製品規格における競争のメカニズム ~SONYの逆襲

製品規格における競争のメカニズム
~SONYの逆襲、ブルーレイはいかにして
デファクトスタンダードをとるのか~
Agenda
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規格競争とは何か?
過去の規格競争の事例~VHSvsBETA~
理論的枠組み~バリューネット論とネットワーク
外部性~
政策的提言~ブルーレイがデファクトをとるには
~
参考資料
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規格競争とは何か?
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規格競争とは・・・
「ほぼ同一の機能を提供する製品に関して、
基本的規格が異なる複数の製品が存在する
場合に行われる企業間競争のこと」
„
「デファクト・スタンダード(事実上の標準)」・・・
規格競争に勝ち、市場の実勢によって事実上の
標準とみなされるようになった「業界標準」の規
格・製品のこと。
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規格競争とは何か?
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なぜ規格競争が重要なのか?
ユーザーサイド・・・交換可能性の増加、コストの低減
企業サイド・・・規格競争では1つの規格が圧倒的な
マーケットシェアを獲得できる(一人勝ち現象)
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過去の規格競争事例
~VHS vs ベータ~
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開発段階において、そもそも規格が異なってい
た(用途は同じ)
互いに長所を主張して譲らない
発売時期を決めていた為、それから共同開発を
するのは不可能
規格競争へ
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過去の規格競争事例
~VHS vs ベータ~
VHS
ベータマックス
企業
松下、日本ビクター
SONY
値段
低
高
機能
痛みが少ない
逆再生、スピード再生、高画質
録画時間
2~6h
1~4h
・・・製品の質ではベータが勝っていたにもかかわらず、
VHSがデファクトスタンダードになったのは、なぜ?
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過去の規格競争事例
~VHS vs ベータ~
出所:http://web.sfc.keio.ac.jp/~iba/ 井庭崇
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過去の規格競争事例
~VHS vs ベータ~
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VHSの勝因
・ハードの値段の高さ→初めのハード選びが重要
→潜在顧客が多い
・録画時間→映画1本を取れるだけの時間数
※ベータはTVの98%が1時間番組というデータ
から録画時間は短くても気にしなかった
レンタルビデオ市場の発展
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理論的フレームワーク
バリューネット論
byブランデンバーガーと ネイルバフ
「補完財の存在が製品の売れ行きを左右する」
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価値相関図
competitor
customer
company
cooperator
Supplier
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バリューネット
VHSの勝因
レンタルビデオ市場の発展という補完財
ソフト業界の発展という補完財
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これらのバリューネットによってVHSは勝利を収めた
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ネットワーク外部性
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「同じ財・サービスを消費する個人の数が多けれ
ば多いほど、その財・サービスの消費から得ら
れる効用が高まること」
EX) FAX、クレジットカードのブランド
パソコンのOS、キーボードの配列、
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ネットワーク外部性
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ネットワークの効用を調べる手段
①加入しているメンバー同士を結んだ線(パス)の総和
=効用の大きさ
②nC2で表すことができる
EX)
2人=1本
3人=3本
4人=6本
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ネットワーク外部性
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販売数100万台だとすると
A規格:550.000台→550.000*(550.000-1)/2
=151.249.720.000本
B規格:450.000台→450.000*(450.000-1)/2
=101.249.770.000本
個数
つまり、5万台の差で効用が1.5倍違うということ
もし、シェアがA:60%でB:40%になったら、2.25倍
効用に差が生じる
効用の大きさ
これが規格が介在する場合の競争の特徴
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ネットワーク外部性がある場合の普及
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デファクトスタンダードが決まるタイミング
一般的の製品なら10%~30%の段階が勝負
規格の介在する製品はネットワーク外部性の働きにより
「2~3%の段階」で決まる!
革新的採用者・・・目新しいものに手を出すが
独自のネットワークを作り周囲に影響を与えない
初期少数採用者・・・集団に溶け込み、潜在顧客
に影響を与えるオピニオンリーダー
前期多数採用者・・・ブームに便乗して購買
E.M.ロジャーズ 「イノベーション普及学」 産能大学出版部刊
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ネットワーク外部性がある場合の普及
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世帯数2~3%とは、顧客の中心が「革新的採用
者」から「初期少数採用者」に変わる時点。
→つまり、大きな影響力を持つ「初期少数採用者」
の支持でデファクトスタンダードがきまる。
ブルーレイは2~3%のシェアをとれば、
デファクトスタンダードをとれる
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政策的提言
ブルーレイがデファクトスタンダードをとるには
2~3%の初期少数採用者のシェアを勝ち取る
ために、補完財を集めて需要を喚起する!!
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次世代DVDの現状
<次世代DVDの必要性>
2007年7月24日 アナログ放送停止
※ 03年 地上波デジタル開始(東京・大阪・名古屋の3箇所)
06年 他地域でも漸次放送開始
容量のあるハードの必要性が出てきた
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次世代DVDの現状
ハイビジョン放送
録画
いいモノはディスクに保存したい
HDDレコーダー
<次世代DVDの必要性>
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次世代DVDの現状
Blu-ray
HDDVD
SONY、松下、日立、三菱、パイオニア、
SHARP、Samsung、HP、Dell
東芝、NEC、SANYO
録画用
120分 3255円
150分 3980円
データ用
追記用25ギガ 1780円
書き換え用25ギガ 2480円
追記用 15ギガ 3980円(上記と同じ)
状態
販売中
販売中
録再機
248,000円(シャープ製)
368,000円(東芝製)
企業
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次世代DVDの現状
Blu-ray
Merit
Demerit
HDDVD
・高音質 高画質
・先発優位
・ネームバリュー
・低価格
・商品開発、設備投資のコストが少ない
(現行のDVDとの互換性アリ)
・開発コストがかかる
・容量が少ない
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政策的提言~バリューネット~
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価値相関図
顧客
一般消費者
競合相手
Blu-ray Disk
補完的生産者
パソコン、ゲーム機
映画会社、
HDDVD陣営
供給者
Sony. Panasonic. Samsung
SHARP. Hitachi etc.
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政策的提言~バリューネット~
バリューネットを使って分析
=補完財の需要が勝負のカギ
・映画会社やソフト会社
・デッキの需要
・・・映画、ソフト会社が味方につけば、その需要が高
まることで、自社規格が優位に立てる
・・・デッキ(PCやゲーム機など)の需要が上がれば
ディスクが売れる
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政策的提言~バリューネット~
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現段階でのBlu-ray Diskの補完財
映画・・・Disney ソニーピクチャーズエンターテイメント
20世紀FOX ワーナーブロス パラマウントピクチャーズ
パソコン・・・ VAIO type-R(SONY) , VALUESTAR W (NEC)
※パソコンは規格決定後にドライブを増設すればよいので
直接の補完財ではない。
ゲーム・・・11月11日「PlayStation3」発売 62,700円
理論上では、このような補完財を増やし続けることが、
ブルーレイの需要を喚起し、規格競争に勝つことができる。
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政策的提言~ネットワーク外部性~
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2~3%のシェアを獲得するための課題
1.現存のDVDも未だ普及段階(61.1%)
2.消費者にとって明確な違いがない。
3.ハードの値段が高すぎてシェアが伸びない。
これらの問題があるため、補完財が活きない!!
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VHS/Blu-rayレコーダーの開発による
便益優位を狙う!!!
„
従来のブルーレイレコーダーの機能
・ハードディスク
・DVD
→これがセットになっている
・ブルーレイ
160GB HDD内蔵 地上デジタル対応
ブルーレイディスクドライブ搭載
DVDレコーダー < BD-HD100>
ここにVHSをブルーレイに落とせる機能が
もしあったなら?
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VHS/Blu-rayレコーダーの開発による
便益優位を狙う!!!
幼いころのVHSなどの映像を、より高画質高音質
で記録として遺しておきたい
…つまり
今までの知覚便益に「大切なものをイイ形で残した
い」という新たな便益が生まれる。
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VHS/Blu-rayレコーダーの開発による
便益優位を狙う!!!
規模の経済が働いてコストダウン
増えた消費者余剰
B-P
P-C
B
C
P
参照)戦略の経済学P432.図12-7
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VHS/Blu-rayレコーダーの開発による
便益優位を狙う!!!
・コストが少し上がる→その分の便益が大きく上がる
=「便益優位の戦略的ポジショニング」
・競争優位を得たVHS/Blu-rayレコーダーが最小効
率性規模を達成し、規模の経済が働く
・結果的にコストダウンが図れる
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VHS/Blu-rayレコーダーの開発による
便益優位を狙う!!!
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ブルーレイはいかにして
デファクトスタンダードをとるのか
こうして、補完財というバックボーンの上に
ハードの安さという競争優位が合わさり
ブルーレイディスクがデファクトスタンダードを
獲得することが可能となるのではないか!
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参考文献
書籍
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戦略の経済学 著者:デイビット・ベサンコ 出版社:ダイヤモンド社
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コーペティション経営 著者:B.J.ネイルバフ A.M.ブランデンバーガー
出版社 日本経済新聞社
„
イノベーション普及学 著者:E.M.ロジャーズ 出版社:産能大学出版部
„
競争優位の「規格」戦略~エレクトロニクス分野における規格の興亡~
著者:山田英夫 出版社:ダイヤモンド社
„
競争と協調の戦略 著者:浅羽茂 出版社 有斐閣
„
日本の企業間競争 著者:宇田川勝ほか 出版:有斐閣
„
デファクト・スタンダードの本質 : 技術覇権競争の新展開
著者:新宅純二郎, 許斐義信, 柴田高 出版社:有斐閣
Internet
„
C-net Japan http://japan.cnet.com
„
The Economics of Networks
著者:Nicholas Economides
„
携帯電話サービスにおけるネットワーク外部性の推計 調査報告書
発行元:株式会社KDDI総研
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