新興国市場をめぐる冒険の旅 - フランクリン・テンプルトン・インベストメンツ

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新興国市場をめぐる冒険の旅
マーク・モビアス著
ギリシャが将来性に富む新興国市場の一員となることを歓迎します。(2013/07/10)
2013 年 6 月、株価指数を世界的に提供しているモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)
は、ギリシャを今年後半以降「先進国」として分類しないことを明らかにしました。これにより、ギリシャは MSCI
の「先進国」としての分類ステータスを失う初めての国となります。1 興味深いことに、私がテンプルトン エマー
ジング株式グループの一員として調査を開始した 1987 年に、同国は「新興国」に分類されていました。ギリシャ
に関する最近のニュースは同国経済の先行きが更に悪化するというイメージをもたらしているかもしれません。
しかし、同国の再分類についての MSCI による説明は淡々としたものでした。
当初、MSCI 株価指数の株式ユニバースを「先進国」、「新興国」、「フロンティア」の各指数に分類する基準は、
各国の経済発展における様々な段階への到達度合いに応じて考案されました。「先進国」として分類されるた
めには、国民一人当たりの国民総所得(GNI)が、世界銀行による「高所得国(先進国)」としての基準値を 3 年
連続で少なくとも 25%上回らなければなりません。2 確認可能な世界銀行による直近の基準値は 2011 年時点
の 12,475 米ドルとなっており、MSCI による「先進国」に相当する額は約 15,600 米ドルとなります。ギリシャでは
過去数年にわたり深刻な景気後退に陥りましたが、同国の国民一人当たりの GNI はこの基準値を大幅に上回
っていました。3 実際に、「新興国」、「フロンティア」と定義されている国の中にもこの基準を上回っている国は
あるでしょう。したがって、ギリシャが「先進国」から外された要因は MSCI の経済発展の到達度合いによる基準
ではなく、海外投資家が投資するにあたり障壁が少ないなどの他の要因が重視されていることが判明したと考
えます。
ギリシャの悲劇
MSCI によると、国際株価指数がその目的を達成するためには、インデックス型の金融商品によるパッシブ運用
も含め、投資家が容易にかつ信頼を持ってその構成銘柄を取引できる必要があるとしています。4 こうした点
から、MSCI の各指数の構成国としての採用要件としては、市場の規模や流動性といった明確な基準に加えて、
外国人投資家に対する市場開放度、外国人投資家による本国への資金還流の妨げとなり得る外国為替の取
引規制、株式取引を促進する制度や仕組みの有無などやや主観的な目標など多くの基準があります。ギリシ
ャでは 2007 年以降株式市場が崩壊し、その後、一部の主要企業が、投資家が十分なポジションを構築するに
足りる時価総額や流動性を有する銘柄がほとんどないギリシャ株式市場を離れ他の市場に再上場したことに
1
MSCI 2013 年 6 月 11 日付プレスリリース「MSCI Announces the Results of the 2013 Annual Market Classification Review」 MSCI
データは全て原データにて提供されています。上記データは、MSCI が何ら保証するものではなく、いかなる場合にも、ここに掲載
されている MSCI データに関連する責任を負うことはありません。MSCI のデータを他の指標、有価証券、金融商品へ複写・転載
することは固く禁じられています。このレポートは MSCI によって承認、論評、作成されたものではありません。運用実績は過去の
ものであり、将来の運用成果等を保証するものではありません。インデックスは実際に運用されているものではなく、インデックス
へ直接投資することはできません。
2
2013 年 6 月版「MSCI Global Market Accessibility Review June 2013」、MSCI Market Classification Framework
3
世界銀行 2013 年版「世界開発指標」
4
上記のインデックスは実際に運用されているものではなく、インデックスへ直接投資することはできません。
巻末の「ご注意点」を必ずご覧下さい。
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より、MSCI 先進国指数の構成国としての適切な市場規模と市場へのアクセスに対する基準を満たせなくなりま
した。さらに、ギリシャの証券取引所を管轄する監督当局は他国が取り組んできた貸株や借株、株の空売りや
譲渡などに係る制度の整備を進めてこなかったことから、ギリシャ株式市場は相対的に取引が困難な市場とな
ったと思われます。
ギリシャは厳しい状況にありますが、我々は長期的にみて潜在的な投資機会を見出せると考えています。しか
し、ギリシャが再び新興国の仲間入りをするからと言ってすぐにギリシャ株式に投資するつもりはありません。
我々の投資哲学ではインデックスの構成比率の制約を受けることなく、その国の経済ファンダメンタルズを考慮
に入れつつも、主に個別企業の長期的な価値や成長見通しを重視して投資判断を行います。我々はギリシャ
の厳しい経済環境が好転しているかも知れない微かな兆候があるとみており、投資の機会をうかがっています。
もちろん、割安であると判断できる銘柄を見出せることが前提です。
中国も MSCI に追加?
ギリシャの再分類が市場の注目を集めた一方で、MSCI が発表した内容の中でおそらく最も印象的であったの
は、実際の変更を伴わなかったものの、将来的な採用の可能性について調査を開始するとの内容でした。中
国の国内市場向けの「A 株」が MSCI 指数の構成銘柄に採用されることはまだ先のことであると思われます。し
かし、「A 株」の市場規模は外国人投資家向けの「B 株」や「H 株」と比べてはるかに大きく、「A 株」がある時点で
構成銘柄に採用される可能性があるという見方は極めて重要な意味を持つとみています。
MSCI の説明では「A 株」を MSCI 指数に採用する上で非常に大きな障害が存在することを強調しています。特
に、海外投資家に対する中国本土への投資や取引機会を提供する手段としての「適格外国機関投資家」制度
に限界があること、外国為替規制が継続されていること、税制が不透明であることなどが挙げられました。しか
しながら、投資家として中国本土への投資は常に意識し、その巨大でダイナミックな市場に現状よりも容易に投
資できるようになることを心待ちにしたいと思います。
分類ステータスの引上げ
一方で、MSCI は韓国と台湾について、「先進国」に引き上げるかどうかを引き続き検討しています。経済の発
展や市場の厚みの点においては、両国とも引上げに値するとみられるものの、外国為替市場や銘柄コード体
系などの特異性が機関投資家の間で懸念されていることから、両国は MSCI の市場アクセスに関する基準を満
たしていません。両国経済は近隣の新興諸国との緊密な関係にあり、新興国指数の構成国として存在すること
は理にかなっていると考えます。
中東地域では、長らく期待されてきたペルシャ湾岸のカタールとアラブ首長国連邦の「フロンティア」から「新興
国」へのステータス引上げがようやく承認されました。一方、モロッコは市場へのアクセスのしやすさに問題が
あるとして「フロンティア」に引き下げられました。
MSCI の国別の市場分類に変更があっても我々の新興国やフロンティア市場を投資対象としたポートフォリオ
の保有銘柄にすぐに大きな変更はないということを改めてお伝えいたします。こうした変更は引き続き興味深く
巻末の「ご注意点」を必ずご覧下さい。
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みていますが、MSCI の分類変更の一部は 2014 年まで実施されず、またそれとは関係なく、急激な投資方針の
変更は我々の運用スタイルではありません。引き続きこうしたダイナミックな市場に投資家の注目が集まること
を願っています。
巻末の「ご注意点」を必ずご覧下さい。
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ご注意点
●当資料は、フランクリン・テンプルトン・インベストメンツ株式会社がマーク・モビアス博士のブログを抜粋・
翻訳したものです。オリジナルの英語版につきましては http://mobius.blog.franklintempleton.com/をご覧
下さい。
●当資料は、マーク・モビアス博士の意見や分析を抜粋・翻訳したものであり、情報提供のみを目的として
作成されたものです。当資料に記載されている内容は、英語版原文の投稿時点のものであり、市場や経
済環境の変動により予告なく変更されることがあります。当資料に記載されている意見等はいかに証券
等を分析しているかについての説明を目的としており、投資助言や特定の証券、戦略、もしくは投資商品
の推奨を目的としたものではありません。投資の最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いい
たします。
●すべての投資はリスクを伴い、投資元本を割り込むことがあります。特に外国証券への投資は、為替変
動、経済や政治情勢の変化などの影響を受けます。新興国市場への投資に当たっては、同様のリスクが
高まるとともに、市場規模が小さいこと、流動性に乏しいこと、証券市場を支える法的、政治的、商慣行
的、社会的な枠組みが十分ではないことなどのリスクを伴います。こうした投資においては年ごとに大き
な値動きを伴う可能性があります。株式等の有価証券の価格は、個別企業、特定の業種、全般的な市場
環境に影響を与える様々な要因により、急激に変動することがあります。
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