会報65号 2015年4月1日号PDFデータを開く

2015年4月1日 第65号
平和と友情の21世紀を築こう
会 報
公益財団法人
松前国際友好財団
Vol. 65
2015.4.1
松前国際友好財団創立35周年記念シンポジウム
学術および科学・技術研究者の国際的人材育成と
国際交流による世界平和を願って
(松前国際友好財団のこれまでとこれから)
公益財団法人松前国際友好財団は、松前重
カ国721名の中から選ばれた3名の外国人研
義博士(学校法人東海大学創立者)により
究者による招待講演「招聘研究者の自国での
1979年6月に設立されました。この度本財
活躍─自らの体験を通した人材育成─」がそ
団創立35周年を記念し、シンポジウムが1
れぞれ行われ、第2部は、3名のパネリスト
月25日東海大学校友会館(東京都千代田区
による「科学・技術分野での人材育成と国際交
/霞が関ビル35階)にて開催されました。
流」をテーマとする講演と総合討論が行われま
内田裕久本財団理事長より「松前国際友好
した。進行は本財団評議員松前光紀氏および
財団」についての紹介があり、続いて、第1
佐々木政子氏が務めました。また当日は日曜の
部として、本財団がこれまでに招聘した112
午後にもかかわらず、
多数の聴講者がありました。
編集・発行 公益財団法人 松前国際友好財団 〒167-0043 東京都杉並区上荻4丁目14番46号 ☎₀₃-₃₃₀₁-₇₆₀₀ FAX:₀₃-₃₃₀₁-₇₆₀₁
松前国際友好財団 会報
松前国際友好財団創立35周年記念シンポジウム
理事長講演 (要約)
松前国際友好財団について
理 事 長 内 田 裕 久
本日はこの財団をつくられた松前重義博士
の考え方と思想、なぜこの財団をつくったの
かを財団の現状とともにお話ししたいと思い
ます。
まず、今皆さんは普通に電話機をお使いに
なっています。「もしもし」と言ったときに、
すぐに相手からの反応がくる、この電話通信
高等学校、中学校、小学校、幼稚園、付属大
技術を確立させた通信ケーブルを、松前重義
学病院、そして研究センターを運営していま
博士が発明することにより、これがその後の
す。
世界標準のケーブルにもなっていきました。
それでは、松前重義博士がどうして、この
またそのときに出た学会からの奨学金で小さ
松前国際友好財団を設立したかというところ
な私塾、望星学塾を開設しました。これが現
に触れてみたいと思います。1941年、日本
在の東海大学の基になっています。
は太平洋戦争が始まるきっかけとなったハワ
松前重義博士はデンマークのグルントヴィ
イのパールハーバーに攻撃を仕掛けました。
博士の考え方に非常に強く影響をされました。 すでに松前重義博士は逓信省の役人で工務局
デンマークという国は一時期とても大きな国
長という立場にもありました。この無謀な戦
だったのですが、戦争を繰り返す中で小さく
争に対して開戦にも反対し、高松宮殿下とと
なっていきました。恵まれない土地の中でも
もに非常に強く働きかけをしましたが、当時
今のような素晴らしい立派な国になったのは、 の東条英機内閣の中での立場は非常に大変な
ひとえに国民の教育がしっかり行われたから
状況におかれ、40歳を過ぎた理工系の官僚
であるという確信を持った松前重義博士は、
でしたが、二等兵として南の前線に送られた
非常に感銘を受けました。そうして人材育成
わけです。
の教育のための教育機関をつくろうと決め、
1945年に日本は終戦を迎えます。松前重
東海大学の設立につながってまいりました。
義博士は南方の前線に送られたものの何とか
東海大学の校旗にある白いクロスは、キリス
生き延びて帰ってこられ、その後も政府の要
ト教の白いクロスにも対応しています。横の
職に就きました。終戦時に広島の原爆調査団
愛と縦の正義という2つのクロス、ここに真
長として報告書をまとめていたときには、
「新
理があるという考え方で、東海大学の教育の
型爆弾などと書くと日本人は最後まで戦う意
原点は人間と科学技術の調和に根差している
欲をなくしてしまう」という軍部に対しても、
ということです。現在、東海大学は約3万人
「自分たちの目で、あの悲惨な広島の現状を
の学生を抱えています。その他に短期大学、
見てこい」と追い返したという話があります。
2
2015年4月1日 第65号
無謀な戦争に対して、しっかりと反戦を唱え、 どお招きしてまいりました。現在、721名の
命をかけて戦ってきたのです。
研究者の方々を112カ国から日本に招聘して
第二次大戦後、松前重義博士は、まさに平
います。招聘した研究者の方々は、北は北海
和を目指した行動をとります。1つは国会議
道から、南は九州、沖縄まで全国の大学研究
員として、また1科学者としての行動です。
機関に滞在され、60%が国立大学、30%が
1955年には原子力基本法を制定、さらに翌
私立大学、10%がその他の国公立民間の研
年には日本で初めて東海大学に原子力工学専
究所となっています。応募されてくる方々の
攻をつくりました。1959年には科学技術省
男女比率では、圧倒的に男性の方が多いもの
設立に尽力しました。これは元はと言えば原
の採択率で見ると、最近は女性の採択率が非
子力を平和に利用しようという目的でつくら
常に高くなってきています。積極的に海外に
れた国の機関でもありました。そして1958
行くという、特に外国から見れば、日本に行
年、多重放送という形ではFM放送が初めて
って研究をしようという女性が増えてきたと
日本で実用化しました。この実験放送局だっ
いうことだと考えられます。そうして厳密な
たラジオ放送局「FM東海」は、1970年に
審査により選ばれた方々が日本に到着すると、
は現在の「東京FM」としてさらに大きく成
財団のスタッフが空港に出迎えに行き、日本
長しています。
での生活をスタートするためのいろいろなガ
このような平和に対しての松前重義博士の
イダンスをずっと続けてきているわけです。
行動を考えると、東西冷戦時代に東海大学の
滞在が終わり帰国のときには、皆さんがま
湘南校舎が非常に特別な場所だったことがあ
たお国に戻って、しっかりといろいろな活動
げられます。例えば、旧ソビエト連邦の研究
を展開していただきたいという願いを込めて、
者、あるいは東欧諸国の研究者・学生諸君が
修了証書を事務所でお渡ししています。同時
唯一滞在できる場所、それが湘南校舎でした。 に再来日される方々へのケア等も行っていま
東西冷戦という非常に難しい状況下でも世界
す。またこれらの活動の様子は、財団の「会
平和を目指すためには、両方のコネクション
報」や英語版の「ニュースレター」、「研究紀
をとっていく必要があるということで、非常
要」あるいは「奨学者名簿」で発表をしてい
に尽力をされたのです。2009年にロシアの
ます。
プーチン大統領が来日されたときには、東海
私どもは研究者の交流、人的ないろいろな
大学の名誉学位をお渡ししました。プーチン
コネクションをつくり、またさらにそれを広
大統領は柔道に非常に長けており、この柔道
げていく活動を通して松前博士が残されてい
の心という点に注目をしての学位授与となり
った言葉、あるいは創立の精神をしっかりと
ました。
受け止めて前進していきたいと思っています。
松前重義博士が平和を目指し、いろいろな
特にいろいろな国の政治的なバリアがありま
レベルで、いろいろな活動をされている中で
すが、それも乗り越えていくというのが創立
松前国際友好財団が1979年に設立されまし
者の姿勢でした。現在のこの活動を世界中に
た。まさにこの財団のできた創立の精神は、
広げて、より多くの研究者の方々が私どもの
世界平和をつくっていくためにはお互いの相
財団を利用し、日本にもっと来ていただける
互理解を促進しながら、日本と他国の間の理
よう、そして相互理解をより深めていきたい
解を深めていこうというものなのです。
と考えている次第です。
1980年から活動を開始して、毎年20名か
以上で私の挨拶とさせていただきます。ご
ら30名の奨学者、研究者を日本に6カ月ほ
清聴ありがとうございました。
3
松前国際友好財団 会報
講演第1部 (要約)
成功と好機を持たらす
松前国際友好財団
リシャルド・ゴレツキ教授
(Dr. Ryszard GORECKI)
ヴァルミア・マズーリィ大学学長
ポーランド共和国上院議員
創立35周年の記念シンポジウムにお招き
リシャルド・ゴレツキ博士は、ポーランド共和国ヴァルミア・マ
ズーリィ大学学長・教授。1988年9月から1989年2月にかけて松
前国際友好財団の招聘で来日され、東北大学教養部生物学科・江刺
洋司教授の下で「種子の生理学」について6カ月間研究活動を展開、
現在母国で上院議員としても活躍されています。
いただきありがとうございます。日本には
25年以上前に日出ずる国として初めて松前
国際友好財団から招聘を受けて日本に訪れた
ときから魅了されています。興味深いことに
ができ、9つの学部を新たにつくることがで
私が滞在した期間は、招聘研究者の中でヨー
きました。ポーランドでは最も設立から年が
ロッパ出身は私一人で、共産主義の東ヨーロ
浅い大学ですが、現在は2万8,000人の学生
ッパから参加したのは私が最初でした。
が65の研究分野で勉強をしています。コル
ヨハネ・パウロ2世はポーランド出身です
トボーキャンパスは、ポーランドでも最も美
が「将来は今日から始まる。明日からではな
しい大学キャンパスの1つです。
い」という言葉を残しています。それがまさ
私は科学者としてのキャリアだけではなく
に1988年9月の私にとってもそうでした。
そ の 一 方 で 公 務 に も か か わ っ て い ま す。
科学の未来が私にとって始まったのは、日本
2008年からはポーランド上院議員を務めて
での、ある美しい日のことでした。
います。ポーランド日本議員連盟のメンバー
私は東北大学の江刺洋司教授の下で、大変
にもなっており、今の駐ポーランド日本大使
素晴らしい時期を過ごすことができ、非常に
とも密にコンタクトをとらせていただいてい
多くの良い研究を進めることができました。
ます。日本とポーランドとの協力交流に幅広
科学者としてのキャリア、それから公務に就
くかかわることで、日本でも評価をいただき、
く上でも大きな影響を受けることになりまし
2014年には日本とポーランドの相互理解を
た。
促進し貢献したこと、また議員として科学者
そうして日本での経験により、ダイナミッ
として2国間協力を強化したことについて、
クに研究を展開できたおかげで1993年には、 日本政府から旭日重光章を授与されました。
当時のレフ・ワレサ大統領より任命され、オ
このような栄誉に浴することは、松前財団
ルシュティン大学に最も若い教授の1人とし
の招聘研究者としての経験がなければなかっ
て就任しました。大統領は「ポーランドは第
たであろうということを、式典に出席した多
2の日本になるべきだ」とよく言っておられ
くの人たちに伝えることができました。また
ました。
2国間協力についてのさらなる強化を約束し、
1999年にはヴァルミア・マズーリィ大学
日本に対する感謝の恩返しをしたいと思って
が設立され、初代学長として就任しました。
います。そして社会的にも経済的にも、あら
その間に大学として大きな進捗を遂げること
ゆる分野で日本とポーランドはより近い関係
4
2015年4月1日 第65号
になることを願っています。
めのスキルを磨くことを可能としてくれまし
さて、本日のシンポジウムのテーマ、つま
た。世界の中の最も複雑な問題についても科
り将来の人材を育成していくことは重要だと
学に限りませんが、真理の探究の支援をして
考えています。現代の大学そして研究所は、
くださっています。真理への道のりを表す言
科学研究という意味でも教育を行っていくと
葉は「わからない、アイドントノウ」という
いう意味でも、また教員の人材の開発という
言葉です。ポーランド人のノーベル賞受賞者
意味でも国際化していかなければなりません。 の詩人、ヴィスワヴァ・シンボルスカは受賞
そして効率よく世界的な経済発展、科学とつ
演説で「どのような知識も新しい疑問に結び
ながっていくことが重要です。松前財団がこ
つかない知識は、すぐになくなってしまう。
のように若手の研究者を招聘し、機会を与え
そして、温度がある程度維持されなければ生
てくださり、開発支援を必要とするような国
命を維持することはできない。そして、極端
の研究者を招聘してくださっていることは、
な場合には古代から現代史にいたるまで知ら
大変喜ばしいことだと感じています。
れていることであっても、十分に理解をされ
現在、世界は数多くの問題や課題に直面し
ておらず社会にとって致死的な勢いとなるこ
ており、人の健康、安全などの問題に対処す
とがある」と言っています。
ることが中でも重要な任務であると考えてい
この言葉を引用することにより財団のご支
ます。そして新しく民主国家として発展して
援に感謝を申し上げたいと思います。そして
いる、例えば、アフリカや中東欧諸国に対し
財団の親愛なるメンバーの方々、若い科学者
ての経済的な支援、社会的な支援を財団がし
たちがその知識をより広げて、科学的な手法
てくださっていることは大変重要です。
により真理を探究することの支援をぜひ続け
また、国の中には環境の劣化にかかわる犯
ていただきたいと思います。
「わからない、
罪の問題を抱えている国があります。そのた
アイドントノウ」という言葉に対しての答え
めにグリーン犯罪学という、日本で展開され
を求めることを支援していただきたいと思い
ている学問が役に立つと思います。オルシュ
ます。また世界中の若い招聘研究者たちが、
ティン近くのビャウィストクの大学と、ヴァ
その支援を受け情熱的な研究者として答えを
ルミア・マズーリィ大学では、共同で日本法
見つけていくことができることを願っていま
センターを開設することになっています。現
す。若い研究者には、ぜひ世界中のすべての
在ポーランドには、ヨーロッパ法、アメリカ
大学の相互の便益、そして福祉のために研究
法、フランス法、ロシア法、中国法の法律セ
をしていただきたいと思います。
ンターがありますが、オルシュティンには日
最後にヴァルミア・マズーリィ大学を代表
本の法律センターがありませんので、自分た
して、内田裕久教授に御礼申し上げます。東
ちで設立しようということにしました。
海大学教授、そして財団理事長の内田裕久様
松前財団が果たされた素晴らしい業績につ
に対して、私どもの大学からの感謝の意を表
いて一言申し上げたいと思います。松前財団
明して締めくくりたいと思います。
の親愛なる友人の方々は、35年前に大いな
る挑戦の旅を始めました。それは世界が危機
に直面している時期でしたが、そういった時
期にも躊躇することなく共産圏からも若い研
究者を招聘してくださいました。そしてでき
ヴァルミア・
マズーリィ大学
キャンパス
る限り環境を整えて受け入れ、真理探究のた
5
松前国際友好財団 会報
講演第1部 (要約)
リーダーとなる人材開発に
おける挑戦とチャンス
シャウカト・アリ・
アブドゥルラザク教授
(Dr. Shaukat Ali ABDULRAZAK)
ケニア共和国ウンマ大学副学長
シャウカト・アリ・アブドゥルラザク博士は、ケニア共和国ウン
マ大学副学長・教授。1998年6月から12月にかけて松前国際友好
財団の招聘で来日し、島根大学生物資源科学部農業生産学科・藤原
勉教授の下で、「木本マメ科の樹葉等の家畜飼料の活用評価」につい
て6カ月間研究滞在をされています。博士は日本語のスピーチ能力
をずっとキープされており、機会があるごとに母国で日本人と接し
て交流を深めています。
まずこの創立35周年記念のシンポジウム
を準備された皆様へ、私をご招待いただき、
お話しする機会をいただいたことにお礼申し
上げたいと思います。
今日は、ケニア大使館の参事官も出席して
たケニアの海洋研究所のメンバーにもなりま
います。また、妻とも一緒に来日しています。 した。さらにはケニア政府から国家経済社会
まず簡単に自己紹介を申し上げます。私は
理事会のメンバーに任命され、内閣に対して
1964年生まれのケニア人で、ケニアの教育
科学技術の助言を与えることにもなりました。
を受けて大学に行き、英国に渡り1995年に
また6つの国際的なジャーナルの編集員と
31歳で博士号を取得しました。
して、さまざまな博士号や修士号の監督をし、
私が博士課程(Ph.D.)で英国のアバディ
エグザミナー、6つの機関のフェローにもな
ーン大学にいたときに、初めて島根大学の藤
りました。現在、私は松前国際友好財団のフ
原先生とお会いしました。その後、Ph.D.が
ェローとして旅を始めてから、すでに100以
終わりつつあるときに藤原先生と再会して松
上の国際的に申請されている論文を発表しま
前財団へ応募するように紹介されました。そ
した。
うして1998年に島根大学に行き6カ月間、
松前国際友好財団はさまざまな国際的なフ
藤原先生の下で動物科学の研究をしていまし
ェローを育てていきます。私もその恩恵を受
たが、島根大学に行ったことから多くのこと
けることができた1人です。より多くの国際
が始まりました。
的なフェローが松前国際友好財団を通して増
日本にいた頃、日本人は勤勉だということ
えることを祈っています。これは大変大事な
を学びました。そして、アバディーンにいた
ことだと思います。そこでいくつかお話しし
時とは比べられないほど、もっと日本で一生
たいことがあります。
懸命勉強しなければいけないと思いました。
人材開発は重要で、競争力のある人材が必
藤原先生はそれを大変喜んでいました。
要です。そうすることでそれぞれの国をつく
松前財団の支援の下で研究をしながら、い
っていくわけです。そして結果も必要ですの
ろいろなチャンスが生まれました。帰国後は
で私のやることは質が高く、迅速に市場のニ
エガートン大学の教授に就任、5年間の副学
ーズに応えなければなりません。さらに、世
長を務め、政府でさまざまな役割も果たしま
界のイノベーションによるチャレンジを見極
した。例えば、ケニアの政府委員になり、ま
めなければなりません。つまりチャレンジを
6
2015年4月1日 第65号
特定しそれに対する解決を見つけなければな
りません。日本の研究室で研究をしていると
きに、常に問題が何であるのか、そしてどう
いう解決があるのかを議論しました。その中
で不可能は可能になりうることを学びました。
見て刺激を受け、創造性と今までの概念を飛
び越えて考えることで多くのことが実現でき
ました。それが松前先生の夢でした。
また私たちは革新(新しい物事)を作って
いく中で、何よりも動機づけが大事です。日
ウンマ大学のスタッフと生徒たち
本では小さなことを実現すると皆さんがいつ
もお祝いしました。コミュニケーションをと
では最後に簡単にウンマ大学のことを紹介
ることやチームワークの精神とともに、縦割
したいと思います。ウンマ大学は、初めてイ
りの考え方を乗り越えて一緒に仕事をしなけ
スラム系の大学でありながら、イスラム教徒
ればいけないということです。そして多くの
でもイスラム教徒でない人も、またケニア人
ことをシンクロさせて、共通の目的を達成す
でなくても入学が許されている大学です。経
るためには相乗効果も必要です。しかし、一
営学とコンピュータ科学、イスラミック法典、
番は変革のできるリーダーでなければならな
イスラム研究の4つのコースがありますが、
いこと。どのように変革を遂げることができ
他のコースも始めたいと思っています。現在
るかを学び、ビジョンを持つということです。 370人の学生がいます。これから3年でこの
松前先生から学びました。彼もビジョンのあ
10倍の3,000人以上には増やしたいと思っ
るリーダーでした。小学校、高校、大学、財
ています。
団へとつなげていきました。
藤原先生は引退されて今はフィリピンにお
物事をやる上で何が大事なのかは、行った
られます。しかし55歳から60歳の間の日本
ことをチェックすることとそれに対して行動
の方は引退されてもまだ若くて元気ですので、
して、自習をする必要があることです。
「た
ぜひウンマ大学にいらしてください。皆様に
くさん話すが、あまり実行しない」、これは
いろいろなチャンスを提供できます。
途上国で常に直面している課題です。そして
最後になりましたが、さらに皆様と松前国
同じ目的を共有する人をまわりに置く必要が
際友好財団にお礼を申し上げたいと思います。
あるということです。そうでないと始めるこ
さまざまなパートナーシップがケニアと日本
とはできません。藤原先生からは常に、非常
の間にあります。また私は現在、日本学術振
に熱心にビジョンある人たちを紹介されまし
興会(JSPS)の名誉会員としてJSPSの東ア
た。そうした中で、指導とサポートをするこ
フリカ協会を始めましたので、東アフリカの
とが大事です。
松前国際友好財団の協会を、私の地域でも設
タイ・ハワードの言葉ですが、「批判や支
立したいと思っています。そしてこのような
持者、失敗、大小の勝利の真っただ中でも、
シンポジウムを将来アフリカで開催し、ぜひ、
ひるまず成功を求めることを学ばない限り、
ケニアで皆さんをお迎えしたいと思っていま
偉大なリーダーとして人は行動をとることが
す。
できない」、これは私たちが常に考えている
どうもありがとうございました。
ことです。
7
松前国際友好財団 会報
講演第1部 (要約)
ウズベキスタンと日本両国の
物理学者の協力・発展に寄与する
松前国際友好財団の役割
ダブロンベク・マトラスロフ博士
(Dr. Davronbek MATRASULOV)
ウズベキスタン共和国トリノ工科大学タシケント校
最先端研究革新センター長
ダブロンベク・マトラスロフ博士は、ウズベキスタン共和国トリ
ノ工科大学タシケント校最先端研究革新センター長をされており、
2003年9月から翌年1月にかけて松前国際友好財団の招聘で来日さ
れました。東海大学理学部物理学科・豊田正教授の下で「ケプラー
運動相対性理論によるCoherent States」について4カ月間研究をさ
れました。
松前国際友好財団には長きにわたるご協力
と、またこのシンポジウムにお招きくださっ
たことに御礼申し上げたいと思います。
招聘研究者として4カ月滞在した後、母国
最先端研究革新センターは10年以上前に設
に戻ってからの状況についてお話しいたしま
立されましたが、ウズベキスタンの科学アカ
すが、日本に滞在したことの影響がどれほど
デミーにいた頃の活動の一環として私が設立
大きかったのかを振り返ることにもなります。 したものです。
私の国、ウズベキスタンは中央アジアにあ
私は1999年に一番若い年齢で正教授に任
ります。場所はシルクロードの真ん中ぐらい
命されました。そしてその後いろいろな国を
で、中央アジアの中でも中心部に位置してい
訪れました。カナダの次に訪れた外国は日本
ます。古代からの歴史があり、文化的にも大
で、日本の受け入れ先となってくださった東
きな貢献をしています。歴史的な名所はユネ
海大学理学部物理学科・豊田正教授には、カ
スコの世界遺産にもなっています。
ナダ滞在中にお会いし、日本に来る前から協
私が所属する2つの大学のうち、トリノ工
力関係が始まりました。研究分野は、低次元
科大学はイタリアのトリノ工科大学の系列大
ナノスケールシステム非線形量子カオス理論、
学です。機械工学、エネルギー、情報技術、
複雑系物理学、数理物理学、量子情報科学で
土木工学の4つの学部があり、研究機関につ
す。
いてはテクノパーク、地震工学研究センター、 また、私がかかわっているもう1つの大学
最先端研究革新センター、機械電子工学セン
はウズベキスタン国立大学です。ウズベキス
ター、計測学センターがあります。その中の
タンで最大規模の大学で以前はタシケント大
学と呼ばれていました。私は先端材料研究所
を率いており、光起電性の材料、ナノ材料、
ポリマーの研究、柔らかい凝縮物質の研究、
計算材料学といった分野の研究を行っていま
す。
松前財団との関係についてですが、私は
2003年に招聘研究者として日本を訪問して、
4カ月東海大学湘南キャンパスに滞在しまし
た。日本を訪問するのはこのときが初めてで
最先端研究革新センターのメンバー
8
2015年4月1日 第65号
した。そしてこの滞在期間中にいくつもの大
振興会に対して提案中のものを含めてのジョ
変重要な刺激を受け、物理学・数学の分野で
イントプロジェクトや、共同の会議なども行
日本とウズベキスタンとの協力の土台をつく
っており、50人以上の日本の物理学者の方々
ることができました。
が 訪 問 し て く だ さ っ て い ま す。 そ の う ち
研修期間中には、招聘研究者とのミーティ
80%が若手研究者の方です。それから、再
ングがあり、短いプレゼンテーションや研修
生利用エネルギー、地震学、地震工学や耐震
旅行など重要な経験をしました。東海大学で
工学分野での共同研究を行っています。また、
の環境も大変素晴らしく、豊田正先生には特
我々の最先端研究革新センターは日本の6つ
に感謝しています。環境を整えてくださり、
の大学と協力関係があります。共同研究論文
より多く日本文化について学ぶことができる
をジャーナルに発表するなどの実際の成果も
ようにしてくれました。そのおかげで日本文
出ており、松前財団で招聘を受けて日本で滞
化、歴史、伝統について知ることができ、日
在をすることができたおかげで、このような
本の方たちについても理解することができま
共同プロジェクトを行うことができています。
した。そしてこれは日本との協力が、私の外
今年は3つの提案を行うことにしています。
国との協力においては最優先になるという重
さらなるジョイントワークショップ、それか
要な決断を下すことにつながりました。
ら学生ポスドクの交流、そして科学技術振興
機構、日本学術振興会、松前財団、ウズベキ
スタンの科学技術庁との協力を支援していき
たいと考えています。またそのような取り組
みの中で、ウズベキスタンの若手研究者が、
松前財団のフェローシップにより多く応募を
することを願っています。
野心的な計画も立てています。1つに日本
の大学支部をウズベキスタンに設けることで
あるとか、日本の研究センターを設置すると
いうことです。韓国、イタリアの大学、イギ
母国に戻ってからは、松前財団のプログラ
リスの一部の大学は、ウズベキスタンに支部
ムについて、学術コミュニティに広く知らし
があり、そのような協力は日本ともできれば
めようと努力をしています。その結果、私の
と願っています。
グループからも松前財団のフェローシップに、 もう1つは、松前財団の同窓生ミーティン
過去10年間で3人が選ばれました。そして
グをウズベキスタンで開催することです。非
私ももう一度日本を訪問したいと、日本学術
常に効果的に生産的な形で、日本の研究者の
振興会のフェローシップを受け、2005年に
方々と協力をすることができたのも松前財団
大阪市立大学に2カ月間滞在しました。また
のおかげです。また今年はさらに3人が、ウ
定期的に日本ウズベクワークショップを開催
ズベキスタンから松前財団のフェローシップ
し、フェローアップとしてはウズベキスタン
の下、日本を訪れることになっています。
で私のグループが共同研究を行っています。
以上が短い報告でしたが、これはいかに松
日本滞在後の活動については、このように
前財団が必要とされているかの証ですし、大
まとめることができると思います。いくつか
変効果的なプログラムであることの証です。
の方向性がありますが、そのほかに日本学術
どうもありがとうございました。
9
松前国際友好財団 会報
講演第2部 (要約)
研究人材育成と国際交流
片岡 洋 氏
文部科学省科学技術・学術政策局
人材政策課長
本日は創立35周年記念というおめでたい
シンポジウムにお招きいただきありがとうご
ざいます。
ざまな政策を行っています。例えば、若手研
最初の内田理事長のお話、それから実際に
究者等の育成・活躍促進では、若手研究者の
プログラムで日本に招聘された3人の皆様の、 流動化、キャリアパスの多様化のための政策
ご活躍されている素晴らしいお話を伺わせて
である、科学技術人材育成のコンソーシアム
いただきまして、大変感銘を受けました。
の構築という制度を行っています。これは今
文部科学省の取り組み状況をお話しさせて
年、平成26年度からスタートした事業ですが、
いただきます。文部科学省は英語の名前が「ミ
複数の大学や研究機関等でコンソーシアムを
ニストリー・オブ・エデュケーション・カル
形成して、企業等とも連携して若手研究者の
チャー・スポーツ・サイエンス・アンド・テ
流動性を高めつつ、安定的な雇用を確保しな
クノロジー」と非常に長いのです。名前のと
がらキャリアップを図る仕組みを構築する、
おり非常に幅広い分野、教育、文化、スポー
そういった取り組みを行うコンソーシアムを
ツ、科学技術という分野を担当しています。
支援するものです。今年度は7拠点採択して
科学技術に関係している局は3つあります。 います。来年度も数拠点、新規採択できる予
その中の1つ、科学技術・学術政策局という
算が確保できたところです。
ところに私はいます。科学技術の基本的な政
それから、研究者とは少し違うのですが、
策の企画立案や、産学連携、国際協力を担当
プログラム・マネージャーという、研究開発
しています。それとともに人材育成を行って
のプログラムをマネージする人材の育成を行
います。
うプログラムを、新規に来年度から行ってい
私のいる人材政策課は、英語では「ナレッ
こうとしているところです。
ジ・インフラストラクチャー・ポリシー・デ
優秀な若手研究者の自立的な研究環境の整
ィビジョン」といい、あまり人材を連想させ
備では、テニュアトラックの普及・定着事業
ない名前ですが、人材、若手研究者の育成、
を以前から行っています。大学改革などの一
次世代の人材育成、それからJST(独立行政
環でテニュアトラック制を活用し、優秀な研
法人の科学技術振興機構)全体の予算などを
究者を採用する大学等を支援していくもので
担当している課です。
す。今年度、26年度は新規に採択できる予
私どもの課でやっているもの以外も含め、
算がとれなかったのですが、27年度につい
文部科学省で行っている人材育成の取り組み
ては新しい採択ができる予算も確保していま
については、中学・高校レベル、大学・大学
す。
院レベル、ポスドク・研究者のレベルでさま
そして特別研究員事業がありますが、実施
10
2015年4月1日 第65号
しているのは日本学術振興会、JSPSが行っ
な人材・研究ネットワークの強化、科学技術
ている事業です。ドクターコースの学生やポ
外交の基盤の整備ということで、1つは大学
ストドクターに対するフェローシップのプロ
などの研究機関への支援で、頭脳循環を加速
グラムです。
する戦略的国際研究ネットワーク推進事業と
女性研究者の活躍促進のための事業もあり
いうものを行っています。これは我が国の高
ます。安倍内閣の重要課題で女性の活躍を促
いポテンシャルを有する研究グループが特定
進することがいわれていますが、ダイバーシ
の研究領域で研究ネットワークを戦略的に形
ティ研究環境実現イニシアティブといい、研
成するために、海外のトップクラスの研究機
究と出産・育児・介護等との両立や女性研究
関と研究者の派遣・受け入れを行う大学などの
者の研究力向上を目的に、ダイバーシティ実
研究機関を重点的に支援する制度です。それ
現を支援していきます。予算の方も少し増額
から研究者個人への支援ということでJSPS
する状況になっています。
が実施している事業があります。海外特別研
また特別研究員の中でRPDというものが
究員事業は、日本人の優れた若手研究者を海
あります。これは女性の方が出産・育児によ
外の大学などの研究機関に2年間派遣して、
り研究を中断したあとにリスタートするため
研究に専念できるように支援する制度です。
の支援の事業です。これについても予算をか
もう1つが外国人特別研究員事業です。こ
なり増額し、女性支援を手厚くしている状況
れは外国人の若手研究者の方を日本の大学等
です。その他、中高生レベルの理系進路選択
に招聘して、我が国の研究者と外国人若手研
支援プログラムもあります。
究者との研究協力関係を通じて国際化の進展
高校生レベルでは、スーパーサイエンスハ
を図っていく事業です。
イスクールの支援をはじめ、国際科学技術コ
また国際的な共同研究・交流の推進があり
ンテストや科学の甲子園、そういった事業も
ま す。 戦 略 的 国 際 協 同 研 究 プ ロ グ ラ ム
行っているところです。
(SICORP)は、相手国との省庁間での合意
一方で検討中の制度には、卓越研究員制度
に基づき、対等な協力関係の下、多様な国際
というものがあります。これは若い研究者の
的な共同研究を推進するということで、来年
ポストが減り、任期付きの研究者が増えて雇
度から新たに共同ラボをつくることも始める
用が安定しない状況が増してきていることか
上で、インド・ASEANといった新興国など
ら検討しています。優秀な若い方が研究者職
と「顔の見える」持続的な協力を推進してい
に魅力を感じずに、例えば修士課程を修了し
こうというものです。
てドクターコースに行かないで企業に就職し
その他に、地球規模課題対応国際科学技術
てしまう状況があるということです。そうい
プログラム(SATREPS)
、日本・アジア青
うことにならないように若い方に対して研究
少年サイエンス交流事業等があります。
職というものが、非常に魅力的なキャリアに
非常に雑駁ですが、人材育成と国際協力の
なるよう考えているものです。優れた研究者
関係で文部科学省の取り組みを説明させてい
を「卓越研究員」として選定して、産学官の
ただきました。ありがとうございました。
枠を超えて、独創的な研究に専念できるよう
な新たな制度を創設し、大学改革とか研究資
金の改革と併せて行っていければと、今、検
討をまさに始めようとしている制度です。
次に、国際協力の中身については、国際的
11
松前国際友好財団 会報
講演第2部 (要約)
研究と家庭を両立させ、
国際的に活躍する
女性研究者たち
松下 祥子 氏
東京工業大学理工学研究科
材料工学専攻准教授
このたびは、このような素敵な記念式典に
お呼びいただき、本当にありがとうございま
す。また、松前国際友好財団の素晴らしい建
対性理論などを教えており、今は無機材料の
学の精神に大変感銘を受けました。
准教授です。どんな道でもありますよという
まず、自己紹介ですが、私は東京工業大学
若い方へのメッセージです。
理工学研究科で材料系の准教授をさせていた
私が結婚して出産したのは、日本大学で研
だいています。研究テーマはナノファブリケ
究室を持っていたときです。おそらく少し想
ーションです。ボトムアップやトップダウン、 像がつかないかもしれませんが、研究室のス
どちらも行っています。また現在は、文部科
タッフが私1人だったので休めず、出産して
学省のナノテクノロジー委員会も務めさせて
2カ月で研究室に戻りました。赤ん坊はまだ
いただいています。
首もすわっていない状況だったので、非常に
実際の応用分野は、近接場光学と電気化学、 大変な思いをしました。それ以来、こういっ
太陽電池などです。この研究では日本化学会
たワークライフバランスの話をする機会を与
コロイド界面化学部会で奨励賞を、また日本
えられましたら、なるべく断らないでやらせ
女性科学者の会においても奨励賞を受賞させ
ていただきたいと思っています。出産後半年
ていただきました。
は休んだ方がいいです。
私は1996年に東京大学で学部の方を卒業
今回、
「研究と家庭を両立させ、国際的に
し、マスターはそのまま同じ研究室、光触媒
活躍する女性研究者たち」という非常に難し
で有名な藤嶋昭先生のところでした。そして、 いタイトルだと思っています。研究と家庭の
アメリカのペン・ステート・ユニバーシティ
両立には家族と周囲の理解がないとまず難し
で短期間研究をさせていただいたあとに、ド
い。子供がうまれると学会への参加がとても
クターをとらせていただきました。
難しいときがあります。しかし、一方で国際
帰国後は、とある事情でとても有名になり
的に活躍するとなると、学会への参加が必要
ました理化学研究所でポスドクをやらせてい
な場合があり、これはとても矛盾したことだ
ただき、その後、日本大学の文理学部で研究
と思います。
室を持たせていただきました。そうして准教
それに対して、日本の我々女性がどうなっ
授まで上がらせていただいて、現在の東京工
ているのかということを「生き残り度◎〇△」
業大学の准教授に至っています。
で表しました。
少し変わっているのが、東大のときは電気
「生き残り度◎」は、家族構成が介護不要
化学の研究室で、理化学研究所のときは高分
な大家族で住んでいる場合です。こちらは学
子の研究室でした。日本大学では電磁気や相
会へも参加ができます。周囲への対応につい
12
2015年4月1日 第65号
ては、家族にとにかくお礼をすることです。
身の優先順位は何かということを決めて、周
この場合の批判は周囲から甘えている、いつ
囲にヘルパーでもいいですから、助けを求め
までも子供だと言われます。
ることができる女性なのではないでしょうか。
次に「生き残り度○」なのが、家族構成が
つまり、陰口はたたかれます。これはおそら
核家族、日本で核家族といった場合は、私と
く、男性の方でも必ず陰口は生きている限り
主人と子供だけのファミリーです。この場合、 どこかで受けますので、自分の価値観を確立
もし学会に不参加でも対応は学術論文を提出
すること。優先順位決定と価値観の確立の2
することで生き残れます。ただ、批判は学会
つは、きっとグローバル人材に必須のメンタ
活動に貢献していない、学会に出ないと研究
リティであると私は本当に思います。
をしていないと言われることがあります。少
例えば、松前国際友好財団の招聘研究者で
し変だと思うのですが、そういう批判をいた
ある、ブルガリアのアニフェさんと交流を持
だくこともあります。
たせていただいているのですが、ブルガリア
「生き残り度△」は、核家族かつ学会にも
では大学教員はほとんど女性だというのです。
参加する方です。こちらの対応は、家事を外
なぜなら、とても給料が低いからだそうです。
注します。昔の貴族のようにです。日本では
つまり置かれている状況や直面している問題
平日の晩御飯もヘルパーに頼んで、寝るとき
は、まったく異なるということです。
も家族と会わない方がいます。この場合の批
皆さんも世界的に問題だと思っていると思
判がおそらく一番つらく、母親失格だと言わ
うのですが、我々女性は今、アメリカ的な教
れます。女性にはとてもつらいことです。
育を受けるだけで殺される可能性がある、今
そして「生き残り度0」、これは私がお会
はそういう時代になっています。また、これ
いしていないだけで、もしかしたら皆様のま
は我々女性だけではなく、女性の学生を持っ
わりにはいらっしゃるのかもしれませんが、
ている大学の先生方も同じ問題を突きつけら
この生き残っていないのが、核家族で学会に
れていると思っています。
参加し家事も自分でやっていた場合です。私
グローバルといった場合には、いろいろな
の同期たちは1人も生き残っていません。批
問題があるということ、その問題に対して、
判は受けなかったのですが、研究は嫌だと言
それぞれが考えていかなければいけない時代
って、私が知る人は皆やめていきました。
になっているのだと今、私としては考えてい
結局、個人的には、生き残っているのは自
ます。以上です。
13
松前国際友好財団 会報
講演第2部 (要約)
大学における研究室の
国際化の意義
〜環境工学分野を例に
中島 典之 氏
東京大学大学院工学系研究科 都市工学専攻
准教授
本日はこのような大変おめでたい場で、講
演をさせていただきありがとうございます。
があるのかが本日の主眼です。
先程来、松前国際友好財団の理念等を伺って
本年度、私のところに財団で招聘された研
いて、本当に共感する部分が多いと感じまし
究者が6カ月滞在しました。私の研究室のブ
た。研究者はどうしてもオリジナリティーを
ログにも写真が出ています。大変アクティブ
求められるので、人と違うことを言わなけれ
な方で、研究室のミーティングでも、鋭い指
ばいけないというプレッシャーを常に感じて
摘をたくさんしてもらいました。もちろん彼
いるのですが、今日は同じ結論に行き着くこ
女自身もいろいろなことを学んで帰ったと思
とを楽しみたいと思っています。
うのですが、我々も非常に多くのことを学ば
私の自己紹介を今日の最初の話とのつなが
せてもらい、とても良い機会をいただきまし
りで言うと、現在のTOKYO FMがFM東海
た。この場を借りてお礼を申し上げたいと思
からFM東京になった年に私は生まれました。 います。
デンマークというところも若干、共通してい
学生にとって研究室が国際化するのはどう
るかなと思います。私は在外研究でデンマー
いうことか。それは異なる文化・価値観・社
クに8カ月ほどおりました。そこで学び、感
会的地位・年齢の人と過ごすことだといえる
じとったことが、公私共にずいぶん今に生き
と思います。
ているなと思っており、そのような点でも財
外国人の研究者がいることのメリットとし
団の35周年のシンポジウムにかかわれたこ
ては、英語に慣れることができる、というの
とを本当にうれしく思っています。
が一番わかりやすいことです。日本でなかな
私の所属する学科名は都市工学ですが、お
か英語を使う機会がない中で、研究室に外国
話の表題では環境工学にしました。そちらの
の方がいるのは非常に特別な機会です。しか
方がわかりやすいかと思い、専門に近い名前
し、これは表面的なことです。一番いいこと
にしました。都市から出る排水等が水環境に
は、考えが違う集団と折り合いをつけるスキ
与える影響、特に生物に与える影響を研究テ
ルを磨けることだと思っています。人間関係
ーマとしており、実験室内では水生生物を飼
でのトラブルをやりくりできる能力です。そ
っています。私自身も泥をとりにいき、道路
れを身につけられる非常にいい機会です。
で掃除機を扱って路面の有害物質を採取した
もう1つの良い点は、知らないもの、無関
りして研究を行っています。研究の詳細はお
係だと思っているものが1つ減る、というこ
話ししませんが、こういった研究分野にいる
とではないでしょうか。ある国が今まで自分
ような学生にとって、国際化はどういう意味
に関係のない国であったとして、その国の方
14
2015年4月1日 第65号
が来ることで途端に身近なものになり、それ
そのような教育環境では、もちろん研究へ
以降おそらく無視できない存在になる、とい
の貢献も大きいですが、時にはそれ以上に多
うことは、個人にとっても社会にとっても大
様なものの考え方を学ぶという点で、外国の
きいことではないかなと思います。
方に来ていただくのはとても意義深いことで
私の学科の説明ですが、都市計画と環境工
す。
学という2つのコースからなる、都市の問題
財団の招聘の応募条件では、
「来日経験の
を扱う学科です。工学部なので、もちろん工
ない者」と、
「確固たる地位・職業を持って
学技術を学んで専門家になるのですが、どち
いること」があげられています。他のスキー
らかというと公務員やさまざまなプロジェク
ムで来る方はだいたい学生ですから、この条
トの事務局など合意形成の調整役に就く人が
件は実は非常に大きな違いです。財団で招聘
多いようです。ですから、多様な集団での経
される方は、まず日本をほとんど知らなくて、
験は非常に大事です。違う人を排除しないよ
かつもう職業を持っているという意味で、他
うに話し合う能力を持った人を育てることが
の学生より社会経験があり、年齢も上の方に
求められています。日本人だけではなく、ま
なります。少し『違う』人が来るというのは
た男女という違いだけでもなく、違う背景を
刺激的なことで、この半年間、私もそれを実
持った人、違う社会を経験した人と接するの
感しました。今後もこういったスキームで、
は教育上とても重要な機会になります。
たくさんの外国の研究者が研究室に来てくれ
都市は世界各国にあり、それぞれに違う問
ればいいなと思いました。
題を抱えています。我々の学科の研究対象は
最後にもう1点、本日前半のお話を聞いて
世界中に広がっています。留学生も非常に多
いて思ったのは、もしかすると彼らの帰国後
く、今年のデータでは22カ国から64人の大
に、こちらから向こうへ行く旅費もサポート
学院生、学部生がいます。私の研究室でいう
していただけると、財団が構築してきた人的
と、常時ほぼ半分が外国人です。日常的にも
ネットワークをさらに発展できるかなと思い
学科内のメールは英語が先、日本語はあとと
ました。ご検討いただければと思います。
いう暗黙のルールがあります。
どうもありがとうございました。
15
松前国際友好財団 会報
2014年度
招聘研究者紹介
1:本国での勤務先 2:日本での受入研究機関・指導教官 3:研究テーマ (敬称略)
コンタッド・ウンナンカド(タイ)
Dr. Kontad OUNNUNKAD(Thailand)
1:チェンマイ大学 理学部化学科、講師
2:新潟大学 研究推進機構超域学術院 准教授 馬場 暁
3:電気化学-表面プラズモ共鳴法を用いたバイオマーカーの高感度検出
ナタリヤ・サリガ(ウクライナ)
Dr. Nataliya SALYHA(Ukraine)
1:ウクライナ農業科学アカデミー 動物生物学研究所、上席研究員
2:京都大学再生医科学研究所 再生統御学研究部門再生増殖制御学分野 教授 瀬原淳子
3:個々の一次赤芽球の運命を追う
モハメド・ネグム(エジプト)
Dr. Mohamed Walid Ahmed Abdelghany M. NEGM(Egypt)
1:アシュート大学 農学部病虫害防除学科、講師
2:京都大学 大学院農学研究科地域環境科学専攻生態情報開発学分野 教授 天野 洋
3:日本産天敵カブリダニ類の研究
アラム・アラファト・エルサイド・メガヘド(エジプト)
Dr. Allam Arafat El-Sayed MEGAHED(Egypt)
1:国立研究センター 農業・生物学研究部門植物病理学科、研究員
2:広島大学 大学院先端物質科学研究科分子生命機能科学専攻 教授 加藤純一
3:青枯病菌Ralstonia Solanacearumの植物感染における走化性の役割とその情報を活用した新規感染
防除技術の開発
ヴィクトリア・アパンバン(ナイジェリア)
Dr. Victoria Omolara Enobong AKPAMBANG(Nigeria)
1:アクレ工科連邦大学 理学部化学科、上席講師
2:広島大学 大学院生物圏科学研究科総合科学部環境化学・環境分析化学研究室 教授 佐久川 弘
3:食品抱装材中に含まれる環境ホルモン物質による食品安全性評価に関する研究
マーティン・ドゥラハンスキー(チェコ)
Dr. Martin DRAHANSKY(Czech Republic)
1:ブルノ工科大学 情報技術学部、准教授
2:東京工業大学 大学院情報理工学研究科計算工学専攻 教授 篠田浩一
3:非接触型指紋認証システムのための手指の生体性検知
16
2015年4月1日 第65号
1:本国での勤務先 2:日本での受入研究機関・指導教官 3:研究テーマ
マルガリータ・ミラノヴァ(ブルガリア)
Dr. Margarita Kirilova MILANOVA(Bulgaria)
1:ブルガリア科学アカデミー 一般無機化学研究所 高温酸化物材料研究室、研究員
2:大阪府立大学 大学院工学研究科応用化学科無機化学研究グループ 教授 辰巳砂昌弘
3:Li2O-V2O2-MeOx,(Me=Mo, W, Cu)系イオン伝導材料の合成と電気的特性
アミセル・アルミラル・ラ・セルナ(キューバ)
Dr. Amisel ALMIRALL LA SERNA(Cuba)
1:ハバナ大学 バイオマテリアルセンター セラミックス合成物科、研究員
2:京都大学再生医科学研究所 生体組織工学研究部門生体材料学分野 教授 田畑泰彦
3:軟骨再生医工学のための傾斜複合バイオマテリアルの作製
セイルホン・マトムラトフ(ウズベキスタン)
Dr. Seyilkhon MATMURATOV(Uzbekistan)
1:ウズベキスタン衛生省 肝胆道外科センター、上席研究員
2:金沢医科大学 腫瘍内科学/集学的がん治療センター 教授 元雄良治
3:膵発癌におけるスフィンゴ脂質の役割
イディオレイディス・アルバレス・ベッジョ(キューバ)
Dr. Idioleidys ALVAREZ BELLO(Cuba)
1:国立農業科学研究所 植物病理・生化学科、研究員
2:帯広畜産大学 食品科学研究部門機能科学分野 准教授 得字圭彦
3:オリゴガラクツロン酸がストレス条件下で植物の発達に与える影響
アフメッド・ムタナビ・アブドゥラ(イラク)
Dr. Ahmed Mutanabbi ABDULA(Iraq)
1:アル・ムスタンシリヤ大学 理学部化学科、有機化学講師
2:名古屋市立大学 大学院薬学研究科創薬生命科学専攻医薬化学講座薬品合成化学分野 教授 中村精一
3:エキソ選択的なDiels-Alder反応によるスピロリドDシクロヘキセン環部の合成
ハミド・エルメリエ・マター・タジェルディン(スーダン)
Dr. Hamid ElMelaih MATTAR TAGELDIN(Sudan)
1:国防省スーダン測量局 GIS地図作成部、マネージャー
2:酪農学園大学 農食環境学群環境共生学類環境リモートセンシング研究室 教授 星野仏方
3:ポートスーダン及びサワキング沿岸におけるサンゴ礁と海草の保全に関する研究
ロベルト・アレハンドロ・レムス・モンダカ(チリ)
Dr. Roberto Alejandro LEMUS MONDACA(Chile)
1:セレナ大学 工学部食品工学科、研究員
2:九州大学 大学院農学研究院食品製造工学研究室 教授 下田満哉
3:超高圧処理による機能性物質含浸食品の製造に関する研究
17
松前国際友好財団 会報
1:本国での勤務先 2:日本での受入研究機関・指導教官 3:研究テーマ
ホセ・ホアキン・ロデス・ロカ(スペイン)
Dr. Jose Joaquin RODES ROCA(Spain)
1:アリカンテ大学 物理学システム工学信号理論学科、准教授
2:(独)理化学研究所 宇宙観測実験連携研究グループMAXIチーム 専任研究員 三原建弘
3:大質量X線連星の多衛星を用いた解析
カウサル・アブデラジズ・エルサイエド・モハメッド・ディアブ(エジプト)
Dr. Kawthar Abdelaziz Elsayed Mohamed DIAB(Egypt)
1:国立研究センター 遺伝子工学バイオテクノロジー部門遺伝細胞学部、研究員
2:東海大学 農学部バイオサイエンス学科食品生物科学系分野食品機能科学研究室 准教授 安田 伸
3:食品残渣と地域限定の可食性植物の健康有益性を企図した抗腫瘍研究
アフメド・アブデルサイエド・ファラグ・モハミド(エジプト)
Dr. Ahmed Abdelsayed FARAG MOHAMED(Egypt)
1:エジプト石油研究所 石油アプリケーション科、研究員
2:北海道大学 工学部応用化学コース物質化学部門機能材料化学分野 教授 幅崎浩樹
3:金属材料の防食用導電性高分子/多孔質アノード酸化皮膜の複合膜に関する研究
グリセルダ・ヴァルデス・マガニャ(メキシコ)
Dr. Griselda VALDEZ MAGANA(Mexico)
1:動物生理学/遺伝的改良訓練研究ナショナル・センター、生理学研究員
2:岩手大学 農学部動物科学課程動物生殖工学研究室 准教授 澤井 健
3:Tead-4発現抑制がブタ初期胚の発生におよぼす影響
クリスチャン・ザフュー(オーストリア)
Dr. Christian ZAFIU(Austria)
1:ユーリッヒ研究センター(ドイツ連邦共和国)
、研究員
2:東京工業大学 大学院総合理工学研究科物質電子化学専攻 教授 原 正彦
3:走査型プローブ顕微鏡による無細胞系合成膜タンパク質の相互作用力に関する研究
ダーリァ・デル・カスティヨ・アポダカ(フィリピン)
Dr. Dahlia del Castillo APODACA(Philippines)
1:フィリピン鉱山地球科学局 環境天然資源科、上席科学研究員
2:東京大学 大学院工学系研究科都市工学専攻 准教授 中島典之
3:藻類および底生カイミジンコに対するニッケルの毒性に及ぼす水質特性の影響評価
チバライ・テミヤサチット(タイ)
Dr. Chivalai TEMIYASATHIT(Thailand)
1:モンクット王工科大学ラートクラバン校 国際学部、講師
2:北海道大学 大学院情報科学研究科コンピュータサイエンス専攻情報認識学研究室 教授 工藤峰一
3:デング熱ウイルス配列の不完全遺伝子分類
18
2015年4月1日 第65号
1:本国での勤務先 2:日本での受入研究機関・指導教官 3:研究テーマ
モハマドレザ・ナシリ(イラン)
Dr. Mohammadreza NASSIRI(Iran)
1:マシュハド・フェルドゥスィー大学 農学部動物科学科、バイオテクノロジー研究所、准教授
2:自然科学研究機構分子科学研究所 岡崎統合バイオサイエンスセンター 生命環境研究領域・生命分子
研究部門 教授 加藤晃一
3:フコース非修飾抗体の産生細胞の確立と抗体抗原相互作用の構造基盤の解明
レミィ・ベルトラン・テポンノ(カメルーン)
Dr. Remy Bertrand TEPONNO(Cameroon)
1:チャン大学 理学部化学科環境応用化学講座、上席講師
2:九州大学 大学院薬学研究院医薬細胞生化学分野 准教授 宮本智文
3:カメルーン産薬用ドラセナ科植物の生物活性二次代謝産物に関する植物化学的研究
マルコ・ガイヨッティ(イタリア)
Dr. Marco GAIOTTI(Italy)
1:ジェノヴァ大学 工芸学部電気電子テレコミュニケーション・エンジニアリング造船工学科、研究員
2:大阪大学 大学院工学研究科地球総合工学専攻船舶海洋工学コース 教授 藤久保昌彦
3:複合材料構造部材および構造体の全体および局部動的不安定性に関する研究
研究滞在を終え帰国前に、本財団事務所に挨
拶に来られた方々には、理事長からの修了証
書がお渡しされます。
19
松前国際友好財団 会報
奨学者国内研修旅行
本財団が招聘する研究者の方には、国内研修旅行に参加することで、日本滞在中に各自の研究活動を行うだけ
でなく、日本の歴史、文化、自然、産業などについても深く理解していただいております。
2014年10月に実施された国内研修旅行には8カ国より9名の方が参加されました。
原爆ドーム前にて(広島)
広島平和記念公園にて各自で折った千羽鶴を捧げる
奨学者
神戸ポートタワー前にて
神戸・人と防災未来センターを訪問し、地震による液状化現象
について模型を使った説明を受ける奨学者
20
2015年4月1日 第65号
平等院鳳凰堂にて(京都・宇治)
石臼で抹茶づくりを体験
(福寿園宇治茶工房にて)
赤膚焼絵付け体験をする奨学者
(奈良・赤膚山元窯古瀬にて)
国内研修旅行に参加して
カウサル・アブデラジズ・エルサイエド・モハメッド・
京ミーティングによってフェローシップという友情の
ディアブ(エジプト)
本当の意味を読み取れた気がします。私たち、博士学
私はこの旅行に参加して、観光の面では京都の二条
位取得の研究者たちは、選ばれた研究分野によってス
城が印象深かったのですが、特に神戸の「人と防災未
キルと知識をより強化するために、ここ日本へ来たの
来センター」を訪問して1995年1月17日に起こった阪
ですが、さらに重要なことは私たち研究者同士および
神淡路大震災のことを知り、日本の生活において挫折
松前財団のスタッフとの間で発展した友情と親交であ
を感じていた私のネガティブな気持ちをポジティブに
ります。私たち一人ひとりの個性の違いにも順応する
変えさせてくれました。この地震がなんと多くの神戸
ことを学び、日本とその豊かな文化を知ることができ、
のビルや都市構造を壊してしまったのでしょう。人々
皆と共に地方と都市生活両方を楽しみ、素晴らしい時
はこの苦悩からどうやって生きのびたのでしょう。し
間を持つ良い機会となりました。
かし、この災害は日本の人々に精神的な力をもたらし
初めて広島を訪れたことは私にとって新鮮で、この
ました。人々は冷静にこのチャレンジを受け入れ、以
経験は私の今までの旅行とは明らかに違っていました。
前よりも、もっと良くなるようにと新しい神戸の街づ
人類で初めてこの場所に原子爆弾が落とされてから69
くりを始めました。この神戸の復興を見て、私は大変
年が経ちますが、被爆写真と被爆遺物は、本当にそれ
勇気付けられました。それから10数年経ち、日本人は
が地球上に与えた大きく悲惨な影響をおよぼすことを
また津波と福島第一原発の事故のような試練を与えら
明らかにしています。そして広島訪問のために松前財
れました。実際、日本人はそれぞれのチャレンジを与
団事務局からいただいた折り紙で折り鶴(千羽鶴)を
えられてから、強くなっているのだと感じました。
つくることが何を象徴するかを考えながら、私は時間
●
をみつけてなるべくたくさんの鶴を折り、捧げようと
ダーリァ・デル・カスティヨ・アポダカ(フィリピン)
思いました。 そして広島平和記念公園の記念碑「原爆
松前財団の国内研修旅行は日本を訪れる私たち研究
の子の像」に、参加者の方々と共に折り鶴を捧げたこ
者にとって魅力的で価値のある文化的活動です。この
とはとても意味深いこととなりました。私は永遠の世
旅行によって私たちは、日出ずる国、日本の美しさを
界平和のために日本人とこの願いを共有したいと思い
垣間見ることができました。そしてこの旅行および東
ます。
21
松前国際友好財団 会報
立35周年記念シンポジウムで招待講
創
演をするために来日した奨学者3組の
ご夫婦が、本財団事務所を訪問し、松
前重義博士のビデオドラマを鑑賞。
◀
◀
◀
◀ 茶の湯体験へご招待
(ホテル椿山荘東京内の茶室
「残月」にて)
22
2015年4月1日 第65号
法人会費・寄付金を以下の皆様よりいただきました。
深く感謝申し上げます。 (期間:2014年4月1日~2015年3月15日、敬称略、順不同)
法人会費
[群馬県]
株式会社ナカヨ
[東京都]
株式会社ジェー・シ-・シ-
株式会社東海教育研究所
医療法人社団 松和会
港北出版印刷株式会社
大成建設株式会社
横浜倉庫株式会社
秀和ビルメンテナンス株式会社
株式会社エフエム東京
[神奈川県]
東海教育産業株式会社
東海ウイング株式会社
[静岡県]
ヤマダユニア株式会社
鈴与建設株式会社
[福岡県]
岩崎建設株式会社
寄付金
[北海道]
大場 禮二
[茨城県]
田所 啓弘
武藤 忠行
[埼玉県]
長谷川 博之
[千葉県]
阿部 潔
[東京都]
横堀 禎二
加川 正彦
笠巻 孝嗣
吉田 守
吉野 賢三郎
金子 義明
堅谷 朝基
小松 はるの
小松 哲彰
松崎 松平
西郷 勝行
田辺 佐敏
淵上 貫之
木村 奈加代
有限会社四季の企画社
株式会社霞ヶ関東海倶楽部
[神奈川県]
宇佐美 彰朗
吉田 茂
吉本 旬志
橘 裕司
原 広子
原 誠治
荒井 凖幸
今井 望
佐藤 美成
山内 正彌
柴田 忠作
秋山 賢二
松前 光紀
松本 輝
深水 一夫
杉下 道生
斉藤 潔
前田 正輝
曽我 喜三郎
多田 直人
ご寄付に対する税制上の
優遇措置のご案内
竹口 真
帖佐 寛巳
渡部 重行
飯塚 進
尾郷 けい
平井 克己
片瀬 敏行
堀口 雅巳
木村 豊
柳沢 真一
鈴木 章司
鈴野 君枝
和田 弘
脇 靖男
佛﨑 光利
[石川県]
高田 剛
[静岡県]
岡田 喜裕
五十嵐 正晃
福島 甫
[京都府]
志岐 常正
[大阪府]
梶野 郁子
野村 公寿
[兵庫県]
森 昌彦
[島根県]
宮永 龍一
前田 泰生
藤間 恵一
[長崎県]
林 邦昭
[熊本県]
大原 淳
本財団へのご寄付について
寄 付 金:個人・法人、金額に制限はありません。
公益財団法人松前国際友好財団に対して寄付金(法人
会員の場合は会費)のご協力をいただくと、次の税制
法人会費:法 人会員へのご加入につきましては、本財
上の優遇措置が受けられます。
団までご連絡ください。
個人の場合(所得税)
法人年会費 一口10万円から
個人が公益財団法人松前国際友好財団に支出した金
振込方法:ゆうちょ銀行でお振り込みください。
額は、特定寄付金に該当し寄付金控除が受けられます。
(例)寄 付金額が5,000円の場合は、2,000円を控除して
口座番号:00100-4-49831
加入者名:公益財団法人 松前国際友好財団
3,000円が寄付金控除額となります。
法人の場合
公益財団法人に対する損金算入限度額は通常の寄付
本財団が用意いたしました「払込取扱票」をご利用い
金の損金算入限度額と同額以上が別枠として損金算入
ただいた場合、振込手数料は本財団が負担いたします。
することが認められています。
この「払込取扱票」については、本財団までご請求く
※その他、詳しくは最寄りの税務署にお尋ねください。
ださい。
23
松前国際友好財団 会報
研 究 奨 励 金 制 度 に つ い て
招聘期間:3カ月~6カ月 応募締め切り:招聘する年度の前年8月31日
◎応募者の資格
◎研究奨励金の内容
外国国籍を有しかつ次の事項に該当する者は、
研究滞在費……研 究機関への指導料および研
必要書類を添えて応募することができる。
究に係わる経費・宿泊費・食
1.博士課程を修了した者、またはそれに準ず
費・交通費等の諸経費として
支給。
ると本財団がみなした者。
旅行者保険……傷 害死亡、後遺症、傷害治療、
2.応募時の年齢が49歳以下であること。
疾病死亡、疾病治療。
3.英語または日本語の会話能力が、研究活動
旅 費……招 聘者の母国居住地から東京
に支障を来さない者。
4.来日経験のない者。
間の最短経路のエコノミーク
5.応募者は、応募者自身の国において確固た
ラス・往復航空券を支給。
来日一時金……来 日時の国内旅費補助、滞在
る地位・職業を持ち、招聘後は本国に戻る者。
開始時の宿泊施設確保に要す
6.心身ともに健康な者。
る経費の補助等として支給。
◎研究分野
※詳しくは「募集要項」をご覧ください。
自然科学・工学・医学の研究分野は優先度が高い。
◎招聘期間および招聘予定数
各年度4月より3月迄の間で、滞在を希望する
お問い合わせは:
長さは応募者が、3カ月以上6カ月以内の間で
公益財団法人 松前国際友好財団
決めて応募できる。各年度の招聘者数は約20名。
〒167-0043 東京都杉並区上荻4-14-46
TEL:03-3301-7600 FAX:03-3301-7601
◎日本における研究機関
URL:http: //www.mars.dti.ne.jp/mif
受け入れ研究機関については、国内のあらゆる
E-mail:[email protected]
大学の研究室、国公立研究機関、さらには各企
業の研究所など、受諾可能な研究機関を自由に
選択することができる。
本財団の活動にご理解とご協力をお願いいたします
1979年(昭和54年)松前重義博士の呼び掛けにより設立された松前国際友好財団は、人種、性別、宗教、
思想を問わず、優れた学術的資質を備えた外国人研究者に対し日本での研究活動の機会を提供し、結果、日
本の学術発展に寄与するとともに国際友好親善に貢献することを、その目的としております。設立以来、本財
団は多くの方の善意によるご寄付により支えられ、国からの公的資金や特定の機関・企業・団体など外部から
の補助金、交付金、また事業活動による収入等を一切得ることなく今日まで活動を続けております。
今後も、これ迄同様皆様のご支援とご理解をいただきながら、活動を続けてまいります。本財団へのご理
解とご協力のほどお願い申し上げます。
24