大 久 野 島 の

愛媛県産婦人科
大 久 野 島 の
サカタ産婦人科
坂
田
守
正
日帰り旅行プランの小冊
奥本大三郎氏(仏文学者・エッセイスト)が著
子の頁を繰るうち,休暇村・
書の中で,3 年間
を飼っての感想は,
は阿呆
大久野島に目が止った。島
である。( と,一撃くらった。)しかし,
洋とし
は 周 囲 4 km,ウ サギ3 0 0
て何の反応もないところに何とも言えない味があ
の楽園で,国民休暇村に
なっているとある。広島県
な が ら,大 三 島 か ら 船 で
か10分。こ れ に 書 か
れていないが,確か毒ガス島の別名があり,毒ガ
るような気がする。(このフレーズは賛成。)
一所懸命に穴を掘る。飼い
の穴
は
の先祖は地中海沿岸
だと彼の本にあった。潮風に吹かれ,運動
公園の小路を歩く。右も左も,露出した地面は穴
スという怖いもの見たさも加わり,初夏の日曜日, ぼこだらけ,全べて
の仕業のようだ。中には穴
家内を助手席に出発。大三島インターから島の北
と穴が連らなり,楕円になった窪みにピョンピョ
端,盛港に車を置き,大久野島経由忠海行きフェ
ンやって来た
リーに乗船した。デッキは幼児数人が駈け
が穴の形に腹を沈め,頭を横に向
り, け眼を開けたり閉じたり,天下泰平,
は随分胴
若い両親達が追っかけての大騒ぎ,予定の10分
長であることに気付いた。
程で大久野島桟橋着。国民宿舎行き無料送迎パス
昼食後,隣の毒ガス資料館を訪れた。毒ガス製
が待っている。車窓からの景色は勿論素晴らしい。 造工場は正確には忠海兵器製造所という。その開
が口をもぐも
設の説明が掲げであった。「田畑や農家もあった
ぐさせたり,ジャンプするのが見られる。私は生
平和な大久野島は明治中期の日清戦争のころ,10
れが
に惹かれる。そ
数門の砲台を築き,瀬戸内海を守る重要な要塞施
の昔,産婦人科教室に入局後,生物学的hCG 検
設になりましたが,幸い使用されることなく,農
出(白井反応)に
の耳静脈から患者尿の注射3
家と砲台看守,灯台守が住む静かな島のまゝ昭和
日間,4 日目に開腹,両卵巣の出血卵胞の有無を
を迎えました。ところが日本は毒ガス製造を決定
判定して閉腹,閲分これに関わった。やがて10
し,海に固まれ,秘密の漏れる心配が少なく,東
道端に房々した毛にくるまれた野
年,小動物では何となく
余年を経,手技簡単な免疫学的手法にとって代り, 京から遠く離れ,若しものことがあっても危険の
同じ頃,簡便な超音波診断装置も普及し夢のよ
少なかった瀬戸内海に浮かぶ要塞,この島に毒ガ
うな世情の変遷を体験した。
ス工場が設置されました。平和な島であった大久
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第 47 号 平成 23 年 8 月 11 日
野島が多くの悲劇を生み出す毒ガス島へと変った
4 ) 青酸(中毒性)
のですJ とあった。
5 ) 塩化アセトフェン(催涙ガス)
毒ガスの歴史を
ると,古くは「イープルの暗
6 ) その他筒類(くしゃみ性煙・催涙性煙)
黒 日」1915(大 正4 年)4 月22 日 が あ る。ド イ
7 ) サイローム(平和利用・殺虫・殺鼠)
ツ軍がフランス・カナダ連合軍とベルギー領イー
昭 和4 年5 月19 日,忠 海 兵 器 製 造 所 の 関 所 以
プルの戦線で対時し膠着状態だったが,ドイツ
来,4 年 目 の 昭 和 8 年7月11日 に 最 初 の 殉 職 者
軍兵士が液体塩素の瓶を持ち,頃合いの風を待ち, が出た。青酸工室の幸見亀吉さんである。サイロー
その口を開けた。ガスは間模様の地表に低迷して, ム製造工程で,吸収剤を詰めた缶に青酸貯槽から
連 合 軍 の 塹 壕 を 包 ん だ。結 果 は 中 毒 者l万5,000
ゴム管を通して青酸を注入する作業中,ゴム前掛
人,そ の う ち 死 者5,000 人 捕 虜2,400 人 だ っ た と
けに30g 程の青酸夜をこぼし,防毒面の吸収缶の
いう。今
なかった殺傷力をもった新兵器の悪魔
そばだった為,缶の活性炭とソーダライムの中和
的登場であった。其の後ホスゲンが登場する。こ
剤を通して,気化した青酸ガスを吸ってしまった
の吸入は即効性がなく,数時間後に発現する益々
らしい。休憩のため待機所で防毒面も外したあと
悪質な兵器である。その次は強毒のイベリットが
卒倒し,人工呼吸,酸素吸入も虚しかったという。
第l 次世界大戦に登場,これによる死者は連合軍
福島原発事故後,原子炉建屋内の防護服姿の作
100 万人,ドイツ軍8 万人であったという。毒ガ
業員が毒ガス工室の工員に見えて仕方がない。心
ス後進国の日本では毒ガス兵器の研究は国際法に
配である。
拘束されないとの見解で,ヨーロッパに追いつけ
今,こゝ大久野島に平和に暮らす
追い越せと研究を進めたとのことである。
は,嘗て,毒ガス工場医務室の近くにあったとい
大久野島で製造の主な毒ガスは
う動物飼育舎の
1 ) イペリット(びらん性 持久性)
ス精製時に小鳥たち(ジュウシマツ)とともに,
2 ) ルイサイト(びらん性 持久性)
それぞれの役目を果たしたことであろう。
3 ) ジフェニール・シアンアルシン(くしゃみ性
窒息性)
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たちの先祖
たちと思われる。そして,毒ガ