第九回草原俳句会 評 平成十九年五月三日 第二十五回の春季ツアーは四月二十九日成田から総勢九名で出発、例年通り三泊四日で 作業や見学を行い、帰路は世界遺産である承徳の避暑山荘等を見物して五月五日帰国した。 作品は四八句だったが、世話人の西が足痛を患って、互選会の方はとうとう行わず仕舞。 本人の不注意、不養生まことに申し訳なく、お詫び申し上げる次第である。 さて、最初に、承徳から来たガイドの李婦人とバスの運転手さんの二作品からスタートし よう。 でこぼこ路 李さんの 泣く泣く進む 運転手 ツンザクガイドも 押田敏雄 耳に慣れ 樋川雅一 今回は、ハラドコを通る、いつものコースが工事中のため翁牛特旗の旗都「烏丹」経由で 行った。どちらのコースも差して変わらない悪路であるが、運転手さん、ガイドさんはさ ぞ驚いたことだろう。と、押田団長の気遣いと同情の句。帰路はラジエーターの故障でダ マシダマシの運転となった。 ガイド李さんの甲高くてやまない声量も旅の余興であった。 村に到着して二題。 あら ひと 新た女 新鮮よ き き 迎えし村に 嬉々の声 まなこ 迎えの 眼 押田敏雄 そそ 注ぐ人々 相田奈穂子 紅一点の相田さんには、注目の眼も好奇の眼もあったことと思う。 相田さんの「新鮮よ」が又いい。率直だし、後出の相田さん作「教えてよ」や「私の不安 砂となる」にもこの「新鮮さ」が重なる。 朝の情景から四題、と言っても三泊した三つの朝。 ロバ鳴いて ミツ求め 裏道を ウーラン村に 夏近し 中村民夫 飛び交う蜂が 窓たたく 芦澤 明 蜂乱れ飛ぶ 馬上にて あんず 杏 かな 望月正治 乗りて見る丘 風やさし 芦澤 明 ロバの鳴き声、花に乱舞する蜂の羽音、乗馬、いずれも村で宿泊した感慨である。 あ んず オボ山は気軽に行ける村の観光コース、最初に山杏等の植樹を手掛けた丘である。 オボ山の 杏の花も 我を待つ 沙地に咲く オボ山に さわやかに 望月正治 わ アンズの花に 心湧く 芦澤 明 アンズ咲かすを 遠くきく 芦澤 明 オボ山に吹く 千の風 芦澤 明 芦澤さん、「千の風」を得て得意満面ではなかったか。勿論、テノールの秋川雅文さんの 唱、「千の風になって」の曲が四囲を流れる。 大自然 私の不安 砂になる 「砂になる」が効いていて面白い。 相田奈穂子 オボ山に あ んず 子供らの歌 山杏咲く 中村民夫 花あんず 余命計らず 枝伸ばす 西 敬史 メインの植樹は、一日目が水田の西側に巨龍の如く横たわる沙丘後尾での柳の枝による さ しょう シロニンテオ 沙障つくりと白檸条苗の植樹。二日目がローショウさん宅周辺のポプラ苗木の植樹で、我々 のために残しておいて呉れた百本ばかりを植えるものだった。 沙の上 か弱き早苗 流れ止め にゅうこん さ しょう 入 魂 の 沙障作りや 声援を 押田敏雄 夏近し 望月正治 スコップに込め 苗植える 窪田定一 かざ 延ぶ沙丘 終尾を飾る 沙障棚 へき くう 碧空や 沙地に並びし 願い込め すな ふうも ん 沙風紋 大きく育て 午後の作業を ポプラの木 りゅう さしょ う 西 敬史 柳 沙障 西 柳の芽 中村寿成 あざわ ら 嘲笑い 伸びよ大地に 敬史 西 敬史 夢乗せて 押田敏雄 続いて休み。昼休み、作業の休み、朝晩の隙等色々だが、村のあちこちに心惹かれる時。 柳沙障 挿しきて しおさい ポプラ風 潮騒かとも カササギの たかいびき 昼の 高 鼾 西 敬史 き 聴く昼寝 西 敬史 声が引き裂く 村の昼 窪田定一 たわむ 戯 れし 子らの笑顔に 未来みる 芦澤 明 草原の 芦澤 明 少女の夢 重ねみる 教えてよ 清い心と 澄んだ瞳 ニレの木に 相田奈穂子 鳥が飛ぶ家 また訪ね 芦澤 明 村の生活をカメラで追った散策の芦澤さん。 強き陽に 緑さやけき ポプラの木 中村寿成 村のどこにも端正なポプラが並ぶ。 緑陰に 休む羊群と 相見合い 輝ける若葉や 西 敬史 雨の降り出でし 望月正治 そうそう、いつの間にか降り出した田園調の雨。 馬車で行く。 馬車で行く 目に若葉 牧民村に 風薫る 中村民夫 新鮮にして 沙漠道 中村寿成 気分は満点、お尻は痛い。 パオ。 語らいに パオの中 中村寿 白 酒 の 酔いに任せし 村のパオ 望月正治 風に鳴る 望月正治 パイチュウ 時を忘れし まか 宿舎の窓に 春の月 成 酒も入魂、植樹も入魂。清少納言も見たような冴た月がきれいです。 焼肉交流。 御馳走肉 夜のビールで 流し食う 焼肉の 出来映え競う 二国間 ヤキソバに 西 敬史 押田敏雄 むらがる村の 子供たち 押田敏雄 交流の打ち上げ花火では、 打ち上げの ほのお 炎 飛び散り ぼ や 小火騒ぎ 押田敏雄 押田先生、持参・自演の心尽くし交流会は大盛会でした。 村人との別れでは、 牧民の 涙に感動 もらい泣き 樋川雅一 久々の ウーランアオジュ 又最高 樋川雅一 最高の 感動ありがとう ウランオト 相田奈穂子 あっと言う間の旅でした、多謝多謝。 赤峰にて、 赤峰の 美味い羊肉 村思い 押田敏雄 承徳にて、 御仏の 村の子は か ぐ 大きな姿 香具わしき しばし 暫 し見ぬ間に 押田敏雄 ラマの僧 押田敏雄 さて、如何でしたか。少しはよみがえったでしょうか。 評 西 敬史 再見
© Copyright 2024 Paperzz