消費者トラブルをめぐる紛争解決機能のあり方に関する研究会(第5回)議事要旨 日 時:平成 14 年 10 月 31 日(木)17:00∼20:00 場 所:商事法務研究会2F会議室 出 席 者:山本座長、町村委員、石戸谷委員、吉田委員、森委員、服部委員、田沢委員、久保田委 員、吉岡委員、上野委員(ゲストスピーカー)、稲葉委員(ゲストスピーカー) 議事概要:座長より、NPO法人シヴィル・プロネット関西代表理事・上野義治氏及び専任講師・ 稲葉一人氏がゲストスピーカーとして参加している旨紹介があった。 委員からNPO法人及び消費者団体におけるADRへの取組みの現状及び考え方につい て説明を聴取し、質疑応答を行うとともに、内閣府より、論点整理(修正案)等について 説明し、意見交換を行った。 議事概要 (○ NPO法人シヴィル・プロネット関西における紛争解決の現状及び考え方等について説明) (質疑) ◇ これまでに消費者紛争を取り扱った実績、あるいは今後どう取り扱っていくかといった将来 的なプランについてお聞かせいただきたい。 → 新聞等で報道されて以降、9月までに約 110 件の電話相談があった。このうち消費者問題 として類型化できるものは約 10%(10 件程度)であるが、調停まで進んだ事例はない。実態 としては、相手方事業者が調停手続き自体に応じず、その点が今後の課題である。 → 消費生活センター等とのネットワークの確立が重要であると考えている。消費生活センタ ーで相談を受け付け、相手方事業者が調停に応じそうだという感触がある事案については、 より客観的な第三者機関に振り分けて、そこで調停を行うというシステムにすれば相手方の 信頼も得られるだろう。 ◇ 調停技法トレーニングの受講者は。 → ◇ 現状では、隣接法律職種である司法書士のニーズが高い。 話を聞いていると身近な暮らしに関する「もめごと相談」のような印象を受けるが。もっと 広い範囲を内包するものなのか。 → 当面は生活紛争、近隣紛争等を取扱うことが多いであろう。人的、財政的基盤等が整えば 受け入れる事案の範囲を広げていきたいとは考えている。 1 ◇ 企業の相談現場の経験から言うと、企業側が調停に応じない理由はよくわかる。調停者が消 費者の代理人のように受け取られないようにするためには、調停の主宰者や調停結果等につい ての情報公開が重要である。 → 情報公開については、プライバシーに配慮した形での公開についてシステム利用者の許諾 を得ている。代表的なものは機関誌等でも紹介していきたい。 (○ 主婦連合会における苦情処理及び紛争解決の現状等について説明) (質疑) ◇ 相談処理に対する取組みの現状はどうなっているのか。 → 現状では、消費生活センター等に振り分けることが多い。主婦連全体として、消費者政策 や立法に関する運動に特化してきており、消費者被害への個別的対応は減少してきている。 ◇ 全国 36 箇所に相談窓口が設置されていたということだが現在はどうなっているのか。 → 消費生活センターが充実してきたことにより、地域に相談窓口をおく必要がなくなったた め、現在でも継続しているところは非常に少ない。 ◇ 業界型ADRにおける手続主宰者の中立性の確保について、相談の受付段階から中立的な第 三者がいた方がいいということか、案件が調停プロセスに入ってから中立的な第三者が関われ ばよいということか。 → 相談の受付段階も含めて中立的な第三者がいた方がいいが、実際の運営上難しいだろう。 PLセンター等では、受付段階では、消費生活アドバイザーの資格保持者、次の調停段階で は、弁護士や消費者団体代表が参加することになっていると思う。 * ◇ 将来的にどの程度NPOや消費者団体に期待できるのか、また、どのような課題があるのか などについて議論していただきたい。 ◇ 弁護士法第 72 条を見直す必要がある。司法書士が業として法律相談等に携われる制度に変え ていく必要がある。 ◇ 実態として、調停は弁護士の関与のもとで進めていかざるを得ない。また、司法制度改革審 議会ADR検討会で審議されている法的効力の付与について、現場の印象としては、同席調停 で合意が得られた部分についてはほぼ履行が期待されることから、特に執行力のような法的効 果を与える必要があるのかどうか疑問である。一方で、時効中断の問題は解決すべき課題であ り、両当事者の合意がある場合には、停止効を認めるという方法は適切だと思う。 ◇ シヴィル・プロネット関西の場合、職員はボランティアで対応しているということだが今の ままの体制で今後も活動を続けていくことができると考えているのか。 → この点についても弁護士法第 72 条が最大のハードルであることは確かである。現在は、会 員の年会費と利用者からの寄付等で運営しているが、運営実費という形での徴収であれば現 行法の枠内で対応可能なのではないかと考えている。 2 ◇ NPOが行う調停活動のクオリティや情報公開が適切になされない場合の問題について危惧 する声もある。そのため、調停トレーニング修了者のみが調停に関わることを保障し、内部情 報を開示するといった対応が必要かもしれない。 ◇ シヴィル・プロネット関西の手法は、 「当事者融和を旨とし、紛争解決を当事者の判断に委ね る」、「同席調停」を基本とするなど、行政型ADRの場合とは、手法・理念が大きく異なって いるように思われる。現在の手法のままでB2C紛争に対応できるのか。 → ADR基本法の規定内容によるのではないか。紛争解決への協力義務のようなものが基本 法の中で理念規定のような形で置かれればと思う。 → 我々の手法は、個別的な事案の解決に有効なのではないか。相手方が調停手続きに応じれ ば、ほぼ半数で調停自体も成立するという感触を持っている。一度、消費生活センターと提 携してどのような問題について受け皿になれるのか検討してみたいと考えている。 ◇ 関西に活動拠点を置いているので、利用者は関西在住者に限定されるのか。 → 近々立ち上がるブランチ的なNPOと連携し、遠隔地(広島と神戸)居住者間の調停に入 る試みを予定している。 ◇ インターネットオークション等は毎日多くのトラブルが寄せられており、またその性格上、 当事者間の居住地が離れていることが多いため、対応に苦慮している。このようなオンライン トラブルについて、シヴィル・プロネット関西のようなNPOに紛争解決の役割を期待できな いか。 → 以前、ある電気通信事業者からトラブルの継続的な処理を依頼されたことがあるが、企業 から対価を受けとると、中立性・公正性という観点から疑念が生じてしまうので断ったこと がある。 * ◇ 消費者団体については、消費者に軸足を置いた対応をすることが存在意義にもつながるから 紛争解決の主宰者になるのは難しいのでないか。逆に、NPOには中立的な紛争解決の担い手 として期待できる部分はある。 ◇ 中立性ということで言えば、国民生活センターや消費生活センターが完全に中立でよいのか という問題がある。 ◇ 消費生活センターは、苦情相談の受付窓口的な役割に徹し、あっせん・調停等の部分は他の 機関との提携により適切な処理を図るというシステムにしてはどうか。 (○ 内閣府より、論点整理(修正案)等について説明) (意見交換) ◇ 消費者団体とNPOを同じ枠内で議論することには違和感を覚える。NPOの場合は、弁護 士会仲裁センターのような第三者機関的位置付けになるのではないか。 ◇ 弁護士会の仲裁には法的基準がある。一方、シヴィル・プロネット関西が目指すのは当事者 3 融和による解決である。 ◇ 消費者団体・NPO等の特色として、 「類似被害が多発している場合には、個々の紛争のみな らず消費者被害全体の解決を図ることができる」という点は、シヴィル・プロネット関西の場 合にはあてはまらない。NPOの分類としては、 「弁護士会などの第三者」とするか、 「NPO」 として独立の項目で整理すべきではないか。 * ◇ 「金融関係の業界団体の中には、それぞれの相談所に持ち込まれた苦情案件で解決に至らな かった紛争を仲裁センターに回付する提携関係を弁護士会と結んでいる」という部分について は、現在議論があるところである。金融トラブル連絡調整協議会参加団体の中でも自らがあっ せん・調停まで行う団体は4団体、弁護士会に回付するとしているのが8団体もある。しかし、 自主規制機関型のADRというものを考えると、個別紛争の解決だけを目的としたものではな く、あっせん・調停まで含んだ苦情処理を通じて、必要なルール整備、あるいは制裁を発動す ることによって、業界の健全な発展を図るという役割が期待されているといえる。この部分は、 ADRの機能論にも関わってくるものであり、今後の議論も踏まえて考えていただきたい。 * ◇ 消費生活センターの窓口機能(相談)のうち、苦情受付・処理業務は廃止して問合せ・照会 に対する対応に特化すべきだという議論があるがどう考えるか。B2C紛争の実態を考えると 消費生活センターや苦情処理委員会など行政があっせん・調停の役割を果たすべき部分は厳然 として存在するのではないか。 ◇ 民間型ADRが整備されてくれば理解できるが、現状では現実的な議論ではない。 ◇ 行政による苦情処理業務は、消費者被害の拡大防止・未然防止等行政的な目的を達成するた めの一手段である。 ◇ 消費生活センターから相談事案をより適切な他の機関に紹介することも多く、そういう意味 では窓口的機能は既に果たされている。消費者トラブルが増加している状況で、消費生活セン ターを、問合せ・照会に回答するためだけの機関にするということになれば被害の拡大が予想 される。 ◇ 一方的に他の機関を紹介するだけでは困る。ADR機関も東京に偏在しており、遠隔地居住 者に対してのきめ細かな対応は難しい。また、我々が調査に出向いても官公署等が情報を開示 しないこともあり、消費生活センターと連携した対応が効果的な場合もある。 ◇ 消費者トラブルに対する行政の役割の縮小化を求めているわけではない。現状では、ADR 機関としての互いの特色がわからないままになっているので、他の機関の役割を調停に特化し た上で、消費生活センターと連携を図り、効率的に消費者トラブルに対処していけたらという ことである。消費生活センターから移送された事案の処理結果等については、今後に向けて当 然消費生活センターにもフィードバックしていきたいと考えている。 以上 4
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