第1部 100000110100110001 100110110001000111 100110110100100011 000011100100100111 100001000001101101 010001100011011000 100001000011000111 101010010011100010 001110110011010011 今こそクライアント・バックアップに取り組もう Windowsが不安定になった,ウイ ときに,トラブルシューティングによ ルが発生する度にシステム管理者やパ ルスやワームによってWindowsのシ って解決するやり方が常に満足できる ソコンに詳しい社員が狩り出されて, ステムを破壊された,パソコンが全く 結果を出すわけではない。テクニック トラブルシューティングに当たってい 起動しなくなった――業務に使用する を覚えておくことは重要だが,それで るのではないだろうか。これではトラ パソコンでこのように深刻なトラブル パソコンが起動できても不安定な場合 ブルシューティングの間はトラブルが が発生した場合,あなたはどう対処し は業務ができない。データを救った 発生したパソコンを利用するユーザー ているだろうか? ら,結局はOSやアプリケーションの だけでなく,対応に当たっている社員 パソコンはもはや業務に欠かせない 再インストール,数十個にも及ぶ修正 まで,本来の業務ができなくなる。 存在であり,それなしには仕事が進ま モジュールの適用などをして元通りに なくなっている。スキルのあるユーザ する時間が必要になる。 重要なデータを喪失する危険性がある ーであれば,まずはトラブルの原因を こうした状況は企業のシステム管理 また,多くの企業で実施しているよ 突き止め,可能であればそれを解消し 者にとって大きな負荷になっている うな標準ソフト環境のイメージをあら てパソコンを元の状態に戻そうとする (図1) 。深刻なソフトウエア障害など かじめCDなどで作成しておく方法で は,一般ユーザーが解決するのは依然 は,障害時に復旧できるのはOSやア として難しい。多くの企業では,トラブ プリケーションの部分だけである。ユー だろう。 しかし,パソコンに障害が発生した ザーが個人で作成してパソコン内に保 存しておいたデータまでは戻らない。 業務に必要なデータ (個人が作成した文 書,メールのデータ, アドレス帳など)が 失われる ●トラブルシューティング ●OSやアプリケーションの 再インストール ●ファイルの復元作業 ―― これらの作業に時間 と労力が奪われる パソコンの中には,場合によっては ファイル・サーバー以上に重要なデー タが詰まっている。取引先とやり取り した電子メール,大事な見積書や報告 書,名刺のデータベースなどが代表的 マシンやデ ータの復旧 まで,社員が本来の業務 に復帰できない だ。これらが失われてしまったら,そ の実害は決して小さくない。 Active Directory環境ならこれら の問題を根本的に解決できる「IntelliMirror *」 という仕組みが既に用意し てある。元々はユーザーがどのパソコ ンを使っても同じ環境で使い続けられ るようにするものだが,ユーザー・デ システム管理者の負担が増加する システム管理者 図1 ●クライアント・バックアップの仕組みがなかったらトラブル時にユーザーとシステム管理者の両方 に多大な負荷がかかる クライアントのシステムやデータをバックアップしていないと,OSが起動しなくなったりファイルが読み出せなくなる ようなトラブルが発生した時に,様々な作業やコストが発生する。それは結果として,システム管理者の負荷を増 大させる。 54 日経Windowsプロ 2004年 6月(no.87) ータやソフト環境をサーバー上に保存 しておけるため,仮に障害が発生して も代替機や新しいマシンですぐ元通り に使い続けられる。しかし,IntelliMirrorを利用するには事前にユーザ 特集 簡単・高速に復旧する ―― 1万円からのクライアント・バックアップ *IntelliMirror 各ユーザーのクライアント環境をサーバ ー側で保持しておき,ユーザーがどのコ ンピュータからログオンしても同様の環 境を再現する機能の総称。大きく分け て3 つの機能で構成されている。1 つ は,ローカル・コンピュータ上のデータを ネットワーク経由で他のマシン上に複製 するフォルダ・リダイレクトや移動ユーザ ー・プロファイルの機能。2つ目は,ロー カル・マシン上のアプリケーションをネ ットワーク経由で保守・更新できるリモ ート・インストール機能。3つ目が,ネット ワーク上のどのマシンにログオンしても, ー認証やネットワークの負荷などをき ちんと計算しておく必要があり,一般 のユーザーにはハードルが高い。 複数世代のバックアップを 少ないストレージ容量で保 持できる 個々のユーザーごとに設定した制限事 項(ポリシー)が引き継げるグループ・ポ リシー機能である。サーバーにWindows 2000 Server/Server 2003,クラ イアントにWindows 2000/XP Professionalの使用と,Active Directoryの 導入が前提になる。 *Windows Storage Server 2003 Windows Server 2003をベースにした ストレージ・アプライアンス専用OS。ボリ ューム・シャドウ・コピー・サービスや仮想 ディスク・サービスといった最新技術を搭 載する。CAL(クライアント・アクセス・ラ イセンス)不要で利用できる。 バックアップ・データはHDD/ 光学ディスク/サーバーなど様々 な場所に保存できる ハードディスク ファイル・サーバー バックアップのユーザー負担は膨大 そこでクライアント・パソコンのト ラブル対策として改めて注目したいの データを短時間で いつでもバックア ップできる CD-R/RW, DVD-RAM/R/RW バックアップ・ データ 障害時にはシステム,アプリ ケーション,データをまとめて 素早く復元できる が「クライアント・バックアップ」であ る。もっとも,こう聞いても多くの読 者は「クライアント・バックアップは正 バックアップ中 もマシンを利用 できる 論だが,現実にはなかなか難しい」 と 思っているだろう。 例えば,これまでのバックアップ・ ソフトは,使用中のファイルについて バックアップ済みの ファイルは随時復元 できる は保存できないものがほとんどだった。 このため,仕事中にバックアップしよ うとしても,その時点で作業中のデー 図2 ●理想的なバックアップ・システム像 最新のバックアップ技術を利用すると,図のようなバックアップ環境が低予算で実現できるようになった。日本IBM のパソコンの場合なら,これらの機能をすべて有するバックアップ・アプリケーションが標準で付属している。 タが保存できないだけでなく,OSや アプリケーションのファイルについて も不完全にしか保存できなかった。き ムやアプリケーション,ユーザー・デ な理想的なバックアップ環境を実現す ちんとバックアップしようと思うと, ータをまとめて瞬時に復活させられ るアプリケーションが標準で搭載され 業務を中断したり毎回の起動時などに る。時間のかかるOSやアプリケーシ ている。2004年2月以降に同社のパソ 実行したりするしかなく,日常的に運 ョンの再インストール作業は不要だ。 コンを購入したユーザーは,追加コス 用するにはユーザーにかかる手間や時 また,システム全体を復元するだけで ト・ゼロか,外付けのハードディスク 間の負担が大きかった。 なく,誤って削除したファイルなど などを購入するだけで,この環境を利 では,どのようになればクライアン も,ユーザーが欲しいときに,すぐに 用できる (詳しくは56ページの別掲記 ト・バックアップは現実的となるだろ 復活させられる。バックアップ/リス 事を参照) 。 う。例えば,図2のような状況が実現 トア作業は容易で,ほとんどの作業が できたらどうだろう。 GUIで実行可能だ。 ユーザーの業務をストップさせるこ となく,データは短時間にいつでもバ もちろん,その他のユーザーでも同 様のことが可能になってきている。サ ード・パーティからも,優れたバック 理想的な環境が低予算で実現可能に アップ・ソフトが次々登場しており, ックアップできる。保存先もハードデ 実は,この理想的とも言えるクライ これらを使えばどのパソコンを使って ィスク,ファイル・サーバー,光学デ アント・バックアップ環境は既に低コ いるユーザーでも,同等かそれに近い ィスクなど場所を選ばない。 ストで実現可能である。例えば日本 ことが可能になってきた。 障害発生時には,OSを含むシステ IBMが販売するパソコンにはこのよう その一方で,バックアップ・データ 55 日経 Windowsプロ 2004 年 6月 (no.87) 理想的なバックアップ環境を 自社PC にいち早く搭載したIBM 日本IBMでは,2004年2月に同社のパソコン向けに新標 準バックアップ・ソフト 「IBM Rescue and Recovery with Rapid Restore(R&R) 」の提供を開始した。これを使えば, 今回の特集で取り上げているような理想のバックアップ環境 が簡単に実現できる。R&Rは,現在販売している同社のパ ソコンが標準搭載しているほか,Windows 2000以降を搭載 している既存IBM製パソコンにも無償で追加できるので,同 社のPCユーザーはぜひともインストールしたい。 R&Rを搭載したパソコンは,Windows起動時にディス ク・ボリューム全体をイメージ・ファイルとして書き出す。一 度バックアップした後は,ボリュームに変更点があった部分 (ブロック) だけを増分バックアップするので,通常時はユー 図A●「IBM Rescue and Recovery with Rapid Restore」の画面 日本IBMのパソコン 「ThinkPad」 「ThinkCentre」の標準バックアップ・ソフト 「IBM Rescue and Recovery with Rapid Restore」 は,システムの復元ツー ルに「WinPE」 を採用した。ユーザーはOSが起動しなくなった場合,ハードデ ィスクの隠し領域に保存されたWinPEでマシンを起動し,GUI操作でシステ ムの復旧ができる。 ザーが意識しないほどバックアップ作業は短時間で済む。 バックアップのイメージは,特殊なファイル・システム・ド 動しない障害の場合も,内蔵ディスクの隠し領域にある ライバを利用して,Windowsのシステムが存在するブート・ 「WinPE」からマシンをブートできるので,リストア作業は パーティションに書き出せる。このため,バックアップのた すべてGUIから実行できる (図A) 。このWinPEにはWebブ めだけに別のパーティションやディスクを用意する必要がな ラウザ「Opera」が含まれており,OSが起動しない状態でも くディスクを効率的に利用できる。もちろんデータ量が多く Webブラウジングが可能である。なお,バックアップした なったら別のハードディスクや記録型CD/DVD,ファイ イメージ・ファイルから個別のファイルを復元することもで ル・サーバーに保存することも可能だ。 きるようになっている。このため,ファイルを誤削除した場 一方,障害が発生した場合は,保存したイメージからボリ ューム全体を書き戻せば素早く復旧できる。Windowsが起 合に,必要なファイルだけを復旧させるといった便利な使い 方も可能だ。 を保存するためのハードディスクや 以下で手に入る。例えば,日本HPの けでなく,障害が発生した場合に高速 NAS(ネットワーク・アタッチト・スト 「HP StorageWorks NAS 1000s モデ にリストアする――という視点を交え レージ)の価格は低下してきており, ル1TB」は同社の直販価格で34万9650 て,これらの方法を比較したい。その 気軽に実現できるようにもなってきて 円(配送料込み) である。こういった低 後に,それぞれの方法を実現する製品 いる。個人のパソコンなら,ソフト以 価格ストレージを使えば,図2のよう や特徴的な部分について解説する。 外に数千∼1万円台の安価な内蔵型ハ な理想的なクライアント・バックアッ 「クライアント・バックアップはユー ードディスクやUSB 2.0接続の外付け プ環境がハードウエア/ソフトウエア ザーの責任」 としているユーザーでも, ハードディスクを導入すればよい。 込みで,1台当たり1万∼2万円台で済 今回の特集を読んで,クライアント・ むようになっている。 バックアップの標準手段をユーザーに 企業ユーザーならば,大容量かつ安 価なNASを利用することで,1人当た 今回の特集では,現時点で可能なク 提示したり,クライアント・バックア りのコストをさらに下げることができ ライアント・バックアップの方法を大 ップ・システムを構築したりするなど る。現在,1TバイトのWindows Stor- きく4種類に分けて提示する。単にパ して,クライアント・バックアップに ソコンのデータをバックアップするだ 取り組んでほしい。 * age Server 2003 搭載NASは50万円 56 日経Windowsプロ 2004年 6月(no.87) 特集 簡単・高速に復旧する ―― 1万円からのクライアント・バックアップ 第2部 100000110100110001 100110110001000111 100110110100100011 000011100100100111 100001000001101101 010001100011011000 100001000011000111 101010010011100010 001110110011010011 目的と予算に応じたバックアップ手法を選択しよう クライアント・バックアップの手法 は,①対象が個人のパソコンか企業の ップ・ソフトを利用したバックアップ イルではなく,記録しているビット列 ――である。 のデータのまま転送するため,バック クライアントか,②バックアップした このうちどの手法を選ぶかは,バッ アップ時点のディスク全体の情報を いデータの更新頻度,③リストアの手 クアップに個人で取り組むのか,企業 OS,アプリケーション,ユーザー・デ 間,④予算――といった条件に合わせ で取り組むのかによって変わってく ータ込みですべて正確にコピーする。 て決定すればよい。 る。個人の場合は比較的簡単で,基本 このイメージ・バックアップは,ト ただし,バックアップの手法は意外 的に予算に応じて選択すればよい。 リストアできる (図5) 。ファイル単位 と多い。そこで今回は,バックアップ の最新の潮流を踏まえて,あらゆるユ ラブルが発生した場合に非常に高速に 個人ユーザーはイメージがお薦め のバックアップのように,OSやサー ーザーが導入可能な4種類のバックア 個人のパソコンなら,まずはイメー ビス・パック,修正モジュールのイン ップ手法を提示する (図3)。①Win- ジ・バックアップを検討してほしい。 ストールなどの作業をせずに,1つの dowsの標準バックアップ機能を使い イメージ・バックアップは,ファイ こなす,②ファイル更新時にファイル ル単位ではなく,ボリューム全体のデ バックアップした時点のディスクの状 をバックアップ,③イメージ・バック ータをイメージ・ファイルに書き出す 態にすぐに書き戻せる。 アップ,④高度な機能をもつバックア 技術だ (図4) 。ディスクの情報をファ ファイルとなっているイメージから, もちろん,イメージ・バックアップ の手法自体は新しいものではない。し かし,従来はDOSから利用するもの なるべく費用をかけない 1 Windows標準機能を使いこなす 標準のバックアップ機能(NTBackupや「ファ イルと設定の転送ウィザード」)を使いこなす がほとんどで,バックアップ時には作 利点:費用がかからない 注意点:OSやアプリケーションも含めたバッ クアップ/リストアには時間がかかる 業を中断する必要があるなど日常的な 個人向け し,最近ではWindowsの起動中にそ 予算1万円台でできる 2 ファイル更新時にバックアップ システムに常駐して,ファイルが更新される 度にバックアップするソフトを使用する 利点:最新のファイルをバックアップできる 注意点:OSやアプリケーションを含めたバッ クアップは原則不可能。別に高速リストア を実現する仕組みを用意する必要がある。 個人向け 「V2i Protector 2.03」 「TrueImage 7.0」 といった増分バックアップが可能なイメージ・ バックアップ・ソフトを使用する 4 高機能なバックアップ・ソフトを利用する 「ARCserve」 「Retrospect」など,バック アップ・ディスクの容量を節約できる企業向け バックアップ・ソフトを使用する のまま実行でき,しかも使用中のファ イルでもバックアップできるのが普通 企業向け になってきている。毎回ディスク全体 を対象とするのではなく,前回からの 予算2万円台でできる 3 イメージ・バックアップ バックアップには使えなかった。しか 利点:バックアップが高速,リストア作業が 簡単 注意点:容量の大きいストレージが必要 個人向け きるようにもなってきて,負担となら 企業向け 利点:バックアップを一元管理できる,ストレ ージ容量を節約できる 注意点:OSやアプリケーションも含めたバッ クアップ/リストアには時間がかかる 変更部分のみを増分でバックアップで ずに日常的に使えるようになった。 お金をかけたくなければファイル単位 企業向け イメージ・バックアップを実現する ソフトは2000∼1万円程度で購入でき 図3●バックアップ・ソリューションの種類 クライアント・バックアップの手法は,上に挙げる4つの手法から予算やシステム要件に合わせて選択する。 「ファ イル更新時にファイルをバックアップ」 という手法は, ミラーリングに似た仕組みで実現する。 「イメージ・バックアッ プ」は,使い勝手のすぐれた新ソフトが次々登場している最近の注目分野だ。 「ARCserve」や「Retrospect」 と いった著名なバックアップ・ソフトも,クライアントPCバックアップ用の機能を備えている (一部オプション) 。 る。しかし,ディスク全体を保存する のが基本のため,バックアップ領域と して元データに近い容量が必要とな 57 日経 Windowsプロ 2004 年 6月 (no.87) ディスク・ボリューム(パ ーティション)全体を 1つのイメージ・ファ イルとして書き出す 変更があったブロックだけ をイメージ・ファイル化する 書き出し *SID Security ID の略。ユーザーやグルー プ,コンピュータのアカウントを識別するた めにWindows NT系列のOSが使用す る固有のID番号。ユーザーがコンピュ ータの資源にアクセスしようとする際には, SIDを照合してアクセス権を判断する。 複数のイメージ・ファ イルからボリューム を復活させる イメージ・ ファイル ディスク・ ボリューム イメージ・バックアップ・ ソフト リストア時 えや追加が必要になることもあろう。 ディスク・ボリューム ファイル バックアップ後にフ ァイルを更新 ファイル・システム・ドライバ ファイルを個別 に読 み 出して, バックアップ・デ ータに書き出す ファイル・バックアップ・ ソフト る。環境によってはディスクの入れ替 バックアップ・ データ 書き出し 図4 ●ファイル・バックアップ とイメージ・バックアップの違い ファイルを個別に読み出してバッ クアップする 「ファイル・バックアッ プ」 に対して, 「イメージ・バックア ップ」 はディスク・ボリューム (パー ティション) のデータを直接読み出 して,1つのファイル (イメージ・フ ァイル) として保存する。 もっと気軽にバックアップを試して みたい個人ユーザーは,①または②の ファイル単位のバックアップを検討し よう。これならば,OSやアプリケー ション以外のユーザー・データなどに 対象を限定することでバックアップの データ量を節約できる。 Windowsの標準バックアップ機能 だけでも,ある程度のバックアップ ● ファイル・バックアップ・ソフト バックアップ時間 Windows標準の「バックアップ」 (NTBackup) は 可 能 だ 。 特 に Windows XP の 17分 NTBackupは,使用中のファイルも リストア時間 およそ2時間 自動システム回復 (ASR)を使った場合 ● 16ビットのイメージ・ 42分 30分 バックアップ時間 バックアップ・ソフト 「Drive Image 2002」 27分 リストア時間 ● 32ビットのイメージ・ バックアップ時間 バックアップ・ソフト 「V2i Protector 2.03」 リストア時間 9分 9分 合計12分 バックアップできるようになった。ま た,Windows XPにある 「ファイルと 設定の転送ウィザード」 というツール CPU:Pentium 4 1.5GHz,メ モリー256Mバイトを搭載する Windows XP Professional マシンにおいて,内蔵HDD上 にある5.5Gバイトのデータ (OS,アプリケーション,データを 含む) を,内蔵HDDの別パー ティションにバックアップした リストアの準備にソフトを起動 するためにかかった時間3分 図5●バックアップ/リストアにかかる時間の違い ファイル・バックアップとイメージ・バックアップを比較すると,従来もリストア時間はイメージ・バックアップが圧倒的 に短かったが,最近ではバックアップ時間もイメージ・バックアップの方が短くなっている。 を使えば,Internet Explorerの設定 といったユーザーの個別設定情報をバ ックアップできるようにもなっている。 しかし,作成するファイルの更新頻 度が多いなら,②の「ファイル更新時 にバックアップ」するツールを使うと いう手法を検討したい。決して新しい 技術ではないが,約3000円のソフト を購入するだけで利用できる。 両者の内容はほぼリアルタイムで同期される これは,バックアップ対象のフォル 1 新規ファイル を追加 バックアップ対象フォルダ ダを常時監視し,ファイルが作成や更 2 ファイルの 追加を検出 バックアップ・ストレージ A B アップするというもの (図6) 。バック C C C 新される度に,そのファイルをバック C A B アップ対象のフォルダは,ほぼリアル タイムでミラーリングされるため,障 害が発生した場合でも,その時点の最 バックアップ・ソフト 3 ファイルをコピー 図6●ファイル更新時にバックアップするソフトの仕組み バックアップ・ソフトの中には,OSのサービスまたは常駐ソフトとして動作して,ファイルの変更を常時監視するこ とによって,ファイルが追加されたり更新されたりすると,即座にバックアップするソフトがある。 58 日経Windowsプロ 2004年 6月(no.87) 新のファイルを救出できる。 ただし,これらのファイル単位のバ ックアップでは,イメージのようにデ 特集 簡単・高速に復旧する ―― 1万円からのクライアント・バックアップ 高速リストアの肝となる「標準」イメージ 作成にはSIDとライセンスに注意 1 ボリューム・ライセンス制度で「Windows XP Professional(アップグレ ード)」を購入し, 「アクティべーションのいらないWindows XPのCD-ROM」 を入手する ファイル単位でのバックアップを選択したユーザーも,イ 2 「アクティべーションのいらないWindows XPのCD-ROM」でOSを再イ ンストール メージ・バックアップを併用することで万が一の際のリスト アが高速になる。例えば,OSやアプリケーションなどバッ 3 必要な修正モジュールやドライバ,アプリケーションをインストール クアップの対象外とした部分についてのイメージをあらかじ め作成しておけば,その部分は瞬時に復旧する。後は,バッ 4 「Sysprep」を実行し,次回起動時にSIDなどを再設定する状態にしておく クアップしておいたファイルを追加で書き戻せばよく,イン ストール作業を繰り返すよりも圧倒的に短時間で済む。 ベンダーの中には「1イメージ当たり40万円」 (日本IBM) で カスタマイズしたイメージを作成するところもあるが,通常 5 イメージ・バックアップ・ソフトを使用して,ディスク・イメージを取得。CD やDVDなどに保存する 図B●自作リカバリーCD 作成の手順 はイメージ・バックアップ・ソフトでユーザーが自作するのが いいだろう。もし,社内でハードやソフトの環境が統一され ているならば,作成したイメージをどのマシンのリストアに も使える 「社内標準」 として共用することも可能である。 「Sysprep *」などを使って,リストア時に新しいSIDを付与 するようにしておかなければならない (図B) 。 ライセンスにも気を付けたい。イメージを作成する元のOS ただし,共用する場合はいくつか注意すべき点がある。作 は,ボリューム・ライセンスの「OSのアップグレード・ライセ 成するのはあくまでハードディスクのイメージなので,サウ ンス」で入手したCDでインストールしておくのが無難だ。プ ンド・カード,ネットワーク・カード,ビデオ・カード,ディ リインストール版のWindowsは,他のマシンに不正コピー スク・コントローラなどの周辺機器は,イメージを作成した されないよう特定のBIOSでしか動かないようになっている PCとなるべく同じなのが望ましい。機器によっては,リス ケースが多いからだ。また,パッケージ版のWindowsは トア後にプラグ&プレイで発見されて標準ドライバで動作す BIOSの問題はないが,ライセンス上は1台のマシンにしか ることもあるが,これは必ずしも保証できない。 インストールできない。しかし,ボリューム・ライセンスの また,そのまま単純にリストアすると,元のマシンとSID * インストールCDなら,既にWindowsのライセンスが買っ が重なってネットワーク上でトラブルが発生する。そのため, てあるマシンに対してOSを再インストールするのに利用し 共用するイメージを作成する際にはマイクロソフトの てもよく,アクティベーションの問題も発生しない。 ィスク全体をすぐに元通りにリストア とはやや異なってくる。もちろん,各 することはできない。OSやサービス・ バックアップ手法の特徴は企業内で使 組織全体でバックアップする場合 パック,修正モジュールのインストー う際と同様だが,その選択基準が単純 は,個別にディスクを用意するより ルといった作業が必要となる。万が一 な単価ではなく,運用面の手間も含め も,全ユーザーが利用できるNASな の際のリストアを高速にするには,復 た全体のコストとなる。 どのサーバーを用意するほうが便利 旧に必要となるサービス・パックや修 正モジュールをあらかじめCD-Rなど やはり問題となることがある。 だ。最近のイメージ・ソフトは,デー 企業では対象クライアント数で異なる タの保存先にファイル・サーバーや に保存して「自分専用のサービス・パッ その場合に最も影響するのが対象ク NASが利用できる。しかし,前述し クCD」を作っておくといった自衛策が ライアントの数だ。企業内でも,基本 たようにイメージのバックアップには 望まれるだろう。 的には個人と同様,リストアが簡単で 容量が必要となり,クライアントが増 一方,企業内でのバックアップ環境 使いやすいイメージ・バックアップが えてくると大きな負担となる。 を考えているユーザーの基準は,個人 お薦めだ。ただし,データの保存先が 例えば,一般的な業務用途のパソコ 59 日経 Windowsプロ 2004 年 6月 (no.87) *Sysprep NT系のOSでマシンごとに固有でなけ ればならないコンピュータ名やセキュリテ ィID(SID) を削除・再設定するツール。 複製ソフトなどで複数のPCにコピーする 時に,コンピュータ名やSIDが重ならな いように使用する。 A バックアップ・ サーバー B D C バックアップ・ ストレージ E 1度バックアップしたファイル は重複して保存しない ンをイメージ・バックアップするには, 「1ユーザー当たり10Gバイトの容量が 必要」 (菱洋エレクトロのシステム情報 機器営業第2本部の青木良行主任) とい クライアント・ エージェント う。このため,500G∼1Tバイトとい クライアント・ エージェント クライアント・ エージェント クライアント・ エージェント う大きなファイル・サーバーを用意し ても,せいぜい50∼100クライアント A B D A B E A B C A B E しかカバーできない。 もちろん,サーバーの台数を増やせ ば対象クライアントの数は増やせる が,そうすると今度は管理が面倒にな クライアントPC クライアントPC クライアントPC クライアントPC 図7●高機能なバックアップ・ソフトが備えるストレージ節約機能 企業向けの高機能なバックアップ・ソフトは,複数のクライアント・パソコンに重複するファイルを1度しかバックア ップしない。 る。そのため,企業内で数百というク ライアントを対象とする場合は,やは 1 マシンに必要なアプリ ケーションをインストール 6 ユーザー・データをバック アップ・データから復元 3 ユーザー・データ を日々バックアップ りファイル単位のバックアップでデー タ量を減らす工夫をしたほうがよい。 システムに障害発生! この場合は,標準機能のNTBackupの使いこなし方をパソコンに詳し データ アプリ OS アプリ OS アプリ OS データ アプリ OS くない社員を含めて教育するのはなか なか難しいだろう。そのため,少なく マシンの「標準環境」 5 保 管して お い た CD/DVDを使って 「 標準環境 」にシス テムを戻す 2 「標準環境」のイメージ をCDやDVDに保存 とも②の「ファイル更新時にバックア ップ」のツールは導入したい。バック アップ対象フォルダとバックアップ先 4 サービス・パックや重要な修正モジュール が登場する度に「標準環境」を更新する のフォルダを指定するといった設定ぐ らいで,すぐにバックアップできる。 企業ユーザーならば,もう1つの④ 図8●ファイル・バックアップでも高速リストアを実現するフロー 必要な修正モジュールやアプリケーションをインストールした状態を,あらかじめ「標準環境」 としてCDやDVD に保存しておき,システムに障害が発生した際にはこのCD/DVDを使って標準環境にすぐに戻れるようにしてお けば,システムを高速にリストアできる。 の専用の高機能なソフトを利用すると いう選択肢もある。これらのソフト は,バックアップ・ジョブを一元管理 てもバックアップしない。また中には, 業ユーザーならば,ファイル・バック できるし,図7のようなストレージ容 ファイルを1Kバイト単位のブロック アップでもリストアが容易である。イ 量を節約する技術が備わっている。 に分割し,あるファイルが更新された メージ・ソフトを購入して,企業が利 例えば,ある部署の従業員が共通し 場合には更新されたブロックだけバッ 用する 「標準ソフト環境」のディスク・ て保存しているファイル(申請書のひ クアップすることで容量を節約するソ イメージをあらかじめCDなどに作成 な形など) は,一度バックアップした フトもある。 しておき,障害発生時はそれを使って のであれば,他のユーザーのハードデ 実は個人ユーザーと違い,クライア ィスクに同一のファイルがあったとし ントの環境がある程度そろっている企 60 日経Windowsプロ 2004年 6月(no.87) システムを復元させる,といった高速 化の手段を講じられるのだ (図8) 。
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