経済月報 No.470 掲載分 平成 26 年 6 月 ●釜山支店℡010-82-51-462-3281 ●青島支店℡010-86-532-85766222 ●大連支店℡010-86-411-83705288 ●香港駐在員事務所℡010-852-2521-7194 【釜山支店】 「韓国の宅配文化」 1.初めに 韓国の宅配サービスは日々発展しており、宅配市場の年間売上は 3 兆 3,000 億ウォン(約 (*) と、毎年 6〜7%の伸びを示しています。2011 年大韓商工会議所の統計によ 3,297 億円) りますと、成人が 1 ヶ月の間に利用する宅配件数は、実に 7.3 件に達しています。宅配と いう画期的なサービスが登場してから、わずか 20 年しか経過していませんが、今や宅配は 日常生活において無くてはならないものとなっています。以前は、主に定期貨物が利用さ れ、バスやタクシーに乗ってわざわざ貨物集荷所まで、物品を受け取りに行かなければな りませんでしたが、今日では貨物集荷所を探す手間ひまをかけず、タクシー代を支払わな くても、安い価格で、在宅したまま、物品を受け取る時代へと変わったのです。 (*)100 ウォン=9.99 円 2.宅配文化が発展した原因と現状 宅配文化が韓国で発展している理由には、①国土が狭くアパート中心の密集した居住環 境、②同業者が多く、顧客を獲得していくための激しいサービス競争、そして③韓国人に 多いせっかちな性格、等が挙げられます。これに情報技術の進歩が加わり、スマートフォ ン+宅配という市場が飛躍的に成長しています。 また、一般商店より低価格で、何時でも何処でも注文ができ、物を即時に受け取ること ができるオンラインショッピングを多くの韓国人が利用します。宅配サービスはこのよう なオンラインショッピングによって拡大し、社会により一層受け入れられるようになった とも言えます。 宅配文化の一つである出前を例にあげると、国民所得が徐々に増加するに伴い、人々は 生活の質をいかに向上させていくか考えるようになり、出前は異例な速度で発展を遂げて きました。韓国料理、洋食の出前はもちろん、最近では、祭祀料理(*)と何でも出前が可能 な時代へと変化しました。そして、出前の発展には時間的な制約の解消と、運送手段・通 信手段の進歩が重要な役割を果たしました。最近では、出前専門企業等は 24 時間営業が基 本です。人々は時間の制約なく、食べたいものを食べることが可能になり、出前手段も自 転車からオートバイ、そして自動車へと発展すると同時に、量が多く、手の込んだ料理の 1 注文も可能となりました。 もちろん、出前はどこの国にでもありますが、例えば、携帯電話から「○○海水浴場の 中央あたりの青いパラソルの下です。」と自分達の居場所を教えさえすれば、その場所に出 前をしてくれるという韓国の出前サービスは格別です。祭りの席で、あるいは熱い夏の夜 に噴水の周辺で、海水浴場で腰を下ろして、ジャジャン麺、ピザ、チキン、ビール、ハン バーガーさらにキムチ鍋まで注文し、食べることが可能です。 歳月が流れると同時に、宅配の種類も多様化しています。夜食の宅配、スーパーで買い 物をした後自宅まで宅配してくれるスーパーマーケット宅配、オートバイによるクイック 宅配、タクシーや高速バスを利用した貨物宅配とさまざまな宅配サービスが登場していま す。また、宅配品目の種類も多様でピザ・チキン・ハンバーガーはもちろん、朝ご飯とお かず、ミネラルウォーターや赤ちゃんの離乳食、果物、おやつまで宅配してくれるところ もあります。近所のスーパーで野菜を購入すれば、指定した時間に宅配してくれます。当 日お届け宅配を利用すれば、朝、出勤中に本を注文し、午後、会社で本を受け取り、電車 内で本を読みながら帰宅することも可能です。 (*)祭祀料理・・・法事等で出される料理 3.宅配の進化 1992〜93 年は韓国に宅配が初めて登場し、同市場が急速に成長した時期でした。ここに クイックサービスまで加わり、オートバイで即時、物を宅配する現在のシステムが定着し ました。95〜96 年には大企業がホームショッピング事業に参入し、 「配送料無料」時代を開 拓すると同時に、宅配市場は年 20%の成長をするという好況を迎えました。 また、最近は、スマートフォン時代に相応しく、宅配の注文方法も多様化し、宅配アプ リケーションも登場したため、利用者が大きく増加しました。 【宅配アプリケーション(ヨギヨ)の画像】 以前は、消費者が店に直接注文をすることが普通でしたが、現在は、スマートフォンの 関連アプリを開き、何回か画面をタップすれば、注文は完了します。消費者の立場では、 注文方法の選択肢が増えたことにより、「電話回線が混線し、注文ができないことによるイ 2 ライラ」が解消されたという長所もあります。企業の立場でも、「営業ツール」がもう一つ 確立したこともあり、良いこと尽くめです。 4.宅配の問題点 宅配文化が盛んになると同時に、各宅配会社同士の価格競争は激化し、石油価格や物価 は上昇しても、一度引き下げた価格を引き上げるのは容易ではありません。宅配量が増加 して、単価が下がるとなると、二重に大変です。しかも、過去には直営体制だったものが、 現在はアウトソーシング体制となり、業務の情報伝達がうまく機能せず混乱が生じるとい った、現場の宅配人の苦労は絶えないと指摘されています。指定配達時間に間に合わせる ための交通マナーを無視した危険な運転、各種損害賠償費用の負担、労働災害保険の未適 用なども問題点として指摘されています。 5.終わりに グローバル時代において、全世界にアピールできる競争力のある商品を持つことは大変 重要です。又、現在では、さまざまな国において、先端技術開発の分野において激しい競 争も繰り広げられていますが、輸出が可能なものは技術や物だけではありません。映画や ドラマをはじめとする文化・エンターテインメントが「韓流」というブランドになったよ うに、その国の文化も重要なコンテンツとなります。また、ひとつのサービスも競争力の ある魅力的な輸出アイテムとなることもあります。海外でも大きな反響を呼んでいる韓国 の宅配文化を、各国の特性に合うよう応用していく事で、新しい市場の創造と発展が期待 されます。 以 3 上
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