薬動学的 (薬物動態学的)相互作用(3) • 抗躁病薬炭酸リチウム(リーマス錠)と、チアジド 系利尿薬(ヒドロクロロチアジドなど)を併用する と、近位尿細管におけるLi+再吸収が増加し、血 漿中リチウム濃度が上昇する • トリクロルメチアジドは、炭酸リチウム併用時、リ チウムの腎再吸収を促進するため、リチウムの 毒性が増強される 60 わ生薬 CYP3A4阻害を介した 薬物と食品・嗜好品との相互作用 • グレープフルーツジュースと、免疫抑制剤シクロスポリン(サン ディミュンカプセル)、ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬のニフェジピン (アダラートカプセル)、フェロジピン(ムノバール錠)、抗アレル ギー薬テルフェナジン(トリルダン錠、製造中止)、抗てんかん薬 カルバマゼピン(テグレトール錠)、もしくはHMG-CoA還元酵素 阻害薬のロバスタチン(米国で発売)、シンバスタチン(リポバス 錠)などを併用すると、グレープフルーツジュースが小腸上皮に 存在するCYP3A4を阻害するため、初回通過効果が減少し薬物 の全身循環への移行量が増加するため、副作用(薬物有害反 応)の発現に注意が必要である • グレープフルーツジュースと共に、ジヒドロピリジン系降圧薬を 服用すると、グレープフルーツジュースにより小腸のCYP3A4活 性が阻害され薬物のバイオアベイラビリティが変化(増大)する が、消失半減期にはほとんど影響しない 61 わ生薬 CYP1A2誘導 を介した 薬物と食品・嗜好品との相互作用 • 喫煙者では、CYP1A2で代謝される気管支喘息 治療薬テオフィリン(テオドール錠)、β遮断薬プ ロプラノロール(インデラル錠)、解熱鎮痛薬フェ ナセチン(フェナセチン末)などの血漿中濃度が 低下し、有効性が低下する可能性がある • 喫煙は、シトクロムP450 の誘導を引き起こし、 プロプラノロールの代謝を亢進することがある • 喫煙は、テオフィリンの体内動態に影響を及ぼ す→(CYP1A2誘導) 62 わ生薬 CYP1A2、CYP3A4誘導 を介した 薬物と食品・嗜好品との相互作用 • セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ 含有健康食品)摂食者では、 CYP3A4で代謝さ れる抗エイズ薬のインジナビル(クリキシバンカ プセル)などや免疫抑制剤シクロスポリン(サン ディミュンカプセル) 、およびCYP1A2やCYP3A4 で代謝される気管支喘息治療薬テオフィリン(テ オドール錠)の血漿中濃度が低下し、有効性が 低下する可能性がある 63 わ生薬 モノアミンオキシダーゼ(MAO)を介した 薬物と食品・嗜好品との相互作用 • チーズ等のチラミン高含有食品と、モノアミンオ キシダーゼ(MAO)阻害薬である抗パーキンソン 病薬(塩酸セレギリン、エフピー錠)や抗結核薬 イソニアジド(イスコチン錠)を併用すると、 チラ ミン代謝酵素であるMAOが阻害されるため、血 圧上昇等の中毒発現に注意が必要である 64 わ生薬 ヒスタミン代謝阻害を介した 薬物と食品・嗜好品との相互作用 • マグロ、ブリ、ハマチ等のヒスチジン高含有魚類 と、抗結核薬イソニアジド(イスコチン錠)を併用 すると、ヒスチジンから変化したヒスタミンの代 謝がイソニアジドにより阻害されるため、ヒスタミ ン中毒等の発現に注意が必要である 65 わ生薬 第12回講義の結論(1) • 薬物と薬物との相互作用drug-drug interaction (一般に、薬物相互作用drug interactionと 呼ばれる) • 薬物と食品・嗜好品との相互作用 drug-food interaction • 臨床では、薬物と薬物との相互作用(薬物相 互作用)による副作用(薬物有害反応)の発 現が適正使用上の問題となることが多い 66 第12回講義の結論(2) • 薬物相互作用には、薬動学的(薬物動態学 的)相互作用と薬力学的相互作用がある • 臨床では、薬動学的(薬物動態学的)相互作 用による副作用(薬物有害反応)の発現が適 正使用上の問題となることが多い • 臨床では、薬動学的(薬物動態学的)相互作 用と薬力学的相互作用の複合による副作用 (薬物有害反応)の発現が適正使用上の問 題となることがある 67 第12回講義の結論(3) • 吸収過程における薬動学的(薬物動態学的) 相互作用には、キレート形成や複合体形成 による相互作用、消化管内のpH変化による 相互作用、消化管の運動性の変化による相 互作用、トランスポーターとの相互作用、消 化管での代謝過程の修飾による相互作用が ある 68 第12回講義の結論(4) • 血漿タンパク結合の競合的阻害による相互 作用により血漿中非結合形薬物濃度が上昇 し、薬物の体内分布が変化し、薬物動態及 び有効性・安全性が影響を受ける場合があ るが、一般的には、血漿タンパク結合の競合 的阻害による相互作用のみで重篤な副作用 (薬物有害反応)が発現する可能性は低い • 高クリアランス薬物(肝抽出率の高い薬物> 0.7)と低クリアランス薬物(肝抽出率の低い 薬物<0.3)で、有効性・安全性に及ぼす影響 は異なる 69 第12回講義の結論(5) • 代謝過程における薬動学的(薬物動態学的) 相互作用は、薬物相互作用(薬物と薬物との 相互作用)の中で最も頻度が高い • 代謝過程における薬動学的(薬物動態学的) 相互作用は、2種類に分類される→シトクロ ムP450(CYP)が関与する場合が多い 代謝阻害(代謝酵素阻害:enzyme inhibition) 代謝促進(代謝酵素誘導:enzyme induction) 70 第12回講義の結論(6) • 排泄過程における薬動学的(薬物動態学的) 相互作用では、薬物の腎排泄過程において 尿細管分泌や尿細管再吸収に輸送体(トラ ンスポーター)が関与するため、薬動学的 (薬物動態学的)相互作用には、重篤な影響 を及ぼすものがある 71 第12回講義の結論(7) • 薬物と食品・嗜好品との相互作用には、シト クロムP450(CYP) 阻害もしくは誘導を介した もの、モノアミンオキシダーゼ(MAO)を介し たものなどがある • グレープフルーツジュース(CYP3A4阻害)、 喫煙(CYP1A2誘導) 、及びセント・ジョーン ズ・ワート(セイヨウオトギリソウ含有健康食 品) (CYP3A4やCYP1A2誘導) を摂取すると、 血漿中薬物濃度が上昇もしくは低下し、副作 用(薬物有害反応)や有効性低下が発現す ることがある 72
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