協会誌見本(PDF

 年12月20日発行(毎月 1 回20日発行)第88巻 第12号
平成27
SKYOAO88(12)405〜436(2015) ISSN0010-180X
特集/多様な可視化の世界
12
S
A
M
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LE
Vol. 88
DEC. 2015|No.
色材と界面制御
一般社団法人
A
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平成 27 年 12 月 20 日
正会員各位
一般社団法人 色 材 協 会
会 長 森 史 郎
平成 28 年度通常総会招集ご通知
平成 28 年度通常総会を下記のとおり開催いたしますので,ご出席くださいますようご案内申し上げます。
ご出席の方は来る 1 月 29 日(金)までに,別途送付する返信ハガキにてお申し込みください。なお,総
LE
会の議決には定款により正会員の 1/2 以上の出席を要しますので,ご欠席の場合には,同じく返信ハガキの
「議決権行使または代理行使書」に会員名を記入,捺印のうえ,必ずご返送いただくようお願い申し上げます。
記
日 時 平成 28 年 2 月 26 日(金)午後 2 時 30 分
場 所 東京塗料会館 地階会議室(東京都渋谷区恵比寿 3–12–8 TEL 03–3443–2811)
JR恵比寿駅下車東口より動く歩道経由 徒歩約 10 分
P
議 題
M
[決議事項]
第 1 号議案 平成 27 年度(平成 27 年 1 月 1 日~平成 27 年 12 月 31 日)に係る報告
1-1 平成 27 年度に係る事業報告および計算書類
1-2 平成 27 年度に係る監査報告書
第 2 号議案 平成 28 年度役員選任の件
(役員候補者リストは色材協会誌 12 月号,およびホームページをご参照願います)
A
[報告事項]
第 1 号報告 平成 28 年度事業計画および収支予算
1-1 平成 28 年度事業計画書
1-2 平成 28 年度収支予算書
S
[表彰式]
2015 JSCM Most Accessed Paper/Review Award 選考結果発表と表彰
通常総会終了後,引き続き同会議室にて以下の行事を開催いたしますので,会員多数のご参加をお待ちして
おります。
1.特別講演会 午後 3 時 50 分(聴講無料)
演 題 「調整中」
講 師 元南極越冬隊長,元国立極地研究所 教授
渋谷 和雄 氏
2.懇 親 会 講演終了後,午後 5 時から懇親会を開催いたします。
(会費 6,000 円:当日受付にお支払ください)
平成 27 年 12 月 20 日
正会員各位
一般社団法人 色 材 協 会
会 長 森 史 郎
平成 28 年度 役員候補者リスト
理 事(任期 2 年)
候補者
番号
浅田 匡彦
DIC㈱
候補者
番号
関 西 在 住
26
今中 信人
大阪大学
27
岩崎 光伸*
近畿大学
28
蒲田 佳昌
テイカ㈱
P
1
関 東 在 住
LE
今年度末での現理事の任期満了にともない,平成 27 年 11 月 25 日の理事会にて下記候補者の選考が承認さ
れました。
(本年度選任され,平成 28 年度まで任期のある,金丸理事,小山理事,柴田(裕)理事,滝沢理事,戸堀理事,
中井理事,米山理事,岡崎理事,奥理事,田中理事を除きます。)
次期理事は一般社団法人の定款 22 条により,来る平成 28 年 2 月 26 日(金)の通常総会の「第 2 号議案」と
して,下記候補者より選任されます。
なお,総会にご欠席の場合は「招集ご通知」でご案内のとおり,別途送付する返信ハガキの「議決権行使
または代理行使書」に会員名を記入,捺印のうえ,必ず返送いただくようお願い申し上げます。
2
浅見 博
3
有村 隆志
東京インキ㈱
4
大塚 英典*
東京理科大学
29
小林 敏勝
小林分散研究所
5
岡本 久男*
大日精化工業㈱
30
鈴木 健弘
東洋インキSCホールディングス㈱
6
小川 修*
31
深澤 明
サカタインクス㈱
7
小川 哲夫*
関西ペイント㈱
32
南 秀人
神戸大学大学院
8
奥田 貞直
理想科学工業㈱
33
八木 繁幸
大阪府立大学大学院
9
神﨑 敬三
東洋製罐㈱
10
木村 秀一*
東洋インキSCホールディングス㈱
(国研)産業技術総合研究所
M
(一社)日本塗料工業会
小嶋 芳行
日本大学
酒井 秀樹
東京理科大学
13
佐野 秀二*
大日本塗料㈱
14
柴田 雅史
東京工科大学
15
鈴木 昇
宇都宮大学大学院
34
磯部 薫
石原産業㈱
16
中島 章
東京工業大学大学院
35
髙橋 鉱次
名古屋市工業研究所
17
中嶋 由元
トーヨーケム㈱
36
田口 義高
中京油脂㈱
18
長嶋 順一
㈱井上製作所
37
長岡 秀憲*
トヨタ自動車㈱
19
橋本 和明
千葉工業大学
38
松居 正樹
岐阜大学
20
松本 眞嗣
淺田鉄工㈱
39
室内 聖人
大日本塗料㈱
21
光宗 真司
22
村上 拓郎
23
山中 俊雅
24
山辺 秀敏
住友金属鉱山㈱
25
吉田 健介*
花王㈱
S
A
11
12
候補者
番号
中 部 在 住
BASFジャパン㈱
(国研)産業技術総合研究所
㈱T&K TOKA
(50 音順)
*:新任 略称 ㈱ :株式会社
(国研)
:国立研究開発法人
(一社)
:一般社団法人
色材協会誌
Vol.88
DEC. 2015 |No.
色材と界面制御
12
特集 多様な可視化の世界
目 次
特集にあたって 香山真理子 ・・・ 405
LE
解 説
生物発光酵素を用いた分子イメージング技術の進歩 金 誠 培
407
藤 井 理 香 ・・・
皮膚のバリア機能および水分量の可視化 勝田雄治
412
江川麻里子 ・・・
総 説
光増感剤を用いたがんの光線力学治療とがんの診断 小倉俊一郎 ・・・ 416
超音波による欠陥と物性の可視化 燈 明 泰 成 ・・・ 419
大 竹 淑 恵 ・・・ 424
テラヘルツ波による分光イメージング 山 崎 良
加藤三樹矢
村 手 宏 輔 ・・・ 428
今山和樹
川瀬晃道
M
P
理研小型中性子源 RANS による非破壊可視化技術 部会・研究会活動報告
第 2 回インクジェット部会報告 奥 田 貞 直 ・・・ 434
435
会 報 436
S
A
文献紹介 「J-STAGE」での論文公開について
色材協会誌に掲載された論文・資料・解説・総説および講座は,論文公開サイト「J-STAGE」で公開されています。印刷雑誌では白
黒で掲載された図版もカラーでご覧いただけます。ぜひともご利用ください。
www.jstage.jst.go.jp/browse/shikizai/-char/ja/
複写される方に
本誌に掲載された著作物を複写したい方は,公益社団法人 日本複製権センターと包括複写許諾契約を締結されている企業の従業員
以外は,図書館も著作権者から複写権等の行使の委託を受けている次の団体から許諾を受けて下さい。なお,著作物の転載・翻訳のよ
うな複写以外許諾は,直接本会へご連絡下さい。
〒107–0052 東京都港区赤坂9–6–41 乃木坂ビル3F
一般社団法人学術著作権協会 TEL 03–3475–5618 FAX 03–3475 –5619 E–mail : info@jaacc.jp
アメリカ合衆国における複写については,次に連絡して下さい。
Copyright Clearance Center, Inc. 222 Rosewood Drive, Danvers, MA 01923 USA Phone:
(978)750–8400 FAX:
(978)750–4744
JOURNAL OF THE JAPAN SOCIETY OF COLOUR MATERIAL
Journal of the Japan Society of Colour Material
(SHIKIZAI KYOKAISHI)
Vol. 88, No. 12, DEC., 2015
The Special Issue / The Diverse World of Visualization
LE
Contents
Introduction
Mariko Kohyama ··· 405
Current Topics ;
Recent Advances in Molecular Imaging Technologies with Luciferases
Sung Bae Kim and Rika Fujii ··· 407
Visualization of the Barrier Function and Water Content of Skin
P
Yuji Katsuta and Mariko Egawa ··· 412
Review ;
M
Cancer Therapy and Diagnosis Using Photosensitizers
Shun-ichiro ogura ··· 416
Visualization of Defects and Physical Properties by Ultrasound
Hironori tohmyoh ··· 419
Non-Destructive Visualization Technique for the RIKEN Compact Neutron Source RANS
Yoshie otaKE ··· 424
A
Spectroscopic Imaging Using Terahertz Waves
S
Ryo yamazaKi, Mikiya Kato, Kosuke muratE, Kazuki imayama and Kodo KawasE ··· 428
Notice about photocopying
In order to photocopy any work from this publication, you or your organization must obtain permission from the following
organization which has been delegated for copyright for clearance by the copyright owner of this publication.
Except in the USA
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6–41 Akasaka 9–chome, Minato–ku, Tokyo 107–0052, Japan
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In the USA
Copyright Clearane Center, Inc.
222 Rosewood Drive, Danvers, MA 01923 USA Phone :(978) 750–8400 FAX:(978) 750–4744
Japan Society of Colour Material
Tokyo Toryo Kaikan Bldg. 2F 12–8, 3–Chome, Ebisu, Shibuya–ku, Tokyo 150–0013, Japan
405
―特集 多様な可視化の世界―
特集にあたって
DIC ㈱ R&D 本部 先進評価解析センター 香山真理子
可視化技術として,最も古いものは顕微鏡ではないでしょうか。世界初の光学顕微鏡は,1590 年にオランダで
LE
発明され,ガリレオも顕微鏡を開発したとされています。「Microscope」という言葉はガリレオの友人が初めて使
用したとも言われています。一方,日本では1914 年に初めて国産の顕微鏡が製造されてから,今年は100 周年を
迎える節目の年でもあります。肉眼で見えないものを見るという永遠の課題に対し,顕微鏡はその線源を光から,
超音波,電子線,X 線,中性子と拡げ発展してきました。身近な例としては,X 線による空港での手荷物検査や
胎児の超音波エコー観察があります。さらに,近年のデジタル技術やセンサーの発展により,高分解能,高精細,
高感度へと進化しています。
そして,色材開発分野への応用として,塗膜後の表面粗さや膜厚むら,フィラーの分散性,配向性の評価に用
いられ,これまでわからなかった現象の解明や物質特性の把握,製品改良に活かされています。さらには,静的
な観察だけでなく,動的挙動解析技術の研究も進んでいます。たとえば,放射光施設での高輝度 X 線や,中性子
P
散乱法による塗膜の乾燥過程の動的挙動解析が挙げられます。
また,ライフサイエンス分野では,生体組織の形態や分子ダイナミクスの解析,また病態の検出のため,非侵
襲的なイメージング技術が必要とされています。そこで,蛍光プローブにより分子を標識する方法やラマン分光
法,光音響トモグラフィなどの光を用いたイメージング技術が注目を浴びています。
M
本特集では,おそらく読者の方々にあまり馴染がないであろう可視化技術を中心に取り上げました。生物発光
酵素やテラヘルツ波のように,初めて目にする言葉があるかもしれませんが,ぜひご一読ください。ほかの分野
で使われている可視化技術を取り入れることで,新たな発見があるかもしれないからです。本特集号が皆様の技
術活動でのイノベーションを起こすきっかけになれば,幸いです。
最後に,本特集におきまして,ご多忙の中,ご執筆いただきました皆さま,また,ご協力いただきました関係
S
A
者の方々に厚くお礼申し上げます。
-1-
406
色材協会編集出版物のお知らせ
色材工学ハンドブック (新装版) B 5 判 1508頁 定価 51,450 円
Ⅰ 色材工学の基礎 Ⅱ 色材各論 色材の沿革・色材の科学
Ⅱ―Ⅰ 顔料 総論・一般的性質・無機顔料・有機顔料・機能性色素・表面処理・プラスチック
用着色剤
LE
Ⅱ―Ⅱ 塗料 総論・原材料とその基本特性・硬化方式と樹脂・塗料形態・特殊機能塗料・塗装
Ⅱ―Ⅲ 印刷インキ 総論・印刷インキの特性・印刷インキの原料と製造方法・印刷インキの安
全性・印刷インキの試験方法および分析方法・各論
Ⅱ―Ⅳ 記録材料 総論・感熱記録材料・感圧記録材料・電子写真材料・磁気記録材料・光記録
材料・その他の記録材料
Ⅱ―Ⅴ 化粧品 総論・化粧品原料・化粧品用色素・化粧品各論
P
Ⅱ―Ⅵ 絵具 総論・絵具原料各論・各論
Ⅱ―Ⅶ 安全衛生 関係法規とその概要・労働安全衛生法の法体系
申込先 ㈱朝倉書店編集部
M
〒 162-0814 東京都新宿区新小川町6-29 TEL 03-3260-0141 FAX 03-3260-0180
A 5 判 600頁 色材協会会員特別価格 10,000円(送料・税込み)
塗料用語辞典
定価 11,500円
A
・基本用語から境界・応用領域の用語まで 5500 語収録
・原料,塗料,塗装,機能(用途)
,物性,試験,化学用語および周辺分野の重要語を網羅
・研究・技術者 100 余名が,高度で専門的な内容を平易に解説
S
・化学物質については,化学式・構造式を示した
・図・表を豊富に挿入し,読者の理解の助けとした
・収録語には対訳英語を付し,巻末に英語索引を設けた
・実務家・技術者から初学者まで利用できる総合辞典
申込先 技報堂出版㈱
〒 101– 0051 東京都千代田区神田神保町 1–2–5 和栗ハトヤビル6F
TEL 03–5217–0885(営業) FAX 03–5217–0886
-2-
407
解 説
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 88〔12〕,407–411(2015)

生物発光酵素を用いた分子イメージング技術の進歩
金 誠 培*,†・藤 井 理 香*
*国立研究開発法人産業技術総合研究所つくばセンター西事業所 茨城県つくば市小野川 16-1(〒 305-8569)
† Corresponding Author, E-mail: [email protected]
(2015 年 7 月 23 日受付,2015 年 8 月 6 日受理)
LE
要 旨
最近 20 年間,生体および生細胞内分子現象のイメージング技術は著しい発展を遂げてきた。この発展をけん引した背景には優秀な
発光標識(蛍光タンパク質と生物発光酵素)の樹立があり産業的な用途を拡大している。蛍光タンパク質はカメラやレーザーなどの
光学系技術と融合し,今日においては単一分子イメージングも可能な技術的進歩を遂げている。一方,ホタルルシフェラーゼに代表
される生物発光酵素は,抗体の発光団,生体の生物発光イメージング(BLI)や各種バイオアッセイのレポータータンパク質として
バイオ産業全般に利用されている。このように蛍光タンパク質と生物発光酵素を用いた生体内分子イベントのイメージングは,特異
的かつ定量的にできる点で,従来の生体イメージング技術であるMRI,PET,CT,Ultrasoundなどとは大きく区別される。これら従
来技術は,非特異的な分子現象(例:核スピン,放射線,音響)に基づいており,いずれも物理的,定性的,低感度である。本総説
では,生物発光酵素を基盤とした最近の分子イメージング技術の進歩と研究成果を簡略にレビューする。
1.はじめに
P
キーワード:生物発光,イメージング,発光標識,生物発光プローブ,生物発光酵素
離されたのが1962 年頃であった5)。その後,しばらく停滞して
いた生物発光研究が大きく動いたのは,FLucの結晶構造が取
れた頃からである6)。同じ時期にGFPの結晶構造も解析され7),
発光生物が放つ発光に対する好奇心は紀元前 3 世紀の記録
M
にも記されているほど古いテーマである。ところが,実際
の生物発光の化学的な原理が明らかになったのは20 世紀に
今日に至る約 20 年間のルミネセンスの時代の幕開けとなった
(図 -1(B)
,挿入図a)。
入ってからである1)。生体からの冷光という意味で生物発光
生物発光は化学発光(chemiluminescence)の一種である。す
(bioluminescence)という言葉が初めて使われたのは1916 年頃
なわち,化学エネルギーにより励起された電子が基底状態に戻
のHarveyの論文に由来する2)。自然界には,生物発光(化学発
る際に放つ光である(図 -1(A)
,挿入図a)
。生物発光は,バク
光の一種)以外にも蛍光,りん光,電界発光など,多様なルミ
テリアから脊椎動物である魚類に至るまで幅広い生物種で見ら
ネセンス(冷光)現象が存在している(図 -1(A))。
れる現象であるが,遺伝学的な相関性が乏しいと言われている。
そもそもなぜ発光生物が発光能を獲得したかについてはさまざ
が1956 年と1957 年にMcElroyらによりそれぞれ分離された3,4)。
まな起源説がある。発光動物種間の遺伝的な相関性が乏しいこ
その後,オワンクラゲから“Photoprotein”と言われているイ
とから,生物発光の起源を系統分類学的に推論することは困難
クオリンが緑色蛍光タンパク質(GFP)との複合体の形で分
である8)。ほかに生物発光の起源に関する有力な説として,
「酸
9)。この説によれば,
素スカベンジャー説」がある(図 -1(B)
)
A
ホタルルシフェラーゼ(FLuc)と基質であるルシフェリン
〔氏名〕 きむ すんべ
〔現職〕 国立研究開発法人産業技術総合研究所エネ
ルギー環境領域研究戦略部 企画主幹(兼)
環境管理研究部門環境計測技術研究グルー
プ 主任研究員
〔趣味〕 囲碁,自転車乗り
〔経歴〕 2004 年東京大学理学系研究科化学専攻博士
課程修了(理学博士)。2005~2009 年産業技
術総合研究所(産総研)特別研究員。2010
~2012 年 産 総 研 研 究 員( 定 年 ト ラ ッ ク )
。
2013 年より現職(主任研究員)。
S
原始地球大気環境が無酸素から有酸素環境に移行する際,有気
呼吸の副産物である有害酸素種の解毒機構として生物が獲得し
た機能が生物発光である。実際,すべての生物発光は,酸素種
を消費するという共通点を有する。
生物発光の実用的利用は,発光生物からの発光酵素の遺伝子
クローニングが成功したことから急速に用途を拡大してきた。
最近 20 年の生物発光研究の歴史を辿ってみるとまず自然界か
〔氏名〕 ふじい りか
〔現職〕 国立研究開発法人産業技術総合研究所エネ
ルギー環境領域環境管理研究部門環境計測
技術研究グループ テクニカルスタッフ
〔趣味〕 読書
〔経歴〕 長崎大学大学院生産科学研究科博士後期課
程修了。博士(学術)。国立研究開発法人農
業生物資源研究所特別研究員など。
ら生物発光酵素を樹立し,その遺伝子組み換えにより発光プ
ローブ化する。さらに発光プローブを生体イメージングや診断
装置に応用する方向で研究が進行されてきた。この3 者は生物
発光の三本柱として当該分野を支えてきた。本稿では,この生
物発光の三本柱を背景に,生物発光酵素を用いた分子イメージ
ング技術を概説する。
-3-
© 2015 Journal of the Japan Society of Colour Material
408
解
説
(A)
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 88〔12〕(2015)
(B)
白熱
(Incandescence)
地球の歴史
蛍光
❶光発光
酸素濃度の急激な増加
(fluorescence)
Photoluminescence
リン光
(phosphorescence)
❷電界発光
冷光
(luminescence)
Electroluminescence (例、発光ダイオードLED)
❸化学発光
-
生物発光
(chemiluminescence)
a
(bioluminescence)
a
S1
GFP
励起
熱
電子
図 -1
RLuc
S0
LE
光
FLuc
発光の分類と地球環境における発光生物の出現に関する考察。
(A)励起源を基に分類した発光の種類。発光源が光か,電子か,
化学エネルギーかによって発光の名称が異なる。挿入図aは発光にかかわる励起と基底状態を示す概念図。
(B)進化の過程に
おける発光生物の出現を説明する発光スカベンジャー説の模式図。地球の酸素濃度の増加にともない,副産物として産生され
る酸素種の解毒作用に生物発光は貢献した。挿入図aは代表的な蛍光タンパク質(GFP)と生物発光酵素(FLuc & RLuc)の
立体構造を示す。
2.生物発光酵素の樹立と改良
あった。これらの発光酵素は,最初にガウシアルシフェラーゼ
(GLuc)が2002 年に樹立され15),次に北極海産Metridia longa
からの発光酵素(MLuc)が樹立され実用化された16)。近年,
P
生物発光は,バクテリア,キノコ,クラゲ,魚など,多くの
生物種から見られる現象であり,多くの生物発光酵素がそれ
日本の北海道の南海の深海より多数のコペポーダ由来のルシ
から樹立されている。世間一般にアメリカのホタル(Photinus
フェラーゼ類が樹立されている17,18)。
深海発光プランクトン由来の発光酵素の性能改良のために変
広く知られているが,世界的にみてもホタルだけで2,000 種類
異導入研究が行われてきた。Kimらは,「蛍光タンパク質の蛍
が知られているほど多様である10)。一般的に発光生物から生
光団」と「海洋生物発光酵素の基質(セレンテラジン)
」との
M
pyralis)やゲンジボタル(Luciola cruciata)由来の発光酵素が
化学構造的類似性に注目した。今までの緑色蛍光タンパク質
の発光器を超低温条件下で破砕しmRNAを抽出する。逆転写酵
(GFP)の変位導入の成功例を模倣してコペポーダ由来ルシフェ
素を用いてmRNAからcDNAを合成する。このcDNAを発現ベ
ラーゼに変異導入したことで,より高輝度で安定的に発光する
クターに組み込み,細胞に導入し発現させる。一定時間後,生
変異体が樹立できた19)。また,Kimらは蓄積された発光プラン
物発光を基質共存下で確認する。この手法を用いてホタル,ウ
クトン由来の発光酵素の配列を整列し,頻度の高いアミノ酸配
ミシイタケ,コメツキムシ,ウミボタル,深海プランクトンな
列を抽出することで熱力学的に安定的な人工配列を決定した。
ど多様な発光生物から生物発光酵素が樹立されており,その数
この配列を折り畳むと3 列に整列できる。整列した上下のアミ
は年々増えている。
ノ酸の相同性を上げることにより従来の発光酵素と遺伝的に異
A
物発光酵素を樹立する方法は以下の手順を辿る。まず発光生物
さらに天然の生物発光酵素の発光性能を改善するために変異
なる新種(平均約 70 %前後の相同性)を樹立し人工生物発光
体を人為的に合成する場合が多い。おもに輝度や発光安定性,
酵素(ALuc®)と名付けた20,21)。ALuc®は,従来の海洋生物由
発光波長の改良を目的とする。FLucは赤色発光変異体など,
来の発光酵素より高輝度で発光持続性も良い。
深海発光エビからも生物発光酵素が樹立され,OLucと名付
S
多く変位体の樹立例が知られている11)。またその酵素活性部
位と発光色との相関性が精査された12)。
けられた22)。さらにその配列に変異を入れることで輝度と発
光安定性を向上したOLucの変異体が開発され,プロメガより
Stanford 大学のGambhirグループにより印象的なRLucの変位
NanoLucという商標で発売された23)。
導入研究が行われた。ランダム変異導入法により,従来より長
波長発光するとともに発光輝度の改善もみられた。彼らはこ
ほかにも,発光イカ,発光ウミボタル,発光バクテリアを含
れらの発光酵素をRLuc8(「8」は変異箇所の数を意味)と名付
む多様な発光生物から発光酵素が樹立されているが,使用頻度
け,変異箇所をさらに増やしたRLuc 変異体(RLuc8.6-535など)
が低いため本稿では記述を省く。
も合成した13,14)。
3.生物発光酵素を用いたバイオアッセイ系の構築
深海発光プランクトン(コペポーダ,copepod)由来の発光
生物発光の産業的用途は拡大している。生物発光酵素の発光
酵素類の産業利用も拡大している。コペポーダ由来ルシフェ
ラーゼの利点としては,輝度が高く小分子量(約 19 ~ 24 kD)
メカニズムを用いた衛生検査法やバイオアッセイ法が確立され
であることが挙げられる。一方,発光の安定性に欠けており,
ており,最近では全自動生物発光免疫測定装置(㈱栄研化学や
大腸菌での発現効率が悪い問題点(ミスフォールディング)が
㈱シスメックス)も開発されている24)。
-4-
409
生物発光酵素
コンジュゲート
①基礎型
発光
カプセル
(B)
a
SP
肺イメージング
BRET
MLS
②と③の併合
レポータージーンアッセイ
転写因子
刺激物
GTA
IVIS
ツーハイブリットアッセイ
蛋白質A & B
発光酵素
発現
A
B
転写因子
プロモーター
b
RLuc8.6-535
(1)
発光酵素
発現
発光カプセル(DEVDなし)
(2)
(3)
(4)
拡大
High
RLU
②誘導型
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
生物発光酵素
(DEVDなし)
2
蛍光蛋白質
6
(A)
x10 (p/sec/cm /sr)
生物発光酵素を用いた分子イメージング技術の進歩
プロモーター
Low
A
N
A
B
C
刺激物 転写因子
C
N
A
B
プロモーター
c
B
Lysates
発光プローブ
の発現
BRETプローブ
BRET
LE
A
B
A
B
A
B
B
C
ligand
C
N
A
B
生物発光を用いたバイオアッセイ。
(A)バイオアッセイの分類。「基礎型」,
「誘導型」,
「活性化型」に分類できる。基礎型が,
生物発光酵素の活性をそのまま利用するに対し,誘導型および活性化型は一種のオンオフスイッチを構えていることが特徴で
ある。NTA(オレンジ色,破線)とGTA(黒色,破線)はそれぞれ遺伝子非発現型と遺伝子発現型バイオアッセイを示す。(B)
生物発光イメージングの例。a.生物発光酵素を用いたマウス肺がんのイメージング19)。b.生きた真核細胞の生物発光イメー
ジング36)。COS-7 細胞に発光カプセル発現させた後,基質共存下で生細胞イメージングを行った。c.一分子型生物発光プロー
ブによるストレスホルモン(コルチゾール)活性の可視化 20)。コルチゾールなしでは発光輝度が弱いが,ありの条件ではプロー
ブが折り畳まれ発光輝度を増す。
P
図 -2
A
(-)
NTA
LAS-4000, FujiFilm
N
分子歪みセンサー
(+)
C
N
生細胞イメージング
(-)
③活性化型
マルチセンシングアッセイ
(+)
蛋白質断片相補アッセイ(PCA)
1分子型
2分子型
生物発光酵素が蛍光タンパク質より発光標識として優れた点
融合タンパク質セットが細胞内に発現されると,外部からのホ
ルモンなどの刺激によりタンパク質 AとBが結合しうる。する
イスのコンパクト化,低コスト,オンサイト計測に適している。
と2 分割した発光酵素断片が再結合するため生物発光活性を取
②蛍光アッセイよりシグナル対ノイズ比(S/N 比)が良く,複
り戻す26)。この手法を用いて細胞内全タンパク質間相互作用を
雑な生物試料で用いる際のアッセイパフォーマンスが高い25)。
網羅的に可視化した研究例も報告された27)。Kimらは,1 分子
産業利用されている生物発光酵素は大雑把に分けて陸上生物
内にPCAに必要なすべての要素タンパク質を集積した新たな
M
は,①外部光源や複雑な光学システムを不要とし,装置やデバ
由来と海洋生物由来の二つのカテゴリに分類できる。陸上生物
アッセイ系を創製し「一分子型生物発光プローブ」と名付けた。
由来にはホタルルシフェラーゼ(FLuc)を含めた「昆虫由来
この原理を利用して男性ホルモン28),女性ホルモン29),コチ
の生物発光酵素群」が広く知られている。「昆虫由来の生物発
ゾール等 30,31)のホルモン活性を動物細胞で定量可視化した。
光酵素」の多くはATP,Mg 2+,O 2の共存下でD-ルシフェリン(基
オワンクラゲの生体内でイクオリンとGFPとは複合体を形
成しており,イクオリンが青色で発光するとGFPがその光を
受け緑色で再発光する。この例のように,生物発光のエネル
特性を利用したものである。一方,「海洋発光生物由来」の多
ギーが蛍光タンパク質に移る現象を生物発光共鳴エネルギー移
くは,O 2のみの共存下でセレンテラジン(基質)の酸化を触
動(bioluminescence resonance energy transfer;BRET)という。
媒する生物発光酵素が多い。
この原理を利用した新たな分子プローブが多く開発され,おも
A
質)の酸化を触媒する。汎用されている細菌衛生検査法(ATP
法)は,発光時にATPを要する「昆虫由来の生物発光酵素」の
にRLucと蛍光タンパク質間のエネルギー移動を観察する系が
な領域にわたって活用法が開発されている。例 1:レポーター
多い。単純にRLucと蛍光タンパク質を繋げた発光プローブ例
ジーンアッセイで発光標識(レポーター)として広く用いられ
もあれば32),RLucと蛍光タンパク質の間に相互作用が想定さ
S
生物発光酵素は,基礎科学研究から産業利用に至るまで多彩
てきた(図 -2(A)②)。これには,生物発光酵素をコードする
れるタンパク質 AとBペアを挿入したアッセイシステムも開発
遺伝子の上流に特定転写因子に応答するプロモーターを構えた
されている(図 -2(A))33)。
特殊なプラスミドの設計が必要である。ホルモンなどにより活
今までの生物発光酵素を用いるバイオアッセイ法は,観点に
性化された転写因子がプロモーターと結合し生物発光酵素の発
よって異なる分類ができる。近年,Kimらにより以下のような
現を促進する。生物発光酵素の輝度からホルモンなどの活性を
バイオアッセイの分類法が提案された34)。刺激に応答して生
定量する。例2:タンパク質断片相補アッセイ(protein-fragment
物発光酵素の「発現が開始される」アッセイ系を遺伝子発現型
complementation assay;PCA)いう手法が開発されており,前
バイオアッセイ(genomic & transcriptional assay;GTA)と,
述したレポータージーンアッセイより複雑で精密な分子作用が
生物発光酵素からなる発光プローブがあらかじめ発現されてお
検出できる(図 -2(A)③)。これには,生物発光酵素を2 分割
り,刺激を待ち構えるタイプのバイオアッセイである。刺激が
し一時的に失活させた後,その断片にそれぞれ相互作用が見込
直接遺伝子発現を誘発しないことから遺伝子非発現型バイオ
まれるタンパク質 Aとタンパク質 Bを繋げておく。このような
アッセイ(non-transcriptional assay;NTA)と名付けた26)。遺
-5-
410
解
説
伝子発現型は生物発光酵素の発現と蓄積に時間がかかるのに対
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 88〔12〕(2015)
ンサーの作動原理は,生物発光酵素に分子レベルの歪みの有無
し,遺伝子非発現型は刺激に即時に反応することから,アッセ
に依存して酵素活性が変化することを指標とする。このような
イ時間が短く生細胞内動態の観察に有利な側面がある。
「活性化型」プローブは細胞の中であらかじめ発現されホルモ
また,Niuらによりバイオアッセイを三種類に分類した例が
ンなどの外部刺激を待ち構える。ホルモンなどの外部刺激に応
ある(図 -2)35)。その分類の基準は,アッセイがもつオンオフ
じてプローブは折り畳まれるため,発光酵素断片が再結合し発
制御機序の違いによるものである。すなわち,基礎型(basic;
光する。その輝度を指標に外部刺激の有無・濃度等を測定する。
1 類),誘導型(inducible;2 類),活性化型(activatable;3 類)
しかしながら,前述した分類法は便宜上の分類であり,場合
に分類することを提案した。この分類法では,生物発光酵素遺
よっては一つの手法が二つまたは三つのカテゴリに跨る場合も
伝子の発現がプロモーターにより制御されるか否か(制御な
ある。生物発光イメージング(bioluminescence imaging;BLI)
し:1 類,制御あり:2 類),生物発光酵素が発現・翻訳後にオ
を例示する。BLIは,生物発光酵素を用いて小動物をイメージ
ングする代表的な手法であり,医・薬学関係の研究者を中心に
盛んに研究されている分野である。図 -2(A)に示したように
ができる。
レポータージーンアッセイを改良して通常の「レポータータ
LE
ンオフ制御機序をもつかどうか(もつ:3 類)の観点から分類
している。これらを適用すると一般的なバイオアッセイの分類
「基礎型」使用例として,生物発光酵素を動物細胞に発現さ
ンパク質」の代わりに一分子型生物発光プローブを構えた31)。
せ,発光顕微鏡下で局在場所を同定する方法がある。またKim
すると,このシステムは転写因子の活性をみるオンオフスイッ
らにより生細胞観察に有利な「発光カプセル」という概念が提
チに加え,発現された後の一分子型生物発光プローブがホルモ
唱された36)。従来,生物発光イメージングにおいて,発光基
ン活性に依存して発光するもう一つのオンオフスイッチが同じ
質と酸素分子(O 2)が生細胞の中に均一に行き届かないこと
システムで働く。このシステムは,前述した「誘導型」と「活
が問題であった。基質の膜透過性などが主因である。発光カプ
性化型」の特徴を併せもつ。
セルは,生物発光酵素と膜局在シグナル(MLS)により構成
生物発光酵素を用いた「活性化型」発光プローブは以下の要
されており(図 -2(A)),その両者の間にタンパク質を組み込
領で開発される。まず,外部刺激などによって細胞内では一連
の信号伝達イベント(signaling cascade)が起こることが想定
スパーゼ3のペプチド基質である「DEVD」をその両者の間に
される。この一連の信号伝達イベントを分類すると,①タンパ
P
めるように設計されている。たとえば,アポトーシスの際,カ
繋げると立派なアポトーシスセンサーになる。また「DEVD
ク質内構造変化,②タンパク質―タンパク質間相互作用,③リ
なし」の場合においても細胞膜に局在するため,均一な基質
ン酸化,④タンパク質分解,⑤局在場所の変化,⑥二両体化な
どがありうる。このイベントの中から特定の分子イベントにか
かわる標的タンパク質を選定し,このタンパク質を骨格に生物
M
や酸素分子の供給条件下で細胞イメージングができる(図 -2
(B)
)
。
「基礎型」のもう一つの使用例として,生体内のがん転
移(metastasis)のイメージングがある。がん細胞に生物発光
発光プローブを設計する。一般的に標的タンパク質は発光信号
酵素を発現させておき,そのがん細胞を小動物の静脈に注射
を示さないため,生物発光酵素を標的タンパク質に繋げること
すると,血流に乗ったがん細胞は住み着きやすいところに留
により輝度の変化が観察できるようにする。いくつかの分子
まる。後に基質を腹膜注射するとがん細胞の転移場所が発光
設計を試し,最も高性能プローブデザインを決定する過程を
イメージングで確認できる。一般的に毛細血管の多い肺組織
辿る。
に多くのがん細胞が住み着きやすいことが知られている(図 -2
A
(B)
)
。ほかにも抗体の発光団として生物発光酵素が利用でき
る。通常 HRPやGFP 以外にFLucやRLucを抗体に繋げマウスイ
4.生物発光酵素技術の未来
生物発光は魅力的な自然現象であるとともに次世代バイオ
メージングに用いた研究例もある37,38)。
アッセイの中核を担う素材として産業的利用価値を拡大して
「誘導型」の代表格としてレポータージーンアッセイがある。
いる。産業的用途の拡大とともに,天然の生物発光酵素の新
規樹立だけでなく,蓄積された配列情報のデータベースからde
ンパク質や生物発光酵素などを指す。ホルモンなどの外部刺激
novoタンパク質の人工合成も可能な時代になっている。昨今の
により転写因子が活性化され,転写因子はプロモーターという
研究傾向をみると人工的な生物発光酵素を用途に合わせて自在
特殊な遺伝子側の領域を認識し「レポータータンパク質」を発
に設計する未来も近づいていると思われる。斬新な生物発光プ
現・蓄積する。発現輝度を指標に外部刺激の有無・濃度等を判
ローブの開発と分子イメージングもその基盤上に置かれる。昨
定する。
今の生物発光技術の用途拡大に比べて,その基盤となる基礎研
S
ここでいうレポーターとは発光標識をいう。すなわち,蛍光タ
「活性化型」の例として,タンパク質断片相補アッセイ(PCA)
究は停滞している印象である。たとえば,各生物発光酵素の立
がある。前述したようにPCAは,2 分割した発光酵素断片が再
体構造の解明,発光波長の多色化,組織透過性の高い長波長領
結合による生物発光輝度の回復を指標とする。従来の独立した
域で発光する酵素群の樹立などが挙げられる。この基礎研究を
二つの融合タンパク質間の相補作用を視る「二分子型」があっ
踏まえ,今後も発光酵素の診断分野への応用研究や産業ニーズ
た。近年,KimらはPCAに必要なすべての要素を一つの融合分
に合致した製品群の開発研究も盛んに行われると考えられる。
子に集積した一分子型生物発光プローブを開発した。このプ
さらに,生物発光を用いたバイオフォトニクスの展開も有望な
ローブは従来と区別して「一分子型」と言える。また,Kimら
分野である。光検出装置の高感度化や自動化,キット化なども
により分子歪みセンサーが開発された(図 -2(A))39)。このセ
いっそう深化していくと思われる。家庭で簡便な自己健康管理
-6-
生物発光酵素を用いた分子イメージング技術の進歩
ができるシステムが開発されるなど,医・薬分野や環境分野を
中心に,より簡便に多く人々が日常生活で実感できる発光技術
の今後が期待される。
文 献
Gojobori, Y. Shigeri: Mol. Biol. Evol., 29, 1669(2012).
19)S. B. Kim, H. Suzuki, M. Sato, H. Tao: Anal. Chem., 83, 8732(2011).
20)S. B. Kim, M. Torimura, H. Tao: Bioconjugate Chem., 24, 2067(2013)
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21)C. E. Badr( Ed. ): " Bioluminescent Imaging " , p. 117 , Springer
( 2014 ).( Kim, S. B.( 2014 )Fabrication of Bioluminescent
Capsules and Live-Cell Imaging, in Bioluminescent Imaging(C. E.
Badr, Ed.), pp.117-125, Springer - Humana Press, New York.)
22)S. Inouye, K. Watanabe, H. Nakamura, O. Shimomura: FEBS Lett.,
481, 19(2000)
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23)M. P. Hall, J. Unch, B. F. Binkowski, M. P. Valley, B. L. Butler,
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24)栄研化学(2015).
25)S. B. Kim, T. Ozawa: Supramol. Chem., 22, 440(2010).
26)T. Ozawa, H. Yoshimura, S. B. Kim: Anal. Chem., 85, 590(2013).
27)K. Tarassov, V. Messier, C. R. Landry, S. Radinovic, M. M. Molina,
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28)S. B. Kim, M. Awais, M. Sato, Y. Umezawa, H. Tao: Anal. Chem.,
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29)S. B. Kim, Y. Umezawa, K. A. Kanno, H. Tao: ACS Chem. Biol., 3,
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30)S. B. Kim, M. Sato, H. Tao: Anal. Chem., 81, 67(2009).
31)S. B. Kim, Y. Takenaka, M. Torimura: Bioconjugate Chem., 22, 1835(2011)
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32)H. Hoshino, Y. Nakajima, Y. Ohmiya: Nat. Methods, 4, 637(2007).
33)A. De, P. Ray, A. M. Loening, S. S. Gambhir: FASEB J., 23, 2702
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34)S. B. Kim, M. Hattori, T. Ozawa: Int. J. Mol. Sci., 13, 16986(2012).
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36)S. B. Kim, Y. Ito, M. Torimura: Bioconjugate Chem., 23, 2221(2012).
37)G. Lomalina, A. Istrate, N. Rudenko, N. Ugarova: Luminescence,
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38)K. M. Venisnik, T. Olafsen, A. M. Loening, M. Iyer, S. S. Gambhir,
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12)T. Nakatsu, S. Ichiyama, J. Hiratake, A. Saldanha, N. Kobashi, K.
Sakata, H. Kato: Nature, 440, 372(2006).
13)A. M. Loening, A. M. Wu, S. S. Gambhir: Nat. Methods, 4, 641(2007).
14)A. M. Loening, A. Dragulescu-Andrasi, S. S. Gambhir: Nat.
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15)M. Verhaegen, T. K. Christopoulos: Anal. Chem., 74, 4378(2002).
16)S. V. Markova, S. Golz, L. A. Frank, B. Kalthof, E. S. Vysotski: J.
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17)Y. Takenaka, H. Masuda, A. Yamaguchi, S. Nishikawa, Y. Shigeri, Y.
Yoshida, H. Mizuno: Gene, 425, 28(2008).
18)Y. Takenaka, A. Yamaguchi, N. Tsuruoka, M. Torimura, T.
411
Recent Advances in Molecular Imaging Technologies with Luciferases
A
Sung Bae K IM*,† and Rika F UJII*
* Research
Institute for Environmental Management Technology, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST),
16-1 Onogawa, Tsukuba, Ibaraki 305-8569, Japan
†Corresponding Author, E-mail: [email protected]
S
(Received July 23, 2015; Accepted August 6, 2015)
Abstract
Molecular imaging technologies visualizing intracellular molecular events in living subjects have greatly advanced in the past two decades.
The technological achievements contributed by establishment of excellent optical readouts including fluorescent proteins and luciferases,
which are expanding its industrial utilisation. Nowadays, fluorescent proteins are optimally geared to optical instrumentation equipped
with a camera and a laser, and thus some of the recently advanced instrumentation is even able to access single-molecule imaging.
Meanwhile, bioluminescent means including firefly luciferase are also emerging their industrial usages as an optical readout of antibodies,
a bioluminescence imaging (BLI) tool, and other bioassays. This molecular imaging technology has clearly distinctive advantages from
conventional living subject imaging technologies like nuclear magnetic resonance (MRI), positron emission tomography (PET), computed
tomography (CT), ultrasound, etc, with respect to the quantitative and pinpoint-imaging properties of a specific molecular event in living
subjects. In contrast, conventional molecular imaging technologies share the common drawbacks such as nonspecific, physical, qualitative
properties upon imaging of the molecular events (e.g., nuclear spins, radio isotopes, ultrasounds) with low sensitivity. The present article
briefly reviews the recent achievements of luciferase-based molecular imaging technologies.
Key-words: Bioluminescence, Imaging, Optical readout, Bioluminescent probe, Luciferase
-7-
412
解 説
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 88〔12〕,412–415(2015)

皮膚のバリア機能および水分量の可視化
勝 田 雄 治*,†・江 川 麻 里 子*
*資生堂リサーチセンター 神奈川県横浜市都筑区早渕 2-2-1(〒 224-8558)
† Corresponding Author, E-mail: [email protected]
(2015 年 8 月 3 日受付,2015 年 9 月 6 日受理)
LE
要 旨
「角層バリア機能」と「角層水分量」が高い状態にあることが美容分野において美しい皮膚の要件とされている。通常これらの皮膚
パラメーターは数値データとして機器測定するが,これらの測定方法では点での測定に限られており,可視化して二次元で観察する
ことができない。近年,「角層バリア機能」はフルオレセイン塗布した皮膚を蛍光マイクロスコープで観察することにより,また「角
層水分量」は近赤外(NIR)カメラにより可視化することができるようになった。これらの可視化技術により二次元での皮膚計測が
可能になり,皮膚状態をより詳細に把握することが可能になった。
キーワード:バリア機能,経皮蒸散水分量,フルオレセイン,水分量,NIRカメラ
蒸散する水分量を測定するもので,この値が低いほど,角層
バリア機能が高いことを意味している。経皮水分蒸散量は,
P
1.はじめに
人体の最外層を占める皮膚は,美容上重要な器官である。と
Tewameter®(Courage + Khazakaドイツ)やVapoMeter®(Delfin
くに女性の顔面皮膚が美容の最大のターゲットとなっており,
technologiesフィンランド)などの測定機器により計測される。
また,角層水分量の測定は水分量により角層の電気抵抗が変
膚は生体内と外部を分ける境界としての重要な機能(バリア機
化することを利用し,インピーダンスやキャパシタンスを求め
能)を果たしている。皮膚最外層である角層のバリア機能が損
ることによって数値化される。角層水分量を測定する機器とし
なわれると,体内の水分が損失して乾燥しやすくなり,体外か
ては,Skicon®(アイ・ビー・エス㈱)やCorneometer®(Courage
らの異物が体内に入ることにより感染症になりやすくなる。ま
+ Khazakaドイツ)などが挙げられる。
M
若々しく美しい顔の皮膚を保つことが大きな関心事である。皮
た,その結果として表皮の増殖異常による肌荒れが引き起こさ
これらの機器は,いずれも皮膚上の一点での値を数値で示す
れる。肌荒れにより肌が乾燥してカサカサするため,美容上の
ものである。数値を絶対値として比較できる利点がある反面,
美観が損なわれる。
二次元で皮膚全体を観察することが難しいという欠点がある。
そこで,角層バリア機能や角層水分量を可視化して面で観察す
る方法が求められてきた。本稿では,角層バリア機能と角層水
機能の指標としては,「経皮水分蒸散量(trans-epidermal water
分量を可視化して二次元で示す方法について解説する。
A
この皮膚の基本機能の測定には,機器計測による数値パラ
メーターが一般的な指標として用いられている。角層バリア
loss;TEWL)」が用いられる。経皮水分蒸散量は,皮膚から
2.フルオレセインナトリウムを用いた
角層バリア機能の可視化
〔氏名〕 かつた ゆうじ
〔現職〕 ㈱資生堂ライフサイエンス研究センター
先端領域研究グループ 副主任研究員
〔趣味〕 旅行,外国語学習
〔経歴〕 1998 年東京大学大学院理学系研究科生物化
学専攻修了。同年資生堂入社。2003 年より
2005 年まで米国トーマスジェファーソン大
学にて研究。皮膚科学,化粧品の有用性成
分開発,有用性保証業務などに従事。
S
角層バリア機能は,皮膚の内外での物質の移動を遮断する機
能のことで,角層の細胞間にある脂質が重要な機能を果たして
いる。一般的な角層バリア機能の指標である経皮水分蒸散量
は,皮膚から蒸散する水分量を測定した値で,皮膚の内側から
外側への水分の移動を測定している。角層バリア機能は皮膚の
内側から外側への物質の移動だけではなく,外側から内側への
〔氏名〕 えがわ まりこ
〔現職〕 ㈱資生堂ライフサイエンス研究センター
肌解析技術開発グループ 主任研究員
〔趣味〕 星,猫,旅行
〔経歴〕1993 年筑波大学第二学群生物化学工学専攻
卒業,同年資生堂入社。化粧品の有用性保
証業務を担当。2001 年新潟大学大学院情報
理 工 学 専 攻 博 士 後 期 過 程 入 学,2004 年 同
課程修了,博士(工学)取得。おもに,皮
膚の光計測機器および評価法開発に従事。
2014 年より計測技術と皮膚科学研究との融
合研究を推進中。
© 2015 Journal of the Japan Society of Colour Material
物質の移動に対しても重要な働きをしている。蛍光物質である
フルオレセインナトリウムを用いた可視化法では,皮膚の外側
から内側への物質の移動を観察する手法である。対象となる皮
膚表面にフルオレセインナトリウムを塗布した後で,皮膚を蛍
光ビデオマイクロスコープで観察することにより,角層内部へ
と浸透したフルオレセインを観察して可視化する。
フルオレセイン(C 20 H 12 O 5)は分子量 332.3の蛍光物質であ
-8-
413
皮膚のバリア機能および水分量の可視化
り,吸収波長は494 nm(青色光)で蛍光波長は521 nm(緑色光)
損傷を調べる方法として臨床で汎用されている方法である。角
である。そのナトリウム塩は水溶性が高く,黄色 202 号として
膜が損傷を受けるとフルオレセインナトリウムが浸透し,損傷
工業的に使用されるタール色素である。このフルオレセインナ
部位の角膜が染色される。この手法はドライアイの診断方法の
トリウムを用いた方法は,もともと眼科領域で角膜上皮組織の
一つとして用いられている。臨床での人体への適用実績から,
皮膚で角層バリア機能を可視化するための被験物質としてフル
(B)
(A)
100
Tone (Green) level
Intact Area
Oleic acid
treated area
80
フルオレセインナトリウム塗布後の皮膚の蛍光観察像が角層
60
バリア機能を反映しているかどうかを確認するため,前腕部の
40
皮膚角層の人工的バリア破壊を行った。健常男性の前腕内側
20
部に30 %オレイン酸のエタノール溶液の3 時間閉塞塗布を1 日
1 回,連続 2 日間行い,角層バリア機能を低下させた。塗布開
0
(D)
**
14
Tone (Green) level
TEWL (g/m2h)
12
10
8
6
4
2
120
Intact area
より,角層表面に残存したフルオレセインの除去を行い,角層
内部まで浸透したフルオレセインのみが皮膚上に残るようにし
80
60
た。その後,角層内部に浸透したフルオレセインナトリウムを
40
蛍光ビデオマイクロスコープで二次元画像として観察した。こ
20
0
Oleic acid
treated area
閉塞塗布し,水洗および角層テープストリッピング(2 回)に
r=0.75
100
0
0
始から5 日後に0.1%フルオレセインナトリウム水溶液を5 分間
Oleic acid
treated area
LE
Intact area
(C)
オレセインナトリウムが安全性面で妥当であると考えられた。
**
5
10
15
TEWL (g/m2h)
の観察像を図 -1(A)に示す1)。
20
また,この画像から蛍光強度を定量し,VapoMeter®で測定
図 -1 (A)無処理部位(Intact area)およびオレイン酸処理
部位(Oleic acid treated area)皮膚のフルオレセイン
ナトリウム塗布後の蛍光ビデオマイクロスコープ観察
画像,(B)無処理部位およびオレイン酸処理部位の
蛍光強度,(C)無処理部位およびオレイン酸処理部
位の経皮水分蒸散量,(D)経皮水分蒸散量と蛍光強
度の相関関係
(b)
M
(B)
Time
**
8
6
Skincare
4
2
0
⊿TEWL (g/m2h)
(a)
P
TEWL
(A)
した経皮水分蒸散量と比較した。フルオレセインの蛍光強度お
-2
-4
-6
Water
High
Intact
A
-8
-10
Skincare
Intact
Low
S
図 -2 (A)スキンケア部位と無処理部位の経皮水分蒸散量
の変化比較,
(B)スキンケア部位と無処理部位皮膚
のフルオレセインナトリウム塗布後の蛍光ビデオマイ
クロスコープ観察画像
(B)
(A)
Before
(a)スキ
図 -4 前腕部水分量の経時変化の擬似カラー表示,
ンケア製品塗布部位,(b)水塗布部位
0 min
15 min
30 min after
ΔWater
High
(C)
After the application of moisturizer
ΔWater
High
64.9
31.7
Mean Δbrightness from before
30
50
162.7
148.1
70
130.4
Mean brightness
20.7
Low
90 RH%
112.4
Water
High
Low
Low
n=15, mean
(A)相対湿度 10%条件下で80 分安静時の水分量変化,
(B)スキンケア製品塗布後の水分量の擬似カラー表示,
(C)異なる湿
図 -3 度条件下での毛髪水分量の擬似カラー表示
-9-
414
解
説
よび経皮水分蒸散量は,いずれもオレイン酸バリア破壊部位に
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 88〔12〕(2015)
ら構成される。画像解像度は,1 pixel = 0.24 mmである。また,
おいて対照のインタクト部位と比較して有意に増加していた
近赤外マイクロスコープシステムは,高帯域 InGaAs 近赤外カ
(図 -1(B)
,
(C)
)1)。また,経皮水分蒸散量と蛍光強度との間
メラ(1,000 ~ 2,350 nm,Compovision;住友電工㈱),SC 光
に相関関係が認められた(図 -1(D))1)。これらの結果より,
源(住友電工㈱)
,専用ミクロ光学系から構成される。各シス
フルオレセイン塗布後角層を蛍光ビデオマイクロスコープで観
テムに,中心波長 1,950,1,462,1,300 nmの干渉フィルター
察することにより,皮膚バリア機能を可視化することが可能に
を組み合わせることにより,水分画像やバックグランド画像を
なった。
取得した。この二つの近赤外カメラシステムで1,920 nmの水
実際にこの手法を用いて,スキンケアの有用性を確認した結
の吸収波長を検出することにより,ミクロからマクロレベルま
果を示したものが図 -2である1)。自称敏感肌の男性被験者にお
での皮膚や毛髪の水分分布の可視化を可能にした。皮膚内への
いて,ハーフフェイスで敏感肌用スキンケア製品シリーズ(化
近赤外光の到達深度は,皮膚 20 層モデルを用いてモンテカル
ロ法でシミュレーションした。その結果,到達深度は波長に依
存し,1,920 nmで約 50 μm,1,300と1,450 nmでは100 μmを超
量を,VapoMeter®で経皮水分蒸散量を測定した(図 -2(A))1)。
えた。1,920 nm 領域で,最も撮影深度が浅く,角層での水分
連用後に有意な角層水分量の増加および経皮水分蒸散量の低下
を最も高感度で検出可能であることが示された。
LE
粧水(朝・夜)
,乳液(朝・夜),クリーム(夜のみ)
)の4 週
間連用試験を実施した。連用前後にCorneometer®で角層水分
マクロ用近赤外カメラシステムでの水分の可視化により,顔
いて,連用後の頬部にフルオレセインナトリウム0.1%水溶液
の部位による季節や乾燥環境下での水分量の違いを捉えるこ
を1 分間閉塞塗布し,水洗およびテープストリッピング(2 回)
とが可能になった。低湿度状態に長時間いると,顔面のとく
を行った後に,蛍光ビデオマイクロスコープで観察した(図 -2
に目の周りの水分量が低下することを可視化することができ
(B)
)1)。この結果,スキンケアを行った部位では,フルオレセ
7)。保湿剤塗布前後の水分量の差も可視化する
た(図 -3(A))
インの角層内部への経皮吸収量が減少していることが視覚的に
ことができ,保湿剤塗布後に角層水分量が増加している様子が
確認された。角層バリア機能の可視化をスキンケア行為の有用
5)。毛髪の水分量の差も検出するこ
可視化された(図 -3(B))
性を示す画像として用いることができることが示された。
とができ,湿度,保湿剤などによる毛髪水分量の違いを可視化
P
(バリア機能の向上)が確認された。また,一部のパネルにお
また,頬部での角層バリア機能可視化画像より,角層バリア
することができた(図 -3(C))6)。さらに,近赤外マイクロス
機能の部位差を観察することができた。スキンケアを行ってい
コープシステムにより化粧品塗布後の皮膚の微小領域の水分を
ない頬部画像,毛穴部周辺で強いシグナルが観察された。この
イメージングすることで,美容液の皮膚へのなじみ度合いを評
結果から,顔面皮膚での水溶性物質の浸透ルートは,毛穴部や
価できた(図 -4)5)。
このように,近赤外カメラを用いた角層水分量を二次元画像
ア機能の部位差は,経皮水分蒸散量の機器測定では測定できな
として可視化することにより,皮膚の電気特性の機器測定によ
い。角層バリア機能を可視化により二次元で観察することによ
る数値化では難しかった部位差の評価が可能になった。また,
り明らかになった知見である。毛穴周辺領域は,不全角化した
この技術は非接触で計測できるため,経時変化の観察が可能で
角層細胞やカルボニル化タンパクが多く存在して角層状態が悪
ある。従来不可能であった新たなイメージング手法として,活
いことが報告されているが2,3),上述の結果から角層バリア機
用が期待される。
M
その周辺であることが明らかになった。微小領域での角層バリ
A
能がこの領域で悪化していることが示された。
4.おわりに
3.角層水分量の可視化
前述の技術により,皮膚状態の基本的な機器測定パラメー
ターである角層バリア機能と角層水分量を可視化することが可
ジング技術を用いた皮膚の水分量の検出が試みられてきた。近
能になった。これにより,従来は見えないものを可視化する
赤外領域の最も強い吸収波長は1,920 nm 付近であり,そのほ
ことによる画像データにより,従来の数値データより印象的に
かにも1,450 nm 付近にも吸収波長が存在する。2000 年代半ば
データを示すことが可能になった。可視化の効果はそれだけで
までは,市販の近赤外カメラの検出領域は1,700 nm 以下に限
はなく,二次元の情報により部位差を詳細に観察することが可
S
水(O-H 基)には近赤外領域に吸収があるため,近赤外イメー
られていたため,1,450 nmでの皮膚水分の検出が試みられて
能になるなど,数値データでは不可能であった多様な情報を得
きた。しかし,皮膚水分量のわずかな差を検出するためには不
ることができる。このように数値情報と画像情報とではそれぞ
十分であった。そこで,われわれは,さらに実用レベルに皮膚
れの利点があり,これらのデータを組み合わせて活用すること
水分を可視化するために,1,920 nmの水をターゲットとした
により,より多くの情報を得ることができる。可視化技術の発
近赤外イメージングに着目し,マクロ用(全顔用)近赤外カメ
展により,今後さらに多く情報が得られるようになるのではな
ラシステム4,5)および微小領域用近赤外マイクロスコープシス
いかと期待される。
テム5)を開発した。本システムを用いて,撮影深度シミュレー
ション4),保湿効果の可視化 4),毛髪の水分イメージング6),
顔全体の水分分布 7)を検討した。
マクロ用近赤外カメラシステムは,高帯域 InGaAs 近赤外カ
メラ(1,100 ~ 2,200 nm;住友電工㈱),専用拡散照明装置か
-10-
文 献
1)勝田雄治 , 岩井一郎 , 針谷 毅:日本化粧品技術者会誌 , 47, 285
(2013).
2)飯田年以 , 勝田雄治 , 猪股慎二:フレグランスジャーナル, 32, 41
皮膚のバリア機能および水分量の可視化
(2004).
3)山下由貴 , 大林 恵 , 岡野由利 , 正木 仁:日本化粧品技術者会
誌 , 44, 216(2010)
.
4)M. Egawa, M. Yanai, K. Kikuchi, Y. Masuda: Appl. Spectrosc., 65,
924(2011).
415
5)M. Egawa, M. Yanai, H. Arimoto, M. Hagihara, K. Kikuchi, Y.
Masuda, K. Nakamura, T. Hirao: IFSCC Magazine, 17, 3(2014).
6)M. Egawa, M. Hagihara, M. Yanai: Skin Res. Technol., 19, 35(2013).
7)M. Egawa, M. Yanai, N. Maruyama, Y. Fukaya, T. Hirao: Appl.
Spectrosc., 69, 481(2015)
.
Visualization of the Barrier Function and Water Content of Skin
Yuji K ATSUTA*,† and Mariko EGAWA*
Research Center, 2-2-1 Hayabuchi, Tsuzuki-ku, Yokohama, Kanagawa 224-8558, Japan
†Corresponding Author, E-mail: [email protected]
LE
* Shiseido
(Received August 3, 2015; Accepted September 6, 2015)
Abstract
P
Barrier function and water content are among the most important areas in the field of cosmetics. These skin parameters are usually measured
by using quantitative devices, however, evaluation with these contact-measurement devices is limited to single-point measurement. Recently,
the barrier function of the stratum corneum was visualized by topically applying fluorescein to the skin surface and the water content was
visualized by using near infrared (NIR) cameras. These visualizing techniques enabled the acquisition of two-dimensional (2D) information
of the skin conditions.
S
A
M
Key-words: Barrier function, Trans-epidermal water loss, Fluorescein, Water content, NIR camera
-11-
416
総 説
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 88〔12〕,416–418(2015)

光増感剤を用いたがんの光線力学治療とがんの診断
小 倉 俊 一 郎*,†
*東京工業大学生命理工学研究科 神奈川県横浜市緑区長津田町 4259
B47(〒 226-8501)
† Corresponding Author, E-mail: [email protected]
(2015 年 9 月 1 日受付,2015 年 9 月 6 日受理)
LE
要 旨
わが国における死因の第一位は悪性腫瘍(がん)によるものであり,日本人は3 人から2 人に1 人が生涯のうちがんに罹患すると言
われている。がんに対する治療と診断は急務をなすが,新たな治療法・診断法の一つとして光増感剤を使ったがんの光線力学治療な
らびに光線力学診断が臨床で用いられるようになってきた。本項ではこれらの基礎と応用を概観し,新しい試みについて筆者らの研
究を中心に紹介する。
キーワード:光増感剤,光線力学治療,光線力学診断,がん
1.光増感剤を用いた光線力学治療
これまでの臨床試験の結果から光線力学治療によって皮膚が
ん,胃がん,肺がん,子宮がんなど多くの早期がんが長期にわ
たって抑制されることがわかっている2)。
P
がんの標準的な治療法として,外科療法・化学療法・放射
線療法が挙げられるが,副作用なども指摘されており,これ
2.光増感剤として求められる特徴
に替わり得る治療法の開発が切望されている。光線力学治療
(Photodynamic therapy)は代表的な代替療法の一つとして挙げ
光線力学治療用光増感剤として初めて臨床応用されたの
は,ポルフィリンの類縁体であるヘマトポルフィリン誘導体
とレーザー光の局部照射を組み合わせたものである。光線力学
(Hematoporphyrin derivatives,HpD,図 -1)である2)。現在ま
M
られるようになった。この治療法は,腫瘍に集積する光増感剤
治療用光増感剤は腫瘍集積性があり,レーザー光照射により腫
でにHpDを用いた光線力学治療が行われているが,いくつかの
瘍を選択的に破壊することができる。また,近年の内視鏡の発
問題点が指摘されている。そこでHpDに代わる新しい光増感剤
達により,その適用範囲も拡大されている。
の開発が求められている。光線力学治療用の理想的な光増感剤
光線力学治療は次の手順で行われる。がん患者に腫瘍集積性
のある光増感剤を静脈注射あるいは腫瘍に直接投与する。これ
として要求される性質は次のとおりである1-3)。
①腫瘍に選択的に蓄積すること
腫瘍組織以外の部位への光増感剤の蓄積は副作用の原因とな
光増感剤の組織への取り込みと排出の速度は組織によって異な
る。腫瘍周辺の正常組織への蓄積は治療時に正常組織の傷害
る。腫瘍組織では正常組織に比べて光増感剤濃度は高く,光増
を引き起こす。とくに筋組織の傷害は回復も遅く,生体に対
A
により光増感剤は腫瘍組織を含むほとんどの組織に運搬される。
感剤投与後 24 ~ 72 時間後に腫瘍組織と正常組織の光増感剤濃
度の差は最大となる。この時点で腫瘍組織に可視光または近赤
a
R1
に遷移し,一部は光励起三重項状態に移る。光励起三重項状態
N HN
S
外光を照射する。光増感剤は光照射によって光励起一重項状態
NH N
酸化力をもち,ラジカル反応によって細胞成分を酸化し,細胞
に傷害を与える1)。すなわち,腫瘍周辺に活性酸素種が生成す
ることによって腫瘍組織を選択的に傷害し,壊死に陥らせる。
b
CH3
NaOCO
NaOCO
〔氏名〕 おぐら しゅんいちろう
〔現職〕 東京工業大学生命理工学研究科 准教授
〔趣味〕 ドライブ
〔経歴〕 2001 年 10 月東京工業大学大学院生命理工学
研究科生物プロセス専攻助手。2005 年 4 月
静岡県立静岡がんセンター研究所遺伝子診
療研究部研究員(2007 年より主任研究員)。
2009 年 12 月 東 京 工 業 大 学 フ ロ ン テ ィ ア 研
究機構特任准教授。2013 年 3 月東京工業大
学大学院生命理工学研究科准教授,現在に
至る。
© 2015 Journal of the Japan Society of Colour Material
HOOC
NH N
N
-12-
(2) R1 = R2 = CH(OAc)Me
(3) R1 (R2) = CH(OH)Me
R2 (R1) = CH CH2
に遷移した化合物は酸素分子とエネルギー移動反応または電子
移動反応を起こし,活性酸素種を生成する。活性酸素種は強い
(1) R1 = R2 = CH(OH)Me
R2
CH3
(4) R1 = R2 = CH CH2
COOH
CH3 CH3
O
C
HN
CH3
O
CH3
N
CH3
OCONa
R
n=0-6
R
CH3
CH3
NH N
HN
O
CH3
CH3
CH3
CH3
(CH2)2COONa
NH N
N
H3C
n
HN
R
(CH2)2COONa
CH3
R = CH(OH)CH3 , CH CH2
図 -1 ヘマトポルフィリン誘導体の構造。a.ポルフィリン
(2)ヘマトポ
のモノマー(1)ヘマトポルフィリン,
-ヘキシルエチル
ルフィリンジアセテート,(3)3-(8)
-8(3)-ビニルデューテロポルフィリン,(4)プロトポ
ルフィリン。b.ヘマトポルフィリン誘導体の高分子
成分。
417
光増感剤を用いたがんの光線力学治療とがんの診断
表 -1 光線力学治療用光増感剤と治療に用いる光の波長
光増感剤
Pprotoporphyrin
Phthalocyanines
Chlorins
Naphthalocyanines
HpD
波長/ nm
668
670 ~ 680
680
750 ~ 780
630
ALA
正常細胞
ALA
ミトコンドリア
モル吸光係数/ M-1 cm-1
9.5 × 104
2.5 × 105
4.0 × 104
> 105
3.0 × 103
ウロポルフィリ
ノーゲン
プロト
ポルフィリン
Fe2+
ヘム
コプロポルフィリ
ノーゲン
がん細胞
ALA
ウロポルフィリ
ノーゲン
コプロポルフィリ
ノーゲン
ミトコンドリア
プロト
ポルフィリン
Fe2+
ヘム
図 -2 生体内におけるヘム生合成経路
する影響も大きい。また,皮膚への蓄積は治療後における光
線過敏症を引き起こす。HpDの場合,治療三週間後でも皮膚
その有用性が注目されるようになってきた5)。図 -2に生体内に
への蓄積が観測されており,副作用である光線過敏症が起こ
おけるヘム生合成経路を示す。図のようにALAは生体内にお
けるポルフィリンやヘムの前駆体である。ALAをがん患者に
る。また,治療後における排出が速いことも重要である。
②赤色領域または近赤外領域の吸光係数が大きいこと
投与すると腫瘍特異的にポルフィリンが蓄積する。このがんで
蓄積するポルフィリンはプロトポルフィリンであり,前述の
この波長領域での光の組織透過性は低い。長波長領域の光ほ
HpDの活性成分の一つとして認識されている化合物であった。
ど組織透過性が良く,この領域に吸収極大をもつ化合物が
すなわち光増感剤の前駆体を投与することによって腫瘍特異的
望ましい。しかし,吸収極大があまり長波長領域にあると
な蓄積を達成させるという手法となる。
LE
生体組織は400 ~ 500 nmにヘモグロビンの吸収があるため,
活性酸素種を生成しない。以上のことから吸収極大が600 ~
ヘム生合成経路では,ALAシンターゼがヘムによってフィー
800 nmに存在する化合物が望ましいといわれている。HpD
ドバック調節を受ける。しかし,ALAを添加することで,ヘ
では600 nmより長波長領域の吸光係数が小さいため深部の
ムの阻害を受けずに細胞内のポルフィリンの生成量を増加させ
がんに対する治療が困難である。
ることができる6)。また,ALAは生体内の物質であるため代謝
③光励起三重項の量子収率が高く,一重項酸素の生成能が高い
こと
されやすく,投与による副作用は少ない。ALAはヘムの生合
P
成経路によってプロトポルフィリンに変換される。正常細胞で
は,プロトポルフィリンはヘムに変換され,その後代謝される。
光励起三重項状態を経由する。そのため,光励起三重項状態
しかし,がん細胞では,ポルフィリンの代謝異常によりプロト
の量子収率が高く,光励起三重項寿命が長いほど光増感剤と
ポルフィリンが蓄積する7)。そのため,ALA 投与により,がん
してより効果的である。また,光線力学治療におけるおもな
細胞特異的にプロトポルフィリンが蓄積する。腫瘍特異的なポ
細胞毒性種は一重項酸素であるため,一重項酸素の生成能が
ルフィリン蓄積メカニズムは充分には解明されていないが,以
高いほうが望ましい。
下の三つの要素がかかわっていると考えられている8,9)。
M
前節で述べたように光線力学治療における活性種の生成には
④暗所毒性のないこと
①がん細胞内の鉄濃度
光増感剤そのものの毒性が低く,光照射を行ったときのみ細
胞毒性を示す化合物が望ましい。
⑤化学構造が明らかになっていること。できれば水溶性である
こと
がん細胞内では鉄濃度が低いことが指摘されている。そこで
がん組織ではALAを投与した後にプロトポルフィリンが生成
するが,挿入されるべき鉄が少ないため,プロトポルフィリン
が蓄積していくと考えられている。
A
単一物質であることは投与量と治療効果の関係が容易に調べ
② ALAを細胞内に取り込むトランスポーター
られる。また,投与する際には水溶性のほうが光増感剤の取
り扱いが容易になる。
一般に薬剤などの化合物は細胞膜に発現したトランスポー
ターを介して取り込まれたり排出されたりしている。ALAを
細胞内に取り込むトランスポーターとしてペプチドトランス
ポーターの一種であるPEPT1が関与していることが知られてい
れてきた。クロリン,フタロシアニン,ナフタロシアニン等の
る。近年の研究によってプロトポルフィリンを蓄積しやすいが
化合物が,光線力学治療用光増感剤として研究されている。
ん細胞ではこのPEPT1が多く発現していることが明らかとなっ
S
このような特徴をもつ光増感剤として表 -1に示す化合物が注
目されている4)。これらの光増感剤の開発は1980 年代より行わ
これらの化合物はHpDに続く「第二世代の光増感剤」として
た。このがんにおいてはALAの取り込み能が高いと考えられる。
研究が行われており,いくつか臨床応用まで行われている。特
③プロトポルフィリンを排出するトランスポーター
徴は,赤色領域の吸光係数が高く,一重項酸素の生成能が向上
ALAから生成したプロトポルフィリンは薬剤排出トランス
しており,水溶性である4)。しかしながら腫瘍選択性の向上に
ポーターのABCG2によって排出されることが知られている。プ
は至っていない。
ロトポルフィリンを蓄積しやすいがん細胞ではこのABCG2の発
現が低いことが明らかとなった。このがんにおいては生成した
3.アミノレブリン酸投与後の
プロトポルフィリンは細胞外に排出されにくいと考えられる。
腫瘍特異的ポルフィリン蓄積
4.光増感剤の腫瘍マーカーへの応用
前述のようにこれまで用いられていた光増感剤は腫瘍選択性
が低いため,臨床応用の拡大には至らなかった。1990 年にア
腫瘍マーカーは,がん細胞またはがんに反応した非がん細胞
ミノレブリン酸(ALA)が初めてがん患者に投与されて以来
が作る物質で,それを体液・組織・排泄物中に検出することが,
-13-
418
総
説
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 88〔12〕(2015)
がんの存在・種類および量を知る目印となるものと定義されて
ど蛍光が観測されないのに対し,投与後は著しく高い蛍光強度
いる。腫瘍マーカーを用いた方法は,簡便に検査できる反面,
が検出されている。さらに正常マウスの血清と比較しても蛍光
医療機器を用いる方法よりも信頼性が低いという欠点がある。
強度は充分高いことから腫瘍マーカーへの応用が期待されて
がん胎児性抗原(Carcinoembronic Antigen,CEA)は,胃,大
いる。
腸,膵臓,肺など多くの臓器の細胞で産出されるため,約 20%
5.おわりに
もの擬陽性があると言われている。そのため,数種類のマー
ポルフィリンの腫瘍親和性が初めて報告されて以来 80 年間
を向上させるために新しい腫瘍マーカーの開発が求められてい
に光線力学治療用の光増感剤の開発が進み,臨床応用されるよ
る。現在用いられている腫瘍マーカーのほとんどはタンパク質
うになってきた。光線力学治療はがんのみならず成長の速い細
であるが,新たな腫瘍マーカーとして蛍光物質の利用が考えら
胞や組織を破壊するため,加齢性黄斑変性症の網膜でできる異
れている。蛍光物質は,検出が比較的容易かつ検出感度も高く,
常な新生血管のほか,動脈硬化の原因となるアテローム斑など
マーカーとして利用価値が高い。その中でも,新たな腫瘍マー
のさまざまな疾病に対する効果が検討され始めている。また,
カーとして生体内物質であるポルフィリンが期待されている。
ポルフィリンを用いたがんの局部診断ならびに腫瘍マーカーと
正常マウスに比べ,担がんマウスの血中のポルフィリン濃度
しての応用も検討され始め,光増感剤の医療分野における有用
LE
カーを組み合わせて用いるのが一般的であり,がん検出の精度
は高いことが知られている10)。しかし,その差は十分でない
性も拡大している。
ため,がん診断への応用は困難であった。そこで,担がんマウ
スにALAを投与し,過剰に生成されるポルフィリンを腫瘍マー
文 献
カーとして利用する試みがなされている。血中のポルフィリン
1)R. Bonnett: Chem.Soc.Rev., 24, 19(1995).
2)W. B. Henderson, T. J. Dougherty: Photochem. Photobiol., 55, 145(1992)
.
3)G. Jori: Photochem.Photobiol., 52, 439(1990).
4)E. S. Nyman, P. H. Hynninen: J. Photochem. Photobiol. B, 73, 1(2004)
.
5)J. C. Kennedy, R. H. Pottier, D. C. Pross DC: J. Photochem.
Photobiol. B, 6, 143(1990).
6)L. Baert, R. Berg, B. Van Damme, M. A. D'Hallewin, J. Johansson,
K. Svanberg, S. Svanberg: Urology, 41, 322(1993).
7)F. Koenig, F. J. McGovern, R. Larne, H. Enquist, K. T. Schomacker,
T. F. Deutsch: BJU Int., 83, 129(1999).
8)M. Hayashi, H. Fukuhara, K. Inoue, T. Shuin, Y. Hagiya, M.
Nakajima, T. Tanaka, S. Ogura: PLoS ONE, 10, e0122351(2015).
9)Y. Hagiya, Y. Endo, Y. Yonemura, K. Takahashi, M. Ishizuka, F.
Abe, T. Tanaka, I. Okura, M. Nakajima, T. Ishikawa, S. Ogura:
Photodiagnosis and Photodynamic Therapy, 9, 204(2012)
.
10)P. Jichlinski, M. Forrer, J. Mizeret, T. Glanzmann, D. Braichotte, G.
Wagnieres, G. Zimmer, L. Guillou, F. Schmidlin, P. Graber, H. van
den Bergh, H. J. Leisinger: Lasers Surg. Med., 20, 402(1997).
11)M. Ishizuka, Y. Hagiya, Y. Mizokami, K. Honda, K. Tabata, T.
Kamachi, K. Takahashi, F. Abe, T. Tanaka, M. Nakajima, S. Ogura, I.
Okura: Photodiagnosis and Photodynamic Therapy, 8, 328(2011).
を腫瘍マーカーとして利用することで,簡便にがん診断が行え
ると期待されている。ALAを投与することで,がん細胞内に
ポルフィリンが蓄積する。蓄積したポルフィリンは,細胞外へ
P
拡散し,血中のポルフィリン濃度が増加する11)。図 -3に担が
4
3
M
Fluorescence intensity / a.u.
んマウス血清の蛍光スペクトルを示す。ALA 投与前はほとん
ALA投与後
2
1
0
550
ALA投与前
600
650
700
Wavelength / nm
A
図 -3 担がんマウス血清の蛍光スペクトル
S
Cancer Therapy and Diagnosis Using Photosensitizers
Shun-ichiro OGURA*,†
* Graduate
School of Bioscience and Biotechnology, Tokyo Institute of Technology,
4259-B47 Nagatsuta-cho, Midori-ku, Yokohama, Kanagawa 226-8501, Japan
†Corresponding Author, E-mail: [email protected]
(Received September 1, 2015; Accepted September 6, 2015)
Abstract
In clinical fields, cancer diagnosis and therapy using photosensitizer are established. These methods are named photodynamic therapy (PDT)
and photodynamic diagnosis (PDD), respectively. Recent activity has created a number of photosensitizer for PDT and PDD. In this article,
recent progress of PDT and PDD are introduced.
Key-words: Photosensitizer, Photodynamic therapy, Photodynamic diagnosis, Cancer
-14-
419
総 説
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 88〔12〕,419–423(2015)

超音波による欠陥と物性の可視化
燈 明 泰 成*,†
*東北大学大学院工学研究科ナノメカニクス専攻 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 6-6-01(〒 980-8579)
† Corresponding Author, E-mail: [email protected]
(2015 年 8 月 29 日受付,2015 年 9 月 18 日受理)
LE
要 旨
超音波により製品内部の「欠陥」や,物質の「物性」を可視化・評価することができる。これは不連続界面で超音波が反射することと,
超音波の伝搬速度が物質の弾性に関連することによる。本稿では,はじめに超音波によりきわめて薄い欠陥が検出できることを示す。
また検査対象の水非接触下において内部を可視化できるドライコンタクト超音波法を紹介する。さらに高分子フィルムの熱劣化にと
もなう物性変化を超音波により捉えた事例を紹介する。
キーワード:非破壊検査,超音波映像装置,ナノメートル隙間,ドライコンタクト,音響共鳴
1.はじめに
cL =
1 −ν
E
ρ (1 + ν ) (1 − 2ν )
(2)
ここでEは縦弾性係数,νはポアソン比である。音速が物質の
弾性と関連があるため,これに起因して式(1)に示す反射率
P
材料,製品や人体の内部の可視化や検査に超音波が幅広く利
用されている1-3)。超音波とは可聴音を上回る20 kHz 以上の高
が変化する場合がある。たとえば金属材料の結晶粒はミクロ
レベルでは弾性の異方性を有しており,結晶粒ごとに反射波
界面を通過する際,そのエネルギーの一部が反射されるが,そ
の強度がわずかに異なる。そこでこれを利用して超音波によ
の際の反射率(=反射波のエネルギー/入射波のエネルギー)
り金属材料の結晶組織をエッチングすることなしに観察可能
は次式で与えられる4)。
であるが2),そのような目的では非常に高い可視化の分解能が
M
い周波数の音波であり,これにより可視化・評価できるものは
「欠陥」と「物性」に大別される。超音波が異なる物質 1,2の
 Z − Z1 
R12 =  2

 Z1 + Z 2 
2
(1)
要求される。一般に分解能は波長λ(=c/f,f は周波数)によっ
て決定され,λが短いほうが高分解能となる。光の波長が360
ここでZ(=ρc)は音響インピーダンス,ρ,cはそれぞれ密度
~ 830 nmであるのに対し,極低温ヘリウム中を伝搬するf=
と音速であり,下添え字 1,2は物質 1,2をあらわす。たとえ
4.2 GHzの超音波のλは57 nmとなり,そのような環境下におい
ば鋼の音響インピーダンスが46.5
て光学顕微鏡を上回る分解能での観察が実現されている6)。
MNm-3 sであるのに対し,
本稿では,はじめに超音波による「欠陥」の可視化に関
A
空気のそれは0.0004 MNm-3 sときわめて小さく,両物質の界
し,どの程度の欠陥が可視化できるかを検証した実験を紹介
する7)。また一般的な超音波検査には音響媒体として水を用い
鋼中に空孔などの欠陥がある場合は欠陥で超音波が全反射され
るが,水などを嫌う物質の検査のために開発されたドライ超
ることから,その反射波を捉えることで欠陥の存在を知ること
音波法について紹介する8)。最後に「物性」の評価に関し,高
ができる。一般的に超音波は圧電素子を内蔵した超音波探触子
分子フィルムの熱劣化にともなう物性変化を捉えた例を紹介
により送受信されるが,これを自動ステージなどで走査して対
する9,10)。
S
面におけるR 12は1となる。このことは同界面で超音波エネル
ギーのすべてが反射されることを意味しており,したがって,
象内部の面情報を得ることで可視化が可能となり,この原理は
2.超音波による欠陥検出性
1970 年前半に開発された5)。
ところで物質中を伝搬する縦波音速は次式で与えられる4)。
〔氏名〕 とうみょう ひろのり
〔現職〕 東北大学大学院工学研究科ナノメカニクス
専攻 准教授
〔経歴〕 2003 年,東北大学大学院工学研究科機械知
能工学専攻博士課程後期 3 年の課程修了[博
士(工学)]。同年,日本学術振興会特別研
究員(PD)
。2004 年,東北大学助手。2007
年より現職。
物質内部の欠陥を可視化する超音波顕微鏡/超音波映像装置
が電子部品内部の欠陥 3) などの可視化のために利用されてい
る。それでは可視化可能な欠陥の大きさはどのくらいであろう
か? この質問は二つの意味で解釈でき,一つは欠陥の面内の
拡がりに関するものであり,もう一つは欠陥の高さに関するも
のである。前者は対象検査面内における方位分解能によって
決定され,理論的,あるいは実験的に知ることができる11,12)。
一方,後者は物質中に励起される超音波の振動振幅に関係する
が,これに関する報告は少ない7,13)。
-15-
© 2015 Journal of the Japan Society of Colour Material
420
総
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 88〔12〕(2015)
説
超音波による欠陥検出限界を捉えた実験 7) を紹介する。厚
さ0.5 mmのSiウ エ ハ よ り 切 り 出 し た2 枚 の チ ッ プ の 一 方 に
れ,目的に応じて両手法を併用することで効果的な可視化・評
価が行える。
Fig. 1(a)に示すパターンを高速原子線エッチングにより導入
3.ドライ超音波法の原理と実施例
し,他方のチップとダイレクトボンディングにより貼り合わせ
ることで,直径の異なるナノメートル隙間を多数内包したサン
高分解能な超音波可視化のためには音響媒体としての水が欠
プルを作製した(Fig. 1(b)は高さおよそ4 nmの隙間の寸法
かせないが,検査時の対象物と水との接触は,たとえば電子部
測定結果)。
品などの水を嫌う対象の検査では制約となる。そこでサンプル
Fig. 1(c),(d)は隙間の高さ(H)がそれぞれ140,4 nmの
サンプルを公称周波数 30 MHzの集束型超音波探触子(振動子
の水非接触下で対象の高分解能な超音波可視化を実現するドラ
イ超音波法が開発された8)。
径:6.4 mm,焦点距離:19.1 mm)を用いて可視化した例で
Fig. 2にドライ超音波法の原理を示す14)。音響媒体としての
水とサンプルとの間に薄層を挿入し,これによりサンプルが水
に触れないようにした状態で超音波を送受信する。しかしなが
165 μmであり,微小円形隙間の検出下限が方位分解の限界に
らこのままでは薄層とサンプルとの固体接触界面に空気層が存
よるものであることを確認した。一方,H= 4 nmのサンプルで
在し,式(1)からも明らかなように超音波が界面で全反射し
LE
ある。いずれも200 μm 以下の直径のパターンが可視化できて
いないが,理論的に求めた当該超音波探触子の方位分解能は
は直径 500,600 μmの隙間の中央が白くなっているが,これは
超音波入射にともなう隙間上面の弾性変形により隙間の上下面
が接触し,超音波が隙間を透過したためであると考えられ,こ
れが検出上限である(700 μm 以上の隙間も識別できていない
が,これは上下面の衝突によるものではなく,サンプル作製時
に隙間が消失していたためであった)。すなわち,用いた超音
波探触子で見える欠陥は,隙間のH= 4 nmのときに,直径 165
P
~ 500 μmとなり,欠陥検出能には欠陥の三次元性(拡がりと
高さ)が関係する。
ところでX 線を用いて物質内部の欠陥を可視化できるが,当
該手法は欠陥部と健全部を透過したX 線の減衰量が異なること
を利用するものであり,ボイドなど,それ自体が体積を有する
and a block diagram of measurement system. Reprinted
from 14 ) with permission from Elsevier.
M
欠陥の可視化に適している。一方,剥離などの体積が小さな欠
Fig. 2 Schematic of dry-coupled acoustic microscopy technique
S
A
陥の可視化には原理的に超音波法のほうが好適であると考えら
Fig. 1 ( a ) Pattern of gaps fabricated on a Si chip. ( b ) An
example of the height profile of a circular gap for H =
4 nm. (c) and (d) are acoustic images ( 4.5 × 4.5 mm)
and the values of H for the images in (c) and (d) were
140 and 4 nm, respectively. Reprinted from 7 ) with
permission from the Acoustical Society of America.
Fig. 3 (a) Whole view of the system. (b) Details of the dry-
-16-
contact ultrasonic unit.
超音波による欠陥と物性の可視化
421
てしまうためにサンプル中に超音波が伝搬できない。そこで薄
Fig. 4(a)に封止樹脂に覆われた電子部品の内部を厚さ9 μm
層とサンプルとの間を真空ポンプにより減圧して同接触界面に
のポリ塩化ビニル(PVC)フィルムを用いたドライ超音波法
およそ0.1 MPaの負圧力を作用させ,これにより薄層をサンプ
により可視化した例を,Fig. 4(b)に従来の水没下で可視化し
ルに密着させることで,サンプル中に超音波を伝達する。しか
た例を示す16)。いずれも電子部品内部の剥離が可視化できて
しながら,0.1 MPaなる圧力は固体接触界面において十分な音
いるが,従来法では剥離部に水が浸入して不鮮明な箇所がある
響結合を得るのに必ずしも十分ではなく15),この圧力で密着
のに対し,ドライ超音波法では鮮明に剥離部が可視化できてい
できる薄層を選定することが肝要となる16)。
る。またドライ超音波法により従来水没時と同等に内部の微細
Fig. 3はドライ超音波法を実施するためのユニットであり,
な配線が可視化できていることがわかる。
実装前にはんだボールを一つ欠落させてベアチップ実装し
夫が施されている。薄層としては高分子フィルム,あるいは軟
た電子パッケージの接合部を可視化した例を紹介する(Fig. 5
質のラバー 14)が利用できる。一般に薄い高分子フィルムを用
(a)および(b))。Fig. 5(c)は厚さ9 μmのポリ塩化ビニリデ
いたほうが高分解能な音響イメージを収録できるが,ラバー膜
ン(PVDC)フィルムを用いたドライ超音波法により可視化し
を用いた場合は繰り返しドライ超音波検査を実施することがで
た例であり,Fig. 5(d)は従来の水没下で可視化した例であ
きる。
る17)。いずれも矢印で示す,はんだボールの欠落部が可視化
LE
減圧経路を制御しながら薄層をサンプルに密着させるための工
できているが,ドライ超音波法で取得した画像のほうが幾分
鮮明である。これはPVDCフィルムの挿入により水とシリコン
チップとの間の音響不整合が緩和され,水から電子パッケージ
内部への超音波伝達効率が改善したためであり,音響共鳴とよ
ばれる現象である18)。次節ではこの音響共鳴現象を利用した
高分子フィルムの評価について紹介する。
P
4.音響共鳴現象を利用した高分子フィルムの劣化検出
Fig. 6(a)に水と音響インピーダンスが大きなタングステン
板との間に厚さ8 μmのPVCフィルム,または厚さ12 μmの低密
Fig. 4 Acoustic images of the delamination between the
encapsulated resin and the chip pad obtained under (a)
the PVC-contact and (b) the water immersion. Reprinted
from 16 ) with permission from Elsevier.
度ポリエチレン(LDPE)フィルムを挿入して板の裏面からの
示す19)。いずれのフィルムを挿入して得た振幅スペクトルも
S
A
M
反射波を取得し,これを周波数解析して得た振幅スペクトルを
Fig. 5 (a) Whole view of the package mounted on a PCB. (b)
Back view of the package before mounting. (c) is the
acoustic image obtained by the dry-contact technique
using a PVDC film, and (d) is obtained by the usual
water immersion technique. The defective joint is
indicated by the arrows. Reprinted from 17 ) with
permission from IEEE.
Fig. 6 Results of the frequency analysis. (a) Amplitude spectra
of the back-wall echoes of the tungsten plate with (ϕ 1 )
and without (ϕ 2 ) the polymer film. (b) Amplitude ratio γ
(= ϕ 1 /ϕ 2 ). Reprinted from 19 ) with permission from The
American Institute of Physics.
-17-
422
総
説
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 88〔12〕(2015)
Fig. 7 Optical microscope images of the LLDPE films together with the changes in the acoustic properties against temperature. Ranges of
P
LE
all vertical axes are set to 25% of their values without heating. Reprinted from 9 ) with permission from The American Institute of
Physics.
Fig. 8 Optical microscope images of the LLDPE films together with the changes in the acoustic properties against heating time. Ranges
M
of all vertical axes are set to 25% of their values without heating. Reprinted from 10 ) with permission from The Japan Society of
Applied Physics.
有効な周波数帯域においてフィルムの非挿入下で得たそれを上
換赤外分光法による分析を行ったところ,当該フィルムが酸化
回っていることがわかる。Fig. 6(b)に振幅スペクトル比(=
していたことが確認され,ρTやcTの変化が酸化の進行を捉えた
薄膜挿入時の振幅スペクトル/薄膜非挿入時の振幅スペクト
ものと推察された。同じフィルムに対する熱劣化の要因の相違
ル)を示すが,その値は周波数の関数となっており,ある周波
を捉えることができたことより,光学顕微鏡観察と超音波観察
数(共鳴周波数)において最大値を取っている。これが音響共
の併用がフィルムの劣化検知にきわめて有効であるといえる。
音響共鳴現象を利用して,高分子フィルム内の微小な空孔欠
音響インピーダンスに,また共鳴周波数がフィルムの音速と厚
陥を高感度に検出することも可能である21)。また鋼板の両面
さに関係することから20),これを利用して薄層のZ,ρ,cを測
に施工された塗膜の厚さを同時に計測したり22),膜厚分布を
定することが可能である。詳細な理論は文献 19)に記載され
画像として可視化することも可能である23)。
A
鳴現象である。振幅スペクトル比の最大値が高分子フィルムの
ており,ここでは実際の評価例を紹介する9,10)。
5.おわりに
Fig. 7は異なる温度に加熱した金属板の間に厚さ12 μmの直
S
鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)フィルムを挿入して熱
本稿では,超音波で可視化可能な「欠陥」と「物性」に関し,
劣化させたLLDPEフィルムをガラス板に真空吸着し,音響物
はじめに超音波によりどの程度の大きさの欠陥が可視化できる
性値の取得とともに光学顕微鏡観察を実施した例である9)。音
かの実例を示した。また一般的な超音波法では可視化対象が水
響インピーダンスZTにあまり変化はないが,音速cTは加熱温
に触れるが,対象の水非接触下で可視化可能なドライ超音波法
度 115 ℃以上で低下している。一方,光学顕微鏡画像を見る
を紹介した。さらに高分子フィルムの熱劣化にともなう物性変
と115 ℃では小さなセル構造の形成が認められ,cTの減少は
化が音響共鳴現象を利用して検知できることを示した。
紹介した研究の理論などの詳細については著者の総説論文 24)
LLDPEの結晶化にともなうフィルムの弾性の変化を捉えたも
のと推察された。
に詳しい。また,紹介したドライ超音波技術を応用した製品に
Fig. 8は100 ℃に設定した大気炉中に上記と同じLLDPEフィ
ついてはJFEテクノリサーチ㈱のHP 25)をご覧いただきたい。
ルムを放置して熱劣化させ,音響物性値の取得とともに光学顕
微鏡観察を実施した例である10)。この場合は光学顕微鏡画像
謝 辞
に変化は認められなかったが,密度ρTやcTは加熱時間の増加と
ともに変化し,やがて飽和していることがわかる。フーリエ変
-18-
本稿の執筆に際し,東北大学 坂 真澄 教授には有益なご討
超音波による欠陥と物性の可視化
論をいただいた。ここに感謝の意を表します。
文 献
12)C. Canumalla: IEEE Trans. Comp. Packag. Technol., 22, 582(1999).
13)小倉幸夫:応用物理 , 66, 467(1997).
14)H. Tohmyoh, T. Akaogi: NDT&E Int., 40, 368(2007).
15)B. Drinkwater, R. Dwyer-Joyce, P. Cawley: J. Acoust. Soc. Am., 101,
970(1997).
16)H. Tohmyoh, M. Saka, T. Akaogi: Mech. Mater., 41, 1172(2009).
17)H. Tohmyoh, M. Saka: IEEE Trans. Ultrason., Ferroelect., Freq.
Contr., 51, 432(2004)
.
18)L. M. Brekhovskikh: Waves in Layered Media. Academic Press,
New York(1960).
19)H. Tohmyoh, T. Imaizumi, M. Saka: Rev. Sci. Instrum., 77, 104901
(2006).
20)H. Tohmyoh: J. Acoust. Soc. Am., 120, 31(2006).
21)H. Tohmyoh, H. Ikarashi: Jpn. J. Appl. Phys., 52, 028001(2013).
22)H. Tohmyoh, T. Sunaga, M. Suzuki: Rev. Sci. Instrum., 83, 034903(2012)
.
23)T. Sunaga, H. Tohmyoh, M. Suzuki: Thin Solid Films, 544, 437(2013).
24)H. Tohmyoh: Mech. Eng. Rev., 2, 14-00340(2015).
25)http://www.jfe-tec.co.jp/product/ultrasonic/index.html
LE
1)Z. Yu, S. Boseck: Rev. Mod. Phys., 67, 863(1995).
2)R. S. Gilmore: J. Phys. D: Appl. Phys., 29, 1389(1996).
3)P. Yalamanchili, A. Christou, S. Martell, C. Rust: IEEE Circuit Dev.
Mag., 10, 36(1994)
.
4)日本非破壊検査協会:"超音波探傷 III"(2001).
5)R. A. Lemons, C. F. Quate: Appl. Phys. Lett., 24, 165(1973).
6)J. S. Foster, D. Rugar: Appl. Phys. Lett., 42, 869(1983).
7)H. Tohmyoh, M. A. S. Akanda: J. Acoust. Soc. Am., 126, 98(2009).
8)H. Tohmyoh, M. Saka: IEEE Trans. Ultrason., Ferroelect., Freq.
Contr., 50, 661(2003).
9)H. Tohmyoh, Y. Sakamoto: Rev. Sci. Instrum., 85, 024902(2014).
10)Y. Sakamoto, H. Tohmyoh: Jpn. J. Appl. Phys., 53, 086601(2014).
11)L. Bechou, Y. Ousten, B. Tregon, F. Marc, Y. Danto, R. Even, P.
Kertesz: Microelectron. Reliab., 37, 1787(1997).
423
Visualization of Defects and Physical Properties by Ultrasound
* Department
P
Hironori TOHMYOH*,†
of Nanomechanics, Tohoku University, 6-6-01 Aoba, Aramaki, Aoba-ku, Sendai, Miyagi 980-8579, Japan
†Corresponding Author, E-mail: [email protected]
(Received August 29, 2015; Accepted September 18, 2015)
M
Abstract
Defects in products and the physical properties of materials can be visualized or evaluated by ultrasound. This is because ultrasound is
reflected at the discontinuity and the sound velocity is related with elasticity of materials. First, this article shows that very thin defects can
be visualized by ultrasound. Dry-contact ultrasonic technique, which visualizes the internal structure in a sample without getting the sample
wet, is introduced. Moreover, changes in the physical properties of a polymer film due to the thermal degradation can also be detected by
ultrasound.
S
A
Key-words: Nondestructive inspection, Scanning acoustic microscopy, Nanometer gap, Dry-contact, Acoustic resonance
-19-
424
総 説
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 88〔12〕,424–427(2015)

理研小型中性子源RANSによる非破壊可視化技術
大 竹 淑 恵*,†
*理化学研究所光量子工学領域中性子ビーム技術開発チーム 埼玉県和光市広沢 2-1(〒 351-0198)
† Corresponding Author, E-mail: [email protected]
(2015 年 10 月 20 日受付,2015 年 11 月 8 日受理)
LE
要 旨
中性子線による計測利用は大強度大型施設によりこれまで行われています。理研では,実用化,産業利用等を目指した加速器駆動
小型中性子源システムを開発しています。理研小型中性子源システムRANSを利用した中性子イメージング実験では,中性子線の特
徴である金属に対する高い透過能と水素感度が高いことを利用し,塗膜下鋼材内部腐食と関係する時間を追った水の動きの可視化に
成功しました。高速中性子線は数十センチのコンクリートを透過することができます。RANSによるインフラ非破壊観察技術開発と
構造解析技術の取組みを紹介します。
キーワード:中性子線,非破壊観察,インフラ予防保全,鋼材内部観察
研究用原子炉から発生される熱中性子や冷中性子と呼ばれる波
としての振る舞いが顕著な,波長 0.18 nm 以上の中性子散乱現
P
1.はじめに
象を用いた物質構造解析研究や中性子によるイメージング(ラ
線は金属などに対する高い透過能を有するとともに,水素やリ
ジオグラフィー)などが主であり,原子炉を有する限られた施
チウム,ホウ素といった軽元素に対して高感度である。X 線は
設のみで利用が可能であった。近年,大型加速器を利用した中
鉄などの重い元素ほど透過しにくい一方,水などの軽元素に対
性子源として国内では大強度陽子加速器施設 J-PARCが稼働を
しては感度が低い。たとえば産業用 X 線 CT 装置でも厚さ1 cm
開始し,学術のみならず産業界からもより多くの高度な中性子
M
物質内部の非破壊観察にはX 線がよく知られている。中性子
利用が展開されている。たとえば,J-PARCにおける産業利用
的な役割を果たす新たな非破壊検査の手法の一つとして中性
枠ビーム利用は約 3 割を占めており,すでに採択可能課題数割
子線が現在注目されている。X 線と相補的な特徴を有する中性
合から上限数に達していると言われており,いかに中性子線利
子線を利用して,化学プラントなどで利用されている金属配管
用のすそ野を広げるか,が喫緊の課題となっている。これまで
などの腐食の原因となる断熱材に浸透した水分量の計測や腐食
中性子線の利用はこういった大型施設利用に限られており,年
部分の特定,また鉄鋼業での鉱石やコークスに含まれる水分測
間数日間のみ利用可能でありリソース不足が中性子利用の大き
定などに用いられている「中性子水分計」1)という非破壊検査
な難点となっている。このような背景を受けて,比較的手軽に
A
程度以上の鋼板内部の観察は困難となることより,X 線と相補
装置がある。水分計は,中性子線源としてラジオアイソトープ
利用可能な,手元で使える中性子線装置に対する期待が高ま
(241 Am/Beや252 Cfなど)が用いられている。そこから発せられ
り,理化学研究所(理研)ではとくに産業利用への展開を主眼
る速中性子(中性子エネルギーが数 MeV)は配管の断熱材や
とした日常使いが可能となるコンパクトな中性子源の開発なら
鉱石などに浸透した水分中の水素と衝突してエネルギーを失
S
う。このエネルギーを失った中性子(熱中性子と呼ばれ,エネ
ルギーは約 25ミリ電子ボルト)を計測することにより,水分
を検出している。つまり,線源からは高速中性子が発生される
が低速中性子のみを検出することにより水分の存在を示す非破
壊検査装置である。水分計以外での中性子利用を紹介すると,
〔氏名〕 おおたけ よしえ
〔現職〕 理化学研究所光量子工学研究領域中性子
ビーム技術開発チーム チームリーダー
〔経歴〕 1989 年早稲田大学大学院博士課程修了,理
学博士。国立茨城工業高等専門学校助手。
1993 年京大大学院研究員(文部省),1995 年
ILL 研究所(仏国)研究員,1996 年理化学
研究所研究員,2013 年同研究所チームリー
ダー。専門は,量子干渉,中性子光学,中
性子干渉実験,小型中性子源システム開発。
日本中性子科学会評議員。
http://rans.riken.jp/
© 2015 Journal of the Japan Society of Colour Material
-20-
図 -1
RANS(RIKEN Accelerator-driven compact Neutron
Source)全体写真。陽子イオン源から発せられた陽子
線が線形加速器により7 MeVまで加速され,ターゲッ
トステーション内の金属ベリリウムターゲットに衝突
し中性子線を発生する。中性子線はビームラインを通
り,ターゲットから約 5 m 離れた位置にあるサンプル
検出ボックス内で検出される。ボックス内には,中性
子照射サンプルと実験目的に応じて異なる二次元検出
器などが設置される。
理研小型中性子源 RANSによる非破壊可視化技術
425
びに整備高度化を開始した2,3)。図 -1が理研小型中性子源シス
テムRANS(RIKEN Accelerator-driven compact Neutron Source
ランズ)の全体である。RANSは,「いつでも,どこでも中性
子線」を利用したい人のニーズに応えるシステムの実現を目指
している。
本稿では,理研小型中性子源システムRANSの紹介,鉄鋼企
業連との共同研究による最初の成功例として塗膜下鋼材内部腐
食と水の出入りの可視化成功を紹介する。さらにX 線と高速中
性子線を利用した数十 cm 厚のコンクリート材料の内部可視化,
さらに橋梁など大型構造物健全性診断システム開発へ向けた取
組みを紹介していく。
LE
2.理研小型中性子源システムRANS
理研 RANSにおける小型中性子源の開発方針は,大きく二つ
ある。まず第 1に,工業製品や材料検査,材料開発などに容易
に利用可能な装置であること。これは近い将来,企業や大学,
非破壊検査施設など,多くの利用者がアクセス可能な場所に導
入できるような普及型装置への発展を目指す方向性である。も
う一つの方針は,橋梁などに代表される大型構造物の透視検
査,つまり,インフラ非破壊健全性診断システムを目指した,
中性子線による非破壊観察を必要とする“現場で使える中性子
P
線”装置開発。
これらの方針の反映として,われわれは中性子源のみならず
放射線遮蔽も含むシステム全体がコンパクトであり,メンテナ
ンスが比較的容易にでき,安全性が十分確保されることを念頭
に置いてまず第 1 号機となるRANSを開発した。RANSでは加
M
速器本体が稼働中稼働後も放射化が少なくかつ軽量である陽子
線線形加速器を採用し,中性子発生効率の高い陽子線による
低エネルギー核反応ベリリウム-陽子中性子反応(Be
(p,n)
B)
図 -3
塗膜下鋼材内部腐食の中性子線による非破壊観察(a)
塗膜下鋼材内部腐食を含む合金鋼板(左)と普通鋼板
(右)写真(b)中性子線による透過画像。真ん中に見
える暗い部分が塗膜下鋼材内部腐食により中性子が散
乱され影となっている様子。(c)合金鋼板,普通鋼板
を蒸留水で飽和させ,その後時間によって変化する水
の量,つまり塗膜下における水の動きの中性子線によ
る観察の様子。
を利用した中性子源を構築し,2013 年より2 年間の安定連続運
104
103
高速中性子
E~1 MeV
S
中性子強度
[cm-2g-1]
A
用を実施した。ターゲットは2 年間運転後確認され,「高耐久
低エネルギー中性子
E~50 meVλ~0.13 nm
102
10
10-9
10-6
10-3
1
中性子エネルギー
[MeV]
図 -2
ターゲットから約 5 mの検出器ボックス位置での中
性子スペクトル(シミュレーション結果)横軸エネ
ルギー。縦軸は1 平方センチ,1 秒当たりの中性子数。
右側のピークの中心エネルギー値 1 MeV(高速中性
子)
。左側の低エネルギー中性子のピーク中心エネル
ギー値は約 50 meV(波長 0.13 nm,熱中性子近傍)。
図 -4 現物に基づく構造解析プロセスによる強度予測
-21-
426
総
説
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 88〔12〕(2015)
性長寿命ターゲット」3)の損傷はまったく見られておらず,こ
に,疲労や劣化等による道路橋の損傷に対しては早期に適確な
れまでの陽子線利用による金属ターゲット水素脆化の困難は克
対応を行うことが絶対不可欠であり,道路橋の安全・安心の確
服された。
保および架け替え等による多額な投資を回避していくためにも
RANS 中性子線のエネルギー分布を図 -2に示す。
わが国の道路橋の経年劣化に対する対策は喫緊の課題となって
RANSでは百万電子ボルト(MeV)から数十ミリ電子ボルト
いる。しかし,コンクリート中に埋め込まれた部材や,その構
(meV)というエネルギー領域が8 桁異なる中性子を同時に利
造から直接見ることのできない部分などに重大な損傷が隠れて
用することができる。次章では,低エネルギー中性子線を利用
いることがある。内在する亀裂,空隙や鉄筋腐食など内在する
した,中性子イメージングと中性子線回折による鉄鋼組織変形
損傷や劣化を科学的にかつ確実に発見し,的確に診断できる高
前後の金属材料組織変化観察について述べる。
度な非破壊検査手法の実用化が期待されている。
4.1 コンクリートと鋼材の高速中性子観察
3.鉄鋼材料へのRANS利用
鉄筋コンクリートをおもに使用したRC(Reinforced Concrete)橋,
コンクリート内部に埋設されたシース管内に鋼材を挿入して圧
企業 4 社ならびに国内鉄鋼研究者らとの共同研究を2013 年より
縮応力を付与したうえでクラウト(コンクリート)にて密閉す
実施している4,5)。この共同研究体制の中,RANSでは塗膜下
ることで強度を維持するPC(Pre-stressed Concrete)橋が多く
LE
理化学研究所では,日本鉄鋼協会の研究会の活動として鉄鋼
鋼材内部腐食ならびに水の出入りの可視化に世界初の成功をお
を占める。RCおよびPC 橋では,コンクリートを補強する鋼材
さめた6)。ここでは簡単にRANS 中性子イメージング実験の様
が橋梁の強度を維持するうえで非常に重要となる。通常施工後
子と実験結果を説明する。図 -1 中央のターゲットステーショ
は,コンクリートによって鋼材が保護されているために鋼材が
ン内で発生された中性子線は約 5 m 飛行したのち,同図左のサ
腐食することはないが,なんらかの原因によりコンクリート内
ンプル検出ボックス内にサンプルと中性子検出器が設置され
に水が浸入し,自然暴露下での日照り,夜露,雨,といった水
る。イメージング用中性子検出器として今回は,中性子線を光
の出入りが活発に繰り返されることなどにより鋼材が腐食する
に変換するコンバーター(6 LiF/ZnS
(Ag)厚さ0.4 mm)と光
と強度の維持が難しくなる。しかし,鋼材は数十 cmの厚みと
なるコンクリートに遮られているために,非破壊検査は難しく
コンクリートをはつるなど破壊をともなう検査が行われてい
P
センサー(1100 万画素の冷却 CCD)の組み合わせを利用した。
サンプルは神戸製鋼所より試供され,供試材は,厚さ6 mm ×
る。高速中性子は,30 cm 厚以上のコンクリートを透過可能で
あるうえに,水に対する感度を有する。そこでわれわれは橋梁
板 7) を用いた。両鋼板について,市販の変性エポキシ樹脂塗
非破壊検査を最終目的とする,全天候型高速中性子大面積イ
料を用いて,膜厚 240 μmの塗装を施し,養生後にカッターナ
メージング検出器を開発した。屋外使用を考え,プラスチック
M
幅 70 mm ×長さ150 mm 寸法の普通鋼板(JIS-SM400 相当)と
0.8Cu-0.4Ni-0.05Ti(mass %)を主成分とする塗装用合金鋼
イフにて人工塗膜欠陥を付与し,塗装耐食性試験を720サイク
シンチレータとMPPCを組み合わせ,最適化した信号処理回路
ル(6 カ月)行った。このようにして,両鋼ともに,人工塗膜
を搭載した検出器がそれである。30 cm 厚のコンクリートサン
欠陥部を起点に,塗膜下でのさびを進行させて,塗膜ふくれを
プル内部に鋼材 0 本,1 本,2 本と異なる本数の違いの観察に成
生じさせた(図 -3(a)参照)。RANS 中性子線による塗膜下鋼
功し9)現在 1 辺 1メートル,1024チャンネルの全天候型(防水型)
材内部腐食が図 -3(b)である。真ん中に見える暗い部分が塗
大面積高速中性子イメージング検出器による,撤去橋梁サンプ
膜下鋼材内部腐食により中性子が散乱され影となった部分であ
ル観察に取り組んでいる。
4.2 X線CT装置とシミュレーション診断
A
る。さらに,両鋼材を蒸留水で飽和させ,その後 2 時間エアブ
最後にX 線 CT 断層画像を基にした三次元データのモデル化,
ローにより乾燥させた。飽和直後,1 時間後,2 時間後の鋼材
内部の水を非破壊で可視化したものが図 -3(c)である。
さらに構造力学シミュレーションについて紹介する。図 -4は,
実際の鉄筋コンクリート構造部(住宅基礎部材)から切り出さ
れた部材のX 線 CTイメージング断層画像を基に,部材を構成
広がった分布を示していることがわかる。これらは両鋼のさび
する粗骨材,セメントコンクリート部,鉄筋部材および空洞ご
の違いによる塗装耐食性の差異を反映している可能性があり,
とに異なる媒質として定義された三次元モデルを示す。さら
小型中性子源による中性子線イメージング利用によるさらなる
に,住宅基礎部材に圧縮荷重が負荷された状態を想定した解析
S
合金鋼塗膜下腐食に関係する水の動きは普通鋼より速く,乾
燥がより短時間で起こっており,また普通鋼のほうが空間的に
腐食メカニズム解明への期待が高まっている。
を行った。解析結果は図 -4(e)に示す。粗骨材および鉄筋部
材がほかの部分より大きい応力が発生しており,圧縮負荷に対
4.社会インフラ健全性診断へ向けて
して重要な役割を担っていることが観察できる。
国内のインフラの予防保全は経済的背景も含め大きな課題で
効果的な橋梁の予防保全を実現するには,小型中性子源など
ある。わが国には,高速道路から市町村道に至るまでの約 120
による内部劣化情報の取得に併せて,観察されたコンクリー
万 kmの道路に,約 70 万橋が,橋長 15 m 以上の大型橋梁は約 15
ト亀裂,鉄筋やPC 鋼材の断面積減少や破断,空洞,錆等の存
万橋にも上る8)。建設後 40 年を超える橋梁が,2015 年(平成
在が橋梁構造全体にどのように影響を及ぼすかを的確に診断で
27 年)現在約 40%に相当する約 6.4 万橋になっている。国土交
きるシステム構築が必要不可欠である。しかし,従来のものづ
通省直轄国道橋梁に関する点検結果では,40 年以上経過した
くり支援を主体とする情報技術(CAD/CAE/CAM)では,あ
橋の約半分に対して早急な補修が必要とされている。このよう
くまでも設計形状,すなわちCADで表現された理想的な形状,
-22-
427
理研小型中性子源 RANSによる非破壊可視化技術
および均質な材質で構成されていることを前提としている。そ
のため,すでに供用中の橋梁のように劣化などにより実物が設
計形状と異なり,内部欠陥や不均一な物性をもつ状態を考慮す
る必要がある事例では,計算力学的手法の適用は難しく,おも
に統計手法に基づく健全性評価が試行されている10)。
前述のように解決すべき技術的課題はあるが,屋外利用可能
な小型中性子源の実用化に向けた研究開発を積極的に推進する
ことで,車両内部に小型中性子源とデータ解析システム,橋梁
の下部に大面積イメージング検出器が搭載された中性子源によ
る橋梁の非破壊検査システム,すなわち橋梁健全性診断システ
ムを実用化させることは可能である。
本研究は,文部科学省,光・量子融合連携研究開発プログラ
1)吉岡良浩:R&D 神戸製鋼技法 , 57(3), 12(2007).
2)広田克也 , 大竹淑恵 , 山形 豊 , 王 盛:Isotope News, No.717,
36(2014).
3)Y. Yamagata, K. Hirota, J. Ju, S. Wang, S. Morita, J. Kato, Y. Otake,
A. Taketani, Y. Seki, M. Yamada, H. Ota, U. Bautista, Q. Jia: J.
Radioanal. Nucl. Chem., 305, 787(2015)
.
4)日本鉄鋼協会 1 型研究会:"コンパクト中性子源による新組織解
析法 FS"(2013 年度)
.
5)日本鉄鋼協会:"「小型中性子源による鉄鋼組織解析法」研究会 I"
(2014-2016 年度)
.
6)山田雅子 , 大竹淑恵 , 竹谷 篤 , 須長秀行 , 山形 豊 , 若林琢己 , 河
野研二 , 中山武典:鉄と鋼 , 100, 429(2014)
.
7)中山武典 , 湯瀬文雄 , 川野晴称 , 大江憲一 , 安部研吾 , 堺 雅彦:
R&D 神戸製鋼技報 , 49(1), 29(1999).
8)深澤淳志:橋梁と基礎 , 42, 14(2008).
9)大竹淑恵 , 須長秀行:JACIC 情報 , 110, 62(2014).
10)須長秀行:"理研シンポジウム(VCADシステム研究 2010)", 74
(2011)
.
LE
ム「ものづくり現場で先端利用可能な小型高輝度中性子源シス
文 献
テムの整備・高度化」課題,日本鉄鋼協会研究会による成果を
含みます。
P
Non-Destructive Visualization Technique for the RIKEN Compact Neutron Source RANS
Yoshie OTAKE*,†
* RIKEN,
M
2-1 Hirosawa, Wako, Saitama 351-0198, Japan
†Corresponding Author, E-mail: [email protected]
(Received October 20, 2015; Accepted November 8, 2015)
Abstract
A
The large scale facilities have been provided neutron beam and its instruments. RIKEN has developed compact accelerator-driven neutron
source system for the practical use. The visualization of rust and the related moisture reduction in the steel under the film was succeeded with
RIKEN accelerator-driven compact neutron source RANS. The non-destructive inspection technique for such large scale social infrastructures
as bridges has been developed with fast neutron.
S
Key-words: Neutron beam, Non-destructive inspection, Social infrastructure preventive maintenance, Visualization inside the steel
-23-
428
総 説
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 88〔12〕,428–433(2015)

テラヘルツ波による分光イメージング
山 崎 良*,**・加 藤 三 樹 矢**・村 手 宏 輔**・今 山 和 樹**・川 瀬 晃 道**,†
*財務省関税中央分析所 千葉県柏市柏の葉 6-3-5(〒 277-0882)
**名古屋大学大学院工学研究科 愛知県名古屋市千種区不老町(〒 464-8603)
† Corresponding Author, E-mail: [email protected]
LE
(2015 年 10 月 23 日受付,2015 年 11 月 12 日受理)
要 旨
テラヘルツ波の特性を利用した非破壊検査がセキュリティ分野などにおいて期待されている。とくに,光注入型テラヘルツ波パラ
メトリック発生器(is-TPG)はテラヘルツ波を高出力発生かつ高感度検出可能なシステムであるため,郵便物内の規制薬物・爆発物
の非破壊検出・分光イメージングに応用できる可能性がある。本研究では,郵便物に隠匿された薬物などの非破壊検出に適したテラ
ヘルツ波分光技術を見いだすため,is-TPGとテラヘルツ波時間領域分光法を用いて規制薬物が隠匿された郵便物を模して作製した三
種類の糖類試薬を遮蔽物越しに透過分光を行った。さらに,is-TPGの分光イメージングシステムを用いて,従来の技術では困難であっ
た厚手の封筒内部の試薬の分光イメージングを行った。その結果,厚手の郵便物内の試薬検出においては,is-TPGによる分光または
分光イメージングが有効であることが示された。
1.はじめに
P
キーワード:テラヘルツ分光,分光イメージング,非破壊検査
危険物検査が挙げられる。また,医療分野においては,病院・
薬局で処方される包装薬の誤成分チェック,医薬錠剤のコー
ティングの品質検査,薬品工場での異種錠剤混入検査等があ
る。さらに,工業分野においては自動車・航空機の塗装検査や
応用が進められている。テラヘルツ波の周波数帯域は電波と光
セラミック・プラスチック製品の内部欠陥等の応用が見込まれ
波の中間に位置し,その両方の特長を併せもっている。すなわ
ている。
M
周波数約 0.3 ~ 10 THz(波長 1 mm ~ 30 μm)の電磁波はテ
ラヘルツ(THz)波と呼ばれ,近年,高出力光源の開発と産業
ち,電波のように紙,プラスチック,ビニール,繊維,半導体,
以上に列挙したように,近年,テラヘルツ波技術はさまざ
脂肪,粉体,氷などさまざまな物質を透過できるとともに,光
まな応用可能性が見込まれているが,最近までテラヘルツ波
波のようにレンズやミラーで空間を自由に取り回すことができ
技術は未開拓の領域として認識されていた。その理由は,上
記のような応用のためには,物質透過特性の顕著な3 THz 以下
じめとする種々の規制薬物等の化学物質は,指紋スペクトルと
の周波数,また,さまざまな試薬類が指紋スペクトルを有す
呼ばれる物質特有の吸収スペクトルをテラヘルツ波帯域に有し
る0.5 THz 以上の周波数帯域のテラヘルツ波が最も適している
ており,分光分析による物質同定が可能である。さらに,テラ
が,最近までそのような帯域のテラヘルツ波を高出力発生・高
ヘルツ波は電波に比べて短波長であるため,十分な空間分解能
感度検出するための技術が確立されていなかったためである。
を有したイメージングを行うことも可能である。
従来,テラヘルツ波発生のためには自由電子レーザーやP 型 Ge
A
る。また,ビタミンや糖,医薬品,農薬,さらには覚醒剤をは
レーザーなどが用いられてきたが,これらの装置は大掛かりで
あることや極低温でしか動作させることができないといった制
用が見込まれている1-3)。セキュリティ分野においては,郵便
約があるため,その利用はおもに研究用途に限られていた。し
物中の規制薬物または爆発物の非破壊検査や,空港,イベント
かし最近では,フェムト秒レーザー技術の進歩によって広帯域
会場,建物等のゲートにおける爆弾・セラミックナイフなどの
テラヘルツ波パルスが比較的容易に発生できるようになった。
S
テラヘルツ波の物質透過性と,化学物質が有するテラヘルツ
波帯域の指紋スペクトルを利用して,広範囲な分野にわたる応
〔氏名〕 やまざき りょう
〔現職〕 財務省関税中央分析所第 2 調査研究室 監視
官
〔趣味〕 読書,模型製作
〔経歴〕 2005 年早稲田大学大学院理工学研究科修士
課程修了,2007 年東京税関入関,2015 年名
古屋大学大学院博士後期課程(社会人)満
期退学,2015 年より現職。
© 2015 Journal of the Japan Society of Colour Material
この技術はテラヘルツ時間領域分光法と呼ばれている。また,
別のテラヘルツ波発生技術として,非線形光学結晶を用いた光
パラメトリック光源の開発が進められている。この技術は最
近,出力と検出感度の両方で大幅な進歩を遂げており,実用的
なテラヘルツ光源として期待が高まっている。これらのテラヘ
ルツ波発生・検出技術の急速な発展により,テラヘルツ波応用
に関しても多くの分野で関心が高まっている。
-24-
429
テラヘルツ波による分光イメージング
よってテラヘルツ波パルスの時間波形を取得している。図 -2
2.テラヘルツ時間領域分光法
にTHz-TDSによるテラヘルツパルスの時間波形,および図 -3
現在,世界で広く利用されているテラヘルツ波光源としてテラ
に時間波形をフーリエ変換して得られた周波数スペクトルを示
ヘルツ波時間領域分光法(Terahertz Time Domain Spectroscopy:
す。THz-TDSは比較的高いダイナミックレンジを有し,適切
THz-TDS)を挙げることができる。THz-TDSは,光伝導アン
な形状のサンプルを準備することにより精度良い計測が可能な
テナをフェムト秒光パルスにより励起することで発生するテラ
ため,物質の基礎データの計測に適している。
ヘルツパルスの実時間波形を測定し,それをフーリエ変換する
3.非線形光学効果を利用した単色テラヘルツ波光源
ことで複素電場振幅を得る手法である。フェムト秒レーザー技
術の進歩とともに,広帯域テラヘルツパルスの発生・検出法が
THz-TDSが広く利用されている一方で,非線形光学効果を
可能になったことで,テラヘルツ波分光装置の主流となって
利用したテラヘルツ波発生についての研究も盛んに行われて
いる。図 -1に一般的なTHz-TDSの原理図を示す。電圧を印可
きた。
非線形光学結晶に高強度の励起光を入射し,波長変換を行う
と,光キャリアが発生し瞬時電流が流れ,テラヘルツ波を含む
ことで波長可変の単色テラヘルツ波を発生することができる。
電磁波パルスが発生する。発生したテラヘルツ波パルスを検
この単色テラヘルツ波光源は,THz-TDSと比較して,単位周
出用の光伝導スイッチにおいてサンプリング検出することに
波数当たりの強度が強いことや,周波数強度を直接測定できる
LE
した光伝導アンテナにフェムト秒レーザーパルスを入射する
といった利点を有している。代表的な波長可変単色テラヘルツ
光源として,光パラメトリック発生を用いた光源 4) や差周波
発生 5) を用いた光源がある。光パラメトリック発生では,ニ
オブ酸リチウム結晶(LiNbO 3)などの非線形結晶に高強度の
励起光を入射すると,光活性フォノンとの相互作用によりテラ
P
ヘルツ波帯域のシグナル光と近赤外光波長のアイドラー光に分
A
M
図 -1 THz-TDS 光学系
図 -4 is-TPG 光学系
S
図 -2 THz-TDSによるテラヘルツ波パルス時間波形
図 -5 is-TPGのTHz 波スペクトル
図 -3 THz-TDSによるテラヘルツ波の周波数スペクトル
-25-
430
総
説
離されるという原理を用いており,アイドラー光に対して共振
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 88〔12〕(2015)
4.封筒内試薬の分光
器構造による増幅を用い,単色のテラヘルツ波を発生するテラ
ヘルツ波パラメトリック発振器を経て,現在,光注入型テラヘ
非破壊検査への応用が期待されているis-TPGを用いて,郵便
ルツ波パラメトリック発生器(is-TPG)の開発が進められて
物内の規制薬物・爆発物に対する非破壊検査の試みがなされて
いる6-8)。
いる。ここでは,その取り組みについて紹介したい。
is-TPGの テ ラ ヘ ル ツ 波 発 生・ 検 出 光 学 系 を 図 -4に 示 す。
近年,覚醒剤などの規制薬物を郵便物に隠匿して密輸入する
事例が数多く見受けられるため,郵便物の内容物を非破壊で特
によるアイドラー光と同じ波長・同じ位相整合角度のシード光
定する技術が求められている。税関検査などで広く使用されて
を外部から光注入することにより,狭線化・高出力化したテラ
いる非破壊検査装置であるX 線検査装置は検査対象の内容物の
ヘルツ波を発生することができる。また,シード光の入射角度
形状をイメージングすることはできるが,内容物の物質同定を
と波長を制御することにより,所望の波長をもつテラヘルツ波
行うことができない。また,ソフトマテリアルに対しては,通
を発生させることが可能である。一方,is-TPGはテラヘルツ
常の透過型 X 線検査では,コントラストの低い画像しか得られ
波の検出においても,発生と同様に光パラメトリック発生の
ない。そこで,テラヘルツ波の特長である物質透過性と指紋ス
原理を利用している。すなわち,LiNbO 3 結晶に励起光を入射
ペクトルを利用することで,郵便物の非破壊検査という課題に
し,さらにシード光としてテラヘルツ波を光注入することによ
応える技術が期待されている。
LE
LiNbO 3 結晶に励起光を入射し,さらに光パラメトリック発生
しかしながら,現在一般的に用いられているTHz-TDSは,
り狭線化・高出力化したアイドラー光が発生する。発生したア
イドラー光を赤外領域に対応した高感度な検出器を用いて検出
サンプルからの透過または反射テラヘルツ波パルスを光伝導ア
することで,テラヘルツ波の高感度検出が可能となっている。
ンテナの約数十μmの検出エリアにテラヘルツ波を集光しなけ
図 -5にis-TPGによる透過分光光学系の周波数スペクトルを示
ればならない。そのため,THz-TDSを郵便物検査に用いた場
す8)。テラヘルツ波光路に減衰率可変のテラヘルツ波減衰器を
合では,封筒や梱包材等の遮蔽物によりテラヘルツ波の屈折・
設置し,減衰率を0 dBから- 80 dBまで徐々に変化させ,各減
回折・散乱が生じるため,THz-TDSはスペクトル測定に課題
を抱えている。対して,単色・周波数可変光源であるis-TPG
の周波数帯域は約 1.1 ~ 2.5 THzであり,化学物質の分光分析
は直接周波数スペクトルを取得し,またテラヘルツ波を検出す
に適した周波数帯域のシステムとなっている。また,中心波長
る領域が比較的広いため遮蔽物などによる屈折・回折・散乱の
付近のダイナミックレンジも,このシステムは80 dBという高
影響を受けることなく内容物のスペクトルを測定することが可
ダイナミックレンジを有し,非破壊検査に応用することを期待
能である。すでに先行研究において,周波数可変光源であるテ
できる。
ラヘルツ波光パラメトリック発振器を使用して封書内に隠匿し
S
A
M
P
衰率においてスペクトルを測定した。テラヘルツ波スペクトル
図 -6 試薬サンプルと遮蔽物
図 -7 遮蔽物内試薬サンプルの作製手順
-26-
431
テラヘルツ波による分光イメージング
た不正薬物の分光イメージングが行われている9)。さらに上記
ルとした分光イメージングを行った。サンプルは図 -11に示す
3.で述べたように,最近,is-TPGは大幅な高出力化と検出高感
ように,濃度 40%のマルトース(左)とスクロース(右)のペレッ
度化が行われ,高ダイナミックレンジな分光器が構築されてい
トを7 mmほどの大きさにカットしたものを薄いプラスチック
る。以上のことから,is-TPGはTHz-TDSに比べて封筒や梱包
板に固定し,前後に厚紙封筒と気泡緩衝材をそれぞれ2 枚ずつ
材に隠された不正薬物の探知に有効であると予想し,郵便物検
取り付けたものを用いた。測定条件は,マルトースの1.6 THz
査におけるis-TPGの性能評価を行うため,実際の不正薬物隠匿
の吸収ピークとスクロースの1.8 THzの吸収ピークが含まれる
事例を模した遮蔽物内試薬の透過分光測定を行い,得られたス
1.4 ~ 2.1 THzの周波数範囲のうち,15 点の周波数を選択して
ペクトルに対してTHz-TDSを用いて得られたスペクトルとの
測定を行った。また,撮像した領域は縦横 11 × 20 mm,解像
比較を行った。
度は0.5 mmで,画素数は22 × 40 = 880に相当する。各画素の
国際郵便物内に隠匿された規制薬物を模したサンプルとし
分光情報を取得した後,主成分分析による各試薬の空間パター
ン抽出を行った。分光イメージングの結果を図 -12に示す。左
がマルトース,右がスクロースの空間パターンを抽出した図
サンプル,および封筒や梱包材を模した遮蔽物として,裏面
であるが,各試薬とも白色で抽出され,各成分を識別してい
に気泡緩衝材が貼り付けられた厚紙封筒とダンボールを用意
ることがわかる。また,各試薬の1 画素のスペクトルを見ると
LE
て,図 -6に示すように,マルトース,グルコース,フルクトー
スの三種類の糖類粉末(厚さ約 0.5 mm)をポリ袋に封入した
した。それらの試薬を図 -7に示すような手順で遮蔽物 2 枚を用
(図 -13)
,それぞれの吸収ピークを確認できる。
いて挟み,is-TPGおよびTHz-TDSで透過分光測定を行った。
以上の結果から,is-TPGによる分光イメージングシステムを
それぞれマルトースは1.1,1.6,2.0 THz,グルコースは1.4,
用いることで,厚手の遮蔽物越しでも分光イメージングによる
2.1 THz,フルクトースは1.7,2.1 THz 付近に特徴的な吸収を
各試薬の識別が可能であることがわかった。
もつ。
6.おわりに
上記のサンプルに対しis-TPGおよびTHz-TDSを用いて測定
した透過率スペクトルを図 -8 ~ 10に示す。図 -8に示すように,
高出力・高感度なテラヘルツ波光源であるis-TPGを用いて,
厚手の遮蔽物越しの分光分析や分光イメージングを行った。本
糖類のすべての吸収ピークが確認された。図 -9で示した気泡緩
研究の結果から,税関において輸入郵便物などに隠匿された規
衝材を貼り付けた厚紙封筒で遮蔽したサンプルでは,is-TPG
制薬物や爆発物を検査するための技術として,従来のテラヘル
を用いて測定した場合,マルトースの1.1 THzの吸収ピークを
ツ波技術と比較してis-TPGを利用することが有効であること
除く各糖類の吸収ピークが明瞭に確認できた。対して,THz-
が示された。
P
遮蔽物のない場合,is-TPGとTHz-TDSのどちらを用いても各
M
TDSを用いて測定した場合,各糖類の1.6 THzまでの吸収ピー
クは確認されるが,より高周波数の吸収ピークは確認できな
かった。また,内部が複雑な形状であるダンボールで遮蔽した
サンプルでは,図 -10に示すように,THz-TDSでは低周波数帯
域の吸収ピークしか確認できないのに対し,is-TPGでは2 THz
以上のピークは明瞭ではないものの,1.5 THz 程度の帯域の
ピークを確認することができた。
A
以上の結果から,遮蔽物内試薬に対してはis-TPGを用いた
分光測定がTHz-TDSを用いた場合より有効であることがわ
かった。
5.分光イメージング応用
S
テラヘルツ波を利用した郵便物中の規制薬物・爆発物検出の
さらなる試みとして,is-TPGを用いた高ダイナミックレンジな
分光イメージングシステムを構築し,遮蔽物内の試薬をサンプ
-27-
文 献
1)M. Tonouchi: Nature Photonics, 1, 97(2007).
2)深澤亮一:"分析・センシングのためのテラヘルツ波技術", 日刊
工業新聞社(2013).
3)斗内政吉編:"テラヘルツ技術", オーム社(2006).
4)K. Kawase, J. Shikata, H. Ito: J. Phys. D: Appl. Phys., 35, R1(2002).
5)T. Shibuya, T. Akiba, K. Suizu, H. Uchida, C. Otani, K. Kawase:
Appl. Phys. Exp., 1, 042002(2008).
6)S. Hayashi, K. Nawata, H. Sakai, T. Taira, H. Minamide, K.
Kawase: Opt. Exp., 20(3), 2881(2012).
7)H. Minamide, S. Hayashi, K. Nawata, T. Taira, J. Shikata, K.
Kawase: J. Infrared Millim. Terahertz Waves, 35(1), 25(2014).
8)K. Murate, Y. Taira, S. R. Tripathi, S. Hayasahi, K. Nawata, H.
Minamide, K. Kaease: IEEE THz Sci. Tech., 4(4), 523(2014).
9)K. Kawase, Y. Ogawa, Y. Watanabe, H. Inoue: Opt. Exp., 11(20),
2549(2003).
432
総
説
図 -8 糖類粉末の透過スペクトル
試薬(左)および厚紙封筒・気泡緩衝材(中)と実
際のサンプル(右)
LE
図 -11
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 88〔12〕(2015)
M
P
図 -12 各試薬成分の空間パターン
S
A
図 -9 気泡緩衝材付き厚紙封筒内の糖類粉末の透過スペクトル
図 -13 各試薬の1 画素のスペクトル
図 -10 ダンボール内の糖類粉末の透過スペクトル
-28-
433
テラヘルツ波による分光イメージング
Spectroscopic Imaging Using Terahertz Waves
Ryo YAMAZAKI*,**, Mikiya K ATO**, Kosuke MURATE**, Kazuki I MAYAMA** and Kodo K AWASE**,†
* Central
Customs Laboratory, Ministry of Finance, 6-3-5 Kashiwanoha, Kashiwa-shi, Chiba-ken 277-0882, Japan
School of Engineering, Nagoya University, Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya-shi, Aichi-ken 464-8603, Japan
†Corresponding Author, E-mail: [email protected]
** Graduate
(Received October 23, 2015; Accepted November 12, 2015)
Abstract
LE
Non-destructive inspection equipment using terahertz waves is expected to be used in various sectors such as safety and security. The
injection-seeded terahertz parametric generator (is-TPG) is suitable for the non-destructive detection of illicit drugs and explosives concealed
in mail because of its high power generation and sensitive detectors. This study examined a terahertz spectrometry method suitable for the
non-destructive detection of chemicals concealed in mail envelopes. We compared the transmission spectra of three saccharides in different
covering materials using is-TPG and terahertz time-domain spectroscopy. In addition, we carried out terahertz spectroscopic imaging on
chemicals concealed in thick mail envelopes. As a result, we demonstrated that spectrometry or spectroscopic imaging using is-TPG is
effective in detecting chemicals concealed in such items.
A
M
P
Key-words: Terahertz spectroscopy, Spectroscopic imaging, Non-destructive inspection
〔氏名〕
〔現職〕
〔趣味〕
〔経歴〕
S
〔氏名〕 かとう みきや
〔現職〕 名古屋大学大学院工学研究科 修士前期課程
1年
〔趣味〕 バスケットボール,音楽鑑賞
〔経歴〕 2015 年名古屋大学工学部電気電子情報工学
科卒。同年 4 月名古屋大学大学院工学研究科
博士前期課程入学。在学中。
いまやま かずき
名古屋大学大学院工学研究科 修士課程 2 年
スポーツ観戦
2014 年 3 月名古屋大学工学部電気電子・情報
工学科卒業。同年 4 月名古屋大学大学院工学
研究科電子情報システム専攻入学。在学中。
〔氏名〕 かわせ こうどう
〔現職〕 名古屋大学大学院工学研究科 教授
〔趣味〕 スキー,インラインスケート
〔経歴〕 1989 年京都大学工学部電子工学科卒。1996
年東北大学工学博士。2001 年理化学研究所
独立主幹研究員。2004 年東北大学大学院農
学研究科寄附講座教授。2005 年名古屋大学
大 学 院 工 学 研 究 科 教 授。2000 年,2006 年
レーザー学会論文賞,2002 年丸文研究奨励
賞,2005 年文部科学大臣表彰若手科学者賞,
2006 年丸文学術特別賞など受賞。
〔氏名〕 むらて こうすけ
〔現職〕 日本学術振興会 特別研究員(DC1)
,名古屋
大学大学院工学研究科 博士後期課程 1 年
〔趣味〕 旅行,テニス
〔経歴〕 1990 年 5 月 21 日生,2015 年 3 月名古屋大学大
学院工学研究科博士前期課程修了,同年 4 月
同大学院博士後期課程入学,在学中,2015
年より日本学術振興会特別研究員(DC1)
。
-29-
434
部会・研究会活動報告
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 88〔12〕,434(2015)
第2回インクジェット部会報告
奥 田 貞 直*
2015 年 10 月 29 日,東京塗料会館にて66 名にご参加いただき,
集中型マーキング方式で市場を拡大してきた。しかし2005 年
以降は,液滴量 1 plから大きな変化もなく,多色化も特定ユー
回は,インクジェットの過去を振り返りながら,今は常識と
ザーを除いて4 色で満足されるお客様がほとんどで,国内市場
なっている技術がどのような技術変遷を経て成り立っているの
では飽和状態となり販売台数が低下傾向を示している。今後,
か,また,この技術の将来展開について長年にわたりインク
オフィス市場ではレーザー BIASを乗り越えることができるの
ジェットに携わる富士ゼロックス㈱の藤井雅彦氏をお招きし
か,インクコストを下げることができるのか,また,インク
て『これまでのインクジェット技術の進展と今後の技術進化の
ジェットのシンプルさを活かした新規市場を活性化できるのか
方向性』と題してご講演をいただきました。講演は二部構成で
が,市場を拡大する鍵を握っている。
LE
本年度第二回目のインクジェット部会を開催いたしました。今
最近のインクジェット技術は,新規プロセス(機能)を追加
することで機能分担型マーキング方式に進化し,新しい市場に
ししていただきました。続けて,第二部では『3D Printer,今
挑戦している。具体的には,この機能分担型マーキング方式に
後の課題と期待』と題して各種 3Dプリンタの特徴から将来展
よってコート紙印刷市場への拡大を目指しているが,このコー
望までをお話ししていただきました。各講演ともにわかりやす
ト紙印刷市場にインクジェット適性をもった印刷メディアが加
くお話ししていただき,また活発な質疑が行われました。続い
われば,機能集中型マーキング方式を得意とするインクジェッ
て開催された懇親会にも多くの参加者が残り,『インクジェッ
ト技術のイノベーションになることを期待している。
トに対する提言』と題して終わり切らなかったご演題を引き続
第二講目 「3D Printer,今後の課題と期待」
P
行われ,第一部では『インクジェット技術の進化』と題して
2005 年に大きな技術変化の変局点を迎えたことについてお話
最近,市場規模が拡大している3Dプリンタは,インクジェッ
M
き行っていただきました。こちらも活発な意見交換の場となり
ました。各講演の概要を順にご報告いたします。
『これまでのインクジェット技術の進展と,
今後の技術進化の方向性』
富士ゼロックス㈱ 研究技術開発本部 ト技術を用いた製品が多く提案されて新たなものづくりの手法
として各社が取り組んでいます。各種 3Dプリンタの紹介と課
題について紹介していただきました。
3Dプリンタは,射出成形型が不要のオンデマンド方式で,
複雑な形状でも作製することができ,さらに,データさえあれ
ば現地生産ができるDDM(Direct Digital Manufacturing)が可
能になることが特徴になる。実際に,販売量が少ないために切
IS&T NIP31(2015)General Chair
り捨てられているロングテール製品群,個人の特徴に合わせた
A
マーキング技術研究所 研究主席 藤井雅彦 様
日本画像学会技術委員会インクジェット技術部会主査・
第一講目 「インクジェット技術の進化」
特注モデルが3Dプリンタの得意とするところである。
3Dプリンタの課題は,ものづくりの点では,高速化,材料
インクジェット技術の特徴を,電子写真技術と比較し過去の
範囲,精度と分解能,サイズ,カラー化があり,でき上がった
経緯を振り返りながら紹介していただきました。
造形物では,製造物責任,著作権,意匠権への対応,銃などの
危険物製造への対応がある。将来,3Dプリンタが,高速化と
対応することで用途が拡がってい
使用する材料範囲が拡がれば,適用する市場がさらに拡大する
S
インクジェット技術は,構成要素が少ないため小型,低コス
トを実現し,最近では,印刷対象物が広範囲となり大面積にも
*理想科学工業㈱
る。プリンタ市場でも,従来紙で保
ことが期待される。最近は,3Dプリンタは形だけの造形物か
存していた情報が電子化による保存
ら新たな機能(価値)を提供する方向に向かっている。機能を
に変化したことで,必要な時だけ印
重視した設計を実現し,デリバリー革命などの3Dプリンタで
刷を行う形態に変化してきている。
しかできないことが具体化すれば,さらに活路が拡がってくる
プリンタは画質と印刷速度がおもな
ことを期待している。
基本性能になるが,その中でインク
最後に懇親会では,インクジェットに対する提言として,イ
ジェット技術は,ヘッド,紙などの
ンクジェットに関する学会発表が少ない現状を踏まえて,枯れ
各構成要素に機能を詰め込む機能
た技術であっても新規にインクジェットを応用する人には有用
茨城県稲敷郡阿見町福田谷の沢 127-7(〒 300-1156)
な情報になることや問題意識をもった異分野交流が大切になる
ことで講演を締めくくられました。
-30-
435
文献紹介
が見られる。このような現象を起こす物質は,精密なバイオ化
文 献 紹 介
学分析あるいは微量を取り扱う装置では必要である。本研究
は,このような現象を起こす塗膜の簡単な製造方法に関するも
Facile Fabrication of Superhydrophobic Polyimide/
のである。まず,無水アルコールにポリイミドを超音波装置を
Polytetrafluoroethylene Composite Coatings with High Water
使って分散する。次に,ポリフロロエチレンを混入し攪拌の後
Adhesion:水に対して強い付着力を持ちかつ超疎水性であるポ
ガラス面に塗布して 25 ℃で 20 分間乾燥し,さらに 380 ℃で 15
リイミドとテトラフロロエチレンの複合塗膜の簡単な製造方法
分焼き付ける。塗膜の表面にはポリイミドのミクロ単位の突起
Y. Guo, Z. Wang, H. Wu, X. Zhang: J. Appl. Polym. Sci., DOI:
ができる。その先端は非常に滑らかであるが,下から半分まで
10.1002/APP. 42810 (2015).
はテフロンのナノ単位の槍状繊維が覆っている。いくつかの突
150°以上の接触角をもつ低エネルギー物質は自己クリーニン
起に跨る水滴が置かれると,ポリテトラエチレンによってはじ
グ作用をもつのでよく研究されている。しかしながら,自然界
かれ球状になるが,親水性の突起先端のいくつかは突き刺さっ
にはヤモリの足あるいはバラの花びらのように,超撥水性表面
た状態で付着し,ひっくり返しても落ちることはない。
(中山雍晴)
P
LE
をもちながら強く水と結び付き裏返しても水滴が落ちない現象
M
色材協会誌に「技術論文」を投稿しませんか
新製品や新技術を開発した際に、
色材協会誌への投稿をぜひご検討ください
色材協会誌では,
研究論文とは別に
「技術論文」というカテゴリーを設けています。
「技術論文」
A
は,色材分野に関する新しい技術を広く読者に知ってもらうことを目的としており,企業の技
術者・研究者が投稿しやすいという特徴があります。
たとえば,新技術としてのオリジナリティがあれば,著者が公開を望まない部分(ノウハウ
や機構の詳細など)は伏せて発表することが認められています。また,すでに社内外の報文や
学会発表等で公表した内容であっても,データの拡充や内容の再構築があれば投稿が可能です。
S
また「技術論文」は,掲載号の発行 3カ月後に論文公開サイトJ-STAGE 上で公開され,世界
中どこでも無料でダウンロードが可能です。そのため,これまで引きあいのなかった新しい顧
客に,企業の取り組みと技術の高さを知ってもらう機会となり,ビジネスチャンスが広がるこ
とが期待できます。
なお、掲載にあたり査読審査があります。商品宣伝のみの内容や技術の開示が極端に少ない
場合などは、修正をお願いする場合がありますのでご承知おきください。
技術論文投稿に関するお問い合わせは、色材協会誌 編集室までお願いいたします。
問合せ先:色材協会誌 編集室 TEL 03-5911-8671 E-mail:[email protected]
〒 170-0013 東京都豊島区東池袋 4-41-24 東池袋センタービル(日本印刷内)
J-STAGE(電子投稿システム)
:https://www.editorialmanager.com/shikizai/
-31-
主催・協賛・関連行事ご案内
開催月日
行 事 名 〔主 催〕 (会場もしくは開催地)
掲載号
2015年
12/15 ~ 20
2015環太平洋国際化学会議(PACIFICHEM2015)〔日本化学会〕(ホノルル)
85 巻 11 号
第145回ラドテック研究会講演会〔ラドテック研究会〕(東京理科大学)
88 巻 12 号
第20回関西支部コロイド・界面実践講座〔日本化学会〕(関西大学)
88 巻 12 号
第184回腐食防食シンポジウム〔腐食防食学会〕(東京都江戸東京博物館)
88 巻 12 号
5
15–12–1 第25回顔料分散講座〔本会関東支部〕
(東京塗料会館)
88 巻 12 号
17
15–12–2 色材マテリアル講座〔本会関西支部〕
(ドーンセンター)
88 巻 12 号
18 ~ 19
第20回省エネルギーセミナー〔紙パルプ技術協会〕(タワーホール船堀)
88 巻 10 号
19
平成27年度 第3回講演会〔日本塗装技術協会〕(日本ペイントホールディングス)
88 巻 12 号
26
2016年冬期セミナー〔日本印刷学会〕(DIC)
88 巻 12 号
27
色彩講座基礎編2015〔日本色彩学会〕(立命館大学)
88 巻 2 号
第31回塗料・塗装研究発表会〔日本塗装技術協会〕(東京大学)
88 巻 12 号
1/26
26
2/4
3/3
15–12–3 色材セミナー
10
LE
2016年
2016〔本会中部支部〕(名古屋市工業研究所)
7/7 ~ 8
第36回防錆防食技術発表大会〔日本防錆技術協会〕(東京ガーデンパレス)
88 巻 12 号
10/24 ~ 27
第14回紫外線・電子線硬化技術国際会議〔RadTechAsia2016組織委員会〕
88 巻 9 号
催
行
事 ───
M
─── 主
P
(ヒルトン東京お台場)
参加される方はI-3頁の申込書をご利用ください。
番号
88 巻 12 号
15-12-1
第 25 回顔料分散講座
S
A
色材工業では「顔料分散」は永遠のテ-マ。このテ-マ
を基礎から応用まで最新技術に触れながら,わかりやすく
解説する本講座は毎年,多くの方から好評をいただいてい
ます。分散の基礎から表面処理,そして,その応用である
塗料,プラスチック,さらに分散機器の各分野でご活躍の
方々が講師を担当します。「顔料分散」にかかわる問題解決
の一助としてお役立てください。
主 催 ㈳色材協会
協 賛 顔料技術研究会,日本顔料技術協会,日本化学会,
高分子学会,日本無機薬品協会,有機合成化学協会,日
本ゴム協会,日本塗料工業会,表面技術協会,日本色彩
学会,日本材料学会,日本塗装技術協会,日本木材学会,
日本塗料検査協会,日本レオロジ-学会,日本セラミッ
クス協会
日 時 平成 28 年 2 月 5 日(金)9:00 ~ 17:00(受付開始
時刻:8 時 30 分より)
会 場 東京塗料会館 〒 150-0013 東京都渋谷区恵比寿
3-12-8 TEL 03-3443-2811
JR 山手線・埼京線,地下鉄日比谷線・「恵比寿」駅より徒
歩 12 ~ 15 分(受講券に案内図印刷)
演題・講師
9:00 ~ 10:20
顔料分散の基礎-顔料分散の基礎理論と分散向上の具体
I―1
的な手法-
DIC ㈱ 精密合成技術本部 色材開発技術グル-プ 主任研究員 清都育郎
10:30 ~ 11:40
顔料の表面処理と分散-銅フタロシアニンブルー顔料を
例に,粒子表面の処理が分散性・分散安定性に与える影
響-
大日精化工業㈱ 顔料事業部 技術統括部 有機顔料開発部 第 2 課 課長 髙山雅裕
12:40 ~ 13:40
塗料における顔料分散-水系塗料における着色顔料の分
散手法と発色性-
関西ペイント㈱ R&D 本部 CM 研究所 第四部 部長 檜原篤尚
13:50 ~ 14:50
オフセットインキにおける顔料分散-原材料と製造方法,
分散状態の製品特性への影響,分散性の評価方法-
東洋インキ㈱ 技術センター プリンティング技術本部 技術 2 部 三輪剛之
15:00 ~ 16:00
プラスチックにおける顔料分散-顔料分散と色相-
東京インキ㈱ 開発技術部門 企画管理部 第 1 グル-プ 係長 寺田悠哉
16:10 ~ 17:00
遠心機を用いた分離技術の基礎と最新活用事例-分散粒
子の分離条件がどのように決まるかを,沈降理論をもと
に解説-
日立工機㈱ライフサイエンス機器事業部 新事業推進営業部 アプリケ-ションサイエンティスト 可児修一
受講料 会員(協賛学協会会員共)19,500 円,会員外 29,800
円,学生 3,000 円(テキスト共,消費税込)
会
番号
リアミド 4 5.活性汚泥
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門 主任研究員 中山敦好
(https://unit.aist.go.jp/bmd/group/kadai1/
seitai_bunshi_group05/index.html)
13:00 ~ 14:00
非可食バイオマスからの C4 ケミカルの展開
1.バイオマス 2.1.4BDO 3.THF
㈱ダイセル 研究開発本部 先端材料企画部 部長 新井 隆
(http://www.daicel.com/research/)
14:20 ~ 15:20
環境対応ポリウレタンの開発
1.バイオイソシアネート 2.バイオポリオール 3.コー
ティング 4.接着剤 5.透明材料
三井化学㈱ 研究開発本部 合成化学品研究所 特殊ポリウレタン材料開発グループ グループリーダー 山崎 聡
(http://jp.mitsuichem.com/release/2014/2014_1211.htm)
15:40 ~ 16:40
バイオベースマテリアルの動向と今後の展開
1.バイオマス原料 2.基幹化学物質 3.高性能・高機能
化 4.バイオベース度 5.生分解性ポリマー
京都工芸繊維大学 繊維科学センター 名誉教授 木村良晴
(http://www.act-kyoto.jp/organization_list/kit_kimuralab)
受講料 会員・協賛学協会会員共 20,600 円,会員外 25,700
円,学生 3,100 円(テキスト代,消費税含む)
定 員 50 名
申込締切日 2 月 12 日(金)(定員になり次第締め切らせて
いただきます。)
申込方法 申込書(I-3 頁)に所定の事項を明記して,FAX ま
たは E-mail にてお送りください。
受講料は①銀行振込②郵便振替のいずれかでお振込みく
ださい。(銀行口座:三菱東京 UFJ 銀行船場中央支店・普
通預金 No.0171831,郵便振替口座 No.00910-9-59939 名
義:一般社団法人 色材協会 関西支部)
※銀行・郵便振替の領収証をもって本会からの領収証に
かえさせていただきます。
※振込手数料は振込人にてご負担いただきますようお願
いいたします。
申込先 一般社団法人 色材協会 関西支部
〒 530-0044 大阪市北区東天満 1-9-10 大阪塗料ビル 2 階
TEL 06-6356-0700 FAX 06-6356-0711
E-mail: [email protected]
LE
※テキストの事前配布をご希望の場合は,申込書に記入
のうえ送料 ¥500 を受講料と併せてご送金ください(テ
キストの事前配布の申込みは,都合により 1 月 25 日締
切とさせていただきます)。
※顔料入門講座の受講者は,会員・会員外の価格より
4,000 円割引にさせていただきます(学生価格は除く)。
(割引特典を利用する場合,氏名欄に受講 No. をご記入
ください。代理受講も可能です。色材協会事務局まで
ご相談ください。)
申込締切日 定員(100 名)になり次第締め切らせていただ
きます。お早めにお申し込みください。
申込方法 申込書(I-3 頁)に所定の事項を明記して,FAX ま
たは E-mail にてお送りください。申込書にご記入いただ
いた個人情報につきましては,㈳色材協会 事務局にて
厳重に管理いたします。受講料は①銀行振込 ②郵便振
替のいずれかで 2 月 4 日までにお振込みください。(銀行
口座:三菱東京 UFJ 銀行恵比寿支店普通預金 No.1547898
郵便振替口座:00120-7-76423 ㈳色材協会)
申込先 〒 150-0013 東京都渋谷区恵比寿 3-12-8 東京塗料会
館 201 号室 ㈳色材協会
TEL 03-3443-2811 FAX 03-3443-3699
E-mail: [email protected]
15-12-2
色材マテリアル講座
-バイオベースマテリアルの明日はどっちだ-
S
A
M
P
一般消費者の環境問題への関心を背景に,バイオベース
マテリアルの利用が推進されています。しかしながらコー
ティング分野では,性能向上を目的とした天然素材から合
成素材への移行が進められた歴史があり,その利用は活発
とは言えません。
本講座では『バイオベースマテリアルの明日はどっちだ』
をテーマに,日本を代表するメーカーの方々に,現在市場
展開しているバイオベースマテリアルの紹介と,明日の実
現に向けた研究を紹介いただきます。また,産業技術総合
研究所の中山先生と,京都工芸繊維大学の木村先生に,最
近のバイオベースマテリアルの研究と,明後日に向けての
提言をお願いしております。ご存じのように,木村先生は,
長年ポリ乳酸の研究に携わってこられた第一人者でいらっ
しゃいますので,興味深いお話をご講演いただけると思い
ます。
コーティング分野の中堅技術者の方には最新技術情報の,
すでにこの技術分野でご活躍の方々には開発のヒントの習
得のチャンスとしてご活用いただけると思います。奮って
ご参加くださいますよう,ご案内申し上げます。
主 催 一般社団法人色材協会 関西支部
協 賛 印刷インキワニス工業会,高分子学会,セルロー
ス学会,繊維学会,日本化学会,日本生物工学会,日本
ゴム協会,日本材料学会関西支部,日本塗装技術協会,
日本塗料工業会,日本油化学会
日 時 平成 28 年 2 月 17 日(水)10:00 ~ 17:00
会 場 ドーンセンター(5 階)
特別会議室(大阪市中央
区大手前 1-3-49 TEL 06-6910-8500)
(1)京阪天満橋駅,地下鉄谷町線天満橋駅 1 番出入口より
(2)JR 東西線大阪城北詰駅 2 号出入口より西
東へ 350 m。
へ約 550 m。
(3)市バス京阪東口からすぐ。
演題・講師
10:00 ~ 10:40
コーティング素材としてのバイオベースマテリアル
1.最近の動向 2.塗料の歴史 3.法的要求
神東塗料㈱ 研究開発部 次長 田中茂樹
(http://www.shintopaint.co.jp/)
10:50 ~ 11:50
生分解性材料の環境中での分解挙動
1.生分解 2.脂肪族ポリエステル 3.ポリ乳酸 4.ポ
I―2
番号
15-12-3
色材セミナー 2016
『光機能性材料としての蛍光体,
発光体の最新動向』
ノーベル物理学賞を機に LED 蛍光体が脚光を浴び,蛍光
体,発光材料は 8K スーパーハイビジョン向けディスプレ
イや光エネルギー変換などの応用を目指して活発に研究さ
れています。今回,蛍光,蓄光,発光材料の最前線で研究,
事業展開を進められておられる先生方をお招きして,最新
の動向と展望についてご講演いただきます。新分野への展
開を期待して,皆様のご参加をお待ちしております。
主 催 ㈳色材協会 中部支部
協 賛 名古屋テキスタイル研究会,日本色彩学会東海支
部,日本デザイン協会,名古屋産業振興公社,愛知工研
協会,高分子学会東海支部,中部塗装技術研究会,東海
化学工業会,日本塗料工業会,日本化学会東海支部,日
本接着学会中部支部,有機合成化学協会東海支部,表面
技術協会中部支部,日本油化学会東海支部,化学工学会
東海支部,日本分析化学会中部支部,電気化学会東海支
告
部,自動車技術会中部支部
日 時 平成 28 年 3 月 10 日(木)13:00 ~ 17:00
会 場 名古屋市工業研究所 第 1 会議室(管理棟 3F)
名古屋市熱田区六番 3 丁目 4-41
(地下鉄,市バス,「六番町」下車,南西へ徒歩約 2 分)
演題・講師(13:00 ~ 17:00)
1.コロイダル量子ドット蛍光体の合成技術と応用展開
4.蓄光性蛍光体の特性と応用事例について
蓄光性蛍光体は,現在硫化物系と酸化物系の二種類が“蓄光
顔料”として市販されている。硫化物系は 100 年以上の歴史
があり,玩具などに使用されている。近年開発された酸化物
系は硫化物系の 10 倍以上の輝度と優れた耐久性を有し,今
後用途が広がろうとしている。今回は,酸化物系を中心に解
説する。
㈱ネモト・ルミマテリアル 常務取締役 青木康充
参加費 会員・協賛団体 8,000 円,一般 11,000 円,学生 2,000
円(テキスト代含む)
技術交流会費(講師を囲んで) 会員無料,会員外 500 円(管
理棟 2F,交流フロア 17:00 ~ 18:00)
定 員 100 名(先着順)
申込方法 3 月 3 日(木)までに申込書(I-3 頁)に所定の事項
を明記して,郵送または FAX,E-mail でお送りください。
下記ホームページからもお申し込みいただけます。
色材協会中部支部 http://www.shikizai-chubu.org/
中部科学技術センター 学協会事務局 http://www.c-goudou.
org/
会費は,みずほ銀行 名古屋支店 普通預金口座 No.1106150 色材協会 中部支部宛 振込み,または,下記申込先に現金
書留でお送りください。
申込先 〒 460-0011 名古屋市中区大須 1 丁目 35-18
中部科学技術センター内 色材協会 中部支部
TEL 052-231-3070 FAX 052-204-1469
E-mail: [email protected]
コロイダル量子ドットは,液晶ディスプレーのバックライト
LED の波長変換素子としてすでに搭載が始まっている次世
代蛍光体であり,その特性,合成法,応用展開技術の現状と
今後について紹介する。
大阪大学大学院 工学研究科 マテリアル生産科学専攻 准教授 小俣孝久
2.銅・銀錯体の発光と配位子による発光制御
LE
近年,さまざまな配位子をもつ銅(Ⅰ)錯体・銀(Ⅰ)錯体
が室温・固体状態で強い発光を示すことがわかってきた。今
回はおもにハロゲン配位子をもつ錯体を中心に,発光色の制
御や金属-金属相互作用について紹介する。
富山大学大学院 理工学研究部(理学)化学専攻 教授 柘植清志
3.無機発光材料の合成と利用
無機発光材料特性は粒子径や結晶性に大きく依存し,適用分
野ごとに使用できる元素や求められる特性も異なる。本講演
では無機発光材料の特性,合成法,適用事例などについて紹
介する。
P
堺化学工業㈱ 研究開発本部 中央研究所 小澤晃代
行事名
所属学協会名
(会員番号:
A
番号
□関東支部 FAX 03-3443-3699
□関西支部 FAX 06-6356-0711
□中部支部 FAX 052-204-1469
M
一般社団法人 色材協会
主催行事 参加申込書
)
維持会員企業の
会員
・非会員・学生
( 社員を含みます )
参加者名
勤務先(所属部課名)
S
所在地(〒 )
TEL
FAX
E-mail
備考欄
払込方法 ( 請求書:□要,□不要 ) 円を下記要領で振り込みます (振込予定 月 日)
主催支部
名 義
関東支部
㈳色材協会
□銀行振込
□郵便振替
関西支部
㈳色材協会 関西支部
□銀行振込
□郵便振替
中部支部
色材協会 中部支部
□銀行振込
※銀行・郵便振替の領収証をもって本会からの領収証にかえさせていただきます。
※振込手数料は振込人にてご負担いただきますようお願いいたします。
今後開催される色材協会主催講座についてE-mailでの案内を希望しますか( 希望する ・ 希望しない )
(この個人情報は,色材協会が管理し,色材協会の行事案内以外には使用しません)
I―3
加飾トレンド
関西ペイント 吉田 耕
・自動車外装への新しい提案
布施真空 三浦高行
・その他
参加費 日本塗装技術協会および協賛学協会会員 16,200 円,非会
員 21,600 円,学生 3,240 円。交流会無料。
申込先 日本塗装技術協会 事務局
協 賛 行 事
第 145 回ラドテック研究会講演会
主 催 (一社)ラドテック研究会
日 時 2016 年 1 月 26 日(火)13:00 ~ 17:00
場 所 東京理科大学神楽坂キャンパス 1 号館 17 階/記念講堂
東京都新宿区神楽坂 1-3
内 容 ・紫外線硬化接着剤の硬化収縮と残留応力
東工大 佐藤千明
・高感度光重合開始剤の開発
ADEKA 滋野浩一
・UV 硬化を利用した下水管更生技術
光硬化工法協会 大河原 隆
・その他
参加費 個人会員(本人)無料,法人会員(2 名まで)無料,3 名
から 1 名 10,000 円,非会員は 1 名 20,000 円,協賛団体所属の方
は 10,000 円(講演要旨集含む)
。交流会費 1,000 円。
申込締切日 2016 年 1 月 8 日(金)
問合先 一般社団法人ラドテック研究会事務局
〒 102-0082 千代田区一番町 23-2 番町ロイヤルコート 207
TEL 03-6261-2750 FAX 03-6261-2751
TEL&FAX 03-6228-1711
E-mail: [email protected]
2016 年冬期セミナー
~最新技術に見る環境対応と明日への取り組み~
主 催 (一社)日本印刷学会 事業委員会・冬期セミナー分科会
日 時 2016 年 2 月 26 日(金)9:30~17:00(受付開始 9:00)
場 所 DIC ㈱ ディーアイシービル 2 階 大会議場
〒 103-8233 東京都中央区日本橋 3-7-20(東京メトロ日本橋駅,
B1 出口)
地図 http://www.dic-global.com/jp/ja/about/establishment/
headoffice.pdf
LE
内 容 ・インクジェット用紙・基礎と品質向上の取り組み
日本製紙 総合研究所 久津輪幸二
・オフセット印刷と最新インキ
DIC グラフィックス 森 誠
・軟包装における EB オフセット印刷と付加価値を高め
る後加工
日本エス・アンド・エイチ 浅野目 猛
・その他
定 員 80 名
参加費(テキスト代含む)
会員・協賛会員・協賛団体所属会員
10,000 円,教職員・学生 5,000 円,非会員 18,000 円
申込先 (一社)日本印刷学会冬期セミナー係
〒 104-0041 東京都中央区新富 1-16-8 日本印刷会館内
TEL 03-3551-1808 FAX 03-3552-7206
E-mail: [email protected]
第 20 回関西支部コロイド・界面実践講座プログラム
「今話題の最新トピックスを聞く!
~イオン液体& 3D プリンティング~」
主 催 日本化学会コロイドおよび界面化学部会関西支部
日 時 2016 年 1 月 26 日(火)10:00 ~ 17:30
場 所 関西大学百周年記念会館ホール 2(〒 564-8680 吹田市山
手町 3-3-35)
内 容 ・イオン液体を用いた蓄電材料の動向
関西大院理工 石川正司
・イオン液体の界面をみる
京大院工 西 直哉
・3D ゲルプリンターによるデザイナブルゲルの開発と
社会実装(仮題)
山形大院理工 古川英光
・その他
定 員 100 名(先着順)
参加申込締切 2016 年 1 月 8 日(金)
参加費 主催・協賛学協会会員 7,000 円,非会員 10,000 円,学生
2,000 円
申込先/問合先 〒 564-8680 吹田市山手町 3-3-35 関西大学化
学生命工学部 宮田隆志
TEL 06-6368-0949 FAX 06-6368-0949
M
P
E-mail: [email protected]
http://www.jspst.org/
E-mail: [email protected]
A
第 184 回腐食防食シンポジウム
化学プラントの材料損傷防止のための材料技術の役割
~最近の事例解析やアンケート調査を基に~
主 催 (公社)腐食防食学会
日 時 2016 年 2 月 4 日(木)10:00 ~ 16:40
場 所 東京都江戸東京博物館 会議室 墨田区横綱 1-4-1
内 容 ・化学プラントの材料損傷防止のための材料技術の役割
旭化成ケミカルズ 中原正大
・初期故障期の事例と課題
三井化学 中川祐一
・偶発故障期の事例と課題
旭化成 村上健二
・その他
参加費(消費税込) 正会員・特別会員(協賛団体会員)5,150 円,
学生会員 2,060 円,会員外 8,230 円
申込先 〒 113-0033 文京区本郷 2-13-10 (公社)腐食防食学会
TEL 03-3815-1161 FAX 03-3815-1291
第 31 回塗料・塗装研究発表会
主 催 日本塗装技術協会
会 期 2016 年 3 月 3 日(木)
場 所 東京大学 生産技術研究所(駒場リサーチキャンパス)
コンベンションホール(An 棟 2 階)
内 容 ・非接触型表面抵抗率測定法を用いた塗装膜厚推定の検討
山形大 木村剛久
・機能性光断層画像法による塗膜内部・多層膜の乾燥過
程解析
東洋精機製作所 深井俊宏
・Spring-8 放射光を用いた X 線イメージングによるメタリッ
ク塗膜形成過程観察方法
ダイハツ工業 中山 泰
・その他
参加費 当協会会員・協賛学協会会員 8,640 円,同 35 歳以下 6,480
円。学生会員,研究室学生会員 1,080 円。非会員 10,800 円。
申込先/問合先 〒 162-0805 東京都新宿区矢来町 3 番地
TEL&FAX 03-6228-1711
E-mail: [email protected]
URL:http://jcot.gr.jp/
S
第 36 回防錆防食技術発表大会
主 催 日本防錆技術協会
会 期 2016 年 7 月 7 日(木)~ 8 日(金)
場 所 東京ガーデンパレス,2 階 高千穂
東京都文京区湯島 1-7-5 TEL 03-3813-6211
発表区分 ①技術発表(施工事例を含みます) ②腐食事例(と
対策)
発表申込締切 2016 年 3 月 25 日(金)*規定件数になり次第締切
予稿原稿締切 2016 年 5 月 18 日(水)
会 費 協会会員(正,法人・個人賛助,防錆管理士会会員)・
協賛学協会会員 16,000 円(14,000 円)
,一般 20,000 円(18,000
円),学生 4,000 円。
( )内は前納(6 月 30 日(木)まで)。
申込先/問合先 〒 105-0011 東京都港区芝公園 3-5-8
一般社団法人日本防錆技術協会 第 36 回防錆防食技術発表大
会事務局
TEL 03-3434-0451 FAX 03-3434-0452
E-mail: [email protected]
平成 27 年度 第 3 回講演会「激変する車造り,進化する塗装」
主 催 日本塗装技術協会
日 時 2016 年 2 月 19 日(金)10:20 ~ 16:45
場 所 日本ペイントホールディングス㈱ 東京事業所 セン
タービル A ホール(東京都品川区南品川 4-1-15)
内 容 ・次 世 代 自 動 車 の 材 料 転 換 ~ 量 産 自 動 車 構 造 部 へ の
CFRP 採用~
山根健オフィス 山根 健
・モーターショー調査及び塗装技術動向からみる自動車
E-mail: [email protected]
I―4
436
会 報
2.平成27年11月度編集委員会
平成27年11月13日
(金)東京塗料会館
出席者 11名
◦審議事項
・議事録確認
・最新号確認
・割付
・小委員会報告
・次講座について
・編集委員会規定の見直し
・その他
LE
1.11月度理事会
平成27年11月25日
(水)
東京塗料会館/大阪塗料ビル
(TV会議)
出席者 理事:東京25名,大阪4名
監事:3名
◦審議事項
・会員の入退会の件
・平成28年度役員候補者選考結果承認の件
・平成28年度事業計画書および収支予算書承認の件
・色材協会誌表紙デザイン募集の件
・色材協会実施細則<著作権の帰属>追加承認の件
・名誉会員推挙の件
編集後記
M
P
私はスウェーデンの南に位置する都市に長期滞在していました。スウェーデンでは,冬の間,午後3時を過ぎると辺りが闇に包
まれます。明かりを灯すため,人々にとって欠かせないものとしてキャンドルがあります。キャンドルはただ単に明るさを与
えるのみではなく,クリスマスまでのカウントダウンにも使われ,文化の中に根付いています。太陽の光が極端に少ない状況で,
キャンドルの明かりは心に安らぎを与え,人々の会話を弾ませる役割を担っていました。皆様のなかにも,テーブルの上にキャ
ンドルがあるレストランで食事をとったとき,提供される料理,そしてパートナーがより魅力的に見えると感じた方は多いの
ではないでしょうか?
化粧品分野における研究テーマの一つとして,「肌を美しくみせること」があります。赤色は肌を美しく見せる色の一つと言わ
れており,このことがキャンドルによる魅力の向上に関係していると考えられます。このようなヒントから色と印象評価の研
究を行い,肌を美しく見せる化粧品が開発され,人々の生活に彩りを加える一助になっています。
本誌では「色材」という共通のキーワードのもと,異業種からの情報を受け取ることができます。その情報がヒントになり,人々
の生活に彩りを与える技術開発に役立てれば幸いです。
(堀江 亘)
本誌編集委員
独 物質・材料研究機構)
片山 英樹(㈱
川口 正剛(山形大学)
香山真理子(DIC ㈱)
佐野 秀二(大日本塗料㈱)
柴田 裕史(千葉工業大学)
徳岡 由一(桐蔭横浜大学)
鳥越幹二郎(東京理科大学)
西垣 仁史(トーヨーカラー㈱)
野々村美宗(山形大学)
ピータースミス(BASFジャパン㈱)
平原 英俊(岩手大学)
広瀬 有志(関西ペイント㈱)
S
A
委 員 長
柴田 雅史(東京工科大学)
副委員長
久司 美登(日本ペイント㈱)
米山 雄二(文化学園大学)
勝山 智祐(㈱資生堂)
委 員
独 産業技術総合研究所)
愛澤 秀信(㈱
荒牧 賢治(横浜国立大学)
岩崎 光伸(近畿大学)
大塚 英典(東京理科大学)
小倉 卓(ライオン㈱)
本誌掲載論文を引用される場合には,J. Jpn.
Soc. Colour Mater.と表記していただきますよ
う,お願いいたします。
なお和文の場合,当面, J. Jpn. Soc. Colour
Mater.(色材)と,括弧付で「色材」の併記
をされることは構いません。
原稿 :〒170-0013 東京都豊島区東池袋4-41-24
送付先 東池袋センタービル(日本印刷内)
一般社団法人色材協会 編集室
TEL 03-5911-8671 FAX 03-3971-1214
E-mail : [email protected]
堀江 亘(ポーラ化成工業㈱)
宮内 恭子(住友金属鉱山㈱)
宮㟢 健(キヤノン ㈱)
依田 恵子(花王㈱)
Advisory Board
金 聖勲(慶北大学校)
洪 伯達(台湾科学技術大学)
編集顧問
小関 健一(千葉大学)
山辺 秀敏(住友金属鉱山㈱)
浅田 匡彦(DIC ㈱)
平成 27年 12 月 15 日印刷 平成 27年 12 月 20 日発行
色 材 協 会 誌(88 巻 第 12 号)
定価 1 部 1,540 円(税込)
© 2015 Journal of the Japan Society of Colour Material
発行人 森 史 郎
編集人 柴 田 雅 史
発行所 一般社団法人 色 材 協 会
〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿三丁目 12番 8 号 東京塗料会館
TEL 03(3443)2811 FAX 03(3443)3699
(URL)http://www.shikizai.org/ E-mail:office@jscm.or.jp
振替口座 00120-7-76423
関西支部 〒530-0044 大阪市北区東天満一丁目9番10号 大阪塗料ビル2 階
TEL 06(6356)0700 FAX 06(6356)0711
中部支部 〒460-0011 名古屋市中区大須一丁目 35 番 18 号 一光大須ビル7階
TEL 052(231)3070 ㈹ FAX 052(204)1469
印刷所 日本印刷株式会社
-32-
印刷人 佐 藤 正 則
色材協会誌索引(平成27年 第88巻)
事 項
研
究
論
著 者
号数
頁
希
矢
矢 郎
一
道
1
2
也 明
6
161
166
文
中 村 有
長 谷 部 亜
多孔質ディオプサイド微粒子の調製に及ぼす非イオン系界面活性剤 Tween 20濃度の影響 城 野 哲
(英文)
村 上 拓
徳 岡 由
川 島 德
今
香
有機エレクトロルミネッセンス照明下における人工皮膚の色彩特性
山 本 義
川 島 祐
山 内 泰
野 々 村 美
昭
貴 樹
宗
6
増
白
中
竹
温
今
井
石
土
内
中
敏
敦
洋
直
都
信
行
則
輝 輝
蘇
人
7
203
色素増感太陽電池への応用を指向したBODIPY骨格をもつスクアリリウム系色素
前
垣
八
中
田
尾
木
澄
壮
大
繁
博
志
輔 幸
行
7
208
アシル基に電子求引性置換基を導入した芳香族有機過酸前駆体の漂白性能
久 保 園 隆 康
野 村 安 雄 堀 部 峰 子
8
251
邦
孝
英
妮
雄
静 夫
廣
俊
8
257
茂
樹 9
312
平 谷 卓 之
孝 治 慎 之 助 中 浜 数 理
10
337
有田焼上絵用の新規な環境調和型緑色顔料(英文)
本
西
澤
O/W型転相乳化着色エマルション特性に及ぼすポリマー物性の影響
橋
M
P
李
會
多官能性トリアジン化合物による樹脂上への無電解スプレー銀めっきに関する研究(英文) 桑
森
工
平
懸濁重合系への逆ヨウ素移動重合(RITP)の適用
高
林
アントシアニジン色素とHMS型メソポーラスシリカの複合体の調製とその色材としての 村
特性(英文)
河
柴
合
論
藤
原
彦
純
上
野
田
怡
穂
芳
雅
宏
高 海
史
11
371
市
鈴
杉
浅
川
木
崎
井
英
俊
茂
功
明 夫
雄
5
125
大
澤
友 6
171
文
A
総
翔
博
LE
植物由来のクルクミンを原料としたエポキシ樹脂の合成
パルス1H-NMR解析によるエポキシ樹脂組成物の硬化反応の解析と接着特性
資 料
S
―小特集 表面を利用したセンサー技術― pHに応答する粉体表面処理技術
解 説
有機分子性単結晶薄膜のダブルショット・インクジェット印刷技術
峯 廻 洋
野 田 祐
山 田 寿
長 谷 川 達
美
樹 一
生
2
35
―小特集 酸化チタンをめぐる最近の話題―
液面プラズマを利用した微粒子酸化チタンの水中分散技術の開発
山 口 浩
伊 藤 美 智
高 島 成
岡 真 佐
浅 野 浩
一
子
剛 人
志
3
73
デジタルテキスタイル用色材
城
田
衣 4
95
金属を使わない金属調光沢塗料
星
野
勝
義 4
101
無機ナノ粒子蛍光体のサイズ制御合成
竹
下
覚 4
106
パール顔料の基礎と最近の技術
大 久 保 真 吾 5
132
i
事 項
著 者
号数
頁
李
荻
若
本
松
丞
侑
俊
祐
祐 一
6
175
気体をプローブとした高分子のNMR構造解析
吉
水
広
明 8
265
―小特集 インクジェット技術の産業用途展開―
産業用途に広がるインクジェット技術
大
石
朝
野
橋
武
彰
大
得
輔 敦
9
294
―小特集 インクジェット技術の産業用途展開―
産業用インクジェット連帳印刷装置の構成と高速化に関する検討 森
小
磯
平
田
野
崎
潟
直
吉
己
彦 準
進
9
300
SiO2ナノ粒子表面にグラフトしたポリスルホベタインブラシ鎖の分子鎖形態
菊
川
高
地
口
原
守
正
也
剛 淳
10
341
青
松
田
山
本
島
哲
真
右
也
哉 副
LE
―小特集 表面を利用したセンサー技術―
呼気中アンモニアの即時検知を目指した水晶振動子ガスセンサシステムの開発
有機トランジスタおよび有機発光材料における分子パッキング制御
感熱記録用顕色剤の研究動向
生物発光酵素を用いた分子イメージング技術の進歩
皮膚のバリア機能および水分量の可視化
総 説
10
348
11
378
12
407
12
412
8
13
39
入
江
寛 セラミックスナノ粒子を起点としたOTN近赤外バイオイメージングシステムの開発
曽
我
公
平 光架橋反応による有機無機ハイブリッド材料の創製
松
川
公
洋 1
1
2
―小特集 酸化チタンをめぐる最近の話題―
酸化チタンナノ結晶が拓く省エネ技術
-メゾスコピック酸化チタン電極の光導電性と分子構造太陽電池-
萬
柳
関
田
一
祥
広 三
3
62
―小特集 酸化チタンをめぐる最近の話題―
二酸化チタンの粒子形状と機能性材料としての応用
磯
部
薫 3
67
二次元HPLC法による共重合体の構造解析
香
川
信
之 5
137
―小特集 表面を利用したセンサー技術―
蛍光増強効果をもつ薄膜干渉基板のバイオセンサーへの応用 秋
安
元
田
卓
央 充
6
181
色素増感太陽電池の最新トピックス
池
上
和
志 7
218
超臨界水が示す特異な性質を利用した“魔法”のナノ乳化技術
木
出
下
口
圭
剛 茂
7
223
塗料密着性の研究は科学(サイエンス)と成り得たか?
前
田
重
義 8
271
―小特集 インクジェット技術の産業用途展開― 分散染料によるインクジェット捺染について
赤
谷
宜
樹 9
306
光学活性ビナフチル有機発光体における円偏光発光(CPL)特性
今
井
喜
胤 光増感剤を用いたがんの光線力学治療とがんの診断
小 倉 俊 一 郎 超音波による欠陥と物性の可視化
燈
明
泰
成 理研小型中性子源RANSによる非破壊可視化技術
大
竹
淑
恵 11
12
12
12
383
416
419
424
12
428
1
2
3
4
5
6
7
8
9
17
44
78
111
143
187
227
279
321
A
M
P
可視光に応答する水の完全分解光触媒の設計と創製
Jean-Charles RIBIERRE
権谷(佐藤)佐織 松 本 真 哉
金 誠 培 藤 井 理 香
勝 田 雄 治 江 川 麻 里 子
良
矢
輔 樹
道
アミン系エポキシ硬化剤について
阿
部
俊
彦 接着剤高分子の相溶性
扇
澤
敏
明 土木・建築用の接着剤
杉
田
博 木材の接着
山
本
忍 シランカップリング剤のメカニズムと将来展開
海
野
雅
史 国際標準化について(歴史,活動状況,~接着関連)①
岩
田
立
男 国際標準化について(歴史,活動状況,~接着関連)②
岩
田
立
男 フュームドシリカ
藤
野
秀
之 接着・粘着特性評価法とその信頼性の考え方-剥離試験法の開発を事例として- 宮
城
善
一 S
山 崎 加 藤 三 樹
村 手 宏
今 山 和
川 瀬 晃
テラヘルツ波による分光イメージング
最新接着講座(第 12~20講 )
ii
事 項
著 者
号数
頁
耐久・防食講座(第 4~14 講)
片
樹 1
23
ジンクリッチペイントの基礎と最近の話題
水 島 健 太 郎 2
51
塗膜診断による鋼構造物の維持管理
岩
瀬
嘉
之 3
85
鉛,クロムフリー防錆顔料
福
知
稔 4
117
防食塗料用樹脂~常温硬化形樹脂の基礎
青
木
隆
一 5
148
インフラ維持管理のための腐食環境評価
押
川
渡 6
193
電気防食と塗装
篠
田
吉
央 7
232
防食塗装システムに関する国際規格の紹介
佐
野
秀
二 8
282
塗料用ふっ素樹脂 防食塗料への応用技術①
高
柳
敬
志 9
326
塗料用ふっ素樹脂 防食塗料への応用技術②
高
柳
敬
志 10
353
迫
良
輔 11
388
色覚の感度特性に基づく色表現と色覚メカニズムの環境適応性
溝
上
陽
子 10
361
光から色彩へ
坂
田
勝
亮 11
395
1
28
松 岡 由 幸 佐 藤 浩 一 郎
2
56
大学・研究所めぐり(文化学園大学服装学部服装造形学科テキスタイル研究室)
米
山
雄
二 3
90
大学・研究所めぐり(埼玉県産業技術総合センター)
細
野
光
広 4
121
大学・研究所めぐり(静岡大学大学院 総合科学技術研究科 工学専攻 化学バイオ工学コース)
河
野
芳
海 5
154
大学・研究所めぐり(北海道大学大学院 生命科学院 生命融合科学コース)
佐 藤 紘 士 朗 6
199
大学・研究所めぐり(世明大学)
イ ジェウォン 7
238
自動車ボディーおよび家電用亜鉛めっき鋼板の化成処理技術
光と色彩講座(第 1~2 講)
色 材 サ ロ ン
2014年度色材研究発表会 報告
M
P
大学・研究所めぐり(慶應義塾大学松岡由幸研究室)
山
英
LE
電気化学的手法による塗装鋼板の耐食性評価
第37回彩人会展を見て
240
田
中
達
也 8
288
大学・研究所めぐり(東京工業大学 大学院理工学研究科 材料工学専攻 無機環境材料講座 地球環境材料分野 中島松下研究室)
磯
部
敏
宏 9
332
大学・研究所めぐり(岩手大学 工学部 応用化学・生命工学科 理工学部 化学・生命工学科(平成28年度設置予定)無機材料化学研究室)
平
會
原
澤
英
純
俊 雄
10
367
大学・研究所めぐり(色材協会関西支部)
小
林
敏
勝 11
401
第11回 色材IT講座 報告
原
田
修 1
32
色材協会顔料物性研究会 平成26年度事業報告
船
倉
省
二 5
156
第1回インクジェット部会報告
城
田
衣 7
242
第2回インクジェット部会報告
奥
田
貞
直 12
434
巻頭言
井
坂
尚
志 1
1
―小特集 酸化チタンをめぐる最近の話題―
小特集にあたって
高
橋
鉱
次 3
61
―小特集 表面を利用したセンサー技術― 小特集にあたって
愛
澤
秀
信 6
170
平成27年度色材協会賞(論文賞)選考報告
依
田
恵
子 8
245
平成27年度色材協会賞(技術賞)選考報告
青
木
隆
一 8
247
―小特集 インクジェット技術の産業用途展開―
小特集にあたって
滝
沢
吉
久 9
293
―特集 多様な可視化の世界― 特集にあたって
香 山 真 理 子 12
405
A
7
大学・研究所めぐり(同志社大学先端複合材料研究センター)
S
部会・研究会活動報告
そ
の
他
iii
Index of Journal of the Japan Society of Colour Material(2015,Vol.88)
Item
Author
No.
Page
Original Research Paper ;
1
2
Synthesis of Epoxy Resin from Plant-Based Curcumin Shoya IMAMOTO Hiroaki KOUZAI
6
161
Color Properties of Artificial Skin Under Organic Light-Emitting Diode Light Yoshiaki YAMAMOTO
Yuki KAWASHIMA
Yasuki YAMAUCHI
Yoshimune NONOMURA
6
166
Novel Environment-friendly Green Pigments for Over-glazed Decoration of Arita Ware
Toshiyuki MASUI
Atsunori SHIRAISHI
Hiroki NAKADO
Naoki TAKEUCHI
Wendusu
Nobuhito IMANAKA
7
203
Squaraine Dyes with BODIPY Skeletons for the Application to Dye-Sensitized Solar Cells
Takeshi MAEDA
Daisuke KAKIO
Shigeyuki YAGI
Hiroyuki NAKAZUMI
7
208
Bleach Performance of the Aromatic Peracid Precursor Having Electron Withdrawing Substituent at the Aromatic Ring of the Acyl Group
Takayasu KUBOZONO
Yasuo NOMURA
Mineko HORIBE
8
251
A Novel Metallizing Method on Resin Surface Through Silver Spray Using Triazine Compound
Yanni LI
Sumio AISAWA
Jing SANG
Kunio MORI
Takahiro KUDOU
Hidetoshi HIRAHARA
8
257
Effect of Properties of High-Molecular Weight Polymer on the Characteristics of Colored Emulsion by Phase Inversion Emulsification
Shigeki TAKAHASHI 9
312
Reverse Iodine Transfer Polymerization (RITP) in Suspension Takayuki HIRATANI
Shinnosuke KOJI
Kazumichi NAKAHAMA
10
337
Preparation of Composite Comprising Anthocyanidin Dye and HMS-Type Mesoporous Silica and its Color Properties
Yi-Hung LIN
Hodaka MURAKAMI Yoshiumi KOHNO
Masashi SHIBATA
11
371
Isao ICHIKAWA
Hideaki SUZUKI Toshio SUGIZAKI
Shigeo ASAI
5
125
Metal-Like Lustrous Coatings Prepared Without Using Metals Katsuyoshi HOSHINO
4
101
Size-Controllable Synthesis of Inorganic Nanophosphors Satoru TAKESHITA
4
106
-Special Edition Employing Surfaces for Sensor Technologies-
Development of a Quartz Crystal Microbalance Sensor System for Immediate Detection of Ammonia in Human Breath
Seung-Woo LEE
Yusuke OGIMOTO
Shunichi WAKAMATSU
6
175
Recent Advances in Molecular Imaging Technologies with Luciferases Sung Bae KIM Rika FUJII
12
407
Visualization of the Barrier Function and Water Content of Skin Yuji KATSUTA Mariko EGAWA
12
412
A
M
P
LE
Effect of Tween 20 Concentration on Macropore Formation in Spherical Diopside Particles
Yuhki NAKAMURA
Aya HASEBE
Tetsuya JOHNO
Takurou MURAKAMI
Yoshikazu TOKUOKA
Norimichi KAWASHIMA
Integrated Paper ;
S
Analysis of the Curing Reaction of the Epoxy Resin Composition by Pulsed 1H-NMR and Adhesive Properties
Current Topics ;
I
Item
Author
No.
Page
Review ;
Designs and Preparations of Visible-Light-Sensitive Overall Water-Splitting Photocatalysts
Hiroshi IRIE 1
8
Development of OTN Near Infrared Bioimaging System Based on Ceramic Nanoparticles
Kohei SOGA 1
13
Double-Shot Inkjet Printing Technique for Manufacturing Molecular Single- Crystal Films
Hiromi MINEMAWARI
Yuki NODA
Toshikazu YAMADA
Tatsuo HASEGAWA
2
35
Preparation of Organic-Inorganic Hybrid Materials by Photo-crosslinking Reaction
Kimihiro MATSUKAWA 2
39
Kazuhiro MANSEKI Shozo YANAGIDA
3
62
Kaoru ISOBE 3
67
Basic Technology and Recent Trends of Pearlescent Pigment Shingo OKUBO
5
132
Characterization of Copolymer by 2D-HPLC Method Nobuyuki K AGAWA
5
137
Tomo OSAWA
6
171
Application of an Optical Interference Mirror Slide Based on a Fluorescence Enhancement to Biosensors
Takuo AKIMOTO Mitsuru YASUDA
6
181
Recent Research Topics of Dye-Sensitized Solar Cells -Special Edition Current Topics for Titanium Dioxide-
LE
Titanium Dioxide Nanocrystals for Energy-Saving Technologies
-Photoconductivity of Mesoscopic Titanium Dioxide Electrodes and MolecularStructured Solar Cells-
-Special Edition Current Topics for Titanium Dioxide-
Particle Shape of Titanium Dioxide and Application for Functional Materials
-Special Edition Employing Surfaces for Sensor Technologies-
Powder Surface Treatment to Provide pH-Responsiveness
-Special Edition Employing Surfaces for Sensor Technologies-
7
218
Keigo KINOSHITA Shigeru DEGUCHI
7
223
NMR Characterizations of Polymers Using Gases as Probes Hiroaki YOSHIMIZU
8
265
Could the Study of Paint Adhesion Become Scientific ? Shigeyoshi M AEDA
8
271
Textile Inkjet Printing Using Disperse Dyes Yoshiki A KATANI
9
306
Recent Studies on Color Developer Used for Thermal Paper Saori Sato-Gontani Shinya MATSUMOTO
11
378
Circularly Polarized Luminescence (CPL) Property for Chiral Binaphthyl Organic Fluorophore
Yoshitane IMAI
11
383
Cancer Therapy and Diagnosis Using Photosensitizers Shun-ichiro OGURA
12
416
Visualization of Defects and Physical Properties by Ultrasound Hironori TOHMYOH
12
419
Non-Destructive Visualization Technique for the RIKEN Compact Neutron Source RANS
Yoshie OTAKE
12
424
Spectroscopic Imaging Using Terahertz Waves Ryo YAMAZAKI
Mikiya KATO
Kosuke MURATE Kazuki IMAYAMA
Kodo KAWASE
12
428
Dispersion of Titanium Dioxide Nanoparticles in Water by Plasma on Liquid Surface
Koichi YAMAGUCHI
Michiko ITO
Seigo TAKASHIMA Masato OKA
Hiroyuki ASANO
3
73
Color Materials for Digital Textile Koromo SHIROTA
4
95
-Special Edition Progress in Inkjet Technology for Industrial Usage-
Akiyoshi OHNO
Dasiuke ISHIBASHI Atsushi TOMOTAKE
9
294
Naoki MORITA
Yoshihiko ONO Jun ISOZAKI
Susumu HIRAKATA
9
300
S
A
M
P
Masashi IKEGAMI
MAGIQ Process for Making Nanoemulsions Utilizing Unique Properties of Supercritical Water
Digest ;
-Special Edition Current Topics for Titanium Dioxide-
Expansion of Inkjet Technology into Industrial Printing Applications
-Special Edition Progress in Inkjet Technology for Industrial Usage-
Inkjet for Industrial Continuous Web Printer and Study on Speed Enhancement
II
Item
Author
No.
Page
Molecular Conformation of Polysulfobetaine Brushes Immobilized on SiO2 Nanoparticles
Moriya KIKUCHI
Seigou KAWAGUCHI Atsushi TAKAHARA
10
341
Control of Molecular Packing in Organic Transistors and Organic Light-Emitting Materials
Tetsuya AOYAMA
Shinya MATSUMOTO Yusuke TAJIMA
Jean-Charles RIBIERRE
10
348
About Amine-Based Curing Agents for Epoxy Resin Toshihiko A BE
1
17
Evaluation of Corrosion Resistance of Coated Steels Using Electrochemical Methods
Hideki KATAYAMA 1
23
Miscibility of Polymers in Adhesives Toshiaki OUGIZAWA
2
44
Kentaro MIZUSHIMA
2
51
Hiroshi SUGITA
3
78
Maintenance Management of Steel Structures Using the Paint Film Investigation System
Yoshiyuki IWASE 3
85
Adhesion to Wood Shinobu YAMAMOTO
4
111
Minoru FUKUCHI
4
117
Mechanism and Future Prospects of Silane Coupling Agents Masafumi UNNO
5
143
Ambient Curable Resins for Anti-Corrosion Paints Ryuichi AOKI
5
148
International Standardization(History, Activities~Adhesives)I Ritsuo IWATA
6
187
Corrosion Environment Evaluation for Infrastructure Maintenances Wataru OSHIKAWA
6
193
International Standardization(History, Activities~Adhesives)II Ritsuo IWATA
7
227
Cathodic Protection System and Coating System Yoshio SHINODA
7
232
Fumed Silica Hideyuki FUJINO
8
279
Introduction of the International Standards of Protective Paint Systems Shuji SANO
8
282
Consideration of Evaluation Methods and Dependability for Properties of Adhesion and PSA
Zenichi MIYAGI 9
321
Fluoro-Resins for Protective Paint Systems I Takashi TAKAYANAGI
9
326
Fluoro-Resins for Protective Paint Systems II Takashi TAKAYANAGI
10
353
Color Notation Based on Color Sensitivity and Adaptability of Color Vision Mechanism
Yoko MIZOKAMI 10
361
Chemical Conversion Coating Technologies of Automobile Bodies and Galvanized Steel Sheets for Consumer Electronics
Ryosuke SAKO 11
388
From Ray to Colour Katsuaki SAKATA
11
395
Koji TAKAHASHI 3
61
Hidenobu AIZAWA 6
170
The Introduction and Recent Topics of Zinc-Rich Paint Adhesion for Civil Engineering Works A
M
P
Lead and Chromium Free Anti-Corrosive Pigments LE
Serial Lecture ;
S
ETC ;
-Special Edition Current Topics for Titanium Dioxide-
Introduction
-Special Edition Employing Surfaces for Sensor Technologies-
Introduction
-Special Edition Progress in Inkjet Technology for Industrial Usage-
Yoshihisa TAKIZAWA 9
293
-Special Edition The Diverse World of Visualization-
Mariko KOHYAMA 12
405
Introduction
Introduction
III
A
S
LE
P
M
編集委員会
2016年6月の小特集では,「自然界から学ぶ色彩(仮題)」に関する話題提供を予定して
おります。
LE
近年,長い年月を経て現在の姿になった自然界の構造,色彩などを人工的にまねをして
応用するバイオミメティック的な考え方が普及しつつあります。
平成二十七年十
二
月二十日発行(毎月一回二十日発行)
2016年6月特集号
「自然界から学ぶ色彩(仮)」
原稿募集のお知らせ
本特集では自然界が長期間をかけて培ってきた色彩について,どのようにしてこのよう
な色にたどり着いたのかという謎を探りつつ,自然界の神秘の一部に触れることができれ
ばと考えております。
人類が存在する以前から地位を獲得していた動植物が生き残った知恵を学ぶべく,自然
界の色彩に思いを馳せ,いずれいつの日か,その知恵を活かしたより良き環境で共存でき
る地球があればこれ以上の喜びはありません。
P
皆様からの原稿を募集いたしますので,ぜひとも奮ってご応募ください。
テーマ :自然界から学ぶ色彩(仮)
原稿の種別 :研究論文,技術論文,総合論文,総説,解説,資料
掲載号 :2016年6月号(89巻6号)
M
お申し込みください。
材
応募締め切り:2015年12月31日
色
申し込み方法:原稿の種類,題名,著者名,所属,連絡先を明記し,下記連絡先まで
協
原稿締め切り:2016年2月28日
会
誌
A
小特集号テーマ募集のお知らせ
本誌ではこれまで以上に読みやすい誌面づくりを目指し,12月の特集号に加え,年3回
(3月,6月,9月)テーマを設定した「小特集号」を企画しております。皆様からのご要望
申し込み・問い合わせ先
1)色材協会 編集室
〒170-0013 東京都豊島区東池袋4-41-24 東池袋センタービル 日本印刷㈱内
TEL 03-5911-8671 FAX 03-3971-1214
E-mail:[email protected]
2)J-STAGEによる投稿
https://www.editorialmanager.com/shikizai/
ケイエムエスへ
本誌への広告は一手取扱社 東京都町田市原町田1-13-1
〒 194-0013町田ハイツ壱番館1-3 R7
電話 042-860-6388
第十二号
S
ありましたらぜひ編集室までお寄せください。
第八十八巻
に添った内容を特集していきたいと思っておりますので,取り上げてほしいトピックスが