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関連死の発生機序とその予防

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関連死の予防.Ver9
関連死の発生機序とその予防
中越地震の関連死の特徴
もくじ
はじめに ............................................................. 2
要約 ................................................................ 2
[1]中越地震の関連死の分析............................................ 3
(1)分析結果 ....................................................... 3
関連死(死亡日)の推移 ............................................ 3
関連死の性差 .................................................... 3
関連死の年齢分布 ................................................ 3
関連死の発生場所 ................................................ 4
車中死の経時的推移 .............................................. 5
車中死と年齢 ..................................................... 6
関連死の疾患 .................................................... 7
24 日以降の関連死の特徴 .......................................... 8
避難場所別の死亡率 .............................................. 9
(2)考察 .......................................................... 11
県警が認定/隠れ関連死 ......................................... 11
阪神大震災で車中死が見られなかった理由 ........................... 12
車中避難の理由と社会的意味 ...................................... 12
関連死の起こるメカニズム/アロスタシス負荷 .......................... 13
(3)中越地震の関連死のまとめ........................................ 16
[2]関連死の予防 .................................................... 20
(1)震災後早期の関連死(循環器疾患)の予防......................... 21
(2)呼吸器系関連死の予防 .......................................... 24
(3)虚弱高齢者の保護 .............................................. 25
(4)大災害後の要介護高齢者のサポート................................ 26
(5)車中死への対策 ................................................ 26
神戸協同病院
上田耕蔵
2004.12.16(1)
関連死の予防.Ver9
はじめに
阪神大震災では総死者に対する関連死の割合は 14.3%であったが、中越地震
では 60.0%と関連死が目立った。これは、①M4〜5 以上の強い余震が続きスト
レスが大であった。②直接死が少ない。豪雪地帯のため家屋の柱が太いからと
される。相対的に関連死が目立ったと考えられる。また関連死の中でも車中死
が 37%と多かった。これまで震災で車中死の報告はなく、新たな被害として注
目された。上田は 26 日より NHK ラジオを初めとするマスコミの取材(と情報提
供)を受けた。また 29〜31 まで現地で医療支援に参加したが、一層中越地震の
関連死と車中死に関心を持つに至った。そこで新聞記事や県警の発表資料など
より関連死の分析を行った。また阪神大震災と比較することにより、その機序
や病態をより理論的に把握できるようになった。関連死の解析だけでなく、そ
の予防についても考察する。
要約
中越地震の関連死の特徴であるが、①疾患はほとんど循環器疾患であった。
阪神では発災直後より粉塵と寒冷により呼吸器疾患(肺炎等)で亡くなった人
が目立った。阪神では循環器+呼吸器が同時に強い負荷を受けていた。中越の
ように大気が汚染されず厳寒でないなら、関連死は主に循環器に現れる。②中
越では高齢者に加えて、中年者が亡くなった。この中年層に車中死が多かった。
③車中死は高齢層だけでなく中年層で高率に見られた。発災 2〜3 日目だけでな
く、支援が入りストレスが緩和される 5〜6 日目以降にも発生した。肺塞栓で 3
人亡くなった。車中避難の死亡率は避難所と比較して 18〜45 倍高く、非常に危
険な避難方法である。
車中死をどう捉えるかであるが、高齢社会型震災だけでなく個人社会、ある
いは孤立社会の到来を示唆したのかもしれない。減災の立場からは「高齢社会
型震災+孤立社会型」と表現したほうが実際的だろう。
関連死は震災後の環境悪化などの外的因子よりも、恐怖や喪失に対する強す
ぎる感情(内的因子)によりもたらされることが多い。その予防は内的・外的
因子を整理して立てられるべきである。また戦略的には次の 3 側面より実施す
ることが勧められる。①疾患別の対策:ⅰ.循環器疾患(発災直後に多発)ⅱ.
呼吸器疾患(粉塵・寒冷で発生)②災害弱者(ことに高齢者)への対策。③被
害を拡大する避難型式(車中死への対策)。
2004.12.16(2)
関連死の予防.Ver9
[1]中越地震の関連死の分析
11 月 11 日までに集計された 24 人について分析したが、24 日までで死者は増
えていない。データは 10/31 朝日新聞の記事(亡くなられた 37 人のみなさん)、
10/30 新潟県警震災警備本部の 10.23 地震災害状況(第 22 報)より得た。11 月
以降の死者は新聞記事を参考にした。現在のところ、関連死は 24 人、直接死は
16 人の合計 40 人が犠牲になった。直接死は 40%、関連死は 60%を占める。
件数
直接死
16
40.0%
間接死
24
60.0%
合計
40
100.0%
(1)分析結果
関連死(死亡日)の推移
合計
23 日
6
25.0%
24 日
3
12.5%
25 日
8
33.3%
26 日
1
4.2%
27 日
1
4.2%
28 日
3
12.5%
11 月
2
8.3%
合計
24
100.0%
70.8%
20.8%
経時的には 23 日死亡が 6 人、(多分その大半は直後だろう)。24 日が 3 人、25
日が 8 人である。23 日は 6 時間程度しかないので、23〜24 日の正味の時間は約
2 日間である。今回の中越地震では関連死の 71%は最初の 3 日間(実質 2 日間)
で発生していることになる。26〜28 日の 3 日間では 5 人のみで全体の 21%であ
る。
関連死の性差
男性が 16 人(67%)、女性 8 人(33%)
。男性の方が関連死が多い。
関連死の年齢分布
65 歳未満が 7 人(29.2%)、65 歳以上が 17 人(70.8%)。高齢者に多いが、
2004.12.16(3)
関連死の予防.Ver9
40 歳代にも発生している。平均年齢は 67.4 歳だが。2 か月の乳児を別にすると、
平均年齢は 70.4 歳となる。
阪神大震災で、神戸市は関連死を 615 人認定したが、
60 歳以上の人が占める割合を 89.6%、70 歳以上の占める割合を 73.0%と報告
した。65 歳での区切りがないので、65 歳以上を 60 歳と 70 歳の中央値を仮定す
ると、81.3%となる。今のところ、中越地震の関連死された方は阪神より若い
人が含まれる。つまり中越地震では高齢者に加えて、若い層が亡くなっている。
関連死者の年齢分布
13%
17%
8%
〜44
45〜54
55〜64
65〜74
75〜84
85〜
8%
21%
33%
関連死の発生場所
避難所は少なく 2 人、自宅は 5 人、車中が 9 人(37%)と最も多い。その他 5
人の内訳は病院 2 人、ホテル 1 人、温泉施設 1 人、チャイルドシート 1 人であ
る。不明は 3 人。
避難所は 2 人(8%)のみである。不明の 3 人が全員避難所としても、5 人
(21%)にすぎない。一方、自宅は 5 人(21%)
、車中は 9 人(37%)と多い。
避難所の少なさと、車中の多さが目立っている。いずれにせよ、早期の関連死
(主に循環器疾患)は避難所で起こるのではなく、自宅と車中で起こっている
車
自宅
その他
避難所
不明
合計
23 日
0
4
2
0
0
6
24 日
1
0
2
0
0
3
25 日
3
1
1
1
2
8
26 日
0
0
0
0
1
1
27 日
1
0
0
0
0
1
28 日
3
0
0
0
0
3
2004.12.16(4)
関連死の予防.Ver9
11 月
1
0
0
1
0
2
合計
9
5
5
2
3
24
関連死の発生場所
13%
8%
37%
21%
車
自宅
その他
避難所
不明
21%
車中死の経時的推移
車中死だけでみると、最初の 3 日間(実質は 2 日間)に 4 人(44%)が発生
しているものの、後半 3 日でも 5 人(46%)が発生している。最初の 3 日間に
車中死が占める割合は、4/17 = 24%であるが、後半の 3 日間では 5/7 = 71%を
占める。最初の 3 日間は特に強烈な余震が続くだけでなく、周囲からの支援も
行き届きにくく、不安ストレスは極限に達していた。その後の 3 日間は余震は
続いたものの、支援も入り、ストレスはやや緩和されつつある時期である。に
も関わらず、その時期になお主に車中死が続いたことは特筆すべきことである。
車中避難のストレスはより強いと考えられるし、車中死は今後も発生する可能
性は十分あると言える。
2004.12.16(5)
関連死の予防.Ver9
関連死の推移
9
8
7
6
不明
避難所
その他
自宅
車
5
4
3
2
3
1
3
1
0
23 日
1
24 日
25 日
26 日
27 日
1
28 日
11 月
11 月の 2 人は車中の人が 11 月 2 日死亡、避難所の人が 11 月 3 日死亡である。
車中
車以外
合計
車中/合計
23‑25 日
4
13
17
23.5%
26‑28 日
5
2
7
71.4%
計
9
15
24
37.5%
車中死と年齢
車中死と年齢の関連であるが、車中死の人は中年より高年まで分布している
が、中年の比重が高い。車中以外死の人は高齢層に集中している。
(避難所や)
自宅は高齢者の避難が多いが、車中は若い層が主に避難したようだ。
件数
車中
車中外
車中/合計
〜44
3
1
2
33.3%
45〜54
2
2
0
100.0%
55〜64
2
0
2
0.0%
65〜74
8
3
5
37.5%
75〜84
5
2
3
40.0%
85〜
4
1
3
25.0%
合計
24
9
15
37.5%
2004.12.16(6)
関連死の予防.Ver9
64 歳までの 7 人中、車中死は 3 人で 43%を占めた。54 歳までで見ると、車中
死は 3 人、車中以外は 2 人の計 5 人である。車中以外の 2 人のうち、1 人は幼児
である。もう一人は透析患者さんであるが、病院入院中にショックで亡くなっ
ている。この 2 人は特殊ケースであり除いて計算すると、64 歳までの 5 人中、
車中死の人が 3 人、60%を占めることになる。54 歳までの 3 人のうち全員が車
中死となる。
車中死と車中外死の年齢分布
9
8
7
6
5
車中外
車中
4
3
2
1
0
〜44
45〜54 55〜64 65〜74 75〜84
85〜
一方 65 歳以上の 17 人中、車中死は 6 人で 35%であった。車中死の方の平均
年齢は 66.9 歳である。車中以外での死者の平均年齢は 67.8 歳である。ここで
24 日以降に亡くなった人で分析しなおすと、車中以外の人の平均年齢は 73.0 歳
と高くなる。若い(中年)層は高齢者よりはるかに体力があるはずであるのに、
3 人の方が亡くなっている。車中避難は非常に死亡リスクの高い避難方法である。
関連死の疾患
心疾患が全体の 56%、肺塞栓を加えると 66%に及ぶ。脳卒中は 17%。循環器
疾患(心+脳)で見ると 83%を占める。呼吸不全は 1 人、4%と少ないのが特徴
である。阪神では発災直後より寒冷と粉塵により肺炎などの呼吸器疾患による
死者が目立った。中越はそう寒冷ではないし、粉塵も一部地域を除いて目立っ
ていない。今までのところ、中越地震では呼吸器疾患による死亡はほとんど見
られていない。
2004.12.16(7)
関連死の予防.Ver9
件数
%
うち車中
心筋梗塞
6
25%
1
急性心不全
5
21%
4
ショック死
2
8%
0
心疾患
1
4%
1
肺塞栓
2
8%
2
脳梗塞
1
4%
0
脳内出血
2
8%
0
くも膜下出血
1
4%
1
呼吸不全
1
4%
0
不明
3
13%
0
合計
24
100%
9
総数
循環器疾患
総数%
車中
車中%
14
58%
6
67%
肺塞栓
2
8%
2
22%
脳卒中
4
17%
1
11%
呼吸不全
1
4%
0
0%
不明
3
13%
0
0%
合計
24
100%
9
100%
車中死では心疾患+肺塞栓で 89%を占める。
24 日以降の関連死の特徴
23 日に死亡された方 6 人(自宅が 4 人、チャイルドシートが 1 人、病院 1 人)
はほとんど地震発生直後にショックで死亡しているようだ。避難場所の影響は
受けていないと考えられる。一方 24 日以降の死亡は避難場所の影響を受けてい
ると考えられる。24 日以降の関連死(18 人)について分析する。
各避難場所の割合を計算すると、車中は 49%、自宅は 6%、その他は 17%、
避難所は 11%、不明は 17%となる。車中の割合が突出する。
車
24 日〜11 月
自宅
9
その他
1
3
避難所
不明
2
合計
3
18
その他は病院が 1 人、ホテルが 1 人、温泉が 1 人であった。不明 3 人が全て自
宅なら、自宅は 4 人になる。全て避難所なら 5 人になる。
2004.12.16(8)
関連死の予防.Ver9
24 日以降の関連死の避難場所
17%
11%
49%
車
自宅
その他
避難所
不明
17%
6%
24 日以降の関連死と年齢との関係であるが、64 歳まででは車中死の占める割
合は 3/4 =75%に対し、65 歳以上の高齢層での車中死は 6/14=43%であった。件
数が多くないので断定的には言えないが、若い層での車中死が目立っている。
24日以降の関連死の年齢分布
7
6
5
4
車中外
車中
3
2
1
0
〜44
45〜54 55〜64 65〜74 75〜84
85〜
避難場所別の死亡率
阪神大震災では被災中心地では 1/2 以上の方が避難所に避難したが、自宅に
2004.12.16(9)
関連死の予防.Ver9
止まる人も少なくなかった。今回の地震では本来自宅に止まる人の一部が余震
が続いたため車中避難を選択したのではないだろうか?あるいは避難所に入っ
たが馴染めずに車中避難となったのだろう。
11 月 16 日新潟県の県民生活環境部防災局に車中避難者数を問い合わせたら、
広報部を紹介された。広報部の回答によると、
「地震直後避難所で配布した食事
数から避難所人口を引いた数は 9000〜1 万人であった。その数が車中ないしテ
ントで避難した人の数と考えられる。正確に数の把握を始めたのは 11 月 2 日午
前 8 時からで、避難所 4.7574 人、車テントは 6,853 人である。」
避難所 10 万人、車中 1 万人、自宅等 43‑11=32 万人と仮定して各避難場所の
死亡率を計算する。避難所の死者は不明の 3 人を加えると、2〜5 人となる。そ
の他のうち病院は特殊であるので除外し、ホテル・温泉の計 2 人を自宅 1 人に
加えて「自宅等」とする。自宅等は 3 人に不明の 3 人を加えると、3〜6 人に分
布する。
車中死の死亡率は 90 人/10 万人、避難所は 2〜5 人/10 万人、自宅は 0.3〜
1.3 人/10 万人(自宅避難を 10 万人とすると、死亡率は 3〜6 人/10 万人)とな
る。単純に計算して車中は避難所と比較して約 18〜45 倍死亡率が高い。車中死
には体力のある中年が混じっているので、年齢を考慮すると、車中死の避難所
に比較したリスクはさらに高くなるだろう。
避難場所ごとの死亡率
車
避難所
自宅等
病院
24 日以降死者
9
2
3
増加死者数
0
3
3
推定最大死者数
9
5
6
10,000
100,000
320,000
90
2
0.9
0
3
0.9
90
5
1.9
推定避難数
死亡率/10 万
増加死亡率/10 万
推定最大死亡率
2004.12.16(10)
1
不明
合計
3
18
車中/避難所
45
車中/避難所
18
関連死の予防.Ver9
避難場所ごとの関連死の死亡率
100
90
80
70
60
増加死亡率/10万
死亡率/10万
50
40
30
20
10
0
車
避難所
自宅等
(2)考察
県警が認定/隠れ関連死
今回の関連死は認定方法が阪神の時と大きく変化した。阪神では認定は申請
主義であった。家族の申請で行政の認定委員会が検討して該当するかどうか決
めていた。今回は県警が医師(法医学?)の判断を基に直接発表している。一
部は家族の「申請」もあるかもしれないが、大きな進歩であろう。
ところで県警発表以外でも関連死があると思われる。ながおか生協診療所(長
岡市)の羽賀所長によると、まだ発表されていない関連死の方が 4 人いるとの
ことであった。彼は「隠れ関連死」と呼んだ。ケースを紹介すると、
① 87歳女性、肺炎となるが、避難所(コミュニテイセンター)の風呂で亡
くなっているのが発見された。
② 58歳の男性、自営業者。下腿骨折、病院は入院させてくれず。避難所か
ら家へ戻るが食事をとらず、翌日亡くなっているのを家族が発見した。
③ 在宅患者さんはショックで2人亡くなった。
隠れ関連死の認定に必要な条件は、①家族が関連死と感じること。家族が天
災と捉えるなら申請はない。②全体の被害が大きく地域が関連死の存在を感じ
ること等である。阪神大震災では関連死の総死亡の割合は 14.3%であったが、
淡路島では 4/62=6.5%であった。特に被害の大きかった北淡町では総死者 39 人
2004.12.16(11)
関連死の予防.Ver9
中関連死は一人もいなかった。
阪神大震災で車中死が見られなかった理由
阪神大震災では車中死は報告されていない。なぜ中越地震で見られるように
なったのか?その理由として考えられるのは、①阪神の時には車中避難した人
は中越ほど多くなかったと考えられる。阪神の時も校庭に車が並んではいたが、
びっしりではなかった(多くて数 10 台程度?)
。全体で数千人程度だったのか。
②阪神では関連死者の総数が大きいので、起こったとしても極少数の車中死は
目立たなかった可能性がある。③中越の方が車中避難のストレスが大きく死亡
者を多数出した。車中は避難所より休息しにくい環境と考えられる。阪神では
余震は初日でほとんど終わったが、
中越では大きな余震が連日 1 週間以上続き、
車中避難のストレスが蓄積した。
中越地震の余震
180
8
余 160
7
140
6
最
5
大
4
震
3
度
震
回
数
120
最大震度
100
80
60
40
2
震度 1 以上の回数
20
1
0
0
23 24 25 26 27 28 29 30 31 1
2
3
4
5
6
7
8
(04/11/22,asahi.com の掲載図を改変した。図では 5 強は「5.2」
、5 弱は「4.8」
にプロットした。
)
車中避難の理由と社会的意味
中越地震で車中避難が多かったのは、①余震が続き不安が増幅した。②プラ
イバシー意識の向上。主に若い層が車中避難した。③全壊家屋が少なかったの
で自動車が壊れなかった。④避難所へはよそ者(最近の移住者)は入りにくか
2004.12.16(12)
関連死の予防.Ver9
ったなどが考えられる。
十日町の避難所のリーダーは車が並ぶ運動場を「自由が丘」
、体育館を「希望
ヶ丘」と呼んでいた。しかしプライバシーの重視だけでなく、孤立しやすい条
件が車中避難を選択させた例もある。ある家族は障害者の子供とともに避難所
に行ったが、子供が馴染めずやむなく車中避難となり、その後母親が肺塞栓で
亡くなった。
車中死をどう捉えるかであるが、高齢社会型震災だけでなく個人主義が加わ
って、新たな犠牲者が発生した震災と考えるべきか。つまり「高齢社会型震災
+個人社会型」だったのか?あるいは孤立社会の到来を示唆したのかもしれな
い。減災の立場からは個人社会型より、
「高齢社会型震災+孤立社会型」と表現
したほうが実際的だろう。
関連死の起こるメカニズム/アロスタシス負荷
ストレスは中世の言葉「デイストレス」
(苦痛、苦悩)が短くなったものとさ
れるが、心身に疲労と消耗をもたらす。地震による様々なストレスは被災者の
心と体に大きな負担をかける。しかし人によってそのストレスのかかり方は違
う。心(の反応)が人によって様々であるからだ。
ロックフェラー大学の神経内分泌研究所所長のブルース・マキューアンらは
ストレスを外部の出来事とし、心の内部で起こる反応を「アロスタシス」と呼
ぶことを提唱している。このアロスタシスの概念は関連死の理解を容易にする。
彼の著書「ストレスに負けない脳(早川書房、2004.9)
」の主張をまとめるとと
もに、関連死の機序について検討する。
ホメオスタシスという言葉は内部環境を一定に保とうとする働きを指すが、
外環境は常に変動しており内環境もそれに応じて変動し適応している。体のシ
ステムは変動を前提として働いており、その意味では変動するという意味のギ
リシャ語「アロ」をつけた言葉、アロスタシスのほうが適切である。自ら変動
することで体を安定させるという意味が込められている。
外部ストレスに対する体の反応(アロスタシス)の目的は生体が困難な状況
に対処するエネルギーを提供し安定状態に復帰させることである。情報を収集
し反応する脳(ことに辺縁系)が自律神経系、内分泌系(主に副腎)
、免疫系に
指示する。危険な状況に直面すると、交感神経系が作動し肺と心臓を刺激して
多くの酸素を筋肉に送り込む。傷を負ってもすぐ止血できるように凝固系を昂
2004.12.16(13)
関連死の予防.Ver9
進させる。炎症に対応するため免疫反応も強化される。アロスタシスは脳で始
まる。外界からの変化に応えた後、副交感神経がブレーキをかけ体内を元の状
態に戻す。
(両神経が同時に活性化するのは、性的に興奮した時と重い PTSD の
時である。
)
しかしアロスタシス反応がうまく作動しなくなると、心と体はボロボロにな
ってしまう。これを「アロスタシス負荷」と呼ぶが、次表のように 3 つの場合
が考えられる。
アロスタシス負荷となる一般的状況と地震での状況
1
2
3
アロスタシス負荷
一般的な状況
強いストレスが繰り返さ 不安定な社会環境
れた時
なんでも引き受ける従
順な人
不適切に作動して体の主 夜間睡眠がとれないと
要なシステムが体に害を 本来は低値であるコル
及ぼし、最終的に機能し チゾール値が夜に高く
なり、アロスタシスが
なくなる。
乱れる。
必要がなくなったのにア A 型人間(敵愾心)
ロスタシス反応が止まら 神経質(過剰に反応)
社会的孤立(ストレス
なくなった時。
を発散させにくい)
コントロールを失った上司
地震での状況
強い余震が繰り返し 1
週間続いた。
車中避難では夜間睡眠
がとれない
PTSD の人はわずかな刺
激で思い出してしま
う。
孤立している人。
(車中
避難の方が孤立)
アロスタシスは一部の人にはアロスタシス負荷となってしまう。負荷となる
かならないかの差は個人の情動的反応や遺伝子と関係するようだ。地震の際に
も、ある人はアロスタシスの範囲で反応が終了するが、別の人にはアロスタシ
ス負荷となり病気に陥ったり、最悪死亡に至るのである。アロスタシス負荷に
陥りやすい脳が病気を作り出す。アロスタシス負荷となりやすい要因として、
マキューアンは次の諸点をあげている。
・ 家族や友人など地域社会の支援がない(孤立している)
。
・自分の人生は自分でコントロールできるという感覚がない。
・ 睡眠不足、運動不足、不健康な食事など
2004.12.16(14)
関連死の予防.Ver9
脳・免疫・心臓血管への保護と危害
注意力↑
記憶力↑
免疫↑
アロスタシス
エネルギー増
ストレスが強い・繰り返す
休息できない環境
免疫↓
かぜ・肺炎
癌
腹部脂肪蓄積
記憶障害
海馬細胞減
糖尿病
動脈硬化
凝固昂進
感じやすい心、孤立した心
アロスタシス負荷
ストレスホルモン分泌の増加
(ストレスに負けない脳 p125,p136,p165「保護と危害」の図を改変)
21 世紀、精神的なストレスは増えている。情報の氾濫と快楽の拡大によって
自分の人生をコントロールできていないという無力感に襲われている。災難が
降りかかった時に助けになってくれる家族や友人との距離を広げている。睡眠
不足や運動不足もアロスタシスを脆弱にしている。脳、自律神経系、内分泌系、
免疫系の萌芽が見られるのは硬骨魚類で約 4 億年前に出現した。さらにヒトに
進化し何百万年かかって発達したアロスタシスというメカニズムが歪んで逆に
心身にアロスタシス負荷となり、病気を引き起こしている。
地震直後の「ショック死」の機序について、二つの考え方がある。①恐怖感
が交感神経を強く刺激してアドレナリンの大量放出を起こす。強い心負荷とな
り心室細動が惹起され心停止に至る。②動物は絶対絶命の時、徐脈となり死ん
だぶりをする。次に副交感神経によるブレーキをはずして迅速に動く。しかし
あまりに強い危機の場合には、これがうまく作動せず不動と徐脈のまま推移し
心停止する。もともと自律神経失調(ことに迷走神経優位)の人はショック死
しやすいかもしれない。
過酷な避難生活中の急死の機序であるが、まさしくアロスタシス負荷による。
強い余震が持続する中で、そのストレスを緩和できない環境に避難しており、
反応しすぎる心を持った人に、アロスタシス負荷が急速にかかり凝固系が昂進
2004.12.16(15)
関連死の予防.Ver9
し心血管疾患が発生する。車中が避難所より関連死のリスクを数 10 倍高めた理
由であるが、①普段から社会より孤立している人はアロスタシス負荷を受けや
すい。こうした人の方が車中避難を選択しやすい。②数 100 人以上が集まる避
難所と比べ、数人で避難する車の方が揺れによる恐怖を感じやすい。③夜間ず
っと同じ姿勢で座っていると、著しく睡眠不足となり疲労が蓄積する。日中も
車中避難を続けたら運動不足となる。④避難所と比べ車は情報が入りにくい。
情報不足も心を不安定にする。
(3)中越地震の関連死のまとめ
① 関連死(主に循環器)ははじめの実質 2 日間でその 71%が起こっている。た
だし今後後期の関連死が増えると、初期の関連死の占める割合は低下する。
② 関連死に 2 種類あると思われる。23 日の関連死は地震発生直後のショックで
死亡しており、避難場所の影響は受けていないだろう。一方 24 日以降の死亡
は避難場所の影響を受けていると考えられる。
②関連死の死因は循環器疾患が 83%を占めた。呼吸器疾患はほとんどなかった。
③高齢者に加えて、若年者が亡くなっている。
④車中死が目立った。全関連死の 9 人(37%)を占めた。早期だけでなく 5 日
以降にも起こった。高年層から若年層まで生じているが、若年層(64 歳未満)
の大半を占めた。肺塞栓が 3 人発生した。避難所と比較すると、車中死の相対
リスクは非常に高い(20〜50 倍?)
⑥ 中越地震の車中避難について調査研究すること。今後の関連死の予防に生か
すべきである。
2004.12.16(16)
関連死の予防.Ver9
中越地震関連死一覧表
氏名
年
性
住所
避難場
所
死亡
日
1
蕪木トシエ
65
女
十日町市
自宅
23
2
駒形美佐子
70
女
小千谷市
自宅
23
3
桑原文雄
76
男
越路町
病院
23
4
樋熊大地
0.2
男
十日町市
チャイルド
23
5
瀬沼三郎
89
男
小千谷市
自宅
23
6
森山雅春
60
男
見附市
自宅
7
星圭子
44
女
湯之谷村
8
桜井哲治郎
70
男
小出町
9
南雲治矢
81
男
小千谷市
10
高橋勇吉
80
男
小国町
11
安藤日出昨
59
男
長岡市
12
今井富七
91
男
小出町
13
駒形ウメノ
88
女
大和町
14
高橋新治朗
73
男
長岡市
15
大橋勝栄
85
男
小千谷市
16
遠田良一
54
男
17
菊池エイ
74
18
目崎幸代
19
死因
メモ
ショック死
人工呼吸中、チューブはずれる
ショック死
チャイルドシート
23
急性心不全
透析患者
病院
24
心筋梗塞
透析患者
ホテル
24
心筋梗塞
湯沢町ホテル宿泊中
25
心筋梗塞
心臓に持病あり
避難所
25
脳梗塞
脳梗塞持病あり
自宅
25
呼吸不全
25
急性心不全
25
脳内出血
23 日に倒れる
26
脳内出血
脳卒中あり、24 日に病院搬送
車中
24
急性心不全
夕食後気分が悪くなった
十日町市
車中
25
くも膜下出血
女
十日町市
車中
25
心疾患
片づけの疲労、元保健師
43
女
小千谷市
車中
27
肺塞栓?
17 日朝、車を出て 2 度転倒した
野沢悦子
48
女
川西町
車中
28
肺塞栓
よく頑張る人だった
20
佐藤松野
84
女
広神村
車中
28
急性心不全
27 日は車中、28 日は自宅寝室
21
矢野明
67
男
湯之谷村
車中
25
心筋梗塞
23 日は車中、24 日倒れる
22
田村洋吉
71
男
栃尾市
避難所
1103
心筋梗塞
24 日より避難所
23
瀧澤義一
69
男
堀之内町
車中
1102
急性心不全
26 日まで車中避難、自宅死亡
24
片桐虎蔵
78
男
十日町市
車中
28
心不全
25 日入院、28 日死亡
温泉
肺塞栓は 3 人と報告されているが、上表の 2 人以外だれかは筆者は把握してい
ない。
2004.12.16(17)
関連死の予防.Ver9
中越地震被害地域(新潟県統計)
)
平成 16 年 10 月
人口
高齢化率
高齢者人口
見附市
43,123
22.9%
9,875
長岡市
194,633
20.2%
39,316
越路町
14,145
25.0%
3,536
小国町
7,003
34.4%
2,409
40,570
25.6%
10,386
7,829
30.1%
2,357
十日町市
41,904
26.2%
10,979
栃尾市
23,417
30.3%
7,095
山古志村
2,010
39.7%
798
川口町
5,530
27.4%
1,515
堀之内町
9,402
27.0%
2,539
広神村
8,898
27.3%
2,429
子出町
12,694
24.6%
3,123
6,463
23.0%
1,486
15,175
23.3%
3,536
432,796
23.4%
101,379
小千谷市
川西町
湯ノ谷町
大和町
合計
神戸市関連死の年齢分布
人数
20 未満
2
0.3%
20〜
4
0.7%
30〜
3
0.5%
40〜
13
2.1%
50〜
36
5.9%
60〜
102
16.6%
70〜
166
27.0%
80〜
233
37.9%
90〜
49
8.0%
100〜
1
0.2%
不明
6
1.0%
615
100.0%
89.6%
2004.12.16(18)
65 歳以上推定
73.0%
81.3%
関連死の予防.Ver9
神戸市関連死の死亡日の分布
期間
当日
人数
1 月 17 日
%
累積%
29
4.7%
4.7%
5 日以内
1/18〜21
40
6.5%
11.2%
10 日以内
1/22〜26
94
15.3%
26.5%
20 日以内
1/27〜2/5
146
23.7%
50.2%
1 か月以内
2/6〜16
74
12.0%
62.3%
2 か月以内
2/17〜3/16
121
19.7%
82.0%
3 か月以内
3/17〜4/16
66
10.7%
92.7%
3 か月以上
4/17〜
45
7.3%
100.0%
615
100.0%
被害が大きく仮設の建設とライフライン復旧が遅れたため関連死が長期間に渡
り発生した。
神戸市関連死の疾患分類
人数
循環器疾患
小計
心疾患
177
28.8%
脳疾患
56
9.1%
161
26.2%
54
8.8%
消化器疾患
22
3.6%
血液造血器疾患
12
2.0%
4
0.7%
6.2%
既往歴の悪化
129
21.0%
21.0%
合計
615
100.0%
呼吸器疾患
肺炎
その他
鬱病等精神疾患
自殺
37.9%
35.0%
被災地の環境は粉塵が舞い寒冷であったため、発災当初より避難所・自宅を問
わず呼吸器疾患が多発していた。ライフライン復旧と仮設建設に時間がかかり
循環器疾患も長期に渡り発生した。
2004.12.16(19)
関連死の予防.Ver9
[2]関連死の予防
関連死は発生機序により大きく 2 つの疾患に分けることができる。地震の揺
れによる恐怖、ストレスで循環器疾患が生じる。建物等の破壊による粉塵や気
候条件(寒冷)で呼吸器疾患が生じる。
(夏期で衛生環境が劣悪なら消化器疾患
も起こるだろう。
)ライフライン復旧や仮設住宅の建設が遅れると、不便でスト
レスの多い過酷な生活が継続して循環器、呼吸器疾患とも発生し続ける。
関連死の被害に遭いやすい人は虚弱高齢者や障害者などの弱者である。高齢
者障害者の保護は平行して対策が立てられるべきである。今回車中死が集中し
て発生したが、21 世紀社会を考えると今後も発生しうる。別個対策が必要。
中越地震と阪神大震災における関連死の推移
C
中越地震
6
循環器疾患
18
6 時間?
1週
1月
阪神大震災
粉塵・寒冷
循環器疾患
呼吸器疾患
29
1日
1週
1月
2月
3月
中越では地震早期に主に循環器疾患が発生した。阪神では地震直後から粉塵
と寒冷により呼吸器疾患も多数発生した。ライフライン復旧と仮設住宅建設等
に時間がかかり、両疾患は長期間に渡り発生をみた。
2004.12.16(20)
関連死の予防.Ver9
関連死予防策は次の 3 つの面より行う。
① 疾患別の対策:ⅰ.循環器疾患(発災直後に多発)
ⅱ.呼吸器疾患(粉塵・寒冷で発生)
② 災害弱者への対策
③ 被害を拡大する避難型式(車中死への対策)
(1)震災後早期の関連死(循環器疾患)の予防
地震直後から数日までに関連死のうち致死的な循環器疾患が起こる。救援や
情報が入りにくい段階での対策が求められる。
循環器疾患が急増する機序
ストレス
交感神経刺激
血液凝固
心筋梗 塞
ホルモン増
促進
など
ストレスが交感神経などを刺激するのは「感情」があるから。
ストレス
不快恐 怖
交感神経刺激
血液凝固
心筋梗 塞
感情
ホルモン増
促進
など
感情によって人は危険から素早く逃げることができる。戦ったり逃走する際
に怪我をしてもすぐ止血するように身体は進化した。しかし感情の反応が必要
レベルをはるかに超えて強く起こると血液凝固が進みすぎ、動脈などが詰まり
やすくなる。
2004.12.16(21)
関連死の予防.Ver9
ストレス
関連死(循環器疾患)の予防
不快恐 怖
交感神経刺激
血液凝固
心筋梗 塞
感情
ホルモン増
促進
など
孤立しない
水分摂取
手をつなぐ
トイレ対策
休息、睡眠
救援・医療班
情報を得る
強すぎる感情を緩和するためには、孤立しないことである。1 人でいるより 2
人のほうが、恐怖心は 1/2 に減る。3 人なら 1/3 になる。次に感情を休ませるこ
とである。直後は避難や家の片づけなどで著しく多忙となり、心身共に疲れ切
った状態である。休息が最も求められる時であるが、じっくり休息できる環境
にはない。過剰な疲労は感情を不安定にさせる。出来る限りの休息の工夫が求
められる。できるだけ暖かくし、水・食べ物を食べ、足を伸ばして寝ることで
ある。
救援や医療班が来るとさらに感情は休まる。できるだけ早く救援部隊を現地
に入れること。自衛隊の役割が大きい。水・食料をできるだけ早く現地に提供
すること。医療班は避難所にいるだけで安心を与える。また情報を得ることに
より見通しがつき、理性が恐れを緩和する。不安は感情を増幅する。情報源と
しては行政だけでなくマスコミの役割が大きい。被災地に共感しつつ全国へ報
道することは、被災者を安心させるだろう。
外向的な人の方がストレスには強い。内向的な人はストレスを内に向けるの
で恐怖感情は増幅するだろう。普段より近所つきあいがある人の方が、災害時
に互いに助け合い、被害を少なくできる。外向的な人が避難所を選択し、内向
的な人、普段より孤立した生活を送っている人が自宅や車中を選んでいるなら、
救援の届きにくい自宅・車中の方がリスクは高まる。休息しにくい座ったまま
2004.12.16(22)
関連死の予防.Ver9
の車中避難でのストレス蓄積は想像に余りある。
ストレス
エコノミークラス症候群(肺塞栓)の予防
不快恐 怖
交感神経刺激
血液凝固
下肢深 部
感情
ホルモン増
促進
静脈血栓
孤立しない
水分摂取
体操・足踏み
手をつなぐ
トイレ対策
座席を水平に
肺
塞
栓
休息・睡眠
救援・医療班
情報を得る
肺塞栓は下肢深部静脈にできた血栓が肺に飛んで起こる。狭い座席でじっと
座っていると下肢の血流がよどみ、血栓ができる。数時間ごとに体操・足踏み
をすること。あるいは可能なら座席を水平にして休んだ方がよい。水平だと寝
返りによって血流のよどみを避けやすい。県の調査(10/29)では「セダンタイ
プ、軽自動車が多い」とのこと。
発災早期の関連死への対策が事前にとられるべきである。またマニュアルよ
り、大災害時に人間心理にそった対策が考慮されるべきである。要点は、①避
難所の確保である。学校、公共施設、病院、施設は耐震性の高い建物とする。
空調、エレベーターなどが設置されていること。エネルギーは復旧しやすい電
気のほうがいいだろう。空調の効いた避難所は快適でさえある。まちなかにバ
ランスよく整備されるべきである。広場も配置されること。②施設は 50 人定員
の中規模特養を町中にバランスよく配置すること。グループホームは多数の緊
急保護者を受け入れにくい。
2004.12.16(23)
関連死の予防.Ver9
(2)呼吸器系関連死の予防
肺炎は全壊家屋による粉塵や寒冷により発災後早期より起こる場合もあるが、
直後はあまり見られないが集団生活などにより慢性期に生じてくる場合もある。
肺炎(呼吸器疾患)の予防
手洗い・マスク
ライフライン復旧
仮設住宅
インフルエンザワクチン
循環器負荷
ライフラインの停止
かぜ流行
呼吸器負荷
居住環境の悪化
喪失体験 (家族・
家・風景・人間関係)
ス
ト
レ
ス
不快喪失
感情
免疫 能
低下
肺炎
孤立しない
休息、睡眠
ボランテイア支援
先の見通し
大災害後の地域生活は大きく阻害され、強い不快感情を継続させてしまう。
ストレスは次の 3 点に集約されよう。
①ライフラインの停止:電気、水道、ガスの停止。不便な生活はことに高齢
者を過労に追い込む。循環器に負荷を与える。まさにライフ(命)のライン(路)
を絶たれることになる。
②居住環境の悪化:寒冷・粉塵、避難所生活、風雨のしのげない損壊家屋の
生活は呼吸器を痛める。肺炎を起こしたりや慢性呼吸器疾患を悪化させる。さ
らに十分に休息・睡眠がとれない。最も問題なのはプライアシーのない避難所
生活は人間の尊厳(プライド)を脅かし、やる気をそぐことである。健康は住
まいからである。
③喪失体験:家族友人知人の死、自宅の損壊、仕事の喪失、まちの風景・地
2004.12.16(24)
関連死の予防.Ver9
域の人間関係を壊す。災害で失うものが大きいほど、後々まで感情を傷つけ、
回復を遅らせる。さらに免疫力を低下させ、感染症などが起こりやすいくなる。
肺炎の機序であるが、災害後のストレスによる「不快喪失感情」は免疫力を
低下させる。一方居住環境の悪化は気道を障害して、微生物を入りやすくする。
風邪やインフルエンザに罹りやすくなり、肺炎が増える。
肺炎への対策であるが、風邪予防策(手荒い、マスク)だけではすこぶる不
十分である。より上流の対策が必要である。気道を守ったり、免疫力をつける
ほうが大事である。
① ライフラインの復旧をできるだけ急ぐ。命の路を早くつける。
② 仮設住宅の早期建設。避難所から仮設住宅へ早く移住することである。
健康は住まいから。
③自宅の片づけ等。虚弱な高齢者にとって、物が散乱していることが ADL を
低下させ気持ちを後ろ向きにさせる。片づけボランテイアの果たす役割は大き
い。
④傷ついた感情に対しては、
・ 孤立しないことである。隣近所、地域ごとに避難所や仮設住宅へ入るこ
とが大事である。同じ境遇の者同士で手をつなぐことである。
・ 心と体をじっくり休ませること。難しいが睡眠をしっかりとること。
・ ボランテイアの支援も被災者の肩の荷を軽くしてくれる。
・ 将来への見通しが持てること。見通しがあれば、休んだのちに頑張れる。
健康は住まいと支え合いのコミュニテイから。
(3)虚弱高齢者の保護
①安否確認:ケアマネージャーの安否確認は孤立しがちな要介護高齢者と家族
を安心させる。
② 緊急保護:虚弱な高齢者は弱る前に、避難所から特養老人ホームなどへ緊急
保護すること。あるいは衰弱しだしたら早めに入院して頂く。要介護高齢者
が駆け込める特養が町中に配置されていること。死亡率の高い高齢者は最初
の 1 週間で衰弱する人である。発災後 1 週間の速やかな保護が大事。
⑦ 避難所ではトイレに近いところに移動してもらうなどの配慮。
⑧ 在宅サービスの回復:在宅サービスの保険料減免。介護保険とボランテイア
支援を組み合わせる。
2004.12.16(25)
関連死の予防.Ver9
(4)大災害後の要介護高齢者のサポート
仮設住宅入居後の死亡は関連死ではないが、環境の変化で高齢者の病気は増
える可能性が高い。また仮設住宅建設後であっても、大災害後には仮設あるい
は一般住宅に関わらず地域の要介護者は増えると考えられる。また中越地方は
豪雪地帯のために介護需要が拡大する。
「雪ほり」は虚弱高齢者には無理。家が
傷んでおり家族もいつも以上に雪ほりに手を取られ要介護者のケアまで手がま
わらない。施設を希望する高齢者は増えるだろう。仮設住宅でも雪対策は重要。
ボランテイアの主要な仕事となるだろう。
仮設住宅と高齢者の課題
在宅サービス増
デイケア併設
雪ほり
グループホーム型仮設
不便な生活
足腰を弱らせる
寝たきり増
ストレス の
多い生活
脳を弱らせる
痴呆の増加
喪失体験 (家族・
家・風景・人間関係)
不快喪失
感情
要介護者数と
介護サービス増加
免疫 能
低下
病気の増加
コミュニテイを守る
休息、睡眠
生きがい支援
役割・・
地元の取組
ボランテイアイ支援
ふれあい
センター
(5)車中死への対策
21 世紀社会は少子高齢化だけでなく、シングル社会である。孤立して生活す
る人が増える。車中死の危険性を宣伝教育しても、大災害時に車中避難を選択
する人はかなり出ると考えられる。今回の中越地震では車中避難の選択率は避
2004.12.16(26)
関連死の予防.Ver9
難所人口の 1/10 であった。死亡率は 1000 人に対して 1 人であった。これを高
いとみるか低いとみるかであるが、プライバシーを優先する人は高いとみない
だろう。車中避難人口が 1000 人までなら、死亡者がでるかでないか程度である
が、1000 人を越えると、1 人ずつ死者が増える可能性がある。
大災害時には即、車中避難者にその危険性と対策について情報提供する必要
がある。テレビ、ラジオなどメデイアを活用するだけでなく、情報ボランテイ
アが個別に伝える必要があるだろう。
対策であるが、
(研究結果を待つ必要はあるが)
、
・ セダン、軽 4 での避難はできるだけ避ける。
・ 座席を倒し、座席間に布団をつめたりして水平にすること。
・ 軽 4 などで座席が水平にならない場合は座席のはずし方を教える。
・水分と休息を十分にとること。
2004.12.16(27)
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