コンピュータ制御による大気中ガス成分の On

<トピックス>
コンピュータ制御による大気中ガス成分の On-site 無人測定
徳 島大学 大学 院ヘル スバ イオサ イエ ンス研 究部
2007 年の本誌 Vol. 24, No. 1, p. 3 においても指摘さ
れているように,コンピュータ制御は,近年の FIA
に必要不可欠なアイテムである.特に,研究室から
離れた場所で On-site 分析を行う場合は,装置の小
型・省力化だけでなく,いかに自動化されているか
が重要となってくる.環境汚染物質の連続モニタリ
ングを行う場合,最低 1 週 間はメ ンテ ナンス フリ
ー で観測 を続 けたい もの である .
2008 年春 に, On-site 無人測定が可能なアルデヒ
ド(HCHO)ガス自動分析装置が報告された 1).図 1 に ,
装置の概略図を示す.検量線作成時に必要なゼ
ロ ガス ,ノー トパソ コン (図 1 に は示 されて いな
い )お よ び 拡 散 ス ク ラ バ ー (DS)を 除 い た シ ス テ
ム全体は,ミニタワー型のパソコンケースに収
納 されて いる (寸 法 : 48 cm X 18 cm X 41 cm;
重 さ : 23 kg; 所 要 電力 : 105-125 VAC, 60 Hz,
150 W). また ,シリ ンジ ポンプ (SP), ガス 流量
調 節 器 (MFC), ソ レ ノ イ ド バ ル ブ (SV)な ど の 動
作 からデ ータ の取得 およ び HCHO 濃 度の算 出ま
で を 1 台のノ ートパ ソコ ンで制 御し ている .フ
ロ ーシス テム 自体は ,2007 年 の本誌 Vol. 24, No. 2,
p. 125 で紹介されているアンモニアガス測定用ハイ
ブリットフロー分析器, HFA (FIA の長所: 高感度,ハ
イスループットと SIA の長所: 省試薬消費量,長期間
メンテナンスフリーの両方を合わせもつフロー分析
器)2)と同じであるが,今回報告された HCHO ガス自
動分析装置には,さらに注目すべき点が 2 つある.
1 つ目は,検量線の自動作成機能が装備されている
点である(図 1 の左上部).60°C に保たれたチャンバ
ー(CC)内の HCHO パーミエーションチューブ(PT)か
ら発生した HCHO ガスを,流量が予めプログラムさ
れたゼロガスで希釈することにより,検量線の作成
に必要な HCHO ガスを On-site で得ることができる.
On-site 分析で最も面倒な作業の 1 つである検量線の
作成が自動化されているのである.また,本 システ
ムは,六方インジェクションバルブを装備して
い るので ,HCHO 溶液を 用いて 検量 線の作 成お
よびシステムの性能を確認することも可能であ
る . 2 つ目は ,シス テム が短時 間の 電力障 害(停
電 )に 対応して いる点 であ る.停電時 間が短 い場
合 (ノ ー ト パ ソ コ ン の バ ッ テ リ ー が 残 っ て い る
限 り ), 停 電 終 了 と 同 時 に シ ス テ ム が 再 起 動 し ,
サ ンプリ ング を自動 再開 できる .図 2 に ,停電
時 と停電 後の HCHO シグ ナルを 示す.瞬間的な
停 電から約 20 分間 の停電 まで,いず れの電 力障
害においても,電力の回復後にシステムは自動
で 再起動 し, 2 または 3 サ ンプリン グサイ クル
目からは信頼性のあるデータが得られている.
一方,現在使用されている多くの分析システム
は,停電後に電力が回復しても,分析を自力で
竹内 政 樹
再 開する こと はない .
本稿で紹介したようなコンピュータ制御によ
る検量線の自動作成機能と停電後の自動分析再
開 機能を 装備 した自動分析装置は, On-site 分 析
で その威 力を 大いに 発揮 するで あろ う.
図 1 HCHO ガ ス 自 動 測 定 装 置 の 概 略 図 (HCHO
ガスおよび溶液の流れ図)
MFC1&2, ガ ス 流 量 調 節 器 1&2; CR, ガ ス /溶 液 流
量 制 限 キ ャ ピ ラ リ ー ; CC, 検 量 線 作 成 用 HCHO ガ
ス 発 生 部 ; PT, HCHO パ ー ミ エ ー シ ョ ン チ ュ ー ブ ;
SV1&2, ソ レ ノ イ ド バ ル ブ 1&2; MT1, ガ ス 混 合
T; DS, 拡 散 ス ク ラ バ ー ; AS, HCHO ガ ス 吸 収 液
(10 mM H 2 SO 4 ); WT, 水 分 ト ラ ッ プ ; AP, エ ア ポ
ン プ ; HC, 保 持 コ イ ル ; IV, イ ン ジ ェ ク シ ョ ン バ
ル ブ ; SP1&2, 6-way バ ル ブ 付 き シ リ ン ジ ポ ン プ
1&2; SC, キ ャ リ ヤ ー 溶 液 (10 mM H 2 SO 4 );
MT2, 溶 液 混 合 T; DC, 反 応 遅 延 部 ; MC, 反 応 液
混 合 コ イ ル ; AA, 反 応 液 (酢 酸 ア ン モ ニ ウ ム ); PD,
反 応 液 (ペ ン タ ン ジ オ ン ); HR, 加 熱 反 応 器 ; DP,
気 泡 抜 き 部 ; FD, 蛍 光 検 出 器
図 2 停 電 時 と 停 電 後 の HCHO シ グ ナ ル
~20 ppbv HCHO.停 電 期 間 は 蛍 光 検 出 器 (図 1 の
FD)に 内 蔵 さ れ て い る LED の 発 光 強 度 を モ ニ タ
リ ン グ (低 下 )す る こ と に よ っ て 確 認
1) N. Amornthammarong, J. Jakmunee, J. Li. P. K. Dasgupta,
Anal. Chem., 78, 1890-1896 (2006).
2) I.-Y. Eom, Q. Li, J. Li, P. K. Dasgupta, Environ. Sci.
Technol., 42, 1221-1226 (2008).
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