輸入ルーマニア

マンガン鉱
1. マンガン鉱
マンガン鉱の種類
マンガン鉱の多くは高炭素フェロマンガン、シリコマンガン(粗鋼生産時の鋼の
性質向上用原料)及び電解二酸化マンガンの生産に使用されているが、その主要な
鉱石は次の様である。[1]
(a) ブラウン鉱(braunite, MnMn6O8SiO4)(酸化マンガン)
(b) 菱マンガン鉱(rhodochrosite, MnCO3 又は dialogite)(炭酸マンガン)
(c) ハウスマン鉱(hausmannite, MnMn2O4)(含塩酸化マンガン)
(d) 水マンガン鉱(manganite, MnO(OH))(含水酸化マンガン)
(e) 硬マンガン鉱(psilomelane, (Ba,H2O)2Mn5O10)(含水酸化マンガン)
(f) 軟マンガン鉱(pyrolusite, MnO2 又は polianite)(二酸化マンガン)
マンガンは地球上に存在する元素の中で 12 番目に多い鉱物である。現在、マン
ガン資源として採掘されている鉱物は、酸化マンガン鉱、炭酸マンガン鉱、珪酸マ
ンガン鉱が主体である。酸化マンガン鉱は、高品位で最も多く使用されている。炭
酸マンガン鉱と珪酸マンガン鉱は一般に中・低品位の鉱石である。深海底にはマン
ガン、鉄などの金属水酸化物の塊であるマンガン団塊(マンガンノジュール)とし
て存在している。[2]
2. マンガン (Mn:
(Mn:manganese)
Mn:manganese)の
manganese)の特性値と
特性値と概要
・陽子数:25
・融
点:1244℃
・価電子数:・沸
・存在度(地球):1400ppm
・原子量:54.938049
点:1962℃
・密
度:7.44
[3]
マンガンは鉄よりも硬いが非常にもろいという特徴がある。鉄に添加してマンガ
ン鋼にすると、衝撃や摩耗に強くなる。その他、マンガン電池にも使用されている。
マンガンは産業上重要性が高い金属であるため、万一の国際情勢の急変に対する
安全保障策として国内消費量の最低 60 日分を国家備蓄すると定められている。
3. 産地
マンガン鉱床はウクライナ、ルーマニア、ハンガリーの黒海周辺地域、ブラジル、
ガボン、ガーナ等の南半球大西洋圏と、中国、南アフリカ、オーストラリア、イン
ド等大陸移動前のゴンドワナ大陸と呼ばれる地域に分布しているが、北米大陸及び
その他の地域にはマンガン資源は乏しい。[2]
マンガン鉱石の世界の埋蔵量は、約 4 億 6 千万トンと推定されている。国別の埋
蔵量はウクライナ(30%)、南アフリカ(22%)、オーストラリア(14%)、インド
(12.2%)、ガボン(4.3%)である。ウクライナと南アフリカの上位2ヶ国の埋蔵
量は約 87%を占める。マンガン鉱石の 2007 年における世界の生産量は約 1 千 160
万トンと推定されている。国別の生産量は南アフリカ(20%)、オーストラリア
(19%)、中国(14%)、ガボン(13%)、ブラジル(8.6%)、ウクライナ(7.1%)、
インド(5.6%)である。南アフリカ、オーストラリア、中国、ガボンの上位 4 ヶ
国の生産量は約 66%を占める。[4]
日本においては、多数のマンガン鉱山があったが、昭和 61 年を最後に生産を停
止した。主要な鉱山としては、岩手県の野田玉川鉱山、北海道の大江鉱山、上国
鉱山、稲倉石鉱山、石崎鉱山、長野県の浜横川鉱山が挙げられる。[2]
4. 輸入先国
日本は、マンガン全量を、マンガン鉱石、電解金属マンガン及びマンガン系合金
鉄(フェロマンガン、シリコマンガン)の形態で輸入している。表-1 から表-4 に 2005
年における、マンガン鉱、マンガン(金属マンガン)、フェロマンガン及びシリコマ
ンガンの国別輸入量を示す。マンガン鉱の輸入量は 2005 年においては約 132 万 6
千トンであった。国別の輸入先は南アフリカ(63%)、オーストラリア(29%)、ガボン
(3%)、インド(3%)、ガーナ(2%)である。南アフリカとオーストラリアの上位2ヶ国
からの輸入は約 92%を占める。
金属マンガンは特殊鋼の添加物、アルミ、フェライト及び二次電池等に使用され
るが、その輸入量は 8 万 4 千トンであり、国別の輸入先は中国(90%)南アフリカ(9%)
であり2ヶ国でほぼ 100%を占めている。
フェロマンガン、シリコマンガンは合金鉄の形で製鋼プロセス時に添加されるが、
フェロマンガンの輸入量は 5 万 2 千トンであり、国別の輸入先はオーストラリア
(38%)、南アフリカ(26%) 中国(25%)であり 3 ヶ国で約 90%を占めている。また、
シリコマンガンの輸入量は 23 万 4 千トンであり、国別の輸入先は中国(57%)、ウク
ライナ(18%)、韓国(5%)、オーストラリア(5%)、カザフスタン(5%)であり中国から
の輸入が約 60%を占めている。[5]
表-1 マンガン鉱国別輸入量
2005.1~12 輸入実績
品目名
単位
合計
輸入国
輸入量
比率
マンガン鉱(精鉱を含む。)及び含鉄マンガン鉱(精鉱を含むものとし、マンガンの含有量
が乾燥状態において全重量の 20%以上のものに限る。)
二酸化マンガン鉱(マンガンの
トン
1,489 ガボン
1,400
94.0
含有量が乾燥状態において全
中華人民共和国
60
4.0
従量の 39%を超えるもの)
フランス
20
1.3
オランダ
9
0.6
表-1 マンガン鉱国別輸入量つづき
2005.1~12 輸入実績
品目名
マンガン鉱(二酸化マンガンを
単位
合計
トン
1,198,377 南アフリカ共和国
輸入国
除く。)(精鉱を含むものとし、マ
オーストラリア
ンガンの含有量が乾燥状態に
ガボン
おいて全重量の 39%を超えるも
中華人民共和国
輸入量
比率
775,415
64.7
382,274
31.9
40,628
3.4
60
の)
0.0
マンガン鉱(マンガンの含有量
トン
28,636 ガーナ
が乾燥状態において全重量の
中華人民共和国
28,616
99.9
20
39%以下のもの)
含鉄マンガン鉱(精鉱を含むも
0.1
トン
97,721 南アフリカ共和国
のとし、マンガンの含有量が乾
インド
燥状態において全重量の 20%
中華人民共和国
57,986
59.3
38,655
39.6
1,080
以上のもの)
表-2
1.1
マンガン含有中間製品国別輸入量
2005.1~12 輸入実績
品目名
単位
トン
マンガン及びその製品
トン
フェロマンガン
合計
輸入国
フェロシリコマンガン
比率
84,278 中華人民共和国
75,808
90.0
南アフリカ共和国
7,846
9.3
アメリカ合衆国
477
0.6
その他
147
0.2
19,612
37.5
南アフリカ共和国
13,590
26.0
中華人民共和国
13,134
25.1
5,921
11.3
234,400 中華人民共和国
134,081
57.2
ウクライナ
41,486
17.7
大韓民国
12,814
5.5
オーストラリア
12,413
5.3
カザフスタン
11,168
4.8
9,542
4.1
52,256 オーストラリア
その他
トン
輸入量
その他
5. マンガン鉱石
マンガン鉱石の
鉱石の精製法及び
精製法及び誘導品の
誘導品の製造法
マンガン鉱石の選鉱工程は酸化物鉱と炭酸塩鉱によって異なる。酸化物鉱は水
洗だけで品位向上が可能なため、鉱石を破砕した後に、水洗により粘土分を除去
する。炭酸塩鉱は、水洗、重液選鉱のほかに浮遊選鉱、高磁力選鉱などの選鉱工
程を行う場合がある。[2]
マンガン鉱石の誘導品であるフェロマンガンは、マンガン鉱石とコークスを混
合し、電気炉で溶解・還元して製造される。フェロマンガンの炭素含有率が 7.5%
を超えるものを高炭素フェロマンガン、2.0%以下を中炭素フェロマンガン、1%
以下のものを低炭素フェロマンガンとして分類している。ケイ素が多いものはシ
リコマンガンと呼ばれ、マンガン鉱石、くず鉄、コークス、石灰を電気炉で強熱
して製造される。高品位マンガン鉱石からは、二酸化マンガンなどが製造される。
6. マンガン鉱
マンガン鉱の最終用途
マンガンは酸素及び硫黄と結合しやすい性質をもつため、フェロマンガン(金
属マンガンも含む)は鉄鋼の製錬時における脱酸・脱硫に使用される。また、特
殊鋼に添加することにより靱性を劣化させることなく強度が増加する特性があ
る。その他二酸化マンガンは乾電池、フェライト、顔料、陶磁器釉薬などに利用
される。マンガン需要に関する詳細なデータはないが(社)日本メタル経済研究
所の 2001 年の調査では約 95%の 55 万トン(Mn 純分量)が鉄鋼用に、約 5%の 2
万 5 千トン(Mn 純分量)が電池及びフェライトに使用されている。マンガン鉱か
ら製造される中間製品としては、フェロマンガン、シリコマンガン、二酸化マン
ガン、過マンガン酸カリなどがあるが、その主な用途を表-3 に示す。[2]
表-3 マンガン鉱の最終主要用途先[2]
マンガン中間製品
フェロマンガン
主な最終製品
主な用途
特殊鋼(マンガン鋼部品)
浚渫バケットなど機械部品、ヘリコプター
のボディー・車輪軸
金属マンガン
アルミ合金製品
アルミ缶、添加剤など
二酸化マンガン
乾電池
マンガン乾電池、アルカリ乾電池
四三酸化マンガン
フェライト
磁性材料:VTR、TV、コンピューター
過マンガン酸カリ
酸化剤
染色、上水道の浄化剤、医薬、顔料、釉薬
殺菌剤、消臭剤
その他
ガラス着色剤
など
7. 参考資料
[1] 財務省貿易統計
関税率表解説
[2] 南博志:レアメタル 2006(5)
マンガンの需要・供給・価格動向,JOGMEC
[3] Newton 別冊:完全図解
周期表,株式会社ニュートンプレス
[4] U.S.Geological Survey, Mineral Commodity Summaries
2008
[5] 財務省:貿易統計,2005
[6] (独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構:鉱物資源マテリアル・フロー2005