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芸術科美術学習指導案
1 題材名
(美術Ⅰ・映像メディア)構想・撮影〈1・2/8〉
「日常の中の美—カメラ付携帯電話を用いた作品の制作—」
2 題材について
高校生を取り巻くメディア環境は,この10年で飛躍的に向上した。なかでもカメラ付携帯電話(以下
カメラ付携帯)の登場とその進歩は,目を見張るものがある。
このカメラ付携帯を授業で用いる際の利点は,第一に,大部分の高校生が持っていること,第二に,日々
の生活で常に使用していること,第三に,パソコンを用いた加工が簡単であることが挙げられるであろう。
そのため,新たに加わった映像メディア表現の授業に,カメラ付携帯を活用しない手はないと思う。
よって本実践では,身近な機器であるカメラ付携帯で撮影した写真を用いて,パソコンで画像処理を施
し,高校時代の瞬きを切り取るような絵はがきサイズの作品を制作させることにした。
ただし,カメラ付携帯による制作は,パソコンを用いることで直感的で直接的な表現が可能であるがゆ
えに,写真を撮り加工するだけとなり単調でつまらないものになりがちである。また,より高いデザイン
を志向する目的意識が弱くなるという課題も残る。そのため今回は,詩集や歌詞などから好きな詩や言葉
を自ら選び,写真の撮影や作品の制作に反映させることを条件にした。このことにより,構図や文字の大
きさなどデザインを検討する意識を生徒に芽生えさせることをねらうと同時に,年賀状など実生活の中で
この題材を活用させることをねらった。
※ 本題材を取り扱うにあたって,高校生の携帯電話所持について様々な議論があるかとは思うが,今回
は美術の道具(デジタルカメラ)として取り扱うものであることを付け加えたい。もし学校内への持ち
込みが認められていない場合は,長期休暇時に撮影し,データのみを学校のパソコンに入れて作品を制
作させるなど対応してほしい。また,カメラ付携帯を所持していない生徒への配慮も必要である。代わ
りにデジタルカメラを所持しているかなど事前の調査をしてほしい。
3 題材の目標
⑴ 「美術」におけるカメラ付携帯やデジタルカメラ,パソコンの持つ特性や可能性に関心を持ち,最大
限に生かそうとする。
(関心・意欲・態度)
⑵ 「ことば」を写真の撮影や作品の制作に反映させ,色彩や構図を工夫するとともに,アプリケーショ
(芸術的な感受や表現の工夫)
ンソフトの様々なツールを応用し,独創性のある作品に仕上げることができる。
⑶ カメラ付携帯やデジタルカメラを活用して身近なモチーフを撮影し,そのよさや美しさを作品として
表現することができる。
(創造的な表現の技能)
⑷ 自他の作品を鑑賞し,それぞれのよさや美しさについて自己の意見を述べるとともに,今後の生活に
生かすことができる。
(鑑賞の能力)
4 題材の評価規準
関心・意欲・態度
芸術的な感受や表現の工夫
創造的な表現の技能
鑑 賞 の 能 力
映像メディア機材を
創意工夫して活用する
とともに,作品の価値を
他者に伝え,分かち合お
うとする。
感性を働かせて対象
や様子などをよく見つ
め,よさや美しさを感じ
取り,表現を構想するこ
とができる。
機材の特質や使用効
果・伝達効果を理解し,
自己の表現意図に合わ
せて効果的に表現する
ことができる。
他者の作品を鑑賞し,
表現のよさや作品の美
しさについて,自己の意
見を述べることができ
る。
5 指導計画(全8時間)
(☆印はITを活用する場面を示す。
)
次
時
主 な 学 習 活 動
構
導
想
1
・
撮
2
入
影
展 編
3
集
・
4
構
成
5
・
完
6
開 成
終 鑑
7
末 賞
8
教 師 の 支 援
1 カメラ付携帯(デジカメ)を利用した作 ・ 構想・撮影から完成までのプロセスを提
品の制作過程について,授業計画表をも
示し,題材の全体像を把握させる。
とに理解する。
2 学校内外の風景や人物,モチーフを撮影 ・ 構図や着想に変化のある写真の例を写真
する。
集や教科書から示し,柔軟で瑞々しい感性
で取り組むための支援をする。
3 詩集や歌詞などから好きな言葉や詩を ☆ 「ことば」と写真の組み合わせによって,
選ぶ。
(自分の「ことば」で表現してもよ
心に残る作品ができることを,参考作品で
い。
)
提示する。
1 JTrim(フリーのアプリケーションソフ ・ JTrim のダウンロードについて説明し,
ト)をダウンロードする。
(※1)
支援する。
2 撮影した写真データを学校のパソコン ・ 携帯電話編集ソフトか,MiniSDカード
に取り込む。
などメディアを介する方法でパソコンに
取り込む支援をする。
・ フォルダを用いてデータの管理をさせ
る。
3 JTrim を活用しながら写真データと「こ ・ 「ことば」に合った写真がない場合は,
とば」を組み合わせ,作品を制作する。
授業の合間などに再度撮影するようアド
バイスする。また,今ある写真を基にして
直感的に「ことば」を探し出すなど,柔軟
4 JTrim のエフェクト機能を説明したサ
な思考を持つよう説明する。
イト(※2)を閲覧し,機能について理 ・ JTrim のエフェクト機能を用いて,写真
解を深めるとともに,作品の制作に活用
を様々に加工し,独特の表現を探ることが
する。
できるよう支援する。
5 写真と「ことば」の組み合わせについて, ☆ 構図の組み合わせを効果的に行うこと
フォントの大きさ・色,レイアウトなど
ができるように,参考作品を提示しながら
構図の検討を深める。
説明する。
6 完成に向けて様々なパターンを検討し, ・ 全体のレイアウトについて微妙な調整を
作品を仕上げる。
し,作品を完成させるよう支援する。
7 作品鑑賞用紙に作品の題名や思いなど ・ デジカメプリント店で葉書サイズにプリ
を記入する。
ントし,作品集にまとめる。
1 自他の作品を鑑賞し,作品に込められた ・ 互いの作品を鑑賞することができるよう
思いや工夫したことなどについて意見を
支援する。また,プリントした作品集を配
出し合う。
布する。
※1 Jtrim
※2 Enjoy JTrim
作権者名:WoodyBells URL:http://www.woodybells.com/
作権者名:flipflop
URL:http://www5f.biglobe.ne.jp/ ayum/ejtrim.html
6 本時の実際
⑴ 目 標
・ 構想から完成までのプロセスを学習し,題材の全体像を理解することができる。
・ 身近なモチーフを撮影し,そのよさや美しさを作品として表現することができる。
・ 作品に織り込む「ことば」について考察し,効果的に活用することができる。
⑵ 準 備
生徒・・・教科書,筆記用具,カメラ付携帯またはデジタルカメラ,詩や歌詞が掲載された資料
教師・・・教科書,授業計画表(生徒配布)
,教師用パソコン,プロジェクターなど
⑶ 実 際(1・2時)
(☆印はITを活用する場面,◎は評価を示す。
)
過 時間
備
考
学
習
内
容
指 導 上 の 留 意 点
程 (分)
1 本題材の学習内容と今後の流 ・ 日常生活に隠れた美を探しだして パワーポイント
れについて授業計画表をもとに
撮影し,現在の心情や感性に合った プロジェクター
確認し,本時の学習内容を理解
「ことば」とともに作品に仕上げる 授業計画表
する。◎
本題材の流れについて説明する。
導
☆
構図や着想に変化のある写真の
2 撮影のアイディアや構図,着
例を,写真集や教科書などから提示
15
想について参考作品をもとに学
し,柔軟で瑞々しい感性を持って撮
習し,独創性のある写真にする
影するよう説明する。また,参考作
入
構想を練る。
品を提示し,撮影のアイディアや構
図,着想について説明する。
撮影する際の注意事項やマナ ・
ーについて理解し,可能な範囲で
幅広い種類の写真を撮影する。◎
4 極端に低い視点など日常生活
展
の視線からはずれた様々な構図 ・
を試して撮影する。また,他の
授業の妨げにならないように気
80
をつけて撮影する。◎
5 美術教室に戻る。
6 撮影した内容をふまえ,詩や ・
開
歌詞など持参した資料や,独自
に考えた心に留まる短いフレー
ズを書き出す。◎
3
7
終
5
末
撮影する際の注意事項を説明す
る。また,校内で撮影する際のマナ
ーについても理解させる。
校内をまわり,風景だけでなく友
達をモデルに撮影することなど撮
影のアドバイスをする。
美術教室に戻るように指示する。
本時のまとめをし,次時の予 ・ 本時のまとめをし,次時の予告を
告を聞く。
する。また,次時までに色々な場所
や時間帯に写真を撮りためておく
こと,写真に合った「ことば」を書
き出しておくことを指示する。
⑷ IT活用の効果
わかりやすく提示し,題材の全体像について十分に理解を深めさせることができる。また,作品制作
への意欲や,アイディアの創造を手助けすることができる。