GMP逸脱管理

GMP逸脱管理
│事例から学ぶ逸脱防止│
第
版
2
日本PDA製薬学会関西勉強会
著
GMP逸脱管理
─事例から学ぶ逸脱防止─
第2版
著
日本PDA製薬学会関西勉強会
執筆者一覧
日本 PDA 製薬学会 関西勉強会逸脱管理検討グループ(五十音順)
圓札 眞弓
加藤 昌靖
オー・ジー株式会社
元 武田薬品工業株式会社
竹澤 健一
田辺三菱製薬株式会社
中島 なつき
東和薬品株式会社
田中 広徳
中村 みさ子
藤澤 健
堀越 和夫
森 美保
MSD 株式会社
元 東レ株式会社
バイエル薬品株式会社
大鵬薬品工業株式会社
ナガセ医薬品株式会社
山岡 尚志
株式会社タック オフィス(国際薬事コンサルタント)
元 武田薬品工業株式会社
序
2005 年 4 月に施行された改正 GMP により,逸脱管理が医薬品の製造に
必須となってからほぼ 10 年になる。この間,ICH では Q カルテット(製剤
開発,品質リスクマネジメント,医薬品品質システム,原薬の開発と製造)
が出揃い,日本の PIC/S への加盟申請が承認されるなど GMP を取り巻く内
外の情勢は大きく変化している。
とりわけ一部改正施行通知(薬食監麻発 0830 第 1 号 平成 25 年 8 月 30
日)では,GMP 省令に PIC/S の GMP ガイドが一部取り込まれ,各医薬品
会社においては品質リスクマネジメントの活用,
「製品品質の照査」の実
施,最終製品以外についても参考品を保管すること,継続的プログラムに
従った安定性モニタリングの実施,原料等の供給者管理および Continued
Process Validation の考え方を取り入れた新バリデーション基準への対応
など,やるべきことが増大している。
しかしながら,逸脱管理の基本である,製造手順などからの逸脱は記録さ
れ,品質への影響が評価されるとともに是正措置/予防措置(CAPA)が取
られなければならないということに対しては何ら変わっていない。
すなわち
① 逸脱とは何か
② 逸脱はなぜ発生するのか
③ 逸脱を防止するためにはどうすればよいのか
④ 根本原因を究明するにはどうすればよいのか
⑤ 再発防止を確実にする CAPA とはどのような措置なのか
などの課題に対して取り組むことは,GMP の取り巻く状況が変わっても今
なお重要な位置づけにある。
日本 PDA 製薬学会 関西勉強会(KSG)は,日本 PDA 製薬学会の委員会
組織として GMP 関係のレギュレーションや最新技術およびトピックス性の
ある事項を 20 年以上にわたって研鑽している委員会である。この KSG 内に
「逸脱管理検討グループ」を改正 GMP 施行時期と同じ 2005 年 4 月に設立
し,前述の課題に関して検討してきた。
主な活動は実際に発生した逸脱を事例として取り上げ,逸脱原因の調査の
方法,逸脱の再発防止および類似逸脱の発生防止について検討し,そこから
得られた知識・情報などを広く発信することである。
逸脱はともすれば「会社の恥」としてとらえられ,その詳細な内容を知る
ことは困難である。2012 年 3 月に発行した初版では,実際に起こった逸脱
をベースにして,情報が入手できない,あるいは入手できても公表できない
部分を補いながら,工場の実務者向けにわかりやすい検討事例としてとり
まとめた。事例の多くはすでに PDA Journal of GMP and Validation in
2006 およびファームテクジャパン(2009 年 9 月号~ 2010 年
Japan 8
(1)
7 月号)に発表したものであるが,初版を発行するに当たってはその後の検
討成果も反映した。
今回発刊する第 2 版は,第 1 章総論で工程における品質リスクマネジメン
トの取り組み方をわかりやすく解説するとともに,第 2 章逸脱事例では初版
には掲載していない「包装工程における逸脱事例」も追加した。さらに製剤
工程での逸脱事例として「人はどういう状況下で間違いを起こすのか」とい
うヒューマンファクターに関する事例も追加した。
逸 脱 発 生 時 の 措 置 で あ る 根 本 原 因 の 究 明, 品 質 へ の 影 響 評 価 お よ び
CAPA にはさまざまな考え方があり正解は 1 つではない。第 2 版の発刊を機
に逸脱管理についての議論が沸き起こり,PIC/S 加盟下での「逸脱のマネジ
メント」に関する新たな考えや知見が出てくることを願っている。
最後に,本書の出版にあたり,執筆,編集,校正に多大なご尽力をいただ
いた日本 PDA 製薬学会 関西勉強会逸脱管理検討グループの委員ならびに
貴重な資料と助言をいただいたファーマサービスイコマ・稲津邦平先生なら
びに関西勉強会委員各位に,心から感謝の意を表する。なお,本書に関する
読者からのご意見やご指摘をいただくことは望外の幸せである。
2014 年 9 月
日本 PDA 製薬学会 関西勉強会 委員長
平原 茂人
(平原エンジニアリングサービス株式会社)
まえがき ─第 2 版の構成と改訂概要について─
構成については初版と同様,第 1 章総論,第 2 章逸脱事例,第 3 章逸脱に
関する法令等での規定とし,各章の主な改訂内容は次の点である。
▪第1章
・CAPA については,初版ではその意味と重要性についてのみ記載したが,
第 2 版では CAPA がいつ頃から査察項目となってきたのかという点につ
いても補足した。
・逸脱防止の活動の 1 つとして,工程の品質リスクマネジメント活動に紙
面を割き,逸脱の予防措置活動を具体的に解説した。なお,これは日本
PDA 製薬学会第 20 回年会(2013 年 12 月)にて発表した内容である。
▪第2章
・包装工程の逸脱事例(血液付着,印字なし)を追加し,さらに製剤工程の
逸脱事例にヒューマンファクターを取扱った事例を追加した。
・逸脱事例を工程順に並び替え,原薬に関する逸脱事例を第 1 節,製剤製造
工程における逸脱事例を第 2 節とするなど,読みやすいように並び替えた。
・試験用水の菌数逸脱についてのなぜなぜ分析表を見直し,さらに本文との
整合性を図った。
▪第3章
・欧州の GMP ガイドラインについて,改訂(案も含めて)内容を反映した
(PIC/S GMP ガイドも今後改訂され,欧州の GMP ガイドラインと整合さ
れるため)
。なお,第 3 章の和訳はできる限り通知等で発出されている日
本語を使用したが,一部には筆者らの拙訳も掲載している。原文および原
文入手先も併記したのであわせて活用していただきたい。
• CONTENTS •
第1章 総論… …………………………………………………………… 1
1 逸脱の定義……………………………………………………………… 1
2 応急措置,是正措置および予防措置の定義と CAPA……………… 2
3 逸脱の発生原因………………………………………………………… 5
4 逸脱発生時の処理フロー……………………………………………… 7
(1)逸脱内容の確認……………………………………………………… 8
(2)逸脱のレベル分け評価…………………………………………… 10
(3)応急措置…………………………………………………………… 11
(4)根本原因の調査・特定および製品の措置……………………… 11
(5)CAPA の立案と実施…………………………………………… 14
(6)CAPA の進捗管理またはトラッキング……………………… 15
(7)CAPA の評価…………………………………………………… 16
5 逸脱防止の活動……………………………………………………… 18
(1)CAPA の有効性評価による品質システム強化……………… 18
(2)スイスチーズモデルを考慮した逸脱防止……………………… 19
(3)失敗事例から学ぶ………………………………………………… 21
(4)ヒトの心の動きを配慮した CAPA の策定… ………………… 22
(5)逸脱防止に必要な作業者,管理者の役割……………………… 23
(6)逸脱防止の観点からのヒューマンエラー……………………… 24
(7)
予防措置活動,特に工程の QRM(品質リスクマネジメント)
活動について……………………………………………………… 28
a)工程分析………………………………………………………… 32
b)リスク抽出……………………………………………………… 33
c)リスク評価……………………………………………………… 37
d)対策の実施……………………………………………………… 39
e)リスクレビュー………………………………………………… 39
i
第2章 逸脱事例… …………………………………………………
43
第1節 原薬に関する逸脱事例…………………………………… 45
Ⅰ 原薬製造中の停電による反応温度の逸脱………………………… 45
1.検討事例…………………………………………………………… 45
2.解説………………………………………………………………… 48
Ⅱ 原薬製造中の撹拌機回転不足による温度逸脱…………………… 53
1.検討事例…………………………………………………………… 53
2.解説………………………………………………………………… 57
Ⅲ 原薬中間体移送中のポンプ故障…………………………………… 64
1.検討事例…………………………………………………………… 64
2.解説………………………………………………………………… 68
Ⅳ 原薬技術移管時における工程検査結果の逸脱…………………… 73
1.検討事例…………………………………………………………… 73
2.解説………………………………………………………………… 76
第2節 製剤製造工程における逸脱事例……………………… 80
Ⅰ 造粒機ボタン押し間違い…………………………………………… 80
1.検討事例…………………………………………………………… 80
2.解説………………………………………………………………… 85
Ⅱ 打錠中に黒点発生…………………………………………………… 90
1.検討事例…………………………………………………………… 90
2.解説………………………………………………………………… 94
Ⅲ リテスト日を過ぎた賦形剤の使用………………………………… 100
1.検討事例…………………………………………………………… 100
2.解説………………………………………………………………… 105
Ⅳ A 錠 20mg のロット混合…………………………………………… 108
1.検討事例…………………………………………………………… 108
2.解説………………………………………………………………… 116
Ⅴ 異種錠の混入………………………………………………………… 119
1.検討事例…………………………………………………………… 119
2.解説………………………………………………………………… 130
ii
第3節 包装工程の逸脱事例… …………………………………… 135
Ⅰ 印字なし品の出荷…………………………………………………… 135
1.検討事例…………………………………………………………… 135
2.解説………………………………………………………………… 142
Ⅱ 錠剤充填包装機フィーダーへの血液の付着……………………… 146
1.検討事例…………………………………………………………… 146
2.解説………………………………………………………………… 155
第4節 試験検査工程における逸脱事例……………………… 158
Ⅰ 製薬用水の菌数逸脱………………………………………………… 158
1.検討事例…………………………………………………………… 158
2.解説………………………………………………………………… 164
Ⅱ 安定性試験用保管庫湿度の逸脱…………………………………… 169
1.検討事例…………………………………………………………… 169
2.解説………………………………………………………………… 172
Ⅲ サンプル容器汚染による HPLC 異常ピークの出現……………… 176
1.検討事例…………………………………………………………… 176
2.解説………………………………………………………………… 182
Ⅳ エクセルの計算に起因する規格外試験結果(OOS)
…………… 188
1.検討事例…………………………………………………………… 188
2.解説………………………………………………………………… 191
第5節 その他の逸脱事例… ……………………………………… 196
Ⅰ 技術検討不足による打錠収率の逸脱……………………………… 196
1.検討事例…………………………………………………………… 196
2.解説………………………………………………………………… 198
Ⅱ 廃棄前校正の未実施………………………………………………… 204
1.検討事例…………………………………………………………… 204
2.解説………………………………………………………………… 207
Ⅲ 安定性試験結果の逸脱……………………………………………… 215
1.検討事例…………………………………………………………… 215
2.解説………………………………………………………………… 220
iii
第3章 逸脱に関する法令等での規定…
…………… 229
はじめに…………………………………………………………………… 229
1 日本…………………………………………………………………… 232
2 米国…………………………………………………………………… 233
3 欧州…………………………………………………………………… 236
4 ICH… ………………………………………………………………… 245
iv
第
1
1 逸脱の定義
章
総 論
1
逸脱の定義
逸脱について述べる前にまず逸脱を定義しておきたい。GMP 省令(厚生
労働省令第 179 号,2004 年 12 月 24 日付)の「第 15 条 逸脱の管理」では
次のように述べられている。
「製造業者等は製造手順等からの逸脱が生じた
場合においては,あらかじめ指定した者に手順書等に基づき,①逸脱の内容
を記録すること,②重大な逸脱が生じた場合においては逸脱による製品品質
への影響を評価し所要の措置を採ること,またその評価の結果および措置の
記録を作成し保管すること,さらに品質部門に対して文書により報告すると
ともに品質部門がそれを確認すること,③品質部門は確認した記録を作成し
保管するとともに製造管理者に適切に報告すること」など。しかし,逸脱の
定義はされていない。
一方,ICH Q7 では逸脱を承認された指示または設定された基準からの乖
離と定義している。筆者らは,逸脱事例を検討していく中で,ICH Q7 で述
べられた逸脱の定義が最も明確でしかも理解しやすいという見解に至った。
したがって,本書で述べる逸脱を「定められた作業手順,管理基準あるいは
試験規格等から乖離している状況なり状態」と定義する。
また,われわれは逸脱事象だけでなく異常事象についても議論を重ねてき
た。ここでいう異常事象は,逸脱の定義には正確にはあてはまらないが逸脱
に対する手順と同様に,原因を究明し是正措置/予防措置を行い,品質に与
える影響を評価,判断し適切な対応をとらねばならない事象である。すなわ
ち異常であっても,その重大さに応じて逸脱の場合と同じ措置をとらねばな
らない。このことから異常にも定義が必要と考え,われわれは異常を「通常
1
第 1 節 原薬に関する逸脱事例
Ⅱ
原薬製造中の撹拌機回転不足による温度逸脱
1.検討事例
原薬タチツテトン合成反応中に生じた反応温度逸脱について検討した。
(1)逸脱内容(Description of Deviation)
原料 A と原料 B から原薬タチツテトンを合成する反応工程で,反応温度が
11℃に達し工程管理値(10℃以下)を逸脱した。
(2)調査結果(Investigation Findings)
ここでの前提条件は,次のとおりである(図 2–2 参照)。
①当該逸脱は,原薬を合成する固−液の不均一系反応で生じている。
②本反応工程に続いて,粗原薬の単離,精製工程を実施して最終原薬
を得る。
③反応の温度制御としては分散型制御システム(DCS:46 ページ参
照)などを設置しておらず,反応温度をモニターしながら,原料 B
の滴下速度を手動でバルブ開度を目安に調整している。
④回転数は手動によるハンドル操作で設定する方式である。
逸脱が発生したときの状況を,反応温度記録や作業者への聞き取りなどで
調査した結果は次のとおりであった。
・本反応が発熱反応であるため,0℃付近の低温から原料 B の溶液の滴
下を開始する。通常,反応後半は内温 8℃以下で推移するが,本事例
では内温が 9℃まで上昇した。このため,原料 B の滴下を一時中断し
て待機したが,内温がその後も上昇し,11℃にまで達して,反応温
度の工程管理値である 10℃以下を短時間ではあるが逸脱した。
・反応温度の逸脱はあったが,反応を継続し,後処理を行い,粗原薬を
得るまで工程を進めた。なお,得られた粗原薬は,工程管理規格に適
合していた。
・反応温度チャートを調べたところ,滴下初期の温度上昇が通常より遅
53
第 2 章 逸脱事例
Ⅱ
廃棄前校正の未実施
1.検討事例
機器を廃棄する前に校正しなかったという逸脱について検討した。
(1)逸脱内容(Description of Deviation)
次回校正予定まで 1 カ月を有していた硬度計が廃棄された。廃棄前の校正
結果について,その合否を確認したところ,廃棄前に校正していないことが
判明した。
(2)調査結果(Investigational Findings)
本事象は,製造販売業者(以下監査担当者)が製造所に対して GMP 適合
性確認のため訪問した際にわかった。状況は次のとおりである。
①監査担当者は受託製造品目であるタチツテトン錠の打錠工程を現場調
査した。その際,新規の硬度計が導入されていることに気がついた。
②新規導入された硬度計について,手順どおり変更の手続きが行われて
いるかどうかを調査したところ,一連の適合性評価(クオリフィケー
ション)は適切に行われており問題はなかった。
③次に監査担当者は廃棄された硬度計の校正結果の合否を確認したとこ
ろ,校正しないで廃棄してしまったということであった。廃棄した硬
度計は次回校正まで 1 カ月を有していた。
④監査担当者は,製造所に対して校正しないで廃棄した経緯などを直ち
に調査するように指示した。
製造所の調査で次の事実が判明した。
①旧硬度計は 6 カ月ごとの校正を実施することになっていた。
②エンジニアリング部門の廃棄担当者 A は,他の部署からの転籍者で
あり,校正の必要性をまったく気づかずに廃棄したとのことであっ
た。
③廃棄前には廃棄申請書を提出していたが,エンジニアリング部門の責
任者は廃棄前校正が実施されていたと考え承認した。
204
第 2 章 逸脱事例
表2–9
なぜなぜ分析による根本原因の追究
WHY
BECAUSE
HOW
①なぜ,廃棄前校正を
実施しなかったのか
校正手順に廃棄前校正が記載され
ていなかったから
廃棄前校正を盛り込ん
だ手順書への改訂
②なぜ,校正手順に廃
棄前校正に関わる項
目がなかったのか
a. 手順書作成担当者が「校正は a. 正しい認識のため
未来を保証するものではなく,
の教育訓練の実施
挟み込みが必要である」こと
を認識していなかったから
b. エンジニアリング責任者が手 b. 必要項目を見落と
順書承認時に見落としていた
さない承認の実施
から
③ a なぜ,手順書作
成担当者が認識して
いなかったのか
手順書作成担当者への教育が不足
していたから(知識管理の欠如)
正しい理解のための教
育訓練の実施
③ b なぜ,エンジニ
アリング責任者が見
落としていたのか
照査に十分な時間がかけられな
かったから
照査に十分な日程をか
けられるように管理体
制を見直す
<望ましい例>
手順がない状況では,A へ口頭注意する,あるいは A の行動を責めること
はできないと考え,根本原因に対して次に示す対策や措置を講じる。
①校正手順に廃棄前校正を追加
校正対象機器の廃棄前校正を手順書に追記する。さらに機器廃棄申請書の
様式に廃棄前校正結果の確認の項を設けるなど,エンジニアリング部門の責
任者が見過ごさないような改善を行う。このように改善すれば,エンジニア
リング担当者と管理者双方の勝手な思い込みが防止でき,廃棄前校正が間違
いなく実施できるようになる。
②エンジニアリング担当者に対する教育
エンジニアリング部門すべての担当者が廃棄前校正の必要性,意味・意義
を認知・理解していないことは問題である。エンジニアリング担当者の教育
プログラムを改善し,廃棄前校正についての教育を追加する。さらに担当者
206
第 3 章 逸脱に関する法令等での規定
3.2.2 Corrective Action and Preventive Action(CAPA)System
The pharmaceutical company should have a system for implement­
ing corrective actions and preventive actions resulting from the
investigation of complaints, product rejections, non-conformances,
recalls, deviations, audits, regulatory inspections and findings, and
trends from process performance and product quality monitoring.
A structured approach to the investigation process should be used
with the objective of determining the root cause. The level of
effort, formality, and documentation of the investigation should be
commensurate with the level of risk, in line with ICH Q9. CAPA
methodology should result in product and process improvements and
enhanced product and process understanding.
3.2.2 是正措置および予防措置(CAPA)システム
製薬企業は,苦情,製品不合格,非適合,回収,逸脱,監査,
当局の査察と指摘事項についての調査,ならびにプロセス稼働
性能および製品品質のモニタリングからの傾向に起因する,是
正措置および予防措置を実施するためのシステムを有さなけれ
ばならない。根本的原因を決定する目的で,調査プロセスへの
構造化された取り組みが用いられなければならない。調査の労
力,公式性および文書記録のレベルは,ICH Q9 に従ってリス
クレベルと相応しなければならない。CAPA の方法論は,製品
およびプロセスの改善および増強された製品ならびにプロセス
の理解に結びつかなければならない。
4.CONTINUAL IMPROVEMENT OF THE PHARMACEUTICAL QUALITY
SYSTEM
┋
4.1
Management Review of the Pharmaceutical Quality System
Management should have a formal process for reviewing the
pharmaceutical quality system on a periodic basis. The review should
include:
254
4 ICH
┋
(a)Assessment of performance indicators that can be used to monitor
the effectiveness of processes within the pharmaceutical quality
system, such as:
(1)Complaint, deviation, CAPA and change management pro­
cesses;
┋
4.医薬品品質システムの継続的改善
(途中省略)
4.1 医薬品品質システムのマネジメントレビュー
経営陣は,医薬品品質システムを定期的にレビューするための正
式なプロセスを持たなければならない。レビューは以下を含むべ
きである:
(途中省略)
(a)医薬品品質システム内におけるプロセスの有効性のモニター
に用いられる,以下のような業績評価指標の評価:
(1)苦情,逸脱,CAPA および変更マネジメントプロセス ;
(後略)
255
おわりに
本書の初版に着手し始めてからすでに 3 年が過ぎ,この間にもさまざまな
逸脱事象が発生し,なかには回収となったケースもあった。
逸脱事象の原因はさまざまであるが,とりわけ市場に直結している包装工
程での逸脱事象は,後工程がないがゆえに一歩間違うと回収事象に陥りやす
い。本書第 2 版では,初版では事例検討できていなかったこの包装工程にお
ける逸脱事象を取り上げた。包装工程は,自動化が進む一方で人が介在する
作業もまだまだ残っている工程でもある。さらに多種多様の表示材料を取り
扱うことから特殊な管理を必要とする工程でもある。ぜひとも事例を参考に
間違いの起こらない管理に取り組んでいただきたい。
また初版では掲載しなかった「人が介在する逸脱事象」を第 2 版で取り上
げ,原因をヒューマンエラーとさせない方法も事例紹介した。ヒューマンエ
ラーは原因ではなく結果であることを本事例で確認いただければ幸いである。
多くのトラブル事例を経験していても,逸脱事例として公表するには苦労
する。生じた事例そのままでは工場や製品が特定されかねないという心配も
出てくる。また人と機械が複雑に絡み合って起きた事象などは説明するのが
思ったより難しい。結果として,この第 2 版では追加した逸脱事例は 3 例の
みとなった。残りの事例はまたの機会に公表したい。
なお,一部改正施行通知(平成 25 年 8 月 30 日付)により,逸脱に関して
も「製品品質の照査」の 1 項目になったことは周知のことであるが,1 件ず
つの逸脱事象について原因究明を確実にしてこそ照査できるのであって,原
因究明ができていない状態では照査しても意味はない。ぜひとも初心に立ち
返り,原因究明を徹底してほしいと思う。
また上記通知には品質リスクマネジメントの活用も必要とされている。第
2 版には,製造現場で応用できる品質リスクマネジメント活動も詳細に第 1
章に記載した。ぜひこれを参考に組織の実態にふさわしい品質リスクマネジ
メント活動を展開していただきたい。
初版に引き続き,本書第 2 版も逸脱事象減少につながる手立てになれば本
望である。
257
GMP 逸脱管理 第 2 版
─事例から学ぶ逸脱防止─
定価 本体 4,600 円(税別)
平成 24 年 3 月 31 日 初版発行
平成 26 年 9 月 12 日 第 2 版発行
著 者
日本 PDA 製薬学会関西勉強会
発行人
武田 正一郎
発行所
株式会社 じ
101−8421 東京都千代田区猿楽町 1−5−15(猿楽町 SS ビル)
電話 編集 03 −3233−6361 販売 03 −3233−6333
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©2014
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ほう
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ISBN 978−4−8407−4635−9