警戒管制レーダー装置の試行定期修理等において、交換

第
3
章
第
1
節
第
14
防
衛
省
( 3 ) 警戒管制レーダー装置の試行定期修理等において、交換時期や数量等を決めてあらか
じめ調達する必要がある部品等の調達に当たり、試行定期修理等の作業期間中に不具
か し
合が発見された場合等に瑕疵修補等の請求等を行うことなどにより、適切に部品等の
調達を図るよう改善させたもの
会計名及び科目
一般会計 (組織)
防衛本省 (項)
武器車両等整備費
部
局
等
航空自衛隊補給本部、航空自衛隊第 3 補給処
契
約
名
RECEIVER TRANSMITTER, RADAR 製造請負契約等 3 件
契 約 の 概 要
下似島分屯基地の固定式警戒管制レーダー装置 J/FPS ― 5 の試行定期
修理における交換用として取り付ける送受信モジュールアッシーの製
造を請け負わせるもの
契約の相手方
三菱電機株式会社
契 約 金
36 億 1313 万余円
(平成 23 年度∼25 年度)
額
上記のうち試行
定期修理の契約
24 億 5815 万円
(平成 23、24 両年度)
か し
時点までに瑕疵
担保期間が経過
していた交換用
モジュールアッ
シーに係る契約
金額
― 583 ―
1
FPS ― 5 の試行定期修理等の概要
⑴ FPS ― 5 の概要
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防
衛
省
航空自衛隊は、我が国周辺の空域を常時監視し、侵入する航空機等を警戒するために、
警戒管制レーダー装置を運用している。そして、平成 20 年度から 23 年度までの間に空中
線装置等多数の機器により構成される固定式警戒管 制 レ ー ダ ー 装 置 J/FPS ― 5(以 下
(注)
「FPS ― 5 」
という。
)
を 4 分屯基地に各 1 基新たに配備して運用している。
(注) 4 分屯基地
大湊、佐渡、下似島、与座岳各分屯基地
⑵ FPS ― 5 の試行定期修理及び交換用モジュールアッシーの調達の概要
航空自衛隊補給本部
(以下
「補給本部」
という。
)
は、警戒管制レーダー装置について、安
全かつ効率的に運用し得る品質を維持するために、一定の間隔で定期修理を行うこととし
ている。そして、定期修理は、補給本部の管理監督の下、航空自衛隊装備品等整備規則
等に基づき、航空自衛隊第 3 補給処
(以下
「第 3 補給処」
とい
(昭和 46 年航空自衛隊達第 10 号)
う。
)
が外注により行うこととなっており、警戒管制レーダー装置が配備された分屯基地内
等において部品等の交換、修理、総合調整、試験等の作業が実施されている。
また、補給本部は、FPS ― 5 のように新規に導入された警戒管制レーダー装置について
は定期修理を行った実績がないことから、定期修理を行う最適な間隔を設定することなど
を目的とした試行的な定期修理
(以下
「試行定期修理」
という。
)
を実施することにしてい
る。そして、FPS ― 5 の試行定期修理においては、その対象品目、数量等を確定させるた
めに、第 3 補給処は、補給本部からの指示により、22 年 12 月に FPS ― 5 の製造元である
三菱電機株式会社
(以下
「会社」
という。
)
との契約により検討結果報告書等を作成させてい
る。同報告書等では、試行定期修理において FPS ― 5 の空中線装置の構成品のうち電波の
送受信を行う送受信モジュールアッシー 9 品目計 4,974 個を交換することとなっている。
そこで、補給本部は、同報告書等を踏まえて、下似島分屯基地に配備した FPS ― 5 の初
号機については試行定期修理の作業を 27 年 5 月頃に行うよう計画し、第 3 補給処は、補
給本部からの指示に基づいて同分屯基地の FPS ― 5 の試行定期修理契約を同年 3 月 31 日
に会社と締結している。
また、第 3 補給処は、試行定期修理契約において交換用として取り付けることとしてい
る送受信モジュールアッシー
(以下
「交換用モジュールアッシー」
という。
)
について、会社
と別途の製造請負契約
(契約金額計 36 億 1313 万余円)
を締結することにより、23 年 12 月
に 1 品目 1,130 個、25 年 3 月に 5 品目計 1,622 個、同年 9 月に 3 品目計 2,222 個を調達し
ている。このように、交換用モジュールアッシーが複数回に分けて調達されている理由に
ついて、補給本部は、会社の製造ラインの都合により 1 回当たりの調達で製造可能な数量
に限りがあるとして、23 年 10 月に、会社から第 3 補給処に対して 3 回の契約に分けて調
達するよう要望があったためとしている。
か し
⑶ 交換用モジュールアッシーの瑕疵の処理
航空自衛隊は、航空自衛隊物品管理補給手続(平成 4 年補給本部長制定及び平成 25 年補給本
等に基づくなどして、調達物品等の受領後に瑕疵と認められる不具合が発見さ
部長制定)
れた場合等には、瑕疵担保期間内の不具合であるか否かを確認するなどした上で、契約相
手方に対して、修補若しくは代金の減額又は契約の解除
(以下、これらを合わせて
「瑕疵修
補等」
という。
)
の請求等を行うこととしている。そして、この瑕疵修補等の請求等につい
― 584 ―
ては、契約相手方が無過失責任を負うことになっている。交換用モジュールアッシーにつ
いても、前記製造請負契約の契約条項に瑕疵修補等の請求等に係る規定があり、その期間
は納入の日から 1 年以内とされている。
2
第
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章
検査の結果
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、経済性、効率性等の観点から、交換用モジュールアッシーの調達、管理等は適切
に行われているかなどに着眼して、第 3 補給処が 27 年 3 月 31 日に締結した下似島分屯基地
における試行定期修理契約
(契約金額 5 億 0761 万余円)
及び交換用モジュールアッシー 9 品
目計 4,974 個の調達に係る 3 件の製造請負契約
(契約金額計 36 億 1313 万余円)
を対象とし
て、航空幕僚監部、補給本部、第 3 補給処及び下似島分屯基地において、契約書、管理換
票、物品管理簿等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
第 3 補給処が前記 3 件の製造請負契約により調達した交換用モジュールアッシーは、25
年 2 月、26 年 3 月及び 27 年 2 月にそれぞれ会社を搬入地として納入され、兵庫県尼崎市に
所在する会社内の倉庫に寄託されていた。その後、27 年 5 月に試行定期修理の作業のため
に下似島分屯基地に輸送され、会社が同分屯基地において交換を行っていた。
しかし、27 年 6 月に、会社が FPS ― 5 の機器等の作動確認をしたところ、表のとおり、
交換用モジュールアッシーのうち 8 品目計 2,312 個に不具合が発見され、このため、第 3 補
給処は警戒監視任務に支障が生じないように交換前の送受信モジュールアッシーを再度取り
付けるなどしていた。
表
交換用モジュールアッシーの不具合の状況
契約年月日
契約金額
交換用モジュールアッシー
品目数
平成 23 年 12 月 22 日
25 年 3 月 26 日
925,470
(単位:千円、個)
数量
瑕疵担保期間
試行定期修理における
機器等の作動確認の結
果、不具合が発見され
たもの
品目数
数量
試行定期
修理の契
約時点の
瑕疵担保
期間の状
況
1
年 2 月 22 日∼
1,130 25
26 年 2 月 21 日
1
497
2
年 3 月 20 日∼
647 26
27 年 3 月 19 日
2
3
年 3 月 27 日∼
975 26
27 年 3 月 26 日
3
216 瑕疵担保
期間が経
過
225
938
1,532,685
計
2,458,155
6
2,752
6
25 年 9 月 26 日
1,154,979
3
年 2 月 27 日∼
2,222 27
28 年 2 月 26 日
2
瑕疵担保
1,374 期間内
合計
3,613,134
9
4,974
8
2,312
そこで、作動確認をした交換用モジュールアッシーに不具合が発見されたことから、試行
定期修理における部品等の調達に係る契約条件や瑕疵修補等の請求等の状況について確認し
たところ、23 年 12 月及び 25 年 3 月の 2 件の交換用モジュールアッシーの製造請負契約
(契
約金額計 24 億 5815 万余円)
における瑕疵担保期間は、試行定期修理の契約時点
(27 年 3 月
31 日)
までに既に経過していた。
― 585 ―
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防
衛
省
このため、瑕疵修補等の請求等についても、第 3 補給処は、不具合が発見された前記 8 品
目計 2,312 個のうち 25 年 9 月の製造請負契約に係る 2 品目計 1,374 個については、瑕疵担保
期間内であるとして会社に対して修補を請求し、その後修補が行われていた。しかし、23
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年 12 月及び 25 年 3 月の製造請負契約に係る 6 品目計 938 個については、不具合が発見され
た時期等が同じであるにもかかわらず、瑕疵担保期間が試行定期修理の契約時点
(27 年 3 月
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節
31 日)
までに既に経過していて、会社に対して瑕疵修補等の請求等を行っていなかった。
なお、補給本部及び第 3 補給処によれば、前記の不具合が製造から取り付けまでのどの過
第
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程の事象に起因するのかについては、不明としていた。
防
衛
省
このように、交換用モジュールアッシーについて、試行定期修理の契約時点までに瑕疵担
保期間が経過していて、試行定期修理における機器等の作動確認の結果、不具合が発見され
た場合等に会社に対して瑕疵修補等の請求等を行えなかった事態は適切ではなく、改善の必
要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、補給本部において、試行定期修理の計画に基づいて交
換時期や数量等を決めてあらかじめ調達する必要がある交換用モジュールアッシーの調達に
当たり、下似島分屯基地の試行定期修理の作業期間中に不具合が発見された場合等に瑕疵修
補等の請求等を行うための契約条件の検討を十分に行っていなかったことなどによると認め
られた。
3
当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、補給本部は、28 年 8 月に、警戒管制レーダー装置
の試行定期修理等において、交換時期や数量等を決めてあらかじめ調達する必要がある部品
等の調達に当たり、試行定期修理等の作業期間中に不具合が発見された場合等に瑕疵修補等
の請求等を行うために、契約に際して部品等を一括調達してその納入の時期を適切な時期に
設定したり、部品等の調達を試行定期修理等に係る契約に含めて一括品質保証としたりする
こととするなど、適切に部品等の調達を図る処置を講じた。
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