コバルト鉱石

コバルト鉱
1. コバルト鉱石
コバルト鉱石の
鉱石の種類
コバルトの生産に使用される主要な鉱石は次の様である。[1]
(a) 輝コバルト鉱(cobaltite, CoAsS)(コバルトの硫化物及び砒化物)
(b) ヘテロゲナイト(heterogenite, CoO(OH))(含水酸化コバルト)
(c) 硫コバルト鉱(linnaeite, CoCo2S4)(コバルト及びニッケルの硫化物)
(d) 砒コバルト鉱(smaltite, (Co,Ni)As3-X)(砒化コバルト)
コバルトは銅鉱、銅-ニッケル鉱、ニッケル鉱の副産物として生産されている。
2. コバルト (Co:
(Co:cobalt)
Co:cobalt)の
cobalt)の特性値と
特性値と概要
・陽子数:27
・価電子数:-
・原子量:58.933200
・融
・沸
・密
点:1495℃
・ 存在度(地球):29ppm
点:2870℃
度:8.90
[2]
コバルトは強磁性体であり、純粋なものは銀白色の金属である。金属単体とし
てのコバルトの用途はほとんど無いが、放射性同位体のコバルト 60 をγ線源と
して放射線療法、ガンマ線滅菌、食品照射に広く利用されている。また、生命に
とっても必須成分である。
コバルトは産業上重要性が高い金属であるため、万一の国際情勢の急変に対す
る安全保障策として国内消費量の最低 60 日分を国家備蓄すると定められている。
3. 産地
コバルトの世界の埋蔵量は、約 700 万トン(純分)と推定されている。国別の埋
蔵量はコンゴ(49%)、オーストラリア(20%)、キューバ(14%)、ザンビア
(3.9%)、ロシア(3.6%)、ニューカレドニア(3.3%)、である。コバルトの
鉱床としては、コンゴとザンビアの堆積性層状銅鉱床、オーストラリア、ロシ
ア及びカナダの銅・ニッケル鉱床、キューバ及びニューカレドニアのニッケ
ル・ラテライト鉱床などがあり銅鉱床、銅・ニッケル鉱床及びニッケル鉱床の
副産物として採掘される。コバルト鉱の 2007 年における世界の生産量は約
62,300 トン(純分)と推定されている。国別の生産量はコンゴ(36%)、カナダ
(13%)、オーストラリア(12%)、ザンビア(11%)、ロシア(8.0%)、キュ
ーバ(6.4%)、中国(3.7%)である。[3]
世界のコバルト鉱石の生産量は、1999 年には 25,700 トンであったが 2007 年に
は 62,300 トンに増加した。これは、中国、日本を中心とした全世界的なリチウ
ムイオン二次電池需要の好調を反映し増加してきた。[4]
4. 輸入先国
我が国はコバルト資源の全量を海外に依存している。輸入形態としては鉱石、
地金、金属粉末、酸化物、水酸化物などの形態で輸入している。表-1 に示したコ
バルト鉱石(精鉱を含む)の輸入量は 2005 年には 63 トンと少量である。国別の
輸入先はオランダ(46%)、中国(24%)、イギリス(21%)である。表-2 にコバ
ルトの中間生産物の国別輸入量を示した。コバルト地金及び粉末の輸入量は
12,773 トンである。国別の輸入先はフィンランド(32%)、オーストラリア(19%)、
カナダ(17%)ザンビア(10%)である。コバルト酸化物の輸入量は 537 トンで
ある。国別の輸入先はベルギー(30%)、フィンランド(28%)、中国(21%)、
台湾(12%)である。コバルト水酸化物の輸入量は 941 トンである。国別の輸入
先はアメリカ(45%)、台湾(29%)、ベルギー(20%)、中国(5%)である。[5]
表-1 コバルト鉱国別輸入量
2005.1~12 輸入実績
品目名
単位
合計
トン
輸入国
輸入量
63 オランダ
コバルト鉱(精鉱を含む。
)
比率
29
46.0
中華人民共和国
15
23.8
英国
13
20.6
モロッコ
3
4.8
ウガンダ
3
4.8
表-2 コバルト中間生産物国別輸入量
2005.1~12 輸入実績
品目名
単位
トン
コバルト地金、粉末
トン
コバルト酸化物
トン
コバルト水酸化物
合計
輸入国
12,773 フィンランド
輸入量
比率
4,149
32.5
オーストラリア
2,431
19.0
カナダ
2,203
17.2
ザンビア
1,279
10.0
その他
2,711
21.2
160
29.8
フィンランド
148
27.6
中華人民共和国
112
20.9
台湾
66
12.3
その他
52
9.7
424
45.1
台湾
273
29.0
ベルギー
192
20.4
48
5.1
3
0.3
537 ベルギー
941 アメリカ合衆国
中華人民共和国
その他
5. コバルト鉱石
コバルト鉱石の
鉱石の精製法及び
精製法及び誘導品の
誘導品の製造法[6]
図-1 に現在、日本において行われている電気コバルトの製造法(ニッケル製造
時の副産物)をしめす。ニッケルマットを塩素浸出し分離した、コバルト澱液を
酸浸出、溶媒抽出、電気分解工程を経て電気コバルトを製造する。
コバルト(電気コバルト)の製造プロセス
工 程
ニッケルマット
混合硫化物
Ni:70%
1.破砕工程
粉 砕
2.塩素浸出工程 (塩素との反応)
塩素浸出
Ni:60%
溶媒抽出
浄 液
3.コバルト・不純物
の除去工程
硫黄回収
コバルト澱物
4.酸浸出工程
5.溶媒抽出工程
脱銅電解
酸浸出・浄液
溶媒抽出
塩化ニッケル溶液 (NiCl2)
銅 粉
硫 黄
電 解
塩 素
塩化コバルト溶液 (CoCl2)
6.電気分解工程
電気ニッケル
回収・再利用
電 解
電気コバルト
図-1 コバルト製造工程図 (住友金属鉱山株式会社ホームページを参考に編集)
6. コバルト鉱
コバルト鉱の最終用途
単体金属としてのコバルトの用途はほとんどないが、その中で最も重要な用
途は放射性同位体のコバルト 60 をγ線源として用いるもので、医療分野での
放射線療法、ガンマ線減菌、食品分野での食品照射(ジャガイモの発芽防止)
などに広く利用されている。コバルトは地金、粉末、酸化物、水酸化物の形態
で種々の産業分野で利用されている。
コバルトは地金、粉末、酸化物、水酸化物などの形態でさまざまな分野で利
用されている。
① 二次電池分野は、日本では最大の需要分野であり、2005 年においては国内
コバルト需要の約 3 分の 2 を占めていると推定されている。リチウムイオ
ン二次電池は、高エネルギー密度の特性を持ち携帯電話やノートパソコン
等の小型・軽量化に大きく寄与している。
② 特殊鋼及び粉末冶金分野では、スーパーアロイ(超耐熱合金)、超硬合金、
高速度工具鋼等に使用されており、両分野合わせて国内需要の約 13%を占め
ていると推定される。
③ 磁石分野では、アルニコ磁石(コバルトとアルミ、ニッケル、鉄等の合金)
等の鋳造磁石や、サマリウム・コバルト磁石等の希土類磁石を製造する原料
として使用されている。
④ その他の需要分野では、ビデオテープ等に使用される磁性材料、石油精製・
重油脱硫時の触媒、顔料等の化成品等に使用されている。
表-3 にコバルト鉱石の主な用途先を示した。[7]
表-3 コバルト鉱石の用途先
製
品
[7]
JOGMEC:鉱物資源マテリアル・フロー2005.より編集
主要な応用製品(用途)
二次電池
リチュウムイオン電池:携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ、電動工具
特殊鋼
耐熱性鋼:ジェットエンジン部品、ガスタービン部品
高速度鋼:切削工具
粉末冶金
超硬工具:切削工具、耐摩工具、工作機械、鉱山機械
磁石
永久磁石:電子機器・自動車(各種モーター、通信・計測・制御機器、音響機器)
触媒
石油精製・重油脱硫時の触媒
金属石鹸
自動車(タイヤ)
磁性材料
磁性酸化鉄添加剤:VTRテープ用
顔料
印刷・窯業
その他
磁気記録媒体、電子材料
7. 参考資料
[1] 財務省貿易統計
関税率表解説
[2] Newton 別冊:完全図解
周期表,株式会社ニュートンプレス
[3] U.S.Geological Survey, Mineral Commodity Summaries 2008
[4] 南博志:レアメタル 2006(3)コバルトの需要・供給・価格動向等.JOGMEC;
2006.9 金属資源レポート
[5] 財務省:貿易統計,2005
[6] 住友金属鉱山株式会社ホームページ
[7] 独立行政法人
http://www.smm.co.jp/
石油天然ガス・金属鉱物資源機構:
鉱物資源マテリアル・フロー2005
2010 年 2 月