ホルムアルデヒドガスの簡易発生法について (PDF: 31.7 KB)

愛産研ニュース
9 月号(2009.9)
HCHOガス濃度(volppm)
ホルムアルデヒドガスの簡易発生法について
1.はじめに
2008 年 10 月に、流通式試験法による光
触 媒 材 料 の ホ ル ム ア ル デ ヒ ド ( HCHO) ガ
ス 除 去 性 能 評 価 試 験 法 の JIS 規 格 ( JIS
R1701-4) が 制 定 さ れ ま し た 。 こ の 試 験 は
汚染ガスを試料に流通して分解性能を評価
する方法であり、試験中一定濃度の
HCHO ガ ス を 供 給 す る 必 要 が あ り ま す 。
こ の た め 、 他 の VOC ( 揮 発 性 有 機 化 合
物)などでは標準ガスボンベが用いられま
す 。 し か し 、 HCHO 標 準 ガ ス ボ ン ベ は 他
のガスに比べ高価で、不安定なため、簡易
な発生法による代替を検討しましたので紹
介します。 1)
2.発生方法
こ こ で 紹 介 す る 方 法 は HCHO 水 溶 液 に
空気を流通する方法です。用いた装置の略
図を図1に示します。バブラー内の
HCHO ガ ス は 、 ヘ ン リ ー の 法 則 に よ り 、
水 溶 液 中 の HCHO と 平 衡 に な っ て い る た
め一定濃度となります。バブラーは内容積
が 130ml のもので、30ml の水溶液を入れ
ま し た 。 流 通 空 気 量 は 25ml/min、 バ ブ ラ
ー の 温 度 は 25.0±0.1℃ と し ま し た 。 次 に
こ の 方 法 に よ る HCHO 発 生 条 件 と 発 生 ガ
ス濃度の関係を記します。
バブラー
50
40
0
2
4
6
8
10
時間(h)
HCHOガス濃度(vol ppm)
図2
HCHO ガス濃度の経時変化
80
60
40
20
0
0
2
4
6
8
10
HCHO水溶液濃度(mg/g)
図3
HCHO ガス濃度の水溶液中濃度依存性
洗気
ビン
電子式流
量制御器
60
HCHO濃度(vol ppm)
合成
空気
70
HCHO水溶液
45
35
25
22
23
24
温度(℃)
25
26
恒温水槽
図1
図4 HCHO ガス濃度の温度依存性
(HCHO 水溶液の濃度 4.9 mg / g)
HCHO 発生装置
発 生 す る HCHO ガ ス 濃 度 の 経 時 変 化 は
図 2の と お り で 、 少 な く と も 9 時 間 は 、
安 定 し て HCHO ガ ス を 発 生 で き る こ と が
わかりました。図3のとおり、発生する
HCHO ガ ス 濃 度 は 水 溶 液 中 濃 度 に 比 例 す
ることがわかります。温度に敏感で、図
4のとおり 1℃の変化でも大きく変化しま
す。
また、メタノールフリーのパラホルム
ア ル デ ヒ ド 水 溶 液 か ら HCHO 水 溶 液 を 調
製することにより、ほとんど不純物を含ま
ないガスを発生させることができました。
3.むすび
このように水溶液に空気を流通する方
法 は 、 長 時 間 一 定 濃 度 の HCHO ガ ス を 発
生することができます。また、水溶液の
濃度又は温度を制御することにより、発
生する濃度を変化させることができます。
これらの特徴を活かして、光触媒性能評
価以外にも一定濃度のホルムアルデヒド
ガスを必要とする種々の試験に利用する
ことができます。
参考文献
1) 杉 本 、 山 田 : 愛 知 県 産 業 技 術 研 究 所 研
究報告,7,22-25(2008)
工業技術部 材料技術室 杉本賢一(0566-24-1841)
研究テーマ:光触媒性能評価試験法の標準化
担当分野 :金属材料などの成分分析、光触媒材料の空気浄化性能評価
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