主な展示作品 - 東京国立博物館

東京国立博物館プレスリリース
遣唐使と唐の美術
主な展示作品
【主な展示作品】
1
亀文桃形盤
陝西省西安市何家村出土
銀・鍍金
唐時代・8 世紀
高 1 ㎝、口径 12.3cm
陝西歴史博物館蔵
縁が浅く湾曲した桃形の盤の中央に亀の文様を立体的
に表現し、
そこに鍍金をのせている。
全体は鍛造になり、
亀の文様は、その裏側が文様の形に凹んでいることから
わかるように、裏側から叩いて表にその形を突出させた
ものである。器の形となっている桃は、中国では、古来、
不老長寿につながる食べ物として珍重され、また文様に
採用されている亀も長寿の生き物として崇められるとい
うように、めでたい事柄つまり吉祥を題材とした器であ
る。同じ発掘地点からは、熊、狐、鳳凰などをあしらった同様の盤が発見されており、この種の吉祥文
が唐時代でもかなり愛好されていたことがわかる。今日から見ると、一見、何の変哲もない形や文様に
思えるところもあるが、隅々まで神経の行き届いた成形法や、微妙な動きが表現された亀の文様、さら
に斬新な意匠構成など、唐時代盛期の優れた造形感覚と高度な技量がうかがわれる佳品といえよう。
2
龍
陝西省西安市何家村出土
唐時代・8 世紀
金
高 2.1cm・2.7cm、長 4.1 ㎝・4.2 ㎝
陝西歴史博物館蔵
何家村から発見された 12 体の金龍のうち
の 2 体で、細長い角と伸びやかな四肢や尾と
いった各部を純金によって形作る。角と四肢
は別に作った部分を接合ないし鋲留めにより
体部に固定している。たいへん小さな作品で
あるが、鱗や体毛あるいは蹄といった細部の
様態まで克明に表現するとともに、個体ごとに姿態に変化をもたせるなど、制作に当たっての周到な配
慮を随所にうかがうことができる。使途はなお明確でないが、一説には、道教などの儀式に用いたので
はないかともいわれている。
龍は、中国ではすでに新石器時代の遺物に原形があり、以来、歴代にわたって崇められた霊獣である。
天子の象徴ともされるように、高貴な存在でありながら、貴賎を問わず広範に信仰を集め、いわば中国
文化の象徴的な存在ともなっている。
特別展「遣唐使と唐の美術」
2005 年 7 月 20 日(水)~9 月 11 日(日) 東京国立博物館
東京国立博物館プレスリリース
遣唐使と唐の美術
3
重要文化財
主な展示作品
龍池鴛鴦双魚文碗
唐時代・7世紀
銀・鍍金
高 5.2 ㎝、口径 14.0 ㎝
兵庫・白鶴美術館蔵
唐時代の金銀器は、国際色にあふれ、進取の気風
に富んだ文化的な土壌を背景に、それまでに類を見
ないほど高度な発達をとげた。この作品は、何家村出土の
金銀器と並び、数ある唐代金銀器の中にあっても、器形、文
様、技法のいずれも当時の最高水準を示す遺例である。大き
さは比較的小ぶりになるものの、力強く外反する口縁の下に、
下方にかけてゆったりした曲線を描く胴が続き、その下に裾
広がりの圏足が備わる。表面には、花弁文の内外に、宝相華
唐草を基調とする草花文と禽獣、蝶、雲などの文様が的確な
刻線によって表現され、底裏にも流麗な宝相華文が線刻され
ている。器の内底には別製の銀板を接合し、そこに、龍の頭
を中心として、鴛鴦(おしどり)、鯰(なまず)魚が波間に泳
ぐ霊池の様を浮き彫り風に表現している。安定感と優美さ、さらに精緻さをも兼ね備えた、唐代工芸の
代表的な作例といえよう。
4
螺鈿花鳥文八花鏡
陝西省西安理工大学李〓(イ<にんべん>+垂)墓出土
唐時代・8 世紀
青銅、螺鈿
径 24.5 ㎝
陝西省考古研究所蔵
中国における銅鏡は、
古く殷時代頃から作例があり、以後、
歴代にわたっておびただしい数の製品が制作され、巷間に広
まっていった。時代によって大きさや意匠は様々で、唐時代
には、この鏡のように、螺鈿という斬新な技法によってきら
びやかな装飾をほどこしたものもかなり作成された。螺鈿と
は、夜行貝やアワビ貝などの殻を削って文様の形に細かく切
り、漆地や木地の表面に貼り付けたり、はめ込んだりして研ぎ出した装飾技法である。貝の放つえもい
われぬ艶麗な輝きが時代の気風にあったものか、唐時代にはことに好まれたようである。日本へは、遣
唐使の活躍した奈良時代に伝来し、
工芸品の主要な装飾技法の 1 つとして普及していった。この鏡では、
八花形の背面に、花鳥の可憐な姿を螺鈿によって上手に表現するほか、地の部分にも、ラピスラズリや
トルコ石などの細片とともに貝片を散らし、ひときわ華やかな趣を演出している。
特別展「遣唐使と唐の美術」
2005 年 7 月 20 日(水)~9 月 11 日(日) 東京国立博物館
東京国立博物館プレスリリース
遣唐使と唐の美術
5
主な展示作品
三彩女子
唐時代・8 世紀
東京国立博物館蔵
静かな笑みをたたえ、鼓のような形の椅子に座る女性の俑。胸元
が大きく開いた衣装をまとい、右手には鳥を止まらせている。左手
は花を持っていたと想像されるが、現在は失われている。上衣は黄
釉、スカートは緑釉で彩られており、それぞれいわゆる蝋抜きの技
法による花文が配されている。染織品の文様を模したものであろう。
衣の紐の結び目や、スカートの皺までが丁寧に表現されており、高
く結った髷には一部に金箔が残存している。類品の中でもひときわ
細やかな作風を示しており、瑞々しい表情と気品にあふれている。
6
重要文化財
唐時代・7 世紀
白磁鳳首瓶
東京国立博物館蔵
頭部は蓋になっており、下に棒状の栓を作ることにより安定がは
かられている。嘴は鋭く、瞳には鉄絵具が点じられて前方を見据え
ており、緊迫感をたたえている。背面には紐を二本合わせた形の把
手が付けられている。純白できめ細かい素地に、わずかに黄みを帯
びた透明釉が薄く施されているが、
焼成時の火度が不足したためか、
光沢を失っている。
鳳凰の頭部をかたどった口をもつ鳳首瓶は、「胡瓶」の名で呼ば
れるように、ササン朝ペルシアの水注に起源をもつ器形とされてい
る。胴下部の台脚の形状は、金属器を写したようにも見えるが、底
裏に同心円状に一条の刻線があることから、ガラス器の形を模した
ものと考えられる。胴部の美しいふくらみがとくに印象的な、唐白
磁を代表する優品として知られる。
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特別展「遣唐使と唐の美術」
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2005 年 7 月 20 日(水)~9 月 11 日(日) 東京国立博物館