発表資料

CIGS地球温暖化シンポジウム2015
2015年7月23日
国際公平性の視点からの
温室効果ガス排出削減目標の評価
(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE)
システム研究グループ グループリーダー
秋元 圭吾
目
次
1.日本政府のエネルギーミックス案の評価
2.約束草案(2030年の排出削減目標)についての
検証 ー国際公平性・野心度を中心にー
3.長期目標(2℃目標)との関係性についての分析
4.まとめ
2
はじめに
3
 2020年以降の温室効果ガス排出削減目標策定の議論が進められて
おり、2015年末にパリで開催のCOP21において国際的合意を目指
している。そして、COP21に先立って温室効果ガス排出削減目標
(約束草案(INDCs: Intended Nationally Determined
Contributions))の提出が求められており、米国やEU等は2015
年3月末までに、また中国についても6月末に、UNFCCC事務局へ
の提出を終えたところである。
 日本政府は6月初めに「長期エネルギー需給見通し(案)」と、
それに基づいた「日本の約束草案(政府原案)」をとりまとめた。
そして、パブコメを経て、7月17日にUNFCC事務局に約束草案を
提出を終えた。
 本報告では、国際公平性の視点を中心に、2030年の温室効果ガス
排出削減目標について評価するとともに、2050年の排出削減目標
との関係についても触れる。
日本政府のエネルギーミックス案
の評価
(RITEモデル分析結果*との比較より)
* 2014年3月31日および4月14日にRITE WEB公表
2030年の発電電力量
(GHG排出削減強度:WEO2014新政策シナリオレベル)
5
2030年
1400
水素
太陽光
1200
風力
バイオマス(CCS有)
バイオマス(CCS無)
800
ガス火力(CCS有)
600
ガス火力(CCS無)
石油火力(CCS有)
400
石油火力(CCS無)
ベースロード電源比率
61%
41%
41%
40%
50%
60%
原子力30%+石炭20%
+再エネ20%
原子力20%+石炭30%
+再エネ20%
原子力25%+石炭25%
+再エネ20%
原子力25%+石炭25%
+再エネ15%
原子力20%+石炭20%
+再エネ25%
石炭火力(CCS無)
原子力15%+石炭15%
+再エネ30%
0
現状放置
石炭火力(CCS有)
2013年
200
2010年
発電電力量 [TWh/yr]
1000
日本政府案
56%
58%
原子力
水力・地熱
通常時(2010年)は
ベースロード電源比率
は60%程度であった。
2030年の一次エネルギー供給
(GHG排出削減強度:WEO2014新政策シナリオレベル)
600
2030年
6
輸入水素
輸入バイオエタノール
500
400
風力
バイオマス(CCS有)
300
バイオマス(CCS無)
ガス(CCS有)
200
ガス(CCS無)
石油(CCS有)
100
石油(CCS無)
60%
原子力30%+石炭20%
+再エネ20%
原子力20%+石炭30%
+再エネ20%
50%
原子力25%+石炭25%
+再エネ20%
40%
原子力25%+石炭25%
+再エネ15%
原子力20%+石炭20%
+再エネ25%
41%
原子力15%+石炭15%
+再エネ30%
ベースロード電源比率
61%
41%
現状放置
2013年
0
2010年
一次エネルギー供給 [Mtoe/yr]
太陽光
石炭(CCS有)
日本政府案
石炭(CCS無)
原子力
水力・地熱
56%
58%
IEA統計表と同じく、(1)真発熱量で表示、(2)一次電力の発電効率は原子力:発電効率33%、地熱:発電効率10%、
水力他:発電効率100%と想定。(日本政府案は公表値に基づき、RITEで換算)
2030年の経済影響(GDPと家計消費)
0.0%
+4.0兆円
-0.5%
+3.0兆円
+1.9兆円
+1.8兆円
+0.2兆円
+0.6兆円
-0.6兆円
+1.0兆円
-1.5%
+0.3兆円
-2.0%
IEA WEO2014 新政策シナリオレベル
-2.5%
IEA WEO2014 450シナリオレベル
-3.0%
40%
50%
原子力30%
+石炭20%
+再エネ20%
原子力20%
+石炭30%
+再エネ20%
原子力25%
+石炭25%
+再エネ20%
原子力25%
+石炭25%
+再エネ15%
原子力20%
+石炭20%
+再エネ25%
-3.6兆円
注:
基準ケースは、
現状放置(発電構成)&
IEA WEO新政策レベル(炭素強度)
-1.0%
ベース電源比率
60%
0.9%
0.0%
0.3%
0.4%
0.2%
原子力30%
+石炭20%
+再エネ20%
-0.5%
原子力20%
+石炭20%
+再エネ25%
-1.0%
0.7%
0.6%
IEA WEO2014 新政策シナリオレベル
IEA WEO2014 450シナリオレベル
-0.2%
原子力15%
+石炭15%
+再エネ30%
-0.5%
0.7%
原子力20%
+石炭30%
+再エネ20%
0.1%
0.5%
原子力25%
+石炭25%
+再エネ20%
0.5%
0.6%
0.2%
原子力25%
+石炭25%
+再エネ15%
1.0%
現状放置
ケース
家計消費の変化
(%,基準ケース比)
家計消費
1.5%
-17.9兆円
原子力20-22%
+石炭26%
+再エネ22-24%
+2.6兆円
<政府案>
0.0%
-0.5%
-1.0%
-1.5%
-2.0%
-2.5%
-3.0%
-3.5%
56%程度
<政府案>
-2.8%
原子力20-22%
+石炭26%
+再エネ22-24%
+3.5兆円
+3.3兆円
原子力15%
+石炭15%
+再エネ30%
0.8%
0.6%
0.4%
0.2%
0.0%
-0.2%
-0.4%
-0.6%
現状放置
ケース
GDPの変化
(%,基準ケース比)
GDP
7
日本政府のエネルギーミックス案の評価
 政府案では、GDP成長率を1.7%/年と高い成長を見込んでいるのに
比して、対策後の発電電力量の伸びは小さく見込まれている。
 RITEの経済モデルによる複数のシナリオにおける分析結果と比べ
ると、政府案のGDPや家計消費損失は相当大きいものとなってい
る。
 これは政府案は、電源構成(電源比率)はそれほど大きな経済損
失をもたらすような偏った構成となっていないが(GDPは現状放
置(2013年の発電構成)ケース比で +0.36~+0.38%)、大きな省エネ
が見込まれているため(電力では▲17%)、これを実現するため
大きな炭素価格(暗示的、明示的問わず)が必要と推計される。
そのため、少なくとも過去の対策を踏まえた実績をベースに構築
されている経済モデルによる評価では、これを実現するには相当
な経済コストが必要と推計される。
8
約束草案(2030年の排出削減目標)
についての検証
ー国際公平性・野心度を中心にー
各国間の排出削減努力の衡平性評価
10
 各国間に差異がある中で、すべての国がそれぞれの事情を踏まえながら、
できるだけ均等な排出削減努力を行うことが重要
 例えば、特定の基準年比での削減率の大きさが衡平な排出削減努力を表すわ
けではない。とりわけ1990年など遠い過去を基準とした場合は、その後の社
会の状況の激変を含むため、より一層、排出削減努力とは無関係となりやすい。
 またGDPあたりの排出量は、効率性を示す一つの有用な指標ではあるが、産
業構造にも影響されることに留意が必要。また、 GDPあたりの排出量の改善率
も重要な指標と考えられるが、過去の努力のみならず、GDP成長率の大きさに
大きく依拠することが多いため指標の解釈に留意が必要
 排出削減費用推計の不確実性は大きいものの、排出削減努力を示す指標とし
ては、限界削減費用やGDPあたり排出削減費用といった削減費用を評価するこ
とは重要
 各国間とりわけ国際競争下にある各国間において限界削減費用に差が大き
い場合、生産においてエネルギー効率に優れていたとしても、限界削減費
用が高ければ競争力が阻害され、限界削減費用の低い国へと生産拠点がシ
フトする恐れもあり、持続的な対応がとりにくくなる。そして、そのとき
限界削減費用の低い国のエネルギー効率が低ければ、世界全体で見れば
却ってCO2排出が増大する恐れもある。国際的なバランスは重要
日本、および世界主要国の約束草案(一部暫定値)
の基準年比排出削減率
基準年比排出削減率
1990年比
2005年比
2013年比
日本:2013年比▲26%
(2030年)
▲18.0%
▲25.4%
▲26.0%
米国: 2005年比▲26%
~▲28% (2025年)
▲14~▲16%
▲26~▲28%
▲18~▲21%
EU28: 1990年比▲40%
(2030年)
▲40%
▲35%
▲24%
ロシア: 1990年比▲25%
~▲30% (2030年)
▲25~▲30%
+10~+18%
ー
中国: 2030年CO2排出
ピークアウト (RITE排出
見通しに基づき、15~
16GtCO2eq)
+277~+316%
+82~+101%
ー
日本の排出削減率は直近の2013年比で見ると、米・欧よりも大きい。
11
GDP (MER)あたりGHG排出量
12
1990
2005
2010
2020
2030
日本
0.32
0.30
0.27
0.24
0.16
米国
0.76
0.55
0.50
0.32
0.27~0.28
(2025年)
EU28
0.56
0.37
0.33
0.26
0.18
ロシア
3.99
2.80
2.44
1.57~1.58
0.91~0.96
中国
6.35
3.37
2.80
1.57~1.58
0.94~1.01
韓国
0.85
0.66
0.65
0.43
ー
インド
3.74
2.53
2.24
1.81
ー
単位:kgCO2eq. per $;2005年価格
日本の政府案は、GDPあたりGHG排出量で見ても欧米目標よりも優れた数字と評価される。
一人あたりGHG排出量
13
1990
2005
2010
2020
2030
日本
10.1
10.6
9.9
10.5
8.9
米国
24.4
24.2
22.0
16.7
14.8~15.2
(2025年)
EU28
11.8
10.4
9.4
8.3
6.6
ロシア
22.7
14.8
15.5
15.7~15.8
17.9~19.0
中国
3.4
6.2
8.3
9.5
9.8~10.5
韓国
7.1
11.8
13.7
12.0
ー
インド
1.5
1.9
2.3
3.2
ー
単位:tCO2eq./人
GDP変化とCO2 原単位変化
ー2002~2012年の10年間の実績値と約束草案ー
World
0
Japan
Mexico
Change in CO2 per GDP (%/yr)
-1
CO2原単位
2002-12年の
間に減少
Saudi Arabia
Korea
South Africa
Italy
Germany
-2
EU28
India
China
Canada
Australia
France
Spain
Indonesia
UK
US
EU28(2010-30)
-3
Japan(2013-30) Russia
こちらに位置する
程削減努力大?
-4
2012年CO2排出総量2002年比で増大
US(2010-25)
-5
China(2010-30)
Russia(2010-30)
2012年CO2排出総量2002年比で減少
-6
-2
0
2
4
6
8
10
12
Change in GDP (%/yr)
注)2012年の日本のCO2原単位は、原子力発電の停止によって強く影響を受けている。
GDP成長率と排出原単位変化の関係を踏まえても、日本の約束草案は、意欲的な排出削減目標と
評価できる。
14
日本、および世界主要国の約束草案(一部暫定値)の
CO2限界削減費用推計値(RITE DNE21+推計)
15
限界削減費用 ($/tCO2eq)
低位
日本:2013年比▲26%
(2030年)
米国: 2005年比▲26%~
▲28% (2025年)
高位
380程度*
(エネルギー起源CO2の目標のみで評価した場合は260程度)
57
EU28: 1990年比▲40%
(2030年)
76
168
ロシア: 1990年比▲25%~
▲30% (2030年)
0
12
中国: 2030年CO2排出ピー
クアウト (RITE排出見通しに
基づき、15~16GtCO2eq)
0
9
* 吸収源対策▲2.6%は森林吸収対策としてコスト計算せずに、エネルギー起源CO2、その他GHG排出削減対策で実施するとして計算した場合。他国も同様
日本の限界削減費用は他国よりも大変高いと推計される(元々、エネルギー効率が高いにも関わら
ず、省エネルギーを大きく見こみ過ぎていることが主因)。
日本、および世界主要国の約束草案(一部暫定値)の
GDPあたり排出削減費用推計値(RITE DNE21+推計)
GDPあたり排出削減費用 (%)
低位
日本:2013年比▲26%
(2030年)
米国: 2005年比▲26%~
▲28% (2025年)
高位
0.7程度
0.34
EU28: 1990年比▲40%
(2030年)
0.40
0.77
ロシア: 1990年比▲25%~
▲30% (2030年)
―
―
中国: 2030年CO2排出ピー
クアウト (RITE排出見通しに
基づき、15~16GtCO2eq)
―
―
GDPあたりの排出削減費用で評価しても、日本の排出削減目標は、欧州並みの厳しい目標と評価さ
れる。
16
長期目標(2℃目標)との関係性に
ついての分析
2℃目標の排出経路(気候感度の不確実性含む)
と約束草案見通し
不確実ではあるが
技術イノベーション
によって一層削減
Peer-reviewを含むPDCA
サイクルを確立し徐々に
深堀していく
80
(温暖化適応も。また最悪
に備えたジオエンジニア
リングもオプションとして
用意するなども検討事項)
GHG排出量 (GtCO2-eq./yr)
70
60
5割以上くらいの確率
で+2℃以内の可能性
50
AR5
530-580 ppm
(+7 -47%)
40
30
実績排出量
現状政策継続
20
AR5
480-530 ppm
(-25 -57%)
2020年以降の約束草案(排出削減高位推計)
2℃安定化_気候感度2.5℃(濃度は、一旦、580 ppmを若干超える)
10
18
+2℃以内の
確率増大。
一方、実現
の可能性が
乏しい対策
の中身に
AR5 430-480 ppm
(-41 -72%)
2100年に2℃(一旦2℃を超える)_気候感度3.0℃(濃度は、一旦、530 ppmを超える)
2℃安定化_気候感度3.0℃(濃度は、500 ppm以下。2300年頃に450 ppm程度)
0
1990
2000
2010
2020
2030
2040
2050
RITEによる推計。約束草案は、日、米、EU、露、中国、メキシコ、ノルウェー、スイス、カナダを考慮
約束草案は、気候感度3℃を想定した場合、2℃目標と大きなギャップ有。
しかし、気候感度2.5℃の場合は、2℃目標とかなり整合的。
いずれもCOP21で決め
る数値の大きさが重要
ではなく、将来排出削減
を誘発できるような枠組
みを作ることの方が重要
時点間の排出削減費用負担の衡平性評価
19

各国は2030年までは約束草案に従って排出削減を行い、それ以降は世界全体で2050年
に2005年比エネルギー起源CO2半減という長期目標を想定し、2030年と50年の削減費
用の比較評価を行った。なお、2050年の限界削減費用は世界全体で均等化するとした
(2030年時点では各国の限界削減費用は異なるが、2050年に向けて収斂することとし
た)。

2050年に世界全体で排出量半減という目標の下では、2050年の限界削減費用は
431$/tCO2といった非常に高い水準が必要と見込まれる。その時の日本の排出量は2005
年比でほぼ半減の水準であり、GDP比排出削減費用は0.74%と評価された。すなわち、
日本の2030年約束草案は、世界排出量半減の排出削減費用負担とほぼ同程度と言える。
日本のGHG排出量、限界削減費用、GDP比排出削減費用
2030年
2050年
(限界削減費用均等化の下、世界全体で2005年比エネルギー起源CO2半減)
GHG排出量 (2005年比)
▲25.4%
▲50%
限界削減費用 ($/tCO2)
381
431
GDP比排出削減費用 (%)
0.72
0.74
* 2050年における世界全体の排出量を2℃安定化_気候感度2.5℃レベルとした場合、日本のGHG排出量:2005年比▲32%、
限界削減費用:40$/tCO2、GDP比排出削減費用:0.22%。また、2100年に2℃_気候感度3.0℃レベルとした場合、日本の
GHG排出量:2005年比▲48%、限界削減費用:360$/tCO2、GDP比排出削減費用:0.65%。
2050年排出削減レベルによる世界のエネルギー構成
25000
20
一次エネルギー
太陽光
風力
20000
バイオマス(CCS無)
ガス(CCS有)
10000
ガス(CCS無)
5000
石油(CCS有)
石油(CCS無)
1990年 1995年 2000年 2005年 2010年
+2℃安定化、
気候感度2.5℃
2100年に+2℃、
気候感度3℃
0
エネ起CO2半減
2050年
石炭(CCS有)
石炭(CCS無)
原子力
発電電力量
水力・地熱
60000
水素
太陽光
50000
風力
バイオマス (CCS無)
30000
ガス (CCS有)
ガス (CCS無)
20000
石油 (CCS有)
石油 (CCS無)
10000
石炭 (CCS有)
石炭 (CCS無)
1990年
1995年
2000年
2005年
2010年
2050年
+2℃安定化、
気候感度2.5℃
0
2100年に+2℃、
気候感度3℃
- 2050年における世界全体のエネルギー起源CO2排出量を
半減とした場合、限界削減費用:431$/tCO2。
- 2050年における世界全体の排出量を2℃安定化_気候感度
2.5℃レベル相当とした場合、限界削減費用:40$/tCO2 。
- 2100年に2℃_気候感度3.0℃レベル相当とした場合、限界
削減費用:360$/tCO2。
バイオマス (CCS有)
40000
エネ起CO2半減
発電電力量 [TWh/yr]
一次エネルギー供給 [Mtoe/yr]
バイオマス(CCS有)
15000
原子力
水力・地熱
2050年排出削減レベルによる日本のエネルギー構成
600
輸入水素
500
輸入バイオエタノー
ル
太陽光
一次エネルギー
風力
300
バイオマス(CCS有)
200
バイオマス(CCS無)
100
ガス(CCS有)
ガス(CCS無)
1990年 1995年 2000年 2005年 2010年
+2℃安定化、
気候感度2.5℃
2100年に+2℃、
気候感度3℃
0
エネ起CO2半減
一次エネルギー供給 [Mtoe/yr]
400
21
石油(CCS有)
石油(CCS無)
石炭(CCS有)
石炭(CCS無)
発電電力量
2050年
1400
水素
太陽光
1200
風力
バイオマス (CCS有)
バイオマス (CCS無)
800
ガス (CCS有)
600
ガス (CCS無)
石油 (CCS有)
400
石油 (CCS無)
200
石炭 (CCS有)
石炭 (CCS無)
1990年
1995年
2000年
2005年
2010年
2050年
+2℃安定化、
気候感度2.5℃
2100年に+2℃、
気候感度3℃
0
エネ起CO2半減
- 2050年における世界全体のエネルギー起源CO2排出量を
半減とした場合、限界削減費用:431$/tCO2、日本のGHG
排出量:2005年比▲50%。
- 2050年における世界全体の排出量を2℃安定化_気候感度
2.5℃レベル相当とした場合、限界削減費用:40$/tCO2 、
日本のGHG排出量:2005年比▲32%。
- 2100年に2℃_気候感度3.0℃レベル相当とした場合、限界
削減費用:360$/tCO2、日本のGHG排出量:2005年比
▲48%。
発電電力量 [TWh/yr]
1000
原子力
水力・地熱
まとめ
まとめ
23
 温室効果ガス排出目標は、様々な指標で見て、世界主要国の約束草案より
も優れたものと評価される。しかし、省エネ対策を大きく見込んでいるこ
とに起因する意欲的な目標に過ぎるようにも評価され(CO2限界削減費用
が他国に比べ極めて高い目標となっている)、その実現性が懸念材料と考
えられる。また、産業の国際競争の視点からも注意が必要である。
 長期目標(2℃目標)との関係については、2℃目標達成の排出経路は幅
が広く、最新のIPCC報告書の知見を踏まえ、平衡気候感度2.5℃を想定し
た場合には、2℃以内を期待できる排出経路に沿っていると推計される
(ただし、平衡気候感度3.0℃を想定した場合には、大きな排出ギャップ
がある)。
 また、2030年と2050年の排出削減費用負担の視点で日本の目標を評価す
ると、仮に、余裕を持って2℃目標達成を期待できる世界排出量を2005年
比で半減する目標を想定したとしても、2030年と50年のGDPあたり排出
削減費用は同レベルであり、費用負担を先送りするような目標ではなく、
十分に世代間の費用負担のバランスがとれた目標であると評価される。
 いずれにしても、約束草案について、各国の排出削減努力を適切に評価す
る適切なレビュー方法を確立して、peer-pressureが働くようにし、将来
に向けた深堀を実現していくことが重要
参考
主要エネルギー部門における
エネルギー効率の比較(1/2)
43
Japan
41
Germany
39
石炭火力
US
37
Efficiency(%)
25
出典) RITE, 2014 (IEA, 2013を基に推計)
China
35
Korea
33
Russia
31
India
29
EU (27)
27
World
25
1990
1995
2000
2005
2010
60
ガス火力
Spain
55
UK
出典) RITE, 2014 (IEA, 2013を基に推計)
Mexico
GDP基準でのエネルギー原単位
(GDPあたりの一次エネルギー消費
量) の水準は産業構造によって影響
される。よって、排出削減努力を評価
するためには、主要部門・生産プロセ
ス別のエネルギー原単位(エネル
ギー効率)を計測することは重要
Efficiency (%)
50
Italy
45
US
Japan
40
Iran
35
Russia
EU (27)
30
World
25
1990
1995
2000
2005
2010
主要エネルギー部門における
エネルギー効率の比較(2/2)
Primary energy consumption of BOF steel
(GJ/ton of crude steel)
35
34.5
33.1
2005
2010
30
28.3
25.9 25.7
25
26
23.1
22.9
26.8
27.7 27.7
28.1 28.2
28.9
28.3
29.1
33.2
31.1
30.0 30.3
鉄鋼
(転炉鋼)
28.3
23.5 23.8
20
15
出典) Oda et al. 2012;
RITE, 2012
10
Japan
Korea
Germany
China
France
UK
India
Brazil
US
Russia
Ukraine
セメント
(クリンカ)
出典) WBCSD/CSI他を
参考にRITEで推計
Heat consumption of clinker production
(GJ/t-clinker)
6
2005
5.4
2010
5.2
5
3.7 3.8
4
3.1 3.3
3.3 3.3
Japan
India
4.0
4.2
3.9
3.8
4.0
4.2
4.0
3.5
3
2
1
0
Germany
UK
France
US
China
Russia
主要国における限界削減費用曲線の比較(2030年)
27
400
米国
GHG限界削減費用 [$/tCO2eq]
350
EU28
日本
300
250
200
150
100
50
0
-20
-10
0
10
20
30
2005年比GHG削減率 [%]
40
50
60
同じ2005年比GHG削減率を達成する時の限界削減費用は、欧米に比べて日本では高くなる。
*本限界削減費用曲線の推計においては、それぞれの価格帯において世界全体の限界削減費用が均等化していると想定した。
OECD諸国の電力需要のGDP弾性
(10年平均での表示)
GDP弾性: 1.0
7
電力年成長率 (%)
GDP弾性: >1.0
Japan
Germany
6
France
GDP弾性: <1.0
5
Italy
United Kingdom
Netherlands
Denmark
4
Sweden
Spain
3
United States
Canada
Australia
2
Korea
Hungary
1
Poland
Turkey
0
-1
0
1
2
3
4
-1
震災後の節電
の効果込み
政府エネルギーミックス
GDP想定値(1.7%)
GDP弾性値が負の
ケースは極めて稀
5
6
7
GDP年成長率 (%)
28
10年平均の変化率
(1990-92)~(2000-02)
(1995-97)~(2005-07)
(2000-02)~(2010-12)
の3点を表示
(特異時点を避けるた
めに代表点は3年平均
を利用)
気候感度の評価の変遷とIPCC WG3 AR5
長期シナリオ推計で用いられた気候感度
平衡気候感度(”likely”(AR4以降の定義では>66%)な幅)
(括弧は最良推計値(”best estimate”もしくは
”most likely value”))
IPCC WG1 AR4以前
1.5~4.5℃(2.5℃)
IPCC WG1 AR4
2.0~4.5℃(3.0℃)
IPCC WG3 AR4 シナリオ気温
推計(MAGICCモデル)
確率計算は無し(3.0℃)
IPCC WG1 AR5
1.5~4.5℃(合意できず)
IPCC WG3 AR5 シナリオ気温
推計(MAGICCモデル)
2.0~4.5℃(3.0℃)
【AR4の評価をそのまま利用】
【WG1 AR5(SPM)における具体的な記述】
Likely in the range 1.5 C to 4.5 C (high confidence)
Extremely unlikely less than 1 C (high confidence)
Very unlikely greater than 6 C (medium confidence)
No best estimate for equilibrium climate sensitivity can now be given because of a lack of agreement on values across
assessed lines of evidence and studies.
 平衡気候感度(濃度が倍増し安定化したときの気温上昇の程度の指標)の不確実性は未だ大きい。
 AR5 WG1では大気海洋大循環モデル(AOGCM)推計以外による気候感度の分析・評価の知見を含めて
総合的に判断した結果、AR4よりも低位に修正(1.5~4.5℃)。
 しかし、AR5 WG3の長期排出経路の気温推計においては、AR4の気候感度(2.0~4.5℃、最良推計値
3.0℃)をベースに推計がなされている。
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