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平成24年度大阪府国際化戦略アクションプログラム
外国人材活用システム構築事業
留学生受入担当者マニュアル
大阪府国際化戦略実行委員会
平成25年3月
-1-
<目次>
第1章
留学生受け入れの現状と留学生総数の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
1
留学生受け入れの動向
2
日本における主な留学生政策
3
出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正と入国管理局政策
4
今後の留学生政策の方向性について
第2章
在留資格とその手続きについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
1
日本留学の条件について
2
在留資格(ビザ)について
3
在留資格取得と申請の手続きについて
4
代理申請と申請取次制度
第3章
入学選考についての注意点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
1
出願書類について
2
入学者選抜の基準について
3
専門学校の留学生の受け入れ数に関する留意事項
4
日本語能力の評価方法について
第4章
留学生担当者の役割と業務・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
1
留学生生活指導担当者とは
2
入学後のオリエンテーションについて
3
留学生担当職員の業務とは
4
授業にあたっての注意点
5
資格外活動(アルバイト)について
第5章
留学生の諸手続きについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42
1
留学生が必要な諸手続きについて
2
在留期間の更新について
3
在留カードとは
4
資格外活動許可申請
5
再入国許可制度(みなし再入国許可制度)
6
医療保険制度(国民健康保険)
第6章
―新しい在留管理制度について
留学生の卒業後の進路とフォロー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53
卒業後の進路指導について
2
留学生の就職サポートについて
3
留学生受け入れ企業の拡大のための取り組み
4
外国人留学生の就職の現状
5
企業が望む人材
6
就職活動のスケジュール
7
就職活動における日本語能力
8
個別企業ごとの留学生採用条件を把握することの重要性について
9
在留資格変更手続き
第7章
1
留学生担当者のための Q&A ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・72
-2-
第1章 留学生受け入れの現状と留学生総数の推移
~30 万人計画からこれまで~
1
留学生受け入れの動向
独立財団法人日本学生支援機構が、平成 23 年 5 月 1 日現在にて集計した統計調査によれば、日本で
学ぶ留学生総数は 138,075 人で、前年度調査数(141,774 人)と比較した場合に 2.6%、3,699 人の減
少が見られました。 平成 20 年に当時の内閣(福田内閣)によって、日本国内の教育機関で学ぶ留学
生数を 30 万人まで増加させようとする「留学生 30 万人計画」が打ち出されて以来、平成 21 年より前
年比対比 6~7%の安定的な留学生総数増加の傾向が見られていましたが、平成 23 年の未曾有の災害
である東日本大震災や、
平成 24 年の尖閣諸島問題を起因とする日中間の政治的緊迫が原因と予想され
る影響により、減少に転じました。
留学生数の推移(各年 5 月 1 日現在・独立行政法人日本学生支援機構)
学校段階別の留学生の受け入れ状況は
平成 23 年度留学生統計に基づいて、
日本国内での各教育機関での留学生受け入れ状況を整理すると、
大学院・大学・専門学校等による学校段階別の留学生在籍状況では、大学在籍者総数(68,901 人)が
一番多く、次いで大学院在籍者(39,749 人)となり、海外諸国からの留学生は、学位の取得を目的と
する留学は依然に根強い人気があると言えます。また、入学選考時や在留資格「留学」の取得申請を
行う場合に、日本語学校や専門学校への入学と比較した場合に、日本語能力の要件が緩やかであるこ
とや、専門学校を卒業の後に更なる学力向上を目的に大学や、大学院に再進学する留学生が増加して
いることが背景にあると考えられます。 一方で、専門学校における在籍者数(25,463 人)の緩やかな
増加傾向が見られ、留学生総数に占める比率も 18.4%を占めるまでに増加しています。これは、高等
-3-
教育機関で専門教育・技術を学んだ後に日本国内で就職を希望する留学生が増加してきたと考えられ
るほか、近年、専門学校と産業界(企業)が協力して優秀な留学生を積極的に採用し、国際化社会に
対応できる企業作りを進める傾向が見られることが大きな要因であるといえるでしょう。
在学段階別・国公私立別留学生数
依然に日本留学人気の中国 ~出身国・地域別~
日本国内で学ぶ留学生総数における出身国・地域別で分類した調査に目を向けると、中国からの留
学生総数(87,533 人)がもっとも多く、全体の約 60%を占めています。この傾向は、近年に大きな変
化は見られていませんが、平成 23 年に発生した東日本大震災や、平成 24 年の尖閣諸島問題における
日中間の政治的な緊迫状況を鑑みた場合、今後に影響が現れてくると予想されます。また、
韓国(17,640
人)や、台湾(4,571 人)からの留学生も多く、近年ではベトナムからの日本への留学希望者も増加
しており、上位 4 カ国の出身者によって留学生総数の約80%が占められています。
また、上述の
ベトナム、及びネパール、マレーシア、インドネシア、バングラデシュ、モンゴル等においては、留
学生数前年度調査と比較した場合に 10%以上の総数増加が見られる国もあり、総数が 1000 人を超える
国・地域も増加傾向にあります。これは、「留学生 30 万人計画」に加えて、アジア諸国において学術
的・技術的な観点による日本へ留学する利点が広く伝えられるようになったこと、及び日本留学を支
援する企業・団体が増加したことが大きな要因であると考えられます。
-4-
出身国(地域)別留学生数
都市部に集中する留学生
~在住地域別調査から見る総数~
日本に在籍する留学生数を在住地域にて比較した場合、関東地域(64,088 人)ともっとも多く全体
の 50%近くを占めています。関東地域に続いて近畿地区(24,807 人)
、九州地区(18,699 人)
、中部地
区(15,441 人)と続いています。留学生の首都圏や都市部への集中傾向は、ここ数年間大きな変化は
見られておらず、北海道地区、山陰・山陽地区、北陸地区、四国地区、沖縄地区等を合わせても、全
体総数の 10%程度に留まっています。また、都道府県別総数に目を向けた場合には、留学生総数がも
っとも多い東京都(43,188 人)となっています。この点、留学生が都市圏に集中する傾向にあるため
か、約 80%の留学生が民間宿舎や、アパートに住んでおり、ホームステイ・学校設置の寮・公益法人
運営の留学生宿舎に住む留学生数を合わせても、約 25,000 人程度に留まっています。
-5-
<留学生宿舎の状況>
-6-
2
日本における主な留学生政策
この章では、平成 20 年福田内閣が打ち出して以来、現在も継続的に取り組まれている「留学生 30
万人計画」をはじめとする留学生政策、及び留学生の在留資格(留学ビザ)審査の根幹を担う出入国
管理及び難民認定法(入管法)に焦点をあてて、取り上げます。
福田内閣が打ち出した「留学生 30 万人計画」とは?
平成 20 年(2008 年)1 月に当時の内閣総理大臣・福田康夫首相は、第 169 回通常国会の施策方針演
説において「日本を世界に開かれた国とし、人の流れを拡大していくために重要である」として、
「留
学生 30 万人計画」を制定し、実施の表明をした事に始まります。福田内閣以前からも、日本に諸外国
からの留学生を幅広く受け入れ、総数を拡大させようとする方向性を巡って様々な議論が行われてい
ました。とりわけ安倍内閣時代の教育再生会議や、アジア・ゲートウェイ構想や、国会議員による留学
生特別委員会等によっても様々な議論が繰り返されていましたが、福田内閣によって、国策として具
体的な留学生受入目標(ポスト 10 万人)が初めて打ち出されました。
「留学生 30 万人計画」に先立って、日本では長年に渡って留学生受け入れの指針となっていた「留
学生受入 10 万人計画」が存在していました。これは、昭和 58 年(1983 年)に打ち出されたもので、
平成 15 年(2003 年)に留学生総数が 10 万人を突破したことで達成されました(109,580 人/2003 年)。
この点、政府目標が達成されたにも係わらず、大学や専門学校等の高等教育機関で学ぶ学生総数約 350
万人に対して、留学生が占める割合はわずか 3%程度に留まっていました。今後、日本国内において長
期的な課題となる 18 歳人口減少に伴う学生減少にある中で、
進学率増加等によって高等教育機関にお
ける学生総数が約 300 万人を推移すると想定される中において、日本と同じ先進国であるドイツやフ
ランスにおける国内学生数における留学生比率が 11~12%を維持されている点に着目されました。留
学生受け入れ施策において日本が具体的目標を設定していく上で、ドイツやフランスと同水準にする
為の目安として、総学生数約 300 万人の約 10%である 300 万人が算出されました。
「留学生 30 万人計画」の具体的な実現施策とは?
福田首相施策方針演説によって打ち出された「受け入れ留学生総数 30 万人を国家目標とする」指針
を具体的に実現させる為に、内閣府・教育再生懇談会、経済財政諮問会議や、文部科学省・中央教育
審議会留学生特別委員会、また法務大臣私的懇談会・出入国管理政策懇談会によって様々な議論が行
われ、平成 20 年 7 月(2008 年)に、文部科学省、外務省、法務省など関係 6 省庁によって「留学生
30 万人計画」骨子が制定されました。
「留学生 30 万人計画」骨子では、世界規模での情報・知的財産の流れを拡大する「グローバル戦略」
の一環として、国・地域・分野等に留意しつつ、日本の高等教育機関に優秀な留学生の戦略的な獲得
を実現化し、2020 年までに留学生受け入れ総数 30 万人を目指す事が盛り込まれました。日本への留
学にむけた「動機付け」から「入学」を始め、日本国内での就職にむけて、卒業・修了後の進路に至る5
項目の体系的方策が掲げられ、関係省庁・機関等の総合的・有機的な連携により推進されるべき方針
として発表されました。
留学生受け入れ 30 万人計画・具体的な体系的方策
(1)日本留学への誘い
海外諸国における日本語教育の充実化。積極的な日本留学に関する情報提供及び日本文化の発信等
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により日本ファンを拡大し、日本への関心を呼び起こして留学希望に結びつける。相談窓口を一本化
しワンストップサービスを提供する。
(2)入試・入学・入国の「入ロ」の改善
日本留学が円滑に進むように、各学校の入試情報や日本留学試験の受験情報等の発信強化、渡日前
入学許可の推進や各種手続きの渡日前決定の促進、入国前後の在留資格審査の簡素化・期間短縮化等を
行う。
(3)大学等のグローバル化の推進
留学生を引きつける魅力的な学校づくりを視野に入れ、大学等のグローバル化を推進する。具体的
には、英語のみによるコースの拡大、ダブルデイグリーや単位互換、短期留学の推進、国際化拠点大
学(グローバル 30)の選定と財政的支援、国際間大学交流と連携の推進、9月入学の促進、外国人教
員の採用拡大、留学生受け入れの専門的な組織体制強化等を推進する。
(4)受け入れ環境づくり
留学生への生活支援、国費留学生制度の改善・活用、宿舎・奨学金の改善、日本語教育の充実、留
学生や家族向けのカウンセリング及び地域・企業一体となった交流支援等の促進等、留学生が安心し
て勉学に専念できるよう受け入れ環境づくりを行う。
(5)卒業・修了後の社会での受け入れ推進
卒業留学生が日本社会に定着し活躍できるよう、
産学官が連携した就職支援や受け入れ態勢づくり、
在留期間の見直し等、社会全体での受け入れを推進する。学校側に対しては専門的な相談窓口の設置
や人的ネットワークの強化など就職支援の取り組み強化を、企業側に対しては意識改革と受け入れ体
制の整備を、そして関係省庁には就職活動を目的とした在留期間の延長、就労可能な職種の明確化及
び取扱弾力化等をそれぞれ求める。
「留学生 30 万人計画」骨子については以下を参照:首相官邸ホームページ
http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/rireki/2008/07/29kossi.pdf
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3.出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正と入国管理局政策
入国管理局に関する法律や、在留資格(ビザ)の許可や在留管理は、「留学生 30 万人計画」を具体
的に推進し、実質的な実施役割を担っていると言えます。入国管理局での実務の中心となる入管法(正
式名称後述)はいかにして成立されたのでしょうか。立法経緯に目を向けてみると、先述の「留学生
30 万人計画」骨子の策定を受けて、平成 21 年(2009 年)1月に法務大臣私的懇談会である出入国管理
政策懇談会において「留学生及び就学生の受入れに関する提言」がとりまとめられました。その後、法
務大臣への提出を経て、法務省は係る提言を踏まえて改正入管法(出入国管理及び難民認定法及び日
本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する
等の法律)を国会に提出し可決・成立され、平成 21 年7月15日に公布されることになりました。
改正入管法の内容と実施状況
平成 21 年7月に成立した改正入管法に盛り込まれた内容の多くは、
すでに具体的な施策として実施
されています。しかしながら、施行日や関係機材導入等の関係により段階的な実施となりましたが、
平成 24 年 7 月にすべての施工が実施となりました。
改正入管法により打ち出された主な留学生政策は
以下の通りです。
(1)留学希望者の提出書類の簡素化と申請時間の短縮
不法残留者や不法就労者を発生させず、留学生の在籍管理を適切に行っていると認められる大学等
からの申請については、提出書類の大幅な簡素化を図り、原則として申請書のみを求める取扱いを行
っています。
(2)学校関係者による留学生情報の法務大臣向け提供を義務化
留学生の適正な在留管理を実現するため、大学等は留学生の在留状況に関する情報を法務大臣に対
して届け出るよう努めなければならないとする規定が改正人管法で明文化されました。
(3)在留資格「留学」の最長期間を延長
在留資格「留学」について従来の 2 年 3 月、2 年、1 年 3 月、1 年、6 月に加え、4 年 3 月、4 年、3
年 3 月、3 年及び 3 月が新たに加えられました。
(4)留学生の就職を支援するため在留資格の規制を緩和
在留状況に問題がなく、就職活動を継続するに当たり卒業した大学・専門学校等の推薦がある場合
には、留学生の卒業後の就職活動期間について最長 180 日から 1 年(在留資格「特定活動」6月+1回
更新6月)に延長できるようになりました。
留学生が本邦の上場企業等への就職を目的として在留資格変更許可申請をする場合における提出書
類については、原則として、当該申請書のみとする取扱いを行うこととし、提出書類の簡素化及び審
査期間の短縮化されることになりました。
「技術」「人文知識・国際業務」等、留学生の本邦企業等への就職を目的とした在留資格については、
最長 5 年の在留期間が新設されました。
就職を目的とした在留資格を取得し、本邦に上陸する際の許可基準を緩和し、学歴要件として新た
に「専門士」「高度専門士」が加わりました。これに伴い、本国で大学卒の学歴を有していない外国人が
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日本の専修学校専門課程(専門学校)を卒業後に一度、母国に帰国した場合でも、再来日して、各種活
躍をする道が開かれました。
(5)「留学」「就学」の在留資格一本化と資格外活動許可条件の統一
外国人が教育を受ける活動の在留資格について、
「留学」と「就学」の区分がなくなり、
「留学」に
一本化されました。これにより日本語教育機関等で学ぶ学生が取得する在留資格も「就学」から「留学」
へと変更されました。
アルバイト等の資格外活動許可については、活動の内容や場所を特定せずに包括的に許可する場合
の扱いが一本化され、日本語教育機関に在籍している留学生についても大学・専門学校の留学生と同
様に-週 28 時間以内(長期休業期間中は1日 8 時間以内)という条件が適用されるようになりました。
(6)再入国許可制度の見直し(みなし再入国許可制度の導入)
従来、留学生が母国へ一時帰国する際に取得を義務づけられていた再入国許可は、出国後 1 年以内
に日本へ再入国する場合は原則として取得不要となりました。
(7)在留カードの導入と外国人登録証明書の廃止
在留カードは、法務省が外国人の在留管理に必要な情報を一本化し継続的に把握することを目的と
して新たに導入したもので、留学生も常時携帯を義務づけられるようになりました。
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4.今後の留学生政策の方向性について~第4次出入国管理基本計画について~
法務省は平成 22 年(2010 年)3月に発表した「第4次出入国管理基本計画」の中の「経済成長に寄与
するなど社会のニーズにこたえる人材の受け入れ」の項目において、以下のような方針を発表してい
ます。
・高度人材の積極的な受け入れのためのポイント制を活用した優遇制度の導入
・企業における人材活用の多様化に対応する、企業で雇用される外国人に係る在留資格の見直し
・資格等によって専門性、技術性が担保されている外国人の受入れの推進
・企業で雇用される外国人の在留資格審査に係る提出書類の簡素化及び審査の迅速さの一層の徹底
・歯科医師、看護師等の有資格者に対する就労制限の見直し
・EPA で受け入れた介護福祉士の就労状況等も踏まえ、我が国の大学等を卒業し、介護福祉士等の国
家資格を取得した者の受入れの可否について検討
また「留学生の適正な受入れの推進」という項目を設け、下記に関しても言及しています。
・「留学生 30 万人計画」の達成に向けた適正・円滑な入国・在留審査の実施
・我が国企業への就職を希望する留学生の在留資格変更手続きの円滑化の推進
なお上記の内、
「歯科医師、看護師等の有資格者に対する就労制限」について、法務省は平成 22 年
11 月に省令改正を行い、我が国の国家資格を取得している外国人の歯科医師、看護師、保健師、助産
師については、就労年数や活動地域における制限を全面的に撤廃しました。更に従来は「就労」資格で
あっても、これらの職種に従事する外国人は、就労活動を「研修として行う業務」に限定されていました
が、この制限も事実上無くなりました。また高度人材ポイント制については、わが国の経済成長や新
規雇用創出に貢献すると期待される外国人に在留資格「特定活動(在馴期間 5 年)」を付与し、在留上
の様々な優遇措置を与える仕組みが取り組まれています。
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第2章
在留資格とその手続きについて
1.日本留学の条件について
(1)「留学」の在留資格
わが国において、
「留学」の在留資格を得るには次の基準を満たしていなければなりません(入管法
第 7 条第1項第2号の基準を定める省令)。
(a)入学先の条件
次のいずれかの教育機関に入学して教育を受けることが条件です。
(⑤を除いていずれも専ら夜間通学して、または通信により教育を受ける場合を除く)
①大学又はこれに準ずる機関
②専門学校
③外国において 12 年の学校教育を修了した者に対して本邦の大学に入学するための教育を行う機関
④高等専門学校
⑤大学の夜間において授業を行う大学院の研究科
(当該大学が、当該研究科において教育を受ける外国人の出席状況及び資格外活動に関する法律の遵
守状況を十分に管理する体制を整備している場合に限る。)
⑥高等学校(定時制を除き、中等教育学校の後期課程を含む。
)又は特別支援学校の高等部
⑦専修学校の高等課程若しくは一般課程又は各種学校若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教
育機関
(b)経済力(経費支弁能力)の条件
在留期間中の生活費用を支弁する十分な資産、奨学金その他の手段を有することが必要です。
(c)日本語力の条件
専門学校等で教育を受けようとする場合(専ら日本語の教育を受けようとする場合を除く)、下記の
いずれかに該当していることが求められます。
①外国人に対する日本語教育を行う教育機関(日本語教育機関)で、法務大臣が告示をもって定める
ものにおいて 6 か月以上の日本語の教育を受けた者
②専門学校等において教育を受けるに足りる日本語能力を試験により証明された者。
公益財団法人日本国際教育支援協会及び独立行政法人国際交流基金が実施する日本語能力試験Nl
(旧 1 級)若しくはN2(旧 2 級)に合格、又は独立行政法人日本学生支援機構が実施する日本留学試
験の日本語の科目 200 点以上が目安とされる。
③学校教育法第 1 条に規定する学校で 1 年以上の教育を受けた者(但し幼稚園を除く)
(d)その他
① 専門学校等で教育を受けようとする場合(専ら日本語の教育を受けようとする場合を除く)、当該
教育機関に外国人学生の生活の指導を担当する常勤の職員が置かれていることが必要です。
② 専門学校等の日本語科等において専ら日本語の教育を受けようとする場合、当該教育機関が、法
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務大臣が告示をもって定めるものであることが必要です。
③本邦の大学に入学するための教育を行う機関において教育を受けようとする場合、
当該教育機関が、
法務大臣が告示をもって定めるものであることが必要です。
(2)日本の高等教育機関の入学資格
基本的な入学要件
大学・専門学校の入学資格は、原則として高等学校卒業者か、12年の学校教育を修了した者等、
学校教育法で定めた要件を満たした者でないと認められません(学校教育法施行規則第 183 条)。外国
人留学生についても同様で、
(a)外国において学校教育における12年の課程を修了した者、又は
(b)これに準ずる者で文部科学大臣の指定した者でなければ、入学資格に関し、日本の高等学校卒業
者と同等以上とは認められません(学校教育法施行規則第 150 条 l)。
12 年課程の修了者に準ずる者とは
外国において学校教育における 12 年の課程を修了していないものの、
それに準ずる者として認めら
れる上記(b)とは、具体的にどのような対象者でしょうか。これについては文部科学省告示で、次の
ように規定されています。
① 外国において、
学校教育における 12 年の課程を修了した者と同等の学力があるかどうかに関する
認定試験であると認められる当該国の検定に合格した者で、18歳に達した者。
② 外国において、高等学校に対応する学校の課程を修了した者で、文部科学大臣が別に定めるとこ
ろにより指定した我が国の大学に入学するための準備教育を行う課程(中略)を修了し、かつ、18歳
に達した者。
③ 我が国において、
高等学校に対応する外国の学校の課程(その修了者が当該外国の学校教育におけ
る 12 年の課程を修了したとされるものに限る)
と同等の課程を有するものとして当該外国の学校教育
制度において位置付けられた教育施設の当該課程を修了した者で、18歳に達した者。
④ 上記の③と同じ課程を修了した者で、我が国において②の準備教育を行う課程を修了し、かつ1
8歳に達した者。
現状では学校教育における初等中等教育(小学校から高等学校まで)の課程が合計で 12 年間に満た
ない国・地域からの留学生の場合、例えば 11 年制の国から来日した学生は、来日後にこれらの準備教
育課程で 1 年間学び、その期間を本国で学んだ期間と合算して日本の入学資格を満たすのが一般的で
す。
(文部科学省告示第 153 号より一部省略及び抜粋)
「高校卒業と同等以上」とは
また上記とは別に、大学の入学資格を定めた学校教育法施行規則第 150 条 4 には、文部科学大臣が
別途指定した者については、高等学校卒業者と同等以上の学力があると認める規定があり、専門学校
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への入学資格についてもこの規定が準用されています。ではこれに該当する上記③とは、具体的にど
のような対象者でしょうか。昭和 23 年の旧文部省告示で指定され、以後改訂されたもののうち、諸外
国の大学入学資格や国際的な評価団体の評価を受けた教育施設等、外国人に関連して日本の高等学校
卒業者と同等以上とみなされるものを以下に列記します(文部省告示第 47 号より一部省略の上、抜粋)。
①スイス民法典に基づく財団法人である国際バカロレア事務局が授与する国際バカロレア資格を有す
る者で 18 歳に達した者。
② ドイツ連邦共和国の各州において大学入学資格として認められているアビトウア資格を有する者
で 18 歳に達した者。
③ フランス共和国において大学入学資格として認められているバカロレア資格を有する者で 18 歳に
達した者。
④ 外国人を対象に教育を行うことを目的として我が国において設置された教育施設であって、その教
育活動等について、
(a) アメリカ合衆国カリフォルニア州に主たる事務所が所在する団体であるウェスタン・アソシエ
ーション・オブ・スクールズ.アンド・カレッジズ(WASC)
(b) 同国コロラド州に主たる事務所が所在する団体であるアソシエーション・オブ・クリスチャン・
スクールズ・インターナショナル(ACSI)
(c) グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国ハンプシャー市に主たる事務所が所在する
団体であるカウンセル・オブ・インターナショナル・スクールズ(CIS)、の各団体の認定を受けたもの
に置かれる 12 年の課程を修了した者で、18歳に達した者。
(文部省告示第 47 号より一部省略及び抜粋)
<各校の個別審査で入学資格の付与が可能になりました。>
平成 15 年の学校教育法施行規則の改正により、入学資格の弾力化が図られ、大学、専門学校等への
入学に際して求められる上記の基本的な入学要件を満たしていない場合でも、年齢が 18 歳に達してお
り、各学校の個別審査によって高校卒業に準ずる学力があると認められる場合は、入学資格を付与す
ることができるようになりました(学校教育法施行規則第 183 条 3)。
個別審査とは、入学試験とは別に、当該学生に入学資格があるかどうかを事前審査するものです。
審査の判断材料としては、各種の学校などでの学修歴、社会での職歴や実務経験、大学における科目
等履修生としての実績等があります。なお個別審査は、各学校の判断により必要とされる場合に導入・
実施されるものであり、必ずしも全ての学校で行われるわけではありません。
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2.在留資格(ビザ)について
日本に入国し、在留する外国人は原則として有効な旅券と査証を所持し、出入国港において入国審
査官から上陸許可を受けることが必要です(入管法第2条の2、第3条、第6条、第7条)。上陸許可
の際、在留資格と在留期間が決定され、入国審査官が旅券にそれらを明示した上陸許可の証印を押し
ます(入管法第9条)。
入管法に定められている在留資格及び在留期間は図表Ⅱ-4のとおりです(入管法第2条の2、別
表第一・第二、同法施行規則第3条、別表第二)。それぞれ許可された在留資格に応じて「本邦におい
て行うことができる活動」の欄に掲げる活動を行うことができます。日本の大学、専門学校(ともに
正規課程)等で教育を受ける留学生には「留学」の在留資格が付与されます。また、平成21年の改
正入管法施行による在留資格一本化に伴い、従来は「就学」の在留資格が付与されていた日本語教育
機関(準備教育課程を除く)で日本語能力を養うことを目的とする学生や、専修学校高等課程、同一
般課程の学生についても、専門学校や大学の学生と等しく「留学」の在留資格が付与されるようにな
りました。なお、在留資格「留学」の在留期間は従来、上限2年3月でしたが、平成24年7月には
新たな在留管理制度の導入に伴い、4年3月、4年、3年3月、3年、及び3月が新しく設けられ、
合計10種類となりました。
在留資格1回の交付につき認められる在留期間は、教育機関の種類や申請者の希望、及び在籍教育
機関における留学生の在籍管理状況等により異なりますが、基本的には当該教育機関での在留予定期
間をベースに判断されます。専門学校(2年課程)の場合、留学生の在籍管理が適切に行われている
学校(適正校)については最長2年3月が付与され、逆に不適切と判断された学校(非適正校)は同
1年(+3月)となり在留状況を1年ごとに確認されるのが一般的です。
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3.在留資格取得と申請の手続きについて
(1)日本での在留資格の取得について
外国人が日本の大学・専門学校から入学許可を受け、新たに「留学」の在留資格を得るためには、
以下の方法が一般的です。
(a)地方入国管理局等から「留学」の在留資格認定証明書の交付を受けた上で、自国の日本国大使館
や総領事館等から「留学」査証の発給を受けて入国し、上陸許可申請時に在留資格「留学」の上陸許
可を受ける。
(b)自国の日本国大使館や総領事館等から直接、「留学」査証の発給を受けて入国し、上陸許可申請
時に在留資格「留学」の上陸許可を受ける。
(c)
すでに日本における他の在留資格を有する者が専門学校の入学許可を受けたことを理由に
「留学」
への在留資格の変更許可申請を行い、在留資格変更許可を受ける。
上記の内、
(a)と(b)は海外から直接、日本の大学、専門学校等へ入学し「留学」の在留資格を申
請する場合であり、
(c)はすでに本邦に別の在留資格で在留し「留学」への在留資格変更許可を申請
する際の方法です。
①海外から日本の大学・専門学校へ入学してくるとき
<在留資格認定証明書の交付申請による在留資格「留学」取得の場合>
このケースで必要な在留資格認定証明書の交付申請は、入国手続きの簡素化、迅速化を図るために
設けられたもので、外国人が日本へ来る前に、本国の日本国大使館や総領事館で査証(ビザ)を取得
する手続きとは別に、定められた手続きに従って日本の法務省に対しあらかじめ在留資格を申請し、
取得しておくものです。在留資格認定証明書の交付を申請し取得した外国人は、日本国大使館や総領
事館における日本入国査証の発給手続きが迅速になるだけでなく、日本への入国審査に際して、この
証明書を提示することにより、在留資格の該当性及び上陸基準の適合性に関する要件をすでに満たし
ているものとして取り扱われます。
在留資格認定証明書は日本入国に先立って、本人または代理人(申請取次者等)が地方入国管理局
に申請し、日本で行おうとする活動の内容がいずれかの在留資格に該当し、上陸基準に適合すると認
定された場合に、交付されます。留学生の場合は、来日後に入学し教育を受けようとする学校の職員
が、本人に代わって地方入国管理局等に出向き、在留資格認定証明書の交付申請をすることができま
す。
なお、この在留資格認定証明書は交付後3カ月以内に上陸(入国)の申請を行わないと、失効してし
まいます。
在留資格認定証明交付申請の際の提出書類
大学・専門学校の在留資格認定証明書交付申請に際しては、通常は在留資格認定証明申請書、写真
(1 枚)、返信用封筒と所定の書類を提出することになっています。所定の書類は、留学生の受け入れ
教育機関に応じて異なり、個別の案件によっては申請人の履歴書等「その他参考となるべき資料」を提
出してもらう場合があります(入管法施行規則第 6 条の 2 第 2 項)。また入学する学校関係者等、代理
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人による申請の場合は、上記とは別に代理人の身分証明書提示が必要です。なお、過去に不交付歴を
有する者からの申請については、
原則として、
不交付理由の解消のための立証資料が必要となります。
また不法残留者を多く発生させている国・地域からの申請に必要な書類等「所定の書類」については、
入国管理局からの通達等によりその都度変更されることがありますので、随時確認が必要です。
また、在留資格認定証明書交付までには時間がかかりますので、書類は余裕をもって提出する必要が
あり、特に海外から直接応募してくる留学生については、遅くとも入学の2~3カ月くらい前には申
請書の提出がなされていることが望まれます。また入学許可をした留学生が入学辞退した場合、法務
省ではその旨を学校の住所地を管轄する入国管理局に報告するよう求めています。
<査証発給申請を直接行うことによる在留資格「留学」取得の場合>
(b)のケースは、自国の日本国大使館や総領事館から「留学」査証の発給を直接受けて入国するもの
です。入学が決定している専門学校から入学許可書の送付を受け、自国の日本国大使館や総領事館等
に査証の申請を行い発給を受ける方法もあります。これらの場合、事前に在留資格認定証明書の交付
を受けていませんので、在留資格「留学」の取得は日本への上陸許可時に行われることになります。
この場合、事前に在留資格認定を受けているケースと比較すると、日本入国査証の発給審査に際し提
出する書類が増えたり、あるいは膨大な時間がかかってしまうことになりがちです。また日本への上
陸審査に時間がかかることもあります。
②すでに日本に在留している者が専門学校へ入学してくるとき
次に、
(c)のケースでは、従来、日本語教育機関等を修了した学生が大学・専門学校へ入学する際
に必要だった在留資格の変更手続きが、平成 22 年7月の改正入管法の施行に伴い不要となりました。
そのため、ここで該当するのは「留学」以外の日本における他の在留資格を有する者が専門学校等の
入学許可を受けたことを理由に「留学」への在留資格変更許可申請を行う場合に該当します。
<在留資格変更許可申請による在留資格「留学」取得の場合>
上記の際に必要となる手続きは本人が最寄りの地方入国管理局、同支局又は出張所に出向いて、在
留資格変更許可申請書及びその他の必要書類を提出します。ただ、申請者が現在有している在留資格
の種類や活動内容によっては「留学」への在留資格変更が認められないか、特別な理由がなければ難し
いケースもあります。
学校関係者は該当案件がある時は、速やかに最寄りの入国管理局へ問い合わせ、
確認した方が良いでしょう。また在留資格は、主たる在留目的に応じて付与されるものであり、
「留学」
以外の在留資格を有する
外国人がそれぞれの在留資格に応じた活動を引き続き継続しながら、大学・専門学校等に入学し勉
強をする等、非就労の活動を行うことは認められています。例えば「家族滞在」「永住者」「日本人の配偶
者等」「永住者の配偶者等」「定住者」等は、それぞれの在留資格のまま専門学校へ入学し通学すること
ができるので、在留資格「留学」への変更は必要としないことになります。しかしながら、本来有して
いた在留資格に該当しなくなった場合には、学校に通学できなくなる場合もありますので注意が必要
です。
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<法務省への在留資格認定証明書交付申請(
「留学」の在留資格取得)に必要な書類>
1在留資格認定証明書交付申請書1通
2写真(縦4cm×横3cm)1葉
*申請前3か月以内に正面から撮影された無帽,無背景で鮮明なもの。
*写真の裏面に申訓人の氏名を記載し,申請書の写真欄に貼付して下さい。
3返信用封筒1通
(定形封筒に宛先を明記の上,送料分の切手(簡易書留)を貼付したもの)
4その他
*申請人が教育を受けようとする機関(受入れ機関)に応じて,提出する書類が異なるので,同機関
にご相談下さい。
5身分を証する文書(身分証明書等)提示
*上記5については,代理人,申請取吹者若しくは法定代理人が申請を提出する場合において,申請
を提出することができる方かどうかを確認する必要です。このほか,申請後に,当局における審査の
過程において,上記以外の資料を求められる場合もあります。
<在留資格申請上の注意事項>
提出資料が外国語により作成されているときは、その資料に「訳文」の添付が必要です。
(入管法施行規則第 62 条)
在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請を行う場合は、学校の職員等が申請人の代理人
となり申請取次を行うことができます
(入管法施行規則第 6 条の 2 第 3 項)
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4.代理申請と申請取次制度
(1)代理申請とは
在留資格認定証明書交付申請に関しては、本人または代理人が入国管理局に申請します。代理人が
申請する場合は、代理人の要件に適合する者であることを証明する書類が必要です。代理人については、
入管法施行規則別表第4に規定されていますが、大学・専門学校で教育を受ける留学生の代理人となれ
る者(または機関)は下記のとおりです。
(ア)本人が教育を受ける本邦の機関の職員(入学先学校の職員)
(イ)本人に対して奨学金を支給する機関その他の本人の学費又は滞在費を支弁する機関職員
(ウ)本人の学費又は滞在費を支弁する者
(エ)本邦に居住する本人の親族
(2)申請取次制度とは
申請取次制度とは、申請人(本人)が、入国管理局に出頭して行うことが原則とされている在留関係
手続について、一定の要件を満たす場合に申請人の出頭を免除し、地方入国管理局長が適当と認める
学校等の職員や行政書士等による申請の取次を認めるものです。
在留状況に問題がない留学生にとっては、自分でわざわざ入国管理局に出向き申請する手間が省ける
ことになります。
(a)申請取次の申出
大学、専門学校等の職員が申請取次者として承認を受ける場合は、事前に入国管理局または関係団
体が実施する研修会・講習会に参加し、修了証を取得した上で、申請取次申出書に必要書類を添え、
地方入国管理局に届出を行う必要があります。
(b)申請取次の対象となる申請
申請取次者として承認を受けた大学、専門学校等の職員は、在学している留学生の在留資格変更許
可申請、在留期間更新許可申請、資格外活動許可申請及び再入国許可申請について、入国管理局にて
申請取次の手続きを行うことができます。なおすでに在学中の留学生の手続きで申請取次が認められ
ているのは、すでに外国人登録証明書または在留カードの発給を受けており、在留状況に問題がなく
関係法令上の義務を履行している場合に限ります。また、行政書士が不特定多数の対象者から依頼を
受け申請を行うことができるのとは異なり、学校関係者の場合は同じ申請取次者であっても、自己の
所属している学校の学生に関わる申請以外は取次ができません。
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第3章
入学選考についての注意点
1.出願書類について
外国人が日本の大学、専門学校に入学するには、原則として満 18 歳以上の、母国等において 12 年
間の学校教育を修了した者で(国により教育制度が異なるので注意)且つ日本の法務省による在留審査
を経て「留学」の在留資格を得ることが前提となります。
この 12 年間の学校教育には、わが国の日本語学校における修業年数は含めません(但し文部科学省告
示で指定されている準備教育課程等を除く)。
この前提条件をクリアした上で入学を希望する留学生に
対し、大学、専門学校は各校ごとに定めた出願書類の提出を求めます。
① 日本語学校経由で入学してくる留学生に求める出願書類
日本語学校を経由し入学してくる留学生に対して、大学、専門学校は次のような出願書類を提出
させるのが一般的です。
(a)入学願書・受験申込書・履歴書等(専門学校ごとの所定書類)
(b)卒業証明書(日本の高校または大学、及び本国の最終出身学校等のもの)
(c)成繍証明書(日本の高校または大学、及び本国の最終出身学校等のもの)
(d)日本語学校出席状況・成績証明書
※毎月の出席状況が記載されているもの
(e)日本語学校の卒業(卒業見込み)証明書または修了証明書
(f) 学費・生活費の支弁説明書と入学時・在学中の支弁能力が確認できる書類
※本人または学費・生活費支弁者の預金通帳コピー、支弁者からの海外送金証明書、所得証明書(納税
証明書)、アルバイト給与明細書等
(g)日本語能力を証明する書類
※日本語能力試験、日本留学試験の成績表、J-TEST 等・その他の日本語試験の結果(受験者のみ)
(h)健康診断書(一般的には3か月以内のもの)
(i)パスポートと写真
(j) 外国人登録証明書または在留カード
※改正入管法の施行により平成 24 年7月9日以降の入国者には在留カードが交付されています。
また、
同日以前に日本へ入国した在留中の外国人についても、旧来の外国人登録証明書から順次在留カード
に切り替わっていきます。なお、全ての学生に保証人誓約書を提出させている学校においては、日本
人学生同様、留学生についても保証人誓約書を取るところがあります。
②海外から直接応募してくる留学生に求める出願書類
海外から直接応募してくる者(日本語科等、日本語の修得を目的とする入学者を除く)については、
上記(d)の日本語学校出席状況・成績証明書、及び(e)の日本語学校卒業・修了証明書の代わりに(g)
の日本語能力を証明する書類として、日本語能力試験(NI またはN2)の受験結果あるいは日本留学
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試験の日本語科目 200 点以上の証明書類を求め、日本語能力の事前確認を徹底する必要があります。
また、日本語学校修了後にいったん帰国して再び来日し、受験する者については、(d)と(e)は以前
の出身日本語学校における証明書を提出させる必要があります。
※卒業証明書は写しでも代用できます。その際は、出願時または選考時に実物を持参してもらって確
認し、その上でコピーするようにして下さい。
※パスポートはコピーの提出のみを求めている学校もあります。
【実務現場から】~出願書類の受付方法について~
日本語教育機関等、すでに日本国内に在留している留学生からの出願書類は、郵送で受け付ける学
校と直接学校へ持参してもらう学校の 2 パターンがありますが、大学、専門学校の中には留学生に直
接持参させた上で、その場で書類のチェックと簡単な面談を行い、すぐに書類の不備を確認するとこ
ろが増えています。こうしたケースでは、あらかじめ学内で不足書類の追加提出期限を別に設定して
おくのが通常です。
留学生の場合は、
出願時に全ての書類が揃っていない事態が多発しがちなため、
郵送受付のみだと、
不備があった場合の本人連絡や新たな締切期限の設定等、後々の事務負担が増大しかねません。ただ
遠隔地に住んでいる留学生にとっては、郵送でなければ出願しにくいとの問題もあります。
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2.入学者選抜の基準について
上記のような出願書類を入学希望者に提出させた上で、大学、専門学校関係者は入学者選抜に取り
掛かりますが、ここでは留学生の合否判断基準について説明いたします。入学者選抜は大学、専門学
校によって基準がことなりますが、面接において以下の内容が重要です。
主として(a)日本での学習及び生活に耐えられる日本語力の有無(b)大学、専門学校で学ぶ目的意
識(勉学意欲)
(c)各校・各学科の教育を受けるに足る基礎学力の有無(d)大学、専門学校で学ぶ教
育内容への理解・関心(e)日本語学校時代の出席率や学習態度等、過去の在籍状況(f)留学生活を
維持できるだけの経済力(支弁能力)の有無等について、書類審査と筆記・面接試験を通じ、きめ細か
く確認することが求められます。その際には入学志願者の中に不法就労・不法滞在を目的とする者が
一部いるケースも想定した上で、真に勉学を目的とした者が選抜されるよう慎重な審査を行うことが
重要です。
【学ぶ目的意識(勉学意欲)】
日本人学生についても入学選考時に目的意識を確認することが大事ですが、留学生においては日本
人学生以上に目的意識の確認が重要です。なぜ、大学・専門学校で学びたいのか、その学科を選んだ
理由、将来の進路希望等を踏まえ、個々の学生の勉学意欲をしっかりと確認する必要があります。留
学生の中には「本当は大学に進学したいが現時点では大学に入学するだけの日本語力がないから、
日本
にいるためにとりあえず専門学校に入学する」といった安易な考えで専門学校を選択する者もいます。
そのような留学生を入学させることは学校にとって決してプラスにはなりません。何よりも、面接試
験を通じた見極めが重要です。
【基礎学力】
一般的な考え方として、専門学校は大学より勉強が簡単だと思いこんでいる留学生は少なくありま
せん。実態はそうではなく、入学後はむしろ大学以上に勉強がハードであることを十分に理解しても
らう必要があります。特に専門性の強い分野で入学前にある程度の予備知識が求められる学科の入学
者選考や、専門課程の履修に必要な基礎学力を事前に判断する必要性が高い場合は、基礎教科等につ
いて筆記試験の実施に努め、面接や書類審査等と併せて総合的に判定した上で入学の可否を判断する
ことが求められます。
【教育内容への理解・関心】
大学・専門学校へ入学する留学生の中には、その教育内容を十分に理解しないまま、単純に学科名
だけで入学する学科を選択する人もいます。その場合、入学後に「自分の思っていた内容と違うから」
といって学校に来なくなってしまうケースがあります。入学希望の留学生には、大学、専門学校で学
ぶ十分な目的意識と、入学を希望する学科に対する十分な理解が必要です。日本人学生のように、選
択を間違えたから学校に行かないでは済みません。
その点は徹底的に事前確認をする必要があります。
これと関連して卒業後の進路についても、面接等を通じ、しっかりと各人の希望を聞いておく必要が
あります。最近では日本での就職を目指す留学生が多くなってきました。しかし、職種によっては日
本国内で就労が認められていないものも数多くあります。特に専門学校の場合は、留学生本人は日本
で就職したいために専門学校に入学したのに、その職種では就職できない場合、本人にとって大変な悲
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劇となってしまいます。
【過去の在籍状況(日本語学校等の出席率)】
入学するときはそれなりに意欲とやる気に満ちていても、入学してしばらく時間が経過すると授業
の欠席が常態化したり、連絡がつかなくなってしまう留学生は少なくありません。入学選考の段階で
それを見分けることは難しい面もありますが、一つの貴重な判断材料として、在籍していた日本語教
育機関等における在籍状況があります。多くの大学、専門学校が入学選考時、留学生に提出させてい
る日本語学校の出席状況・成績証明書には、ほとんどの場合、在籍中の毎月の出席状況が記載されて
います。この数字を細かくチェックし、少なくとも通年で授業の 90%以上の出席をしているか、時期
によって出席状況にムラがないか、成績は一定水準を維持できているか等を総合的に判断することが
ポイントです。一般的に日本語学校で出席状況が芳しくなかった学生は、大学、専門学校に進学後も
同じことを繰り返す傾向があるだけでなく、在留期間更新許可申請においても不許可となるケースが
ありますので、慎重な対応が必要です。
【経済力(学費支弁能力等)】
最後にもう一つ重要な確認事項は、大学、専門学校入学後の学費や生活費の支弁能力です。どのよ
うな計画で必要な留学費用を捻出し、日本での留学生活を送る予定なのかを詳細に確認する必要があ
ります。本国からの仕送り、本人の預金、アルバイトの状況等を十分に確認し、学業に支障なく生活
できるかを確認することが重要です。留学生の経費支弁能力を確認する際には、支弁者が本国にいる
留学生の親族の場合には、母国からの送金書類や振り込み証明書、本国における預金残高証明書等、
支弁者が日本にいる保証人の場合は銀行の預金残高証明書以外に所得証明書や納税証明書等が判断材
料となります。しかしながらこれらを確認するときには、単に金額だけを見るのではなく、資産の形
成過程をチェックし、支弁者が定期的に学費を支弁出来るだけの安定した収入を得ているか否か、そ
して書面上の所得を裏付けるだけの身分を有しているかどうかまで慎重に吟味することが必要です。
ある専門学校では、経費支弁者の銀行口座に毎月の固定収入が入っている形跡がないのに、留学直前
に金額の大きなお金が一度に振り込まれていたり、親からの仕送りで留学費用をまかなうとしている
にもかかわらず日本語学校在籍時に送金の事実が全くないような学生に対しては、特に慎重な審査を
行っています。また本人の預金通帳を確認する場合には、直近だけではなく、少なくとも3か月から
半年前の履歴まで確認し、特にアルバイトでどれぐらいの収入を得ているかを細かく見ています(明
らかに高額な料金が振り込まれている場合は、資格外活動許可の所定時間を超えて働いている疑いが
あります。)
☆実務現場から☆ ~出席率が微妙な留学生の取り扱いについて~
あらかじめ入学選考の時点で、出席率が高い学生だけを厳選しておくことは、その後在籍管理の段
階になってから行方不明者や退学者、除籍者を出さないための絶対条件です。学校によっては、この
出席率基準を 90%以上など比較的高めに設定したところ「85%では応募できないのか」といった応募
希望者からの問い合わせが逆に急増してしまったり、出願者が減少したという事例も実際に出ていま
す。後者のケースはともかくとして、前者のようなグレーゾーンのケースが急増する事態を想定し、
ある学校では出願段階では「80%」を応募条件としつつ、基本的には「90%以上」をベースに、それに
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達しない者は面接等で再度慎重に審査するといった二段構えの選考方法を採ることで、入ロ段階での
チェック態勢を強化しています。なお本人の現在手持ち資金は本人の預金通帳コピーから確認でき、
今後の見込み資金は経費支弁者による海外送金証明書や所得証明書・預金通帳写し、本人のアルバイ
ト給与明細書等から総合的にチェックすることが可能です。
入学選考・面接時のチェック項目
□ 入学後に何を勉強したいか(できるだけ具体的に)
□ 学校、学科の内容をどこまで理解しているか
□ 卒業後の希望進路(日本でどんな分野への就職を希望しているか)
□ 性格、興味、関心、適性
□ 学費・生活費の支弁方法
□ アルバイトについて(アルバイト先・仕事内容・時間数.資格外活動許可の有無)
□ 交友関係について(日本人及び留学生の友人はいるか)
□ 学歴および職歴
□ 日本語学校の出席状況(特に出席率が低い場合はその理由)
□ 日本語をどの程度聞き取れるか(授業についてこられるか)
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3.専門学校の留学生の受け入れ数に関する留意事項
~受け入れ「適正校」は総定員の「2分の1超え」が可能に~
専門学校の留学生受け入れについては、入学志望者等の目的意識、学習意欲や学力等を適切に判定
し、留学生活を維持できるだけの経済的基盤を有することを確認するとの原則に基づき、生徒数の確
保の観点からのみ安易に受け入れることは厳に慎むようにとの指導が文部科学省より行われてきまし
た。こうした経緯から専門学校の留学生の受け入れ人数は、平成2年6月に当時の旧文部省通知によ
り「設置する全ての学科の入学定員を合算した数(総入学定員)の2分の1までにとどめる」と規定
されてきましたが、同22年9月、この基準が20年ぶりに緩和され、留学生の在籍管理を適正に行
っている専門学校(適正校)については、同23年度以降に入学予定の留学生から、総入学定員の 2
分の1を越えて受け入れることを条件付きで認める通知が、文部科学省から各都道府県知事に対し正
式に発令されました。
一方、管轄の地方入管による判定で、在留管理が不適切で翌年の留学生受け入れに関し入国在留手続
きを簡素化しないとされたいわゆる「非適正校」の状態が、過去4年間に2回以上ある学校に対して
は、上記の定員弾力化措置は適用されず、複数年次に渡る良好な受け入れ実績を示すまでは、留学生
の受け入れ数は総入学定員数の2分の 1 までに制限されます。なお、総定数の2分の1を越えて受け
入れの増加を計る学校に対しては
(ア)留学生の受け入れ状況
(イ)入学許可を行おうとする留学生の数(受け入れ予定数)
(ウ)在籍管理の実績
(エ)留学生受け入れのための組織体制
等をあらかじめ所轄官庁に申し出ることが求められています。
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4.日本語能力の評価方法について
現在、
「留学」の在留資格を取得するために必要な日本語能力については、所定の日本語教育施設で
6か月以上の日本語教育を受けている等、一定の条件をクリアしていれば、日本語能力に関する試験
の受験は絶対条件とはなっていません。しかしながら大学・専門学校における入学志願者の日本語能
力の判定に当たっては、各人の日本語力を適切に判定する観点から、日本語能力試験(N1若しくは
N2レベル)又は日本留学試験(試験科目「日本語」)の活用が望ましいとされています。
<日本語能力試験>
外国人の日本語能力を認定するものとして、日本国内では公益財団法人日本国際教育支援協会によ
って、海外では独立行政法人国際交流基金によって「日本語能力試験」が行われています。日本国内
(全国主要都市)では例年2回、7月と12月の第1日暇日に、また国外においても世界各地で実施
され、認定レベルはN1からN5まで5種類があります(レベルの呼称変更に伴い、従来の1級がN
1へ、2級がN2へと変わりました)。各級ごとに合否を判定し、合格者にはレベルごとに日本語能力
認定書を交付するとともに、受験者全員に成績通知書が送付されます。一般的には日本語能力試験N
1またはN2の合格者であれば、大学・専門学校での学業に支障はないといわれています。この試験
は出願締め切りが早いことから、受験者は早めの出願が望まれます。海外から直接応募してくる者に
関しては、日本語能力試験の結果が判明していない段階では仮合格などの形を取り、N1またはN2
の合格通知を待って正式に入学を許可するケースも見られます。なお、合格者の条件はNLN2ともに
総合得点が合格点以上で、且つ各得点区分(言語知識、読解、聴解)の得点が最低基準点(19点)以
上であることとされています。総合得点の合格レベルはN1が100点、N2が90点です(どちら
も180点満点)。
<日本留学試験>
日本語能力試験は一般的な日本語の普及を目的とするとともに、以前までは留学生の入学選考に欠
かせない試験としても広く活用されていました。しかし大学・専門学校での勉学に対応できる日本語
力(いわゆる「アカデミック・ジャパニーズ」)を測定する試験としては、十分にその目的を果たせて
いないという指摘が出ていました。そこで、平成10年に「日本留学のための新たな試験」調査研究
協力者会議が設置され、新たな試験の目的・性格、実施方法・問題開発等に関する調査研究を経て、
平成14年度から独立行政法人日本学生支援機構によって「日本留学試験」が実施されています。こ
の試験はもともと渡日前の入学許可を想定して構想されましたが、来日後に日本語教育機関を経て日
本国内の専門学校や大学に進学する留学生等も、
幅広く受験しています。
試験は国内と海外の両方で、
6月と11月の年2回実施されています。試験科目は、日本語、数学、理科(物理、化学、生物から
2科目選択)、総合科目となっています。尚、日本の専門学校に留学する場合は、同試験の日本語の得
点で200点以上が-つの目安となっています。
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第4章
留学生担当者の役割と業務
1.留学生生活指導担当者とは
法務省令により、留学生を受け入れようとする学校には、留学生の生活指導を担当する常勤の職員
を置くように定められています。大学、専門学校や日本語教育機関では多くの学校が担任制度を採用
し、学習面だけでなく生活面でも日常的に留学生の指導に当たっています。その際には入管法関連の
諸知識を含めた幅広い専門知識も要求されます。
2.入学後のオリエンテーションについて
留学生の入学直後に行うオリエンテーションが、学習・生活指導の出発点となります。
①オリエンテーション
オリエンテーションの第一の目的は、入学した留学生が学業に専念できるよう学内外での勉学、生活
に必要な助言を与えることです。留学生は一般に生活環境や言葉のハンディを抱えているので、一度
だけのオリエンテーションでこと足りるというものではなく、必要に応じてその都度行う方が効果的
ですし、またできる限り留学生の出身国・地域(母国語)ごとに、複数回のオリエンテーションを開催
するのが理想的です。
②オリエンテーションの項目
最初のオリエンテーションで考えられる項目は以下のとおりです。
(a)指導教職員の紹介(教員と関係各課の担当職員)
留学生担当の教職員、就職指導等・各担当部課の教職員、カウンセラー、校医等を紹介します。各
教職員はそれぞれの担当部署を説明し、具体的にどんな要件の時はどこの部署に行けば良いのかが明
確に分かるよう、整理して伝える工夫が必要です。
(b)諸手続きの説明
在留期間更新、在留資格変更、資格外活動許可(アルバイト)、外国人登録証明書から在留カードへ
の切り替え、奨学金や医療保険制度の申請等について、全員が必要なものと希望者のみが必要なもの
に分けて説明し、それぞれどういう時に必要な手続きなのかを分かりやすく解説することが求められ
ます。
(c)学則・校則の説明
進級、卒業、除籍、学納金の納入、定期考査や成績評価システム等の説明を行います。特に除籍制
度と在留資格取消制度については、授業への出席基準も含め、事前にきちんと説明しておく必要があ
ります。万一授業への欠席などが続き、除籍・退学に至った場合には、その後日本には在留できなく
なる(或いは本国の両親に連絡することになる)ということにあらかじめ言及しておくと、その後の
在籍管理に効果的です。
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(d)授業を受ける際の諸注意
授業の履修登録や教材等について、必要な事項をあらかじめ案内しておきます。
(e)学内の関連する施設の説明
口頭の説明だけでなく、できれば教職員が同行し案内しておくと良いでしょう。
(f)学外における生活上の諸注意
特に、緊急時にはどこに連絡をすれば良いかを説明しておきます。保証人や連絡人を求めている大
学・専門学校では、保証人・連絡人はこうした緊急時にこそ必要になってくるものであることを説明
し、日頃から密接に連絡を取り合うことを強調しておくと良いでしょう。また、担任や職員の緊急時
の連絡先(携帯電話番号)を知らせておくといざという時に役立ちます。
(g)日本の法律・生活習慣・社会的ルールの説明
留学生の出身国との違いを踏まえ、具体的事例を挙げて説明し理解させることが大切です。交通ル
ールや電車でのマナー(携帯使用等)、部屋の賃貸借契約時の身元保証人の必要性、ゴミ出しのルール
等が挙げられます。
(h)入国管理に係わる制度変更の説明
「留学」と「就学」の在留資格一本化に伴い、日本語教育機関等からの入学者(特に入学時点では何
ら在留手続きを要しない者)については、入学後、在学中の在留期間更新の時期に注意するよう指導
しておくことが大切です。また改正入管法の施行等、最近入国管理に関わる大きな制度変更が続いて
いますので、その都度内容を把握の上、説明に加えることが求められます。
(i)アルバイトについての諸注意
「留学」の在留資格は勉学が本分であり、アルバイトはあくまでも資格外で認められた活動である
ことを念押ししておく必要があります。その上で、アルバイトするために必要な「資格外活動許可申
請」の手続き、許可されている時間数、禁止されている場所と職種、ルールを破った場合の退去強制
等の罰則について詳細に説明し、理解させることが重要です。
☆オリエンテーション実施にあたっての留意事項☆
入学時の学習・生活指導に当たっては、日本人学生向けのものとは別に、学校独自に外国人留学生
向けの「オリエンテーション指導マニュアル」を作成しておくと便利です。その際には、過去の指導
内容や指導事例を参考に、説明内容をテーマごとにあらかじめ整理しておくと役立ちます。
また口頭では不安がある場合は、
「オリエンテーションのしおり」や「留学生活についての注意事項」
など、オリエンテーションの内容を簡単に文書化し、事前に配布した上で説明すると、後で読み返す
こともでき、留学生の理解も深まります。オリエンテーションの際には、説明の後で留学生からの質
問(Q&A)の時間を設けるなど、入学に際して分からない点を留学生が気軽に質問できるような雰囲気
作りも欠かせません。不安げな留学生に対しては、個別に教員から声を掛ける配慮も大切です。
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3.留学生担当職員の業務とは
留学生担当職員は、日本在留のための諸手続きや生活面、教学面、進路指導等について留学生に的
確なアドバイスができるよう、普段から幅広く見識を深めておくことが大切です。さらに、留学生は
出身国、
宗教などによって文化や生活習慣が大きく異なりますので、在籍学生の一人ひとりについて、
そうした背景の理解に努め、適切な対応をしていかなければなりません。
具体的な業務内容は以下のとおりです。
(1)留学生担当職員の業務(在籍管理と出欠管理の重要性)
留学生担当者として最も重要な業務が、留学生の現況の把握です。特に在籍管理と出欠管理、アルバ
イトをしている者の資格外活動許可とアルバイト先の把握、在留期間更新時期の確認、退学者・除籍
者のその後の指導等、以下の日常業務を的確に行っていく必要があります。
① 出席管理の徹底
留学生個々の毎日の出席状況の確認をし、長期欠席者や出席状況の良好でない者がいないか常に把
握しておく必要があります。留学生指導の第一歩は出席指導から、と考えても間違いではありませ
ん。
②学籍簿・出席簿の確実な管理
出席簿(出席データ)や学籍簿(留学生個人の情報)を常に把握し、管理しておく必要があります。
入国管理局からの問い合わせ等にもすぐに対応できるように、データとして手元に管理しておくと良
いでしょう。
③長期欠席者や出席状況の良好でない者の徹底指導
(a)出席不良の基準設定
授業には基本的に100%出席することが前提です。長期欠席者や出席状況の良好でない者に対し
ては早めの指導を心掛け、問題が大きくならないように対処する必要があります。何日以上欠席が続
いたら長期欠席になるか、何パーセント以上が出席不良の状態なのかに関しては各学校で独自に基準
を設けて対応する必要がありますが、基本的には最低でも 90%以上、学外の実習については100%
出席していないと、進級・卒業ができなくなったり在留期間更新が難しくなることを前もって明確に
伝えておくことが重要です。
(b)所在不明時の対処方法
一般的に、授業への欠席について本人から連絡があっても3日以上連続して休んでいる場合(長期
欠席)には注意が必要ですし、1日でも連絡のない無断欠席があったら、学校側から直ちに連絡を取
る必要があります。もし一定期間、本人と連絡が取れない(携帯電話が繋がらない)場合には
(ア)本人に対してメールを送る
(イ) 留学生の同級生を通じて連絡を取る
(ウ)日本国内の保証人・連絡人を通じ連絡を取る
(エ)留学生担当者が留学生の住居もしくはアルバイト先を直接訪問し消息を確認する
(オ)上記いずれの方法をとっても連絡不可の場合は留学生の母国の両親に連絡を取る、等の方法で徹
底的に所在の把握に努めることが重要です。
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その上で本人と連絡が取れた場合には、欠席の理由を尋ね、まずは留学生の置かれている状況を具
体的に把握する必要があります。もし欠席理由が経済的なもの(学費の支払いが困難等)であれば、学
費の分納、延納などの解決方法の模索や保証人との相談が求められますし、学習面の問題(授業内容の
不理解等)がある場合は、授業について来れるよう補講を行う等の対策が必要となるでしょう。また
過剰なアルバイトが原因であれば、雇用主と頂接連絡を取り合い、対処する必要があります。いずれ
にしても、まずは学校へ一度顔を出すように、本人を説得することが出発点となります。
<所在不明の留学生の自宅訪問について>
一様に連絡の取れない留学生の住居地を訪問すると言っても、様々な障害があります。最近ではオ
ートロック・システムで立ち入りが制限されているマンション等も多く、所在の確認が難しいケース
もあるでしょう。ある学校では、こうした場合に留学生が居住しているマンション等の名前からイン
ターネットで管理会社名を探し、管理会社に直接連絡を取って事情を説明し協力を求めています。管
理会社が承諾した場合は、関係者立ち会いの元で所在の確認につとめるか、あるいはそれが難しい時
は、日本における保証人または本国の両親と管理会社の間でのやり取りを依頼する方法を採っていま
す。もし学校職員が部屋への立ち会い等を許可された場合は、不測の事態を想定し、必ず複数の職員
を現地へ同行させるのが原則です。
(c)事前の対応
上記(b)の対処に関連して、あらかじめ入学時(オリエンテーション)と進級時に、留学生と連絡が
つけやすい携帯電話の番号と機種、及びメールアドレスを申告して貰い、全留学生について登録して
おくことが求められます。また留学生の場合、在学中に携帯電話番号を変更し連絡がつかなくなる状
況も想定されますので、アルバイト先の電話番号も一緒に登録させておいたり、留学生同士の連絡網
をあらかじめ作っておくことで日頃から連絡がつきやすくしておく等の工夫が必要です。また、引っ
越しに伴い住所を移転した時には、なるべくすぐに学校へ届け出るよう指導することが望まれます。
また、早めの対処により問題の発生を未然に防ぐ観点から、授業の出席率が 90%を下回る留学生に対
しては、担当職員または担任が一度注意をし、欠席理由を聞いておくことが大切です。また、出席率
が基準を下回ると、学校としては保証人や母国の両親に連絡を入れざるを得なくなるということを、
留学生にあらかじめ周知徹底しておくことも求められます。もし何らかの理由で学校に通学できない
事情がある場合は、まず現状の把握に努め、それを解決する方法を定期的に留学生と話し合う機会が
持つように心がけていただきたいものです。
④無断欠席者や長期欠席者などに対する指導マニュアルの作成と実施
長期欠席者や出席状況の良好でない者に対する連絡のタイミングや指導方法等、担当者間でルール
を決めマニュアル化しておきます。担当者によって対応が異なったり、留学生ごとに対応が違うこと
は指導上問題があります。
⑤退学者・除籍者のその後の指導(帰国指導の徹底)
留学生が何らかの理由でやむを得ず退学・除籍となった場合は、進路の確認を十分に行った上で、
不法滞在や不法就労などの違法行為をさせないように指導し、確実に本国に帰国するまで追跡し続け
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る必要があります。それを怠るとその学校が不法残留者を出したことになり、その後の留学生受け入
れ・在留審査において入国管理局への提出書類が増えるなど審査が厳しくなる可能性があります。特
に退学・除籍となり、当初の在留期限前に在留資格を喪失したり、取り消された者(在留資格取消の対
象者)については、即時帰国するように指導し、帰国の具体的な事実関係を把握するよう努めること
が大切です。
具体的には、いつ、どの便で帰国するかを本人に確認し、その後最終的に帰国したことを把握する
に至った事実関係を説明できるようにしておく必要があります。最終的な確認は、帰国時に空港まで
同行する方法が確実ですが、難しい場合は少なくとも帰国予定日の翌日までに、留学生担当職員から
留学生の母国の自宅に電話連絡を入れるかメール等で連絡を取り、無事に帰国したことを確認してお
くことが賢明でしょう。
また留学生が退学後、他の在留資格に変更する場合は、新たな在留資格の種類と最終的な交付の可
否を確認しておく必要があります。万一、留学生が長期欠席で連絡も取れずやむを得ず除籍処分とす
る場合でも、除籍でその留学生との関わりが終了するものではなく、除籍後も行方を調べ続け、徹底的
に帰国指導をする必要があります。留学生を受け入れた学校における留学生管理は、除籍者の帰国ま
でが責任となります。
<除籍者を出してしまった場合>
ある学校では除籍者や退学者を出してしまった場合、退学時に文書と口頭で注意事項を伝えていま
す。その際に伝えるべきポイントとして重視しているのは
(1)万一在留期限を越えても帰国せず不法残留者になってしまうと、将来再び日本への入国を希望する
時、ビザ交付などで不利益をこうむることになる
(2)「留学」の在留資格は在籍教育機関の存在が前提となっており、学校を退学した以上(転校が許可さ
れた場合など-部の例外を除き)、在留資格は有効性を失いアルバイトも一切できない
等です。また退学から帰国までのインターバルをなるべく短くし、不法残留に繋がるリスクを絶つた
めに、入管法で定められた出国期限よりも前倒しで帰国するよう指導している学校もあります。
⑥アルバイト先の確認
留学生一人一人に対してアルバイトをしているか、
していないかを個別に把握する必要があります。
アルバイトをしている場合は、アルバイト先の住所、屋号、勤務時間、連絡先等を把握し登録してお
きます。
⑦資格外活動許可の取得有無の確認
アルバイトをしている留学生に関しては、事前に資格外活動許可を得ているかを必ず確認しなけれ
ばなりません。また、これからアルバイトをする予定の留学生に関しては、まず先に資格外活動許可
を得てからアルバイトをするように指導するとともに、許可されている時間数、禁止されている場所
と職種等についてもきちんと理解してもらえるように説明することが大切です。また学校の申請取次
制度を活用し、確実に資格外活動許可を取得させるよう指導が好ましいです。
⑧在留資格・在留期間の把握と更新の指導
留学生の在留資格・在留期間は人によってまちまちです。例えば同じ 2 年課程の学校に入学した留
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学生でも 1 年(+3月)の者もいれば 2 年(+3月)の者がいることもあります。また改正入管法の施行
で日本語教育機関から入学してくる学生の在留資格変更手続きが不要となり、在留期限内であればそ
のまま学校を跨って在留することができるようになったために、留学生担当者にとっては個別学生の
在留期間(期限)の把握・管理が益々煩雑になってきています。
こうしたケースでは入学時には手続きが必要なくても、入学した後、在留期限が切れる前に、必ず
在留期限更新の手続きが必要です。留学生担当者は個々の留学生の在留期間(期限)を把握し、期限切
れ前までに確実に更新手続きをさせる必要があります。留学生は学業とアルバイトの両立で日々多忙
なため、忘れてしまう場合が考えられますので、その都度該当者に事前連絡をして更新手続きをする
よう指導しましょう。また留学生が新しい在留期間を得たときは、有効期限を確認し記録に残してお
きましょう。
⑨学費の納入確認と督促、及び滞納者への対応
留学生関連業務の中で、意外と大きなウェイトを占めるのが学費の納入確認とその後の対応です。
最近は経済的に豊かな留学生が増えてきていると言われますが、大多数がアルバイトをしながら留学
生活を維持している現状は依然として変わりません。そのため学校によっては、学費の延納希望者や
滞納者が増える等々、問題化しているところもあるようです。留学生担当者は学費の納入方法と支払
い回数、納入期日、滞った場合の処理等について、入学時から留学生に徹底して指導し、少しでも滞
納が起こった場合は本人から事情を聞いて迅速・適切な対応を行う必要があります。
⑩学業、学校生活その他の悩み事や相談に対する対応
留学生は学業や学校生活で様々な悩みに直面します。とくに入学直後は、新しい環境や勉強内容に
慣れずに苦悩することが多いと思います。それに対してなるべく親身になって話を聞き、悩みを解決
してあげる必要があります。
また長い学校生活の中では当初想定していなかった問題が発生しがちで、
留学生の場合、本国の両親に心配を掛けたくないため、ひとりで悩んでしまうこともあります。普段
から、できるだけ気軽に学校へ相談できるような雰囲気作りを心がけてください。
⑪入国管理局への定期報告
一定期間、所在不明で連絡の取れない留学生が発生した場合は、除籍等の処分を行った上で速やか
に入国管理局へ報告しなければなりません。また留学生が在籍している学校は、退学者及び除籍者の
不法就労、不法滞在を防ぐ目的と、留学生の生活指導等管理体制に留意するため、次のものを法務大
臣あてに定期的に提出する必要があります。
(a)留学生の受け入れ状況(留学生名簿等)
毎年5月1日及び 11 月1日における状況をそれぞれ14日以内に届け出ます。
(b)入学・編入及び卒業・退学の状況
留学生の受け入れを開始したり受け入れが終了した場合は、その日から14日以内に届け出ます。
届け出方法:
(a)、
(b)ともに地方入国管理局への出頭又は東京入国管理局への郵送のいずれかで行い
ます。
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⑫進路指導
就職活動や進学等、留学生の卒業後の進路についても、留学生担当者がしっかりとフォローする必
要があります。その際には、就職担当者との役割分担や進路相談窓口の一本化等、学内で教職員同士
が連携し合い、しっかりした態勢づくりを進めておくことが求められます。
最後に、ここまでその役割と業務内容について述べてきた留学生担当者とは別に、いわゆる留学生カ
ウンセラーの必要性も併せて考慮しておかなければなりません。留学生担当者はあくまで生活面や学
業面の問題に限定し、心身の健康面に関しては専門のカウンセラーに委ねる必要があります。万一、
留学生が心身の健康に関する問題に直面した時は、学内にカウンセラーがいない場合は学外のカウン
セラーを紹介するのも一案ですが、いずれにしても後で結果の報告を受け、留学生の状態を正確に把
握しておくことが必要です。なお、自治体の相談窓口や民間のボランティア組織には留学生との交流
に努めたり、適切なアドバイスを行っているところもあります。そうした窓口に問い合わせてみると
良いでしょう。
<滞納者への対応策>
ある高等教育機関では、留学生の学費支払方法を年間一括、半年分割、毎月分割の 3 パターン設定
しています。実際には毎月分割での支払いを選択する留学生が多いですが、学生の中には「生活費が足
りない」
「親の仕送りが遅れている」「アルバイト代が入る直前だ」等々、様々な理由をつけて支払い
を遅らせる事例が後を絶ちません。こういった時には留学生担当者が本人と直接面談の上、滞納に一
定の合理的な理由があると判断した場合 1 回に限り延納を認めています。その際には留学生のアルバ
イト収入や奨学金が入金される日時を前もって確認した上で、誓約書にサインさせ延納期限を新たに
設定しています。また経済危機や家族の失業等、やむを得ない事情で納入が難しくなり滞納額が数ヶ
月分累積している場合は、返済額を 1 か月分ごとに分けて対応しています。これらを踏まえた上で、
それでも本人からの徴収が困難と判断した場合は、日本国内の保証人か母国の両親に連絡を取り、相
談をしています。
<学費未然防止策:クレジットカードの活用>
学費の滞納は起こってしまってからではどうしても対応が後手に回ることになり、時間が経てば経
つほど解決が難しくなってきます。そこで学校の中には、入学する留学生に対し、任意で学校が提携
するカード会社のクレジットカードに加入させ、学費の支払いをカード決済で処理する方法を薦めて
いるところがあります。これにより学校側は学費未納のリスクを回避できるだけでなく、その徴収や
未納者対策に伴う事務負担を軽減することができます。
銀行振り込みか窓口での徴収が原則となっている学校では、このような方法を留学生に求めること
ができるのかという問題がありますが、最近は外国の銀行の預金口座から指定額を直接引き落とすデ
ピットカードも普及しており、これらを所持している留学生も増えてきているので、学費のカード決済が
可能な学校は、あらかじめ入学時のオリエンテーションで具体的な手続き方法について伝えておくと
良いでしょう。
<申請取次制度活用のメリット>
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学校の中には、資格外活動許可の申請を留学生本人に行わせているところもありますが、学校とし
て留学生全員のアルバイト状況を把握しておくという意味からも、本来は取次申請を行うことが原則
です。学校によっては卒業までにクリアしなければならない授業時間数の関係で、毎日授業のスケジ
ュールがぎっしり埋まっている学生がほとんどです。入国管理局は基本的に平日の決められた時間帯
しか受付を行っておらず、授業が終わってから出向くのは物理的に困難です。学校によっては入管へ
手続きに行く日を公休扱いにしているところもありますが、入管申請のために授業を休まなければな
らないことは、特に入学したばかりの留学生にとって大きな負担となります。そこで学校側が、資格
外活動を希望する留学生の申請書類を期日を決めて提出させ、一括して申請取次を行えば、留学生に
とっては大きな助けとなるでしょう。
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4.授業にあたっての注意点
① クラス編成の仕方
1 つの課程または学科で複数のクラスがあり、多数の留学生が在籍する場合、クラス編成上、留
学生を適切に振り分けることによって良い効果が期待できます。留学生を1クラスに偏って編成す
ると、担任の目が行き届きにくくなりがちです。また、複数の国からの留学生がいる時は、なるべ
く国籍を偏らずに振り分け、
母国語だけの会話に頼らずに勉学する環境作りをすることが肝要です。
同じ国籍の学生が集中すると、
クラス内のグループ化に拍車をかけ、
交流の妨げになりかねません。
これに対して、留学生が少数の学校では、逆に特定のクラスにまとめるのも有効な方法です。少数
の場合は振り分けると、逆に孤立することもあります。要は「孤立しないように、集団化しないよう
に」です。留学生の国籍、宗教、性格等を考慮しながら、学校の実情に合った効果的なクラス編成
を心がけてください。
②授業の進め方
留学生の席はなるべく教員の目が届きやすいところにするのが良いと思われます。教員の近くに置
くことによって、言葉がよく聞き取れるようにし、また、質問なども気後れせずにできるムードを作
ることが大切です。面倒見のよい日本人学生がいれば、近くの席にするのも一法です。もちろん、あ
くまでもその学生の了解があっての話です。また、過度な期待はその学生に思わぬ重圧をかけること
がありますので慎んだ方が良いでしょう。留学生が授業を理解できているかどうかを、授業中や授業
の後などにさり気なく聞くような心配りも必要です。場合によっては補講などによって理解を図るの
も良いでしょう。なお、授業中に指名等する場合、個人の名前を正しく呼ぶことは基本的なことです。
「そこの留学生」とか、誤った名前で呼ぶことは厳に慎むべきです。これは個人の尊厳に関わることで
もあります。
名前の呼び方に限らず、
留学生への対応については教職員全員に対して研修会を開く等、
教学体制の向上にむけて努力することを忘れてはなりません。
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5.資格外活動(アルバイト)について
(1)資格外活動許可で認められる留学生のアルバイト条件
留学生は本来の在留目的である学業に支障がなく、また禁止された場所や職種で行われる活動内容
でなければ、1週 28 時間を超えない範囲内(在籍する教育機関が学則で定める長期休業期間にあると
きは1日について 8 時間以内)において包括的に、または個別的にアルバイトの許可を受けることが
できます。これが「資格外活動許可」と言われる手続きです(入管法第 19 条 2)。
この規定は、従来、専門学校や大学等で学ぶ留学生(正規生・準備教育課程)と、研究生・聴講生・
日本語学校生との間で活動時間等の扱いに違いがありましたが、平成 22 年の改正入管法施行に伴う在
留資格「留学」と「就学」の一本化により、「留学生」への許可に係わる条件に統一され、全ての在留資格
「留学」対象者が同じ扱いとなりました。これに伴い、従来までは「就学」の在留資格が付与されてい
た専修学校高等課程並びに一般課程の外国人生徒の資格外活動についても、
「1日について 4 時間以
内」から「1 週について 28 時間以内(在籍する教育機関が学則で定める長期休業期間にあるときは1
日について 8 時間以内)」へ許可条件が変更され、大学・専門学校留学生と同じ扱いになりました。
(2)専門学校卒業後に就職活動を目的とした在留資格「特定活動」で在留する者の扱い
大学・専門学校を卒業後も就職活動を継続することを希望し、大学・専門学校の推薦を得て入国管
理局に申請を行い、在留資格「特定活動(6月、更新1回で+6月)」を認められた留学生も、その期
間、日本での生活を維持するために法律で認められた範囲内(週 28 時間以内)で資格外活動許可を得
て、アルバイトを行うことができます。
「特定活動」申請の際には大学・専門学校の推薦状を添えるこ
とが求められており、
申請が許可された後も、
学校側には適切な在留状況の把握が求められています。
大学・専門学校関係者は、継続就職活動を目的とした在留に推薦状を出した留学生について、卒業後
も緊密な連絡を取り、就職活動の状況に加え、アルバイトの状況も的確に把握しておくことが重要で
す。
(3)資格外活動許可違反と留意事項
留学生が資格外活動許可を受けることなくアルバイトを行ったり、認められていない場所で、ない
しは制限時間を超えて働いた場合には、入管法に違反することとなり、罰則の対象となるほか、特に
アルバイトを専ら行っていたと明らかに認められるときは、退去強制事由に該当することとなります
(入管法第 24 条 4 のイ)。
また、
許可を得ずにアルバイトを行う者であることを知りつつ雇用した場合、
その雇用者に対しても 3 年以下の懲役または 300 万円以下の罰金が科せられる等の罰則があります
(入
管法第 73 条の 2)。
学校関係者は上記の点に特に注意を払い、留学生に説明するとともに、学校として、普段から個別
留学生のアルバイト内容・就業場所・就業時間等の情報を正確に把握し、雇用主の連絡先等も確認し
ておくことが求められます。
もし過剰なアルバイトの兆候があったり、
学業に影響が出始めた場合は、
雇用主に直接連絡を取り、留学生の学習環境を適切に保つよう働きかけることが必要です。また不法
就労や資格外活動許可違反につながらないよう、入管法の規定について、主要な企業関係者と情報を
共有しておくことも大切でしょう。最近は、専らアルバイトを行っていたわけではなく、学業にはし
っかりと取り組んでいた留学生の中にも、法律で認められたアルバイトの制限時間(週 28 時間)を超
過して働いていたために、在留状況が不良(資格外活動許可違反)と判断され、在留期間の更新が不許
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可となったケースが多数報告されています。後から取り返しがつかない事態にならないよう、学校と
しても普段からオリエンテーション等を通じた留学生への啓発及びルールの徹底が求められるところ
です。もともと専門学校では大学等に比べ修学期間が短めであるにもかかわらず、実習が多く、たい
ていの場合は時間制でカリキュラムが組まれています。日本人学生でも学業とアルバイトの両立は難
しいほどですから、留学生はなおさらアルバイトをする時間が限られていることを、前もって入学前
に説明しておいた方が良いでしょう。
<アルバイトが認められていない場所と職種>
留学生のアルバイトが認められていない職種については、入管法施行規則に下記のように明記され
ています。風俗営業若しくは店舗型性風俗特殊営業が営まれている営業所において行うもの又は無店
舗型性風俗特殊営業、映像送信型性風俗特殊営業、店舗型電話異性紹介営業若しくは無店舗型電話異
性紹介営業に従事するもの。(入管法施行規則第 19 条第5項第1号)
では、上記に該当する「風俗営業」とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか。
「風俗営業法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)」には下記のように規定されていま
す(風俗営業法第 2 条)。
キャバレー
待合・料理店・カフェ(客の接待をして遊興・飲食させる営業)
ナイトクラブ
ダンスホール
喫茶店やバー(客の接待をして飲食させる営業で客席の照度 10 ルクス以下の所)
喫茶店やバー(他から見通すことが困難であり且つ広さが 5 平方メートル以下の所)
麻雀屋、パチンコ屋スロットマシン、テレビゲーム機、その他の遊技設備により経営する店舗等
また店舗型性風俗特殊営業、無店舗型性風俗特殊営業、映像送信型性風俗特殊営業、店舗型電話異性
紹介営業若しくは無店舗型電話異性紹介営業に該当する場所として、例えば下記のようなものがあり
ます。
個室付浴場業
ストリップ
のぞき劇場
モーテル
ラブホテル
アダルトショップ
ビニール本店
個室マッサージ
出張・派遣型ファッションヘルス
アダルトビデオ通信販売業
インターネット上でわいせつな映像を提供する営業
テレホンクラブの営業
ツーショットダイヤル
伝言ダイヤルの営業、等。
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なお、これらの場所でアルバイトしていない場合でも、その営業用チラシなど広告宣伝物を街頭等で
配布する行為は同様に禁止されています。留学生の中には、単なる「チラシ配り」と判断してこうし
た類のアルバイトに従事し、資格外活動許可違反で国外退去になった前例がありますので、高等教育
機関における留学生指導・在籍担当者は留学生のアルバイト選びについては十分に注意するよう、指
導する必要があります。
<留学生のアルバイト収入に関する勤労学生控除>
在留中のアルバイト収入は一般的に給与所得とされ、日本での課税対象となりますが、国内の教育
機関等で学ぶ外国人留学生についても対象となる「勤労学生控除」と呼ばれる所得控除制度があります。
これは通常全ての給与所得者に適用される給与所得控除と、所得控除の基礎控除以外に控除額が更に
上乗せされるもので、下記のいずれかの学校の学生・生徒が所定の手続きをおこなえば、いったん勤
務先などで給与から差し引かれた所得税が後、還付される可能性があります。
(1)学校教育法に規定する高等学校、大学、高等専門学校など。
(2)国、地方公共団体、学校法人等により設置された専修学校又は各種学校の内、一定の課程を履
修させるもの。
(3)職業能力開発促進法の規定による認定職業訓練を行う職業訓練法人で一定の課程を履修させる
もの。
具体的には、年間の所得額から、給与控除分(65 万円)、所得税の基礎控除額分(38 万円)に加え、
勤労学生控除(27 万円)が差し引かれ、残った金額(課税所得)に所得税が課税される仕組みです。つ
まりアルバイトの年間給与収入総額がこれらを合算した 130 万円以下で、且つ勤労に基づく所得以外
の所得が 10 万円以下の場合には、課税所得はゼロとなります。この制度の適用を受けるためには、勤
労学生控除に関する事項を記栽した確定申告書を所管の税務署に提出することが求められます。加え
て専修学校、日本語学校等の留学生の場合には、在籍学校の学校長等から必要な証明書を本人に交付
してもらい、申告書に添付する必要があります。また各市区町村に支払う住民税についても、所定の
手続きをすれば勤労学生控除の適用を受けられます。現行制度では住民税の場合、年間給与収入総額
が 124 万円以内であれば、税負担が軽減される仕組みとなっています。ただ住民税の所管先は各市区
町村で、居住地によって扱いが異なることもあり、確認したほうが良いでしょう。
最後に、同制度については適用条件も含め、今後変動する可能性があるので、関係者は常に最新の情
報収集に努めたいところです。
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第5章
留学生の諸手続について
1.留学生が必要な諸手続きについて
わが国で留学生として在留するためには、様々な手続きを行わなければなりません。この中には法
律上「義務」とされているものと、該当する場合にだけ行うものとがあります。
(a)全員に必要な手続き
在留期間更新・在留資格変更の許可申請(在留期間満了前)、国民健康保険加入(在留期間が3月を越え
る者)。
(b)該当する者に必要な手続き
在留カードへの切り替え、資格外活動許可の申請、奨学金の申請等。
(1)在留資格の変更
大学・専門学校留学生の場合、在留資格変更手続きが必要なのは、一般的に卒業後の日本における
就労を目的とした「人文知識・国際業務」「技術」等への変更、及び継続就職活動を目的とした「特定活
動」への変更等のケースです。
なお以前までは日本語学校を修了し、大学・専門学校等に進学した学生については「就学」から「留
学」へ在留資格変更の手続きが必要でしたが、平成 22 年の改正入管法施行による在留資格の一本化に
伴い、この手続きは必要なくなりました。また専門学校入学の時点で、すでに「留学」以外の日本在留
資格をもつ外国人が、大学・専門学校での勉学を目的に、他の在留資格から「留学」へ在留資格変更
許可の申請を行うケースもあります。この場合の提出書類は下記の通りです。
他の在留資格から「留学」への在留資格変更許可申請時に必要な書類
①在留資格変更許可申請書
②写真(縦 4cm×横 3cm)一葉(申請前 3 か月以内に撮影されたもの)
③パスポート及び在留カード(又は在留カードとみなされる外国人登録証明書)提示
④その他
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2.在留期間の更新について
在留期間は出入国港において上陸許可を受けた日の翌日から起算されます。現在の在留期限を超え
て引き続き在留しようとする場合には必ず「在留期間更新許可申請」の手続きをとらなければなりませ
ん(入管法第 21 条)。
在留期間は在留資格別に定められており(「留学」の場合は 4 年3月、4年、3年3月、3年、2年3月、
2年、1 年3月、1 年、6月、3月の 10 パターンがあり)、それぞれのケースについて個別に許可され
ます。以下では、その手続きについて述べます。
(a)在留期間更新許可申請の手続き
留学生本人が最寄りの地方入国管理局、同支局または出張所に出向いて申請することが原則となり
ます。申請の受理と許可証印の手続きは分離されており、受付時間は原則として午前は 9 時から 12
時まで、午後は 1 時から 4 時であり、申請当日は受理の手続きのみ行われます。緊急の事情があり、
早急に審査結果を知る必要がある場合は、その旨申し出ることができます。
疾病その他の事由により自ら出頭することができないときは、留学生の父もしくは母、配偶者、子、
親族、監護者又はその他の同居人が本人に代わって申請を行うこともできます。また留学生本人が出
頭することなく、地方入国管理局長が相当と認めた専門学校等の職員、公益法人の職員、行政書士・
弁護士等により、在留期間更新許可申請の申請取次を行うことができます。
(b)提出書類
在留期間更新許可申請に際しては、下記の提出書類が必要となります。(平成 24 年7月現在)
①在留期間更新許可申請書
②写真(縦 4cm×横 3cm)一葉(申請前 3 か月以内に撮影されたもの)
③パスポート及び在留カード(又は在留カードとみなされる外国人登録証明書)の番号提示
④在学証明書(在学期間の明記されたもの)
⑤成績証明書、出席・成績証明書
⑥日本留学中の経費支弁能力を証する文書
不法残留者を多数発生させている国・地域出身者の申請等について、提出を求めるものです。
※申請人以外の者が申請する場合は、別途、身分証の提示が必要です。またその場合は申請人のパス
ポートの提示及び住民票(在留カードの両面のコピー)の提示が求められます。
※上記以外に、審査の過程において追加資料の提出を求められる場合があります。
(c)在留期間更新の許可
審査の結果は、葉書等で留学生本人に通知されます。許可のための出頭通知を受けた場合には、申
請人に代わり申請人の配偶者、親または子(成年者に限る)あるいは申請人の在籍する学校の職員が出
頭することもできます(その際、留学生本人のパスポートを預かっておく必要があります)。在留期間
の更新が許可されると、旅券に「在留期間更新許可」の証印が押されます。新たな在留期間は、従前
の在留期間の満了日の翌日から起算されます。なお、在留期間の更新の申請は、在留期間が満了する
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おおむね 3 か月前から受け付けています。
(d)手数料:4,000 円(許可される時のみ、収入印紙で納入します)
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3.在留カードとは
―新しい在留管理制度について
平成 24 年7月9日より改正入管法に基づく新しい在留管理制度が施行され、
在留外国人の公正な管
理に資することを目的としたシステムが大きく変わりました。従来の外国人登録制度は廃止され、外
国人登録証明書に代わって、新たに在留カードが交付されるようになったのです。
在留カードの登場により、これまで法務省が在留審査を通じ行っていた情報管理と、各市町村が外
国人登録制度に基づいて行っていた情報管理が入管法のもとに一本化されました。これにより、留学
生など中長期で在留する外国人の在留状況を継続的にかつ正確に把握できるようになるだけでなく、
不法滞在者が住民登録をしたり、本来就労できない人が働いたりといった事態を抑止する効果も期待
されています。
また「在留カード」では在留状況に関する主な記載事項に変更が生じた場合、法務省入国管理局や各
市町村への届出が義務づけられているため、常に最新の本人情報が反映されます。したがって日本に
中長期で在留する外国人にとっては、各種の行政サービスを受ける際に本人の状況を把握してもらい
やすくなりますし、例えば「留学」生の場合、アルバイトに応募する際にも、入管法で認められている
資格外活動許可の内容がカード裏面に記載されていますので、自らが適法な在留資格を有し、資格外
活動許可を有していることを雇用主に対して、簡単に証明できるようになります。
(a)交付対象者
在留カードは、わが国に中長期間、適法に在留する外国人に対して交付されます。3月以下の在留
期間が決定された者や観光等を目的とした「短期滞在」及び「外交」
「公用」の在留資格が決定された者
等には交付されません(入管法第 19 条の 3)。したがって大学、専門学校等においても、いわゆるショ
ートステイなどの短期滞在者は対象外となりますが、正規課程の学生を始めとして、在留期間が6月
以上の在留資格「留学」所持者に対しては、等しく在留カードが交付されます。
(b)記戦される事項
在留カードに記載される事項については入管法第 19 条の 4 で定められていますが、実際にカード上
の記載内容を表面、裏面で区分すると下記の通りとなります。
(表面)
・氏名、
・生年月日、
・性別、
・国籍・地域、
・住居地、
・在留資格、
・在留期間及び在留期間(満了日)、
・許可の種類及び年月日、
・在留カードの番号・交付年月日及び有効期限(満了日)、
・就労制限の有無
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(裏面)
・住居地記載欄(届出年月日、住居地、記載者である自治体の印)
・資格外活動許可欄(資格外活動許可を受けているときはその旨が記載されます)
・在留期間更新等許可申請欄(在留期間更新や在留資格変更の許可を申請しているときに、申請中であ
ることが記載されます。)
(c)有効期間
「留学」の在留資格所持者で 16 歳以上の場合、在留カードの有効期間は所持している在留期間の満了
の日までとなります(入管法第 19 条の 5)。
(d)交付されるタイミングと場所、及び申請方法
在留カードの導入前に来日しすでに日本で在留資格を有している留学生と、在留カードの交付が始
まった平成 24 年7月9日以降に来日した留学生とで扱いが異なり、また後者の場合は入国時の出入国
港によっても差異が生じますので、注意が必要です。
(e)携帯の義務
入管法の在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人(16 歳未満を除く)は在留カードを常に
携帯し、入国審査官や入国警備官、警察官から提示を求められた場合はこれを提示する必要がありま
す。常時携帯義務があるのは、従来の「外国人登録証明書」と同様です。もし在留カードを携帯してい
ないと罰金等が科せられることもありますので、留学生も常に所持するよう心がける必要があります。
また、別途パスポートを所持していたとしても、在留カードは必ず携帯しなければなりません。
(f)紛失時の対応
万一、在留カードを紛失した場合は再交付の申請をしなければなりません(入管法第19条の 12)。
この手続きは紛失の事実を知った日から14日以内に地方入国管理局へ出向き、行う必要があります。
期間内に行わなかった場合は、1年以内の懲役又は 20 万円以下の罰金に処せられることがあります
(入管法第 71 条の 2)ので注意が必要です。詳細は最寄りの地方入国管理局へお問い合せ下さい。
(g)本人(留学生)の届出義務
新しい在留管理制度では、本人の在留中における状況の変動に応じて、所定の届出を行わなければ
ならないルールが定められています。この中には地方入国管理局で手続きするものと、最寄りの市区
町村で手続きするものがあります。
①地方入国管理局で手続きの必要があるケース
●氏名、国籍・地域、生年月日、性別に変更があった場合
入管法第 19 条の10において「変更を生じた日から14日以内に(中略)法務大臣に対し、変更の届
出をしなければならない」と規定されています。
●所属機関に変更があった場合
大学、専門学校生など在留資格が「留学」の外国人は、所属教育機関の存在が在留資格の基礎となっ
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ていますので、留学生の所属学校が変わったときには、14日以内に届け出る必要があります(入管
法第19条の 16)。また日本語教育機関を修了後に専門学校へ入学する留学生で、専門学校入学時点
でまだ有効な在留期間を持ち、在留期間更新手続きが必要でない場合でも、入管法上の所属機関の変
更に関する届出義務は生じますので、専門学校関係者は留学生へのオリエンテーションなどで注意を
呼びかけることが求められます。
②市区町村で手続きの必要があるケース
●住居地が確定或いは新住居地へ転移した場合
入管法第 19 条の 7 及び 9 において、新規上陸者の場合は住居地を定めた日から14日以内に、また
引っ越しなどで住居地に変更があった場合は新住居地に移転した日から14日以内に、それぞれ住居
地の市町村の長に対し、届け出なければならないことが規定されています。守らなかった場合、20
万円以下の罰金に処せられることがあり、また正当な理由なく上陸後90日以内に住居地を届け出な
かったり、届け出た住居地から退去後 90 日以内に新住居地の届出をしない場合、在留資格が取り消さ
れることがあります。また虚偽の届出も在留資格取消の対象となることがありますので注意が必要で
す。
(h)留学生の所属教育機関の努力義務
改正入管法では、在留カードを始めとした新しい在留管理制度の施行に際し、大学・専門学校など
外国人の所属機関について、
「法務大臣に対し、当該中長期在留者の受入れの開始及び終了その他の受
け入れの状況に関する事項を届け出るよう努めなければならない」
とする規定が明文化されました
(入
管法第 19 条の 17)。具体的には中長期在留者の身分事項、入学、卒業、退学、除籍、及び在籍の事実
等です。実際には新制度の適用以前から、外国人が在籍する専門学校では、月1回の退学者等名簿提
出や毎年4月及び10月末時点の留学生名簿提出をすでに行ってきており、今回の努力義務規定はあ
くまでも法令上の措置に過ぎず、既存の届出と二重に求められるものではありません。ただ新制度へ
の移行に伴い、今後、留学生の受け入れ機関は(i)毎年5月1日と11月1日における留学生の受
け入れ状況を14日以内に、
(ii)入学・編入などで留学生の受け入れを開始したり卒業・退学などで
受け入れが終了した場合にはその日から14日以内に、それぞれ地方入国管理局への出頭又は東京入
国管理局への郵送により、法務大臣へ届け出ることが求められるようになりましたので注意が必要で
す。なお、この規定はあくまでも努力義務であり、上記の届出を行わなくても刑罰を科せられたりす
ることはありませんが、
その教育機関に所属している留学生が在留期間更新許可申請などを行う際に、
事実関係の確認に時間を要したり、慎重審査の対象となる可能性があります。普段から定期的な報告
や届出が行われていれば、その学校における留学生の在留状況が予め入国管理局に把握されているこ
とから審査がよりスムーズに進む面もあるので、学校としては努力義務を遵守し、定期的な届出を行
っておく方が無難でしょう。
(i)留学生の資格外活動(アルバイト)に関する内容
在留カードは表面に「就労制限の有無」が、裏面に「資格外活動許可」の概要が記載されます。大
学・専門学校等の教育機関で学ぶ留学生で、資格外活動許可を受けている場合は裏面の「資格外活動許
可」欄に「許可:原則週 28 時間以内・風俗営業等の従事を除く」等と記載されます。ただこの場合、
注意しなければならないのは表面の「就労制限の有無」欄には「就労不可」と記載されている点です。
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これは留学生の場合、本来は「留学」の在留資格に係わる活動を主たる在留目的とする原則によるもの
で、アルバイトなどの活動はあくまでも法律で認められた「資格外」の活動であるとの位置づけからで
す。
(j)代理・取次ぎによる手続き
在留カードに関する届出・申請や在留カードの受け取りは、原則として外国人自らが出頭して行い
ますが、届出等の種類によっては本人に代わり学校関係者や行政書士が手続きを取り次ぐことも可能
です。
(k)在留カードにおける氏名の表記について
在留カードに記載される外国人の氏名は原則としてローマ字により表記しますが、漢字氏名を併記
することができ、この場合は、住民基本台帳制度での取扱いを考慮し、日本の正字で記載する旨が、
法務省により告示されました(法務省告示第 582 号「在留カード等に係る漢字氏名の表記等に関する
告示」)。これに伴い、中国大陸出身者等が使用する簡体字等については、在留カードにそのまま表記
するのではなく、法務省告示に規定される正字の範囲の文字に置き換えて表記される方針が打ち出さ
れました。従来の外国人登録証明書では、基本的に本人のパスポート表記に基づき、簡体字などもそ
のまま表記(併記)されていましたので、在留カードへの移行に伴い、外国人の氏名表記の形態がロー
マ字表記を原則としつつ、漢字氏名を併記する場合も、日本で使用される正字をベースとした形へと
大きく変わることになります。なお個別の簡体字等に対応する日本の正字への置き換えについては法
務省入国管理局の情報掲示板に詳細が掲載されています。
外国人登録証明書の扱い在留カードの導入に伴い、従来の外国人登録制度は廃止されるため、平成
24 年7月9日以降、新たに外国人登録証明書が発行されることはありません。ただ同日以前に日本に
入国し在留中の外国人については、次回の在留期間更新等の入管手続きまでは、現有の外国人登録証
明書を在留カードに切り換える義務はありません。該当する留学生は在留カードへ切り換えるまでの
期間は、現在所持している外国人登録証明課が在留カードとみなされる扱いとなります。したがって
在留カードと同じく入管法上の携帯義務が適用され、引き続き常時所持することが求められます。な
お外国人登録証明書が在留カードとみなされる期間は、在留資格「留学」の場合、原則として現有の在
留期間の満了日までとなっています。また在留カードとして見なされる外国人登録証明書は、新たな
在留カードの交付を受けた時点で、直ちに法務大臣に対して返納しなければならないと規定されてお
り、基本的には次回の入管手続きの際に返納するか、穴あけ処理を行った上で本人に返還する取り扱
いとなっています。
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4.資格外活動許可申請
留学生のアルバイトは、学生としての活動(教育を受ける活動)を阻害しない範囲で行うことを希望
する旨の申請(資格外活動許可申請)を法務大臣に対し行うことにより、相当と認められるときは許可
されます(入管法第 19 条第2項)。この手続きは最寄りの地方入国管理局に出頭の上で行います。ま
た申請に際しては、地方入国管理局長の承認を受けた学校職員等の申請取次により、学校が本人に代
わって申請を行うこともできます。
更に平成 24 年7月9日以降は、新しい在留管理制度の導入に伴い、
「留学」の在留資格を決定され
て新規に日本に入国する方については、上陸の許可に引き続き資格外活動許可申請ができるようにな
りました。但し「留学」の中でも、「3月」の在留期間が決定された方やすでに留学生として日本に在
留している方が再入国する場合はこの対象とはなりませんので注意が必要です。
また、上陸許可に伴って在留カードが発行されるのは、4空港(成田、羽田、中部及び関西)に限
定されていますが、前述の上陸許可に引き続き行う資格外活動許可申請については、その他の出入国
港においても行うことができます。なお、在留カードには、資格外活動許可の概要が記載されます。
以下は資格外活動許可申請に必要な提出書類についてです。
<資格外活動許可申請に必要な提出書類>
(1)「留学」の在留資格をもって在留中(入国後又は再入国後)に申請する場合
①資格外活動許可申請書
②当該申請に係る活動の内容を明らかにする書類
③旅券及び在留カード(又は在留カードとみなされる外国人登録証明書)<提示>
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5.再入国許可制度(みなし再入国許可制度)
従来は留学生等の外国人が本国への里帰りや旅行等で一時的に出国するのに先立って、後日再び日本
に戻った際に以前と同じ在留資格で活動を続けるために、あらかじめ出国前に再入国許可を受けておく
ことが必要でした。ところが平成24年7月9日の新しい在留管理制度の施行に伴い、再入国許可制度が
大きく変わりました。例えば留学生の場合、出国の日から1年以内に日本へ再入国する場合は、原則と
して再入国許可を受ける必要はなくなりました。これを「みなし再入国許可」制度と呼びます。ただし、
出国時に所定の手続を経ることが必要で(詳しくは後述(c)をご覧ください)、もし現在所持している
在留期間の満了日が出国の日から1年を経過する日より早く到来する場合は、在留期間の満了日までに
再入国することが求められます。もし1年の期間を超えて出国し、その後再入国する予定がある場合は、
従来通り事前に再入国許可を取得しておくことが求められます。その場合の再入国許可の有効期間は、
現在所持している在留期間の満了日までです。ただ留学生の場合は、原則として本邦の教育機関に所属
し教育を受ける活動等を行うことが在留の基礎となっていますので、l年以上日本を留守にしたままと
いう事態は想定されておらず、留学生が再入国許可を取得する必要のあるケースというのは、今後考え
にくくなります。
この「みなし再入国許可制度」導入により、大学・専門学校等で学ぶ留学生にとっては、事前の再入
国許可の取得手続きが不要になり、本国等との往来がし易くなる点で利便性が増しますが、注意を要す
ることがいくつかあります。下記にそのポイントを列挙します。
(a)再入国許可制度自体は引き続き存続
新しい制度が始まった後も、従来の再入国許可制度自体は存続します。再入国許可の有効期限
は在留期間の満了日を超えない範囲内で最長5年(特別永住者は6年)です。前述の通り留学生の場
合はほとんどこれに該当するケースは考えにくいと見て良いでしょう。一方で、新制度の施行以
前に留学生が再入国許可を取得している場合には、すでに取得済みの再入国許可を利用して出
国・再入国することも可能です。この場合、「みなし再入国制度」を利用して出国した場合と、
有効期限延長に関する扱いが異なります。
(b)有効期限延長の扱い
みなし再入国許可により出国した場合、いかなる理由があっても、その有効期限を海外で延長
することはできません。なぜならこの制度はあくまでも日本に長期間在留する外国人の一時的な
海外への渡航の手続の簡素化及び利便性の向上を目的としているからです。もし出国の期間が1年
を超えた場合は、在留資格が失われることになりますので注意が必要です。この場合、日本の在
外公館で新たに査証を取得し、新規に入国する必要があります。一方、事前に再入国許可を取得
し出国したケースでは、有効な在留期間が残存している場合に限り、日本の在外公館で再入国許
可の有効期限の延長許可を受けることができる場合があります。
(c)みなし再入国の手続き
日本を出国時に記入する「再入国出国記録(再入国用EDカード)」にみなし再入国許可についての
意思表示欄が設けられていますので、みなし再入国による出国を希望するという欄にチェックを
入れます。再入国用EDカードを入国審査官に提出するとともに、旅券と在留カード(又は在留カー
ドをみなされる外国人登録証明書)を入国審査官に提示することでみなし再入国許可による出国
を行うことができます。これらの手続をとらずに出国すると、みなし再入国許可による再入国が
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できなくなりますので、みなし再入国許可により出国するためには必ずこれらの手続をとってく
ださい。入国審査官は「再入国記録(再入国用EDカードの入国時に使用する側)」の裏面にみなし
再入国許可についての留意事項が記載されたスタンプを押印し旅券に添付しますので、再入国す
るまでの間なくさないようにしてください。
(d)在留カードへの移行期間の留意事項
新たな制度が施行された後も、従来の外国人登録証明書の在留カードへの切換が済んでいない
留学生が存在するものと思われます。こうした場合でも一定の期間、外国人登録証明書が在留カ
ードとみなされるため、有効な旅券と外国人登録証明書を所持していれば、みなし再入国許可の
適用を受けることが可能です。
(e)所属教育機関の留意事項
みなし再入国制度の施行により、留学生にとって本国との往来に際しての利便性は格段に高ま
りましたが、大学、専門学校など留学生が所属する教育機関にとっては、在籍管理がますます難
しさを増したといえるでしょう。再入国手続きの簡素化を機に、場合によっては出国、再入国を
頻繁に繰り返すケースや、出国後、長期間に渡って連絡がつかなくなる事態も想定されるからで
す。制度上は、出国後1年以内に日本へ戻る場合、再入国許可を取得する手続きが不要になりまし
たが、これは決して日本を1年間留守にしても問題ないという意味ではありません。入管法の規定
により、在留資格に応じた活動(留学生の場合は教育機関に所属し勉学を行う活動)を3か月以上
行っていない場合は在留資格取消の対象とされますので、留学生が出国後、長期間日本に戻らな
いような場合には再入国の前提が崩れてしまうことになりかねません。また、みなし再入国許可
により頻繁に出入国を繰り返しているようなケースでは、実質的に日本に滞在している期間が短
いと判断され、在留資格に即した活動を行っているのかについて入国管理局の慎重審査の対象と
なる可能性があります。大学、専門学校関係者はみなし再入国制度について留学生に知らせる際、
在留資格取消制度とセットで全体の趣旨を徹底すると共に、日頃から留学生の在籍状況を細かく
チェックし、個別留学生の帰国に関する情報をなるべく早く収集して、帰国該当者にはあらかじ
め日本へ戻る予定日と帰国後の連絡先を確認しておくことが望ましいでしょう。特に夏期休暇や
春期休暇の前後など、一時帰国する留学生が増える時期には、留学生全員に意思確認をしたり、
留学生会等のネットワークも活用し情報収集に力を入れることが求められます。
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6.医療保険制度(国民健康保険)
留学生が学業に専念するためには、病気やケガ等の際、安心して治療を受けられるようにしておくこ
とも大切な要件です。現在留学生が加入し利用できる最も基本的な医療保険は、国民健康保険です。
(a)国民健康保険の加入義務と対象者
留学生(短期留学生を除く)等、日本に中長期間に渡り在留する外国人は、居住する市区町村で国民
健康保険に加入しなければならないというルールがあります。従来まではこの対象となる外国人は、外
国人登録を受け1年以上の在留期間を決定された者か、1年未満であっても通算1年以上日本に滞在する
者が対象となっていましたが、改正入管法の施行に伴う国民健康保険法施行規則等の-部改正により、
平成24年7月9日からは国民健康保険への加入対象者が下記のように変わりました。(平成24年厚生労
働省令第7号、同省告示第23号)
①中長期在留者(在留期間が3箇月を超える在留資格を持って住民登録をしている者)
②特別永住者、一時庇護許可者又は仮滞在許可者、出生による経過滞在者又は国籍喪失による経過滞在
者
③厚生労働大臣が別に定める者
そして③の具体的な対象として「3月以下の在留期間を決定された者であっても、資料等により、当該
在留期間の始期から起算して3月を超えて滞在すると認められる者」が定められました。つまり留学生
の場合は、所持する在留資格「留学」の在留期間が3月以上の者か、3月以下であっても在学証明書等
により、3月を超えて本邦に滞在すると認められる者は、国民健康保険の加入対象者となります。
(b)国民健康保険の加入メリットと留意事項
国民健康保険に加入しておけば、病気や怪我等で医者にかかった際の医療費が実費の30%の負担です
みます。また万一長期の入院などにより多額の医療費がかかる場合は、更に国民健康保険の高額医療費
補助制度の適用を受け、自己負担を限られた範囲内に抑えることが可能です。
留学生の中には、2~3年という留学期間ならその間病気やケガをすることは滅多にないから大丈夫
だろうという理由で、国民健康保険に加入しない者が見受けられますが、同保険に加入していなかった
留学生が病気になり、国民健康保険に入って補助を受けようとすると、住民登録の時点までさかのぼっ
て保険料を請求されるのが一般的です。学校関係者は万一の時に慌てないためにも、あらかじめ国民健
康保険に加入しておく必要があることを留学生に認識させ、入学時点で必ず加入させておく必要があり
ます。なお、加入手続きをする際、留学生の場合は窓口で所得がないことを申告すれば、通常の保険料
の約6割が減額されます。「所得」の有無については本人が窓口に申告した際の説明で判断されますので、
「留学生」の身分であることをはっきり申告するように前もって指導しましょう。また保険料の金額は、
留学生が居住する各市区町村によって異なりますので、それぞれ加入時に確認することが必要です。加
入の手続きは、留学生が住民登録をしている市区町村役場の国民健康保険課で行います。なお国民健康
保険に加入する際は、住民登録時点からの保険料を支払わなければなりません。
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第6章
留学生の卒業後の進路とフォロー
1.卒業後の進路指導について
留学生の卒業後の進路は、主として(1)日本国内で就職する、(2)日本国内で就職活動を継続する、(3)
母国に帰国して就職・起業する、(4)日本国内.または第三国で再進学する、の4ケースに分かれます。
(1)日本国内で就職する
日本の大学・短期大学を卒業した留学生、専修学校で専門課程を修了し「専門士」の称号を得て卒業
した留学生は、就職先で行おうとしている活動内容が「人文知識・国際業務」または「技術」等の就労
可能な在留資格に該当し、学校の学習内容と就職先の職務内容に何らかの関連性があると認められた場
合、就労が可能な在留資格へと変更し、日本に在留することが認められています。
(2)日本国内で就職活動を継続する
在学中の就職活動で就職先が決まらなかった留学生は、在留状況に問題がなく、かつ在籍していた学
校が推薦状を出す等、所定の条件を満たせば、卒業後も最長で1年間、引き続き就職活動を目的として
日本に在留できる制度があります。この場合には、在留資格は「特定活動」となり、アルバイト等の資
格外活動も法律で認められた範囲内で可能です。卒業後に日本での就職を希望する留学生はとりわけ多
く、例年激しい競争となるため卒業までに企業から内定を得られないケースも増えており、継続就職活
動を求める留学生のニーズは年々高まっているのが現状です。
(3)母国に帰国して就職・起業する
学校を卒業後、日本で学んだ専門知識や経験を活かして、母国に帰国し現地の日系企業に就職したり、
或いは自分で起業し新たなビジネスを興す留学生も出てきています。しかし、多くの留学生が卒業後も
何らかの形で日本国内にとどまっており(独立行政法人日本学生支援機構調査)、直ちに帰国就職・起
業を希望する人はさほど多くないのが現状ですが、卒業後5年、10年のスパンでみると、帰国就職・
創業のニーズは飛躍的に大きくなる傾向にあります。
(4)日本国内.または第三国で再進学する
最初に進学・卒業した専門学校から大学・大学院へ、再度進学する留学生がここ数年増加傾向にあり
ます。
独立行政法人日本学生支援機構が平成22年度卒業の留学生動向を調査したデータによると、専
門学校を卒業した留学生の54.8%に相当する6,503人が、日本国内の大学学部及び大学院等へ「再進学」
しています。この中には当初就職を目指したものの希望通りに行かずに、進学へ進路を切り換えた人が
相当数含まれます。また最近では、大学進学の予備教育を充実させる専門学校が増えていることから、
大学・大学院への進学を目的として専門学校へ進学するケース、専門学校卒業後にまた別の専門学校へ
進学するケースもみられます。今後は将来に備えて、「専門士」と大学(大学院)の学位の両方を取得し
たいという需要も増えてくることが予想されます。
2.留学生の就職サポートについて
さて、留学生が卒業後に進む上記の4つの「出口」の中でも、最も学生のニーズが高く、また学校関
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係者のサポートを必要とするのは(1)の日本国内で就職するケース、及び(2)の日本国内で就職活動を継
続するケースです。ここから先は、日本国内での就職を希望する留学生に対し、在学中にどのような進
路指導を行っていけば良いのかを中心として、留学生向け就職サポートの方法を具体的に述べていきま
す。
■日本国内で就職活動をする留学生向けの進路指導
一般的に、日本国内で就職を希望する留学生に対しては、その就活指導にあたって学校が以下のような
メニューの中から、適切と思われる支援策を取捨選択し、留学生の入学時から計画的に行うことが求め
られます。
①就職情報全般の提供
留学生向けの求人・就職情報は、日本人学生向けに比べて格段に少なく、情報へのアクセス方法も限
られているのが現状です。就職活動を成功させられるかどうかは、留学生に対し必要な情報をスピー
ディーに、そしてコンパクトに提供できるかどうかが重要なカギとなります。学校の留学生担当者は
主として下記のような形で、就職関連情報の提供に努める必要があります。
②就職ガイダンスの実施(就職の基礎知識の提供)
日本人学生とは別に、留学生だけを対象とした就職ガイダンスを、入学後できるだけ早い時期から断
続的に開催していくことが望まれます。テーマは①就活にあたっての予備知識②応募書類・筆記試験対
策③面接対策④就職内定後・卒業後の手続き等々、留学生の就活に関するあらゆるものが対象となりま
す。この内、②~④については後で詳しく述べますが、留学生の就活の進捗状況に合わせ、基本的な就
職ガイダンスとは別の形で、就職指導プログラムとして実施していくことが望まれますので、ここでい
う「就職ガイダンス」の内容とは、①の就活にあたっての基本的な予備知識だけを対象とします。就職
ガイダンスでは、留学生が日本企業や就職活動について基礎的な知識を掴み、就職のイメージを持つこ
とができるように、下記のような例について簡潔に分かりやすく説明する必要があります。
・日本における就職の習慣:入社時期、休暇、入社後の待遇等
・日本企業の特色:終身雇用・年功序列等の雇用スタイル、世界における技術水準等
・日本企業が求める人材の条件
・留学生の就職実績(同校先輩の就職実績、専門学校留学生の就職実績等)
・就職活動の流れとスケジュール
・就職に必要な日本語力
ガイダンスの開催にあたっては、あらかじめ留学生から就職活動や就職について知りたいことをアン
ケートで聞いたり、当日のガイダンスの中で質問コーナー(Q&A)を設けると、参加者の関心も一層
増すでしょう。
③求人情報の取得方法の指導
学校の就職課やキャリアサポートセンター、外国人雇用サービスセンター等の公的機関、外国人向け
媒体、人材会社、インターネットの求人サイト、就職説明会のサイトなど、留学生が自分で求人情報を
入手可能な、あらゆるチャンネルをあらかじめ情報として伝えておくことが重要です。
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④専門資格取得のサポート
留学生にとって、就活に臨む上で大きなアピール材料となるのがやはり実務能力です。入社後すぐに
仕事がこなせる即戦力としての強みを企業にPRできれば、就職の可能性はぐっと高まるでしょう。そし
て、それを形として証明するのが専門資格です。もちろん専門資格があるからと言って、必ずしも実務
的な人材と企業から評価されるとは限りませんし、就職に直結するわけではありませんが、少なくとも
専門資格(日本語資格を除く)を取得させることで、留学生が入社前の段階からその道のスペシャリス
トとして一定レベルに到達していることを証明でき、履歴書や自己PR書に明記し、自己のセールスポイ
ントとしてアピールすることができるようになります。学校の中には、留学生が資格を取得し就職活動
に活かせるよう、下記のような形で1年次から資格取得を積極的にサポートしている実例があります。
留学生及び卒業した元留学生の受験実績がある専門資格(例)
※留学生の専攻分野によりそれぞれ異なります。
(1)エ業関係
・メカニカル系:二級自動車整備士、二級二輪自動車整備士、中古自動車査定士等
・システム・IT系:基本情報技術者、高度情報技術士、ソフトウェア開発技術者等
・デザイン技術系:CGクリエイター、Webデザイナー等。
(2)商業実務(外国語)関係
・観光・サービス系:AXESS(航空券端末予約システム)、旅行業務取扱管理者、通訳等
・商業実務系:日商簿記、社会保険労務士、宅地建物取引主任者等
(3)服飾・家政関係
・ファッション系:ファッションビジネス検定、パターンメーキング技術検定等
⑤就職活動のノウハウ指導(応募書類・筆記試験対策)
この支援メニューでは、就職活動開始前のなるべく早い段階で、就活に不可欠なノウハウや知ってお
く必要のある知識を、応募書類作成と筆記試験対策を中心に、具体的に指導していきます。
⑥就職活動のノウハウ指導(面接対策)
留学生の就職指導において、最も重要なのが面接対策の指導です。これまで就職に成功した留学生の
中でも、学校の面接指導が効果を発揮したケースは少なくありません。留学生各人の専攻内容や希望に
より応募先企業や目指す業界は異なりますので、面接指導は基本的にマン・ツー・マンで、時間を掛けて
個人指導により行うのが成功の秘訣です。
⑦面接マナー・敬語指導
学校によっては、面接のマナーや敬語の使い方について「ビジネスマナー」等の独自のカリキュラム
を設けたり、日本語授業の中で特別に指導しています。特にサービス関連業界への就職希望者に対して
は、きめ細かな指導が必要となるでしょう。挨拶の仕方、礼の仕方、名刺の渡し方、尊敬語と謙譲語の
使い分け、メールの書き方、電話のマナ一などが例としてあげられます。なお、面接対策等の就活指導
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においては、留学生も日本人学生と同じ土俵で競争しなければならない事情を考慮し、基本的に入学時
から日本人向けと同じ内容で実施するところが一般的ですが、学校によっては留学生と日本人に分けて
指導を行っているところもあります。
⑧エントリーシート(応募書類)の入手・請求方法
エントリーシートは企業が指定した応募書類で、面接に進むための第一歩です。入手方法は企業のウ
ェブサイトやインターネットから直接入手するケース、ハガキなどで請求するケース、企業セミナーに
出席し入手するケースなど複数ありますので、それぞれ具体的な事例を挙げて個別に留学生に説明した
方が良いでしょう。
<エントリーシート・履歴書・自己PR書の書き方>
就職活動の成否は、まずエントリーシートの内容で決まると言われます。多くの応募者の中から「こ
の学生には是非会ってみたい」と人事担当者に思わせることができるような、印象的な応募書類にな
るよう、しっかりと作成方法をアドバイスする必要があります。また、エントリーシートとは別に提
出することが多い履歴書には、留学生の経歴や職務内容と関係のある学習歴、専門資格等を漏らさず
簡潔明瞭に記入させる必要があります。自己 PR 書には、エントリーシートと同様に、その留学生でな
ければ(あるいはその企業向けでなければ)書けない内容を 1 つは盛り込むように指導しましょう。
留学生の履歴書作成を指導するにあたり、事前に指導が必要なチェック項目は下記の通りです。
(学校職員のエントリーシート・履歴書事前チェック項目)
・記入前に、応募する会社や業界のことをよく調べたか?
・スペースが文字で埋まっているか?余白スペースが多すぎないか?
・学歴・職歴などは空白期間なく全て書かれているか?
・免許・専門資格・日本語資格・使用可能言語等が漏れなく書かれているか?
・日本語が適切に、正しく書かれているか?誤字脱字がないか?
・その留学生にしか書けない、経験に基づいた履歴書・自己PR書になっているか?
・その企業向けにしか書けない、熱意が伝わる内容となっているか?(他社で使用した履歴書の使い回
しは厳禁)
・志望動機・理由の部分に、学校で学んだ専門知識や技術をどういった形で活かしていきたいのかが具
体的に書かれているか?
・志望先の業務内容と関わりのあるインターンシップやアルバイト、海外研修の内容が具体的に書かれ
ているか?
・志望動機として、同業他社との違い、その会社でなければならない理由等が自分の言葉で書かれてい
るか?
・入社後の希望や将来の目標だけでなく、自分が入社後にどのような面で会社に貢献できるのかが具体
的に書かれているか?
・自己分析では、自分の長所だけでなく短所も冷静に分析・表現できているか?
⑨留学生だけを対象とした就職活動指導
就活指導は、日本人も留学生も同じプログラムで同時に行うのが学校としては理想ですが、留学生の場
合は、日本の面接マナー等一般常識に対する事前の認識度や、敬語の使用にハンディを抱えている点等
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において、日本人学生とは全くスタートラインが異なります。現に留学生の中にはそれらの知識が不足
していたことで、面接官にマイナスのイメージを与えてしまい不利に働いたというケースも多々見受け
られます。ある学校では就活指導の中でも、面接マナーや履歴書の書き方、敬語の使用法、服装の注意
事項等、特別な配慮を必要とする内容については留学生だけを対象とした指導を行っています。また求
人企業の告示内容は日本人学生、留学生とも共通ですが、留学生が応募可能な企業については、その旨
を赤字で目立つように併記しています。
⑩面接の想定問答づくりとトレーニング
例年、留学生の就職実績がある学校の中には、留学生が応募する企業のエントリーシートや過去に応
募した留学生からのヒアリング内容を基に、就職担当のスタッフが面接の想定問答を作成し、本番を前
に留学生とマン・ツー・マンで繰り返しトレーニングを行っているところがあります。面接はテクニッ
クや想定だけで乗り切れるものではありませんが、留学生の場合は日本式の面接に不慣れで、何を聞か
れるか緊張してしまい、本番で実力を出し切れない人が多いのが現状です。面接のチャンスはそう何度
も巡ってこないので、事前に場数を踏ませることで、意表を突くような質問に対しても自信を持って
堂々と受け答えができるよう、学校がしっかりと事前指導をすることが重要です。留学生は日本人学生
に比べて言葉のハンディもあり、上手く自分自身を表現できない人が多く見受けられます。面接対策の
主眼は、留学生の不安を取り除くことにあります。普段の授業等で面接対策を指導している学校でも、
それとは別の形で、自己PRに重点を置きながら各人の個性に合わせた特別指導をマン・ツー・マンで行
う方が効果的でしょう。
(想定問答により質問されるトレーニング内容例)
・あなたの長所と短所は?得意分野と苦手な分野は?
・学生時代に打ち込んできたことは何か?そこから何を学んだか?
・なぜ日本で働きたいのか?ずっと働き続ける意思はあるのか?
・なぜA社(同業他社)ではなく、当社を志望するのか?作っている商品の違いは?
・学校で学んだ専門知識や技術を、入社後どういった形で活かしていきたいか?
・今、当社に足りない部分はどこだと思うか?あなたが入社したらどのような面で貢献できるのか?
・将来、当社でどういったポジションを目指したいか?
・最初の数年は希望している部門で仕事ができるとは限らないが、それでも構わないか?
・将来は○○国に赴任してもらうこともあるが、それでも大丈夫か?
⑪次に活かす面接指導について
留学生の面接対策は事前の指導も大切ですが、事後のフオローアップの方がより重要です。ある学校
では、面接の状況を留学生から随時報告させ、面接終了時か採否結果の判明した時点で、就職担当者が
本人と面談しています。そして面接時に聞かれた質問内容とそれに対する回答.面接者の反応等をヒア
リングし、それを基にして反省点と改善点を留学生と一緒に考え、メモする作業を毎回行っています。
-社をベースにした対策が必ずしも全ての採用面接に応用できるわけではありませんが、特に同業他社
を受験する際には、面接で聞かれる内容に一定の共通性が見られることから、実際の就活において大き
な効果を発揮しており、こうした取り組みが留学生の就職に直結した実例も出ています。
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3.留学生受け入れ企業の拡大のための取り組み
ここまでは対留学生でサポートが必要な内容について述べてきましたが、次は対企業向けに行う、間
接的な留学生の就職サポートです。留学生の就職実績を拡大していくためには、関係先企業とのパイプ
を強化し、新たな求人チャンネルを拡大していく取り組みが欠かせません。そのために必要なメニュー
は下記の通りです。
①インターンシップの推進
留学生が就職に成功したケースで、インターンシップ(企業研修)がきっかけとなり採用に至った実
例は数多くあります。学校で学んだ専門知識や技術を企業の実務に活かす経験は留学生にとっても貴重
であり、企業側にとっても採用者とのミスマッチをなくす意味で、人事戦略的にもその実施メリットは
大きいと考えられています。各学校は、現在実施中のインターンシップをさらに積極的に推進するとと
もに、就職に繋がった実例や活躍している元留学生の実績を、他の候補先企業に対して積極的にアピー
ルし、実施先企業の拡大、さらには留学生の就業・就職チャンスの拡大へと繋げていく取り組みが求め
られます。学内就職説明会・入社試験の企画と開催を実施している一部の学校では、企業の人事担当者
を一堂に招へいし、学校独自の留学生向け就職説明会や校内入社試験を開催しています。留学生にとっ
ては、一度に多くの企業関係者と面談でき、しかも自校学生だけが参加できる仕組みなので大きなメリ
ットになります。
ただ、これは一朝一夕にできるものではなく、実際にどれぐらいの企業に来校してもらえるのかは、
その学校の専攻分野を学んだ留学生を巡る人材市場の現状や、日頃の企業関係者とのネットワークづく
りによって左右される側面があります。まずは過去に卒業生の採用実績がある企業等を手始めに、単独
一企業からでも、学内留学生向けの就職説明会を開催していくような、意欲的な取り組みが求められま
す。
②企業採用担当者による学内説明会の開催
留学生が就職を目指す業界の中には、慢性的に日常業務が多忙だったり、企業によっては対応する人
事担当者が不在がち等の理由で、留学生が直接会社訪問をしても、なかなか人事担当者に会うことが難
しいといったケースが見受けられます。このような場合に、学校が学生と企業との橋渡し役を担う取り
組みが、-部の学校で定期的に開催されている学内就職説明会です。学校側が学内の就職希望者を集め、
面談の場所を自ら提供することにより、企業側にとっては面接会場の確保や求人宣伝などの手間が全て
省けることになり、特定日に人事担当者を学校に派遣するだけで優秀な人材と出会えるメリットがあります。
こうした試みによって、企業側の採用意欲が向上し、従来は留学生向けに門戸を開いていなかった企業
が特定の学校向けの求人を始めたという実例もあります。
③留学生に紹介できる企業の学内基準設定
学校に対し、各企業が送付してくる留学生向け求人票の中には、時として外国人の就労が認められて
いない職種があったり、給与待遇が日本人学生に比べて極端に劣るような場合があります。前者の場合
は論外として、後者のケースでも入社後に留学生が不利益を被る可能性が高いですし.仮に採用内定を
得たとしても、在留資格変更許可申請の段階で不許可となる可能性が高いので、就職指導担当者はあら
かじめ留学生に紹介できる企業の基準を学内で明確に定めておくことが求められます。ある学校では、
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就職後、一定の経済的・身分的安定が保証されない求人については基本的に留学生へ紹介しないという
方針を採っています。具体的には月収ベースで日本人卒業生の平均的水準を著しく下回る場合や、出来
高払い等の賃金体系を採っている企業、あるいは雇用形態において単純派遣に該当する求人については、
求人段階で断っています。
④新たな求人企業の開拓
少子高齢化の進行とともに、人材としての留学生に注目する日本企業は増えています。各学校は自校
の強み、他校にない教育の特色を企業に対して積極的にPRしながら、下記のような取り組みを進め、
新たな求人先の開拓と企業とのパイプづくりを進めていく必要があります。
・特定の関連企業に対する留学生推薦採用枠の設定働きかけ
・留学生採用を実施している関連企業の情報収集
・留学生向けに開催される学外の就職説明会における情報収集
・現在留学生を採用していないが、今後可能性のある関連企業に対する打診
・中国・アジア地域に進出予定の企業に対する問い合わせ
・卒業生の就職・起業実績がある企業への働きかけ
・留学生の出身国で日系企業関係者を集め、卒業後に帰国予定の留学生との懇親会を開催
⑤過去に採用実績のある企業の再開拓
年々増え続ける留学生の就職希望に応えていくためには、新たな求人企業の開拓だけでその需要を満
たすことはできません。そこで重要になるのが過去に採用実績のある企業の「再開拓」です。2008年の
リーマン・ショックや昨今の経済不況を機に、留学生の採用をいったん取りやめた企業や見合わせてい
る企業は非常に多いですが、その一方で経済情勢や業界ごとの変化を見極めながら、求人を再開する動
きも徐々に出始めています。ある学校では企業開拓を担当する職員の数を増強し、過去に自校(あるい
は同専攻をもつ他校)において留学生の採用実績がある企業をしらみつぶしに当たり、個別に採用再開
を働きかけることで、留学生の採用を復活させています.どうしても担当職員の数に限りがある場合は、
留学生の在籍人数が多い学科・専攻、そして企業からの人材需要が高い特定分野に絞り込んで対策を行
うことが効果的でしょう。
⑥留学生OBのネットワークによる継続採用ルートの構築
長きに渡って留学生を受け入れてきた歴史のある学校では、卒業した外国人の数も相当な数となって
おり、彼らの中からは日本企業での活躍を経て独自に自分の企業を立ち上げる者も出てきています。あ
る学校では、卒業した留学生の-人がIT系の企業に就職してキャリアを積んだ後、海外のテレビ番組
を日本国内でネット配信する事業を行う新会社を設立しました。この留学生OBは「自分と同じ学校の後
輩たちを育てたい」と、出身校の留学生の中から定期的に自社で採用しています。留学生OBのネットワーク
により、継続的な求人の可能性が高まるだけでなく、この話を人づてに聞いた留学生が同じ学校を志願
するなど相乗効果も生まれています。
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4.外国人留学生の就職の現状
ここからは法務省入国管理局の最新統計(平成24年発表=同23年分統計)をもとに、留学生の就職の現
状について述べます。平成23年の1年間で留学生等が日本企業等への就職を目的に行った在留資格変更
許可申請は9,143件で、このうち実際に就労を許可されたのは8586件でした。申請に対する交付率は
939%と極めて高く、ここ数年は常時、9割前後を維持しています。
留学生の日本企業等への就職は、平成14年以降、飛躍的な勢いで増え続けてきました。日本社会の少
子高齢化に伴い人材市場を支える若年人口が減少し続けていることに加え、日本企業の業務が国際化し
国籍にこだわらないグローバル人材の採用に踏み切る企業が増えてきたことがその背景にあります。平
成14年時点では就職を目的とした留学生の在留資格変更許可件数は3千件余りに過ぎませんでしたが、
5年後の平成19年には3倍増の1万件を突破しました。
その後、平成20年秋に発生した金融危機の影響で、平成21年には再び1万件を割り込みましたが、引
き続き高水準を維持しています。いったんは冷え込んだ日本企業の新卒採用意欲も平成23年以降、再び
持ち直す兆しを見せ始めています。今後中長期的に見ると、景気動向とは別に、人材としての留学生の
価値に注目し、企業戦略の柱として留学生採用を採り入れていく企業が増えることは確実と考えられて
います。
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5.企業が望む人材
留学生を採用したいと考える日本企業が、どのような人材を必要としているのかについては、これま
で様々な調査が行われていますので<それらの結果をもとに、日本企業が留学生に求める人材像につい
て、以下のポイントごとに述べていきます。
(1)「グローバル対応力」を持つ人(異文化対応能力、世界市場の開拓能力、組織力等)
企業が留学生を採用する最も大きな意味合いは、留学生イコール「外国人」であるというそのバック
ボーンにあります。日本市場が少子高齢化で縮小を余儀なくされる中、日本企業の目下最大の課題は中
国・アジアを中心としたグローバル市場の開拓です。そのための貴重な戦力として、同地域出身者が大
半を占める在日留学生が注目されているのです。経済産業省が2010年に全上場企業を含む約5千社(有
効回答551社)を対象に行った「グローバル人材育成に関するアンケート調査」によれば、海外拠点の
設置・運営に際しての課題として、回答企業中最多の74.1%が「グローバル化を推進する国内人材
の確保・育成」を挙げました。地方の中小企業も例外ではありません。静岡県留学生等交流推進協議会
が2008年に県内企業136社を対象に行った留学生採用についての意識調査では、「留学生の採用に興味
を持った理由」として企業担当者が挙げたのは「海外の顧客への対応」が25%と最も多く、以下「会社の
国際化」「海外に生産・販売拠点がある」等、グローバル対応絡みの回答が上位を占めました。
具体的には、中国・アジア市場でビジネスを推進していくことのできる人材、つまり製品開発、商品
販売、顧客ネットワークの開拓、新規事業所・代理店の立ち上げ、及び現地との人脈づくり等を円滑に
進めていくことのできる人材が求められていると言えるでしょう。こうした人材のニーズは今後ますま
す高まっていくことが確実視されています。経済産業省が2012年に日本企業865社から得たアンケート
結果をもとにまとめたところによれば、同年1月時点で4万1164人と推定されるグローバル人材需要量
(外国人)は、5年後の2017年には約8倍の33万1669人になることが見込まれています。(経済産業省「大
学におけるグローバル人材育成のための指標調査」2012年)
学校関係者は留学生が学校で学んだ専攻内容を、国際的な環境下でどのように活かし、それぞれの強
みとして発揮できるかを常に意識しながら、学習指導にあたることが求められます。では「グローバル
対応力」を持つ人材とは一般的にどのようなイメージなのか、企業側から見て要望の多い人材例を挙げ
ます。
(求められる人材例)
・自国の価値観と日本の価値観を共に理解し、グローバル市場を相手に柔軟な思考で仕事に取り組んで
いける人。
・異文化の差を善し悪しで判断せずに、新しいことにも興味や理解を示す、好奇心旺盛な人。
・職場や地域社会で、多様な人々とチームで仕事ができる人。それぞれの強みを認識しながら多国籍の
組織の中で相乗効果を引き出せる人。
・出身国について持つ専門的な知識や人脈、ネットワークを企業の発展に活かせる人。
・会社から求められれば日本、海外、どこへでも赴任する意志のある人(特に日本で採用後、数年後に
海外現地法人へ赴任できる人材のニーズが強い)。
・外国人としての発想を活かし、出身国市場でニーズの高い商品や付加価値を付けたサービスの企画・
開発が提案できる人。
・日本で学んだ感性、外国人としての感性の双方を融合しながら、新たなビジネスを創造していける人。
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・日本本社と海外現地法人の橋渡し的な役割が担える人。
・将来的に海外現地法人のマネジメントを任せられる人。
(2)語学能力・コミュニケーション能力を持つ人
(1)のグローバル対応力を発揮していく上でその大前提となるのが語学能力であり、いわゆるコミュ
ニケーション能力です。特に日本語能力は必須となります。どのような職種に就く場合でも、入社段階
で日本人並みの高い日本語能力があることが望ましいことは言うまでもありませんが、特に日本国内勤
務の人や、海外現地法人勤務でも日本サイドや日本人スタッフとの意志疎通が職務上重要な位置づけを
占める人の場合は、少なくともピジネスレベルの日本語能力は必要不可欠となります。
(財)海外産業人材育成協会(1日:海外技術者研修協会)が2007年に行った調査では、企業が留学生
の採用時に重視する項目として最も回答が多かったのが「日本語能力」でした。一方で「母語を含む日
本語以外の語学力」を挙げる回答も4位に入っており、技術系職種や貿易関連業等、職種によっては日
本語だけではなく英語力も、企業の人材採用における重要な判断基準となっていることが分かります。
留学生の場合、就職活動をしていく上で、特に日本国内での勤務を希望する人は日本人学生が競争相手
となります。日本語力ではどうしても彼らより劣るでしょうが、英語については留学生の方が堪能な傾
向があり、企業担当者の中にも日本人を採用し語学力を養成するよりは、語学力が堪能な外国人に日本
のビジネス慣行を教え込む方が近道と考える人も少なくありません。したがって英語と日本語、母国語
の3カ国語が駆使できる人は、特に日本企業が求める語学条件にふさわしい人材と言えるでしょう。
学校関係者は、留学生が在学中、語学能力を更に向上させられるよう、学内外における異文化コミュニ
ケーション環境の維持に取り組む必要があります。
(語学力の指標)
・日本語能力試験
・BJTビジネス日本語能力テスト
・J-TEST
・英語検定、TOEFL、TOEIC
(3)専門知識・スキルを持つ人
次に、国籍の違いを越えて最も大きなアピール材料となるのが、専門知識やスキルを持つ人材です。
企業が一番求めるのは、まさにこの「頭脳・技術力」と言っても良いでしょう。
独立行政法人労働政策研究・研修機構が2008年3月に行った企業向けの「外国人留学生の採用に関す
る調査」によると、留学生の採用理由で「事業の国際化に資する」や「外国語の使用が必要」などを抑
え圧倒的に多かったのは「国籍に関係なく優秀な人材を確保するため」で全休の52.2%に上りました。
実際に人材不足が顕著な技術系職種では、早くから国境の壁を取り払った採用が行われてきました。と
ころが最近ではそれ以外の職種においても、事業自体の国際化が進む一方で、日本人学生の内向き思考
(就職後、海外には赴任したくないと言う人が増加中)が強まっているという背景もあり、人事担当者
の中には、応募者の国籍にこだわらずに、モチベーションが高く専門的な能力に優れた留学生の採用を
重視するケースが少しずつ増えてきています。中でも、近年大企業を中心に少しずつ事例が出始めた「グ
ローバル採用」は、日本国内の少子高齢化を背景に、専門知識・技術と2言語以上の外国語能力を有し、
世界各地へ赴任が可能な、いわゆる高度人材の獲得が念頭にあります。したがって学校で学んだ留学生
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にとっては、外国人としてのバックボーンを持つという存在価値以外に、日本で修得した専門知識やス
キルをどこまで高め、就職に直接活かしていけるかが重要なポイントとなります。同時に学校関係者に
とっても、留学生の就職機会を拡大していくために以下のことが求められています。
(a)カリキュラムの充実や資格取得サポート等を通じた専門教育のレベルアップ
(b)インターンシップ等を通じた留学生の就業意識の向上と入社段階で求められる専門知識・技術レベ
ルの掌握
(c)企業関係者との交流を通じた新しい人材ニーズの把握と学科・コースの機動的な再編、等の取り組
み等
なお就職上求められる専門知識の程度については、留学生が学ぶ専攻内容や就職を希望する企業の要
求によって異なりますので、ケース・バイ・ケースで個別留学生ごとに現状を把握する必要があります。
★企業が採用したがらない人材とは?
「企業が望む人材」を考える上で、逆に企業が採用したがらない人材の傾向についても知っておく必要
があるでしょう。
(1)勤務地=「日本国内」に固執する人
前記の静岡県留学生等交流推進協議会が行った留学生採用についての意識調査では、留学生と企業の
双方に対して希望の勤務地・赴任地を尋ねていますが、企業側で最も多かったのが「初めは日本、近い
将来は留学生の母国で」の赴任だったのに対し、留学生の回答は16%どまりで、最も多かったのが「日
本国内のみ」でした。このあたりが、採用企業側と留学生の大きな意識のギャップであり、ミスマッチ
とも言える部分です。本節「企業が望む人材」(1)でも述べたように、企業が留学生を採用する狙いの相
当部分は「グローバル対応」にあり、日本国内完結型の仕事は、一部の職種に限定されているのが現状
です。今後は日本人社員も含め、更に働き方がグローバル化していく趨勢にある以上、学校関係者も、
留学生が必要以上に就職後の「日本国内」勤務にこだわることは避けるようアドバイスした方が良いで
しょう。また、留学生の就職指導に当たっては、勤務地等の採用条件をしっかりと事前確認するように
指導しましょう。
(2)短期で転職を考えている人
同様の調査では留学生を採用した場合に双方が希望する就業年数についても聞いていますが、企業が
期待する就業年数は「10年以上」が最多なのに対し、留学生は「1-5年」が半数近くを占めています。卒
業後の一定期間は日本で働くことを希望する留学生でも、将来は母国へ帰国、転職したいと考えるのは
当然の心理ですし、キャリアを積んだ後、将来は他社へ転職したいと考える向きもあるでしょう。そのあ
たりは、これまで留学生の採用実績のある企業の担当者であれば、ある程度織り込み済みの部分もあり
ます。実際に企業が将来、日本で勤務した経験を活かして現地法人の「顔」、あるいは日本と海外市場
のパイプ役としての役割を留学生採用に期待しているのに対し、留学生の側はどちらかと言えば将来の
帰国へ向けたキャリアづくり、ステップアップのためのスキルを伸ばす期間とドライにとらえる傾向が
あるようです。企業側の論理や思惑は多少割り引いて考えたとしても、余りにも「腰掛け」的な考え方
が過ぎたり、キャリアアップへのつなぎといった発想だけで一時的に就職を考える留学生は、面接時に
本音を見透かされてしまいがちですし、こういった人材は、日本企業が最も採用したがらない人材であ
ると言えるでしょう。日頃から留学生の就職指導に当たる学校関係者は、日本企業が留学生採用に対し
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て持つ一般的なイメージを事前にしっかりと留学生に伝え、面接の際に企業との間で大きな行き違いが
起こらないよう、指導する必要があります。
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6.就職活動のスケジュール
就職活動のスケジュールは、基本的に企業側による就職ガイダンスや説明会の開催時期、及び採用内
定時期がいつ頃になる力、で左右されます。また就職希望先が日本国内なのか、或いは中国や韓国等、
留学生の出身国なのかによっても活動時期に違いが出てくる傾向があります。学校関係者は留学生が就
職活動でどのような企業を目指そうとしているのか、業界・規模・職種・勤務先(日本国内か海外か)等
について詳細な情報を得た上で、まずはその企業が実施している採用試験が日本人学生と同じものなの
か、外国人向けの採用枠を設けて実施しているものなのか、あるいは通年採用を行っているものなのか
について把握した上で、就職活動全体のスケジュールを組み立てるよう指導する必要があります。
(1)日本人学生と同じ採用条件の企業に応募の場合
現在は外国人向けに門戸を開いている企業でも、多くはこのパターン(1)のケースに当てはまると
言って良いでしょう。留学生だからと言って応募に特別扱いはなく、就活のスケジュールも採用試験も、
日本人学生と全く同じ流れとなります。基本的には、最終学年に入る前年度、つまり大学の場合は3年
生、専門学校の場合は1年生の秋・冬頃から企業への資料請求やエントリー等の就職活動が事実上スタ
ートし、卒業年次の春先前後、遅くとも夏前までには大半の内定が出ているのが現状です。ここ数年は
日本人学生の就職活動が年々早まっていることもあり、留学生の就職活動も早期化の傾向がみられます。
学生の就職活動の早期化による学業への影響を考慮し、企業側では日本経済団体連合会(経団連)が会
員企業に対して、平成25年4月入社組の採用活動以降、企業説明会の開催や就職情報サイト開設等、選
考活動の開始時期を卒業前年度の12月1日以降に、また内定時期を卒業年度の10月1日以降とするよ
う、倫恥憲章の改定を行いました。この方針は、平成26年度も据え置かれることが決まっています。学
校関係者は、特に日本国内での就職を希望する留学生に対しては、企業側が外国人と日本人を何ら区別
せずに採用活動を行っている現状を入学後の出来るだけ早い段階で認識してもらうとともに、留学生も
日本人学生と同じように1年次から学校主催の就職ガイダンスや業界研究、模擬面接に積極的に参加さ
せる等、就活時期を考慮しつつ、なるべく前倒しのスケジュールでサポートしていく必要があるでしょ
う。
(2)外国人向けの採用を実施している企業に応募の場合
一方、採用対象者を留学生等外国人に限定した採用の場合は、就職活動時期にかなりばらつきが見ら
れます。外国人向けに特化した採用の中でも、例えば大企業が実施している日本国内の「グローバル採
用」等の場合は(1)のケースと同様に、かなり早い段階でスタートし、卒業年次の春先には終了して
いるといった例があります。とはいえ、日本国内採用でも、人材が集まりにくい中小企業の募集や、海
外現地法人での勤務者を募集しているケースでは、必ずしも留学生の就職活動時期が早いとは限りませ
ん。これは多分に企業側、学生側双方の事情によるものです。企業側の事情で言えば、最近の少子高齢
化に伴い、特に中小・中堅企業の日本国内における優秀な人材の獲得が難航しているという事情があり、
春先の時点で全ての採用枠が埋まるということは考えにくくなっています。また帰国組の採用活動(海
外現地法人での勤務者募集)に至っては、数年前までは日本人を主対象とした国内採用が一段落した後、
最終年次の秋口以降というのがごく一般的でした。また留学生側の事情としては、ここ数年、日本国内
での就職を目指す学生が増えてきており、まずは日本人学生と同様の就活スケジュールで動くため、就
職活動の最終段階にならないと中小・中堅企業の採用や帰国就職に対して関心が向きにくいという状況
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もあります。したがって学校関係者は、外国人向けの採用、中でも中小企業の募集や海外現地法人での
勤務者募集へ応募を希望している留学生に対しては、焦ることなく、じっくりと腰を落ち着けて「通年
スケジュール」で臨むよう指導することが大切です。また日本人学生と同じ採用条件の企業に応募し内
定が得られなかった留学生に対しては、著名企業や国内採用だけにこだわらずに、ケース(2)の企業
も含め幅広く応募対象を広げて、あきらめずに就活を継続するよう指導することが求められます。
(3)通年採用を行っている職種に応募の場合
最後に、世界的に人材難が深刻な技術職については、応募者の国籍にこだわらない採用を通年を通し
て実施している企業も増加しています。技術系の留学生自身が、売り手市場であることを理解している
場合もあり、文科系学生のような切迫感はなく、研究論文や卒論の目処が立った段階で就職活動をスタ
ートするケースが少なくありません。また日本経団連が海外留学生等への対応を念頭に、通年採用や夏
季・秋季採用等の実施を倫理憲章上に明記するなどの動きも出ており、今後、大企業を中心に、文科系
学生についても通年採用が増えていく可能性は十分にあります。いずれにしても、対策は早い段階から
取り組むに越したことはなく、(2)や(3)のケースでも、学校関係者は留学生を日本人学生と同じように
早くから学校主催の就職ガイダンスや業界研究、模擬面接に積極的に参加させる等、前倒しのスケジュ
ールでサポートしていく必要があるでしょう。
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7.就職活動における日本語能力
■ビジネスレベルとは?
日本企業が留学生を採用する際に求める日本語能力について「ビジネスレベル」という言葉がよく使
われます。「人文知識・国際業務」の在留資格を得て日本で就職する人だけではなく、最近は技術系職種
であっても、日本で学んだ留学生を採用する際には「ビジネスレベルの日本語力」を採用条件とする傾
向が強くなっています。では「ビジネスレベル」というのは、具体的にどれぐらいのレベルなのでしょ
うか。それを知るためにはまず、企業側が留学生に求めている日本語レベルについて知る必要がありま
す。
■企業の要求は「報告書・ビジネス文書作成」レベル
独立行政法人労働政策研究・研修機構が厚生労働省の委託を受け、平成20年に全国の企業3,018社を
対象に行った「日本企業における留学生の就労に関する調査」によると、留学生が仕事をする上で求め
られる日本語能力のレベルは、「報告書やビジネスレターなどの文書を作成できるレベル」とする企業
が最も多く回答企業の688%を占めました。さらに「ビジネス上のやり取りができるレベル」程度を求
めている企業の262%を加えると全体の95%に達し、「簡単な日常会話ができる(3.1%)」程度のレベルで
は満足しない企業側の考え方が浮き彫りになっています。この調査結果を、企業の業種別、及び留学生
に期待する将来の役割別に見ると、顧客とビジネス上のやり取りができる程度の日本語能力を入社段階
から要求する企業の割合が高いのは、卸売・小売業、飲食店、宿泊業、その他サービス等、いわゆるサ
ービス関連業であることがわかります。一方で、報告書やビジネスレター等の文書作成ができるレベル
のより高度な日本語能力を求める企業の割合は、情報通信業、製造業において多くなっています。次に
期待する将来の役割を見ると、留学生に高度な役割を期待する企業ほど求める日本語能力が高くなる傾
向があり、特に報告書やビジネス文書を作成できるハイレベルな日本語能力を求められているのが、
「会
社・会社グループ全体の経営を担う経営幹部」や「海外の現地法人の経営幹部」であることは注目に値
します。
■採用留学生の9割が「ビジネス上のやり取りが可能なレベル」
一方で、同調査では企業で働く元留学生902人に、現在の仕事上必要な日本語のレベルについて尋ね
た設問もあります。それによると、
「報告書やビジネスレターなどの文書を作成できるレベル」が75.7%
と最も多く、「ビジネス上のやり取りができるレベル」の20.4%を合わせると、96.1%が日常業務でビ
ジネス上のやり取り以上のレベルが必要としています。また元留学生の日本語能力を「学校卒業時」と
「現在(就職中)」で比較した調査では、学校卒業の時点で回答者の639%が「日本語の読み書きが十分
にできる(日本語能力試験N1程度)」レベルだったとしており、さらにハイレベルの「母国語と同じく
らい日本語ができる」レベルの14.7%と合わせると、実に8割近くが、学校卒業の時点でかなりレベル
の高い日本語能力を持っていたことが分かります。逆に「日本語の読み書きがまあまあできる(日本語
能力試験N2程度)」レベルで採用された人はわずか17.4%にとどまっています。上記の調査結果から、
留学生の採用企業、そして実際に企業で働いている元留学生の双方が、入社の時点で少なくともビジネ
ス上のやり取りができる以上の日本語レベルが必要との考え方を持っていることが分かります。逆に言
えば、日常会話や読み書きが多少できる程度のレベルでは日本企業で働く上では不十分であり、就職活
動においても評価の対象とはなりにくいと言っても良いでしょう。
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■技術系職種でも日本語力が採用の絶対条件に
もちろん企業の中には職務上、あまり高度な日本語を必要とせず、例えば英語ができれば日本語は「日
常会話程度」で構わないという企業も一部にはありますが、あくまでも例外的な存在と言えます。例え
ばIT、電気電子、コンテンツ系(ゲーム、CG、デザイン等)等、「技術」の在留資格で日本における
就労が認められている職種では、一時期、日本語力は「日常会話レベル」でも職務上問題がないと言わ
れた時期がありました。しかしながら2008年のリーマン・ショックとIT構造不況の到来以降、例えば
IT業界においては人材需要が大きく減少し、採用の厳選化が進んだために、生半可な日本語力では採
用されにくくなってきているのが現状です。また、そもそも技術開発の現場ではプロジェクト単位ある
いはチーム単位で作業に当たったり、直接顧客の要望を聞きながら仕事を進める客先常駐型の業務が多
く、様々な人とコミュニケーションをしながらスムーズに意思疎通ができることが職務上不可欠な要素
となってきます。したがって、日本で就職を希望する場合には少なくとも「日本語の読み書きが十分に
できる」ことに加え、「ビジネス上のやり取りができるレベル」の会話能力が前提条件となることを留
学生に伝え、入学時からしっかりと日本語能力をレベルアップさせていくことが大切です。
■日本語能力試験のN1取得が目安
では実際に、就職活動における日本語能力を測る指標はあるのでしょうか。日本語の資格試験の中で
は、これまで日本語能力試験とBJTビジネス日本語能力テストが代表的な指標とされてきました。また
これら以外では、J-TESTの結果などを参考としている企業もあります。
上記のうちBJTビジネス日本語能力テストは、ビジネス場面でのコミュニケーション能力を客観的に
測定・評価する試験として一部企業で活用されています。同試験は平成22年11月実施分をもっていっ
たん中止となりましたが、同24年度から新たなスキームによって再開され、年2回(6月及び11月に)
実施されるようになりました。一般的に、日本での就職に際して現在目安とされている日本語レベルは、
日本語能力試験Nl(以前の1級に該当)となります。少なくとも日本語の読み書きが十分にでき、企
業が求めるビジネス上のやり取りができることを証明するには、日本語能力試験N1の合格が望ましい
でしょう。
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8.個別企業ごとの留学生採用条件を把握することの重要性について
日本国内での就職にはビジネスレベルの日本語能力が必要とは言えども、日本語能力試験の合格はあ
くまでも日本語能力を測る1つの目安であり、試験にパスしたからと言って必ず企業に就職できるとい
うものではありません。そもそも希望する業種や職種、企業によって、求められる日本語のレベルは変
わってきますので留学生の就職指導に当たる学校関係者は、留学生が目指す将来の方向性に照らし合わ
せ、就職活動で必要となる日本語能力について事前に細かくチェックすることが必要です。その際は企
業ごとに応募条件を細かく点検し、抽象的な条文や不明な点は企業の人事関係者から直接ヒアリングを
した上で、留学生に個別にアドバイスすることも大切でしょう。実際に、日本企業に就職した元留学生
の中には、志望動機として「母国語や日本語等の語学力を(仕事に)活かしたい」という希望を持つ人
が多い一方で、(独)労働政策研究・研修機構が「留学生が日本で就職する上での障害」について尋ね
た調査では、「企業が留学生に求める日本語能力のレベルが高すぎる」との意見も文科系で9.4%、理
科系で12.2%あり、企業が就職活動に際して求める日本語能力に対して、留学生が戸惑いを感じている
様子が伺えます。学校関係者は留学生の就職指導に当たって、留学生が就職活動において求められる日
本語能力がどの程度なのかについて一般的な傾向を認識しておくと共に、個別業種や企業ごとの条件に
ついてはその都度、詳細を把握し留学生に助言していく姿勢が求められます。
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9.在留資格変更手続き
企業から採用通知・内定通知を受け取っても、それで留学生の就職活動が完了したことにはなりませ
ん。留学生が専門学校を卒業した後、日本企業に就職するに当たっては、「留学」から、就労可能な在
留資格への変更手続き(在留資格変更許可申請)が必要になるからです。学校を卒業した留学生が就労
可能な在留資格は、一部の例外(投資・経営等)を除き、主として「人文知識・国際業務」か「技術」の2資
格の内のいずれかとなります。但し外国人の場合、どんな職種でも日本での就労が可能なわけではなく、
いわゆる単純労働や外国人を雇用する必要性に乏しい職種の場合は、日本での就労を目的とした在留資
格は許可されません。在留資格の許可を受けるために重要なポイントは、就職予定先の企業における職
務内容について①専門性が高い②外国人が従事する必要性が強い、等の要件を満たすことが大前提とな
ります。また特に専門学校の留学生については上記に加え、③専門課程を修了し「専門士」の称号を得
た後、就職先で行う予定の活動内容が「人文知識・国際業務」または「技術」に該当すること、そして
④専門学校の学習内容と就職先の職務内容に何らかの関連性があることが同時に求められますので、注
意が必要です。
以上の基本点を確認の上で、在留資格変更許可申請に必要な書類を準備します。
必要書類には大きく分けて[a]留学生本人が準備・作成するものと、[b]就職先の企業・法人等で準備
してもらうものがあります。学校関係者は、企業・法人から採用内定を得た在籍留学生がこれらの必要書
類をスムーズに準備・取得できるよう、本人や企業の人事担当者及び入国管理局と緊密に連絡を取り合
いながら、サポートする必要があります。
[a]留学生本人が準備・作成する書類
(1)在留資格変更許可申請書(所定のもの)
※申請書は法務省入国管理局のホームページ上より取得が可能です。
http://www.moj.go.jp/ONLINE/IMMIGRATION/16-2.html
(人文知識・国際業務)‐○「人文科学の分野の専門的知識等を必要とする業務に従事すること」
よりアクセス
(技術)一○「自然科学の分野の専門的技術又は知識を必要とする業務に従事すること」よりアクセス
(2)写真(縦4cm×横3cm)1葉
(3)パスポート及び在留カード(又は在留カードとみなされる外国人登録証明書)提示
(4)大学にあっては「学位」、専門学校にあっては「専門士」又は「高度専門士」の証明書
(5)学校の卒業証明書(または卒業見込み証明書)
(6)履歴書
※書式は自由ですが、本人の学歴及び職歴について正確に記載することが求められます。特に申請に係
わる専門知識を要する業務に従事した機関、内容、期間等を明記します。
[b]就職先の企業・法人等で準備してもらうもの
企業・法人側で準備してもらい、申請時に提出の必要がある書類は、就職を予定する企業・法人の規模
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や職種、源泉徴収税額等により、変わってきます。また個別ケースごとに追加書類を求められることが
ありますので、詳細は入国管理局、あるいは就職予定先企業の人事担当者に相談してみると良いでしょ
う。下記に挙げた必要書類は、いずれの企業・法人への申請でも、あらかじめ準備してもらうと申請時
に役に立つものですので、参考にしてください。
(1)就職先での活動内容・労働条件を明らかにする書類
①労働契約を締結する場合:職務内容・報酬など労働条件が明示された書類(雇用契約書等)
②役員等に就任する場合:地位や報酬額などを明らかにする別の書類
(2)就職先の事業内容を明らかにする書類
①勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先・取引実績を含む)等が詳細に記載され
た案内書※会社案内、パンフレット等
②その他、勤務先が作成した①に準じる書類
③登記事項証明書※商業法人登記簿謄本
(3)決算文書の写し(直近年度:賃借対照表、損益計算書を含む)
(4)納税関係証明書(前年分):職員給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの
写し)
(5)その他:雇用理由書、招聰理由書等(適時)
(特配事項)
◇日本で発行される証明書は全て、発行日から3か月以内のものを提出しなければなりません。
◇審査の過程では、上記以外にも参考となる書類の提出を求められることがあります。
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第7章
留学生担当者のためのQ&A
【一般編】
Q1:留学生担当者の設置について
ビジネス系の専門学校です。現在在籍している留学生はいませんが、今後学校として留学生の募集を考
えています。受け入れに当たっては、留学生のために専任の職員を置くことが必ず必要なのでしょう
か?
A:専門学校への留学に係わる在留資格の取得は、当該校に外国人学生の生活指導を担当する常勤の教
職員が置かれている場合のみ認められています。文部科学省通知においても、学内でこうした体制を整
えるよう繰り返し指導が行われていますので、留学生を受け入れる際には専任職員を置くことが、まず
前提条件となります。
Q2:留学生受入研修会について
留学生受け入れに関する専門学校研修会に参カロしたいのですが、どこに問い合わせればよいのでしょう
か?
A:大阪府では、大阪府国際化戦略実行委員会の主催で「留学生受入研修会」を実施していますので、
お問い合わせください。また下記のホームページにて情報やメール相談の機能もありますので、ご活用
ください。
アドレス:http://www.osaka-ryugaku.org/
Q3:留学生の受け入れを開始するに当たり、入国管理局の申請取次者として承認を受けたいのですが、
どういった手続きが必要ですか?
A:申請取次申出書に必要書類を添えて、地方入国管理局に申し出を行います。必要な書類は在職証明
書、経歴書、写真、留学生リスト、学校案内等です。ただ申し出を行う前提として、学内に在留審査関
係事務に精通している職員が在籍していることが前提となります。同事務に精通している職員であるか
否かについては、入国管理局または関係団体が実施した研修会・講習会に参加し且つ出入国管理行政に
携わった経歴を有することが条件となっています。
Q4:入学を希望する外国人で、日本の高等学校を卒業している者がいます。国籍は外国人なのですが、
この場合「留学生」として受け入れるべきなのでしょうか?
A:入管法上「留学生」として扱われるのは、本邦の大学、専門学校等の教育機関において教育を受け
る活動を行うことを目的に在留資格「留学」を取得している者を指します。例えばこの学生が高等学校
在籍時から「留学」の在留資格で本邦に在留している場合は、新しい学校入学時も「留学生」として受
け入れるのが適切ですが、他の在留資格、例えば「永住」や「定住」、「家族滞在」等の在留資格で在
留している者は、入学に際し「留学生」として扱う必要はありません。
Q5:日本の高校で学んでいる外国人生徒が、大学、専門学校への進学を希望しています。この外国人
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は本国で12年の課程を修了していないのですが、来日後日本の高校ですでに1年間を過ごしています。
そのまま受け入れることに問題はありませんか?
A:本国で12年の課程を修了していなくとも、日本の学校教育法1条に定められた学校(幼稚園を除
く1条校)に1年以上通学していれば、大学、専門学校への入学要件をクリアできますので、受け入れ
に問題はありません。
Q6:外国籍であった両親の家族滞在者として来日後、日本国籍に帰化した学生が、大学、専門学校へ
の入学を希望しています。入学要件はどうなるのでしょうか?
A:現在すでに帰化し、日本国籍を有している者であれば「留学生」の扱いにはなりません。日本人と
しての入学条件を満たし、通常の入学試験に合格すれば入学可能です。
Q7:マレーシア出身の留学生で、大学、専門学校への入学を希望している者がいます。この学生は高
等学校まで11年(マレーシアの教育制度は高校まで11年)で卒業し、来日後は日本語教育機関で1
年間学んでいますが、この日本語学校は文部科学省が指定した準備教育課程ではありません。入学は可
能でしょうか?
A:可能です。平成15年の学校教育法施行規則の改正によって大学、専門学校への入学資格の弾力化
が行われ、海外における12年間の学校教育などの基本的条件を満たしていない場合でも、各学校が個
別審査を行い、日本の高等学校卒業に準じる学力があると判断されれば、受け入れは可能です。ただ入
学後にきちんと授業についてこれるかどうか、日本語力等を事前にきちんと見極めたえで受け入れるこ
とが求められます。
Q8:現在、日本での就労に係わる在留資格(人文知識・国際業務)を有し日本企業で働いている外国
人から、大学、専門学校の通信課程に入学したいとの問い合わせがありました。入学は認められるので
しょうか?
A:入学させても問題ありません。但し本人が引き続き「人文知識・国際業務」の在留資格で認められ
た就労に係わる活動を主たる在留目的とし、継続して同活動を行っていることが条件となります。もし
日本の専門学校夜間部や通信課程で学ぶことを主たる目的とする場合は、外国人の在留(在留資格「留
学」の取得)は認められていません。
【編入学】
Q9:日本語学校に在学中の留学生から「母国で4年制の大学を卒業しているので、専門学校(2年課
程)の2年次に編入学できるか」との問い合わせがありました。編入を認めることは可能でしょうか?
A:専門学校の1年次で本来修得すべき内容が、母国の大学在籍時に履修していた科目や取得済みの単
位で代替できるかどうかを個別に判断した上で、条件を満たしている場合は、各専門学校の判断により
2年次に編入学させることが可能です。但し、本人に渡す合格通知書や入学許可証にはその旨を明記し、
入国管理局への報告時にも、当該学生が2年次編入であり、1年間で卒業することを伝えておいた方が
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良いでしょう。
【受験・入学式等を目的とした来日】
Q10:(1)海外の入学希望者で、すでに日本語能力賦験2級に合格し応募条件を満たしているので、
直接大学、専門学校を受験したいという者がいます。学校としてはこの入学希望者の出身国で入学試験
を行っていないため、受験のために本人に来日してもらうことは可能ですか?またその場合はどういっ
た手続きが必要でしょうか?
(2)大学、専門学校の入学式に、新入留学生の両親が参加したいと言ってきています。こういった目
的でも訪日ビザを申請できるのでしょうか?
A:(1)(2)とも可能です。どちらのケースも、「短期滞在」(在留期間は15日、30日、また
は90日)の入国ビザを申請する必要があります。対象者の出身国の日本国大使館か総領事館(中国の
場合は現地代理機関)でビザの申請手続きを行ってください。なお、卒業式に親族が出席する場合も手
続きは同様です。
【入学までのインターバル】
Q11:日本語学校からの4月入学予定者で、ちょうど3月初めに在留期間が満了を迎え、在留期間更
新申請の手続きを行いましたが、入学式の時期になってもまだ更新許可の連絡がありません。入学時点
で「留学」の在留資格を交付されていなければ、入学を認めるべきではないのでしょうか?
A:現在この学生は「更新申請中」という扱いで本邦に在留していることになり、すでに入国管理局に
在留期間更新を申請中ですので、更新が認められるという仮定のもと、入学させることは可能です。し
かし、何らかの理由により最終的に在留期間更新が認められなかった場合は、その時点で「帰国準備」を
目的とした「特定活動」の在留資格に変更等することになり、最終的には学校の責任において帰国指導
をしなければならなくなりますので注意が必要です。
Q12:大学、専門学校への入学予定者で、所属していた日本語学校を3月初めに卒業直後、現在持っ
ている在留期間が満了を迎える者がいます。大学、専門学校への入学までにはまだ1か月ほどインター
バルがあるのですが、どのような手続きをすれば良いでしょうか?
A:在留期間が期限を迎える前に、入国管理局で在留期間更新許可申請を行うことができます。ただ在
留期間を一日でも過ぎてしまったら、この手続きができなくなりますので、十分に注意するよう本人に
徹底しておいた方が良いでしょう。
Q13:9月に大学を途中退学した留学生が、専門学校への入学を希望しています。本人の在留期間は
まだ1年以上あるので、学校としても4月の入学を許可する予定です。現在10月で、本人はこのまま
日本に残ることを希望しているのですが、問題はないでしょうか?
A:2つの点で問題があります。第1に、本邦に在留する外国人は現に有する在留資格に係わる活動を
継続して3か月以上行わない場合は、在留資格取消の対象となるという点です。上記のケースでは9月
に大学を退学後、専門学校に入学する翌年4月まで、留学生として教育機関に所属し勉学に携わる活動
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を3か月以上行わないことになりますので、これは入管法上認められません。第2に、「留学」の在留資
格を持ち日本に在留している外国人は、所属していた教育機関を退学・中退した場合、その時点から資格
外活動を行うことが一切認められなくなるため、経済的に日本での生活を維持していけるのかという問
題が生じます。例えば上記のケースで退学から入学までのインターバルが3か月以内だとしても、大学
を退学後、専門学校に入学するまでの期間に少しでもアルバイトを行っていた場合は、退去強制手続き
が取られます。ですからまだ在留期間が残っているからといって、退学後も日本に在留し続け、新たな
学校に入学した後で在留期間の更新手続きを行おうとしても、簡単には認められないということを念頭
に入れておく必要があります。どうしてもやむを得ない事情がある場合には事前に入国管理局に相談し、
指示を仰ぐ必要があります。上記の対応策として最も確実なのは、大学を退学し専門学校への入学が決
まった時点で、いったん本国に帰国し、改めて在留資格の申請手続きを行って再来日・入学するよう指
導することです。
【日本語能力】
Q14:海外からの専門学校(正規課程)入学希望者がいます。事前に確認したところ、日本語能力試
験も日本留学試験も受験しておらず、日本の日本語学校における学習歴もありません。書類で判断する
限りでは、日本語の読み書きはきちんとできるようです。入学を認めても問題はないでしょうか?
A:提出された書類だけで「読み書きができる」と判断するのはいささか軽率かもしれません。日本の
法令上(入管法第7条第1項第2号の基準を定める省令)は専門学校において教育を受けるようとする
場合、
(a)法務大臣が告示をもって定める日本語教育機関において6か月以上の日本語教育を受けた者
(b)専門学校において教育を受けるに足りる日本語能力を試験により証明された者
(c)学校教育法第1条に規定する日本の学校で1年以上の教育を受けた者、のいずれかの条件を満たさ
なくては「留学」の在留資格は交付されません。したがって上記のケースでは、来日前、本国にいる間
に日本語能力試験(N1またはN2)を受験するか、まずは日本国内の日本語教育機関に入学し日本語
を勉強してから専門学校入学を目指すよう薦めた方が良いでしょう。
Q15:中国から日本の高校に留学し1年間学んだ留学生で、専門学校への入学を希望している者がい
ます。この学生は日本語の読み書きができますが、日本語能力試験を受験していません。入学を認める
べきでしょうか?
A:日本語能力試験等を受験していなくても、日本の学校教育法1条に規定する学校(幼稚園を除く-
条校)で1年以上の教育を受けた者であれば、入学資格が発生しますので、このケースでは受け入れて
も問題ありません。
【保証人】
Q16:本学では入学時に新入学生全員に日本国内の保証人を求めてきましたが、留学生の場合、日本
国内に知り合いがいなかったり、いても保証人になってもらえない者が多く、制度廃止の要望が非常に
強いため学内規則の変更を検討しています。保証人制度をなくしても、留学生の受け入れ上は問題ない
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のでしょうか?またなくした場合の代替策としてどのような方法があるでしょうか?
A:一昔前には留学生が日本への留学を申請する時点で保証人が必要とされた時代がありましたが、す
でにこの制度は廃止されており、入国管理局も在留資格申請の必要書類として保証人に関するものは要
求していません。したがって現在留学生に保証人を求めているケースの多くは、学校が授業料等の支弁
者として独自に要求しているか、あるいは留学生がマンションやアパート等を賃貸する場合の連帯保証
人として必要な場合です。ただ授業料の支弁者とは言っても、現実には学費の支払いが滞ったからと言
って必ずしも書類上の経費支弁者が肩代わりするわけではなく、実態は便宜的なものにすぎません。し
たがって留学生の入学時の心理的な負担を軽減するためにも、「保証人」ではなく、緊急時の連絡先と
しての「連絡人」を求める方が理にかなっていると言えるでしょう。
【経費支弁能力】
Q17:日本語学校からの入学希望者に対し、経費支弁能力の裏付けを取るため本国からの送金記録を
求めたところ「日本語学校の長期休暇で帰国するたびに、当面の留学費用や生活費を親族から現金で手
渡され、日本に持ち込んでいたので、送金証明書等の書類が提出できない」と言っています。どのよう
に対応すべきですか?
A:海外送金を裏付ける書類が出せない場合は、代替書類として①本人の預金通帳コピーや日本語学校
在学時のアルバイト給与明細②本国の両親の所得が証明できる書類や納税証明書、銀行の預金残高証Ⅲ
猫、企業等における役職等が明記された在籍証|リ掴③自筆の経費支弁計画書、等の提出を求め、支弁能
力を総合的にチェックする必要があります。もし入学後の学費や生活費の支弁能力に相当の疑問がある
場合や、上記の提出書類を出し渋る学生に対しては、特に慎重な審査を期すことが求められます。また
日本人国時に持ち込む現金については、一定額を超えると税関での申告が必要となりますので、むやみ
に大金を持ち込まないよう釘をさしておく必要があるでしょう。そもそも経費支弁を証明する書類につ
いては入学後の在留期間更新許可申請の際にも求められることがありますので、普段から公的な金融機
関を利用して送金記録を残すよう、学生を指導しておくべきです。
【兵役】
Q18:日本語学校に在籍中の韓国人留学生が、本来は1年後に帰国し兵役に就くことになっていたの
ですが、最近日本の大学、専門学校への入学希望となり、できることならこのまま日本にとどまって大
学、専門学校へ入学することを希望しています。可能でしょうか?
A:韓国の場合は兵役制度があり、満19歳以上の健康な男子に2年2カ月以上の軍隊生活が義務づけ
られていますが、兵役前の男子学生が海外の大学や専門学校に入学が決定した場合、韓国内にある兵務
庁に申請し許可されれば、その期間は入隊が延期されることになっています。
一方で、同じく満20歳以上の男子に1年の兵役が課されている台湾出身者の場合は、原則として兵役
を終えた後でなければ海外留学は難しいとされており、兵役年齢の前に海外へ留学しても、夏休みに一
次帰国したところ兵役を求められ次回の出国が認められなかった前例があります。ただ台湾では201
4年に現行の徴兵制が廃止される予定ですので、今後留学に伴う兵役負担は大幅に軽減される可能性が
あります。
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【他の在留資格から「留学」への変更】
Q19:現在、ワーキングホリデーで来日中の外国人が、大学、専門学校への入学を希望しています。
日本語能力試験N2に合格しており、まだ「特定活動」の在留期間が残っています。そのまま日本国内
に残り、入学することは可能でしょうか?
A:ワーキングホリデー制度は、日本が特定国・地域との間で行っている青少年交流プログラムであり、
同制度を使って来日した場合の日本滞在期間は1年間と定められていて、終了後は帰国するのが原則と
なっています。しかし、もし在留中に大学、専門学校の入学試験に合格した場合は、大学、専門学校の
入学許可書等、「留学」の在留資格取得に必要な書類を準備し在留資格変更許可申請を行うことが可能
です。ただ、在留期間内に更新許可が間に合わない場合は、いったん帰国してから改めて留学ビザの申
請手続きを行った方が確実と思われます。なお、該当者が韓国、豪州、ニュージーランド、ドイツ、カ
ナダ以外の国・地域から来日している場合は、国家間(あるいは国・地域間)の取り決めによりワーキ
ングホリデーから「留学」への在留資格変更が認められないケースがあります。例えば、香港や台湾の
出身者は変更が一切認められていませんので、日本の学校へ入学を希望する場合もいったんは帰国する
必要があります。
Q20:観光ビザで来日中の外国人が大学、専門学校を受験し合格した場合は、帰国せずに在留資格の
変更が可能ですか?
A:このケースでは、基本的に日本在留中の在留資格更新は認められていませんので、いったん帰国後
に再度、留学手続きを行うことになります。まず日本で「留学」の在留資格認定証明書を申請・取得し
た後、現地の日本国大使館又は総領事館で入国査証を申請し、許可されてから再来日するよう指導しま
しょう。但し、もし大学、専門学校への入学時期が直後に迫っている場合は、個別に在留資格の変更許
可申請が可能な場合もありますので、入国管理局に相談してみると良いでしょう。
【通学定期券】
Q21:「家族滞在」や「日本人の配偶者等」の在留資格で在留している外国人が、大学、専門学校へ
の入学を希望しています。このような場合、通学定期券(学割)の対象となるのでしょうか?
A:例えばJR東日本を例に取ると、通学定期券(学割)の対象基準は「学校教育法に基づいて設置さ
れた学校」であることとされており、各学校からの申請を受け個別に審査の上で対象校を決定していま
す。したがって大学、専門学校の正規課程で学ぶ学生であれば、在留資格の種類とは関わりなく「日本
人の配偶者等」でも「家族滞在」でも、基本的に学割の対象となります。ただ鉄道会社によっては若干
扱いが異なるケースがありますので、詳しいことは、利用する会社に直接問い合わせてみると良いでし
ょう。
【奨学金の支給と在留資格】
Q22:最近、「永住者」や「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」といった、「留学」
以外の在留資格を有する者が、大学、専門学校入学に際して「留学」の在留資格でなければ奨学金を申
請できないとの理由から、在留資格の変更を申し立てるケースが見受けられます。どう対応したら良い
- 77 -
でしょうか?
A:「留学」等の在留資格に比べると、日本での活動内容に規制が少なく安定した身分にあるこれらの
在留資格所持者が、その安定した身分や地位を失ってまで、在留資格を「留学」等に変更するというこ
とは、基本的に認められていません。また仮に変更が認められた場合でも、専門学校を卒業時点で前の
安定した在留資格に戻れるという保証はありませんので、こうした申し入れがあった場合は、学生が一
時的な理由で安易に在留資格を変更し、後で不利益をこうむることがないよう、きちんと指導する必要
があります。
【学費の返還】
Q23:大学、専門学校への入学を予定していた者が、在留資格申請の結果、不許可となりました。こ
の学生はすでに入学金と授業料を支払い済みです。学校としてはどこまで返還すべきなのでしょうか?
A:入学を辞退した場合は、納付された授業料を全額返還することが文部科学省の通達で定められてい
ます。一般的に、日本人学生の場合は入学前までに入学を辞退した場合は入学金を除いた授業料を返還
することとされていますが、外国人留学生の場合は日本における在留資格が取得できなければ、入学す
ること自体が不可能となってしまいます。したがってこうしたケースでは、留学予定者に入学金と授業
料の全額を返還している学校が多いようです。いずれにしても後でトラブルにならないよう、学費の返
還規定を募集要項にしっかりと明記しておくことが重要となります。
【資格外活動(アルバイト、企業実習)】
Q24:現在、入国管理局に在留期間更新を申請中の留学生が新たにアルバイトを希望していますが、
この学生は以前に資格外活動許可を取得していません。申請結果が出る前に資格外活動許可も申請する
ことはできますか?
A:できません。資格外活動の申請はあくまでも在留資格を有していることが前提となります。本邦に
おける在留資格が許可された後で、改めて資格外活動許可申請を行ってください。
Q25:在学中の留学生が、資格外活動許可を取得した後で転居しました。この場合、改めて資格外活
動許可を取得し直すなどの手続きが必要でしょうか?
A:転居した場合、資格外活動許可上の届出や再取得の手続きは必要ありません。ただ、移転した日か
ら14日以内に、新住居地のある市区町村に在留カードを持参し、届け出なければなりません。
Q26:資格外活動許可を取得した留学生のアルバイト先が変わりました。入国管理局への再申請や届
出が必要なのでしょうか?
A:在留資格「留学」の資格外活動として認められている活動内容は、特定のアルバイト先等に限定さ
れずに許可される「包括的許可」であることが一般的です。したがって留学生のアルバイト先が変更に
なっても、その都度届け出る必要はありません。
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Q27:大学、専門学校に入学予定の留学生で、以前日本語学校に在籍していた時に取得した資格外活
動許可の有効期限がまだ残っている者がおり、大学、専門学校入学後もアルバイトを希望しています。
こうした場合、新たに手続きが必要ですか?
A:2010年7月1日以前までは、留学生の所属教育機関に変更(日本語学校から大学、専門学校へ進学
等)があった場合、改めて資格外活動許可の申請をし直す必要がありましたが、同日以降はこの手続き
が不要になりました。但し、なおも許可された有効な在留期間と資格外活動期間を有していることが前
提となります。
Q28:在学中の留学生で、海外からスニーカーを購入しインターネットで販売するネットシヨツプを
運営したいという者がいます。このような場合は資格外活動に該当するのでしょうか?
A:本人が上記の活動を通じ報酬を得ることになりますので、資格外活動許可の申請を行うことが必要
です。ただこの類の活動は、通常のアルバイト先で勤務する場合とは異なり、勤務時間の確認がしづら
い面があるので、入管法で決められた制限時間数(1週28時間以内)を厳守して働くということを立証
できる資料を申請時に提出しなければ、資格外活動が許可されない可能性もあります。まずは入国管理
局に事情を話し、相談してみると良いでしょう。
Q29:留学生が企業でインターンシップを行う際に、-部報酬が支払われることになりました。資格
外活動許可の申請が必要でしょうか?
A:05のケースと同様に、報酬が発生する場合には金額の大小に関わらず、資格外活動許可を申請す
る必要があります。インターンシップが始まる前までに入国管理局に申請し許可を受けて下さい。
【資格外活動(アルバイト、企業実習)】
Q30:入管法が変わり、日本上陸時に出入国港において資格外活動許可の申請ができるようになった
と聞きました。留学生の配偶者が「家族滞在」の在留資格を得て新たに入国する場合も、空港で申請が
可能ですか?
A:できません。日本入国時に上陸許可と同時に資格外活動許可の申請が可能なのは、在留資格「留学」
の身分で新規に入国するケースのみです。これは留学生の場合、アルバイトをしながら勉学に励むこと
が一般的と考えられており、受け入れの円滑化につながる効果が期待できるからです。「家族滞在」の身
分で入国する方が資格外活動を希望する場合は、入国後、改めて最寄りの入国管理局で所定の申請手続
きを行ってください。
Q31:日本人の学生でアルバイトをしている場合には「勤労学生控除」と呼ばれる所得控除制度があ
りますが、この制度は留学生には適用されないのでしょうか?
A:留学生にも適用されます。但し、留学生の在籍している専門学校が所定の条件をクリアしており、
且つアルバイトの年間給与収入総額が一定額以下であることが条件となります。
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Q32:在籍している留学生の-人が、資格外活動許可で決められた所定の時間をわずかに超過してア
ルバイトしていたために、在留期間の更新許可が認められませんでした。留学生によれば就労先の店舗
が人手不足で、約束した時間を超えて働くよう、店主に強く言われたためにやむを得ず働いていたとの
ことです。この学生は在学態度が非常に真面目で、授業の出席率も100%に近く、しかも次年度は卒業
を控えていました。本人は今回のことを大変反省しており、引き続き日本での勉学を希望していますが、
何か方法はないのでしょうか?
A:学校での在学状況がいかに良好であっても、またどのような特別な事情があるにせよ、入管法で定
められたアルバイトの28時間枠を少しでもオーバーしている場合は、在留状況が不良とみなされ更新審
査の結果に影響が及ぶことは避けられません。通常、個別留学生の資格外活動について、入国管理局か
ら法令に違反していると判断された場合には、出国準備を目的とした在留へと移行し期限内の帰国を求
められるため、その学生が引き続き日本で留学生活を継続することは難しくなります。ただ、過去には
こうしたケースで、本国にいったん帰国後に学校長の推薦状と本人の釈明文を書面で提出し、在留認定
からやり直して復学を許可された実例はあるようです。ただこれは極めてレアなケースであり、あくま
でも例外的な措置と考えるべきです。改正入管法の施行後は在留カード上に資格外活動の許可内容が記
載されるようになりましたので、留学生を受け入れている学校では、在籍留学生のアルバイト実態につ
いて正確に把握し、所定の制限時間を超えてアルバイトすることがないよう留学生を徹底指導すること
が求められます。
【住居探しと保証人】
Q33:新たに入学してきた留学生が、マンションに入居時の賃貸契約に際し、学校が保証人になるこ
とを求めてきました。どのように対応したらよいでしょうか?
A:学校の中には、学校が機関保証という形でマンションやアパート等の賃貸契約時に、保証人を引き
受けるところもあります。基本的には各校の方針に基づいて、保証人を引き受けるか否かを決めること
になりますが、もし学校として機関保証が難しい場合は、公益財団法人日本国際教育支援協会の「留学
生住宅総合補償」制度の協力校に加入し、留学生に保険加入してもらうことを条件に学校が保証人を引
き受ける方法があります。同制度は協力校の入学者または入学予定者が利用でき、毎年決められた保険
料を支払うことにより、家賃の未払いや借用戸室の失火等、万一の事態に補償金が支払われる仕組みと
なっていますので、学校が保証人を引き受けるリスクを軽減することが可能です。制度の詳細は下記の
同協会ホームページを参照下さい。※公益財団法人日本国際教育支援協会
http://www.jees.or.jp/index.htm
Q34:新入学の留学生が引っ越し先のアパートを探していますが、外国人という理由で入居を断られ
てしまいがちです。留学生の住宅探しに、学校としてどのようなサポートをしたら良いでしょうか?
A:Q33のケースと同様に、「留学生住宅総合補償」の協力校となることにより学校が機関保証を引き
受けた上で、留学生の入居を認めるよう家主に働きかけるのも一案ですが、最近は民間の不動産会社で
外国人でも入居可能な物件や保証人不要の物件を紹介している例が増えていますので、インターネット
や留学生向けの媒体等で該当案件を調べてみると良いでしょう。また学校側が近隣にある不動産会社と
提携し、留学生向けの賃貸物件を直接紹介してもらう方法もあります。
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【家族滞在・親族訪問】
Q35:在学中の留学生の中に、「家族滞在」で妻を日本に呼ぶことを希望している者がいます。申請
手続きはどうすれば良いのでしょうか?また「家族滞在」の在留資格を認められた場合、日本でアルバ
イトをすることはできますか?
A:留学生が「家族滞在」で配偶者や子を招へいし扶養する場合、手続き上は、まず日本の入国管理局
に在留資格認定証明書の交付申請を行い、交付後に出身国の日本国大使館または総領事館(中国の場合
は代理機関)で「家族滞在」査証(ビザ)の申請手続きをするという手順になります。
日本側で行う手続きとしては、所定の在留資格認定証明書交付申請書、写真、返信用封筒、扶養者(留
学生)の在留カード(在留カードとみなされる外国人登録証明書を含む)又はパスポートの写し以外に
下記の書類を添えて入国管理局に申請する必要があります。
(a)申請人と扶養者(留学生)の身分関係を証明する文書
※夫婦や親子の関係を証明する本国の戸籍謄本、婚姻届受理証明書、結婚・出生証明書等のうち、いず
れか。
(b)扶養者(留学生)名義の預金残高証明書、又は奨学金給付に関する証明書(給付金額と給付期間
を明示したもの)
(c)その他、必要な書類
※審査の過程で上記以外の資料を求められる場合があります。
※「家族滞在」の在留資格認定証明書交付申請に必要な書類については下記・入国管理局のホームペー
ジにアクセス下さい。
http://www.moj.go.jp/ONLINE/IMMIGRATION/ZAIRYU_NINTEI/zairyu_nintei10_19.html
なお、在留資格「家族滞在」を取得した者については、来日後に資格外活動許可申請を行い許可されれ
ば、週28時間以内の範囲でアルバイト等、報酬を受ける活動に従事することが可能です。この場合も留
学生と同様に、就労先を特定することなく認められる包括的許可の申請を行うのが一般的です。
Q36:入学したばかりの留学生が、日本での生活に不安があるため、在学期間中は両親と日本で一緒
に暮らすことを希望しています。可能でしょうか?
A:本人の配偶者か子女であれば、同居目的で日本に在留するための在留資格「家族滞在」を申請する
ことが可能ですが、両親の場合等は「家族滞在」は認められていませんので、在学中の長期間に渡り両
親と日本で同居することはできません。留学生の両親の来日が可能なのは、短期の親族・知人訪問を目
的に、在外公館に「短期滞在」ビザの申請を行う方法です。この場合は、申請が許可されれば最長90日
まで本邦での在留が認められますが、来日後の在留期間更新は不可となっていますので、90日以内に
本国へ帰る必要があります。
Q37:在学中の留学生で、本国の両親が親族・知人訪問を目的とする「短期滞在」の訪日ビザを申請
予定です。申請に必要な手続きについて教えてください。
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A:親族・知人訪問を目的とする「短期滞在」ビザを申請する場合は、出身国の日本国大使館または総
領事館でビザ申請の手続きを行いますが、申請に際しては日本側で招聰人(留学生)があらかじめ用意
しなければならない書類と、本国で申請者自身が準備する書類があります。必要な書類は、ビザの種類
(-次有効か数次有効か)や申請者の国籍によって異なります。例えば中国籍の留学生が申請を行う場
合、日本側で用意する書類の中には身元保証書が含まれており、あらかじめ日本国内の身元保証人が必
要となっています。日本国内にいる外国人で保証人となれるのは、在留期間3年を有し在留中の者か「永
住者」「日本人の配偶者等」「定住者」等に限定されています。したがって招へい人である留学生自身が、
身元保証人となることはできませんので注意が必要です(但し国費留学生が親族を招聰する場合は、別
途所定の書類を提出すれば身元保証人が不要となります)。
※例:中国籍留学生の両親等が「短期滞在」ピザ(親族・知人訪問、一次有効)を申請時の必要書類
★日本側で招へい人(留学生)が準備する雷類
招へい理由書、滞在予定表、住民票(世帯全員分で続柄記載があるもの)、在学証明書、有効な在留カ
ート(又は在留カードとみなされる外国人登録識表裏の写し)、渡航目的を裏付ける資料、身元保証人
が用意する提出書類(身元保証書、在職証明書、総所得が記栽された課税証明書・納税証明書・確定申
告控の写しの内1点、住民票く世帯全員分で続柄記載があるもの>)
なお日本側の招へい人が日本で在留資格「留学」を有する留学生で、親族を招へいするにあたって在籍
する教育機関の常勤の教授又は准教授が身元を保証する場合は、身元保証人が用意する提出書類は在職
証明書のみで差し支えありません。
★本国で申請人自身が用意する書類
旅券、写真、査証申請書、戸口簿(中国の戸籍)写し、居住証明書又は暫住証(=在外公館の管轄地域内
に戸籍がない場合のみ)、在日親族(留学生)との関係を証する親族関係公証書
※提出書類は随時変更される可能性があります。
※親族・知人訪問を目的とする「短期滞在」ビザの申請に必要な書類の詳細については下記・外務省の
ホームページにアクセス下さい。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/nagare/tanki.html
【休学・出産】
Q38:在学中の留学生が家庭の事情から休学を申し出てきました。在留資格上、休学は認められるの
でしょうか?また学校での学修時間が足りないことから、翌年改めて1年次から履修させた場合、在留
期間の更新等は認められるのですか?
A:学校に休学の制度があるのなら、学校の判断として日本人学生と同様に認めることは可能です。し
かしながら「休学」というのは外国人の在留管理上、本来は想定されていない事態であり、入国管理局
で休学に伴う在留期間の更新等が認められるか否かは、個別の判断事項となります。まずは休学が決ま
った時点で本人が(できれば学校関係者も同伴で)最寄りの入国管理局へ出向き、休学に至った理由を
担当官に説明し今後の対応について相談することが求められます。その上で、休学後復学までに、在留
資格に必要な手続きについて個別に判断を仰ぐ必要があります。このプロセスを踏まないままでいると、
休学後復学までの期間、在留資格に応じた活動(勉学)を行っていないと判断され、在留期間更新が許
可されなかったり、過去に遡って休学理由を立証する書類の提出を求められることになりますので、注
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意が必要です。なお、休学の期間は資格外活動(アルバイト)をすることは一切禁止されていますし、や
むを得ない理由(病気等)がある場合を除き、原則として日本にそのまま在留していることはできず、
本国へ一時帰国しなければなりません。こうした場合に必要となる手続きについても、個別に入国管理
局から指示を仰ぐよう留学生を指導してください。もし休学中も日本にいなければならない正当な理由
(病気、出産等)がある場合は、その理由を証明できる文書(病院の診断書等)を別途提出する必要があ
ります。
Q39:女子留学生で、同じ学校に在籍している男子留学生と結婚し、出産するため休学を希望してい
る者がいます。本人は母国に帰国せず日本での出産を望んでいますが、どのように対応したら良いでし
ょうか?
A:休学への対応は基本的にQ38と同様ですが、上記のケースでは結婚相手も留学生ということで、
休学後の生活費を含めた経費支弁をどのように考えているのかをきちんと確認する必要があります。加
えて、出産後、復学した場合に子どもの世話を誰が担うのかという問題も考慮しておかなければなりま
せん(本国の両親等を来日させ子どもの面倒を見てもらうことを考える留学生が見受けられますが、現
行制度では親族訪問を目的とする最長3か月の『短期滞在」しか認められていません)。また休学中も本
人が本国に帰国せず日本での在留・出産を希望する場合は、「留学」から「家族滞在」へ在留資格の変
更許可申請を行うよう求められる可能性があります。なお、結婚の手続きそのものは、例えば中国人で
あれば在日中国大使館・総領事館で行うことができますが、日本国内で「家族滞在」への在留資格変更
許可を申請する場合には夫婦であることの立証書類が求められますし、世帯として国民健康保険に加入
する際にも必要となりますので、日本の居住地の市区町村役場にも婚姻届を出しておいた方が良いでし
ょう。ただ結婚と在留資格とは手続き上、全く別の扱いであり、結婚したからと言って休学後の日本で
の在留が必ずしも許可されるとは限りませんので、その点は事前に伝えておくべきです。
【留年・除籍】
Q40:在籍している留学生の-人が進級基準に達しないため、留年させてもう一度、1年生をやり直
させたいと思いますが、可能でしょうか?
A:学校が留年を認めた上で、入国管理局に在留期間更新許可を申請し許可された場合は可能です。た
だ、学校が行う入国管理局への定期報告の際に、留年の事実と理由を記載しておく必要があります。も
し留年理由が、授業への出席率の低さ等である場合には、在留期間更新は許可されないと考えた方が良
いでしょう。
Q41:(1)最近出席率が極端に悪くなった留学生がおり、自宅を訪問したところ、大学受験のため
に一生懸命勉強をしていました。留学生は大学に入学が決まれば専門学校を中退したいが、合格できな
ければその時点で留年し、来年から再度1年生をやり直したいと言っています。どのように対応すれば
良いでしょうか?
(2)入学時から授業への欠席が続いている留学生を注意したところ、アルバイトをしないと学費や生
活費が賄えず、どうしても日本での留学生活を維持できないと主張しています。留学生からは「今年度
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は留年しその間に2年分の学費を稼いで、来年からきちんと学校に通いたい」という相談を受けました
が、留年させることはできますか?
A:どちらのケースも留年を認めることは不適切ですし、在留期間の更新許可申請を行ってもまず認め
られないでしょう。そもそも現在留学生が有している在留資格は、専門学校に通学するためのものであ
り、学校へ通学せずに自宅で受験勉強をしたり、アルバイトに専念するのは、入管法で定められた在留
目的に反する明確な違法行為です。留学生本人に対して、専門学校に通学し勉学を継続しなければ、除
籍処分となり在留資格を喪失して日本にはいられなくなるということを徹底して伝えることが重要で
す。大学への受験準備は現在、専門学校の授業でも行っているところが多いですし、学費や生活費につ
いては本人が入学時に計画・申告していた支弁方法があるはずです。いずれにせよ、留学生とよく話し
合って、まずはきちんと学校へ来るよう指導しなければなりません。
【転校】
Q42:在学中の留学生から、専門学校を12月で中退し大学に転校したいとの相談がありました。現在
学生は翌年3月まで有効な在留期間を有し、すでに大学の入学試験に合格していますが、入学時期は4
月です。学内で審議の上で、転校を認めても問題はありませんか?
A:留学生の転校については、転校を希望する合理的な理由、引き続き他校で勉学を継続していく動機
づけ等を明確に説明できることが求められます。加えて、以前在籍していた学校における成績・出席状
況が良好であることも条件となります。申請に当たって必要な提出書類は、前に在籍していた学校の退
学証明書(現時点でまだ在学中の場合は退学予定証明書か在学証明書)、成績証明書、及び転校先の入
学許可証等です。ただ上記のケースでは12月に退学し翌年4月に転校を希望していますが、この間3か
月以上に渡り、在留資格「留学」に応じた活動を行わないこととなり、在留資格取消の事由が発生しま
すので、こうした形の退学・転校は基本的に認められていません。また退学から転校までのインターバ
ルが3か月以内であっても、この期間の過ごし方について整合性のある説明ができない場合は、転校後
の在留期間更新が認められない可能性があります。ですから、少なくとも転校先(上記の場合は大学)
に入学する直前までは、これまで在籍していた学校(専門学校)で勉学を継続するのが望ましいと思わ
れます。ポイントとなるのは、
「留学」の在留資格に伴う活動をしていない空白期間をつくらないこと、
そして転校時まで切れ目なく勉学を継続させることです。上記のケースでは大学の入学試験に合格した
後も、大学に入学するまでは、前に在籍していた専門学校に管理責任がありますので、少なくとも現在
の年次が修了する3月前後までは、専門学校に在籍し続けるよう指導した方が良いでしょう。
Q43:4月に来日した日本語学校生からの相談で、専門学校を受験し合格したら日本語学校を退学し
たいと言っています。専門学校の入学条件では「日本語教育機関に6か月以上」とありますが、日本語
学校での在籍期間が6か月を経過していれば、途中退学しても問題はないのでしょうか?
A:2つの点で問題があります。まず第1に、専門学校の入学条件は規定上、日本語学校に在籍6か月
以上でクリアできますが、現実には6か月だけの通学では、その後の入国管理局の在留審査は厳しくな
るとみた方が良いでしょう。第2にこれはQ42の転校のケースと同様ですが、仮に6か月で日本語学校
を途中退学した場合、専門学校に入学するまでの間に空白期間が生じ、この間は在留資格に応じた活動
を行わないため、在留資絡取消の対象となってしまいます。またいったん退学してしまうとアルバイト
等の資格外活動は一切不可能となりますので、経済的にも留学生活を維持できなくなる可能性がありま
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す。したがって、専門学校の入学試験に合格したとしても、入学までの期間は日本語学校に在籍し継続
して勉学を続けるよう、指導しなければなりません。
Q44:専門学校に在籍中の留学生で、大学進学を理由に退学を希望している留学生がいます。すでに
大学への入学準備を済ませており、退学後は本国に-時帰国した上で大学への入学時期に合わせて再来
日したいと言っています。こういったケースでは、在留資格上、どのような手続きが必要ですか?また
専門学校の管理責任はどの時点まで問われることになるのでしょうか?
A:留学生が退学の時点でなおも有効な在留期間を有している場合でも、以後は在留資格「留学」に応
じた活動を行わないことになりますので、速やかに帰国させる必要があります。退学する留学生はその
時点から、資格外活動が一切できなくなります。また退学後、一時帰国するまでの管理責任はこれまで
在学していた専門学校側にありますので、本人が在留期限後も日本にとどまっていたり、帰国直前まで
アルバイトに従事したりすることのないよう、退学時点での指導を徹底し、最終的には本国へ帰国する
まで追跡と確認を続ける必要があります。
Q45:在学中の留学生が、日本人と結婚するため、学校を退学することになりました。在留資格の変
更等、どのようにアドバイスすれば良いでしょうか?
A;「留学」から「日本人の配偶者等」へ在留資格の変更許可申請を行うことが必要です。なお、学校
としては、本人の在留資格変更が許可されるまでは管理責任が生じますので、申請結果が出るまで本人
と連絡を取り合い、在留資格変更の事実を最終的に確認することが求められます。
※「日本人の配偶者等」への在留資格変更許可申請に必要な書類については下記・入国管理局のホーム
ページにアクセス下さい。
http://www.moj.go.jp/ONLINE/IMMIGRATION/ZAIRYU_HENKO/zairyu_henko1.html
【卒業・帰国までのインターバル】
Q46:3月に卒業し母国に帰国予定の留学生が、2月20日に在留期限を迎えます。学校の卒業式が3
月10日に行われるのですが、在留資格上の手続きはどうすれば良いでしょうか?
A:原則として、在留期限を迎える前に、帰国準備を目的とした在留資格「短期滞在」への在留資格変
更許可申請を行ってください。但し、もし学校を卒業する3月10日まで引き続きアルバイトを継続し
たい場合は、「短期滞在」の身分では資格外活動が許可されませんので、あらかじめ入管にその旨を申
し出ることで「留学」の在留期間更新(在留期間3月)を申請することが可能です。ただこのケースで
も、アルバイトは学校を卒業すると同時にできなくなりますので、十分に注意が必要です。
【在留期間】
Q47:入国管理局から適正枝(留学生等の在籍管理が適切に行われている学校)の指定を受けている
専門学校(修業年限2年)です。この場合、適正校に入学する留学生は通常、2年(または2年3月)の在
留期間が得られるはずですが、今年度、本校に入学時点で「留学」の在留期間更新許可申請を行った留
学生の中に、1年間しか交付されなかった者がいました。これはどうしてなのでしょうか?
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A:適正校であるからと言って、必ずしも全ての在籍者に一律に同じ在留期間が与えられるわけではあ
りません。例えばその留学生が前に在籍していた日本語教育機関における授業の出席率が基準を下回っ
ていたり、経費支弁能力に問題があったりした場合は、個別申請者ごとの審査内容に基づき、同じ学校
の学生でも全く違う結果が出ることは十分にあり得ます。また改正入管法の施行に伴い、「留学」に付与
される在留期間として「4年3月」「4年」「3年3月」「3年」及び「3月」が新たに加わりましたので、在籍す
る専門学校の修業年限や個別の希望内容、及び申請状況によって在留期間には従来以上に大きな幅が生
じることが想定されます。学校としては、留学生の入学時から個別学生ごとの在籍状況と在留期間(満
了日)をきちんと把握しておくことが求められます。
Q48:在留資格の最長期間が5年になると聞きました。どの在留資格が対象になりますか?留学生も5
年の在留期間がもらえるのでしょうか?
A:改正入管法の施行に伴い、1回で交付される最長の在留期間が5年に伸びたのは「公用」「教授」「芸術」
「宗教」「報道」「投資・経営」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術」「人文知識・国際業務」「企業内
転勤」「技能」「家族滞在」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」及び「定住者」の在留資格です。在留
資格「留学」の場合は、最長4年3月と定められましたので、留学生が5年の在留期間を付与されること
はありません。
Q49:現在「留学」の在留資格で2年3月の在留期間を持っています。改正入管法の施行後は、今持
っている在留期間が自動的に4年3月に延長されるということですか?
A:現有の在留期間が自動的に延長され、最長の在留期間になるという意味ではありません。在留期間
が満了となる前に必ず在留期間更新の申請をしなければなりません。
Q50:
(1)4年制の専門学校に進学する予定ですが、こういう場合は入学時に「4年3月」または「4年」の在
留期間が付与されるのですか?
(2)現在、2年制の専門学校に在籍しています。将来的には大学、大学院に進学し、長期的に学びた
いと考えています。長期の学習計画を提出すれば、4年3月の在留期間をもらうことは可能ですか?
A:
(1)4年3月の在留期間は大学(学部)で学ぶ留学生の利便性を考慮し設けられたものですが、修業
年限4年の専門学校に入学する留学生についても、法的には4年(+3月)の在留期間を交付することが
可能となりました。ただどの在留期間を交付するかは、当該教育機関での在学予定期間をベースに、個
別の申請者の状況や条件を見極めた上で入国管理局が判断することになりますので、同じ教育機関であ
っても必ずしも全員一律に同じ在留期間が付与されるわけではありません。
(2)在留期間の決定に当たっては、現在所属している教育機関に在学を予定する期間がベースとなり
ますので、例えば修業年限2年の専門学校に入学する留学生に、3年や4年の在留期間が付与されること
は原則としてありません。
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【国民健康保険】
Q51:留学生の「家族滞在」で在留している者が、病院に行きたいので国民健康保険に加入したいと
申し出てきています。現在この「家族滞在」者が有する在留期間は半年しかありませんが、加入できま
すか?
A:従来までは外国人が国民健康保険に加入するためには、住居地の市区町村役場で外国人登録をして
おり、且つ日本における在留期間が1年以上であることが条件となっていましたが、改正入管法施行に
伴う国民健康保険法施行規則等の一部改正により、在留期間が3か月を超える在留資格を持ち住民登録
した外国人は、国民健康保険の適用対象となりました。したがって上記のケースでは住居地の市区町村
役場において国民健康保険に加入する手続きを行うことが可能です。但し、同じ在留資格「家族滞在」
でも、在留期間が3月の場合は加入要件を満たしませんので、注意が必要です。
【奨学金】
Q52:留学生が受給対象となる奨学金制度には、どのようなものがありますか?
A:留学生を対象とした奨学金には、日本政府(文部科学省)による国費奨学金制度や、独立行政法人
日本学生支援機構(JASSO)の私費外国人留学生学習奨励費給付制度があります。またこの他にも、各地
方自治体や関連の国際交流団体、民間団体等が様々な奨学金制度を設けています。独立行政法人日本学
生支援機構が発行している「日本留学奨学金パンフレット」には、奨学金ごとに支給対象や応募資格、
支給内容等、詳細が掲載されていますので、こちらを参考にすると良いでしょう。なお同パンフレット
の掲載内容は、同機構のホームページ上でも閲覧が可能です。
【在留カード】
Q53:留学生が在留カードの有効期限に気付かず、更新しないまま、期限切れとなってしまいました。
どうしたら良いのでしょうか?
A:本人が直ちに最寄りの入国管理局に出頭し、有効期間の更新申請について相談してください。なお
在留カードの有効期間更新申請を期間中に行わなかった場合は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金
に処せられることがあります(入管法第71条2)ので、留学生が在籍する専門学校の関係者は、留学生
一人一人の満了期限についてきめ細かく把握し、申請期限が近づいたら更新を忘れないよう個別に注意
を促すことが大切です。
Q54:新規入国者は、空港で在留カードを交付されると聞きました。ならば、すでに日本で「留学」
の在留資格を有している再入国者も、空港で現在所持している外国人登録証明書を在留カードに切り換
えられますか?また在留カードの有効期間の更新申請を空港で受け付けてもらうことは可能でしょう
か?
A:どちらも空港で手続きすることはできません。再入国者は最寄りの入国管理局に出向き、次回の在
留期間更新申請時か、或いは希望する場合はすぐに、在留カードに切り換える手続きをしてください。
また有効期間の更新も、空港を含む出入国港において申請受付は行わない予定です(平成24年7月現在)。
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Q55:留学生が卒業後に日本で就職することになり、在留資格の変更手続きと住居地の変更をしなけ
ればならなくなりました。両方を同時に行いたいのですが、在留カードのシステムでは前者は入国管理
局、後者は市区町村と申請場所が分かれていて面倒です。どちらか一方でまとめて手続きできません
か?
A:在留資格に関する手続きを市区町村で行うことはできませんし、また住居地の変更を入国管理局に
申請することもできません。新制度は日本に中長期で在留する外国人の情報を継続的に管理する制度を
法務大臣の下に構築するという趣旨があり、住居地の届出のみを市区町村で行えるようにしているのは、
外国人の利便性を考慮した例外的な措置だからです。それぞれ所定の場所で手続きを行うようにしてく
ださい。
Q56:中国から来た留学生です。在留カードに配戦される氏名が日本の正字に置き換えられましたが、
その漢字は中国では全く別の意味に使われており、気に入りません。外国人登録証明書に記戦されてい
た簡体字名に変更して欲しいのですが。
A:変更はできません。新たな在留管理制度の下で在留カードに記載される外国人の氏名はアルファベ
ット表記を原則としつつ、漢字の使用を希望する場合は申し出により、当該漢字の氏名を表記(併記)
できることになっていますが、この漢字の範囲は日本の正字をベースとしており、簡体字については日
本工業規格等に規定される正字の範囲の文字に置き換えて表記することが法務省告示によりルール化
されました。したがって在留カードの所持者が希望するからといって、簡体字や他の文字に変更するこ
とは認められません。
Q57:在留カードに記載された日本正字と、パスポート簿に記載された簡体字で氏名の表記文字が異
なっていると、様々な申請手続きの際に同一人であることを証明しづらくなる心配があります。証明方
法はありますか?
A:これから在留カードに切り換える留学生などは、もし希望すれば、在留カード返納の際、外国人登
録証明書に穴あけ処理を行った上で本人に返還することが可能ですので、簡体字で氏名が記載された外
国人登録証明書の同時提示によって同一人であることが証明できます。また法務省に対して簡体字等の
名前が記載された外国人登録原票の開示請求を行うことによっても証明が可能です。ただこれらはいず
れも平成24年7月9日より以前に日本に在留し、外国人登録の手続きをしていた者に限られます。
【再入国許可(みなし再入国許可)】
Q58:留学生で、在留期間更新許可を申請中ですが、在留期限までに申請結果が出ず、現在は特例(在
留期間満了から最大で2か月を経過する日まで引き続き従前の在留資格で在留可)により在留していま
す。しかし親族が急に入院したので本国へ一時帰国しなければならなくなりました。こういったケース
では、みなし再入国で再入国許可を取得せずに出国することはできますか?
A:上記の特例期間も、みなし再入国許可により出国・再入国することが可能です。
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Q59:みなし再入国許可により本国に一時帰国している間に、在留カードを紛失してしまいました。
日本へ戻ってくることはできますか?
A:みなし再入国許可により日本へ再入国する場合、法的には在留カードの所持が要件にはなっていま
せんので、再入国自体は問題ありません。ただ日本へ入国後、直ちに入国管理局に在留カードの紛失を
届け出て、再発行の手続きをとる必要があります。
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