ATTAC 関西グループ連続学習会「石油・武器・麻薬 中東紛争の正体」 第4章 中東を破局に導いた米国の戦略 第4章の内容をまとめると *アメリカ企業の思惑で始められたイラク戦争がIS(イスラム国)を生み出した。 *ISの拡大は、アメリカ中東戦略の失敗のせい。中東諸国からのISへの人的・資金的供給。 *ISが注目を浴びたのは、油田占拠などでアメリカの利権を脅かし始めてから。アメリカがI Sを攻撃するのは、石油利権を守るため。 *ISとの闘いでアメリカ(そしてロシア)の軍需産業は膨大な利益を上げている。 *クルド自治区がアメリカ企業の中東での拠点となっている。 *中東諸国の疲弊が深刻になっている。 (1)イラク戦争がテロと混乱をもたらした(p.121〜123)(p.144〜145) *「イラク戦争は、ブッシュ大統領の主張とは異なり、世界を安全にするどころか、世界的な規 模でテロを増殖させ、中東イスラム世界を破局的状態に追い込んでしまった。サダム・フセイ ン政権の「大量破壊兵器保有」という事実とは異なる根拠をもとに始められた「対テロ戦争」 は、実はブッシュ政権に影響力をおよぼしていた軍産複合体や石油産業など経済界の利益追求 が動機となって始められた戦争だと言っても過言ではない。」 (2)ISの拡大をもたらした要因(p.124〜139) ① イラク国内情勢の悪化〜復興計画が進まない(栄養失調の蔓延、停電と電力不足、清潔でな い飲料水、悪化する教育環境など)、支配層の腐敗(国営企業の民営化による汚職、援助や石 油収入の着服、軍隊の水増しによる着服など)、スンニ派住民への冷遇、高い失業率 ② ヨルダンでも所得格差、貧困、失業社会的疎外感がISへの参加を促している ③ ISが収入源を確保〜石油の密輸(対トルコ、対シリア)、住民からの徴税(人頭税など)、 犯罪的活動(遺跡・博物館展示品の売却、武器・弾薬流通の仲介料、商店主などからの「みか じめ料」、土地の売却、武器・弾薬の転売、銀行からの資金強奪、誘拐による身代金など)、ア ラブ諸国の「富裕層」からの資金提供、ダム支配による電力販売、農民からの「喜捨」強制 ④ 海外からの「ジハード戦士」の参加 (3)対IS「戦争」で莫大な利益を上げるアメリカ(ロシア)の軍需産業(p.139〜143) ① アメリカ民間軍事会社〜イラク軍の訓練、軍事顧問、警備、分析官、運転手、料理人、通訳 など。⭐トルコで自由シリア軍の訓練にも当たっていた ② 従来型のアメリカ軍需産業〜軍用機、車両、船舶、ミサイル、武器、弾薬など ③ ロシア〜「アラブの春」以降、武器輸出が激増している(p.148〜151) 1 ⭐︎世界の武器輸出国(100 万ドル)2015 年 1 米国 10,484 2 ロシア 5,483 3 ドイツ 2,049 4 フランス 2,013 5 中国 1,966 6 スペイン 1,279 7 イギリス 1,214 8 イスラエル 710 9 イタリア 570 10 オランダ 444 ⭐武器輸入国では、サウジアラビア(1位)、エジプト(4位)、UAE(5位)、イラク(6位) など中東諸国が顔を並べている (4)クルド自治区へのアメリカの手厚い保護と利権確保(p.145〜148) *1992 年、自治を獲得。 ⭐クルディスタン議会〜民主党 38、ゴラン党(変革のための運動)24、愛国同盟 18、イスラム 連合 10 など。トルクメン人、アッシリア人、アルメニア人枠もある。 *IS台頭とともに、アメリカ・ドイツなどから武器援助。石油収入獲得。アメリカ企業の活動。 (5)中東諸国の疲弊状況の深刻化 ① 難民の増加 ② 観光産業への打撃 *ヨルダン〜観光客が半減 *エジプト〜観光収入の激減 2 ⭐エジプトへの海外からの観光客数 2010 2011 1470 万人 980 万人(1 月革命、2 月ムバラク失脚 2012 1150 万人(6 月ムルシ大統領就任) 2013 940 万人(7 月軍のクーデター) 2014 990 万人(6 月シシ大統領就任) 2015 900 万人(「IS・シナイ州」によるテロ頻発、9 月観光客車列を誤爆、10 月ロシア機 墜落) ⭐トルコ〜2014 年 3,981 万人、2015 年は−1.6%、2016 年 1 月〜4 月は 582 万人・−16.5%少、8 月は 37.96%減。トルコ航空は、来年 2 月から関空便を休止。 ⭐トルコをめぐる最近の動き ① クーデター未遂事件(7.16)以降、エルドアン政権は首謀者とみなすギュレン派への攻撃だ けでなく、メディアの閉鎖、記者の解雇、クルド労働者党への軍事攻撃、クルド運動を出自と する有力な左翼政党=人民民主主義党(HDP)への弾圧、左派労組メンバーの排除など実質 的な文民クーデターを遂行している。 ② シリア国内へ戦車部隊、特殊部隊を進行させ(8.24)、「ユーフラテスの盾作戦」を開始。ロ シア・イランとの合意、アメリカの黙認?ユーフラテス川西岸から YPG(クルド人民防衛隊) /SDF(シリア民主軍)を駆逐することが目的。YPG はユーフラテス川西岸のマンビジから 撤退(11.16)。バーブをめぐるアサド政権軍とトルコ軍の衝突の可能性? 3
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