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主要国の気候変動政策立案の比較分 析:政策間シナジーを求めて

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主要国の気候変動政策立案の比較分
析:政策間シナジーを求めて
2010年9月12日 環境経済・政策学会2010年大会
国立環境研究所 亀山康子
1.本報告の背景と目的

気候変動問題に対処するための国際制度に関して、多くの研究がなされてきた。しかし、
現実の国際交渉においては、進展はみられていない。2009年12月に開催された
COP15では、気候変動枠組条約および京都議定書、それぞれの下での交渉はCOP16
まで延長。コペンハーゲン合意はCOPにて採択できず、了承されるにとどまった。この状
況から、今後、少なくとも短期的には、包括的な国際制度は構築されないだろうと予想。

国際合意なき国際社会では、各国が、自主的に、国際合意なくてもできる範囲での政策
を講じていくと予想される。その多くは、他の目的にも合致した政策となると予想される。

特に主要国(米国、EU,中国、ロシア)は、世界に占める排出量の割合も多く、また、国
際政治的にも影響力を持つポジションにある。これらの国が自主的に取る政策が、長期
的には、国際的な合意に結び付くかもしれない。今回は特にエネルギー政策と外交政策
の観点から、主要国がこれらの政策の観点からとりうる気候変動緩和策を検討する。
2
2.既往研究の整理
気候変動に関する国の意思決定を、複数の国の間で比較研究したものは今までに多数
'Fermann 1997; Collier and Löfstedt 1997; Harris 2000; Fisher 2004; Cass 2006;
Harris 2007; Kameyama eds.2008など(。ただし、この大半が先進国の意思決定に関
するもの。ロシア等経済移行国や、途上国の意思決定についてはほとんどない。
 また、先進国に関する多くの論文は、比較政治学の視座から論じたもの(例えば
Schreurs 2002( と、国際関係論から論じたものに分けられる。


国際関係論の地球環境政策決定過程に関する論文の主流は構造主義的な観点による
もの。費用便益からの議論よりは、Discourse (言説)や Norm (規範)が重視される
'例えばHajer 1995; Pattenger 2007(。この手法は、単純な損得では表現できない微
妙な意思決定の内部を表現するのには有益であったが、大局的な部分が理解しづらく、
また、より望ましい世界に至るための提言に至りにくい、という欠点があると思われる。

研究のスタンスは、上記のスタンスに対して批判的な立場から論じる。主要国が、大局
的には損得で動くと考え、気候変動に関して国際合意のない世の中では、少なくとも短
期的には、エネルギー政策や外交政策にとってもプラスであると考える気候変動政策の
み、実施されると仮定。
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研究の構造

目的:主要国(米国、EU,中国、ロシア)の近年の気候変動政策、エネルギー政策、外交
政策の3種類の政策を、網羅的に調査。そして、気候変動政策が国際的合意という制
約をもたない世界において、エネルギー政策や外交政策の方面から、各国が独自で気
候変動政策をとりうる可能性や、主要国間での協力の可能性を検討。
米国
EU
中国
ロシア
気候変動政策
エネルギー政策'エネル
ギー安全保障含む(
外交政策'安全保障含
む(
レビューは国ごと:一つの国の中で
の整合性
横断的にみて何が分かるか?
協力の可能性はないか
4
3.米国
気候変動政策:気候変動の科学的不確実性を強調する議員多い。共和党政権下で気
候変動政策進まず。民主党政権'オバマ政権(下で法案審議される。下院はワックスマ
ン=マーキー法が2009年6月に通過するも、上院での採択は持ち越し。当初の法案で
はキャップ&トレードを政策の中心として位置づけていたが、これも2010年の審議では
除外された修正案も提出された。
エネルギー政策:①景気対策とのパッケージ'雇用拡大という認識(、②再生可能エネル
ギー普及やスマートグリッド'電力安定供給の観点から共和党政権でも実施(、③省エネ
製品の普及'国際競争力・エネルギー安全保障の観点から(、④炭素地中隔離'石炭の
利用維持のため、また、中国等への技術輸出のため(、⑤原子力政策'オバマ政権は態
度保留(、⑥原油流出対策'2010年5月より、気候変動。需要側管理から供給管理へ(
外交政策:①対欧関係:オバマ政権になり改善。②対ロ関係:核兵器削減交渉が最大の
課題に。2010年4月に新START条約に署名。③対中関係:2008年よりは改善しつつあ
るが、2010年には新たな経済的・軍事的問題で悪化しつつある。④国連等国際機関の
重視は明言。
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4.欧州
気候変動政策:EU/ETSを2005年から実施。2008年には気候・エネルギーパッケージ法
案が提案される。2020年までに単独で-20%、国際協調あれば-30%。2008年リーマン
ショックで排出量が減ったこともあり、一部の環境大臣は単独-30%を主張。
エネルギー政策: 2008年に提案された気候・エネルギーパッケージ法案を踏まえている
。 ①再生可能エネルギーの普及'新産業として&エネルギー安全保障の観点&EU求
心力の手段として(、②エネルギー機器効率20%改善'国際競争力&エネルギー安全
保障の観点から③炭素地中隔離'採掘後の油田利用(、⑤原子力政策'各国の判断(
外交政策:①対米関係:オバマ政権の多国間外交を評価。②対ロ関係:メドベージェフ大
統領就任以降、関係は改善しているが、天然ガス輸出停止等のロシアの行動に対して
は批判的。③対中関係:経済的な関係が深まりつつある。欧州は中国を重要な投資先と
して注目。④安全保障概念を、従来型の軍事的安全保障以外の問題まで含めた拡大概
念に移行
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5.中国
気候変動政策:2007年に「国家応対気候変化領導小組」が設立された。 2009年9月国
連気候変動サミットで胡錦濤主席が演説。(1)2020年までに単位国内総生産'GDP(
CO2排出量を2005年より顕著に下げるよう努力、(2)2020年の一次エネルギー消費量
に占める非化石エネルギーの割合を15%に、(3)森林面積の増加、(4)技術開発・普及、
等。2009年11月、原単位当たりCO2排出量を2020年に05年比で40-45%減目標。
エネルギー政策:①2006年の第11次五カ年規画では、2010年のGDP単位あたりのエ
ネルギー消費量を2005年比で20%削減、2010年の再生可能エネルギーの10%導入な
どを目標'エネルギー不足対応、生産効率の低い設備の淘汰(②エネルギーの低炭素
化。原子力と再生可能エネルギー'再生可能エネルギー機器の国産化(。③CCS'石炭
の有効利用(。
外交政策:①対米関係:テロ対策等、新しい安全保障問題に対して協調。②対欧関係:
経済的な関係が深化。買い手としての中国の立場強い、対ロ関係:経済的な関係が深
まりつつある。シベリアからの天然ガスや石油等に関心。④アフリカ諸国との関係を密に
。国連において途上国の代表としての立場維持。
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6.ロシア
気候変動政策: 2009年から国内政策。4月に大統領ドクトリン草案提示。ロシア政府は
初めて、気候変動がロシアにとって悪影響を及ぼしうると発言。6月には排出削減目標'
1990年比で-10-15%(。これは2005年比だと増加になる。11月には目標を深堀'15-25
%削減(、大統領ドクトリンも最終決定版を公表。2010年夏には猛暑による森林火災や
小麦収穫量の減尐等の影響が出た。
エネルギー政策:①エネルギー資源輸出国として経済が成り立っている。ただし、リーマ
ンショックによる輸出量激減の影響を受けている②初のエネルギー戦略が2008年に採
択された「ロシア経済のエネルギー・エコロジー効率の向上に関するいくつかの措置」で
は、2020年までにGDPのエネルギー集約度を2007年比で40%削減という目標設定。
③濃縮ウランの処理から輸出へ。④設備の老朽化も課題。
外交政策:①メドベージェフ大統領2008年、「外交の5原則」を表明'国際法の遵守、多
極的な世界の実現、南オセチア紛争以外の国際紛争の不追及、ロシア国内外に居住す
るロシア人の保護、特別な利益をもつ地域の重視(。②対米:中東や北朝鮮対策として、
二国間よりも多国間での関係を重視、③対欧:経済関係を重視。協調姿勢を取る、④対
中関係:米国の一極支配構造をけん制するために、関係の親密さを協調。ロシアの国内
経済建て直しのため、中国の市場必要。中国はロシアのエネルギー資源を必要とする。
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7.まとめ(エネルギー政策)
米国:①景気対策、②再生可能エネルギー普及やスマートグリッド'電力安定供給の観
点から共和党政権でも実施(、③省エネ製品の普及'国際競争力・エネルギー安全保障
の観点(、④CCS'石炭の利用維持のため、中国等への技術輸出のため(、⑤原子力政
省エネに対しては関心が高い。さら
策
にロシア以外の国では再生可能エ
ネルギー。設備の老朽化した時は
欧州: ①再生可能エネルギーの普及'新産業として&エネルギー安全保障の観点&EU
チャンス。
求心力の手段として(、②エネルギー機器効率20%改善'国際競争力&エネルギー安
全保障の観点から(③CCS'採掘後の油田利用(、⑤原子力
ロシア以外の国では、環境技術を新
たなビジネス開拓、新規雇用創出と
中国:①2010年のGDP単位あたりのエネルギー消費量を2005年比で20%削減、2010
して観ている。
年の再生可能エネルギーの10%導入'エネルギー不足対応、生産効率の低い設備の淘
汰(②エネルギーの低炭素化。原子力と再生可能エネルギー'再生可能エネルギー機器
の国産化(。③CCS'石炭の有効利用(。
ロシア以外の国では、エネルギー安
全保障の意識が高まっている。CCS
ロシア:①エネルギー資源輸出国として経済が成り立っている。②初のエネルギー戦略
も石炭利用継続の観点から。
が2008年に採択された「ロシア経済のエネルギー・エコロジー効率の向上に関するいく
つかの措置」では、2020年までにGDPのエネルギー集約度を2007年比で40%削減と
いう目標設定。 ③濃縮ウランの処理から輸出へ。④設備の老朽化。
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7.まとめ(外交政策)
米欧:オバマ政権になり
改善。同盟国としての関
係を大切に。
②欧ロ:メドベージェフ大統領就
任以降、関係は改善しているが、
天然ガス輸出停止等のロシアの
行動に対しては批判的。
米 国
米中:2008年以来改善も、2010
主要国間の関係は比較的良好。多元主義的
年には悪化。G2としてのライバ
な考え方をする政権。テロや経済危機等、協
ル意識。
調して取り組むべき課題が多い時代。G8や
G20を引き続き活用すべき。
欧 州
欧中:経済的な関
係が深まりつつあ
る。欧州は中国を
重要な投資先とし
て注目。
米ロ関係:核兵器削減が最大の課
題。ロシア側からは、米国の一極支
配構造をけん制。
ロシア
安全保障分野では、今日でも、軍事的な意味
で用いられること多い。今後は気候変動の悪
ロ中:の国内経済建て直しのため
影響への対応等も含めた安全保障概念への
、中国の市場必要。中国はロシア
拡張が求められる。欧州では始まっている。
のエネルギー資源を必要とする。
中 国
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7.まとめ(政策決定者)
米国:連邦議会、政党、大統領
COP15の首脳レベル会合やG20
等、気候変動は首脳級での決定に
欧州: 欧州委員会、欧州理事会、加盟国首脳 依存する場面が増えている。正確
かつ網羅的情報の提供。
中国:主席、首相、国家発展改革委員会
ロシア:大統領、関係省庁幹部の個人的資質
気候変動とエネルギー政策、外交政
策等、複合的な分析を重視すべき。
行政府の重要性。短期的かつ政治
的な動向に影響を受けない部門での
継続的検討。
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ご清聴ありがとうございました。
本報告に関するご質問は亀山へ
'[email protected])
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