序 慢性便秘は女性に多く,高齢になるに従って患者数は増加し,罹患率は人口 あたり 14%とされる。患者数の多さに比べ,治療に対する患者満足度が低く, 新たな治療法が望まれてきた。そんな中,2012 年に 32 年ぶりに,新規作用機 序を有する慢性便秘治療薬としてルビプロストンが発売され,臨床現場から大 きな期待が寄せられている。この新薬の効果的な使用を視野に入れながら,慢 性便秘の治療はいかにあるべきか,その疫学的現状から病態,治療に至るまで を解説することを目指した。 慢性便秘に関しては,多くの患者は医療機関でなく OTC(一般用医薬品)に よる刺激性下剤の濫用がわが国では目に余るものがある。このような状況で医 師が注意しなければならないのは,まず刺激性下剤の習慣性や依存性に陥った 患者を作らないことであり,次に,ではどうしたらこのような刺激性下剤の主 観性に陥った患者を離脱できるよう導くかである。 慢性便秘の治療は,内科医はもとより,実地医家等広範に及ぶ。また,当該 分野の系統だった教科書,ガイドライン等の記載も乏しいのが現状である。医 学教育でも,研修医教育で取り上げることが少なく,また現場の医師に任され ていることが多く,治療レベルのばらつきが大きい。慢性便秘はひとたび罹患 すると,コントロールすることはできても完治することはない慢性疾患であ る。この意味で,特に実地診療では初療が重要で,患者と医師の信頼関係がポ イントとなる疾患でもある。以上より,慢性便秘の新薬の登場とともに,今ま さに医師に便秘治療の手腕が問われているところである。 本書は内科・外科を問わず,この1冊で慢性便秘のすべてを網羅した。ぜひ 本書が慢性便秘患者を診る際の実地診療でお役にたつことを祈ってやまない。 2015 年3月 中島 淳
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