情報社会の窓 電子ディスプレイの生態学:

情報社会の窓
電子ディスプレイの生態学:
利用者中心のディスプレイ技術への視点
窪田 悟
理工学部 エレクトロメカニクス学科
成蹊大学公開講座 2005.6.4
第1部 ディスプレイ技術の生態学
1.液晶
2.ブラウン管
3.プラズマ
4.ディスプレイ技術の経済的側面
5.ディスプレイの棲み分け
6.今後期待される技術 (SED,有機
EL)
)
SED,有機EL
7.ディスプレイメーカーの生残り戦略
第2部 ディスプレイの人間工学的評価研究から
1.ディスプレイの人間工学
2.中高齢者の視覚特性に適合したディスプレイの条件
3.家庭における観視条件を考慮したテレビの設計
まとめ 機械論から有機体論へ
成蹊大学公開講座 2005.6.4
1
液晶ディスプレイの進化(適応放散)
生態学のアナロジー
反射型
在来種
半透過型
印刷
透過型
投射型
ブラウン管
プラズマ
スライド
映画
電子ペーパー
半透過型
携帯情報端末(PDA)
携帯電話
ペイジャー
ハイビジョンテレビ
大画面テレビ
デスクトップPC
ノートPC
ラップトップPC
リアプロジェクタ
フロントプロ
ジェクタ
小型TV
電子手帳
STN方式 TFT方式の出現
1983
ゲーム 家電 ポケットコンピュータ
1973
電卓(シャープ) 腕時計(諏訪精工舎)
1968
RCAのサーノフ研究所 Heilmeier et al.
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液晶ディスプレイの発生と進化
●液晶という物質の発見
Friedrich
Reinitzer
1847-1927
1888年 Reinitzer オーストリアの植
物学者サーモトロピック液晶の発見
この年(明治21年)森鴎外がドイツか
ら帰国.石鹸水やイカ墨も液晶の一種
である.ただし,ディスプレイに使われ
ているものとは全く異なる.
Otto
Lehmann
1855-1922
1889年 Lehmann ドイツの物理学
者(カールスルーエ工業大学) 液晶
に光学的異方性を見出し, 液晶 と
命名した
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2
●液晶ディスプレイ発明の経緯
1962年 Williams アメリカ RCAデビットサーノフ研究所
液晶による光変調
1964年秋 Heilmeier 28歳
室温で効果を示す液晶がなかった.液晶に染料を混ぜ,熱し
た状態で電圧を印加,顕微鏡で変化を観察していた.1枚の偏
光板を挿入したところ,電圧を印加するたびに鮮やかな色の変
化が観察された.これが,Wall-sized flat panel TVの第一歩
であった.その後の4年間は室温でも効果を示す液晶材料の
発見に費やされた.(本人の回想録(1976)より)
1968年5月28日プレス発表
1968年5月30日の我国の朝刊各紙にも報じられた.
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1968年 Heilmeier et al. RCAデビットサーノフ研究所
DSM液晶ディスプレイ開発
ハイルマイヤーらが試作した世界初の
液晶ディスプレイ7セグメントのDSM液
晶、NHKビデオ:電子立国日本の自叙
伝(3)電卓戦争より
Geroge Heilmeier 1936〜
プリンストン大学からRCAへ,
RCAでLCDを発明した
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3
●日本への帰化
1973年 6月15日 シャープ DSM液晶電卓 発売
LCメイトEL805
(DSM液晶)CMOSLSI使用 ¥26,800
単三電池1本で100時間 従来品5〜6時間
73年当時の大卒初任給5〜6万円
DSM液晶の表示部
1987年 TFT-LCD液晶カラーTV商品化,
その後,液晶ビューカムで本格的に利用
された
画像は電卓博物館
http://www.dentaku-museum.com/より
許可を得て掲載
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液晶のシャープのルーツ
徳尾錠
早川徳次が1912
年「徳尾錠」を
早川徳次が1912年「徳尾錠」を
考案して独立創業
ベルトのバックル
早川式繰出鉛筆
活動写真で見た登場人物の
バンドの先がだらしなく垂れ
ているのが気になり考案した。
1915年
1915年 早川式繰出鉛筆を開発 独自の繰出機構
最初は、「和服には似合わない」とか「冬には冷たくて使えない」と
惨々だったが,数年後,欧米で大ヒット。
早川徳次
1920年に国内の特許を取得.
1926年後にはアメリカでも特許
年後にはアメリカでも特許
1920年に国内の特許を取得.1926
を取得した. 『エバー・レディー・シャープペンシル』
エバー・レディー・シャープペンシル』と称した.
その後,シャープペンシルとした.Sharp Pencil は和製英語,英語はMechanical
Pencil.シャープペン自体は,1822年に、イギリスのSampson MordanさんとJohn
Isaac Hawkinsさんが発明,その後、 1913年に米国イリノイ州のCharles Keeranさ
んまたは Bloomfieldさんが「Eversharp Pencil」を発明したとされる.1915年に特許
を取得したとされる.
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4
1973年 9月29日 諏訪精工舎 TN液晶腕時計 発売
画像はAntique &
Modern Wrist Watch
(http://homepage.ma
c.com/utdesign/watch
/index2.html)より許可
を得て掲載
デジタルクオーツ06LC(TN液晶)
CMOSLSI ¥135,000
32,768Hz,動作温度ー10〜+60°
電池寿命2年以上(内部照明ランプ1日
精密機械から
電子機器へ 10回使用で)
1982年 TFT-LCD 小型カラー液晶TV開発 諏訪精工舎
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ウォッチ市場を席捲した精工舎
のデジタルクオーツ
セイコーのなぐり込み
100
1973
1975
1977
1980
ウォッチの生産量(100万個)
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
日本
ビジネスウィーク表紙 1978年6月5日号
スイス アメリカ
ソ連
その他
データ:日本時計協会
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5
RCAで液晶ディスプレイが開花しなかったのは
1.ブラウン管で勝ち誇っていたので新技術必要なかった.
2.マーケットがないと考えた.
3.二枚のガラス間に透明電極と液晶を封じ込めるのは製造
技術的に不可能と考えた.
4.電子管部門と液晶をやっていた半導体部門の勢力差,半
導体への切り替え遅れ.
我国で液晶ディスプレイが開花したのは
1.過当競争の電卓と時計にマーケットがあった.
2.先行のRCA
が感じていた困難を感じずゼロからとりかか
か
2.先行のRCAが感じていた困難を感じずゼロからとりか
れた.理論よりやってみた方が勝ち.
3.我国の電子産業が半導体へいち早く切り替えにとりか
かっていた.
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液晶ディスプレイの表示原理
液晶層厚
5μm
窪田:液晶ディスプレイの生態学(1998)より
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6
液晶ディスプレイの駆動方式
セグメント方式
単純マトリックス方式
窪田:液晶ディスプレイの生態学(1998)より
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カラー液晶の表色原理
白表示画面の拡大画像
ドットピッチ0.25mm
ドットピッチ0.25mm
最近,カラーフィルターの無いフィール
ドシークエンシャルディスプレイが注目
されている.RGB
三原色のバックライ
されている.RGB三原色のバックライ
トLEDを時分割駆動して色を表示する.
LEDを時分割駆動して色を表示する.
画素が小さくできる.
MS明朝10.5ポイント拡大画像
MSゴシック10.5ポイント拡大画像
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7
広視野角化の技術
IPS:
IPS:
InIn-Plane Switching
横電界方式
MVA:
MultiMulti-domain Vertically
Aligned
配向分割とVA
を合わせた
配向分割とVAを合わせた
方式
窪田:液晶ディスプレイの生態学(1998)より
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ブラウン管の発明
Karl Ferdinand Braun(1850-1918)
1897年にブラウン管を発明 電力の送電管理,CRTをオシ
ログラフとして使ったのが最初である.「必要は発明の母」
1909年に無線電信の研究でマルコーニとノーベル賞受賞
画像はhttp://chem.ch.huji.ac.il/~eugeniik/history/braun.htmより
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8
世界最初のブラウン管
Vacuum Tube (Electron Valve) Museum
http://www.oneillselectronicmuseum.com/より
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プラズマディスプレイ
の表示原理
プラズマ
放電
表示光
透明表示電極
誘電体層
保護層 MgO
ガラス
基板
蛍光体
紫外線
可視光
隔壁
図はひとつの画素の
断面図である.
プラズマ放電で発生
させた紫外線を蛍光
体に当てて,可視光
を発生させる.
アドレス電極
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9
カラーテレビの世界市場の需要予測
JEITA(電子情報技術産業協会)による
JEITA(電子情報技術産業協会)による
1
2
1
液晶
0.5
プロ
ジェク
ション
プラズ
マ
0.5
液晶
ブラウ
ン管
2009
2008
2007
2004
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2006
0
0
2005
台数(億台)
1.5
台数(億台)
プロ
ジェク
ション
プラズ
マ
年度
年度
ブラウン管以外
ブラウン管含む
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クリスタルサイクル(液晶の価格急落)
液晶パネルの大口価格の推移
1枚あたりの価格(ドル)
1400
需要不足
↓
増産(韓国・
台湾含めて)
↓
店頭販売競
争激化
↓
プラズマとの
競争
1200
1000
PCモニタ17型
テレビ32型
800
600
400
200
0
1
2
3
4
5
6
7
2004年
日経産業新聞2005.5のデータより作図
8
9 10 11 12 1
2005年
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10
テレビディスプレイの業界変容
2005年3月時点
キヤノン
SEDの共同生産で提携
包括提携
共
同
出
資
会
社
松下
日立
共同出資会社を
日立の子会社に
富士通
FHP
売却
NEC
三洋
フューチャービジョン:シャープ,エプソン,日立ほか,オー
ルジャパン連合 東北大学 大見教授主導のプロジェクト
液晶モジュールと素材
サムスン
合弁
ソニー
シャープ
売却
パイオニア
IPSアルファ
液晶
プラズマ
東
芝
S-LCD
SED
事業統合
エプソン
三洋エプソンイメージング
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ベゼル
偏光板
ガラス基板
カラーフィルタ
共通透明電極
配光膜
液晶層
配光膜
TFTアレイ
ガラス基板
偏光板
レンズフィルム
拡散板
導光板
ケース
JEITA:FPDガイドブックより
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11
素材メーカーの圧倒的な世界シェア
プラズマガラス基板
液晶基板ガラス
日本
電気
硝子
10%
旭硝
子
30%
その
他
60%
液晶偏光板保護フィルム
液晶カラーフィルタ
その
他
30%
富士
写真
フィル
ム
80%
凸版
印刷
40%
大日
本印
刷
30%
日経産業新聞より
コニカ
ミノル
タ
20%
旭硝
子
90%
日本
電気
硝子
10%
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素材メーカーの圧倒的な世界シェア
携帯電話用カメラレンズ
液晶感光性スペーサー
その
他
20%
JSR
80%
日本
ゼオン
90%
売上高営業利益率 JSR
14.8%
大日本印刷 8.5%
売上高営業利益率:
日本ゼオン 8.3%
営業利益を売上高で
凸版印刷
6.2%
除したもの
製造業全平均4%
シャープ
日経産業新聞より
その
他
10%
ちなみに
トヨタ 7.6%
(2005年3月期)
5.9%
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12
ディスプレイの棲み分け
種類
発明された年と国
現時点での主な応用
ブラウン管
CRT:Cathode-Ray Tube
帰化種
1897
ドイツ
液晶
LCD:Liquid Crystal Display
帰化種
1968
アメリカ
テレビ,コンピュータモニター,携帯電話,
ビデオカメラ,パチンコ台
プラズマ
PDP:Plasma Display Panel
帰化種
1954
アメリカ
テレビ,公共表示
EL
EL:Electro Luminescent Display
帰化種
1952
アメリカ
車載表示,計測機器
有機EL
OLED:Organic Light-Emitting Diode
帰化種
1987
アメリカ
携帯電話
蛍光表示管
VFD:Vacuum Fluorescent Display
在来種
1965
日本
FED
FED:Field Emission Display
外来種
→帰化
1985
フランス
テレビ(SED2006春から) SED:Surfaceconduction Electron-emitter Display
DLP(DMD)
DLP:Digital Light Processing
DMD:Digital Micromirror Device
外来種
1970
アメリカ
プロジェクションディスプレイ
テレビ,コンピュータモニター
AV機器,車載表示
電気泳動式のE
電気泳動式のE-inkなどのいわゆるペーパーディスプレイに関するもの
inkなどのいわゆるペーパーディスプレイに関するもの
はここでは除外した
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ディスプレイの表示原理総覧
窪田:液晶ディスプレイの生態学(1998)より
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13
透明基板
+透明電極
正孔輸送層
有機物質の発光層
電子輸送層
−電極
有機ELディスプレイ
(OLED: Organic Light-Emitting Diode)
有機物でできた発光層を電極ではさみ、
正孔と電子を注入して発光層を励起させ
ることによって発光する。
窪田:液晶ディスプレイの生態学(1998)より
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テレビディスプレイの棲み分け
1 0 ,0 0 0 ,0 0 0
プラズマ
実勢価格( 円)
液晶
1 ,0 0 0 ,0 0 0
リアプロ
1 0 0 ,0 0 0
ブラウン管
1 0 ,0 0 0
10
2005年
2005年5月28日現在の量販店に
28日現在の量販店に
おける各機種の最安値でプロット
20
30
40
50
60
70
画面サイズ( 対角インチ)
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14
液晶テレビとプラズマテレビの価格推移予想
30-35型テレビの価格推移予想
500,000
液晶
プラズマ
ブラウン管
400,000
300,000
200,000
100,000
40-45型テレビの価格推移予想
1,200,000
液晶
テレビ受像機の価格(円)
テレビ受像機の価格(円)
600,000
1,000,000
プラズマ
800,000
600,000
400,000
200,000
0
0
2003 2004 2005 2006 2007 2008
時期(年)
2003 2004 2005 2006 2007 2008
時期(年)
米iSuppli Corp.などのデータを参考にした窪田の予想
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今後期待される技術 その1:SED
㈱東芝 ディスプレイ・部品材料統括 提供
成蹊大学公開講座 2005.6.4
15
東芝・キヤノン連合が
来春から50インチ級の
パネル(TVセットではな
い)を出荷予定
㈱東芝 ディスプレイ・部品材料統括 提供
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今後期待される技術 その2:有機EL
有機EL(OLED: Organic Light-Emitting Diode)とは
透明基板除くと厚さ
0.1〜0.2μm
発光
正極(透明電極)
透明基板
3〜10 V
正孔輸送層
有機物質の発光層
+ + +
- - -
++ +
-- -
電子輸送層
陰極
物質が安定な低いエネルギー状態から、より高いエネルギー状態に移
り(励起という)、また低いエネルギー状態に戻るとき発光する現象が
ルミネセンス。EL
(Electro Luminescence)とは、電界で励起を生じさ
ルミネセンス。EL(
Luminescence)とは、電界で励起を生じさ
せる発光現象のこと。有機EL
は、有機物でできた発光層を陽極と陰極
せる発光現象のこと。有機ELは、有機物でできた発光層を陽極と陰極
でサンドイッチのようにはさみ、それぞれの電極から+(
でサンドイッチのようにはさみ、それぞれの電極から+(正孔)
正孔)と−(
と−(電
子)を注入して発光層を励起させることによって発光する。
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16
有機ELの生産能力
0
50
月産能力(1インチ換算万枚)
100
150
200
250
300
350
東北パイオニア
TDK
アデオン
パッシブ型
アクティブ型
東芝松下
ローム
エスケイ・ディスプレイ
京セラ(非公開)
ソニー(非公開)
韓国サムスンSDI
日経産業新聞2005.5のデータより作図
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ディスプレイメーカーの生残り戦略
●技術多様性,常にさまざまな種を蒔き続ける
●その一方で選択と集中
●他の技術,他のメーカーとの共生
●技術に適したニッチ(生態的地位)の模索
第1部 おわり
成蹊大学公開講座 2005.6.4
17
第2部
ディスプレイの人間工学的評価研究から
1.ディスプレイの人間工学
2.中高齢者の視覚特性に適合した
ディスプレイの条件
3.家庭における観視条件を
考慮したテレビの設計
まとめ 機械論から有機体論へ
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ディスプレイの人間工学
ディスプレイ技術の視角
LCD技術
LCD技術
光環境
・画面照度
・調節力
・コントラスト感度
・順応
・色覚など
作業の特性
・映像の観視
・文字の読み取り
・文字の検索
ユーザー評価
ディスプレイ
作業
・視力
利用者
利用者の視覚特性
液晶ディスプレイ
・映り込み対象物の輝度
・視野の輝度
・液晶材料(化学)
・素子アレイ(半導体)
・バックライト(光電気)
・カラーフィルタ(印刷)
・ドライバ(半導体)
機械論
有機体論
人間工学的評価の視角
他のディスプレイ技術
・CRT・PDP・OLED
・SED・DLP
情報技術
社会経済的要因
・価格
・省電力,省スペース
・携帯性
リニアモデル
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18
中高齢者の視覚特性に適合したディスプレイの条件
加齢による視覚特性の変化
・透光体の混濁
・老人性縮瞳
・水晶体の弾性減少
・網膜感度の低下
・近距離視力の低下
・コントラスト感度の低下
・調節力の低下
・グレア感の増大
・順応速度の低下
・色覚の劣化
関連するディスプレイの表示特性
・表示輝度 ・コントラスト ・文字サイズ
・書体 ・表示色
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加齢によって
高空間周波数
域のコントラス
ト感度が低下
する
視覚のコントラスト感度特性を観察するための図
空間周波数が変化しても物理的なコントラストの勾配は一定に作られている.
それにもかかわらず,特に高空間周波数域では高コントラストでないと縞が見
えない.すなわち,図の下の方で縞が見え始める.中間の空間周波数におい
て,最も低いコントラストで縞が認識できる.図中の線が視覚のコントラスト感
度特性を表わす線の例である.視距離によって観察される結果は変わる.
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19
コントラスト感度特性の測定
Cm=50%
Cm=15%
Cm=37%
Cm=4%
Cm=7%
Cm=0%
空間周波数 1 cycle/degreeの例 17型CRT 視距離115cm
平均輝度40cd/㎡ (0.5〜16 cycle/degで測定)
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読取作業実験の方法
実験変数:表示輝度(3),コントラスト(3),文字線幅(2)
150
100
従属変数:日本語文章の
J
読み取り速度,主観評定値
コントラスト比
J
J
J
J
10
J
J
文字フォント(MSゴシック) 画素構成 実寸
14pt(標準文字) 17×17画素 5.05mm
14pt(ボールド文字) 17×18画素 5.05mm
J
J
1
30
100
200
表示輝度(cd/m2)
表示輝度とコントラスト比
の組み合わせ(9条件)
文字線幅(2条件)
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20
被験者 50名
被験者群
若齢者群 N=25
範囲
男性22名,女性 3名 平均値
高齢者群 N=25
範囲
男性12名,女性13名 平均値
年齢
30cm視力
5m視力
20〜23
0.5〜1.5
0.4〜1.5
21.2
1.14
0.92
60〜79
0.4〜1.0
0.4〜1.0
68.6
0.77
0.71
普段の矯正状態におけ
る視力(作業時の視力)
Bausch & Lombのオーソ
レーターで測定
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読み取り課題例 1画面あたり276文字
15型TFT-LCD 160×120mmのウィンドウに表示
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21
実験状況
視距離50cm
輝度,CR,線幅
3×3×2
=18条件
各3画面
合計54画面
の読み取り
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◆コントラスト感度特性と読取速度
平均値ではなく個々の利用者に適合した表示を実現する必要
平均値ではなく個々の利用者に適合した表示を実現する必要
があることを示している
若齢者群(N=25;平均年齢=21)
高齢者群(N=25;平均年齢=69)
16
100
10
若齢者群
14
読み取り速度(文字/秒)
コントラスト感度
1000
12
10
8
6
4
高齢者群
2
0
1
0.1
1
10
100
空間周波数(cycle/degree)
1
10
100
16cycle/degのコントラスト感度
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22
家庭における観視条件を考慮した
テレビの設計
1.50世帯のおける実地調査
画面照度,表示輝度,コントラスト,観視位置など
2.290世帯に対するWebアンケート調査
部屋の広さ,テレビの方式,画面サイズ,
望まれる画面サイズなど
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画面照度と画質
プラズマ
液晶
明るい量販店の光環境
プラズマ
液晶
暗い家庭のリビングの光環境
そ
れ
ぞ
れ
外
光
の
影
響
を
強
調
し
て
あ
る
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画像はソニーピクチャーズエンターテイメント:スパイダーマンより
23
家庭のリビングにおけるTV
画面照度およびTV
TVのコントラスト
のコントラスト
家庭のリビングにおけるTV画面照度および
20
100
18
90
10
8
70
60
50
40
6
30
4
20
2
10
0
0
0-25
25-50
50-75
75-100
100-125
125-150
150-175
175-200
200-225
225-250
250-275
275-300
300-325
325-350
度数
12
80
画面照度(lx)
累積(%)
14
N=50
Mean=107.9
Median=91.2
SD=64.8
MIN=23
MAX=327
y = 356.23x-0.3717
R2 = 0.2983
コントラスト比
16
1000
N=50
CRT:47
LCD:2
PDP:1
100
10
10
100
画面照度(lx)
1000
夜間における室内照明点灯時
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TV観視距離と観視角度の計測
魚眼レンズデジタルカメラをTV
の前
魚眼レンズデジタルカメラをTVの前
に設置して観視者の方向を撮影する
観視者の保持している円盤の中心の
角度と直径から観視距離と観視方向
を画像処理により解析する
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24
Top View
cm
600
800 cm
30°
50世帯
N=275
Right
15°
TV
screen
37%
Normal
画面中心に
対する角度、
視野角の設
計には画面
サイズを考
慮すべき
3%
60%
-15°
Left
-30
600
Scatter plot of typical viewing locations
°
800 cm
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Side View
世帯
Upper
15°
64%
TV
screen
Normal 9%
27%
画面中心に対
する角度、視野
角の設計には
画面サイズを考
慮すべき
Scatter plot of typical viewing locations
-15°
Lower
cm
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25
度数
20
視距離の分布
N=275
平均値=266cm
中央値=245cm
標準偏差=95cm
最小値=66cm
最大値=730cm
15
10
5
英国BBCのTantonの調
査結果(2004)では
Min=160cm
N=102
Max=650cm
Med=270cm
Mean=270cm
800
750
700
650
600
550
500
450
400
350
300
250
200
150
100
0
50
0
視距離(cm)
50世帯におけるTV観視距離の実測値
米国における同様の調査結果は J.G.Nathan et al.(1985)、
Human Factors, N=149, mean=337cm, SD=98cm,がある.
本調査結果の1.27倍に相当する
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テレビ側から見た観視者の目の位置
テレビ側から見た観視者の目の位置
90
60
60
垂 直 方 向 最 大 観 視 角 (度 )
垂直方向最大観視角(度)
最 大 観 視 角 度 (65型)
90
30
0
-30
30
0
-30
-60
-60
N=275
N= 2 7 5
-90
-90
- 90
- 60
- 30
0
30
60
水平方向最大観視角(度)
現状のテレビに対する実態
50世帯275データ
90
-90
-60
-30
0
30
水 平 方 向 最 大 観 視 角 (度 )
60
90
現状の位置に65型を設置した場合の最大
観視角度、四隅のいずれかが最大観視角
度となるので4方向に分布している。背景の
図は、一世代前のIPS-LCDの視角特性を表
している。
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26
290世帯に対するWebアンケートの結果から
現在より大きいテレビを欲しいか?
欲しいテレビの方式は?
Rear Pro
2%
CRT
5%
N=176
N=290
No
44%
LCD
38%
Yes
56%
Front Projector
とFED 各1名
PDP
56%
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290世帯に対するWebアンケートの結果から
メインのテレビの対角画面サイズ
20
テレビの所有台数
40
N=290
30
10
20
%
15
テレビ画面の対角サイズ(インチ)
21,25,28,29,32型が多い
50
46
42
38
34
30
26
0
22
0
18
10
14
5
10
%
N=264
ワイド33%
ノーマル67%
1
2
3
4
5
6
テレビの所有台数
7
8
最頻値は2台,最大値7台
リビング以外のTVも今後重要になる
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27
290世帯に対するWebアンケートの結果から
Room Area and TV Screen Size
60
Diagonal Screen Size (inch)
PDP
N=290
50
40
30
20
10
0
0
5
10
15
20
25
30
2
Room Area (×1.65m )
部屋の広さと画面サイズとの関係
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65型が我が国の家庭における究極サイズか?
Present Size and Desired Size
100
1.HDTVの最適観視
距離は3H(画面高の3
倍)とされる
N=146
D esired Diagonal Screen
Size (inch)
65
2.家庭での観視距離
(中央値)が245cm
1、2より概ね65インチ
が要求サイズとなり本
調査結果と一致する
今後の課題は、設置場
所、FPD技術、価格etc
log y = 0.623*log x +log 4.84
10
10
20
30 40 50 60
Present Diagonal screen size (inch)
100
現在所有しているTV
画面サイズと購入したい
現在所有しているTV画面サイズと購入したい
画面サイズとの関係
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28
リビングにおけるテレビの設置状況
N=50
40
壁掛けテレビは技術者
の幻想ではないか?
コーナーをうまく使うデ
ザインを考える必要が
ある.
20
長辺右コー ナー
短辺左コー ナー
長辺中央
中央寄り な ど その他
長辺左コー ナー
短辺右コー ナー
短辺中央
0
短辺左コー ナー 斜め
10
短辺右コー ナー 斜め
%
30
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まとめ:機械論から有機体論へ
機械論
有機体論
対象
無機物
有機物
方法
実験
観察
扱うもの
単純なもの
複雑なもの
典型学問
物理学
生態学
態度
テクノ中心
人間中心
発想
還元主義
ネットワーク
研究法
定量的
定質的
支配領域
理工系中心
生物・社会系
時系列
不変
進化
中山茂著:「20・21世紀の科学史」より抜粋
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情報社会の窓
電子ディスプレイの生態学:
利用者中心のディスプレイ技術への視点
ご清聴ありがとうございました
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