循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) Guidelines for Pharmacotherapy of Atrial Fibrillation(JCS 2013) 合同研究班参加学会 日本循環器学会 日本心臓病学会 日本心電学会 日本不整脈学会 班長 井上 博 富山大学第二内科 班員 新 博次 奥村 謙 日本医科大学 多摩永山病院 杉薫 鎌倉 史郎 弘前大学循環器内科 東邦大学医療センター 大橋病院循環器内科 国立循環器病研究センター 心臓血管内科 三田村 秀雄 矢坂 正弘 国家公務員共済組合連合会 立川病院 熊谷 浩一郎 国際医療福祉大学大学院 是恒 之宏 大阪医療センター 臨床研究センター 山下 武志 九州医療センター 脳血管内科 財 ) 心臓血管研究所付属病院 循環器内科 協力員 里見 和浩 東京医科大学八王子医療センター 循環器内科 外部評価委員 大江 透 心臓病センター 榊原病院 小川 聡 児玉 逸雄 国際医療福祉大学 三田病院 名古屋大学 筒井 裕之 北海道大学 循環病態内科学 (五十音順,構成員の所属は 2013 年 6 月現在) 目次 再改訂にあたって ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2 4. 基礎疾患 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥7 I. 疫学 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥4 5. 心房細動の危険因子 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥7 1. 一般住民での有病率 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥4 II. 心房細動の病態生理 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥9 2. 有病率の経年変化 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥6 1. 心房細動の病態 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥9 3. 新規発症 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥6 2. 基礎疾患 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥9 1 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) 3. 病型と臨床的意義 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 10 V. 治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16 III. 心房細動の電気生理学的機序 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 10 1. 治療方針の立て方 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16 1. 心房細動の発生機序 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 10 2. 抗血栓療法の適応と方法 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 20 2. 電気的リモデリング,構造的リモデリング ‥‥‥ 12 3. 心拍数調節の適応と方法 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 34 3. 遺伝的リスクと電気生理学的変化 ‥‥‥‥‥‥ 12 4. 洞調律化・再発予防の適応と方法 ‥‥‥‥‥‥ 36 IV. 臨床像 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 13 5. アップストリーム治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 45 1. 心房細動の分類 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 13 6. 非薬物療法 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 47 2. 初発心房細動 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14 付表‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 50 3. 発作性心房細動 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 15 文献‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 51 4. 持続性心房細動 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 15 (無断転載を禁ずる) 5. 永続性心房細動 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 15 エビデンスレベル 指針 クラス I 手技,治療が有効,有用であるというエビデ クラス II 手技,治療の有効性,有用性に関するエビデ ンスがあるか,あるいは見解が広く一致して いる. ンスあるいは見解が一致していない. レベル A 400 例以上の症例を対象とした複数の多施設 レベル B 400 例未満の症例を対象とした複数の多施設 クラス IIa エビデンス,見解から有用,有効である可能 性が高い. クラス IIa′エビデンスは不十分であるが,手技,治療が 有効,有用であることにわが国の専門医の意 ランダム化比較試験で実証された,あるいは メタ解析で実証されたもの. ランダム化比較試験,よくデザインされた比較 検討試験,大規模コホート試験などで実証さ レベル C れたもの. ランダム化比較試験はないが,専門医の意見が 一致したもの. 見が一致している. クラス IIb エビデンス,見解から有用性,有効性がそれ クラス III ほど確立されていない. 手技,治療が有効,有用でなく,ときに有害で あるというエビデンスがあるか,あるいは見 解が広く一致している. 再改訂にあたって 2001 年 1)に公表された『心房細動治療(薬物)ガイド 抗血栓療法からなる.心拍数調節に関しては,これまで経 動治療に関する新知見を加味し,現在のわが国における心 標心拍数でなくても数年の経過では予後に大きな差のな 房細動の標準的な薬物治療を提案するものである. いことが明らかになってきた.一方,洞調律化・再発予防 の改訂を行うことになった.過去 5 年間にみられた心房細 心房細動の治療方針は,心拍数調節(レートコントロー 2 ル) ,洞調律化・再発予防(リズムコントロール) ,および ライン』は,2008 年に改訂された .今回 5 年ぶりに再度 2) 験的な目標心拍数が設定されていたが,それほど厳密な目 については,わが国では新規抗不整脈薬の上市はみられ 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) ず,薬物療法に関しては大きな変化は加えられていない. また再発予防に大いに期待されたアップストリーム治療 について,欧米やわが国で行われた前向き比較試験は否定 的な成績を示した.洞調律化・再発予防としてのカテーテ ルアブレーションは,わが国でも広く行われるようにな 層別化法として CHADS 2 スコアを採用しており,これら の成績を参考にした本改訂版では,リスク層別化法として CHADS 2 スコアを基本的に用いることとした.出血のリ スク層別化法については,従来は簡便なものがなかった が,HAS-BLED という新しいスコア法が提案され,日本 り,薬物治療に勝る成績が集積されてきている.カテーテ 人にもこれらの新しいリスク層別化法が利用できること ルアブレーションは,今や心房細動の治療には欠かすこと が次第に明らかになってきた. のできない手段であるので,本ガイドラインでも扱うこと 旧ガイドラインの「弁膜症性」の定義を若干改め,人工 とした.なお本学会からは『カテーテルアブレーションの 弁置換(機械弁, 生体弁とも)とリウマチ性僧帽弁膜症(お 適応と手技に関するガイドライン』が公表されているの もに狭窄症)を「弁膜症性」とした. 「僧帽弁修復術後」 で,参照していただきたい 3). は非弁膜症性として扱い,その他の要因によって抗凝固療 旧ガイドラインからの大きな変更点は以下のとおりで 法のあり方を決めることにした.なお緊急ステートメント ある.まず新規経口抗凝固薬の追加である.経口薬として で明記されているように,リウマチ性でない僧帽弁閉鎖不 (FXa) 阻害薬が登場し, 直接トロンビン阻害薬や第 Xa 因子 2013 年 12 月現在,わが国ではダビガトラン,リバーロキ サバン,アピキサバンが使用可能で,国産のエドキサバン は国際共同第 III 相試験の結果が報告された.これらの新 全症は非弁膜症性に含める. 孤立性心房細動の定義は研究者により異なり,また時代 により変更されてきた.年齢を条件に加えるもの,心疾患 以外の疾患を含めるものなどさまざまであり,そもそも 規経口抗凝固薬は,ワルファリンの持つ問題点を解決すべ 「孤立性」という修飾語の使用を勧めない意見すらある. く開発された薬剤であるが,まだ使用経験が少なく,これ 臨床現場での混乱を回避するために,本改訂版の治療方針 らを使いこなすには多くの経験の蓄積が必要である.使用 経験が限られており推奨度を決めることが難しいため,臨 (16 ∼ 49 ㌻)にあたっては「孤立性 の解説(V.「治療」 心房細動」という用語は原則使用せず,その代わりに「臨 床開発治験として行われた大規模試験の結果や,2013 年 床上有意な器質的心疾患を認めない心房細動」と記載す 奨度を決めた.新知見が加われば推奨度に変更が加えられ をさす.たとえば高血圧がある場合,塞栓症予防の観点か ることになる.短期間のあいだに新知見が数多く報告され らはリスクであるが,明らかな肥大がない場合(たとえば 12 月の時点までに得られた情報に基づいて新規薬剤の推 てきているので,新規経口抗凝固薬の新しい情報には十分 な注意を払っていただきたい. 次にワルファリンの至適抗凝固レベルである.日本人向 ることとした.器質的心疾患とは肥大心,不全心,虚血心 心電図上 ST-T 変化を伴う左室肥大の所見がないなど)に は不整脈治療の観点からは,いわゆる孤立性心房細動に準 じた抗不整脈薬の選択が推奨される.すなわち抗血栓療法 けの目標 PT-INR(プロトロンビン時間 - 国際標準比)レ とリズムコントロールではリスク評価に若干の違いがあ なかった.7000 例を超す集団についての前向き研究 法の選択に混乱が生じる恐れがある.条件が少々はずれた ベルについては,これまで少数例の検討に基づく成績しか (J-RHYTHM Registry)の結果が明らかになり,欧米とは 異なる PT-INR レベル(1.6 ∼ 2.6)が日本人,ことに 70 るため, 「孤立性」を厳密に定義すると臨床現場では治療 患者に対する治療選択に,現実的でない対応を求めること になりかねない.このような問題点に鑑み,本改訂版では 歳以上の非弁膜症性心房細動例にはふさわしいことが改 上記の方針を採用することとした. でも有効かつ安全であることが示されたが,一度,脳塞栓 人向けの診療指針となるよう努めた.ガイドラインは医師 症を発症すると長期にわたってハンディキャップを背負 が実地診療において治療法を選択するうえでの「指針」 以下であれば出血性合併症をきたしにくいことから,旧版 で主治医が下すべきものである.ガイドラインに従わない 旧ガイドラインでは心原性塞栓症のリスク層別化に 勘案した主治医の判断が優先されるものであり,決して訴 低めの PT-INR (1.6 ∼ 2.6) めて示された.70 歳未満の場合, い家族の負担が増すことや,70 歳未満の例では PT-INR 3 どおり PT-INR 2.0 ∼ 3.0 を目標とすることを推奨した. CHADS 2 スコアが利用されていたが,欧州では真にリス クの低い集団を抽出するための新たなスコア(CHA 2 DS 2 - VASc)が提案されガイドラインでも利用されている.し 以上のように,本改訂版が現時点における標準的な日本 であり,最終的判断は各症例の病態を個別に把握したうえ 治療法が行われたとしても,個々の症例での特別な事情を 追されるべき論拠をガイドラインが提供するものではな いことを確認しておきたい. かし,本改訂作業までに得られた前向き比較試験はリスク 3 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) I. 疫学 年齢層が最多となった 6).ATRIA の成績 7)は, 米国カリフォ ルニアの医療保険に登録された 20 歳以上の成人の受診歴 1. から心房細動の有病率を求めたものである.この成績では 一般住民での有病率 心房細動は男性の 1.1 %,女性の 0.8 %にみられ,全体で は 0.95 %の有病率となった 7). 1995 年までの報告から年齢層別の心房細動の有病率を 1.1 グラフ化したものを図 1 9)に示す.60 歳を超えると有病 欧米の成績 率が急峻に増大し,80 歳代以降では 10 %に達する数字と 表 1 に,年齢別にみた心房細動有病率に関する欧米の研 なっている.図 1 の点線で示された有病率を用いると米国 では心房細動を有する人口は 223 万人となり,これは全国 究を発表年代順にまとめた 4-8).いずれの報告でも,男女と 民の 0.89 %にあたり,75 ∼ 79 歳の年齢層の心房細動合併 も加齢とともに有病率は増加し,各年齢層では一般に男性 のほうが女性より有病率が高い.Cardiovascular Health 例が最多となった 9).一方,ATRIA7) の成績を米国全体に Study 5)は,米国のメディケアのデータから年齢 65 歳以上 あてはめると,230 万人の心房細動例がいることになり, は一般住民を対象にした調査ではない.英国の報告 は実 病率と将来の人口動態予測から,2050 年には米国では 上述の成績 9)とほとんど同じ値を示している.心房細動有 の男女を無作為に抽出して調査したもので,厳密な意味で 6) 地医家に登録された 140 万人のデータベースをもとに, 1998 年の心房細動の有病率を示したものである.全体の 560 万人が心房細動に罹患していると推定されている 7). 有病率は男性 1.21 %,女性 1.27 %となり,年齢別の人口 を用いて計算すると,心房細動を持つものは 75 ∼ 84 歳の 表 1 心房細動有病率(欧米の成績) Framingham Study Cardiovascular Health Study UK database ATRIA Study Rotterdam Study 報告年 (文献) 19914) 19945) 20016) 20017) 20068) 対象 5070人 年齢(歳) 全体 40 ∼ 44 45 ∼ 49 50 ∼ 54 55 ∼ 59 60 ∼ 64 65 ∼ 69 70 ∼ 74 75 ∼ 79 ≧ 80 5201人 男性 女性 140万人 全体 0.1 女性 全体 0.3 0.2 0.2 0.7 0.4 0.5 1.8 1.1 1.4 4.6 3.3 3.9 9.1* 7.2* 7.9* 0.5 1.8 4.8 8.8 5.9 2.8 4.0 5.8 5.9 5.8 5.8 5.9 5.8 8.0 6.7 7.3 表中の数字は%. *:75 ∼ 84 歳,**:85 歳以上. 4 189万人 男性 10.6 ** 10.9 ** 10.8 ** 6808人 男性 女性 全体 男性 女性 全体 0.9 0.4 0.6 0.8 0.6 0.7 1.7 1.0 1.4 2.6 1.0 1.7 3.0 1.7 2.5 5.2 2.9 4.0 5.0 3.4 4.3 6.9 5.4 6.0 7.3 5.0 6.3 13.0 6.5 9.0 10.6 8.0 9.3 16.2 15.0 15.4 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) 18 16 有病率(%) 万人で,予測総人口 9518 万人の 1.09 %を占めると推定 :Framingham Study :Cardiovascular Health Study :Western Australia :Rochester 20 14 される 12).心血管疾患全国調査 11)の成績は日本循環器学 会の成績とよく似ており,2000 年にわが国では 72.9 万人 が心房細動を有すると推定している. 12 10 日本循環器学会の疫学調査の成績では有病率に地域差 8 の存在が示唆され,住民健診で比較すると,長崎県では青 6 森県や新潟県より有病率が低かった(60 歳以上の男性で 4 は青森 3.01 %,新潟 2.99 %,長崎 1.93 %,女性ではそれ 2 0 40 50 60 70 80 90 . ぞれ 0.79 %,0.90 %,0.52 %) 年齢(歳) 1.3 東南アジアの成績 図1 年齢層別にみた心房細動有病率 年齢の範囲の中間に値を示した(例,年齢 60 ∼ 69 歳の値は 65 歳の所に,また 80 歳以上の値は 85 歳の所に示した).点線はこ れらの成績から求められた各年齢層における有病率を示す. (Feinberg WM, et al. 19959) より) 韓国 14),台湾 15),中国 16) の疫学調査の成績を表 3 にま とめた.対象となった母集団はそれほど多くはないが,韓 国 14) と台湾 15) の有病率は欧米の報告(表 1)より低く, わが国の結果(表 2)に似ている.中国 16) の成績では 80 歳以上の対象が少なく,有病率はわが国(表 2)や韓国 1.2 ,台湾 15) よりも高くなっている. 14) わが国の成績 秋田県の農村住民を対象とした疫学調査 10),心血管疾患 全国調査 11),日本循環器学会疫学調査 12),および倉敷市の 表 3 心房細動有病率(アジアの成績) 住民健診 13) の結果を表 2 にまとめた.日本循環器学会の 疫学調査 12)は,2003 年に行われた定期健診の成績(40 歳 以上の住民健診および企業健診 630138 人が対象)で,心 韓国 台湾 中国 報告年 (文献) 200514) 201015) 200816) 対象 14540人 3522人 29079人 全体 男性 女性 全体 年齢(歳) 男性 女性 全体 房細動有病率は男女とも加齢とともに増加し,各年齢層に 40 ∼ 44 おいて女性に比べて男性で高かった.しかし,この調査で は欧米の成績と異なり,有病率は 70 歳代で男性 3.44 %, 45 ∼ 49 低い値を示した.この成績を日本の人口にあてはめて計算 55 ∼ 59 有病率は 0.56 %となり,米国 9)の 2/3 の有病率となった. 女性 1.12 %,80 歳以上では男性 4.43 %,女性 2.19 %と 50 ∼ 54 2005 年には, わが国で 71.6 万人が心房細動を有し, すると, 有病率が今後も変わらないとして将来の人口予測値を用 いると,2050 年にわが国で心房細動を持つ人口は約 103 0.1 0.06 0.1 0.2 0.1 (35 ∼ 44 歳) 0.3 0.3 0.5 0.5 0.5 1.1 0.9 1.1 0.7 0.4 60 ∼ 64 1.8 0.2 65 ∼ 69 3.9 1 2.2 70 ∼ 74 2.5 1.1 1.7 75 ∼ 79 3.4 0.5 1.9 ≧ 80 4.5 3.5 4 2.6 3.7 0.05 0.1 0.3 0.3 0.6 0.5 0.6 0.5 1.0 1.0 1.8 1.3 1.6 3.0 2.6 2.8 4.8 2.6 3.8 7.5 7.4 7.5 表中の数字は%. 表 2 心房細動有病率(わが国の成績) 報告年 (文献) 対象 年齢(歳) 秋田県農村 心血管疾患全国調査 日循疫学調査 倉敷市 199110) 200511) 200612) 200813) 6057 人(Ⅲ期) 男性 女性 全体 5198 人(2000 年度) 男性 女性 全体 63 万人 男性 女性 41436 人 全体 40 ∼ 49 1.2 0 0.5 0 0.2 0.1 0.2 0.04 0.1 50 ∼ 59 1.2 0.6 0.9 0.4 0.7 0.6 0.8 0.1 0.4 1.4 0.5 0.9 60 ∼ 69 3 1.1 1.9 70 ∼ 79 (4.7) (3) (3.8) ≧ 80 3.5 2.1 2.7 1.9 0.4 1 3.4 1.1 2.1 4.4 2.2 3.2 男性 女性 全体 0.5 0.2 0.2 2.3 1 1.5 3.5 2.5 2.8 表中の数字は%.( )内の数字は参考値(受診者が少ないため). 5 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) 2. 慢性心房細動 有病率の経年変化 一過性心房細動 2 年間の新規発症率(/1000人) 男性 時 代 の 変 化 に 伴 っ て 疾 病 構 造 に 変 化 が 生 じ う る. Framingham Study の成績 17)では, 男性(年齢 65 ∼ 84 歳) は 1960 年代の終わりに比べて,1980 年代の終わりには心 房細動の有病率は約 3 倍に増加している.しかし,同時期 に 女 性 で は 軽 度 の 増 加 に と ど ま っ て い る( 表 4) . Copenhagen City Heart Study(表 4)18)でも Framingham Study 17)と同様に,男性では経年的に心房細動の有病率の 増大がみられるが,女性ではそのような増大はみられてい 男性 女性 女性 ない.これらの心房細動の経年的変化にみられる特徴の原 因については不明な点が多いが 17),少なくとも基礎心疾患 年齢(歳) の頻度や年齢構成の変化だけでは説明は困難である 18). 年齢(歳) 図2 心房細動新規発症率(Framingham Study) 3. 縦軸は 2 年間の新規発症率を 1000 人あたりの頻度で示す.左 は慢性心房細動,右は一過性心房細動の新規発症率. (Kannel WB, et al. 198319) より) 新規発症 Framingham Study 米国ミネソタ州のデータでは,地域住民の受診歴も含ん だ検討の結果,1980 年から 2000 年の 21 年間に新規発症 の心房細動新規発症率を図 2 に示 19) す.これは 2 年間の心房細動新規発症数を 1000 人あたり 70 歳代男性では慢性, 一過性とも約 13 人, で示したもので, 女性では 7 人(慢性心房細動)∼ 9 人(一過性心房細動) となっている.全体でみると,男性では年間 0.2 %という 成績である .Cardiovascular Health Study 19) 率が 12.6 %増えている 21).新規発症率がこのペースで増 えていくと,2050 年には米国全体では 1590 万人が心房細 動を持つと推測される.2000 年の有病率を用いて推定し た場合でも,2050 年の心房細動を有する人口は米国では 1210 万人であり,先に記した予測(560 万人)7)よりはる の心房細動 20) 新規発症率(1000 人・年あたり)は,男性では 65 ∼ 69 かに多い数字となっている. 以上 58.7 人,女性では 65 ∼ 69 歳 10.9 人,70 ∼ 74 歳 9.1 動を発症する危険性を推定すると,40 歳男性では 26 %, Framingham Study 同様,男女とも加齢とともに新規発症 例に限ると,生涯の危険性は約 16 %となった 22). 発症率は若干低い(80 ∼ 84 歳の男性では 25.5 人,女性で によれば,男女とも加齢とともに新規発症率は増大し 歳 12.3 人,70 ∼ 74 歳 22.8 人,75 ∼ 79 歳 34.8 人,80 歳 Framingham Study の成績から,生涯のあいだに心房細 人,75 ∼ 79 歳 23. 1 人,80 歳 以 上 25. 1 人 で あ り, 率は増大している.Rotterdam Study の結果 8) では,新規 女性では 23 %となった 22).心不全や心筋梗塞を持たない 久山町研究(図 3,1961 ∼ 1983 年にかけての調査)23) . は 18.2 人,いずれも 1000 人・年あたり) ているが,Framingham Study19)や Cardiovascular Health 表 4 心房細動有病率の経年変化 Framingham Study, 199617)(65 ∼ 84 歳の住民 , %) 年 1968-1970 1971-1973 1975-1977 男性 3.2 5.3 6.5 女性 2.8 3.3 4.3 1979-1981 6 年 1976-1978 1981-1983 1991-1994 男性 1.4 1.9 3.3 女性 1.5 1 1.1 1987-1989 7.5 9.1 4.3 3.9 4.7 Copenhagen City Heart Study, 2003 (50 ∼ 89 歳の住民から無作為に抽出した集団 , %) 18) 1983-1985 7.8 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) (対1000人・年) 20 発症率 15 (対1000人・年) 20 男 性 女 性 * p <0.05 linearity ** p <0.1 * 15 10 10 p <0.05 ** 5 0 40−49 50−59 60−69 70−79 5 0 80− 年齢(歳) 合計 合計は年齢調整 図3 久山町研究の年齢階級別にみた心房細動発症率(第一集団の成績) 1000 人・年あたりの頻度を示す.(藤島正敏 . 199823) より) Study 20)よりはるかに低い.秋田県農村の調査 10)のうち, いわゆる孤立性心房細動の定義は研究者によって異なり, 集団では,60 歳代男性は 8.79,女性は 3.99/1000 人・年 Survey 28,34) では約 10 %が孤立性とされている.孤立性の 図 3 の久山町の集団と同時期の I 期(1963 ∼ 1967 年)の と久山町の発症率より高くなっている.2006 ∼ 2007 年の 倉敷市の健診データでは,心房細動の新規発症率は 9.3/1000 人・年であった 24).男女とも加齢により新規発 症率は上昇し,75 歳以下では男性のほうが発症率は高い が,75 歳を超えると男女差はみられなくなった(男性 16.4vs 女性 13.6/1000 人・年,p =0.273) . その頻度は報告によって大きく異なり 33),Euro Heart (19 ㌻)を参照. 定義は,V. 1. 2.14「孤立性心房細動」 5. 心房細動の危険因子 Framingham Study の成績 34)と久山町研究(第二集団) 4. の成績 23)を表 6 にまとめたが,心房細動発症の危険因子 基礎疾患 には若干の相違がみられる.飲酒と心房細動に関しては, 久山町研究 23)では男性の場合に危険因子とされているが, 調査の年代,母集団,人種などによって心房細動例の基 礎心疾患には差がある(表 5)7,25-32).最近の研究では,欧 州 28) でもわが国 31) でも高血圧の頻度が高い.2000 年以降 の報告でみると,虚血性心疾患の頻度は欧米 7,27,28) に比べ るとわが国 30-32) では低い.明らかな器質的心疾患を欠く, Framingham Study34)では危険因子にはならなかった.し かし,最近の Framingham Study 35)の成績では,長期間に わたる中程度の飲酒は心房細動発生と明らかな関係はな いが,1 日にエタノール 36g 以上を飲むと,心房細動発生 . の危険が増すことが示された(相対危険度 1.34) 肥 満 に つ い て は, 久 山 町 研 究 23) で も Framingham 表 5 心房細動の基礎疾患の内訳 Framingham Study 報告年 (文献) 198225) ALFA Study ATRIA Study 199926) 20017) AFFIRM Study Euro Heart Survey 不整脈薬物 療法研究会 Tomita J-RHYTHM Registry 心研 データベース 200227) 200528) 199829) 200030) 201131) 201132) 虚血性 10.2 16.5 34.6 26 32.8 12.0 11 10.1 9.6 高血圧 48.4 21.4 49.3 51 63.8 27.5 29 59.1 43.0 弁膜症 18.4 15.2 4.9 5 26.4 25.1 (僧帽弁膜症) 19 13.7 (僧帽弁狭窄 症,人工弁) 21.1 その他 - 17.5 - 6 11.0 - 8 9.6 10.0 孤立性 - 29.4 - 13 10.2 25.1 33 - - 数字は%(重複あり). 7 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) 表 6 心房細動発症の危険因子 ることが示されている 37).身長は時代とともに高くなる傾 向があり,今後わが国の心房細動有病率が高くなることが Framingham Study, 1994 (多変量解析によるオッズ比) 34) 男性 女性 年齢(10 歳ごと) 2.1* 2.2* 喫煙 1.1 1.4 糖尿病 1.4** 1.6*** 左室肥大(ECG) 1.4 1.3 高血圧 1.5 1.4** 1.2 4.5* 5.9* 弁膜症 1.8*** 3.4* p <0.05, ** 子であるが,心房細動に関しても両者の関係が示唆されて きた 38).わが国の健診データでは,メタボリック症候群は 将来の心房細動発症の危険因子(メタボリック症候群の 定義によりハザード比は 1.28 ∼ 1.78)となった 39).メタ ** 心筋梗塞 p <0.0001, メタボリック症候群はさまざまな心血管疾患の危険因 1.4 *** うっ血性心不全 * 推測される. ボリック症候群の構成要因もそれぞれ単独で心房細動発 高血圧 1.69, 症の危険因子であり,ハザード比は肥満 1.64, HDL コレステロール低値 1.52, 空腹時血糖上昇 1.35∼1.44 p <0.01. である 39).ただし HDL コレステロール低値は,女性では *** 心房細動発症と関係があったが,男性では有意な関係はみ 久山町研究第二集団,199823) (Cox 比例ハザードモデル) 男性 女性 年齢 1.8** 2.5* 喫煙 0.9 0.5 耐糖能異常 0.9 1 左室肥大 1.1 1.6 拡張期血圧 1.1 1.2 虚血性心疾患 3.4** 1.5 弁膜症 1.8** 13.1** 飲酒 1.9** - p <0.05, * なお, 加療中の高血圧例を対象としたケー られなかった 40). スコントロール研究では,収縮期血圧 150mmHg 以上の コントロール不良例で心房細動の合併が多いことが示さ れている 41). 尿酸と心房細動との関係については不明な点が多かっ た.わが国の成績では,高尿酸血症は女性では心房細動合 併と関連(オッズ比 1.89)していたが,男性では有意な 関係が認められなかった 42). 慢性腎臓病と心房細動の関連についてのわが国の成績 43) p <0.01. ** Study34) でも心房細動発症の危険因子とはされてこなかっ た.しかし,その後の Framingham Study の成績 では, 36) 肥満指数(body mass index:BMI)が増すにつれ心房細 動の頻度が上昇し,BMI が 30 以上の群では 25 未満の群 まる.推定糸球体濾過量(eGFR)30 ∼ 59 mL/min/1.73m2 ではハザード比 1.32,30 mL/min/1.73m2 未満では 1.57 となった.逆に心房細動は将来の腎機能低下(ハザード比 1.77)と関連している 43). 喫煙についての成績は必ずしも一致しているわけでは に比べて男性は 1.52,女性は 1.46 のハザード比を示した. ない.古くは Framingham Study(女性で 40 %増加)34) 促すと説明されている 36).わが国の成績でも,身長(相対 44) 肥満により左房容積が増大することが心房細動の発生を 危険度 2.07)や BMI(同 1.78)が心房細動有病率を高め 8 では,腎機能低下に伴い将来の心房細動発症の危険が高 や最近報告された ARIC Study (喫煙歴があると 52 %増加) のように, 心房細動発症の危険因子となるとするものと, 関係がないとするもの 45) がある. 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) II. 心房細動の病態生理 械的負荷で,これは僧帽弁狭窄症や心不全,高血圧で代表 1. される.左房負荷は心房筋の肥大や線維化(構造的リモデ 心房細動の病態 リング)を促進するが 54),その際,レニン・アンジオテン シン・アルドステロン(RAA)系の賦活や酸化ストレス の亢進が大きな役割を果たしている 55,56).また,心房細動 心房細動では,空間的にも時間的にも変動する複数のリ エントリーが成立しており,心房は統率のない興奮に陥っ の持続自体も構造的リモデリングを促進する 55,57). 心房細動の新規発症の危険因子を是正することは,心房 .このため,心房は局所的には 250 ∼ 350 回 /min 細動発症予防に有効である.最近の大規模臨床試験は,高 またはそれ以上の高頻度で興奮するようになる.心房細動 血圧では十分な降圧により心房細動の新規発症が少なく の発生とその維持には,トリガーとなる異常興奮と,肺静 なることを報告している 58).降圧薬のなかでは,他剤に比 ている 46) 脈を含む心房でリエントリーが成立するための心房筋の 電気生理学的または構造的変化(不整脈基質)が存在す 較してアンジオテンシン II 受容体拮抗薬(ARB)で発症 抑制効果が高い可能性が示唆されている 58,59)が,心房細 ると考えられている. 動発症を主要エンドポイントとした前向きランダム化比 は消失し,有効な心房収縮もみられなくなる.このため心 は ARB やアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬で抑 統率のない速い不規則な心房興奮のため心電図で P 波 較試験は行われていない.心不全での心房細動の新規発症 室充満に対する心房寄与は消失し心拍出量は減少するの 制される 60)が,これが直接効果によるものか,心不全の進 で,高齢者やすでに心疾患を有する例では,血行動態を悪 行を防止することによる二次的効果によるものかは不明 化させ心不全の増悪因子となる.正常心であっても頻脈性 である.いずれにせよ,これらの基礎疾患の治療による心 心房細動が長く続くと,心筋症の所見を示すようになる (頻脈誘発性心筋症)47).また,心房収縮の消失は心房内の 血流低下をきたし,血栓形成の原因となる. 房細動新規発症の抑制作用は,心房細動の上流治療(アッ プストリーム治療)と呼ばれている(V.5「アップストリー ム治療」 〈45 ㌻〉参照)61). 甲状腺機能亢進症では心房細動が好発する.その機序の による心房筋の Kv 1.5 一つに, トリヨードサイロニン (T3) 2. 遺伝子の発現亢進が考えられる 62).最近,家族性心房細動 基礎疾患 でも K チャネルの遺伝子異常が知られており,K 電流の 増加(gain of function)が確認されている 49).このような 心房細動をきたしやすい疾患には,僧帽弁疾患,心不全, イオンチャネルの遺伝子発現の変化や遺伝子異常により 心筋梗塞,高血圧,糖尿病,甲状腺機能亢進症がある 2, 34). 心房の不応期が短縮すれば,心房でのリエントリーの成立 有意な器質的心疾患のない孤立性心房細動 では,遺伝 48) は促進されることになる 46). 子異常を伴う家族性心房細動の病態が報告され 49),一塩基 多型(SNPs)が心房細動の発症に関与する可能性も報告 されるようになった 50). 心房細動の発生要因には,①左房の機械的負荷,②自律 神経活動,③心房筋のイオンチャネルの変化などがある が,これらの要因が同時にあるいは経時的に組み合わさ り,心房細動発生の基質を形成していくと考えられる 51.とくに心房細動の基礎疾患に共通する要因は左房の機 53) 9 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) もある.心房収縮が消失し心拍出量は低下するため,労作 3. や運動時の易疲労感など,非特異的な症状を示す場合も多 病型と臨床的意義 い.心機能低下例や肥大型心筋症などでは,心不全を急激 に悪化させ,肺うっ血もきたす. 心室拍数は房室結節の伝導能によって規定される.発作 性心房細動では 120 ∼ 150 回 /min 以上と速いことがしば 3.1 しばで,このため,とくに高齢者では急性の左心不全の原 病型 因になる.また運動時に心室拍数が急激に上昇すると,易 心房細動はその持続時間から,発作性,持続性,および .発作性 永続性に分類される(IV. 臨床像〈13 ㌻〉参照) 疲労感や運動耐容能の低下をもたらす.心室拍数の速い心 房細動が持続すると,頻脈による心筋症をもたらす 47).伝 心房細動は年間約 5.0 ∼ 8.6 %の率で慢性化するとされ, 導能の良好な Kent 束を有する WPW 症候群では,心房細 25 %が永続性心房細動に移行するとされている をきたす危険がある 65). その移行速度は初期に速くその後は緩慢となる.5 年で約 .慢性 63) 動時に速い興奮が Kent 束を介して心室に達し,心室細動 化の促進因子には,年齢(高齢) ,弁膜疾患(大動脈弁狭 心房細動では有効な心房収縮が消失し,心房内の血流速 窄症および僧帽弁逆流症) ,心筋梗塞,心筋症,左房拡大が 度は低下して,もやもやエコーがみられるようになる.ま あげられている .このような病型分類は,治療手段の選 63) 択に有用である. た,心房細動は心房内皮におけるトロンボモジュリンやプ ラスミノーゲン活性化因子インヒビター(PAI-1)などの 遺伝子発現を修飾し,易血栓性をもたらす可能性がある 3.2 .これらの血流速度の低下,心房内皮障害,また心房細 66) 臨床的意義 心房細動の約 40 %は無症候性であるが 64),脈の不整や 胸部不快感を訴えたり,自分で脈を触れて不整に気づく例 動の基礎疾患からもたらされる血液凝固成分の変化は,左 房内血栓の形成を促すため,心房細動は脳梗塞発症の大き な危険因子となる. III. 心房細動の電気生理学的機序 心房細動の電気生理学的機序は,房室回帰性頻拍などの 解剖学的に規定された頻拍と異なり,単純に描写すること 1. はできない.これは心房細動の発症機序が単一でなく,多 心房細動の発生機序 くの場合,2 つまたはそれ以上の機序が複合し,しかも時 間的かつ空間的に不安定なためである.一方,心房筋の電 気生理学的性質は心房細動発症後の時間経過とともに変 化し(電気的リモデリング) ,さらに基礎疾患や心機能の 影響を受けて心房組織に構造的変化が生じ(構造的リモ デリング) ,心房細動は起きやすくなると同時に持続しや すくなる.以上の電気生理学的不安定性,電気的および構 造的リモデリングは,心房細動の薬物療法,非薬物療法を 困難なものとしている. 10 心房細動中に心房電位を記録すると,多くの部位で, 不規則で非常に速い,無秩序な興奮が記録される.その 成因として局所の異常興奮(自動能)の亢進(focal mechanism)と,複数興奮波(multiple wavelets)の不規 則な旋回運動(random reentry)が実験的かつ臨床的に示 されている. 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) に複数興奮波のリエントリー(次項)が誘発され,心房細 1.1 動が生じることもあれば,期外収縮が連発し持続性の高頻 focal mechanism が心房内に細動様伝導を生じ, 度発火 (rapidly firing driver) 実験的にアコニチンを局所に投与すると心房細動が誘 発される 単独または心房内リエントリーと複合して心房細動が生 .この心房細動モデルは早期後脱分極(early じることもある 70,71).肺静脈起源の期外収縮,高頻度発火 67) afterdepolarization:EAD)に起因する局所の高頻度の異 の機序として,撃発活動 75)や左房肺静脈接合部のリエン conduction)を機序とする 68).心房内の興奮は心房細動と 困難である. 常発火と,これに続く心房内の細動様伝導(fibrillatory トリー 76)が示唆されているが,臨床的に判別することは ,およ 図 4 は,発作性心房細動例の肺静脈隔離術前(A) 同様に不規則かつ無秩序であるが,局所の異常興奮に起因 び術後(B)の電気生理検査所見(右上肺静脈電位と冠静 することから,電気生理学的には心房頻拍に近い.臨床的 脈洞電位を記録)で,隔離前(A)は左房電位(LA)に連 には心房または大静脈内の局所を起源とする巣状心房細 動が focal mechanism により発生すると考えられ 69),異常 ,右上肺静脈内 続して肺静脈電位(PV)を認め(小矢印) 興奮の局在を同定しアブレーションすることにより心房 の高頻度発火(大矢印)を起源とする一過性心房細動が 記 録 さ れ て い る.発 作 性 心 房 細 動 の な か で,focal 細動は根治される. mechanism だけによる心房細動がどの程度存在するのか, 一方,多くの発作性心房細動例に認められる頻発する心 房期外収縮の約 90 %は,肺静脈を起源とすることが臨床 また focal mechanism によると考えられる心房細動例の機 的に示されている 70,71).肺静脈近位部の心外膜側には心房 序が単一かどうか,肺静脈起源の期外収縮がなぜ多いのか 筋が袖状に進入しているが(myocardial sleeve)72,73),洞 など, いまだ明らかでない点が多い.最近 Pitx2 ホメオボッ 在することが知られており 74),これが異所性興奮や伝導異 の発現抑制機序の欠落が,肺静脈起源の異常発火と関連す 結節細胞(P 細胞)や Purkinje 線維に類似した細胞が存 クス遺伝子を介する肺静脈内の自動能を有する心筋細胞 ることが指摘されている 77).これには第 4 染色体長腕 常,リエントリーの発生に関係すると考えられている (4q25)に存在する心房細動発症関連遺伝子多型の関与が .この肺静脈起源の期外収縮が引き金となって心房内 71,73) A B 心房細動 ECG 1-2 ︵リング状カテーテル︶ 右上肺静脈 2-3 3-4 肺静脈内のみ細動 PV LA LA PV 4-5 5-6 6-7 7-8 8-9 9-10 10-1 ︵左房電位︶ 冠静脈洞 9-10 7-8 5-6 3-4 1-2 500 msec 図4 肺静脈隔離術前(A)および術後(B)の電気生理検査 11 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) 示唆されている 78). 期外収縮や異常高頻度発火の局在が肺静脈であれば,肺 静脈を心房から電気的に隔離することにより心房細動が 根治される可能性が高く ,臨床的にきわめて重要 70,71,79,80) である.図 4(B)は肺静脈隔離術後の記録で,左房 - 肺静 脈間伝導ブロックにより左房電位に続く肺静脈電位は消 失した.隔離術前と同様の異常高頻度発火が肺静脈内で生 じたが,肺静脈 - 左房間伝導ブロックにより,洞調律が維 2. 電気的リモデリング, 構造的リモデリング 心房内に複数の興奮波が同時に存在し旋回運動を維持 するためには,興奮波長(wavelength)が十分に短いか, または心房自体が拡張している必要がある 87).後者は重症 持されている.現在,多くの施設でカテーテルアブレー 弁膜症例などで認められ,心房細動発生の解剖学的基質と ションによる肺静脈隔離術が実施されているが,持続性心 なる.一方,心房拡張のない例では興奮波長の短縮が細動 房細動中に施行された肺静脈隔離単独で心房細動が停止 発生の基質となる.興奮波長は伝導速度 × 不応期で決定 することは少なく 3),心房細動の維持には以下の機序の関 されるため,伝導速度が遅いかまたは不応期が短いと興奮 与が大きいと考えられる. 波長が短縮し,心房細動が持続しやすくなる. 1.2 複数興奮波のリエントリー 複数興奮波のリエントリー説は,Moe により提唱され 81), 1985 年に Allessie が多極マッピングシステムを用いて実 験的に証明した .Langendorff 灌流心臓標本の左右心房 68) Allessie らは,心房細動が発生すると心房細動自体が心 房細動を持続させる「atrial fibrillation(AF)begets AF」 という概念を提唱した 88).これは心房細動により心房の不 応期が短縮し(電気的リモデリング) ,興奮波長が短縮す るため複数興奮波のリエントリーが可能となるもので,心 房細動の慢性化の要因として重要である.電気的リモデリ 内に多極電極を挿入し,アセチルコリン投与下に誘発され ングの機序として,高頻度興奮による細胞内 Ca2+ 蓄積と 数の興奮が心房内に同時に認められた.この興奮波のある 縮,そして不応期の短縮が考えられている 89,90).Ca 電流 た心房細動中の心房興奮を解析すると,3 ∼ 6 個以上の複 ものは消滅し,またあるものは分岐しながら心房内を一定 ,不規則 の回路を有することなく旋回し(random reentry) 膜 Ca 電流の減少,これに起因する活動電位持続時間の短 は分単位で減少するが,頻脈が持続するとチャネル自体の ダウンレギュレーションが生じ,また Na 電流の減少によ な心房興奮,すなわち心房細動を維持することを示した. る伝導速度の低下も加わり,興奮波長はいっそう短くな 同様の心房内の複数興奮波のリエントリーは無菌性心膜 る. 炎に誘発された心房細動中にも認められているが,興奮旋 回は必ずしも無秩序ではなく,大静脈入口部周囲など,優 先的に起きやすい部位があることも示唆されている 82). なお複数興奮波のリエントリーであっても,高頻度興奮 心房細動が長期に持続すると心房筋肥大や心房線維化, ギャップ結合(gap junction)の変化(コネキシン 40 の部 分的発現低下)などが生じる(構造的リモデリング) .とくに線維化は伝導速度を減少させるとともに不均 89,90) のために細動様伝導は随所に認められ,すべての興奮が回 一伝導を生じ,リエントリーを起こしやすくする 91).構造 帰するとは限らない.心房細動の機序としてのリエント 的リモデリングは持続性・永続性心房細動の基質となる. リーは必ずしも解剖学的に規定されたものではなく,不応 器質的心疾患,心不全合併例では心房の構造的リモデリン 期や異方向性伝導などの機能的障壁により形成される.機 能 的 リ エ ン ト リ ー と し て, 実 験 的 に は leading circle reentry 83),anisotropic reentry 84),spiral reentry 85)などが グが進行し,心房細動がより発生しやすくなる.RAA 系 阻害薬は心房の線維化に抑制的に作用し,とくに心不全例 の心房細動発症を抑制することが示されている 61). 示されている.臨床例での検討は十分ではないが,心臓外 科手術中に誘発された心房細動中の右房自由壁マッピン 3. グの所見 86)は上記の実験的観察に類似しており,心房細 遺伝的リスクと電気生理学的変化 動維持の機序として重要と考えられる. 心房細動,とくに若年の孤立性心房細動にはしばしば家 族内発症を認める(15 ∼ 30 %)49).Framingham Study に よると,両親のいずれか一方に心房細動を認めると心房細 動発症リスクが 1.85 倍高まり,75 歳以下での発症例に限 12 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) る と 3. 23 倍 高 ま る こ と が 示 さ れ た 92).1997 年 に, Brugada らにより常染色体性優性遺伝を示す家族性心房 細動の 3 家系が初めて報告された .候補遺伝子として, 93) Chen らは K チャネル(IKs)をコードする KCNQ1 遺伝 全 ゲ ノ ム 関 連 解 析(Genome-Wide Association Study: GWAS)により 4q25 に心房細動発症関連遺伝子多型が認 められ,他の欧州,アジアの患者群でも同様の多型が検出 された 78).rs220073 および rs10033464 の 2 つの多型が とこれによる機能獲得 (gain-of-function) 子の変異 (S140G) あり,それぞれ 1.71 倍,1.42 倍リスクが高まることが示 プ結合蛋白コネキシン 40(GJA5 ) ,Na 利尿ペプチド い 場 合 が 多 々 あ る が, 最 近 の 4q25 多 型 と SCA5A , 95) このほか, Na チャネル (SCN5A ) , ギャッ を見いだした 94). 96) (NPPA ) をコードする遺伝子の変異が報告されている. 97) これらはいずれも活動電位持続時間を短縮し,不応期短縮 により心房細動が起きやすくすると考えられる. 2007 年,アイスランドの心房細動患者を対象とした された.なお上記の遺伝子変異は Mendel の法則に従わな KCNQ1 ,NPPA ,NKX2.5 の各遺伝子変異の関連を検討 した結果では,4q25 多型が各遺伝子変異に起因する心房 細動発症の調節因子として作用する可能性が示唆されて いる 98). IV. 臨床像 長期的視点でみた場合,心房細動は発症後やがて自然に 1. 停止し,このような発作を何度も繰り返しながら,次第に 心房細動の分類 その持続時間や頻度が増大し,やがて停止しなくなるとい う自然歴をとるものと考えられている 103).このような自 然歴は加齢,基礎疾患の有無,医療行為の介入によって修 心房細動は基本的に慢性進行性疾患としてさまざまな 臨床像を呈するため,発作性,持続性,永続性という一般 的な分類 以外にも,初発性,間欠性,慢性,あるいは 99) recent-onset など,多種多様の分類が臨床的に用いられて 飾を受け,より短期的な視点でみた場合,心房細動は.図 5 のようなパターンの経過をたどり,ある瞬間ではす 101) べての心房細動が図 5 のいずれかに存在する.しかし,臨 床家の視点に立てば,その診療の出発点は心房細動初発で きた.しかし,これらの用語は厳密かつ普遍的に定義され はなく, 「初めて診断された心房細動」であり,初発であ ているものではなく,過去の臨床報告や研究を比較した るか否かは断定できない.その後,発症した心房細動に対 り,その結果を単純にある特定の患者に適用することは困 してなんらかの医療介入がなされる場合も含め,最終的に 難である.一方で,①無症候性心房細動が存在するため 100- ,心房細動が初発であるかどうかを診断したり,その持 洞調律に復する症例と心房細動のまま維持される症例の 2 102) つに移行すると考えられる.しかし,必ずしもすべての症 続時間を正確に決定することが難しいこと,②これらの分 例で自然経過を観察したり,医療介入による除細動がなさ ことがまれでないこと,③同一患者のなかで時間の経過と 除細動に対する反応性を臨床的な分類基準とすることは ともに心房細動の分類が変化することなど,診断的・時間 臨床現場にそぐわない.このようなことから,長期的視点 類による心房細動が同一患者のなかで 2 つ以上存在する れるわけではないので,自然停止の有無,あるいは電気的 的不確実性が存在する.したがって,逆にこのような心房 に立って想定される自然経過を認識したうえで,本ガイド 細動の分類に厳格な定義を設定した場合,臨床的にその分 ラインは臨床家にとって単純かつ用いやすい以下の分類 類法を各患者にあてはめることが現実的にはかえって難 基準を採用する(図 6)99). しくなるという側面を有している.以上のような心房細動 初発心房細動:心電図上,初めて心房細動が確認されたも の分類に内包される限界は十分に認識されるべきである. の.心房細動の持続時間を問わない. 13 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) 洞調律 初発 心房細動 2. 持続性心房細動 電気的・薬理学的 除細動 再発 発作性心房細動 洞調律 永続性心房細動 自然停止 初発心房細動 心房細動が心電図上で初めて確認されたものであり,必 ずしも真に初発であるかどうかを問わない.結果的に,発 作性,持続性,永続性心房細動を含む広範なスペクトラム に入る.病歴,症状,過去・現在に記録された心電図所見, 診断後の経過から,便宜的に発作性,持続性,永続性に分 類することができるが,その分類は不正確であることを認 図5 心房細動の経過 識し,その後の経過を十分に観察してから改めて分類し直 (Israel CW, et al. 2004101) より) すことが必要である. 2.1 初発心房細動 (初めて診断された心房細動) 発作性心房細動 (持続 7 日以内) 持続性心房細動 (持続 7 日を超える) 初発心房細動が一過性で自然停止してい る場合 このような例では約半数の症例で数年間は再発しない. カナダで行われた前向き研究 CARAF Study 104)で,この ような初発心房細動 899 例が平均 4.1 年経過観察されて いる.発症後 1 年以内に約 50 %の例で再発がみられた一 永続性心房細動 (除細動不能なもの) 図6 心房細動の分類 (Fuster V, et al. 200699) より) 発作性心房細動:発症後 7 日以内に洞調律に復したもの. 持続性心房細動:発症後 7 日を超えて心房細動が持続して 方で,残り 50 %の症例では経過観察中の再発はみられて いない.再発性心房細動があるかどうかを見きわめること が重要であり,薬物による心房細動予防を安易に行うべき でない.一方でこの研究では,経過観察中に 6 ∼ 7 %の症 例で脳梗塞の発症をみており,脳梗塞の危険因子が存在す る場合には,心房細動の再発がないと判断されるまでは抗 凝固療法の適応である.なお,心筋梗塞や心臓手術後の急 いるもの. 性期にだけ観察された心房細動や,甲状腺機能亢進症など 上,心房細動が持続しているもの. 的な抗不整脈薬投与は不要とされる. 長期持続性心房細動:持続性心房細動のうち発症後 1 年以 永続性心房細動:電気的あるいは薬理学的に除細動不能の もの. なお,心房細動の持続時間は,病歴,症状,ならびに心電 図所見から, 臨床家が総合的に判断する. また, この分類は, 心房細動の誘因,原因が除去,是正されるものでは,継続 2.2 初発心房細動が 7 日を超えて持続してい ると判断される場合 薬物療法,非薬物療法の有無にかかわらず適応し,持続時 多くの場合,自然停止することはないと考えられてい 間が広範にわたる場合には,その症例が示す代表的な心房 る.臨床現場では,正確な持続時間を決定することは困難 細動持続時間で代用する.さらに,分類は時間とともに変 であり,持続時間が 1 年未満であるか以上であるかを決定 化しうることを認識したうえで,その時点での評価を心が することもできない例が存在する.したがって,このよう けるべきである.厳密な意味でこのような定義は,心房細 な例では薬物あるいは非薬物療法で除細動すべきかどう 動につく修飾語(初発,発作性,持続性・永続性)の持つ 意味と一致しないが,臨床家の用いる分類として混乱を招 く可能性は低いと考える. かを他の見地から総合的に判断する必要がある.このよう な初発心房細動が症例の 35 %を占める AFFIRM Trial 105) では,脳梗塞のリスクに応じた抗凝固療法の有用性は示さ れたものの,洞調律維持治療法が心拍数調節治療を上回る 有用性は示されていない. 14 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) 3. 4. 発作性心房細動 持続性心房細動 薬物療法,非薬物治療の有無にかかわらず,7 日以内(多 持続が 7 日を超える心房細動をさすが,過去の心電図記 くは 48 時間以内)に洞調律に復するものであり,心房細 録がない場合には永続性心房細動との区別は正確には不 動の長い慢性経過からみると早期の病期に相当する.多く 可能であり,詳細な病歴,症状聴取により臨床家がその持 の場合,発症初期には薬物療法に対する反応性は良好であ 続時間を判断する.一部の抗不整脈薬を除いて薬物による るが,長期的にみた場合,薬物療法に抵抗性となりがちで あり,発作性心房細動の罹病期間により臨床像は異なるこ とを認識すべきである. わが国での平均 15 年にわたる長期観察データ では, 106) 除細動は不可能であるが,電気的除細動により 94 %の患 者で洞調律に復するという報告がある 114).しかし,その後 の再発率は比較的高く,通常の薬物療法では 1 年後の洞調 律維持率は約 50 %,2 年後約 40 %,3 年後約 30 %と,低 発作性心房細動をおもに I 群薬で治療した場合,1 年あた いことはあらかじめ認識しておく必要がある 114).わが国 した.そのほかにも,前向き登録研究 JALT-2 おける洞調律維持群は,1 年後で約 60 %,2 年後で約 50 り平均 5.5 %は治療抵抗性を示し持続性心房細動に移行 では,平 107) 均 2 年間の経過観察で約 10 %が持続性心房細動に移行し たとされ,その数字はほぼ一致している.その他の海外を で行われた J-RHYTHM Study では,持続性心房細動例に %の症例で洞調律を呈しており,わが国では海外のデータ と若干異なる可能性がある.再発率は患者背景因子により 含めた報告による持続性心房細動への移行率は,21.4 % 異なり,高齢,高血圧,心不全,心房細動持続時間(3 か月 低い数字から,11 % /2.2 年 重積すると長期的な洞調律維持は薬物療法では困難であ /13.4 年 48),23.2 % /7.2 年 108),5.6 % /1.9 年 109)という % /1 年 ,33.1 % /3.5 年 110) ,21.9 111) という高い数字が報告されているが,これらの 112) 違いは年齢,基礎心疾患の有無など患者の背景因子に依存 以上)がリスク因子としてあげられ 114),これらの因子が る. このようなことから,とくに 1 年以上持続していること するものと考えられている.実際に,わが国の報告では, が判明している持続性心房細動を長期持続性心房細動と 持続性心房細動移行に関連する独立因子として,多変量解 呼ぶが,一般的に洞調律維持治療は容易でないと考えられ 析により年齢,左房径,心筋梗塞既往,弁膜症をあげた報 ている. 告 と,単変量解析により年齢,左房径,心不全,糖尿病, 106) 心胸郭比,V 1 誘導における f 波高,左室駆出率をあげた報 持続性心房細動で QOL が低下している例,また上述の リスク因子がない例では,除細動とその後の洞調律維持を ,一過 告 112)がある.欧米では,心不全,高齢(75 歳以上) 図ることは妥当である.この場合,除細動前後の抗凝固療 既往,慢性閉塞性肺疾患,高血圧が持続性心房細動移行の それ以外の場合には,心拍数調節治療と脳梗塞リスクに応 危険因子に同定され,慢性化を予測するスコアとして じた抗凝固療法も十分に許容可能な治療方針と考えられ ・脳梗塞 性脳虚血発作(transient ischemic attacks:TIA) HATCH スコアが提示されている 113). 発作性心房細動による QOL 低下がある例では,抗不整 法と脳梗塞リスクに応じた継続は必要不可欠である.逆に る. 脈薬による発作予防を図るが,抗不整脈薬の安全性を念頭 5. に置いた薬物選択を行う.しかし,薬物療法による洞調律 永続性心房細動 維持をいつまで行うかについては,治療期間,患者背景因 子,さらにカテーテルアブレーションによる非薬物治療の 可能性を含めた総合的判断が必要である.また,症状がな 薬理学的ならびに電気的に除細動不能な心房細動をい い場合には,抗不整脈薬の効果を判定することは困難であ う.心房細動を受容し,心拍数調節治療と脳梗塞リスクに ること,抗不整脈薬には重篤な副作用があることを十分に 応じた抗凝固療法を行うことが一般的である. 勘案すべきであり,安易な抗不整脈薬投与は勧めるべきで はない.洞調律維持,心拍数調節治療のいずれを選択した 場合にも,脳梗塞リスクに応じた抗凝固療法は継続する. 15 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) V. 治療 れ 106),慢性化した症例では心拍数調節と抗凝固療法だけ 1. 治療方針の立て方 で満足な QOL が得られることも多い.しかし,心房細動 で発作が再発するたびに不快な自覚症状で苦しむ例には, 心拍数調節がほとんど無力なことは多くの臨床医の実感 である.これまで海外で施行された臨床研究 105,115-117)で 1.1 心房細動治療(薬物)方針の立て方 AFFIRM 105) では 30 %の例が発作性であったが,これらの 症例も持続性の例と合わせて解析されている.さらには, 心房細動の治療に際し重要なことは,不整脈以外の補正 洞調律維持に用いる抗不整脈薬の種類や使用ガイドライ 可能な病態の改善を優先することである.すなわち,心機 ンも,欧米とわが国では大きく異なっていた.重篤な副作 能低下,虚血などがあれば,それらの改善を優先してから 用を持つアミオダロンが AFFIRM 105)の 70 %近い症例で 抗不整脈薬による治療が必要か否かを考えることが勧め 使用されていたことも,洞調律維持治療へのマイナス要因 られる. であった可能性を否定できない.欧米のガイドラインでは これまで心房細動治療の目標は,洞調律を維持すること に向けられてきたが.2000 年以後,欧米から相次いで発表 エビデンス重視という観点から,大規模試験で有効性の示 されていない薬剤の位置づけは低く,近年,注目されてい さ れ た 大 規 模 試 験 PIAF 115),AFFIRM 105),RACE 116), る心房細動の発生機序あるいは病態生理を考慮した薬剤 持(洞調律化・再発予防)が心拍数調節に勝るものでは 日本独自の『心房細動治療(薬物)ガイドライン』2) が整 ないことが示され,抗不整脈薬の使用状況にも大きな影響 備されたという経緯がある. STAF 117)の結果,これまでの抗不整脈薬による洞調律維 を与えた 118).心房細動の管理上,最も注意しなくてはなら いことは脳塞栓症(心原性脳梗塞)の合併であり,その発 症頻度を低下させるため適切な対応が求められる. 心房細動の治療方針決定に際し,まず初めに抗凝固療法 の適応の有無を評価することが勧められる.欧米のガイド ライン 119) でも心房細動の洞調律維持か心拍数調節かを選 択する前に,抗凝固療法の適応を判断することが重要とさ 選択に配慮をしていないという問題点もあった.そのため 日本心電学会が主催した J-RHYTHM Study 120) は,不 整脈関連でのわが国初の大規模前向き臨床研究で,発作性 と持続性心房細動それぞれについて,いずれも無作為に洞 調律維持か心拍数調節かに割り付け,洞調律維持群にはわ が国のガイドラインに従った抗不整脈薬の使用を推奨し, 心拍数調節群では安静時心拍数 60 ∼ 80 拍 /min を目標に した.エンドポイントと薬剤による副作用を 3 年間にわ れている.心房細動では,まず抗凝固療法の要否を判断し, たって調査した.登録時の調律は,発作性心房細動群は洞 適応があり,禁忌がないと判断されたら抗凝固療法を開始 調律であること,持続性群は心房細動であることを条件と する.その後,状況に応じ洞調律維持あるいは心拍数調節 した.持続性心房細動の洞調律維持群では除細動により洞 を選択する. 調律に戻したうえで試験を開始した.一次エンドポイント 心房細動では洞調律が維持された場合でも,塞栓症高リ には死亡,症候性脳梗塞,全身性塞栓症,重大な出血,心 スク例には抗凝固療法を終生継続することが必要である. 不全による入院に加え「被験者の基本的治療法に対する また心拍数調節は,予後を悪化させることなく,抗不整脈 忍容性」を加えた.主治医の主観の入る余地のある「ソフ 薬の副作用などを考慮するとむしろ安全な治療法である. トエンドポイント」を取り入れたことが議論されたが,忍 たしかに,抗不整脈薬には無視しえない重篤な副作用の発 16 は 発 作 性 心 房 細 動 例 は ほ と ん ど 検 討 さ れ て お ら ず, 容性を客観的に評価するための QOL 評価も実施した.そ 現があり,長期的展望に立つと洞調律維持には限界があ の結果,発作性心房細動の治療で「忍容性」が最も重要な る.実際,多くの症例で持続化,慢性化への移行が認めら 評価項目であることが明らかとなり,心房細動,とくに発 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) 作性心房細動例への治療指針を明確に示した結果となっ 心房細動を併発すると血行動態のさらなる悪化をみる た.発作性心房細動の洞調律維持群で登録時に使用されて だけでなく,塞栓症合併のリスクが高まる.したがって, イニド,シベンゾリン,プロパフェノン,ジソピラミド,ア に応じた手術適応を考慮し,心房リモデリングが進行する いた.Na チャネル遮断薬無効例への効果が注目されてい 合併があれば,手術時にメイズ手術,ラディアル手術を併 いた抗不整脈薬は Na チャネル遮断薬が中心で,ピルシカ プリンジン,フレカイニドが 80 %以上の例で処方されて たベプリジルは,発作性群と持続性群でそれぞれ 6.7 %と 15.2 %に処方されていた.AFFIRM 105) と異なりアミオダ ロンはわずか 0.5 %,1.3 %だけに使用された. J-RHYTHM Study 120) は心房細動,とくに発作性心房細 心房細動発症を未然に防止することが重要であり,各病態 以前に弁置換術など外科的対応を行う.すでに心房細動の せて行い,洞調律維持を試みることも推奨できる.Na チャ ネル遮断薬の長期使用は勧められない.むしろ,心機能改 善による心房リモデリング防止を目標としたアップスト リーム治療を積極的に用いることが勧められる. 動例への治療指針,具体的には比較的若年の,症状の強い 心房細動の治療は,原疾患の状況,すなわち心機能に応 発作性心房細動症例への洞調律維持治療の妥当性を示し じて選択する.除細動は再発リスクが高い状況(たとえば たものといえる.抗不整脈薬使用による重篤な副作用の発 現率は海外の臨床試験と比べてきわめて低く,塞栓症の低 リスク症例が大多数を占めていたが(CHADS 2 スコア 0 ∼ 1 が 90 %) ,ワルファリン使用率は高く,その結果,脳 梗塞の発症率も平均観察期間 578 日で 2.3 %と低率にと どまった.この結果は,わが国の心房細動診療が適切に行 われていることを示唆している.発作性心房細動例では, 洞調律維持治療群で心拍数調節群と比べてイベント回避 率は有意に高値であり,しかも死亡率を含めたイベント発 症率は両群ともにきわめて低く,差はなかった.むしろ 左房径 50 ∼ 60mm 超,持続期間 1 ∼ 2 年超など)では施 行せず,心拍数調節を優先し,心機能改善,塞栓症予防に 努める. 1.2.2 高血圧 高血圧と心房細動との関連性が高いことは古くから指 摘されている.心房細動を対象とした臨床試験では,約 60 % は 高 血 圧 が 主 た る 病 因 と み な さ れ て い る 121). J-RHYTHM Study 120)でも,高血圧は発作性心房細動で 42.8 %,持続性心房細動の 44.2 %に認められた.高血圧 QOL を考慮した「患者の忍容性による試験中止」という 治療を早期から十分に行い血圧管理が行き届くことによ イベント発生を抗不整脈薬使用が有意に抑制した結果と り,心房細動の発症を未然に防止できるかもしれない.心 なった. 房細動の基質に対するアップストリーム治療として,高血 わが国で利用可能な抗不整脈薬を適切に使用する目的 は,死亡率の改善や脳梗塞の予防を目的に洞調律維持を図 圧に起因する心房ならびに肺静脈リモデリング防止が重 要と思われる.実際に ARB の使用により,高血圧症例を るのではなく,あくまでも QOL 改善であり,これは多く 対象とした臨床試験で新規心房細動発症が抑制されてい 支持する成績となった.ただし,J-RHYTHM Study 120) は ロサルタンと β 遮断薬のアテノロールを無作為に割り付 の臨床医が実地臨床の場で実感していた事実を客観的に 平均年齢 64 歳,基礎心疾患のない心機能正常例を対象と した成績であることを忘れてはならず,Na チャネル遮断 薬が使用できない心機能低下例に,いかに対処していくか は依然として課題となっている. 1.2 各疾患別の治療法の特異性 1.2.1 弁膜疾患 リウマチ熱,梅毒の減少により,僧帽弁逸脱症,大動脈 る 61).左室肥大を伴う高血圧症例を対象として,ARB の けて施行された LIFE Study 59)では,両群の血圧の推移に は差がなかったにもかかわらず,心房細動の新規発症はロ サルタン使用群で有意に低率であった(ロサルタン群 6.8 %,アテノロール群 10.1 %)59). 高血圧症例を対象として,アミオダロンに Ca 拮抗薬の アムロジピンまたは ARB のロサルタンを併用した比較で は,ロサルタン併用により心房細動再発が減少した 122).さ らに孤立性発作性心房細動の再発防止効果もアミオダロ ンと ARB のロサルタンあるいは ACE 阻害薬のペリンド プリルの併用により高められた 123). 二尖弁などに基づく逆流,狭窄をきたすものが増えてきて 心房細動の病型にかかわらず血圧管理が重要であり,高 いる.血行動態の悪化だけでなく,原疾患による心房筋病 血圧のまま心房細動管理を継続することは勧められない. 変も心房細動の発症に寄与している.心房細動は僧帽弁狭 高血圧は心房細動の発症や持続を容易にするだけでなく, 窄症でとくに多く,大動脈弁閉鎖不全症,僧帽弁閉鎖不全 症にもしばしば合併する. 血栓塞栓症のリスクも高める.治療薬としては ARB, ACE 阻害薬を中心とした降圧薬の選択が勧められるが, 17 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) 十分な降圧を得るために他の降圧薬の併用も必要となる. J-RHYTHM II Study では高血圧を合併した発作性心房細 動を対象として ARB(カンデサルタン)と Ca 拮抗薬(ア ムロジピン)の再発抑制効果を比較したが,ARB の発作 Val-HeFT 126)は,ARB のバルサルタンによる心不全予 後改善効果を検証する目的の試験であったが,事後の解析 によりバルサルタンによる心房細動新規発症抑制効果(相 再発率抑制効果に有意差を示すことはできなかった 124). が示された.CHARM Study 60)では, 対危険度で 33 %減少) 発予防は効果的かもしれない. に洞調律であった 6793 例のうち,試験期間中に 392 例 心機能低下を認めないものでは,I 群薬による心房細動再 NYHA II ∼ IV 度の心機能低下例を対象とし,試験開始時 (6.15 %)が心房細動を発症した.プラセボでは 215 例 1.2.3 冠動脈疾患 狭心症や心筋梗塞に心房細動を併発すると,心拍数の増 加,心拍出量の低下により病態を悪化させる.欧米では心 房細動の背景に冠動脈疾患を有する患者が約 30 %にみら れ,日本では 10 %前後の頻度である.J-RHYTHM Study での冠動脈疾患合併率は発作性心房細動の 7.4 %,持 120) 続性心房細動で 6.1 %であった.心房細動だけに注目して 治療を行うことは危険であり,治療の原則は心筋虚血の改 善を目指すことである.急性冠症候群に合併する心房細動 に対しては必要に応じ除細動を行うが,I 群薬を使用する ことは勧められない.ソタロール,アミオダロンなど III 群薬が勧められるが 99),わが国では保険適応はない.とく に左心機能低下を合併するものでは,左室だけでなく左房 のリモデリングに対し ACE 阻害薬,ARB を早期から積極 的に使用することが勧められる.心筋梗塞後の左心機能低 (6.74 %)であったのに対し,カンデサルタン使用例では 177 例(5.55 %)と,ARB 使用群で心房細動の新規発症 .これらの試験 が有意に低下していた(オッズ比 0.812) では心房細動の新規発症は一次エンドポイントではな かったが,ACE 阻害薬や ARB が心機能低下例で心房細動 発症防止効果を示すものと期待される. 1.2.5 拡張型心筋症 拡張型心筋症は,心筋細胞の変性,間質の線維化により, 左室の拡大および低収縮能を主徴とする.慢性的な収縮不 全により左房圧上昇,左房拡大をきたし,海外では心房細 『心房細動 動合併率は 20 ∼ 30 %とする報告 127)が多いが, 治療(薬物)ガイドライン(1999-2000 年度合同研究班 報告) 』の記載でも 38 %と高い 1).ちなみに,同様に左心 不全を対象とした CHARM Study 60)のプラセボ群の発症 下例を対象として,プラセボを対照とし ACE 阻害薬のト 率は 6.74 %である.心房細動合併例では心機能維持のた では,2 ∼ 4 年間の経過観察期間に心房細動の新規発症 慢性心不全例では血行動態の安定化と塞栓症予防を行う. ランドラプリルの予後改善効果を検証した TRACE Study 125) め心拍数調節治療を優先し,心不全の進行防止に努める. がトランドラプリル群で有意に抑制されていた.血栓塞栓 1.2.6 症予防のための抗凝固療法を施行する際には,抗血小板薬 肥大型心筋症 との併用により出血性合併症のリスクが高まることに注 がある.心房細動合併率は 10 ∼ 20 %以上と高く,緊急時 1.2.4 心不全(左心機能低下) には電気的除細動のよい適応となるが,再発防止も重要で 心房細動は心筋症,冠動脈疾患などの背景を持つ心機能 低下例にしばしば合併する.欧米で心不全症例を対象とし た各種臨床試験参加症例の心房細動合併率をみると, NYHA(New York Heart Association)心機能分類で重症 な例ほど心房細動の合併率が高い 左室流出路狭窄を合併している場合には,心房細動発症 により急激に心拍出量が低下し,心室細動へ移行すること 意する. .心機能低下例で心 121) 房細動を合併すると,さらなる心機能低下を助長すること になり好ましくないが,積極的に I 群薬を使用することは かえって予後を悪化させるため勧められない.心房細動合 あり確実な効果が求められる.発作性ないし持続性心房細 動に対してはアミオダロンが使用できる.I 群薬の陰性変 力作用が肥大型心筋症の進行防止に効果的であるとの考 えがあるが 128,129),心房細動予防効果は十分に検討されて いない. 1.2.7 慢性呼吸器疾患 低酸素血症やアシドーシスの補正が重要である.気管支 併例では,血栓塞栓症合併の頻度が高いため,禁忌がない 拡張薬が心房細動発症の要因となることがある.ベラパミ 場合にはすみやかに抗凝固療法を開始し,心機能改善を目 ル,ジルチアゼムを使用し心拍数調節を行う.血行動態が 標とした治療を優先する.左心機能低下例を対象とした臨 床試験で,ACE 阻害薬や ARB による心房細動発症抑制効 果が報告されており,これら薬剤の臨床効果が期待され 18 る. 不安定な心房細動は電気的除細動の適応となる.原疾患を 悪化させる β 遮断薬,心房細動発症を助長するテオフィ リンなどの薬剤使用は避ける. 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) 固療法が必要となる.CHADS 2 スコア(V.2「抗血栓療法 1.2.8 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進が心房細動を発症することは古くから 知られている.甲状腺機能の正常化を優先し,心房細動の 治療は β 遮断薬を使用し,心拍数調節に努める.β 遮断 薬が使用できない状況下ではベラパミル,ジルチアゼムを 使用する.甲状腺機能が正常に復したあとに心房細動の自 然停止をみることが多い(約 70 %) .心房細動の罹 130,131) 病期間が長いものや,甲状腺機能が正常化したあと 3 か月 の適応と方法」 (20 ㌻)参照)132)にリスクとして示されて いる年齢は 75 歳以上となっているが,CHA 2 DS 2 -VASc では 75 歳以上はリスクを高め 2 ポイントとし,65 ∼ 74 歳を 1 ポイントとして年齢それ自体のリスクを重要視し ている 119). 1.2.12 小児の心房細動 小児期には心房細動はまれであるが,先天性心疾患の術 以上洞調律化しないものは除細動の対象となる.この場 後などに認められる.心房負荷が顕著な状態で発症するこ 合,抗凝固療法施行後の電気的除細動と抗不整脈薬による とが多く,原疾患,心機能の管理治療が重要となる. 予防が必要である. 1.2.13 妊婦の心房細動 1.2.9 WPW(Wolff-Parkinson-White)症候群 副伝導路の順行性不応期が短い例では,発作性心房細動 発症後に心室細動に移行することがあり,突然死の原因と なりうる病態として認識する必要がある.WPW 症候群に 心房細動を合併する率は 15 ∼ 30 %とされるが,心房細動 心房細動に用いる薬剤で,妊婦に対し安全性が確立して いる薬剤はない.心不全を合併していれば,心不全の改善, 管理に努め,心房細動の治療としては心拍数調節に努める ことが望まれる.心不全の治療薬として ACE 阻害薬, ARB は選択すべきではない.基礎疾患にもよるが,発作 時の最短 RR 間隔が 250msec 以下と短いものは高リスク 性心房細動であれば原則として再発の予防的治療なしで レーションによる副伝導路遮断の適応となる.薬物治療を ンや β 遮断薬,Ca 拮抗薬により心拍数調節を行い,塞栓 である 99).心房細動合併例は,原則としてカテーテルアブ 分娩可能である.持続性や永続性心房細動では,ジゴキシ 行う際は,房室結節伝導を抑制するジギタリス,非ジヒド 症リスクが低い場合を除き,妊娠経過を通して抗凝固療法 .抗コリン作用の少な 参照) .やむをえず抗不整脈薬を使用し洞調律化を試みる ロピリジン系 Ca 拮抗薬,β 遮断薬は副伝導路の伝導を促 進させる可能性があり使用しない い I 群薬を使用する. 99) 1.2.10 洞不全症候群 洞不全症候群のうち,徐脈頻脈症候群では心房細動停止 時に洞停止をみる.原則として徐脈に対する治療を優先 (20 ㌻) が必要となる(V.2「抗血栓療法の適応と方法」 場合には,キニジンやプロカインアミド 99,133,134),ピルシ カイニドを使用する. 1.2.14 孤立性心房細動 孤立性(lone)心房細動は,1954 年に Evans,Swann 135) し,まずペースメーカ植込みが勧められる.頻脈としての により提唱された概念で,明らかな基礎疾患がなく発症し 心房細動に対しては,ペースメーカ植込み後に抗不整脈薬 た心房細動を意味した.しかし,その概念,定義は検査法 を使用する.適切な心房ペーシングは心房細動の発生頻度 の進歩とともに時代により変遷し,今日では臨床所見,心 を低下させることが期待できる.塞栓症リスクは高く,抗 エコー検査で心肺疾患ならびに甲状腺疾患などの基礎疾 凝固療法が必要である. 患,高血圧がないものとされる.一般に予後は良好である 1.2.11 高齢者の心房細動 心房細動は高齢者で増加し,欧米では 85 歳以上で 17.8 が,脳血管障害のリスクがあり 136),とくに年齢が 60 歳を 超えると脳血管障害の頻度が増加する 137).孤立性心房細 動を 60 歳までに限定すべきとの考えもある 48,99).頻度に %になる.55 歳の心房細動発症の生涯リスクは男性 23.8 ついては,25 年前の Kannel ら 25)の慢性心房細動を対象 も多く,抗不整脈薬を使用するよりは合併症に対して %であったとしている. これまで報告されている頻度は 2.1 %,女性 22.2 %とされる 8).高齢者では無症候性心房細動 ARB や ACE 阻害薬,HMG-CoA 還元酵素阻害薬(スタ チン)などを積極的に取り入れることが勧められる.心機 能維持のため心拍数調節治療を必要に応じ行う.薬物治療 に際しては肝・腎機能低下を考慮すべきである.重要なこ とは,高齢自体が塞栓症のリスクであり,原則として抗凝 とした調査成績で,心血管病変が確認できないものが 31 ∼ 32 % ま で の 範 囲 で あ る 138).Mayo Clinic で 1950 ∼ 1980 年に診断された心房細動 3623 例中, 孤立性は 76 例 (2.1 %)であり,生存率は 15 年で 92 %,30 年で 68 %であっ た 139).この数値は年齢,性を対応させたミネソタ州住民 の 15 年 87 %,30 年 57 %と比較して有意差がない 139).ま 19 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) た,心房細動のタイプをみると発作性が 34 例(45 %) ,持 ,永続性 5 例(6 %)であった.この研 続性 37 例(49 %) 究では,異なる日時に測定した 3 回の血圧がいずれも収縮 期 140mmHg 未満,拡張期 90mmHg 未満であること,既 2. 抗血栓療法の適応と方法 往に心不全や高血圧治療がないこと,糖尿病などの予後に 影響する心疾患以外の疾患もないことが条件とされた.孤 『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガ 立性心房細動は,診断時点において不整脈発症に寄与する イドライン』142,143)や『心疾患患者の妊娠・出産の適応, 明らかな要因を診断できなかったわけであり,潜在する病 態が将来明らかになると考えることもでき,この名称を使 用すべきではないとの考えもある . 140) 管理に関するガイドライン』144,145),2006 年から 2012 年 にかけて欧州や北米で発表されたガイドライン 99,119,146- ,これまでの国内外の研究報告を参考に旧版 1,2)を改訂 148) したがって,本改訂版では,本項以降の治療方針の解説 した. において「孤立性心房細動」という分類は使用せず, 「臨 2.1 床上有意な器質的心疾患を認めない心房細動」と表現す ることとした.器質的心疾患とは具体的には肥大心,不全 心, 虚血心をさす(V.4「洞調律化・再発予防の適応と方法」 . 〈36 ㌻〉参照) 1.2.15 腎機能障害,肝機能障害 抗不整脈薬を効果的かつ安全に使用するためには,各薬 剤の電気生理学的特性だけでなく薬物動態に関する知識 が必要である.他疾患治療薬に比べて安全域が狭い抗不整 脈薬では,腎機能障害例や高齢者では腎排泄型薬剤の排泄 心房細動における脳梗塞発症のリスク評 価と抗血栓療法 クラス I ・脳梗塞や出血のリスク評価に基づいた抗凝固療法の実 施. レベル A ・CHADS2 スコア 2 点以上の場合,適応があれば新規経 口抗凝固薬の投与をまず考慮する. ラン( レベル B は遷延し,肝機能障害例で肝排泄型薬剤の代謝が遷延し, ピキサバン( 容易に中毒症状が発現する.このような事態を回避するに ワルファリン( は,各薬剤の薬理学的特徴を把握し,管理しやすい薬剤を 選択すべきである.すなわち腎機能障害例や高齢者には肝 排泄型の薬剤,肝機能障害例には腎排泄型の薬剤を選択す ることが望まれる.しかし,心房細動の抑制に有効な薬剤 の代謝,排泄臓器に障害のある場合には,厳重な監視下で レベル A ・CHADS2 スコア 2 点以上の高リスク患者へのダビガト ),リバーロキサバン( レベル A ),エドキサバン ( レベル A ), ア レベル A *1 ), レベル A )のいずれかによる抗凝固療法. ・CHADS2 スコア 1 点の中等度リスク患者へのダビガト ラン( レベル B ) か,アピキサバン( レベル A ) によ る抗凝固療法. ・ワルファリン療法時の PT-INR を 2.0 ∼ 3.0 での管理. レベル A の用量調節を行い使用する必要がある.腎機能に関して ・70 歳以上,非弁膜症性心房細動患者へのワルファリ あれば通常用量を使用することが可能であるが,測定誤差 ・腎機能中等度低下例への新規経口抗凝固薬の用量 は,クレアチニンクリアランス(Ccr)50 mL/min 以上で まで考慮した対応が望まれる.とくに高齢者では,明らか な腎機能障害を認めない場合でも注意が必要である.一 方,肝機能障害については,血清アルブミン値,ビリルビ ン値,プロトロンビン時間(PT)などを指標として用量 調節をすることが勧められるが,可能ならば影響の少ない 腎排泄型薬剤を選択すべきである.病態に応じた薬剤選択 は CD-ROM 版『抗不整脈薬ガイドライン』141)にその詳 細が述べられている. ン療法時の PT-INR 1.6 ∼ 2.6 での管理. 調節. レベル A レベル B ・ワルファリン療法中の定期的な PT-INR モニタリング. レベル A クラス IIa ・CHADS2 スコア 1 点の中等度リスク患者へのリバーロ キサバン,エドキサバン*1もしくはワルファリンによ る抗凝固療法. レベル B ・心筋症,65 ∼ 74 歳,もしくは心血管疾患(心筋梗塞 の既往,大動脈プラーク,末梢動脈疾患など)のリス クを有する患者への抗凝固療法. レベル B ・抗凝固療法の適応に関する定期的再評価. レベル A ・ 心 房 粗 動 患 者 へ の 心 房 細 動 に 準 じ た 抗 凝 固 療 法. レベル B 20 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) クラス IIb 非弁膜症性心房細動では,脳梗塞のリスク評価を行った ・冠動脈疾患を合併する患者で,経皮的冠動脈インター ベンション(PCI)や外科的血行再建術を行う際の抗 血小板療法と抗凝固療法の併用. レベル C ・60 歳未満の孤立性心房細動患者*2 への抗血栓療法. レベル C ・PT-INR 2.0 ∼ 3.0 で,治療中に虚血性脳血管障害や全 身性塞栓症を発症した場合の抗血小板薬の追加や, PT-INR 2.5 ∼ 3.5 でのコントロール. レベル C ・経口抗凝固薬を投与できない場合の抗血小板薬の投 与. クラス III レベル C うえで適切な抗血栓療法を選択することが奨励される.本 改訂版では次の 2 点について旧版に変更を加えた.まず, 「弁膜症性」心房細動とはリウマチ性僧帽弁疾患(おもに 狭窄症) ,人工弁(機械弁,生体弁)置換術後をさすこと とした.生体弁は血栓形成の点からは機械弁に比べて有利 であるが,生体弁置換例が心房細動を合併した場合には, 塞栓症のリスクが高まるため抗凝固療法の適応となる 143). なお僧帽弁修復術(僧帽弁輪縫縮術や僧帽弁形成術)後 は塞栓症の高リスクとはいえず,非弁膜症性として扱うの が適切と考えられた.リウマチ性でない僧帽弁閉鎖不全症 は非弁膜症性として扱う.また,孤立性心房細動の定義は ・機械弁に対するダビガトラン療法. 研究者によって異なる 99)ので,本改訂版では「臨床上有 レベル B *1:2013 年12 月の時点では保険適応未承認. *2:臨床上有意な器質的心疾患(肥大心,不全心,虚血心) を認めない場合(詳細は本文〈19 ㌻〉を参照) 意な器質的心疾患(肥大心,不全心,虚血心)を認めない 場合」と記載し, 「孤立性」という用語の使用はできるだ け避けた. 非弁膜症性心房細動では,脳梗塞発症のリスクが集積す ると脳梗塞の発症率が上昇することが注目され 132,149), CHADS 2 スコア(0 ∼ 6 点)が提唱されている(表 7, 図 8) 2.1.1 脳梗塞発症のリスク評価 .これは Congestive heart failure,Hypertension,Age 132) CHADS 2 スコアや他のリスクを用いた抗血栓療法の実 際を図 7 に記した. ≧ 75,Diabetes mellitus,Stroke/TIA の頭文字をとって命 名されたスコアで,脳梗塞年間発症率が 5 ∼ 8 % /year 程 非弁膜症性心房細動 その他のリスク CHADS2スコア 心不全 高血圧 年齢≧75歳 糖尿病 脳梗塞やTIAの既往 ≧2点 僧帽弁狭窄症 人工弁*2 1点 1点 1点 1点 2点 心筋症 65≦年齢≦74 血管疾患*1 1点 推奨 推奨 考慮可 推奨 ダビガトラン ダビガトラン ダビガトラン リバーロキサバン アピキサバン リバーロキサバン ワルファリン INR 2.0∼3.0 アピキサバン 考慮可 アピキサバン エドキサバン*3 リバーロキサバン エドキサバン*3 ワルファリン 70歳未満 INR 2.0∼3.0 70歳以上 INR 1.6∼2.6 エドキサバン*3 ワルファリン 70歳未満 INR 2.0∼3.0 70歳以上 INR 1.6∼2.6 ワルファリン 70歳未満 INR 2.0∼3.0 70歳以上 INR 1.6∼2.6 図7 心房細動における抗血栓療法 同等レベルの適応がある場合,新規経口抗凝固薬がワルファリンよりも望ましい. *1:血管疾患とは心筋梗塞の既往,大動脈プラーク,および末梢動脈疾患などをさす. *2:人工弁は機械弁,生体弁をともに含む. *3:2013 年 12 月の時点では保険適応未承認. 21 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) で,本ガイドラインでは,わが国の定義に基づいて 140/90 表7 CHADS2 スコア 危険因子 スコア C Congestive heart failure/LV dysfunction 心不全, 左室機能不全 1 H Hypertension 高血圧 1 A Age ≧ 75y 75 歳以上 1 D Diabetes mellitus 糖尿病 1 S2 Stroke/TIA 脳梗塞,TIA の既往 2 合計 0∼6 TIA:一過性脳虚血発作 . (Gage BF, et al. 2001132) より) 脳梗塞の年間発症率(%) と判断する.したがって高血圧症例で血圧管理が良好な場 合もリスクとしてカウントすることになる. “Stroke/TIA”は,原本で「以前の脳虚血」と記されて おり,これは脳梗塞と一過性脳虚血発作をさす.Stroke/ TIA は他のリスクより脳梗塞の予測能力が高く,有用であ ることが報告されている 132,155). CHADS 2 スコアは簡便で有用であることから,脳梗塞 のリスク評価としてまず行うべき評価法である.同スコア 20 18.2 の点数が高いほど脳梗塞発症のリスクが高くなり,2 点以 上で年間脳梗塞発症率が 4 %以上と高くなることから,ワ ルファリン療法が「推奨」される.1 点の症例へワルファ 15 リン療法を行った場合,脳梗塞予防効果が出血性合併症発 12.5 10 症率を十分に上回ることが明らかでないため,ワルファリ ン療法は「考慮可」にとどまる.新規経口抗凝固薬のダビ 8.5 ガトラン,リバーロキサバンおよびアピキサバンはそれぞ 5.9 5 1.9 0 0 2.8 れの第 III 相試験でワルファリンと比較して脳梗塞予防効 4.0 果は同等かそれ以上,重大な出血発症率は同等かそれ以 下,頭蓋内出血が大幅に低下することが示されたことか 1 2 3 4 5 6 CHADS2スコア 図8 CHADS2 スコアと脳梗塞発症率 (Gage BF, et al. 2001132) より) 度である前 4 つの項目で各 1 点を,12 % /year に達する Stroke/TIA の既往 CHADS2 スコア 2 点以上ではワルファリンと同様に 「推 ら, 奨」される 152-154,156).その優れた特質を考慮すると,腎機 能低下がなく,抗凝固療法の適応である場合は,ワルファ リンよりも新規経口抗凝固薬のほうがより強く勧められ る.第 III 相試験のサブ解析によると,CHADS 2 スコア 1 点以下の症例(大部分は 1 点)では,ワルファリン群と比 には 2 点を付与し,合算して算 較して虚血性脳卒中の発症率はダビガトラン 150 mg× 2 によれば, “congestive heart failure”は「最近 バン群では差異がなく,重大な出血発現率はダビガトラン は増悪の定義が曖昧であることから,心不全症状,心不全 蓋内出血発症率はダビガトラン両用量群とアピキサバン 出する. 原本 132) 150,151) 増悪した心不全」と定義されている.しかし,臨床現場で を示す検査所見および心不全に対する薬物療法の実施の いずれかをもって congestive heart failure(+)と判断す べきであろう.ちなみにダビガトラン,リバーロキサバン 回 /day 群で有意に低く,110 mg× 2 回 /day 群とアピキサ 110 mg× 2 回 /day 群とアピキサバン群で有意に低く,頭 群で有意に低かったことから,ダビガトランとアピキサバ 「推奨」 に値する 157-162).リバー ンは CHADS2 スコア 1 点で ロキサバンとエドキサバンは第 III 相試験に CHADS 2 ス およびアピキサバンそれぞれの第 III 相試験である RE- コア 1 点の症例を含まないため「考慮可」との記述にと いずれも,①左室駆出率(LVEF)40 %未満,② NYHA II CHADS 2 スコアで用いられる危険因子以外の危険因子 LY,ROCKET-AF および ARISTOTLE Trial 152-154) では, 度以上,③ 3 ∼ 6 か月以内の心不全症状のいずれかを満た す場合を心不全と定義している. どめた. として,心筋症 30,163,164),年齢(65 ∼ 74 歳)165),および心 筋梗塞の既往 165)や大動脈プラーク 166),末梢動脈疾患を “Hypertension”は当時の高血圧の基準である収縮期血 含む血管疾患 146)があげられる.これらの因子を有する症 スクであることから,降圧薬内服下で血圧が良好に管理さ ので各抗凝固療法を「考慮可」と記した.従来のガイドラ わが国では 140/90 mmHg 以上で心血管系のリスクが上が 的心疾患を伴わない心房細動では単独の危険因子になら 圧 160mmHg 以上だけでなく,その既往も心血管系のリ れている場合も Hypertension(+)と判断している.現在, ることから,この血圧値をもって高血圧と定義しているの 22 mmHg 以上もしくはその既往をもって Hypertension(+) 例では,抗凝固療法の有用性が十分には検討されていない インで記していた「女性」165)は,65 歳未満でほかに器質 ないことが判明したこと 167,168),65 ∼ 74 歳は性別にかか 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) わらず考慮可となり得ることから,単独の因子として記載 しないこととした. これまで記されていた 「甲状腺中毒」 も, 単独ではリスクとして十分に検証されていないので削除 した.デンマークでワルファリン療法を受けていない心房 細動 7 万例を登録して行われた Nationwide Cohort Study によると,CHADS 2 スコアの構成因子や他の危険因子ご とに脳卒中の年間発症率に差異があることが示されてい る .うっ血性心不全,高血圧,および糖尿病といった 1 167) 点のリスクと比較して,女性のリスクがきわめて低いこ ALIGN Trial172)は,ワルファリンを対照に高用量(150 ∼ 300 mg× 2 回 /day)で検討されたが,ワルファリンより も有効性,安全性ともに劣ることが示され,第 II 相で中止 された 173).また生体弁に合併した心房細動への新規経口 抗凝固薬の有効性は報告されていない. 2.1.2 CHADS2 スコアと CHA2DS2-VASc スコア CHADS 2 スコア(0 ∼ 6 点)は簡便で有用であり,まず 行うべき脳梗塞のリスク評価方法であるが,非弁膜症性心 と,血管疾患のリスクが比較的低いこと,65 ∼ 74 歳のリ 房細動患者の半数がワルファリン療法の有効性が確立し 高いことが示された. 167) 2667 例が登録され,虚血イベント(脳梗塞,TIA および め脳梗塞発症絶対数は相当数に達することになる.しか スクが同等に高いこと,75 歳以上のリスクがきわだって Hokkaido Atrial Fibrillation Study では,心房細動患者 末梢血管塞栓)の発症が平均 1.7 年間にわたって観察さ れた .ワルファリン療法は非弁膜症性心房細動 2173 例 30) 中 174 例(8 %)で施行され,観察期間中の虚血イベント ていない 0 点や 1 点に該当することには注意を要する .CHADS 2 スコア 1 点以下の群における脳梗塞発症率 は 2 点以上のそれと比較して低いものの,絶対数が多いた も,脳梗塞発症前 CHADS 2 スコアが 1 ∼ 4 点の急性脳梗 塞症例を対象に,入院時神経症候の重症度と退院時転帰を 脳梗塞発症前 CHADS 2 スコアごとに比較した研究による は 88 例(4.4 %)で発症した.虚血イベントに有意に関 と,CHADS 2 スコア 1 点でも,一度,脳梗塞を発症すると ,基礎心疾患(あり 5.4 % vs なし 2.9 %) ,心 以下 3.0 %) 高いことが示された 174).CHADS 2 スコア 1 点以下の例に 連する因子は高齢(80 歳以上での発症率 6.0 % vs 60 歳 筋症(あり 8.6 % vs なし 4.2 %)および脳血管障害の既 往(あり 9.2 % vs なし 3.4 %)であった.高齢,基礎心疾 患および脳血管障害の既往が虚血イベントのリスクであ ることはよく知られているが,本研究では日本人を対象と して心筋症のリスクを明らかにしている点で注目される. 心筋症の種類に言及していないが,心筋症に心房細動を合 併したら脳梗塞のリスクととらえるべきであろう.特発性 CHADS 2 スコアの高い症例と同様に重症になる可能性が ワルファリン療法を選択した場合,脳梗塞予防効果が出血 性 合 併 症 の リ ス ク を 上 回 っ て 有 効 と い え な い の で, CHADS 2 スコア 1 点ではワルファリン療法は「考慮可」 にとどまる.0 点の場合,その有用性は十分には検討され ていないので,個々の症例でリスクベネフィットを十分に 考慮して適応を極め,慎重に決定せざるをえない.このよ うに CHADS 2 スコアはワルファリン療法を考慮する際の 肥大型心筋症や拡張型心筋症で凝固系が亢進しているこ 高リスク群の評価には適するが,低リスク群の抽出には限 と 163)や,非弁膜症性心房細動のコホート研究で肥大型心 界がある. 筋症が独立した脳梗塞の危険因子であることが明らかに 一方,ダビガトランやアピキサバンは,サブ解析で されている 164). CHADS 2 スコア 1 点でも重大な出血や頭蓋内出血がワル やエコーや左心耳内血栓,左心耳駆出ピーク血流速度の低 えられる.リバーロキサバンは,国際共同第 III 相試験で 摘されている 166).多くの施設で行うことのできる経胸壁 J-ROCKET AF 試験 156)の登録対象者は CHADS 2 スコア 経食道心エコー図検査(TEE)所見では,左房内もやも ,大動脈プラークが危険因子として指 下(20cm/sec 未満) 心エコー所見として,左室内径短縮率(FS)25 %未満で 示される左室収縮障害が重要視されている . 169,170) 発作性心房細動の脳梗塞発症率は持続性・永続性心房 細動のそれと差異がないため,持続性・永続性心房細動と 同等の抗凝固療法が勧められる . 171) 僧帽弁狭窄症や人工弁(機械弁,生体弁とも)は塞栓症 のリスクが高く,PT-INR 2.0 ∼ 3.0 でのワルファリン療法 が推奨される 1,2,143).現時点では,弁膜症性心房細動に対 する新規経口抗凝固薬の適応はない.機械弁置換例を対象 としてダビガトランの有効性,安全性を調べた RE- ファリン群よりも明らかに少ないことから「推奨」と考 あ る ROCKET AF 試 験 153) と 日 本 人 を 対 象 と し た 2 点以上の症例で,同スコア 1 点の症例が登録されておら ずそのデータがないことから,CHADS 2 スコア 1 点での 投与を「考慮可」との記載にとどめた. CHADS 2 スコアよりもさらにリスクを細かく評価し, CHADS 2 スコア 1 点以下の群から高リスク群や,きわめ て低リスクの群を抽出することを目的に導入されたのが, CHA 2 DS 2 -VASc スコアである.本スコアは,65 歳以上の リスク,心筋梗塞の既往などの血管疾患合併例のリスク, 女性のリスク,および 75 歳以上でリスクがさらに大きい ことを勘案して,より細かくリスクを評価している(0 ∼ 23 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) 9 点)146) (表 8) .本スコアも点数が高くなると脳梗塞発症 のリスクが上昇する(図 9) . 「女性」は 65 歳未満で器質 的心疾患がない場合にはリスクとならない点に注意する . 119) 「血 デンマークで行われた Nationwide Cohort Study での 栓,塞栓症による入院や死亡」の 1 年間の発生率は, CHA 2 DS 2 -VASc スコア 0 点,1 点および 2 点ではそれぞ れ 0.78 %,2.01 %および 3.71 %であった 167).日本人の 表 8 CHA2DS2-VASc スコア 危険因子 C 心不全,左室機能不 全 1 H Hypertension 高血圧 1 A2 Age ≧ 75y 75 歳以上 2 D Diabetes mellitus 糖尿病 1 S2 Stroke/TIA/TE 脳梗塞,TIA,血栓塞 栓症の既往 2 V Vascular disease(prior myocardial infarction, peripheral artery disease, or aortic plaque) 血管疾患 (心筋梗塞の既往,末 梢動脈疾患,大動脈 プラーク) 1 A Age 65-74y 65 歳以上 74 歳以下 1 Sc Sex category(i.e. female gender) 性別(女性) 1 ワルファリン療法中の頭蓋内出血発症率が 0.6 ∼ 1.0 %で あることを考えると,0 点(低リスク)では,虚血イベン ト発症率はワルファリン療法中の頭蓋内出血発症率と同 等程度に低いため,抗凝固療法を行わないことが原則であ る.CHA 2 DS 2 -VASc スコア 2 点で年間発症率が 3.71 % と 4 %に近似することから,CHA 2 DS 2 -VASc スコア 2 点 以上で抗凝固療法を選択することは理にかなっている. CHA 2 DS 2 -VASc スコア 1 点では,抗凝固療法は考慮可に とどまると考えられる(表 8,図 9) . CHA 2 DS 2 -VASc スコアは心房細動治療における脳梗 塞リスクの評価方法として,とくに低リスク患者の評価に 合計 0,1,2 点が配分されるので合計は最高で 9 点にとどまる . TIA:一過性脳虚血発作 . (Camm AJ, et al. 2010146) より) CHADS 2 ス コ ア で 示 さ れ て い る こ と を 考 慮 に 入 れ, CHADS 2 スコアを中心にして CHA 2 DS 2 -VASc スコアで 新たに加わった項目をその他のリスクとして追加する形 で, 本ガイドラインの抗血栓療法の指針を作成した(図 7) . これまでリスクとして取り上げてきた「女性」と「甲状 脳梗塞の年間発症率(%) に広まっていないこと,新規経口抗凝固薬のサブ解析が 20 複数の研究がそのリスクを示していることからその他の リスクに加えた. 9.8 9.6 10 5 0 0 0 1.3 1 2.2 2 3.2 3 4.0 4 6.7 5 6.7 6 7 8 9 CHA2DS2-VASc スコア 図9 CHA2DS2-VASc スコアと脳梗塞発症率 (Camm AJ, et al. 2010146) より) .HAS-BLED スコア(0 ∼ 9 点)で 0 点を低リスク(年 176) 2.2 抗凝固療法中の出血リスクの評価と対策 ,1 ∼ 2 点を中等度リスク 間の重大な出血発症リスク 1 %) ,3 点以上を高リスク(同 4 ∼ 6 %)と評価す (同 2 ∼ 4 %) . る(図 10) 2.2.1 HAS-BLED スコア 各種出血危険因子から出血を予測するスコアとして,比 ESC ガイドライン 146)では,CHA 2 DS 2 -VASc スコアと HAS-BLED スコアを組み合わせたダビガトランの用量設 較的簡便な HAS-BLED スコアが提唱され(表 9) ,2010 定方針が示されている.CHA 2 DS 2 -VASc スコアが 2 点以 ESC)ガイドラインに採用された ン 150 mg× 2 回 /day,3 点以上では 110 mg× 2 回 /day を 年の欧州心臓病学会(European Society of Cardiology: .過去にも同様の 146,175) 出血予測スコアが発表されていたが,遺伝情報が求められ たり予測式が複雑であったりなど,一般臨床で簡便に使え るものはなかった.さらにはコホート研究から導き出され 24 15.2 15 腺中毒」は前述の理由で削除した.心筋症は CHA 2 DS 2 - VASc スコアに含まれていないが,前述のようにわが国の 0 ∼ 9* *:年齢によって 優れていると考えられる.しかし,評価方法が煩雑である ことや,現在の臨床現場では CHADS 2 スコアですら十分 スコア Congestive heart failure/LV dysfunction 上の場合,HAS-BLED スコアが 2 点以下ではダビガトラ 投与し,CHA 2 DS 2 -VASc スコアが 1 点の場合は 110 mg × 2 回 /day を投与,CHA 2 DS 2 -VASc スコアが 0 点の場 合は出血リスクを考慮しダビガトラン投与を行わないこ たものはほとんどなかった.このスコアはこれまでのもの とを提案している.虚血リスクと出血リスクを組み合わせ と比較して,より簡便で正確に出血リスクを評価できる ての抗凝固療法指針であり,考え方として評価できるが, 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) 表9 HAS-BLED スコア 頭文字 該当する症例では重大な出血への注意が必要である. 臨床像 ポイント H 高血圧 A 腎機能障害,肝機能障害(各 1 点) 2 S 脳卒中 1 B 出血 1 L 不安定な国際標準比(INR)*4 1 E 高齢者(> 65 歳) 1 D 薬剤,アルコール(各 1 点)*5 2 合計 9 *2 *3 *1:収縮期血圧> RE-LY Trial のサブ解析で,年齢,脳卒中・TIA の既往, アスピリンの服用,ワルファリン投与および白人でないこ とが頭蓋内出血関連因子として指摘された 179).これまで 脳内出血発症関連因子として高血圧,喫煙,アルコール摂 取過多,東アジア人,低コレステロール,肝炎や肝硬変,高 齢, 脳梗塞の既往および MRI 上の微小出血(microbleeds) 信号が,また脳内出血の血腫増大因子として高血圧,脳梗 160mmHg. *2:腎機能障害:慢性透析や腎移植,血清クレアチニン 200μmol/ 塞の既往,肝炎・肝硬変,高血糖,および抗血栓療法が報 告されている 180-183). L(2.26mg/dL)以上 . 肝機能異常:慢性肝障害(肝硬変など)または検査値異常(ビ リルビン値>正常上限 × 2倍,AST/ALT/ALP >正常上限 × 3倍). *3:出血歴,出血傾向(出血素因,貧血など) . *4:INR 2.2.3 頭蓋内出血関連因子 1 *1 不安定,高値または TTR(time in therapeutic range) 頭蓋内出血を避けるためには,頭蓋内出血発症率の低い 新規経口抗凝固薬の選択,脳内出血関連因子の血圧や血糖 の十分なコントロール,禁煙とアルコール摂取過多を避け ること,およびできるだけ抗血小板薬の併用を避けること が重要である 184,185). < 60% . *5:抗血小板薬や NSAIDs 併用,アルコール依存症 . 2.3 (Pisters R, et al. 2010175) より) ワルファリンの用量設定と管理 重大な出血発症頻度(%) 14 12.5 12 10 コントロールが推奨される.70 歳以上では PT-INR 1.6∼2.6 8.7 でのコントロールが勧められる. 8 欧米で行われた 6 つのランダム化比較試験のメタ解析 6 によると,非弁膜症性心房細動におけるワルファリン療法 3.74 4 2 1.13 1.02 0 1 HAS-BLEDスコア 0 重大な出血イベント(人) 7 44 患者数(人)746 1983 は脳梗塞の発症を 68 %減少させた 186).各ランダム化比較 1.88 2 39 950 3 28 483 4 16 180 5 2 22 図 10 HAS-BLED スコアと重大な出血(抗凝固療法中) (Lip GY, et al. 2011 176) ワルファリン療法を行う場合は,PT-INR 2.0 ∼ 3.0 での より) HAS-BLED スコアは PT-INR コントロール不良などのワ ルファリン療法を想定してのスコアになっており,新規経 試験における PT-INR の目標値は異なるが,脳梗塞や重篤 な出血性合併症発症時の PT-INR を解析すると,脳梗塞は PT-INR 2.0 未満で多く,重篤な出血は PT-INR 3.0 超で多 く発症していた.また PT-INR が 2.0 以下に低下してくる と,脳塞栓症発症予防効果が相対的に下がる 187).これら の結果を受けて,ワルファリンの至適治療域が 2.0 ∼ 3.0 と設定された. 高齢者(70 歳以上)で PT-INR が低く(1.6 ∼ 2.6)設 口抗凝固薬へ応用した場合の検証が今後は必要であろう. 定された 2)のは,わが国の前向き研究で高齢者の低用量ワ 同様の考え方をワルファリンの通常用量や低用量の設定 ルファリン療法による安全性や有効性が報告されたため に応用するとの意見もあるが,十分な検討はなされていな である 188,189).非弁膜症性心房細動による脳塞栓症の再発 い. 2.2.2 注目される重大な出血関連因子 抗凝固療法中の重大な出血関連因子として RE-LY サブ 予防を目的にワルファリン内服中の患者 203 例を対象に した観察研究によると,PT-INR が 2.6 を超えると重篤な 出血頻度が急激に上昇し,PT-INR が 1.6 を切ると重篤な 脳梗塞や全身性塞栓症が観察され,その多くが 70 歳以上 解析やダビガトラン市販直後調査,J-ROCKET AF Trial か の高齢者であった(図 11)189).この治療域の下限である 50 mL/min 以下)および抗血小板薬の併用が指摘されて リンの有効性を検討した研究で,その有効性が示されな 75 歳以上の高齢, 50 kg 以下の低体重, 腎機能障害(Ccr ら, いる 156, 177, 178).いずれの抗凝固療法でも,これらの因子に PT-INR 1.6 という値は, PT-INR 1.5 未満の低用量ワルファ かったこと 151),凝固系が PT-INR 1.5 ∼ 2.5 では抑制され 25 イベント比(100人・年) 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) に分けて表 10 に記す 31).70 歳以上ではガイドラインに 30 従って PT-INR が 1.6 ∼ 2.6 に占める割合が 66.2 %と最も 重篤な脳梗塞, 全身性塞栓症 軽症脳梗塞, TIA 重篤な出血性合併症 25 20 15 多かったが,70 歳未満ではガイドラインで推奨されている PT-INR 2.0 ∼ 3.0 の占める割合 37.0 %よりも 1.6 ∼ 2.6 の わが国では 70 歳未満でも PT占める割合が 65.8 %と高く, 10 5 0 ≦1.59 1.60-1.99 ≧2.60 2.00-2.59 PT-INR かもしれない 31,179,193-195).本研究における 2 年間の観察期 (Yasaka M, et al. 2001189) より) 間中の重大な出血と虚血イベントの発症率を,イベント発 ,さらに重篤な 190) 心原性脳塞栓症は,発症時の PT-INR が 1.6 未満でみられ やすいとする報告 これは頭蓋内出血の発現率に人種差があり,白人で低く, 日本人を含むアジア人で高いとの報告を反映しているの 図 11 PT-INR レベルと脳血管障害 るのに 1.5 未満では抑制されないこと INR を低めでコントロールしている実態が示されている. と合致するものである. 191) 一方,70 歳未満では,一度,脳塞栓症を発症すると長期 にわたってハンディキャップを背負い家族の負担が増す ことや,PT-INR が 2.0 以下に低下してくるとわが国でも 脳塞栓症発症予防効果が相対的に低下すること 192),PT- INR 3.0 以下であれば若年者では出血性合併症をきたしに くいことから,PT-INR 2.0 ∼ 3.0 を目標とすることが望ま しいと考えられる.ただし,下記のようにわが国の前向き 症例では発症直近の PT-INR,未発症例では最終観察時の PT-INR を用いて算出すると,PT-INR 1.6 未満で虚血イベ PT-INR 2.6 以上で重大な出血イベントが急 ントが増加し, 70 歳未満と 70 歳以 増した(図 12)196).本解析の結果は, 70 歳未満でも低用量ワルファ 上に分けても同様であり 196), リン(PT-INR 1.6 ∼ 2.6)が有用である可能性がある.な お登録時の PT-INR レベル別に解析しても,70 歳以上では PT-INR 1.6 ∼ 2.6 で虚血イベントがワルファリン非服用群 に比べて低く,重大な出血も低頻度に抑えられることが示 登録時の PT-INR レベル別の解析では, された 197).ただし, 登録研究で,PT-INR が 1.6 ∼ 1.99 で塞栓症リスクは低下 イベント発症時の PT-INR を用いた解析とは異なり,70 歳 がある. ルを決めることは困難であった 197). し,一方で 2.6 以上では出血リスクが高くなるという報告 わが国の循環器医が 7937 例の心房細動症例を登録して, 抗血栓療法の実態や虚血イベント(脳梗塞や末梢動脈塞栓 未満では全体にリスクが低く,70 歳以上のように至適レベ ワルファリン療法導入期の慎重な PT-INR 測定や維持期 の定期的な PT-INR 測定により,PT-INR を治療域内に保 症) ,重大な出血イベントの関連を観察した J-RHYTHM つことが重要である.一定の期間のうち,PT-INR が治療 ていた 6932 例(87.3 %)の登録時 PT-INR の各治療域 と呼ぶ 198).心房細動患者を対象にワルファリン群とクロ Registry 研究において,登録時にワルファリン療法を受け (1.60 未満,1.60 ∼ 1.99,2.00 ∼ 2.59,2.60 ∼ 2.99,3.00 以上) の分布を 70 歳以上の 3835 例と 70 歳未満の 3097 例 表 10 J-RHYTHM Registry の抗凝固療法(登録時) 全例 (7937 例) <70歳 (3640例) ≧70歳 (4297例) 域内にある期間の割合を time in therapeutic range(TTR) ピドグレルとアスピリンの 2 剤による抗血小板薬群の 2 群のあいだで,脳卒中,全身性塞栓症,心筋梗塞および血 管死を主要エンドポイントとして比較した前向き研究 ACTIVE W のサブ解析によると,各症例の平均 TTR 値が 抗凝固療法 用量 (mg/day) PT-INR 6932(87.3) 3097(85.1) 3835(89.2) 2.9±1.2 3.2±1.2 2.6±1.1 1.9±0.5 1.9±0.5 1.9±0.5 < 1.60 1760(25.4) 1.60 ∼ 1.99 2525(36.4) 1080(34.9) 1445(37.7) 974(25.4) 2.00 ∼ 2.59 2050(29.6) 2.60 ∼ 2.99 403(5.8) 188(6.1) 215(5.6) ≧ 3.00 194(2.8) 86(2.8) 108(2.8) 例数(カッコ内は%). (Atarashi H, et al. 201131) より) 26 786(25.4) 957(30.9) 1093(28.5) (%) 10 発生率(/2年間) ワルファリン 血栓塞栓症 重大な出血 8 6 p <0.001 4 2 0 <1.60 1.60-1.99 2.00-2.59 ≧2.60 PT-INR イベント例/対象 73/1463 50/2364 53/2145 図 12 J-RHYTHM Registry のイベント発生率 (小谷英太郎,他.2013196) より) 67/709 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) 65 %以上の施設ではワルファリン群が抗血小板薬群より も明らかに優れていたが,65 %を下回る施設では両治療 群間に差異はみられなかった 199).一般にワルファリン療 法から十分な便益を得るためには TTR 値を 60 %以上に 保つべきである .新規経口抗凝固薬の用量設定は「新 198) しい経口抗凝固薬の開発」 (31 ㌻)の項を参照のこと. 2.4 抗血小板療法の位置づけ へのアスピリン使用頻度が日本だけ低い結果であった 205). これは本ガイドライン 2008 年版 2)で心房細動におけるア スピリン療法が推奨されていないことを反映しているも のと推察される. なお,ワルファリンによる抗凝固療法は塞栓症予防の観 点から,単に高齢との理由で中止したり抗血小板薬に変更 したりすることなく,継続することが望ましい.しかし, 高齢でワルファリンを処方どおりに内服できない場合や 転倒のリスクが著しく高く,頭部外傷が強く懸念される場 心房細動に対する抗凝固薬の脳梗塞予防効果は,抗血小 合,出血性合併症を有している場合は,ワルファリン投与 板薬のそれを大きく上回ることが明らかにされている.抗 の継続が困難と考えられる.このような場合には,血栓形 血小板療法は発作性心房細動でも持続性・永続性心房細 成因子である脱水を予防するために飲水を促す生活指導 動でも大梗塞の予防効果はなく,ラクナ梗塞やアテローム や,心原性脳塞栓症の予防は困難であるが非心原性脳梗塞 血栓性脳梗塞に伴う小梗塞の予防効果だけが推定されて の予防に有効な抗血小板薬投与の可否を検討することが いるので,第一選択としては勧められず,抗凝固療法が行 できる. えない場合に限り考慮する. JAST 研究では,日本人の非弁膜症性心房細動症例 896 例を対象として,脳梗塞,TIA および心血管死を主要評価 項目とするアスピリン 150 ∼ 200 mg/day の予防効果がラ 2.5 除細動時の抗血栓療法 クラス I ンダム化比較試験で検討された 200).その中間解析で,投 ・発症後 48 時間以上持続するか持続時間不明の心房細 投与群(2.8 % /year)より高く,重篤な出血が 0.8 % / ルファリンによる抗凝固療法(PT-INR 2.0 ∼ 3.0,70 与群における主要評価項目の発症率(3.1 % /year)が非 year の頻度で観察され,非投与群の 0.2 % /year の 4 倍で あることが示された.本研究はこの中間解析結果を受けて 中止された.本研究 200)はアスピリンをわが国の心房細動 症例に投与しても脳梗塞予防効果はなく,重篤な出血性合 併症を増やす結果になることを示した点できわめて重要 である. 海外では,非弁膜症性心房細動患者にアスピリンとクロ ピドグレルを併用投与してもワルファリンの脳梗塞予防 効果には及ばないことが示された(ACTIVE W Trial) .非弁膜症性心房細動における抗血小板薬の脳梗塞予 201) 防効果を示した研究結果は少なく 202),メタ解析でその効 果が示される 202).一方で,ワルファリンと抗血小板薬の メタ解析では,明らかにワルファリンが優れている 203).非 弁膜症性心房細動における抗血小板薬の脳梗塞予防効果 は弱く,あるとしても心内血栓形成抑制よりも動脈硬化に 基づく脳梗塞予防としてだけ作用していると推定される .いずれにしてもその効果はわが国では否定されてお 204) り,第一選択として投与すべきではない. わが国では上述の JAST 研究 200)の結果を重視し,本ガ イドライン 2008 年版ですでに心房細動におけるアスピリ ン療法の推奨を削除している 2).アジア太平洋不整脈学会 (Asia-Pacific Heart Rhythm Society:APHRS)によるア ジア太平洋 9 か国で行われた調査によると,心房細動症例 動に対する,除細動前 3 週間と除細動後 4 週間のワ 歳以上では 1.6 ∼ 2.6. レベル B :除細動は電気的ある いは薬理学的いずれの方法でも同様. ・発症後 48 時間以上続く心房細動で,血行動態的に不 安定なため,ただちに除細動が必要な場合のヘパリン 静注(ボーラス投与後は持続静注により活性化部分ト ロンボプラスチン時間〈APTT〉をコントロール時の 1.5 ∼ 2 倍とする). レベル C :その後は待機的除細動と 同様,ワルファリン療法(PT-INR 2.0 ∼ 3.0,70 歳以 上では 1.6 ∼ 2.6)を少なくとも 4 週間行う. ・発症後 48 時間未満の心房細動で,血行動態的に不安 定な場合(狭心症発作,急性心筋梗塞,ショック,肺 水 腫 な ど ) の 抗 凝 固 療 法 な し で の 迅 速 な 除 細 動. レベル C クラス IIa ・発症後 48 時間未満の心房細動で,患者の血栓塞栓症 リスクに応じた除細動前後の抗凝固療法. レベル C ・除細動前の経食道心エコーによる左心耳・左房内血栓 の有無の確認. レベル B ・血栓が検出されなかった場合:ヘパリン静注(ボー ラス投与後,持続静注により APTT をコントロー ル時の 1.5 ∼ 2 倍)下での迅速な除細動.レベル B /その後,待機的除細動と同様,最低 4 週間の 27 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) ワルファリン療法(PT-INR 2.0 ∼ 3.0,70 歳以 上では 1.6 ∼ 2.6)を行う. レベル C ・血栓が検出された場合:最低 3 週間のワルファリ ン療法(PT-INR 2.0 ∼ 3.0,70 歳以上では 1.6 ∼ 2.6)後の除細動と,洞調律復帰後の最低 4 週間 のワルファリン療法. レベル C /一見,洞調律が 保たれていると思われる患者でも,血栓リスクに 応じてより長期のワルファリン療法を行うことは 妥当である. ・発症後 48 時間以上持続するか持続時間不明の心房細 動に対する,除細動前 3 週間と除細動後 4 週間のダ ビガトランによる抗凝固療法. レベル C :除細動は電 気的あるいは薬理学的いずれの方法でも同様. ・心房粗動の洞調律化時における心房細動に準じた抗凝 固療法. レベル C クラス IIb なし. クラス III なし. 心房細動除細動に対する抗凝固療法の効果を無作為に 比較した試験はいまだないが,ケースコントロール研究に よれば除細動に伴う血栓塞栓症のリスクは 1 ∼ 5 %と報告 されている 206,207).このリスクは,除細動前 3 週間および 除細動後 4 週間ワルファリン療法(PT-INR 2.0 ∼ 3.0)を 行うことにより軽減することがいくつかの報告により実 洞調律復帰や薬理学的除細動 213,214),電気的除細動 214-216) のいずれでもみられ,その期間は心房細動の持続期間にも よるが数週間以上に及ぶ.したがって,除細動前に経食道 心エコーで左房内血栓が検出されなくても,除細動後塞栓 症が生じうる 217,218). 心房細動・粗動の除細動に関する 32 の試験の総括的解 析によると,塞栓症のイベントの 98 %は除細動後 10 日以 内に生じている 217).除細動後の抗血栓療法を 4 週間以上 続けるかどうかについては,心房細動の再発(発作性,無 症候性も含めて)と血栓塞栓症のリスクを考慮して決め るべきである. 48 時間以上続く心房細動において,経食道心エコー法 を用いた除細動戦略と従来法を比較する目的で ACUTE Trial が行われた 219).従来法(603 例)では経食道心エコー を行わず,除細動前 3 週間および除細動後 4 週間ワルファ リン療法を行った.経食道心エコー群(619 例)で血栓の なかった群では,ヘパリン投与後に除細動を行い,除細動 後 4 週間のワルファリン療法,血栓が検出された群ではワ ルファリン療法を 3 週間行い,経食道心エコー再評価のう え,血栓がなければ除細動し,その後 4 週間のワルファリ ン療法を行った.その結果,除細動までの日数は,経食道 . 心エコー群で有意に短縮された(平均 3.0 日 vs 30.6 日) 一方,8 週間後の除細動成功率,塞栓症発症率,重大な出 血発症率に差はなく,両群とも満足できる治療法と考えら 証されている 208-210).臨床的には,48 時間以上持続するか れた.したがって,経食道心エコーを用いた除細動戦略は 時間未満の心房細動でも左房内血栓や塞栓症が生じうる 示された 219). 持続時間不明の心房細動にこの方法が適用されている.48 従来法と同様,受け入れられる治療法の一つであることが ことが報告されているが,抗血栓療法の必要性については 心房粗動の洞調律化時にも脳梗塞や全身性塞栓症の合 明らかではない.ただし,除細動前のワルファリン療法は 併が報告されており 220,221),心房細動と同様,従来法ある 維持量に到達してから 3 週間であり,実際には除細動を行 うまでにより長期間を要する. 新規経口抗凝固薬は服薬した日からその効果が発現す るため, 除細動前の服薬期間は 3 週間でよいと考えられる. RE-LY Trial211)では,試験中に除細動した症例で除細動後 の脳梗塞発症率はワルファリン,ダビガトランとも低かっ たが,ワルファリンと同様の除細動前 3 週間,除細動後 4 週間投与のプロトコールがダビガトランでも妥当である かどうかは実証されていない.リバーロキサバン,アピキ サバンについては除細動に関連するデータは公表されて いない.心房細動発作が狭心症,急性心筋梗塞,ショック, 肺水腫などの病態に生じ,血行動態が不安定になるような 場合には,ただちに除細動を行うべきである(ただし持続 .心房細動 が 48 時間以上の場合はヘパリン静注下に行う) から洞調律に復帰しても,一時的な左房,左心耳の機能低 28 下(スタニング)は続く 212).このスタニングは,自発的 いは経食道心エコーを用いた治療戦略のいずれかにより, 洞調律化前後のワルファリンあるいは新規経口抗凝固薬 療法を行うべきである. 2.6 抜歯や手術時の対応 クラス I クラス IIa なし. ・至適治療域に PT-INR をコントロールしたワルファリ ン内服継続下での抜歯 . レベル A / 白 内 障 手 術. レベル C ・抗血小板薬の内服継続下での抜歯 . 手術. レベル C レベル A /白内障 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) ワルファリンを中止すると約 1 %の頻度で重篤な血栓 クラス IIa′ ・新規経口抗凝固薬の継続下での抜歯や白内障手術. レベル C ・消化管内視鏡による観察時の抗凝固療法や抗血小板療 法の継続. レベル C ・抗血栓薬単独投与例で出血低危険度の消化管内視鏡手 技を行う場合,抗凝固薬も抗血小板薬も継続して行う. ただし,ワルファリン療法の場合は治療域内であるこ とを確認して行う. レベル C ・抗血栓薬単独投与例で出血高危険度の消化管内視鏡手 技を行う場合,アスピリンは継続か 3 ∼ 5 日休薬,チ エノピリジンはアスピリンかシロスタゾールへ置換 し,それらの対応に準拠するか 5 ∼ 7 日間休薬する. アスピリンやチエノピリジン以外の抗血小板薬は 1 日 休薬する.ワルファリンや新規経口抗凝固薬はヘパリ ンに置換する. レベル C ・抗血栓薬併用投与例で消化管内視鏡手技を行う場合, アスピリンは休薬しないかシロスタゾールへ置換,チ エノピリジンはアスピリンやシロスタゾールへの置換 か 5 ∼ 7 日間の休薬,チエノピリジン以外の抗血小板 薬 は 1 日 休 薬 か シ ロ ス タ ゾ ー ル 置 換 を 考 慮 す る. レベル C /ワルファリンや新規経口抗凝固薬はヘパリ ンへの置換を行う. レベル C ・術後出血への対応が容易な体表の小手術(ペースメー カ植込みを含む)時の抗凝固薬や抗血小板薬の内服継 続. レベル C ・出血が起こった場合に対処が困難な体表の小手術での 大手術に準じた対処. レベル C ・大手術の場合,術前 3 ∼ 5 日までのワルファリン中止, 24 時間∼ 4 日までのダビガトラン中止,24 時間以上 のリバーロキサバン中止,24 ∼ 48 時間のアピキサバ ン中止とヘパリンによる術前の抗凝固療法への変更. レベル C ・大手術前 7 ∼ 14 日からのアスピリン,チクロピジン およびクロピドグレルの中止,3 日前からのシロスタ ゾール中止. レベル C /その間の血栓症や塞栓症のリ スクが高い症例では,脱水の回避,輸液,ヘパリンの 投与などを考慮する. レベル C ・緊急手術時の出血性合併症時に準じた対処. クラス III レベル C ・経口抗血栓療法の中断. レベル B /抗血栓療法の中断 が避けられない場合は,ヘパリン,脱水の回避,輸液 などの代替療法を考慮する. レベル C 塞栓症を発症する 222,223).RE-LY Trial によると,ダビガト ラン 150 mg × 2 回 /day 群,110 mg × 2 回 /day 群および ワルファリン群における周術期の休薬時にヘパリンの橋 15.3 %, 渡し療法(ヘパリンブリッジ)がそれぞれ 17.0 %, および 28.5 %で行われている状況下で,虚血性脳卒中の 発症率はそれぞれ 0.39 %,0.40 %,0.39 %,虚血性脳卒 中や全身性塞栓症,肺塞栓症,心血管死の複合エンドポイ ントの発症率はそれぞれ 1.5 %,1.2 %,1.2 %であった . 224) 抗血栓薬継続下での抜歯の安全性はランダム化比較試 験や観察研究として報告されている 225-229).2003 年から 2007 年に発表された医師や歯科医師を対象としたアン ケート調査によれば,抗血栓薬継続下での抜歯を支持する 医師や歯科医師は増えてはいるが地域によっても差があ り,平均約 4 ∼ 6 割の医師や歯科医師が支持しているにす ぎない 230-232).2006 年に本学会専門医 400 名を対象にア ンケート調査を行った結果,146 名(37 %)から回答を得 た.脳塞栓症歴がありワルファリンコントロール中の非弁 膜症性心房細動患者に抜歯が必要となった際に,抗血栓療 法継続下での抜歯を支持したのは 51 %,塞栓歴のある機 械弁患者では 66 %であった.頸動脈狭窄による脳梗塞の 既往患者における抗血小板薬継続下での抜歯支持は 62 % であった. 2010 年には,わが国の歯科三学会合同の『科学的根拠 に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン』 が作成され,抜歯前 72 時間以内に PT-INR を測定し PT- INR が 3.0 以下であることを確認し,ワルファリン療法継 続下で抜歯を行うことが推奨された 233).新規経口抗凝固 薬については十分なエビデンスは確立されていないが,ワ ルファリンに準じて継続下での抜歯が勧められる.ガイド ラインや指針が作成されてきたが,今後も抗血栓療法継続 下での安全な抜歯の基盤を構築するために,啓発活動,各 学会間の調節,観察研究および医療連携が求められる. 体表の小手術で,術後出血への対応が容易な場合は抜歯 と同様の対策が望まれる 143).白内障手術時は,角膜や水 晶体には血管がなく出血を伴いにくいことから,多くの眼 科医が抗血栓療法継続下での手術を実践している 234,235). 大手術の場合は,入院のうえ,ワルファリンを中止しヘパ リンを開始する.ヘパリンは APTT を対照の 1.5 ∼ 2.5 倍 に延長するように投与量を調整する.手術の 4 ∼ 6 時間前 にヘパリンを中止するかプロタミンでヘパリンの効果を 中和し,術前に APTT を確認する.術後は可及的すみやか にヘパリンとワルファリンを再開し,PT-INR が治療域に 入ったらヘパリンを中止する.ダビガトランについては 29 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) Ccr が 50 mL/min 以上であれば 1 ∼ 2 日,30 ∼ 49 mL/min であれば 2 ∼ 4 日間投与を中止し,中止 12 時間後から必 要に応じてヘパリン置換を行う.リバーロキサバンについ ては腎機能にかかわらず 24 時間前の中止と必要に応じた ヘパリン置換を行う.アピキサバンは出血のリスクに応じ て 24 ∼ 48 時間の中止とへパリン置換を考慮する.抗血小 板薬の投与を中止せざるをえない場合は,アスピリン,チ クロピジンおよびクロピドグレルは術前 7 ∼ 14 日から中 止, シロスタゾールは 3 日前から中止する 143,236-239).その間, 血栓や塞栓症のリスクの高い症例では脱水の回避,輸液, ヘパリンの投与を考慮する.長期の休薬を避けたい場合 は,手術前にシロスタゾールなど中止期間の短いものに切 り替えることが望ましい. 抗血栓療法をできるだけ継続する立場から,抗血栓薬を 中断する場合に半減期の短いヘパリンでのブリッジがし ばしば行われる.ヘパリンは APTT を対照の 1.5 ∼ 2.5 倍 に延長するよう投与量を調整することが多いが,非弁膜症 性心房細動では 1 万 U/day が投与されることもある.最近, ペースメーカや除細動機器の植込み時に抗凝固薬を中止 しヘパリンでブリッジしたところ,ペースメーカポケット 内の血腫などの出血性合併例が増加したことが報告され た 240,241).ヘパリンブリッジの有用性は確立していないが, ヘパリンでブリッジする場合はヘパリンの用量管理を厳 重に行うべきであろう. 2012 年 7 月,日本消化器内視鏡学会の『抗血栓薬服用 者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン』が改訂され た.これまでは塞栓症発症リスクを考慮せずに抗血栓薬の 休薬による消化器内視鏡後の出血予防を重視したもので あったが,今回は抗血栓薬の休薬による塞栓症の誘発にも 配慮して改訂された 242).出血危険度により消化器内視鏡 ,② を 4 つに分類している.①通常消化器内視鏡(観察) 内視鏡的粘膜生検(超音波内視鏡下穿刺吸引術を除く) , ③出血低危険度の消化器内視鏡(バルーン内視鏡,マーキ ング,消化管・膵管・胆管ステント留置術,内視鏡的乳頭 バルーン拡張術) ,④出血高危険度の消化器内視鏡(ポリ ペクトミー,内視鏡的粘膜切除術など)の 4 つのうち,前 回と大きく異なるのは②と③である.内視鏡的粘膜生検や 出血低危険度の内視鏡の場合には,抗血小板薬,抗凝固薬 のいずれか 1 剤を服用している場合には休薬なく施行し てもよい.このガイドラインにはダビガトランは含まれて いるが,後発のリバーロキサバンとアピキサバンは含まれ ていない.リバーロキサバンもアピキサバンもダビガトラ ンに準じて対応することが妥当であろう.ワルファリンの 場合は,PT-INR が通常の治療域であることを確認して生 検する.2 剤以上を併用している場合には症例に応じて慎 30 重な対応が求められ,抗凝固薬はヘパリン置換が原則であ る.出血高危険度の消化器内視鏡検査では,大手術に準じ た一時的中止と必要に応じてヘパリン置換を行う. 2.7 出血時の対応 クラス I ・一般の救急処置. レベル C ・ワルファリン療法中の出血性合併症の重症度に応じた ワルファリン減量∼中止(重症度が中等度か重度)と 必要に応じたビタミン K 投与. レベル C ・ヘパリン投与中の出血性合併症の重症度に応じたヘパ リ ン 減 量 や 中 止, お よ び プ ロ タ ミ ン に よ る 中 和. レベル C クラス IIa ・早急にワルファリンの効果を是正する必要がある場合 の新鮮凍結血漿や乾燥ヒト血液凝固第Ⅸ因子複合体製 剤の投与 . レベル C /是正効果は乾燥ヒト血液凝固第 Ⅸ因子複合体製剤のほうがはるかに優れている(保険 適応外). ・ワルファリンの効果を是正する場合,乾燥ヒト血液凝 固第Ⅸ因子複合体製剤(保険適応外)によって是正さ れた PT-INR の再上昇を避けるための,乾燥ヒト血液 凝 固 第 Ⅸ 因 子 複 合 体 製 剤 と ビ タ ミ ン K 併 用 投 与. レベル C ・新規経口抗凝固薬療法中の出血性合併症の重症度に応 じた新規経口抗凝固薬の中止と,適切な点滴で利尿に よる体外排出の促進. クラス IIb レベル C ・早急にワルファリンの効果を是正する必要がある場合 の,遺伝子組み換え第Ⅶ因子製剤(保険適応外)の投 与. レベル C ・早急に新規経口抗凝固薬の効果を是正する必要がある 場合の,乾燥ヒト血液凝固第Ⅸ因子複合体製剤(保険 適応外),遺伝子組み換え第Ⅶ因子製剤(保険適応外), 新鮮凍結血漿の投与. レベル C ・ダビガトラン投与中の透析. レベル C ・新規経口抗凝固薬内服後早期の出血時の胃洗浄や活性 炭投与. クラス III レベル C なし. わが国で抗血栓療法中の患者 4000 例を登録して行われ た観察研究によれば,抗血小板薬単独,複数の抗血小板薬, ワルファリン療法およびワルファリンと抗血小板薬の併 用における重大な出血の発症率は,それぞれ 1.2 % /year, 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) 2.0 % /year,2.1 % /year,3.6 % /year で,頭蓋内出血の発 症率はそれぞれ 0.3 % /year,0.6 % /year,0.6 % / year,0.9 % /year であった .抗血栓療法中は一定の頻度で重篤な 243) 出血が起こりうることと,抗血栓薬を併用するとそのリス クが高まることを認識するとともに,出血時の対応が求め られる. 軽度の出血の場合は安易に休薬することなく,適切な抗 クラス III ・抗凝固療法中の妊娠や出産. レベル C 妊娠と出産における抗血栓薬の管理は, 『心疾患患者の 妊娠・出産の適応,管理に関するガイドライン(2010 年 改訂版) 』144,145)や『Warfarin 適正使用情報』252)に詳しい. 抗血栓療法中の妊娠,出産にあたって最も重要なことは, 血栓療法の継続を考慮する.中等度から重篤な出血では たとえ現時点において適切な抗血栓療法管理下で心臓を として抗血栓薬の中止,止血処置,適切な点滴によ 含めた全身状態が良好であっても,母体の血栓塞栓症のリ る循環動態の安定化,および脳内出血やくも膜下出血時に スクやワルファリン内服による胎児の催奇形性,頭蓋内出 としてビタミン K, クラス IIa として新鮮凍結 ないことを,妊娠,出産に先立って時間をかけて説明する クラス I は十分な降圧を図る.ワルファリン療法中の PT-INR の是 正に, クラス I 血漿や乾燥ヒト血液凝固第 IX 因子複合体(500 ∼ 1000 U) (保険適応外) ,クラス IIb として遺伝子組み換え第 VII 因子製 血などのリスク,適切な抗血栓薬の管理方法が確立してい ことである.それでもあえて妊娠,出産を希望する場合は 次のような方法が勧められる 145). .急速是正に ワルファリンは低分子で胎盤を通過するため,妊娠前期 (保険適応外)の投与である.ヘ 子複合体(500 ∼ 1000 U) ファリンからヘパリンまたは低分子ヘパリンへの変更が 剤(保険適応外)の投与が勧められる 244-250) 最も速く確実な効果を示すのは乾燥ヒト血液凝固第 IX 因 パリン療法中の是正にはプロタミン投与を行う 142). 新規経口抗凝固薬投与中に出血した場合,一般処置とし て点滴により循環動態の安定化を図ることは重要である. 適切な点滴により循環動態を安定させると,腎臓や肝臓か にはワルファリンによる胎児奇形発生の恐れがあり,ワル 必要となる.ヘパリンの自己注射の練習やヘパリンの用量 決定のため短期間入院することが望ましい. ワルファ 妊娠第 14 週以降はヘパリン皮下注射の継続か, リン療法への変更を選択する.ヘパリンは血栓症予防効果 らの薬物排泄を促進することにつながるからである.緊急 が不確実であることから,ワルファリン療法への変更が望 時の是正方法は確立していないが,薬物血中濃度がピーク ましい 252,253). に達する前なら胃洗浄や活性炭を投与して薬剤の吸収を 抑制する 251).ダビガトランは透析で取り除かれる.ダビ 胎児は酵素系とビタミン K 依存性凝固因子が未発達の ため,母親よりもワルファリンの影響が容易に出現する ガトランや FXa 阻害薬では,血液製剤や凝固因子製剤と 144) れる.ほかに新鮮凍結血漿や遺伝子組み換え第 VII 因子製 の点滴静注で抗血栓療法を行いながら,娩出中の胎児出血 して第 IX 因子複合体(保険適応外)の効果が最も期待さ 剤(保険適応外)の投与も考慮できる. .このため,胎児頭蓋内出血などの予防の観点から 34 ∼ 36 週目までにはワルファリン投与を中止し,ヘパリン 死を予防するため帝王切開で分娩すべきである. 新規経口抗凝固薬のダビガトランやリバーロキサバン, 2.8 アピキサバンの妊婦,授乳婦に対する臨床試験成績はな 妊娠と出産 クラス I なし. クラス IIa なし. く,安全性は確立していない.動物実験で授乳中へ移行す ることが認められている. 2.9 クラス IIa′ ・妊娠初期 13 週までのワルファリン禁止とヘパリン皮 下注による代替. レベル C ・妊娠 14 ∼ 33 週までのワルファリン療法. レベル C ・妊娠 34 ∼ 36 週以降の胎児頭蓋内出血予防のため, 入 院 で の ワ ル フ ァ リ ン 漸 減 と ヘ パ リ ン 点 滴 静 注. レベル C ・妊娠 34 ∼ 36 週以降の凝固能亢進による母体血栓症 防止目的で,ヘパリン中止下での胎児の早期娩出とヘ パリン点滴静注の早期再開. レベル C 新しい経口抗凝固薬の開発 経口直接トロンビン阻害薬であるダビガトラン,FXa 阻 害薬であるリバーロキサバン,アピキサバンが承認され, 使用可能となった.エドキサバンについては,ワルファリ ンを対照とした国際共同二重盲検比較試験(ENGAGE AF-TIMI48)が終了し,その結果が報告された 254-257).エ ドキサバンは日本では股関節・膝関節手術後の深部静脈 血栓症,肺血栓塞栓症予防に対し保険適応となりすでに発 売されている. ワルファリンと比較した新規経口抗凝固薬のメリット 31 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) は,効果判定のための定期的な採血が不要であることや患 者により投与量の調整が不要であること,頭蓋内出血発生 率がかなり低いこと,食事の影響がほとんどないこと,他 の薬剤との相互作用が少ないこと,効果がすみやかに現 れ,半減期が短いため術前へパリンへの置換が不要ないし は短期間であることなどがあげられる.一方,デメリット として,高度腎機能低下例では投与できないことや,半減 期が短く服用忘れによる効果低下が速いこと,重大な出血 の際の対策が十分確立していないこと,患者の費用負担増 加の可能性があることなどがある. APTT と相関することが知られているが,APTT 値は標準 化されていないことに注意する. 2.9.2 リバーロキサバン 経口 FXa 阻害薬のリバーロキサバン 15 mg および 10 mg 投与時の生物学的利用率はほぼ 100 %で,服薬後 0.5 ∼ 4 時間で血中濃度はピークとなり,半減期は 5 ∼ 13 時 間である.未変化体として腎から排泄されるのは全体の約 1/3 で,約 2/3 が肝で代謝を受ける.本剤は CYP3A4 や P 2.9.1 糖蛋白の強力な阻害薬との併用は禁忌となっているが,ワ ダビガトラン ルファリンと比較して薬物相互作用は少なく,食物との相 経口直接トロンビン阻害薬はトロンビンの活性部位に 結合し,フィブリノーゲンからフィブリンに変換されるの 互作用は認められていない. リバーロキサバンでは国際共同第 III 相試験である を直接阻害する.ワルファリンに比べてビタミン K 代謝 ROCKET AF Trial 153) とは独立して,日本人を対象に て効果確認のための定期的採血は不要である.この薬剤の 様の試験デザインで実施されたが,リバーロキサバンの通 とは直接関係がないため,食物の影響が少なく,原則とし J-ROCKET AF Trial 156)が行われた.両試験は基本的に同 代謝には肝臓のチトクローム P450 は関与せず,80 %は腎 常投与量は海外では 20 mg/day,国内では 15 mg/day と異 い. て曝露量の調節を企図したものであり 259),両試験では 臓から排泄される.したがって,他剤との相互作用は少な 第 III 相国際共同試験 RE-LY は,少なくとも 1 つの危険 因子(脳梗塞,TIA,全身性塞栓症の既往,6 か月以内の症 なっている.これは,欧米人と日本人との体格差を考慮し Ccr が低い患者層ではそれぞれ 15 mg/day,10 mg/day に J-ROCKET AF Trial におけるワルファ 減量している.また, ,75 歳以上, 候性心不全,左室機能不全〈駆出率 40 %未満〉 リンの PT-INR 目標値はわが国のガイドラインに準拠し, する非弁膜症性心房細動患者約 18000 例を対象とした. われた.両試験は 2 つ以上のリスク因子または脳梗塞や 65 歳以上で高血圧,糖尿病,冠動脈疾患のいずれか)を有 150 mg ×2 回 /day 群, ダビガトラン 110 mg × 2 回 /day 群, わが国の医療実態に近いワルファリン療法との比較が行 TIA の既往を有する患者を対象とし,二重盲検,ダブルダ ワルファリン群に割り付けられ,ダビガトランの 2 群につ ミー法で実施された.結果は,ROKCET AF Trial では有効 検で平均 2 年間追跡された 解析ではワルファリンに対する優越性も確認された一方, いては盲検,ワルファリン対ダビガトランについては非盲 .試験は主要評価項目(脳 152) 性の非劣性が検証され,治験薬投薬下(on treatment)の 卒中,全身性塞栓症)に関して非劣性を証明する計画で 治験薬投与中止後ワルファリンへの移行時,効果不発揮に あったが,低用量でワルファリンと同等,高用量で有意に 伴う主要評価項目の増加が明らかとなった.安全性はワル 34 %低いという結果が得られた.一方,重大な出血の頻度 ファリンと同程度であった.J-ROCKET AF では安全性主 出血は両用量でいずれも 60 %以上少なかった.主たる副 的に問題となる出血事象)の発現率は,リバーロキサバン はワルファリン群に比べて低用量で有意に少なく,頭蓋内 作用として上部消化器症状の増加がある.その一因として 酒石酸コアの特殊製剤が考えられている. ワルファリンと比較したダビガトラン固有のメリット は,高用量と低用量を選択できることや,高用量では虚血 性脳卒中をワルファリンより有意に減少させること,低用 量で重大な出血が少ないことなどがあげられる.一方,デ メリットとして,上部消化器症状が多いことや高用量で消 要評価項目(重大な出血事象または重大ではないが臨床 群 18.0 % /year,ワルファリン群 16.4 % /year で非劣性が 検証された.頭蓋内出血はワルファリン群の約 1/2 と少な く,ROCKET AF と同様であった.有効性については十分 な検出力を有していないものの,ワルファリン群に対する イベント抑制傾向が認められた(1.3 % /year vs 2.6 % / .両試 year,ハザード比 0.49,95 %信頼区間 0.24 ∼ 1.00) 験ではリバーロキサバンの投与量は異なるものの,ワル 化管出血が多いこと,腎排泄が 80 %であることから腎機 ファリンとの比較において有効性と安全性の結果は一貫 こと,などがある.アジア人を対象としたサブ解析では, することで有効性と安全性のバランスは両試験において ダビガトランはワルファリンに比べ消化管出血を増加さ 大きな差はなかった 260,261). 能低下の影響をより受けやすいこと,1 日 2 回投与である 32 せないことが示された 258).ダビガトランの血中濃度は していた.また,Ccr が低い患者群でも同程度の曝露量と 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) ワルファリンと比較したリバーロキサバン固有のメ に少なかった.頭蓋内出血はアピキサバン群で 58 %少な 1 日 1 回 1 錠でよいこと, 服薬継続下では脳卒中, リットは, く,消化管出血に有意差はなかった. 全身性塞栓症をワルファリンより有意に減少させること ワルファリンと比較したアピキサバン固有のメリット などがあげられる.一方,デメリットとして,現時点では は,脳卒中,全身性塞栓症をワルファリンより有意に減少 CHADS 2 スコア 1 点以下でのエビデンスが確立していな させること,重大な出血が少ないことなどがあげられる. りも重大な出血や臨床的に有意な出血が多い可能性があ では臨床経験が少なく,とくに日本人における有用性と安 いこと,75 歳以上や 50 kg 以下の低体重でワルファリンよ ることなどがある.リバーロキサバンの血中濃度はプロト ロンビン時間(PT)と相関することが知られているが, 試薬によって値が異なることに注意する. 一方,デメリットとして 1 日 2 回投与であること,現時点 全性がまだ確立されていないことなどがある.アピキサバ ンの血中濃度は APTT や PT とは十分な相関関係を示さ ない. 2.9.3 2.9.4 アピキサバン エドキサバン 経口 FXa 阻害薬アピキサバンはすみやかに吸収され, 半減期は 12 時間で,腎排泄率は 25 %と低い.ワルファリ ンが使用できないか,あるいは使用できないと医師が判断 した脳梗塞リスクのある心房細動患者において,アピキサ バンはアスピリンに比べて重大な出血を増加させること な く, 脳 卒 中, 全 身 性 塞 栓 症 を 55 % 減 少 さ せ た (AVERROES Trial) . 262) エドキサバンの第 III 相国際共同試験の結果 257) が明らか になったが,2013 年 12 月の時点で保険適応は承認されてい ない.FXa 阻害薬のエドキサバンはすみやかに吸収され,最 高血中濃度到達時間は 1 ∼ 3 時間,血中半減期は 10 ∼ 14 時 間で,腎から 50 %,腎臓以外から 50 %が排泄される 263).P 糖蛋白阻害作用を有する薬剤との併用で,エドキサバンの吸 収が増大し血中濃度が上昇し,出血性イベントが発現しやす ARISTOTLE Trial では脳梗塞のリスクを少なくとも 1 くなることが予想されている.P 糖蛋白阻害作用を有する薬 目標 2.0 ∼ 3.0)とアピキサバン(5 mg× 2 回 /day)の有 エリスロマイシン,イトラコナゾールなどがあり,これらの つ以上有する心房細動患者においてワルファリン (PT-INR 剤としては,キニジン,ベラパミルなどの抗不整脈薬の一部, 効性と安全性を,無作為割り付け二重盲検で比較した 154). 薬剤との併用時には減量して使用する. 房細動・粗動あるいは過去 1 年間に 2 回以上発作がとら くとも 2 つ以上有する心房細動患者でワルファリン(PT-INR CHADS 2 スコア 1 点以上の持続性・永続性非弁膜症性心 ENGAGE-AF TIMI48 trial では,脳梗塞のリスクを少な えられている発作性心房細動・粗動を対象とした.年齢 目標 2.0 ∼ 3.0)とエドキサバン 2 用量(60 mg,30 mg× 1 上のうち 2 つ以上がある場合はアピキサバンを半量に減 較した 257).Ccr30 mL/min 未満,抗血小板薬 2 剤併用,30 日 80 歳以上,60 kg 以下,血清クレアチニン値 1.5 mg/dL 以 量し,血清クレアチニン値 2.5mg/dL 以上あるいは Ccr 25 mL/min 未満は除外された.主要評価項目は脳卒中と全身 性塞栓症,二次有効性評価項目は全死亡と心筋梗塞, 回 /day)の有効性と安全性を,無作為割り付け二重盲検で比 以内の急性冠症候群,冠動脈形成術,脳卒中患者は対象から 除外された. 主要評価項目は脳卒中と全身性塞栓症,二次有効性複合評 主 要 安 全 性 評 価 項 目 は ISTH(International Society of 価項目は,脳卒中,全身性塞栓症,心血管死とした.主要安全 二次安全性評価項目は重大な出血+臨床的に有意な出血 clinical 評価は,脳卒中+全身性塞栓症+重大な出血+死亡, mg× 2 回 /day への減量は全症例のうち 5 %未満であった. 中+全身性塞栓症+生命を脅かす出血+死亡とした. 出血基準に基づく重大な出血, Thrombosis and Hemostasis) アピキサバン 2.5 とした.Ccr 50 mL/min 以上が 8 割を占め, 有効性の主要評価項目ではアピキサバンのワルファリン に対する優位性が示された(アピキサバン群 1.27 % / .脳出血はワルファリ year,ワルファリン群 1.60 % /year) ンに比べてアピキサバンで 49 %,虚血性その他の脳卒中 は 8 %少なかった.全死亡はアピキサバン群で有意に少な 性評価項目は ISTH 出血基準に基づく重大な出血,net 重篤な後遺症のある脳卒中+生命を脅かす出血+死亡,脳卒 エドキサバンはいずれの群でも,Ccr 30 ∼ 50 mL/min,体 重 60 kg 以下,キニジンやベラパミル併用患者では用量を半 量に減量した.平均 CHADS 2 スコアは 2.8,用量調整例はい ずれの群も 25.4 %であった.ワルファリン群での TTR は平 均値 64.9 %,中央値 68.4 %であった.有効性主要評価項目 ワルファリン群 3.94 かった (アピキサバン群 3.52 % /year, では,on treatment 解析でエドキサバン 60 mg 群のワルファ ,重大な出血+臨床的に 重大な出血(2.13 % vs 3.09 %) キサバン 60 mg 群:1.18 % /year,30mg 群:1.61 % /year, % /year) .心筋梗塞の発症は両群で有意な差はなかった. 有意な出血(4.07 % vs 6.01%)はアピキサバン群で有意 リン群に対する優越性,30 mg 群の非劣性が示された(エド .ITT 解析では両用量群とも ワルファリン群:1.50 % /year) 33 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) 非劣性が示された (それぞれ 1.57 % /year, 2.04 % /year, 1.80 % /year) .出血性脳卒中はいずれの群もワルファリンに比べ ・緩やかな目標心拍数(安静時心拍数 110 拍 /min 未満) で開始し,自覚症状や心機能の改善がみられない場合 有意に少なかった(ハザード比 0.54,0.33)が,虚血性脳卒 はより厳密な目標(安静時心拍数 80 拍 /min 未満, ,30 mg 群で有意に 中は 60 mg 群で同等(ハザード比 1.00) 中 等 度 運 動 時 心 拍 数 110 拍 /min 未 満 ) と す る. .重大な出血の発生率はいずれ 高かった(ハザード比 1.41) の群も有意に低かった(それぞれ 2.75 % /year,1.6 % / 3.43 % /year) .消化管出血は 60 mg 群で有意に高く(ハ year, , 30 mg 群で有意に低かった (ハザード比 0.82) . ザード比 1.23) レベル A クラス IIb ・β 遮断薬や非ジヒドロピリジン系 Ca 拮抗薬,ジゴキ シンの単独あるいは併用投与でも,安静時と運動時の 心血管死,net clinical 評価はいずれの群でもワルファリン群 両方で心拍数が適切に調節できない例へのアミオダロ より有意に低かった. 現時点ではアジア人のサブ解析は発表されていない.Ccr 15 ∼ 30 mL/min の心房細動を合併した重症腎不全患者を対 象とした試験が,日本単独で本試験と並行して施行され,PK/ PD プロファイルから 15 mg× 1 回 /day 投与が至適であるこ とが示された 264). ン経口投与. レベル C ・薬剤では心拍数調節ができないか,頻脈誘発性心筋症 が疑われる例への房室結節アブレーション. クラス III レベル C ・発作性心房細動へのジギタリスの投与. レベル B ・薬物療法を試みずに,心拍数調節目的で行う房室結節 アブレーション. 3. 心拍数調節の適応と方法 レベル C ・非代償性心不全例への,血行動態を悪化させる可能性 がある非ジヒドロピリジン系 Ca 拮抗薬の静脈内投与. レベル C ・副伝導路を持つ例へのジギタリス,非ジヒドロピリジ クラス I ン系 Ca 拮抗薬の静脈内投与. レベル C ・副伝導路のない持続性あるいは永続性心房細動への β 遮断薬(メトプロロール,ビソプロロール,プロプラ ノロールなど),非ジヒドロピリジン系 Ca 拮抗薬(ベ ラパミル,ジルチアゼム)の投与. レベル B ・副伝導路のない心不全例の心房細動へのジゴキシン, アミオダロン(経口あるいは静脈内投与*),ランジオ ロール,カルベジロール,ビソプロロールの投与. レベル B ・心不全患者または長期臥床患者へのジゴキシン(経口) の投与. クラス IIa レベル C ・安静時,運動時両方の心拍数調節のためのジゴキシン と β 遮断薬または非ジヒドロピリジン系 Ca 拮抗薬の レベル B ・薬物療法では十分に心拍数が調節できないか,副作用 のために投与できない例への房室結節または副伝導路 のアブレーション. レベル B ・他の方法が不成功か禁忌である例へのアミオダロンの 静脈内投与. レベル B ・副伝導路を持つが,電気的除細動を行わなくてもよい 例への Ia 群薬(プロカインアミド,シベンゾリン,ジ ソピラミド),Ic 群薬(ピルシカイニド,フレカイニド) の静脈内投与. 34 心房細動中に 130 拍 /min 以上の心拍数が持続すると, 左室拡張不全が生じうっ血性心不全を惹起する.器質的心 疾患がなくても,高頻度の心拍数の心房細動が持続すると 心不全となる.これを予防するために心房細動中の心拍数 を 130 拍 /min 以 上 に し な い こ と が 重 要 で あ る 265). AFFIRM 105) では,安静時は 60 ∼ 80 拍 /min,中等度運動 時は 90 ∼ 115 拍 /min に心拍数を低下させるよう調節され た.心拍数を厳しく調節すると,心拍数の低下からペース 併用. :アミオダロン注は保険適応外. * レベル C メーカを植込まなければならない症例が 7.3 %もいたた めに,厳密に心拍数を 60 ∼ 80 拍 /min にしなければなら ないか疑問が持たれていた.RACE II Trial 266)では安静時 心拍数を 110 拍 /min 未満に目指す群と,安静時心拍数は 80 拍 /min 未満で中等度運動時心拍数が 110 拍 /min 未満 を目指す群に分けて比較された.その結果,自覚症状や有 害事象の発現率,心不全の重症度は両群で同程度であり, 安静時の心拍数が 110 拍 /min 未満を目指す緩やかなコン トロールでもよいことが明らかになった.RACE II Trial の緩やかな心拍数調節群の安静時心拍数は,1 年後 86 266) ± 15 拍 /min,2 年後 84 ± 14 拍 /min であり,決して安静 時心拍数が 100∼109 拍 /min でもよいということではなく, 自覚症状が軽快するよう心拍数の低下に努めなくてはな 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) らない. 2010 年の ESC のガイドライン 経口投与で時間をかけて心拍数を低下させる薬剤とし では,心拍数調節の 146) 目標は上述の RACE II Trial の緩やかな調節法を クラス IIa として採用しているが,2011 年の米国心臓病学会 / 米国心 て,β 遮断薬のうちメトプロロール,ビソプロロール,ア テノロール,カルテオロール,プロプラノロール,カルベ ジロールなどが使用できる(保険適応のないものもある 臓協会 / 欧州心臓病学会(ACC/AHA/ESC)のガイドラ ため使用時には注意する) .ビソプロロールについては, min,中等度運動時 90 ∼ 115 拍 /min を目標としている. あることが認められた.Ca 拮抗薬としてベラパミルとジ イン 267) では推奨度の記載なしで,安静時 60 ∼ 80 拍 / 本改訂では,ESC ガイドラインにならい緩やかな調節法 を クラス IIa として採用した. MAIN-AF Study 269)で,心拍数調節に用量依存性の効果が ルチアゼム,ジギタリスとしてジゴキシン,そのほかにア ミオダロンが選択できる. 心拍数調節には,房室結節伝導を抑制する薬剤を選択す 薬剤の具体的な選択は副伝導路の有無,心不全の有無に る.J-RHYTHM Study の成績および 2010 年の ESC ガイ 基づいて行う(図 13) .副伝導路を持つ心房細動患者で, 抗薬(ベラパミル,ジルチアゼム) ,ジギタリス,アミオダ いときには,Ia 群薬(プロカインアミド,シベンゾリン, ドライン 146)では β 遮断薬,非ジヒドロピリジン系 Ca 拮 ロンが選択されている.短時間のうちに心拍数を減少した いときには静脈内投与が選択され,わが国では β 遮断薬 血行動態が保たれていて電気的除細動を行わなくてもよ ジソピラミド) ,Ic 群薬(ピルシカイニド,フレカイニド) の静脈内投与を行う.副伝導路がなく心機能が低下してい で静脈内投与ができるのはプロプラノロールとランジオ るときには,ジギタリス,カルベジロール,ビソプロロー ロールである(エスモロールは手術時だけ保険適応) .左 ルあるいはアミオダロン(経口投与)が使用される.アミ 室機能が低下した例(駆出率 25 ∼ 50 %)の頻脈性心房細 動の心拍数調節に,ランジオロールの点滴静注(1 ∼ 10μg/ オダロンやベプリジル,ソタロールなどは除細動目的で使 用されても,心房細動が継続しているときには房室結節伝 kg/min)が有効かつ安全であるかをジゴキシン静注(0.25 導を抑制して心拍数を低下させる 270). 2 時間以内の心拍数抑制効果はランジオロールが勝ってい ラセボと比較した研究 271)では,Holter 心電図で確認した mg)と比較した J-Land Study の結果 268)では,治療開始 た.心機能低下例の頻脈性心房細動の心拍数調節にランジ オロールの点滴静注も選択肢となりうるが,手術後などで 使用される場合に比べ投与量を減量する.静脈内投与でき る薬剤として,Ca 拮抗薬ではベラパミルとジルチアゼム, ジギタリスではジゴキシン,その他にアミオダロンがあ る. 慢性心房細動例でジルチアゼム,ベラパミルの効果をプ 平均心拍数はプラセボで 88 ± 14 拍 /min,ジルチアゼム 270 mg/day で 76 ± 13 拍 /min( p < 0.001) ,ベラパミル 240 mg/day で 80 ± 11 拍 /min( p < 0.01)であった.両 Ca 拮抗薬ともに房室結節における伝導抑制と運動耐容能 の改善は同等であった.ただし,両 Ca 拮抗薬ともに投与 量はわが国での平均投与量の約 2 倍であることに留意す ピルシカイニド フレカイニド ジソピラミド あり シベンゾリン プロカインアミド 心不全あり ジゴキシン経口・静注 アミオダロン経口・静注 * (*:静注は保険適応なし) ランジオロール静注 カルベジロール (心拍数調節の適応なし) ビソプロロール 心不全なし β遮断薬 Ca拮抗薬:ベラパミル, ジルチアゼム 副伝導路 なし 図 13 心房細動の心拍数調節(薬物治療) 35 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) る. が問題となる.心房細動停止と心房細動再発予防には同じ ジギタリスは安静時の心拍数を減少させるが,運動時の 心拍数減少効果は認められないので,運動時の心拍数調節 にはジギタリスに β 遮断薬あるいは Ca 拮抗薬を併用す 抗不整脈薬が使用されることが多いことから,本ガイドラ インの 2008 年改訂版 2) では両者を統一して扱った.それ によりガイドラインを単純化することができたものの,実 るか,β 遮断薬あるいは Ca 拮抗薬を単独で投与するか両 際の臨床現場では必ずしも同一の治療手段や薬剤投与法 DAAF Trial て記述することとした.しかし基本的な考え方には大きな 者を併用する.ジゴキシンの除細動効果について検討した では,基礎疾患のない心房細動 239 例に対 272) が採用されるとは限らないことから,今回は両者を独立し するジゴキシンの急速静注によって 16 時間の観察時間中 違いはない. 数の減少(レートコントロール)効果は認められている. ではなく,脳梗塞を防ぎ QOL を維持することを目指すも に有意な除細動効果のないことが明らかにされたが,心拍 なお,ジゴキシンによる心拍数調節では死亡率が高くなる 心房細動の薬物療法は生命予後を改善するためのもの のであることから,安全性に主眼を置いた枠組みが欠かせ ことが AFFIRM のサブ解析 273)で示され,ジゴキシン血 ない.わが国の薬事承認が限られた薬剤に,限られた適応 とが示唆されている 274). れているため,エビデンスレベルとして低いものが多いこ 中濃度上昇(1 μg/mL 以上)が死亡率増加と関連するこ 複数の薬剤を使用しても心拍数調節がうまくいかない か,抗不整脈薬あるいは肺静脈隔離術によっても洞調律維 持がうまくいかない例では,房室結節のカテーテルアブ レーションとペースメーカ併用による心拍数調節を考慮 してもよい. 心房粗動についても同様であるが,Na チャネル遮断薬 を投与すると心房興奮頻度が少し減少して 1:1 房室伝導 を可能にし,心室拍数が上昇することがあるので注意を要 する 146). でしか認められていないことと,臨床データも一部に限ら とは否めないが,より多くの臨床医の指針となるよう単純 化し,実用性を重視した内容に改訂した. 4.1 洞調律化(除細動) 心房細動の除細動にあたっては,まず心房内血栓のない ことが確認されているか,十分な抗凝固療法が行われてい ることが重要である.とくに 48 時間以上持続している心 房細動や持続時間の不明な心房細動では,緊急性が高い場 合を除き,塞栓症の可能性を最小限に抑える配慮が求めら 4. 洞調律化・再発予防の適応と方法 心房細動よりも洞調律のほうが,異常な頻脈や不規則な 心拍の不快感が避けられるうえ,心臓のポンプ機能に与え る心房収縮のブースター効果を期待できる点で望ましい. なによりも,心房内血栓が形成されなくなることのメリッ トが大きい.しかし,洞調律を目指すために人為的な介入 を必要するとなると,そこに新たなリスクとベネフィット の比較が必要となり,それは個々の患者によって,またそ の介入方法によって異なるため,慎重な検討を迫られる. 大規模試験による洞調律維持(リズムコントロール)追 求群と心拍数調節(レートコントロール)追求群の比較で, 生命予後に差がないことが示されたものの,QOL は必ず しも同等とはいえなかった.とくに発作性心房細動例では 心拍数調節治療に耐えられなくなるものが多く,洞調律維 持治療がより好まれたのは J-RHYTHM Study 120) が示し たとおりである.心拍数調節よりも洞調律維持が望ましい と判断された場合,あるいは患者の希望により洞調律維持 が選択された場合には,いかに除細動と再発予防を行うか 36 れる. 4.1.1 電気的除細動 クラス I ・遷延する心筋虚血や狭心症,症候性低血圧,増悪する 心不全など,致死的危険が迫っている心房細動,ある いは速い心室拍数が薬物療法に迅速に反応せず,血行 動態の破綻を伴う心房細動への R 波同期下直流除細 動. レベル C ・早期興奮(preexcitation)を伴う心房細動で,非常に 速い頻拍が生じたか,血行動態が不安定になった場合 の即時の直流除細動. レベル C ・器質的心疾患例に出現した心房細動で,容認できない 症 状 を 伴 い, 血 栓 の 存 在 が 否 定 さ れ て い る 場 合. レベル C クラス IIa ・抗不整脈薬に抵抗性の心房細動を,48 時間以上持続 させないで停止させる場合. レベル C ・48 時間以上持続するか発生時期が不明な有症候性心 房細動で,経食道心エコーで血栓の存在が否定されて 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) いるか,3 週間以上の有効かつ十分な抗凝固療法施行 後に行う場合. レベル C 4.1.2 ・直流除細動後早期に心房細動が再発し,容認できない 症状を伴う場合に抗不整脈薬投与下での直流除細動の 反復. レベル C 薬理学的除細動 クラス I ・臨床上有意な器質的心疾患のない発作性心房細動で, ・甲状腺機能亢進症が正常化したあとも心房細動が持続 する場合や,心臓手術後で術前にはなかった心房細動 が持続している場合に,抗不整脈薬による除細動が無 効であるかそれを使用できない例への直流除細動. 持続が 48 時間未満の例への Na チャネル遮断薬*1 投 与. クラス IIa レベル A ・持続が 48 時間から 7 日以内で,抗凝固療法を施行中 か,血栓の存在が否定された心房細動への強力な Na レベル C クラス IIb 気的除細動前から始めておくこともある. チャネル遮断薬*1 の投与. ・持続が 1 年未満で,左房拡大が著明でない無症候性心 房細動への待機的直流除細動. レベル C レベル C ・心機能,QT 間隔が正常な例で,7 日を超えて持続す る心房細動へのベプリジルの投与. レベル B ・抗不整脈薬の予防投与と多数回の直流除細動を行って ・洞不全や房室伝導障害,脚ブロック,Brugada 症候群, も,比較的短時間の洞調律後に再発を繰り返す心房細 器質的心疾患,心房粗動の既往のいずれもない例で, 動への直流除細動の反復. クラス III レベル C 院外発症の症候性発作性心房細動に対するピルシカイ ニド,フレカイニド,プロパフェノン,シベンゾリン ・ジギタリス中毒または低 K 血症の患者での直流除細動. レベル C ・高度房室ブロックや洞不全症候群の存在が判明してい る例で,ペーシングによるバックアップがない状況下 での直流除細動. の頓服投与(ただし,一度は医師の監視下で同剤によ る 頓 服 治 療 の 有 効 性 と 安 全 性 を 確 認 す る こ と ). レベル C クラス IIb ・7 日を超えて持続する心房細動で,ベプリジルによる ・持続が 48 時間以上の心房細動で,抗凝固療法が未施 行で,経食道心エコーなどで血栓の存在が否定されて いない例での待機的直流除細動. レベル B レベル C 心房細動の発生により急速に血行動態が破綻し,緊急性 が高い場合には,麻酔下,QRS 波同期下に 100J 以上の電 気エネルギーで直流除細動を試みるのが迅速で有効性も 高い(図 14) . 緊急以外の除細動場面で電気ショックが選択されるの は,それを患者が希望した場合や,抗不整脈薬による除細 動が困難な場合,抗不整脈薬による除細動が電気的除細動 よりも危険性が高いと判断された場合などである.とくに 肥大心,不全心,虚血心など,器質的心疾患に合併した心 房細動では抗不整脈薬の効果が弱まるだけでなく,催不整 脈作用が露呈しやすくなる.病的心ではアミオダロンの静 注あるいは内服により除細動を試みることもあるが,効果 の発現に時間がかかることが多く,第一選択として推奨す るものではない.そこで器質的心疾患に合併した心房細動 を除細動するには,より安全,確実で,効果も即時的に得 られる電気的除細動を推奨した(図 14) .ただし電気的除 細動はたとえそれが成功しても,とくに器質的心疾患例で は心房細動が再発する可能性が高く,予防薬が必要となる 可能性が高い.再発予防薬としてのアミオダロン内服を電 除細動不能例へのアプリンジン併用. レベル C ・心 機 能 低 下 を 伴 う 持 続 性 心 房 細 動 へ の ベ プ リ ジ ル 投与. レベル C ・器質的心疾患に伴う持続性心房細動へのアミオダロン 投与. クラス III レベル B ・心機能低下例へ の強力な Na チャネル遮断薬*1 の投 与. レベル C ・高度房室ブロックや洞不全症候群の存在が判明してい る例で,ペーシングによるバックアップがない状況下 での薬理学的除細動. レベル C ・Brugada 症候群合併例への Na チャネル遮断薬*1 の投 与. レベル C ・QT 延長を伴う持続性心房細動例へのベプリジルの投 与. レベル C ・持続が 48 時間以上の心房細動で,抗凝固療法が未施 行で,経食道心エコーなどで血栓の存在が否定されて いない例の薬理学的除細動. レベル C *1:ピルシカイニド, シベンゾリン,プロパフェノン,ジソ ピラミド,フレカイニド. 薬理学的除細動では,なによりも安全性が優先される. したがって薬理学的除細動が試みられるのは,基本的に心 37 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) 抗血栓対策 不安定 心房細動 除細動 血行動態 安定 *1 電気ショック *1 あり 器質的心疾患 肥大心 不全心 虚血心 なし >7 日 持続日数 ベプリジル*2 強力Na blocker ピルシカイニド ≦7日*3 シベンゾリン プロパフェノン ジソピラミド フレカイニド 図 14 心房細動の除細動 点線は考慮を要する部分.Na blocker :Na チャネル遮断薬. *1:以下の場合に海外ではアミオダロン投与も選択肢に含まれるが,わが国の保険適応に抵触する可能性がある. ①器質的心疾患例で薬理学的除細動を試みる場合. ②電気的除細動成功率を上げ,また除細動後の再発予防を目指す場合. *2:単剤で無効時にはベプリジルとアプリンジンや他の Ic 群薬の併用が奏効することがある.またアプリンジン単独でも有効なこと がある. *3:有効性と血栓塞栓症合併を減らす観点からは 48 時間以上にならないことが望ましい. 臓に器質的異常の存在しない心房細動*2 であり,器質的異 常のある例では,より専門的かつ慎重な判断が要求され る.心臓に基礎病態を有しない心房細動では,停止の対象 となる心房細動の持続時間が薬剤の効果と密接に関係す る.そこで Na チャネル遮断薬が停止に効果的とされる発 作性心房細動と,心房のリモデリングが進行して Na チャ ネル遮断薬の効果が期待できない持続性心房細動とに分 けて論じる必要がある. *2:器質的心疾患のない心房細動 このような心房細動を孤立性心房細動と呼ぶ(V. 1 . 2 . 14 「孤立性心房細動」 〈19 ㌻〉参照).しかし, 「 孤立性」の定義 は時代とともに,また研究者によって異なる.高血圧例の 場合は定義上孤立性ではないが,心肥大を伴わない場合に は不整脈の診療方針は,基礎心疾患を伴わない,いわゆる 孤立性のものと同様に扱うことができる.欧米のガイドラ イン(AHA, ESC)でも,左室肥大がない高血圧例は,塞栓 症の予防は別として不整脈に関しては孤立性と同等に 扱っている.そこで,本ガイドラインでは「孤立性」という 分類は使用せず, 「臨床上有意な器質的心疾患を認めない」 と表現することとした.器質的心疾患とは,肥大心,不全 心, 虚血心をさす. a. 発作性心房細動 発作性心房細動は原則として自然停止をするものをさ すが,症状が強い場合や,除細動時の塞栓症の危険を回避 38 するために持続が 48 時間以上にならないうちに人為的に 除細動を試みることがある.とくに臨床上有意な器質的心 疾患を認めない例では持続が短いほど Na チャネル遮断薬 の効果が高いことが知られており,7 日以内であればこの 目的で使用することがある.即効性が求められるため救急 外来などでは静注されることが多いが,患者に薬剤を持た せて発作時に自分で内服させる pill-in-the-pocket と呼ば れる投与法もある(V.4.3「抗不整脈薬単回経口投与法 」 〈44 ㌻〉参照) . (pill-in-the-pocket) Na チャネル遮断薬は,心房細動中の心房内あるいは肺 静脈内の興奮頻度を減らして細動を停止に導くが 275),心 房筋の再分極後不応期を延長する作用 276,277),興奮前面の 曲率半径を増大させる作用 278,279),肺静脈局所から発生す る異常興奮や同部に存在する伝導遅延部位の伝導途絶を 促す作用などが関与している 280).すなわち,Na チャネル 遮断薬は発作性心房細動のトリガーと基質の両方に対し て抗不整脈効果を発揮することが期待される.基本的に チャネルからの解離が遅い薬剤(slow kinetic drug:緩徐 解離型薬剤)ほど,Na チャネル遮断作用が強力で心房細 動停止効果も高く,臨床上有意な器質的心疾患を認めない 心房細動で治療の第一選択となることは,欧米のガイドラ イン 99) と一致する( クラス I ) (図 14) . 日本では強力な Na チャネル遮断薬が多数承認されてい 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) るが,とくに日本で開発されたピルシカイニドは,PSTAF 止効果には実績があり,ソタロールよりも優れているが, 例に対する 150 mg 単回経口投与(pill-in-the-pocket)が K チャネル遮断作用を示さず torsade de pointes の心配は と呼ばれる多施設共同試験で,持続が 7 日以内の心房細動 45 %の停止効果をあげたことが示されている 281). ピルシカイニドが純粋な Na チャネル遮断薬であるのに 対し,シベンゾリンは Na 電流を抑制するほかに,IKr(遅 torsade de pointes の発生がより多い 290).アプリンジンは ないが,とくに停止のための急速投与ではめまいや痙攣な どの副作用が知られている 291). 以上のエビデンスをもとに,臨床上有意な器質的心疾患 ,IKs(遅い成分) ,IK1(内向き 延整流 K 電流の速い成分) を認めない例の発作性心房細動を停止させるための第一 どを抑制し,M 2 受容体にも拮抗する 282,283). 48 時間以内 フェノン,ジソピラミド,フレカイニドを掲げた(図 ,IK ACh(アセチルコリン感受性 K 電流)な 整流 K 電流) の心房細動に対するシベンゾリンの 200 mg 単回投与に よって 75 ∼ 85 %の停止が得られることが報告されている . 284,285) プロパフェノンやフレカイニドの有効性については,す でに海外で実証済みといってよい( クラス I レベル A ) .持 続が 48 時間以内の心房細動に,静注による停止効果をみ 選択薬としては,ピルシカイニド,シベンゾリン,プロパ .薬剤の掲載は,J-RHYTHM Study 120) で使用された 14) 頻度順とした.臨床上有意な器質的心疾患を認めない発作 性心房細動に対する Na チャネル遮断薬の投与に伴う副作 用は少ないものの,皆無というわけではない.前述したよ うに心房細動を心房粗動に移行させ,まれに 1:1 房室伝導 を促して著しい頻脈を誘発する危険がある 292).また,洞 たスペインの検討では,2 mg/kg/20min の静注(8 時間以 機能不全の存在も心房細動の停止が得られて初めて気づ は 90 %,プロパフェノンでは 72 %の例で除細動に成功し 作用が洞停止時間を延長する可能性がある 293).Brugada いる 287). 断薬は ST を著しく上昇させるだけでなく,ときに致死性 内に停止しない場合には 1mg/kg 追加)でフレカイニドで た 286).このほか単回内服投与による停止効果も示されて わが国にはこのほか,K チャネル遮断作用も併せ持つ Ia 群薬が数多く存在する.なかでもジソピラミドはしばしば くことがあるが,その際に Na チャネル遮断薬の興奮抑制 症候群もしばしば心房細動を合併するが,Na チャネル遮 不整脈を誘発する危険性もあるので,十分な注意が要求さ れる 294). 使用されるが,シベンゾリン同様,M 2 受容体拮抗作用が b. 持続性心房細動 あり,昼間型や混合型に比較してとくに夜間型心房細動を 持続性心房細動例に対しては,除細動して洞調律を維持 高率に停止させ,再発を防止する 288,289).ジソピラミドは しようとする治療よりも,そのまま除細動せずに心拍数調 口渇や尿閉などの副作用が出現することがあり,コンプラ 節によって優れた QOL が確保されることが,最近の イアンスの低下を招く可能性がある.Na チャネル遮断薬 J-RHYTHM Study 120) でも明らかにされている.したがっ に M 2 受容体拮抗作用を有するジソピラミドやシベンゾリ ることが妥当と考えられる.しかし心拍数調節が困難な場 はときに心房細動を心房粗動に変えることがあるが,とく ンでは房室結節伝導が促進されるため,1:1 房室伝導を可 て,持続性心房細動に対しては心拍数調節を第一選択とす 合や心拍数調節を行っても症状が続く場合,永続性心房細 能にして極端な頻拍をひき起こすことがあるので,注意す 動に移行する前にアブレーション治療を行いたい場合な 脈作用である torsade de pointes の発生にも十分な注意が る.持続性心房細動を除細動するには電気的除細動も選択 る.さらに Ia 群薬では K チャネル遮断作用に伴う催不整 向けられるべきであり,純粋な Na チャネル遮断薬と同列 どには,除細動を試み洞調律維持という選択肢も考慮され 可能であり,それに比べ薬理学的除細動は成功率も即効性 に扱うことは適当でない.ピルメノールも同様の作用を示 の点でも劣り,また催不整脈作用のリスクも伴うため,そ す薬剤であり同等の効果が期待されるが,心房細動に対す の必要性を十分に吟味したうえで適応を判断することが る保険適応は認められていない. 望まれる. 間的なプロカインアミド,キニジン,アプリンジンなどの た心房筋では,細胞膜のイオンチャネル密度も変化してい 薬剤も存在するが,使用頻度は低く,臨床上有意な器質的 るため,急性期に奏効した薬剤が慢性期にも効くとは限ら 一方,Na チャネル遮断薬にはチャネルからの解離が中 心疾患を認めない例に対する第一選択薬として,あえてこ 心房細動が 7 日を超えて持続しリモデリングが進行し ない.持続が 48 時間以上 6 か月以下の心房細動に対して れら遮断作用の弱い薬剤を含めることはしなかった.実 ピルシカイニド 150 mg/day を連日投与したところ,2 週 伴う心房細動に対して静注で使用することはあっても,経 動が 2 か月を超えて持続している例や左房径が 45 mm を 際,血中半減期の短いプロカインアミドを WPW 症候群に 口投与はほとんど行われていない.キニジンの心房細動停 間後の時点で 22.4 %の例が洞調律に復帰したが,心房細 超えた例では停止が困難であった 295).また,心房細動の 39 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) 持続が 7 日を超えると,Na チャネル遮断薬のフレカイニ ドと K チャネル遮断薬のソタロールのどちらも除細動効 果を示さなくなった . 296) 最近の研究では,アミオダロンやベプリジルが持続性心 房細動を停止に導くことが示されているが,これらの薬剤 はマルチチャネルブロッカーであり,そのうちのどの作用 が奏効しているかについては明確な結論が得られていな い.これらの薬剤による除細動効果は投与開始直後には現 れず,数週間後に発揮される特徴があり,一つの可能性と してリモデリングを逆転させる(reverse remodeling)作 用が注目されている . 297) アミオダロンの経口投与による持続性心房細動の停止 効果については,決して高いとはいえないが,有効例の存 在を欧米の大規模試験結果が報告している( クラス IIa ) . PIAF Study では,1 週間以上持続する心房細動に対してア ミオダロンを投与し,3 週間で 23 %の例で洞調律に復帰 間における洞調律化率を比較した.プラセボ群で 3.4 %, ベプリジル 100 mg/day 群で 37.5 %,200 mg/day 群で 69.0 %と,ベプリジルの高い除細動効果が認められた.し かしこの比較的少数例における試験では心室頻拍を伴う 死亡例が 1 例あり,催不整脈作用による可能性が指摘され ている. 持続性心房細動に対するベプリジルの停止効果をアミ オダロンと比較した研究では,投与開始 3 か月以内の停止 率はアミオダロン群(400 mg/day を 1 週間,以後 200 mg/ day)で 20 例中 7 例(35 %)であったのに対し,ベプリ ジル群(150 mg/day を 2 週間,以後 100 ∼ 200 mg/day) では 20 例中 17 例(85 %)と高かった 304).ベプリジルの 高い除細動効果の明確な機序はいまだ十分に解明されて いないが,進行した心房筋のリモデリングを逆転させる効 果 305,306)や,カルモジュリンを抑制して Na 電流を増加さ した 115).また 72 時間以上持続する心房細動例を対象とし せる作用 307),細胞間の電気的カップリングを増強してス しか洞調律に復帰しなかったのに対し,アミオダロン群で 結果から推察されている. た SAFE-T trial では,1 か月以内にプラセボ群では 0.8 % 27.1 %の洞調律復帰が得られた 298).アミオダロンを使用 する場合には,通常 400 mg/day から開始し,2 週間後から 200 mg/day に減量し,可能ならばさらに 100 mg/day まで 減量する.ちなみに SAFE-T Trial では K チャネル遮断作 用と β 遮断作用を併せ持つソタロールの効果も検討し, 24.2 %の除細動が得られた.アミオダロンについては肺, その他の臓器への副作用が存在するので,とくに臨床上有 意な器質的心疾患を認めない心房細動への適用は慎重で なければならない.ソタロールについても QT 延長による torsade de pointes 発生への警戒が求められる.心房細動に 対するソタロールの保険適応は認められておらず,アミオ ダロンについても肥大型心筋症や心不全に伴う場合を除 いて認められていない. 一方,ベプリジルの効果については,日本から重要な知 見が発信されている.Fujiki らによると,3 か月以上(平 均 4 年)持続している心房細動にベプリジルを投与し,約 1 か月後に 69 %の例で停止が得られた 299).この報告では, ベプリジル単独で無効であった一部の症例にアプリンジ パイラルリエントリーを停止に導く作用 308)などが,実験 以上のエビデンスから,臨床上有意な器質的心疾患を認 めない例の持続性心房細動に対する薬理学的除細動には, ベプリジルを推奨した(図 14) .ベプリジルは通常 100 mg/day から経口投与を始め,QT 延長に注意しながら可 能ならば 200 mg/day まで増量する.心房細動中の QT 時 間の測定はしばしば困難なことが多く,過小評価しがちで ある.12 誘導心電図を記録し T 波を明瞭に認識できる誘 導のうち,最も QT 時間が長く計測される誘導を選び,し かも先行する RR 間隔が最も長い心拍の QT が過剰に延長 していないことを確認する必要がある 309).低 K 血症や高 度徐脈のある例では使用を控えるべきである. アプリンジンはベプリジルの効果を補強するほか 299), 単独でも長期投与により持続性心房細動を停止させる効 果があり,1 年以上持続した心房細動 20 例にアプリンジ 1 か月∼ 1 年後に 9 例(45 ン 60 mg/day を投与したところ, %)で洞調律の復帰が得られた 310).アプリンジンは不活 性化された Na チャネルに親和性を有し,解離時定数も中 等度に長い薬剤であるが,同種の薬剤が膜電位の比較的浅 ンを併用した結果,除細動率の上昇を認めており,このア い心房筋において心室筋と比較して強い頻度依存性ブ プローチも試みる価値がある.アプリンジンに限らず他の ロックをひき起こすことが知られており,心房選択的効果 Ic 群薬との併用によっても除細動率を高められる 300,301). を発揮する可能性がある 311).アプリンジンはほとんどが リジルを投与し,平均 2.1 か月で 112 例中 65 例(58 %) るが,第一選択として推奨するだけのエビデンスはない. Nakazato らも平均 5 か月持続している心房細動例にベプ に停止を得ている . 302) さらに日本で行われた多施設共同試験 J-BAF 303)では, 7 日以上 1 年未満持続する心房細動 92 例をプラセボ,ベ 40 プリジル 100 mg/day,200 mg/day の 3 群に分けて 3 か月 肝代謝を受けることから腎機能障害例への適用もありう 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) 作が初回の場合や頻度がきわめて少ない場合などには,必 4.2 ずしも再発予防のための抗不整脈薬治療を必要としない. 心房細動の再発予防 薬物治療が始められるのは発作が頻回に繰り返される場 合である.有症候性の再発性心房細動で薬剤抵抗性の場合 クラス I ・強い自覚症状を伴う発作性心房細動への抗不整脈薬の 投与. レベル A 4.2.1 ・臨床上有意な器質的心疾患を認めない例の,再発する 有症候性心房細動への Na チャネル遮断薬* の使用. レベル A ・心機能低下あるいは肥大型心筋症に伴う心房細動への アミオダロン投与. レベル B ・持続性心房細動の停止に有効であった薬剤による再発 防止. レベル C ・心機能低下を伴わない器質的心疾患例(肥大型心筋症 を 除 く ) へ の ア ミ オ ダ ロ ン や ソ タ ロ ー ル の 投 与. レベル B ・無∼軽症候性の再発性心房細動への Na チャネル遮断 薬*投与. レベル C ・心房細動に心房粗動を合併する例への強力 Na チャネ ル遮断薬*投与. レベル C ・初発,アルコール性,または開胸手術後の心房細動へ の再発予防としての抗不整脈薬投与(β 遮断薬を除 く). レベル C ・臨床上有意な器質的心疾患を認めない例で,Na チャ ネル遮断薬*に抵抗性の発作性心房細動へのアミオダ ロンの経口投与. クラス III レベル B ガーとして重要な肺静脈由来の心房興奮は,しばしば交感 神経賦活に伴って発生することから,β 遮断薬が奏効す 房筋活動電位持続時間の短縮が関わっているが,たとえば 迷走神経賦活に伴う IK ACh の増加は,しばしば夜間や食後 の心房細動発症の主因と考えられ,M 2 受容体拮抗作用の ある薬剤が奏効することがある.しかし,これら自律神経 活動への修飾を介さずに心房細動を停止させるには Na 整脈薬投与. レベル C ・臨床上有意な器質的心疾患を有する例への強力 Na チャネル遮断薬*投与. レベル C ・抗不整脈薬投与下で再発を繰り返し,症状や持続時間 などの改善がみられない例への抗不整脈薬の継続投 レベル C ・Brugada 症候群例に合併する心房細動への Na チャネ ル遮断薬*投与. レベル C ピルシカイニドによる長期再発予防に関しては,小松ら がとくに日中型発作性心房細動において 12 か月で 53.8 %の非再発率であったと報告している 312).心房細動の持 続が 48 時間未満であれば,ピルシカイニドとシベンゾリ ンのあいだに除細動後の洞調律維持効果の差を認めな かったが,リモデリングにより Na チャネルがダウンレ ギュレーションをきたしていると想定される 48 時間以上 持続した心房細動に対しては,シベンゾリンによる維持効 果がより高く,そのほかのチャネルへの効果を反映した可 能性がある 313).プロパフェノンが日中型の心房細動に有 効であるのに対し,シベンゾリンは夜間型の心房細動の持 ・徐脈頻脈症候群(ペースメーカ未植込み例)への抗不 与. このような例の心房細動の発生や自然停止の背景には, 自律神経活動の日内変化の関与が大きい.心房細動のトリ チャネル遮断薬の効果が高い(図 15) . クラス IIb 臨床上有意な器質的心疾患を認めない心房細動 ることがある.他方,心房細動の維持には広範囲に及ぶ心 クラス IIa にはカテーテルアブレーションも考慮される. ・QT 延長症候群に合併する心房細動例への K チャネル 遮断作用を有する抗不整脈薬投与. レベル C *:ピルシカイニド, シベンゾリン,プロパフェノン,ジソ ピラミド, フレカイニド. 続時間をピルシカイニドやプロパフェノンよりも短縮し た 314). フレカイニドやプロパフェノンの効果については海外 の成績ですでに証明されている 315).わが国で行われた多 施設二重盲検試験でも,フレカイニド 200mg/day 投与で 1 か月間の発作性心房細動の非再発率が 39.4 %と,プラ セボの 3.1 %に比較して有意に高かった 316).持続性心房 細動の電気的除細動後のフレカイニドによる再発予防効 果については,4 週間の短期投与と 6 か月の長期投与に無 作為に分けて,最初の再発あるいは死亡までの時間を追跡 比較したドイツの多施設研究がある 317).いずれの投与法 も無投薬群よりも有効であったが,短期で投与を中止した 群のほうが長期投与群より再発が多かったことから,1 か 月の洞調律維持によるリモデリングプロセスの逆転がそ の後の再発を減らすとの期待はかなわなかった.しかし, 臨床上有意な器質的心疾患を認めない例で,心房細動発 短期投与群でも 6 か月後の時点で長期投与群の 8 割程度 41 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) アップストリーム改善 あり 心房細動 再発予防 器質的心疾患 肥大心 不全心 虚血心 なし アミオダロン *2 ソタロール *2 アブレーション 強力Na blocker *1 ピルシカイニド シベンゾリン プロパフェノン ジソピラミド フレカイニド 図 15 心房細動の再発予防 点線は考慮を要する部分.Na blocker:Na チャネル遮断薬. *1:Na チャネル遮断薬以外に,持続性心房細動の除細動がベプリジルで成功した場合には同剤を再発予防に使用することもある.ア ミオダロンやソタロールも除細動後の持続性心房細動の再発予防に有効なことがある. *2:アミオダロンは肥大型心筋症か心不全に伴う心房細動以外の例には保険適応が認められていない.ソタロールは虚血性心疾患に伴 う心房細動の再発予防に効果を示すが,保険適応は認められていない.またベプリジルやアプリンジンが心機能低下例において有 効とする報告もある. の効果が維持され,QOL は同等であったことから,症例 によっては短期療法も有用であることが示唆された.さら 表 11 臨床上有意な器質的心疾患を認めない例に対する 治療薬とその投与法 に長期の平均 3.4 年の追跡を行った調査によれば,突然死 経口1日量 投与法 静注投与法 や催不整脈作用を認めた例も報告されている 318).再発予 ピルシカイニド 150mg 分3 1mg/kg/10min 防はしばしば長期的な維持療法となるため,患者の年齢や シベンゾリン 300mg 分3 腎機能,肝機能などを考慮して薬剤を選択し,投与量を加 1.4mg/kg/2 ∼ 5min プロパフェノン 450mg 分3 ̶ ジソピラミド 300mg 分 2(R*),3 1 ∼ 2mg/kg/5min 200mg 分2 1∼2mg/kg/10min 減する必要がある(表 11) .また安易に長期投与を続ける ことには慎重であるべきである. このほかアプリンジンによる心房細動再発予防効果に 投与開始後, ついては, 日本で行われた SMART Study でも, 洞調律が 15 日以上持続した例に限れば,わずかにプラセ *:リスモダン R(徐放錠)の場合. Ⓡ ている 304).一方,Shiga らはベプリジルを投与していても ボ群よりも高いというレベルであった( p =0.0414)319). 5 年間で 23.5 %の例が発作性あるいは持続性心房細動か ドとのあいだに差がないが,前者のほうが下痢などの副作 発予防効果は限定的と考えられる 321).除細動目的でベプ 用のために中止せざるをえない例が多い 320). リジルとアプリンジンの併用効果が示唆されたが,再発予 キニジンについては長期的な再発予防効果はフレカイニ ベプリジルの再発予防効果については,Nakazato らが 薬理学的および電気的除細動に成功した合計 86 例中 70 例(81 %)で,洞調律が平均 18 か月の追跡期間中維持さ れたことを報告しており,停止効果と再発予防効果に良好 な関連性が認められている .アミオダロンの再発予防 302) ら永続性心房細動に移行したと報告しており,長期的な再 防目的でも有効との少数例の報告がある 322). アミオダロンの効果は広く欧米で認められており,さま ざまな基礎疾患を有する例だけでなく,治療抵抗性であれ ば臨床上有意な器質的心疾患を認めない例にも使用され ている.カナダで行われた CTAF Trial(約半数が持続性 効果との比較においても,彼らはアミオダロン群では平均 心房細動)では,心房細動除細動後のプロパフェノンある されたのに対し,ベプリジル群では平均 15.6 か月の追跡 対し,アミオダロンでは 69 %と有意に高かった 323). 14.7 か月の追跡で 20 例中 10 例(50 %)が洞調律を維持 で 20 例中 15 例(75 %)が洞調律を維持できたと報告し 42 フレカイニド いはソタロールによる洞調律維持率が 39 %であったのに AFFIRM Trial(約 70 %が持続性心房細動)でも,I 群薬 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) を服用した群の 1 年後の洞調律維持率は 23 %,ソタロー ルの場合は 34 ∼ 38 %であったのに対し,アミオダロン服 用群では 60 ∼ 62 %と高かった .一方,持続が 72 時間 324) を超える心房細動例だけを対象として,薬理学的あるいは 電気的除細動後の追跡を試みた SAFE-T Trial では,1 年 後の洞調律維持率がプラセボ群では 13 %であったのに対 し,アミオダロン群では 52 %と高く,ソタロール群では 32 %とプラセボ群より高いもののアミオダロン群よりも 低かった 298). のドフェチリドかプラセボのいずれかを投与して追跡し た DIAMOND Study では,前者の 59 %,後者の 34 %が 洞調律に復し,それぞれ 79 %と 42 %で 1 年間洞調律が維 ,とくに前者の再入院率が低かった 持され( p < 0.001) .わが国ではドフェチリドは使用できない. 329) Ia 群以外の薬剤で,K チャネル遮断作用を持つのはアミ オダロン,ソタロール,ベプリジルなどに限られるが,心 不全例や肥大型心筋症例へのアミオダロン(経口)と持 続性心房細動へのベプリジル以外には,心房細動に対する 保険適応が認められていない.このなかでエビデンスが蓄 4.2.2 基礎疾患を有する心房細動 積されている薬剤はアミオダロンであり,これを推奨薬と 肥大心,不全心,虚血心といった背景が存在する場合に は,心房細動の出現に伴う症状や血行動態への影響が大き く,その再発予防はより重要である.その一方で,抗不整 脈薬,とくに Na チャネル遮断薬による再発予防効果は低 く,むしろ心室に対する催不整脈作用や陰性変力作用を示 しやすくなる点が問題となる.ここでいう肥大心とは心電 した(図 15) . 心房細動を合併した心不全 51 例に対しアミオダロンに よる除細動を試みた研究では,16 例(31 %)に洞調律復 .さらにこのアミオ 帰をもたらした(プラセボでは 8 %) ダロンで除細動された例のほうが,不成功例よりも予後良 好であった 330).心房細動を合併した慢性心不全 1376 例で, 図上 ST 変化を伴った左室肥大を,不全心とは左室駆出率 心血管死を一次エンドポイントとして洞調律維持と心拍 か虚血が繰り返し出現する病態を念頭に置いているが,そ 跡 1 年後の時点で前者の 82 %でアミオダロンが使われて 40 %以下の収縮不全を,虚血心とは梗塞をすでに認める の他の器質的心疾患例についてもあてはまることが多い. 一般にこのような器質的心疾患例では,心室筋の伝導時 間や再分極時間が延長しており,そこに強力な Na チャネ ル遮断薬が加わると,心室内伝導遅延が強まり(QRS 波 幅の増大) ,心室内リエントリーを招き,ときに正弦波様 心室頻拍を誘発する危険がある.また Na チャネル遮断薬 数調節の 2 治療群を比較検討した AF-CHF Trial では,追 いた.平均 37 か月の追跡の結果,両群のあいだで死亡率 に有意差を認めなかったものの,受診時の心電図検査で洞 調律が記録されたのは,心拍数調節群では 30 ∼ 41 %にと どまったのに対し,洞調律維持群では当初 46 %であった のが,3 週後に 67 %,4 か月後には 83 %にまで増加し,ア ミオダロンの再発予防効果を実証した 331).それでも洞調 の陰性変力作用によって心不全が悪化することもある.一 律維持群の 58 %は追跡期間中に少なくとも 1 度の再発を 活動電位持続時間(QT 時間)を延長し torsade de pointes おもに心不全悪化のために洞調律維持への方針変換を余 高まる. 律維持が困難なために心拍数調節に移行した.AF-CHF 方,K チャネル遮断作用を有する薬剤が加わると,心室の を誘発する危険性があり,そのリスクは病的心では,より そこで基礎疾患のある例では,まずその原因を改善する 治療(アップストリーム治療)が施されるべきであること はいうまでもない.虚血心では虚血の改善が最優先される が,肥大心や不全心では ACE 阻害薬や ARB , 59,125,325,326) あるいは β 遮断薬などの使用がまず検討されなければな らない 327). 器質的心疾患,とくに肥大心,不全心,虚血心に伴う心 房細動の標的チャネルについては,十分に解明されている とはいえない.しかし,基礎実験によれば,不全心に伴う 心房では線維化が進行していることが多く,そこに生じる 経験していた.またこの試験では心拍数調節群の 10 %が, 儀なくされたが,洞調律維持群でも 21 %が,おもに洞調 Trial では 1/3 の例は発作性心房細動を有していたが,心 不全に持続性心房細動が合併した例だけを対象とした CAFÉ-II Study では,アミオダロンによって 66 %で 1 年 後も洞調律を維持でき,心拍数調節よりも QOL や左室機 能が改善した 332). わが国でも心房細動を伴う心不全 108 例について,200 mg/day という比較的低用量のアミオダロンの効果を調べ た Shiga らの報告によると,投与開始 1 か月後に洞調律で あった 82 例の洞調律維持率が 1 年後 68 %,3 年後 55 %, 5 年後 47 %であった 333).再発予防効果は発作性心房細動 心房細動はしばしばマクロリエントリーを示し,高頻度刺 例,左房径が 45mm 未満例でより高かった.16 %で副作 果が高い 328).心不全あるいは心筋梗塞で入院し,心房細 が維持できた例では,左室駆出率の改善と脳性ナトリウム 激による心房細動モデルと比べて K チャネル遮断薬の効 動あるいは心房粗動であった 506 例に K チャネル遮断薬 用のために中止を余儀なくされた.アミオダロンで洞調律 利尿ペプチド(brain natriuretic peptide:BNP)の減少が 43 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) 認められる 334). 一方,アミオダロンによる一次予防効果の報告もある. るソタロールの有用性が示唆されている 298). 器質的心疾患例に対するベプリジルの作用については NYHA II/III 度で左室駆出率 35 %未満の心不全症例の予 十分な知見が得られているとはいえないが,Ca チャネル の 3 群で比較した SCD-HeFT では,当初 2328 例が洞調 としての作用を示すことも知られている 338).平均左室駆 ICD 群で 15 %の新規心房細動の発生が認められたが, 効果を検討した Nakazato の成績では,持続性心房細動 17 後をプラセボ,アミオダロン,植込み型除細動器(ICD) 律であった 335).45.5 か月の追跡期間にプラセボ群で 12 %, アミオダロン群では 8 %と有意に抑制されていた ( p =0.019,p =0.001) .また ICD の植込まれた 4112 例を 対象とした OPTIC Study では,β 遮断薬単独では年間 15.4 %の不適切作動があったのに対し,アミオダロン投 与群では 3.3 %( p < 0.006)と有意に低く抑制され,ICD 例におけるアミオダロンの有用性も示唆された 336).ちな みにこの試験でのソタロール群の不適切作動は 9.4 %で 遮断作用がある一方で Ca sensitizer(Ca 感受性増強薬) 出率 32 %の左室機能低下例 22 例におけるベプリジルの 例中 9 例(53 %)で停止が得られ,そのうち 6 例(75 %) で 20 か月後も洞調律が維持できた 339).発作性心房細動 5 例中 4 例 (80 %) で 14.9 か月後も再発が抑制できた.また, Na チャネル遮断薬のなかでもアプリンジンは陰性変力作 用の少ない薬剤として知られ,器質的心疾患例や心機能低 下例で心不全を悪化させることなく心房細動発作を抑制 したとする報告がある 340,341). あった. しかし,アミオダロンには重篤な肺合併症を始め,肝臓, 除細動,再発予防に抗不整脈薬を選択する際には,抗凝 固療法の徹底,心拍数調節治療との比較,さらにはアブ 甲状腺,眼,皮膚など,さまざまな心外性副作用があり,長 レーションや電気的除細動など非薬物療法の考慮が重要 期にわたって全身の管理を怠らない配慮が求められる.さ である.本ガイドラインは決してこれを遵守しなければい プラセボ群よりも死亡率を増加させる可能性のあること 不整脈だけによって決まるものではなく,患者一人一人に らには NYHA III 度の重症心不全例では,アミオダロンが が SCD-HeFT で示されており 337),詳細は不明であるもの の,重症例に対する使用は慎重であるべきである.またア けないという性質のものではない.抗不整脈薬の使い方は よって,また同じ患者でもその時々によって変えられるべ きものである. ミオダロンは他剤との相互作用を及ぼしやすく,とくにジ 4.3 ギタリスやワルファリン,新規経口抗凝固薬などの効果を 抗不整脈薬単回経口投与法(pill-in-thepocket) 増強することに注意する. ソタロールとベプリジルについてはエビデンスの蓄積 がアミオダロンに比べて少なく,K チャネル遮断作用を有 していることからある程度の効果は期待できる.いずれも 徐拍化作用があり,IKr 抑制による QT 延長をさらに増強 する危険性があることから,torsade de pointes の発生に十 クラス I クラス IIa 心房細動を停止させる目的でピルシカイニド,フレカ イニド,プロパフェノン,またはシベンゾリンを単回 もと QT が延長している例も多く,利尿薬による低 K 血 で経口投与する(発症後まもない時期に,適切な用量 症や併用薬によって一過性に QT 延長の増強をみること いとの指摘もある.通常,少量から投与を始め,頻回に心 電図上 QT の測定を繰り返す姿勢が望まれる.また,ソタ ロールには β 遮断作用もあるため,虚血性心疾患に対し ては有利に働く一方,心機能低下例では心不全の増悪に注 意する必要もある.持続性心房細動例を対象とした SAFE-T Trial では 1 年間の再発予防が,虚血性心疾患が なければプラセボ群で 17 %,アミオダロン群で 66 %,ソ を服薬). レベル B クラス IIb なし. クラス III ・薬理学的除細動を目的としたジゴキシン,ソタロール の単回投与. レベル B :選ばれた症例とは,医師の監視下で同薬による頓服の効 果と安全性が確認されているもの. * “pill-in-the-pocket”とは,薬剤を持ち歩き,必要な状況 タロール群で 37 %に得られ,アミオダロンの効果が最も 下で患者自身の判断によりその薬剤を服用する方法であ 17 %,アミオダロン群で 60 %,ソタロール群で 50 %と, リセリン頓用など古くから利用されている.発作性不整脈 高かった.虚血性心疾患を持つ例に限ってはプラセボ群で 実薬 2 剤のあいだに有意差を認めず,虚血性心疾患におけ 44 ・選ばれた症例*で,すみやかに自然停止しない発作性 分注意を払う必要がある.とくに器質的心疾患例ではもと も少なくない.torsade de pointes が女性により発生しやす なし. る.このような服薬方法は,狭心症患者におけるニトログ (とくに発作性心房細動)では,いつ発症するかわからな 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) い不整脈発作に対し,発作予防のため長期間抗不整脈薬を 使用しなくてはならなくなる.予防的服薬が実際に効果を アップストリーム治療に有効な薬剤としては,ACE 阻 害薬,ARB,抗アルドステロン薬,HMG-CoA 還元酵素阻 示しているか否かは,Holter 心電図などで検証できる場合 害薬(スタチン) ,ω-3 不飽和脂肪酸などがあげられる. 断することになる.しかし,発作性不整脈は必ずしも同様 アップストリーム治療による心房細動の一次予防 もあるが,多くの場合は服薬後の自覚症状改善の有無で判 の頻度で発症するわけではなく,実際に不整脈発作がなく ても効果があったとは言い難い.そのため発作予防効果を 検証するためには,自覚症状のあるなしに関わらず,毎日, 心電図検査を施行し検証する方法が勧められる.また不整 脈発作が 1 か月間に 1 回あるかないかといった場合に,そ の不整脈発作を予防するには,仮に有効な薬剤であったと しても必要以上の薬剤を服用することになる.そこで不整 脈発症時に服用し効果と安全性を確認したうえで,患者自 身に携帯させ,必要時に患者自身の判断で頓服させる.こ の方法によれば,発症早期の薬剤使用を可能とし効果を高 めるだけでなく,夜間や外出先での不整脈発作に際しても 救急外来を受診することなく自己管理することも可能と なる.このような服薬方法を “pill-in-the-pocket”287)と呼ぶ. 使用する薬剤としては,経口投与後に消化管からの吸収 が良好で最高血中濃度到達時間が短く,頓用でも十分な有 効血中濃度が得られるものが望まれる.本治療を行うに は,まず心電図監視下に投与し,効果がありかつ顕著な洞 停止や伝導障害をみないこと,過度の QT 延長をみないこ と,Brugada 型心電図所見をみないことなど,あらかじめ 効果と安全性を確認しておくことが必要である.本法を利 用できる条件として,使用する薬剤の薬理学的特徴や,予 想どおりの効果がなくても不用意に追加服用しないこと などを理解できることが求められる. 単回経口投与する用量は,一般に安全性を考慮してピル シカイニドは 100 mg ,フレカイニド 100 mg 281) ,プ 342-344) ロパフェノン 150 mg 342,343),シベンゾリン 100 mg 284,285) を基準とし,高齢者などではさらなる減量を必要とする. ことにプロパフェノンを除くピルシカイニド,フレカイニ ド,シベンゾリンは腎排泄型の薬剤であり,腎機能低下例 クラス I クラス IIa なし. ・心不全や心機能低下例への,心房細動の新規発症予防 を目的とした ACE 阻害薬,ARB の投与. 防を目的とした ACE 阻害薬,ARB の投与. したスタチンの投与. クラス IIb を予防する,あるいは遅延させるアップストリーム治療に 発や慢性化を予防(二次予防)しうる可能性がある. ・心不全などの器質的心疾患合併例への,心房細動の新 規発症予防を目的としたスタチンの投与. クラス III レベル B ・心疾患を合併していない例への,心房細動の新規発症 予防を目的とした ACE 阻害薬,ARB,スタチンの投与. レベル C アップストリーム治療による心房細動の二次予防 クラス IIb ・再発予防のための ACE 阻害薬,ARB の投与. レベル B 5.1 ACE 阻害薬と ARB ACE 阻害薬と ARB は,アンジオテンシン II による心 房の線維化,肥大,ギャップ結合の脱結合,Ca ハンドリン グの障害,イオンチャネルの変化,酸化ストレス,炎症促 進などの催不整脈作用を抑制する.動物実験では,ACE 阻 害薬と ARB による心房の電気的・構造的リモデリングへ の明らかな予防効果が認められている 56,349,350). 一次予防 より,心房細動の新規発生を予防(一次予防)あるいは再 レベル B 5.1.1 高血圧,心不全,炎症などによる心房筋のリモデリング レベル B ・心臓外科手術後に,心房細動の新規発症予防を目的と ソタロール 347,348)の除細動効果は期待できない. アップストリーム治療 ・左室肥大を伴う高血圧例への,心房細動の新規発症予 での過剰投与の回避が必要である.ジギタリス 272,345,346), 5. レベル A 心不全を対象とした Val-HeFT 326)や CHARM 60) など の試験では,ACE 阻害薬と ARB が心房細動の新規発症リ スクを減少させた.メタ解析では心房細動の発症リスクを 30 ∼ 48 %減少させることが示された. 高血圧に左室肥大を合併した患者を対象とした LIFE Study 59) では,ロサルタンがアテノロールに比べ心房細動 の新規発症を 33 %減少させた.メタ解析では ACE 阻害薬, ARB は新規発症を 25 %減少させることが示された.さら に,VALUE Trial 58) や降圧薬を服用中の高血圧患者を対象 45 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) とした他の試験でも,Ca 拮抗薬や利尿薬に比べて ACE 阻 害薬や ARB が心房細動の新規発症リスクを有意に低下さ せることが示された . 351,352) 二次予防 電気的除細動後の心房細動の再発が,アミオダロン単独 よりも,ACE 阻害薬や ARB を併用したほうが有意に抑制 では, 353) 心血管疾患,糖尿病,左房拡大を基礎疾患とする発作性あ るいは最近除細動された持続性心房細動患者において,既 存治療(ACE 阻害薬や抗不整脈薬など)にバルサルタン を追加しても,1 年間の心房細動の再発予防効果は認めら ないことが示された. ある症例では,ACE 阻害薬や ARB は心房細動の新規発症 を抑制できるが,軽度の器質的心疾患例では心房細動の再 発を抑制しうるというエビデンスは乏しい. 5.2 HMG-CoA 還元酵素阻害薬(スタチン) 心房細動の発生には,炎症の重要性も指摘されている. とくに開心術後に心房細動の多いことが知られており,心 れなかった. 房細動患者の心房での炎症細胞浸潤や線維化の頻度が高 圧を合併する発作性心房細動患者を対象に,カンデサルタ 値上昇と心房細動の相関関係が検証され,CRP が心房細 わが国で実施された J-RHYTHM II Study124) では,高血 いという報告や,C 反応性蛋白(C-reactive protein:CRP) ンの発作性心房細動に対する影響をアムロジピンと比較 動発症の予測因子となる可能性を示唆するメタ解析も報 した.血圧はアムロジピン群のほうがカンデサルタン群よ 告された.また,酸化ストレス,血管内皮機能障害,心房 り有意に低かった.一次評価項目の心房細動発作の発生日 内皮機能障害との関連が報告された.スタチンの心房細動 数は両群とも減少したが,両群間に有意差はなかった.症 に対する予防効果として,抗炎症および抗酸化作用や,内 候性心房細動についても両群とも減少したが,両群間に有 皮機能障害の抑制作用などがあげられる.動物実験では, 意差は認められなかった.発作性心房細動の慢性化が認め スタチンが電気的・構造的リモデリングを抑制し,心房細 られた症例は,カンデサルタン群のほうがアムロジピン群 動の誘発性を低下することが示されている 356,357). より低率であったが,両群間に有意差はなかった.心房細 動のアップストリーム治療としては,降圧薬の種類よりも 十分な降圧が重要と考えられる. ANTIPAF Trial 354)は,高血圧合併は 50 %弱,左室駆出 率は 63 %程度と,比較的軽症の発作性心房細動を対象に, オルメサルタン群とプラセボ群で比較した.1 年間に発作 5.2.1 一次予防 左室機能低下や心不全例において,スタチンが心房細動 の新規発生を 20 ∼ 50 %減少させたという報告 357)がある が,高血圧,冠動脈疾患,急性冠症候群では一定の見解は 得られていない.ARMYDA-3 Trial 358)などの後ろ向き試 性心房細動が記録された日数は両群で差がなかった.心房 験では,スタチンにより術後の心房細動が減少することが 細動の再発率や持続性心房細動への進行も両群は同等 示されている. だった.そのほか,入院や治療を必要とする外来受診の頻 度にも違いはなかった.9 項目の二次評価項目のうち,唯 5.2.2 二次予防 一有意差が認められたのが抗不整脈薬アミオダロン投薬 スタチンは持続性心房細動よりも発作性心房細動の予 までの時間で,オルメサルタン群のほうがアミオダロンな 防により有効であることが報告されている 357).ランダム しで長期に治療することが可能であった.なお,急性心不 化試験では,電気的除細動後のスタチンの有用性は認めら 全や狭心症,死亡などの重度の心血管イベントは両群で同 れなかった 359).スタチンの有用性に関するメタ解析では 等だった. 一定の見解は得られていない 360,361).このように術後の心 心房細動患者を対象に「心房細動患者の脳心血管イベン いうエビデンスは乏しい. ACTIVE I Trial 355)では,収縮期血圧 110mmHg 以上の ト」を ARB が抑制しうるかどうかが検討された.一次評 価項目の「脳卒中+心筋梗塞+血管死」には差はなかっ たが,二次評価項目では「心不全による入院」で有意差が 認められ,イルベサルタンにより 14 %低下した.また,イ ルベサルタンは「脳卒中+ TIA +非中枢神経性全身性塞 栓症」を 13 %減少させた.本研究の結果からは,心血管 46 にイルベサルタンを加えても血栓性イベントを抑制でき 以上から,左室機能低下や左室肥大などの基礎心疾患が 5.1.2 GISSI-AF Trial されたという報告がある.しかし, イベントのリスクを有する心房細動患者では,既存の治療 房細動を除いては,スタチンには心房細動を予防しうると 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) 本法も巣状興奮誘発の困難さや,合併症として肺静脈狭窄 6. の出現など,種々の問題点が明らかとなった.また,異所 非薬物療法 性の興奮発生部位が肺静脈だけにとどまらず,左房後壁, 上大静脈,Marshall 静脈,分界稜,心房中隔,冠静脈洞など, 多岐にわたることが明らかになり 364),個々の起源を標的 とするアブレーションから,肺静脈と左房との電気的結合 6.1 非薬物療法の種類とその意義 を遮断する肺静脈隔離へと変わった.まず肺静脈内に円周 状カテーテル(LASSO〈ジョンソン・エンド・ジョンソ 6.1.1 ン社〉など)を挿入して,それぞれの肺静脈入口部で電位 カテーテルアブレーション を指標にしながら左房と肺静脈との電気的結合を離断す a. 心房へのカテーテルアブレーション クラス I ・高度の左房拡大や高度の左室機能低下を認めず,かつ 重症肺疾患のない薬物治療抵抗性で有症候性の発作性 心房細動に,年間 50 例以上の心房細動アブレーショ ンを実施している施設で行われる場合. クラス IIa ・薬物治療抵抗性で有症候性の発作性および持続性心房 細動. ・パイロットや公共交通機関の運転手など,職業上制限 となる場合. ・薬物治療が有効であるが,心房細動アブレーション治 療を希望する場合. ・開胸的外科手術に付随して行われるメイズ手術. クラス IIb ・高度の左房拡大や高度の左室機能低下を認める,薬物 治療抵抗性で有症候性の発作性および持続性心房細 動. ・無症状あるいは QOL の著しい低下を伴わない,発作 性および持続性心房細動. クラス III ・左房内血栓が疑われる場合. ・抗凝固療法が禁忌の場合. 1990 年ごろから,Cox らは心房細動の機序がリエント リーに由来するという仮説に基づいて外科的なメイズ手 る肺静脈個別隔離法(segmental PV isolation)が施行さ れた 79).しかし,この方法では,20 %前後の頻度で軽∼中 等度の肺静脈狭窄を合併することが報告された 365).また, 肺静脈周囲心房筋(antrum)も心房細動の発生および維 持に関与していることが報告されたことから 366),より左 房側で肺静脈入口部周囲を取り囲む形で通電を加えて,電 気的結合を遮断する解剖学的肺静脈隔離が行われるよう になった.この解剖学的隔離は,欧米では 3 次元ナビゲー ションシステムの CARTO3 システム(ジョンソン・エン ド・ジョンソン社)などを用いて,上下肺静脈を一括して 隔離する肺静脈環状隔離法(circumferential PV isolation) が主流となっている 80,367,368). しかしわが国では,それらの機器を用いずに,透視下で 左房後壁の焼灼ラインを作製し,電位を指標として肺静脈 前壁と左房間の電気的結合を離断する同側肺静脈拡大隔 離法(extensive encircling PV ablation)が多くの施設で 行われている 369).また左房内の complexed fractionated atrial electrogram(CFAE)370)や自律神経節叢を標的とす る通電法 371),左右肺静脈への通電ラインを結ぶ線状焼灼 ,僧帽弁峡部への線状焼灼も追加的手法として施行さ 372) れている. 発作性や持続性心房細動では,これら解剖学的隔離が成 功しても,数か月以内に 10 ∼ 50 %の例に心房細動の再発 や心房頻拍の出現が認められるため 79),根治には複数回の アブレーションを必要とすることが少なくない.発作性心 房細動を抑制できる確率は,肺静脈環状隔離法,同側肺静 術を開始したが 362),1994 年ごろからはメイズ手術に準じ 脈拡大隔離法,肺静脈個別隔離法のいずれにおいても,初 うになった 363).しかし,本法は実用性と安全性に問題が 90 %と報告され 373-376),その遠隔成績も良好である 377). た線状焼灼がカテーテルアブレーションで試みられるよ あり一般化するに至らなかった. その後,心房細動のトリガーの多くが肺静脈入口部周辺 回 の ア ブ レ ー シ ョ ン で は 50 ∼ 80 %,2 回 目 で 80 ∼ また,薬物治療とアブレーション治療を比較した前向き 試験では,アブレーションの優位性が報告されている 377.一方,持続性心房細動は発作性心房細動よりも根治が で発生する巣状興奮であり,この起源を標的とした通電で 379) り報告され,心房細動起源に対するアブレーション(focal が,複数回の肺静脈環状隔離法で 60 ∼ 75 %の成功率が報 心房細動が消失することが 1998 年に Haïssaguerre らによ がにわかに注目を集めるようになった 70).しかし, ablation) 困難で,種々の追加的手法が必要とされる場合が多い 告されている 368,380).また,低心機能の心房細動例でも, 47 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) アブレーションによる洞調律維持により,左心機能,運動 耐容能が改善したと報告されている . 381) 上記の成功率は心房細動の予防薬投与下での成功率で あるが,予防薬を投与しない場合は 10 ∼ 20 %ほど成功率 ないが,弁膜症や虚血性心疾患の手術時に追加的に行われ ており,その洞調律維持率は 70 ∼ 90 %と報告されている .ただ本法は開胸が必要で,手術による死亡率も 1 % 397,398) .また,外来受診時の 近くに上がるという欠点があるため,近年ではオフポンプ 心電図や自覚症状で心房細動がとらえられなかったとし や胸腔鏡下でアブレーションを行うといった低侵襲の手 ても,心房細動が消失しているとは必ずしも言えない.ア 法が検討されている 399,400).抗不整脈薬が無効で左房がよ が低下することが知られている 376) ブレーション成功例に発作時心電図や伝送型心電図を継 続的に記録すると,約 1/3 の例で無症状の心房細動がとら り拡大した,カテーテルアブレーション不成功例におい て,再カテーテルアブレーションと低侵襲の外科的アブ えられるとの報告がある 382,383). レーションとを比較した試験では,外科的アブレーション 塞や心タンポナーデといった重大な合併症が生じるが,近 テルアブレーションより高い 401).今後,これらの成績が 心房細動のアブレーションでは,2 ∼ 6 %の頻度で脳梗 年では前述の肺静脈狭窄・閉塞のほかに,左房 - 食道瘻や 横隔神経障害,迷走神経障害も報告されている 384-389).と くに,左房 - 食道瘻はその発生頻度が少ないとはいえ,ほ が洞調律維持効果に優れているが,合併症発生率はカテー 外科的メイズ手術や内科的なカテーテルアブレーション に匹敵し,より安全に施行できるようになれば,代替治療 として容認される可能性が考えられる. とんどが致死的であるため注意を要する. 6.1.3 b. 房室結節アブレーション ペースメーカ治療 左房でのアブレーションが困難または不成功で,かつ心 洞不全症候群での心房細動の予防効果については,心室 室拍数が多いかまたは不整脈時の症状が強い,薬剤抵抗性 ペーシングよりも心房ペーシングまたは心房心室順次 の心房細動例では,房室結節へのアブレーションを施行す ペーシングが優れていることが知られている 402).しかし, る場合がある.房室結節に通電を行うと,心房細動は持続 心房細動を予防または停止させる種々のペーシング手法 するものの,房室ブロックのために心室拍数が一定にな またはアルゴリズムには限界があり,徐脈を伴わない心房 り,多くの例で症状や QOL が改善する 390,391).しかし,房 細動例へのペースメーカ治療に関しては信頼できるデー 室結節アブレーションは不可逆的で,恒久的なペースメー タがない.また植込み型心房除細動器も,通電時の疼痛な カ植込みが必須であるうえ,抗凝固薬を継続して服用する どの不快症状のために適応が限定される. 必要があり,かつまれに torsade de pointes や心室細動に よる突然死が報告されている 392).また,基礎心疾患を有 する例や低心機能例に右室ペーシングを行うと,心室の同 期不全をもたらし心機能がさらに低下する可能性もある .このため房室結節アブレーションは左室機能が正 6.2 非薬物治療の適応 心房細動のアブレーションでは,卓越した技術だけでな 393,394) く,患者選択,合併症管理,術後の薬物治療など種々の知 常,または可逆的な左室機能障害を有する心房細動例に施 識が要求される.また,上室頻拍のアブレーションに比べ, 行するのが最も望ましく,それらには右室ペースメーカを 重大な合併症が生じる危険性が高いため,患者が受ける利 植込んでよいが,それ以外の例や低心機能例では,本法の 益と不利益を十分に説明したうえで適応を決定する必要 適応を十分に検討したうえで,両室ペースメーカ植込みを がある 403).一方,心房細動の再発や脳梗塞発症,心房機能 前提としてアブレーションを施行するのがよいと思われ に関する長期予後はいまだ明らかでない.このため,アブ る. レーションに関してきわめて熟練度の高い施設では,症状 6.1.2 外科的アブレーション 前述のように,Cox らは,心房細動の発生と維持の主要 を伴う発作性心房細動に対して非薬物療法を第一選択と してよいが,そうではない施設では適応を厳格にする必要 がある.また,持続性心房細動に関するアブレーションは, な機序がリエントリーにあるという仮説に基づいて,心房 一般的には第一選択の治療法として認められていないの を迷路状に切開,縫合して電気的障壁を作製し,心房細動 が現状である. を維持するために必要な長径 3cm 以上の wavelet をでき ないようにするメイズ手術を開発した.メイズ手術はその 後の修正を経て 3 種類の方法が報告され,冷凍凝固術など を用いる変法も種々の施設で試みられている 362,395-397).現 48 在メイズ手術がそれ単独で施行されることはきわめて少 これまでのアブレーション治療のエビデンスの積み重 ねに鑑み,2011 年 ACC/AHA/HRS のガイドライン改訂 版 267),2012 年 ESC 心房細動治療に関するガイドライン の改訂版 119),および日本循環器学会『不整脈の非薬物治 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) 療ガイドライン(2011 年改訂版) 』では,薬剤無効で有症 候性の発作性心房細動については,経験のある施設で行う 場合に クラス I とされた .このため,発作性心房細動に 404) ン継続例に比べ,中止例のほうが術中の血栓塞栓症が多 かったとする報告から,現在,わが国の 60%程度の施設で はワルファリン継続投与下でアブレーションが行われて 関しては,有症状で,抗不整脈薬でコントロール不能で, いる 406,407).直接トロンビン阻害薬についてはエビデンス がない 75 歳以下の例については,年間 50 例以上の心房細 はなかったとの報告がある 408-410).一般的には,効果発現 左室機能が保たれ,左房径が 45mm 以下で,左房内に血栓 とす がすみやかで半減期が短いという薬理学的特性から,アブ とする.これは各施設の技量の程度に応じ られている.ただし,抗凝固作用が消失する期間が発生す 動アブレーションを実施している施設では クラス I る.50 例未満の施設での上記基準を満たす発作性心房細 動では クラス IIa に乏しいが,出血性合併症が多かったとする報告とそうで てその適応枠を縮小,または拡大するのがよいと思われる レーション当日だけ,ないし前日から中止する方法が用い るため,必要に応じてヘパリンの併用が望ましい 409). ためである.再発性の持続性心房細動では,薬剤による洞 心房細動に対するアブレーション後の抗凝固療法に関 調律維持治療に加えて心拍数調節治療が無効で,かつ症状 しては,アブレーション後の長期予後がいまだ不明である の強い場合が適応となる.また,心拍数調節治療を施行し ことから,いつそれを中止すべきか明確ではない.また, ているにもかかわらず心機能の改善しない場合にも,アブ 無症候性の心房細動がかなりの頻度で存在することから, レーションを考慮してよい.薬物治療抵抗性で有症候性の 持続性心房細動は クラス IIa ,無症状あるいは QOL の著し い低下を伴わない発作性および持続性心房細動は クラス IIb とする. どのような症例に対しても,心房細動の病態,予後,治 療に関する適切な情報提供が同意取得の前提であること CHADS 2 スコア 2 点以上の例ではで抗凝固薬を中止しな いほうがよい 146).しかし,脳梗塞の危険因子を有しない 例や,脳梗塞の既往と年齢(65 歳超)以外の危険因子を 有する例で,アブレーション成功が明らかな場合は 3 ∼ 6 か月後に抗凝固薬を中止することが可能とする考えもあ る 384). はいうまでもない. 6.3 非薬物療法施行後の治療指針 心房細動のアブレーション後に小さなギャップが残存 して,完全な両方向性ブロックが形成されていなくても, 心拍数増加や Ic 群薬などにより両方向性の伝導ブロック が生じて,心房細動が生じにくくなる 405).また,いったん 心房細動が消失すると,電気的・構造的リモデリングの改 善のために,心房細動は再発しにくくなる.心房細動はア ブレーションを行うことでその発生が抑制されるが,抗不 整脈薬を追加することにより症状がさらに軽快する.この ためアブレーション後,数か月は手術の成功,不成功に関 係なく,Ic 群薬やアミオダロンなどの III 群薬を投与する のがよいとする意見もある. 6.4 アブレーション周術期における抗血栓薬 の使用 心房細動それ自体が血栓塞栓症のリスクを有している こと,左房へ直接アプローチしカテーテルやシースの挿入 を行い,熱による凝固壊死を心内膜に発生させることか ら,術前 3 週間および術後 2 か月間の抗凝固療法が推奨さ れる.周術期の抗凝固薬としてはワルファリン,直接トロ ンビン阻害薬,FXa 阻害薬が使用されている.ワルファリ 49 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告) 付表 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版):班構成員の利益相反(COI)に関する開示 著者 雇用または 株 指導的地位 主 (民間企業) 謝金 原 稿 料 研究資金 提供 奨学(奨励)寄附金 / 寄附講座 班長: 井上 博 大塚製薬 第一三共 大日本住友製薬 日本ベーリンガーインゲルハイム バイエル薬品 日本ベーリンガーインゲルハイム 第一三共 田辺三菱製薬 大日本住友製薬 日本ベーリンガーインゲルハイム 班員: 新 博次 第一三共 日本ベーリンガーインゲルハイム バイエル薬品 大塚製薬 エーザイ 帝人ファーマ 班員: 奥村 謙 日本ベーリンガーインゲルハイム バイエル薬品 第一三共 ファイザー 田辺三菱製薬 ジョンソンエンドジョンソン 日本メドトロニック 班員: 鎌倉 史郎 日本ベーリンガーインゲルハイム バイエル薬品 班員: 熊谷 浩一郎 日本ベーリンガーインゲルハイム バイエル薬品 第一三共 田辺三菱製薬 MSD 班員: 是恒 之宏 日本ベーリンガーインゲルハイム バイエル薬品 第一三共 班員: 杉 薫 バイエル薬品 日本ベーリンガーインゲルハイム 班員: 三田村 秀雄 日本ベーリンガーインゲルハイム 第一三共 班員: 矢坂 正弘 日本ベーリンガーインゲルハイム バイエル薬品 ブリストル・マイヤーズスクイブ 大塚製薬 第一三共 班員: 山下 武志 日本ベーリンガーインゲルハイム ファイザー バイエル薬品 田辺三菱製薬 第一三共 エーザイ ブリストル・マイヤーズスクイブ 小野薬品工業 協力員: 里見 和浩 セント・ジュード・メディカル ジョンソン・エンド・ジョンソン 法人表記は省略. 50 特許 権使 用料 日本ベーリンガーインゲルハイム 第一三共 第一三共 日本ベーリンガーインゲルハイム サノフィアベンティス 持田製薬 第一三共 大日本住友製薬 ノバルティス 日本ベーリンガーインゲルハイム ファーマ 田辺三菱製薬 第一三共 その 他の 報酬 配偶者・一 親等内の親 族,または 収入・財産 を共有する 者について の申告 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版) 文献 1. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン. 心房細動治療(薬 物)ガイドライン. 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