イタリアの 住宅政策と付加価値税(VAT)

イタリアの
住宅政策と付加価値税(VAT)
― 71 ―
1.
イタリアという国の概況
国
家族主義と地域主義の強い共和国
人口
5,810 万人(2006 年推計)
世帯数
2,181 万世帯(2001)
面積
30.1 万平方キロ(日本の約70%)
一人当り国内総生産 30,341 米ドル(2003)
、OECD30 カ国のうち 19 位
(名目 GDP)
(参考)2000 年 18,607 米ドル 同 19 位
新設住宅着工数
256 千戸(2003) 11.7 戸/1000 世帯
住宅ストック数
2,653 万戸(2001)
一人当り住宅面積
42 ㎡
持家率
69%(1998) *最近上昇している
別荘保有率;9.5%、世界 4 位
2.
イタリアの付加価値税(VAT)
1973 年、付加価値税(12%)が国税として導入された。
標準税率
20%
Standard Rate
軽減税率
10%
Reduced Rate
住宅の改良・修繕、不動産や別荘の譲渡(売り手が
個人の場合は非課税)、文化的サービス・ショウ、
水・天然ガス・電気の供給、ホテル宿泊、テレビ・
ケーブル TV、ゴミ収集、
(食料)
特別軽減税率
Super
4%
Reduced
手が個人の場合は非課税)
、新聞・本・定期刊行物、
TV ライセンス、食料、薬品、医療設備、社会福祉
Rate
ゼロ税率
住宅の新築・譲渡、既存住宅の譲渡(ただし、売り
0
輸出、金地金の供給、建築に利用できない土地の供
給、鉄及び非鉄金属のスクラップの供給
非課税取引
-
金融、保険、病院、学校、不動産の賃貸・リース
* 不動産の課税は、土地台帳に基づく最新の評価額(登録物件価格)にて行う。
― 73 ―
3.
イタリアの住宅政策
(1) 賃貸住宅の減少(1991 年 29%→1998 年 22%)
・ 持家率の上昇と賃貸住宅の減少(1998 年)
1300 万戸
持家
69%
賃貸住宅
21.5%
450 万戸
9.5%
200 万戸
その他
2,047 万戸
合計
・ 社会住宅部門は弱い
社会賃貸住宅は、賃貸住宅の 20%未満であり、約 100 万戸、全体の5~6%
にすぎない。イタリアでは、福祉的役割を果たせていないといえる。
・ 予算措置(2000 年)は 20 億 9800 万ユーロ(国家予算総額の 0.3%と推測)
住宅全般―社会住宅、建設補助金、賃貸部門への手当てと割当、都市再生含む
現プログラムに充当される。
(2) 持家政策の推進
住宅所有=持家が重視され、福祉の役割をも担っている。
①付加価値税(VAT)の軽減
新築住宅は特別軽減税率4%
*不動産は登録物件価格にて課税ベースはさ
らに下がる
②地方財産税(ICI)の軽減
主要な住宅について軽減措置あり
③土地登録税
2000 年から主要な住宅に対し4%→3%へ
通常の場合;8%→7%へ
④所得税の利子所得控除
主要な住宅の住宅ローン利子の 19%を課税所
得から控除、限度は 700 万リラ(約 49 万円)
⑤再生の場合の租税負担軽減
○2000 年から所得税から工事費の 36%を控
(住宅の改造、修理、修復)
除、限度額 1 億 5000 万リラ(約 1,050 万円)。
(1998 年からは 41%だった)
○2001 年から付加価値税(VAT)を 10%へ引
き下げ
次のページより、アントニオ・トシ教授とマルコ・クレマシ教授による『イタ
リアの住宅政策』を翻訳し、付加価値税のもつ役割と重要性を検証する。
なお、1999 年為替レートから1リラ=0.07 円として換算した。ユーロへの換算は、
2002 年3月切り換え時は、1ユーロ=2,000 リラ。参考にされたい。
― 74 ―
イタリアの住宅政策
アントニオ・トシ
Politecnico di Milano, DST
マルコ・クレマシ
Università di Roma 3, DIPSA
背景
第 2 次世界大戦後、イタリアは、「経済的奇跡」として知られる繁栄の時代に入った。1951 年
から 1971 年にかけて、人口は約 11%、世帯数は 35%増加した。イタリアの人口増加のほとん
どすべてが 2,3 の大都市圏に集中した。これを助長したのは移住の大きなうねりであった。他
方、非都市圏では、住宅放棄の現象が生じ、人口比が減少した(マイナス 11%)。そして、建
築面で熱心な取り組みが行われ、住宅数が倍増した(これは 70 年代の終わりまで続いた)に
もかかわらず、深刻な住宅不足が生じた(戦争による荒廃も一つの原因であるが)。
すべての新規住宅建設の 46%が主要都市圏に集中しているという事実にもかかわらず、世帯数
と住宅数の乖離は、戦後に行われた 3 回の人口調査の全期間において進んだ。この同じ時期に、
全竣工物のかなりの部分が、非主要用途に向けられた。つまり、空き家の数が着実に増加した。
その最終段階と現段階の始まりは、70 年代の終わりに起こった脱産業化の危機にまでさかのぼ
ることができる。この危機によって、地域の発展の型がかなり変化した。以来人口は安定し、
実質的に 80 年代の半ばにピークを迎えた(その後の小規模な増加は主に外国人の移民によ
る)が他方、世帯数は 32%増加した。さらに、住宅竣工数の増加率は 70 年代にピークに達し、
空き家率と同様に、それ以降減少しているが、すべての推定値によれば、あまりにも冗長であ
る。この時期に起こった変化の中で最も重要なのは、増加の分散化である。増加はもはや主要
都市圏に集中するのではなく、主に、かつて経済発展の関心外にあった中央部及び北東部の都
市に影響を及ぼすようになった。
他方、新しい人口問題が、とくに北部において現れた。現在、全体的に人口増加率は低く、減
少しているが、新しい圧力が明らかになりつつある。年配者(半数以上が一人暮らし)が人口
の 16%を構成しており、これは十年後に確実に 20%に増加する。低所得世帯の東欧及び北アフ
リカからの移民が急激に増加している。大家族(一人あたりの空間が比較的小さい)の伝統的
なパターンに変化のきざしがある。とくにミラノ(32%)やローマ(中央区では約 40%)のよ
うな都市圏において、単独世帯(そのほとんどが退職老人)が 20%を越えた。
住宅政策の社会的関心について、貧困と排除の問題は、とくに都市圏において大きな広がりを
見せている購買力の問題と関係している。後に行われた住宅需要推定において「貧困と住宅ス
トレスは、偶然に同時発生した問題ではなく、共同で新しい需要を作り出している」というこ
とが強調された。この状況のもとで 5 年前、住宅ストレスの中にある家族は、最も少なく見積
もって 90 万世帯(全体の 5%)、最多でその 2 倍あると推定された(Tosi 1994b)。住宅問題は、
主要な都市圏、とくに数箇所の高層建築の多い地所に集中している。さらに、住宅ストレスは、
様々な地経学的地域においてはっきりと確認され、とくに南部の大都市に拡大している。最後
― 75 ―
に、住宅からの排除の新しい過程が、以前のより伝統的な要素を妨害し、「極端なニーズ」を
持つ人々から成る縮小したコアを生み出しつつある。
イタリアの住宅政策のシステム
イタリアの住宅政策のシステムは、以下のように特徴付けることができる:
(a) (家の所有権入手支援に主に取り組む)「拡散」政策が優勢なシステム。国家の関与は弱
く、社会住宅政策が弱い。
1980 年代後期まで、イタリアの住宅政策は、増産―通常、大きな家の増産―によって人口増加
に対処することをはっきりと強調していた。しかし、それに対する国の支援は限定的であるだ
けではなく、地方レベルでは、その組織化は貧弱でもあった。
福祉の観点から見ると、住宅政策は比較的脆弱であった。一方で、社会住宅供給の規模は小さ
く、他方で、社会住宅政策は、一般的な社会福祉プログラムとの統合があまり進んでいないば
かりか、社会の中で取り残されてきた人々のグループや極貧者のグループのニーズに焦点を当
てることも十分にしてこなかった。
(b) 政策に大きな地域差があることによって特徴付けられるシステム:住宅問題は地域によっ
て大きく異なる;福祉と住宅の責任は地域限定的であり、自治体には大きな裁量権があ
る;地方の福祉制度には大きな違いがある。それは、地方が提供する保護の拡大とその活
動の効率性に起因するだけではなく、歴史的な理由も存在する。(これは、現在における
イタリアの状況の読みに対して、さらに、それを「南欧型または地中海型」モデルとして
分類することに対して、疑問を投げかけている。「家族モデル」「基礎支援モデル」のよ
うな定義は、きわめてものごとを小さくしてしまう。実際、全体的に、この国に対してい
かなるラベルも付けることはできないのである。少なくとも、この国の南部とその他の地
域の間に存在する違いから、「二重のシステム」という定義を付け加えるべきである。)
80 年代と 90 年代に、公共政策の再組織化は、住宅部門にも影響を及ぼした。大衆住宅の時代
以降、社会住宅建設は減少し続けてきた。80 年代初頭における、年率 8%というすでに低い割
合は、1991 年に 2%というさらに低い割合にまで落ち、再び浮上することはなかった。しかし、
公的支援による住宅建設が完全に消えてしまうことはなかった。90 年代に、国が支援する住宅
プログラムは、大都市圏に集中し、賃貸住宅供給に補助金を支給することによって、都市の衰
退を際立たせようとした。新しい住宅が、低所得者のためだけではなく、入手可能な賃貸フラ
ットまたは賃貸フラットそのものすら見つけることのできない人々のためにも建設された。後
に、社会住宅への公的融資がふたたび減少したが、地方当局はますます住宅のニーズの新しい
形成と貧困問題に関与するようになった。
保有形態の変化―家の所有、民間賃貸部門の減少―の最重要点は、市場構造の硬直化傾向であ
る。これは、過去数年間成長してきたより柔軟な需要と対照的であるように思われる。
過去 20 年間、住宅政策は、政策の長期にわたる層化を覆した。ほとんどの欧州諸国のように、
公共投資が全般的に減少し、政府の規制から市場メカニズムへの移行が起こった。とくに賃貸
部門の管理、地方自治体が直接的に関与する(また、部分的に権限が地方自治体に移譲され
― 76 ―
る)政府管理の地方分権化、一般的な補助金から社会経済的にもっとも弱い立場にいるグルー
プを対象とした特殊な補助金への移行において。
部門の分布
持家所有の割合は、70 年代以降着実に増加し、現在、1998 年に全体の 3 分の 2―69%―を占
め、その数は約 1,300 万世帯に上り、増加しつづけている。
賃貸ストックは、約 450 万戸あり、住宅ストックの約 22%を占める。それは、第二次世界大戦
後の総数の半数を超え、それ以降、半数になった。賃貸住宅の割合は、20 世紀最後の 25 年間、
とくに 80 年代に激減した。1991 年の国勢調査において、それは約 29%(100 世帯につき 25
賃貸ユニットと同値。ヨーロッパ平均は 100 世帯につき 39 ユニットである(Coppo 1995))
であった。1991 年の国勢調査以降、それは 1 年で 10 万ユニットのペースで減少してきた。ペ
ースは落ちたが、いまだに減少し続けている。
賃貸部門の減少は、所有権だけではなく、代替の保有形態(おもに非営利的)にとっても有益
であった。それは現在、全ストックの約 10%(200 万世帯を超える)―生涯賃貸 2.2;家賃無
し 5.8;その他 0.9―を占めている。このような保有形態は、「残留物」ではなく、賃貸の崩壊
以降回復してきた。賃貸と所有以外の保有形態の人々は、かなり貧困である(72%が平均収入
を下回っている)。
イタリアにおいて、社会賃貸部門は伝統的に限定的である。それは、1998 年において約
821,000 ユニット(賃貸ストックの約 20%)と推定された(Sunia, Rst 1999)。これは、公式
性において優れているが、新鮮さにおいて劣るデータ(Istat 1991 によれば、約 110 万)と比
較すると、わずかに小さな数字であり、主に 90 年代後半の販売プログラムに起因する。社会
賃貸住宅は、宿泊施設の 5-6%を提供している。
地方/都市
賃貸の割合は、都市圏において、とくに南部都市圏において高い。都市において所有率は平均
値よりも低い。すなわち、その平均値が 69%であるのに対して、都市圏中心部では 58.6%であ
る。しかし、都市圏ベルトの新しい居留地においても、または、中規模の都市においても、こ
の比率は全国平均に近い。反対に、賃貸部門は、小さな自治体では、しばしば農村地域におい
て、ほとんど消滅している。
― 77 ―
表 1. 農村/都市地域における部門の分布(%)
持ち家
賃貸
その他
都市中心部
58.6
33.4
8.0
都市ベルト
69.1
23.2
7.7
50,001 人
68.1
24.8
7.1
10,001~50,000 人
69.9
19.8
10.3
2001~10,000 人
73.8
14.1
12.1
~2000 人
77.0
12.2
10.8
イタリア
69.0
21.5
9.5
出典: Istat 1998
地域差
住宅モデルの地域差は非常に大きい。例えば、単一家庭家屋の比率は、北西の古い工業地域に
おける 17%から農村及びツーリストの南部地域の 40%、そして、都市における 7.7%から非都
市自治体における 40%まで様々である。保有形式に関して、賃貸部門の割合は北西の工業地域
と、高度に都市化された貧困な南部において高い。換言すれば、6 つの地域に集中していた賃
貸部門の 3 分の 2 が主要都市(トリノ、ミラノ、ボローニャ、ローマ、ナポリ、パレルモ)に
存在している。
表 2. マクロな地域ごとの保有権(%)
持ち家
賃貸
その他
北西
67.3
23.3
8.0
北東
71.0
19.1
9.9
中央
70.6
19.8
9.6
南
66.0
23.8
10.2
主な島
72.8
19.2
8.0
イタリア
69.0
21.5
9.5
出典: Istat 1998
表 3. マクロな地域ごとの都市圏の賃貸住居
都市圏
北西
北東
中央
南
諸島
出典: Istat 1996
合計
中心部
36.5
37.9
35.3
46.7
44.0
ベルト
34.0
13.5
15.1
30.1
21.3
― 78 ―
26.8
19.4
23.7
22.7
21.9
表 4. 州ごとの持ち家率割合(%)
持ち家
賃貸
ピエモンテ
67.1
24.5
ヴァレ・ダオスタ
62.3
23.9
ロンバルディア
69.0
21.2
トレンチノ・アルト・アディジェ
69.7
20,9
ボルザノ・ボゼン
65.1
24.9
トレント
74.2
16.9
ヴェネト
69.8
19.7
フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア
72.7
19.6
リグリア
60.6
30.5
エミリア・ロマーニャ
72.1
18.0
トスカナ
74.8
18.3
ウンブリア
78.9
11.3
マルチェ
73.6
14.9
ラツィオ
65,9
23.2
アブルッツォ
71.6
17.7
モリセ
75,5
13.1
カンパニア
58.9
31.1
プグリア
70.1
20.9
バシリカータ
74.5
15.8
カラブリア
69.4
18.2
シシリア
72.0
20.1
サルデーニャ
イタリア
75.4
16.4
69,0
21.5
出典: Istat 1998
住宅政策に関する経費
全支出と GDP の割合を算出するのに必要な最近のデータは存在しない。住宅政策への支出に
関する考えを提供する部分データは若干存在する。
-
Eurostat によると、1993 年の全社会支出は GDP の 25.8%であった(E12: 27.7)。失業補償
給付を除く社会支出は、25.3%であった(E12: 25.9)。全支出に占める割合としての住宅支
出は 0.0 であり(E12: 1.6)、GDP に占める割合としてのそれは 0.0 であった(E12: 0.4)
(European Commission 1995)。
-
欧州住宅供給連絡委員会(Cecodhas)によれば、全支出における住宅支出の割合は、1992 年
に 0.01、1990 年に 0.02 であった。
-
90 年代(初頭)の改革以前に、社会住宅の財源割当額は、1 年につき約 5 億ユーロであっ
た(「4.社会住宅」を参照せよ)。
― 79 ―
-
進行中の住宅プログラムを実現するために地域に割当てられた財源:2000 年のために、
1999 年国家予算法において 2 兆 9,940 億リラ(20 億 9,800 万ユーロ)が、住宅全般―つま
り、社会住宅、建設補助金、賃貸部門への手当と割当、及び、都市再生を含むすべての現
プログラム―に割当てられた(Cnel の推測では、予算総額の 0.3)。
-
1999 年に 6,000 億リラ(約 3 億ユーロ)が、賃貸宿泊施設に住む低所得世帯を援助するた
めの国家計画(家賃補助手当)(3 を参照)に割当てられた。
所有者占有部門1
所有権は、収入と密接に関連しており、このことは、仕事と教育の関連に近い関係として一般
に研究されている。当然のことだが、裕福な人々は、平均よりも高い割合で所有者になる傾向
がある(1996 年に、企業家と職業人の中で自分の家を借りているものは 15%しかいなかった。
1991 年にこの割合は 19.1%だった)。
しかし、所有率が、階級間に明確な亀裂を示したことは一度もない。たとえ賃貸部門における
ブルーカラーの割合(5 年前の数字 32.1 とほぼ同じ 30.7)が企業家のそれの 2 倍であったとし
ても、彼らも所有者の中では大きな割合を占めている。実際、ブルーカラーの間で持ち家所有
者の割合は現在 69.3%であり、戦後期と比較するとかなりの増加である。事実、1971 年と
1978 年に、所有者になった工場のブルーカラーたちの割合は、それぞれ 42%と 44%であった
と思われる。
「主要な家」の場合、すべての所有者に、使用中の住居にかかる税金の減額だけではなく、ロ
ーン金利の軽減も提供されている。これらの措置のいくつかは、金額の制限はあるが、すべて
の所有者に提供されている。
過去数年にわたって、住宅所有に関する政策は、次の 3 つの大きな傾向を示してきた。
個人所有の住宅にかかる税金の重圧の軽減。
住宅購入に関する税金の減額
アパート全体と個々人の両者のために、住宅を改築するための税金インセンティブ
-
一般に、90 年代において、住宅ローン利子補給の制限を下げ、租税負担軽減措置の制限を拡大
する傾向があった。
所有者・占有者のための税補助金と租税負担軽減措置 引用される主要な税対策 2 は VAT、所
得税、地方当局財産税(ICI)―これは、地方当局によって毎年定められる―である。
様々な税補助金が、とりわけ「最初の家」または「主要な家」の購入もしくは建築のために提
供される。(「主要な家」とは、所有者が普段生活する家であり、例えば休日の家ではな
い。)
-
VAT は購入に関して 4%に減った(さらに、計算の基礎となる課税ベースが下がった)。
-
地方当局は、通常主要な家に対しては低い ICI レートを課す。
1
この点については、民間部門と社会住宅(Edilizia agevolata の部分)に関する章も参照せよ。
2
賃貸住宅に関する免税については、民間部門に関する章を参照せよ。
― 80 ―
-
住宅の土地登記税が下げられる。2000 年国家予算法では、主要な家の購入用レートが 4%
から 3%に下がった(普通のレートも 8%から 7%に下がった)。
-
所得税に関して、課税可能収入の減少が進行した。2000 年の国家予算法では、1,800,000
リラ(約12万6千円)への減税が提供された(9,400,000 リラ(約66万円)から
19,000,000 リラ(約133万円)までの収入の年金生活者には、さらなる減税が提供され
た)。去る 12 月に、2001 年国家予算法において、主要な家への所得税が完全に免除され
た。
以下の場合、主要な家に対して租税負担軽減措置が講じられる:
-
主要な家は、贅沢な住居ではなく、購入者が正式に居住している地方(local authority)に
存在する。
-
購入者がまだ、購入が行われる地方の当局の住宅を所有していない。
-
購入者は、他の地方において主要な家用の租税負担軽減措置を利用して購入した住居の所
有者ではない。
ここ数年、国の財政的補助が増加しており、さらに、この種の補助金がさらに増加する傾向が
ある。これは、主要な家の場合だけではなく、他の住居関連財産の場合にもあてはまる。
主要な家のためのローン 所得税計算のために、主要な家の抵当にかかる利息の 19%が、年間
最高 7 百万リラ(約49万円)を限度として、課税可能所得から控除されるかもしれない。同
様の控除が、主要な家の建設のために行われることがある。
3
edilizia agevolata (補助金付き住宅)関する租税負担軽減措置の場合 建設会社から住居を購
入する家庭、または、協同組合(家屋建設協同組合)において住宅を割当てられている家族の
ための資本的支出に関して、援助が利用できる。
主要な家の抵当利息率を下げるための地方支援が、多数の地域自治体によって特別なカテゴリ
ー(ロンバルディア州では、若い夫婦、未婚の妊婦、未成年者のシングルマザー/ファーザー、
少なくとも 3 人の子供がいる家族)に対して提供されている。
イタリアにおける家の所有は、家族の内での融資の割合が高く、住宅ローンは GDP の 6%未満
を占めるにとどまり、その意味で家の所有者は、高い名目利子率からも守られている
(Directorate 1998)。90 年代後期に、利子率の低下が、住宅ローンのブームを引き起こし、
1997 年 9 月から 1998 年 9 月までの間に 15.2%上昇した。
再生のための租税負担軽減措置 1998 年と 1999 年に、住居の保全のための改造・修理・修復
に遣われたお金の最高 41%が、1 億 5 千万リラ(約1050万円)を限度として、所得税から
控除できた。2000 年の国家予算法では、これが 36%に下がった。同一の法律において、仮に
その作業の対象が、居住が主な目的の建物である場合、VAT は 10%に下がった。どちらの対策
も、2001 年国家予算法によって確認された。
他の租税負担軽減措置と手当が、建設バリアの撤去・再配線・遮音等に対して提供されている。
3
民間部門に関する章を参照せよ。
― 81 ―
民間部門
家賃は、収入と負の相関関係にある。収入の段階の上から3つの十分位数が支払う家賃が所得
総額の 10-13%であるのに対して、下から 3 つの十分位数が支払う家賃は約 25-35%である。
家賃は大都市においてはさらに高額になる。ミラノでは、賃貸部門の世帯の少なくとも 4 分の
1 が、家賃として収入の約 3 分の 1 を当てている。
一般的な住居費(平均家賃または抵当及び暖房)は、世帯の月予算の 31%を越えている。この
率は、普通都心部に住んでいる年配の単独世帯(older single households)においてピークに達
する(45%)。居住費は、都市圏の郊外に住む(子供が 3 人を越える)拡大家族のほうが手ご
ろである。さらに、賃借人の世帯の平均所得が、90 年代前半に、所有者の所得と比較して
83%から 79%に減少してきたということが明らかになった(Cnel 1997a)。
家賃と所得の比率が後退的性格を顕著に持っているということが、研究によって広く確認され
ている。1995 年に、平均比率は約 12%(ヨーロッパの最低値の一つ)であったが、所得が
2,000 万リラ(約140万円)未満の世帯の場合、その平均は 30%を越え、所得が 2,000 万か
ら 4,000 万(約280万円)までの場合、22%、所得が 4,000 万を越える場合、10%であった
(Coppo 1995)。
最近の Sunia の調査 (1999)によると、1998 年に、所得が 1,500 万リラ(約105万円)未満
の家族の半数以上、さらに、所得が 1,500 万(約105万円)から 2,500 万(約175万円)
の家族の 27%は、家賃と所得の比率が 30%を越えている。
全体として、474,000 の低所得世帯(所得 2,500 万(約175万円)未満)が、自分の所得の
35%よりも多くの割合を家賃に費やしている。それほど劇的ではないが重大な費用の問題(所
得が 2,500 万未満の場合 20-30%、所得が 2,500 万から 3,000 万(約210万円)の場合 35%
を越える割合)を持つ約 100 万世帯の家族を追加すると、家賃/所得の比率のゆえに住宅ストレ
スがある地域は、約 150 万世帯―全体の 35%―であると推定されるかもしれない(Sunia 1999)。
家賃の統制
家賃凍結の数十年後、1978 年に公正家賃法4は、家賃水準・年間増額・契約期間・再所有手順
の設定の基準を規制した。この法律は、矛盾した結果を生んだ。これらの対策は、通常低所得
者の借主を家賃の重圧から守ったが、家賃投資の供給と空き部屋を減らす上で役割を果たした。
手ごろな住宅が不足する中における、自由市場の家賃水準と、法律のパラメータが設定したそ
れとの間にある非常に大きな差は、「闇市場」を活気づけ、テナントと地主が、法定家賃に関
して「非公式な」(違法な)妥協的合意に達した。他の場合と同様に、価格爆発を抑える試み
は失敗した。
4
付録の関連法律のリストを参照せよ。
― 82 ―
家賃統制の 14 年後 1992 年 8 月に、新しい法律が議会を通過した。これにより、公正家賃法
(patti in deroga: その法を損なう協定)によって規制されていなかった家賃契約の条件が定め
られた。これは、自由化への第一歩であった。家賃の着実な上昇は、その結果であった(事実、
ある程度まで、これは、「非公式」契約の出現を意味した)。最後に、1998 年に新しい法律に
よって、賃貸宿泊施設の法的全体像が変わった。
民間賃貸住宅に関する新しい法律
新しい賃貸に関する法律(法令 9 1998 年 12 月、n.431)の目的は次のとおりである。すなわ
ち、(a) 大きな非賃貸ストックの一部を市場に呼び戻すために、賃貸市場を拡大すること。 (b)
賃貸宿泊施設の費用を減らすこと。(c) 家賃補助手当を導入することによって、市場の低所得者
グループを支援すること。
これは、まず、「住宅に関して強い緊張」状態にあるか、もしくは、「住宅に関して緊急」の
事態にある地方に関する、以下の一連の対策によって達成されなければならない。すなわち、
(a) 地主のための税金的及び契約的インセンティブ(例:地主が「個人的な必要」のゆえに立
ち退かせることをもっと簡単にできるようにすること)。(b) テナントと地主組合の間に結ば
れた特定の協定に加入しているテナントと地主のための税控除のシステム。2000 年 1 月に、
これらの協定の細部が、イタリアの全県に対して規定された。 (c) 低所得世帯のための「家
賃の支払いを目的とした家賃補助分担金のための国家基金」(家賃補助手当)。
これらの対策が期待の効果を生むかどうかについて語ることは時期尚早である。現在の初期段
階において、様々な州に多数の困難が生じている。
-
多くの地域において「規制された家賃」契約の数は小さく、新しい法律が基本的にその分
野を自由化するものになるというリスクが存在する。
-
いずれにせよ、市場に戻された使用されていないストックが、その需要の中における低所
得者のグループのニーズに応えることができるかどうかは疑わしい。
-
家賃補助手当のための基金の役割は、様々な州によって個別に規定され、それはしばしば
制限的である。とりわけ、これらの手当は、権利によってテナントが利用できるというも
のではなく、設定された予算制限の枠内においてのみ利用可能である。
この新しい法律は、社会住宅・旅行者用宿泊施設・地方当局が運営する一時的な宿泊施設を除
くすべての賃貸宿泊施設に適用される。その下では、2 種類の体制―すなわち、自由な家賃及
び地主組合とテナント組合の間の協定によって規制された家賃―が存在できる。契約は 3 年間
続き、地方当局がこれらを後押ししている。
前者の場合、所有者は、課税可能な所得への 15%の控除から利益を得る。規制された賃貸契約
の場合、家賃の 45%が課税可能な所得から控除されることがある。それに追加して、登録税に
おける 30%の控除と、地方当局が許可した地方財産税(ICI)における実行可能な控除がある。
どちらの場合でも、テナントはいくらかの支援を受ける。2000 年と 2001 年の国家予算法で
は、その時期及びテナントの収入に関する所得税の減税が許可された。さらに、テナントは、
新しい法律が提供する住宅給付金を受け取るかもしれない。特別(国家)予算は、これらのあ
らゆるタイプの支援に割当てられてきた 5。
5
適格性に関する基準については、所有者・占有者部門の章と、社会住宅に関する章を参照せよ。(補助金付住宅
/edilizia agevolatta)
― 83 ―
もっとも重要な新制度は、家賃補助手当を低所得家庭に支払うために新しい法律において定め
られた社会基金である。この基金には、1999 年から 2001 年までの 3 年間の予算として 1 兆
8000 億リラ(6 億 1300 万ユーロ)があり、これは家賃の支払を援助するために利用される
予定である。州は、この基金に自分のお金を追加することができる。
表 5. 家賃補助手当としての社会基金: 2000 年に諸州に割当てられた財源(単位:百万リラ)
州
ピエモンテ
ヴァレ・ダオスタ
ロンバルディア
トレント
ボルザノ
ヴェネト
フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア
リグリア
エミリア・ロマーニャ
トスカナ
ウンブリア
マルチェ
ラツィオ
アブルッツォ
モリセ
カンパニア
プグリア
バシリカータ
カラブリア
シシリア
サルデーニャ
合計
%
割当てられた財源(百万リラ)
5.90
0.09
16.19
0.28
0.24
5.26
0.40
2.28
8.60
6.09
1.43
1.13
10.65
0.67
0.19
19.55
7.93
0.66
5.75
5.90
0.80
100.000
41,307
658
113,309
1,974
1,680
36,847
2,772
15,932
60,158
42,658
10,003
7,924
74,578
4,711
1,365
136,843
55,496
4,592
40,257
41,307
5,635
700,000
このタイプの家賃補助手当は、国の法律によって定められる前に、いくつかの州と地方当局に
よって支払われていた。わずかな期間だが、とくに年配者のために、住宅費の完全または部分
的な減額を目的とした特別な住宅補助があった。いくつかの地域では、電気・ガス代を補償し
たり、必要な室内改造費を考慮に入れたりしている。伝統的に、家賃手当を受けられるのは、
非常に貧しい人々であった。
場所によって状況が大きく異なる個々の地主や会社は別にして、ほとんどの州において、民間
の地主には 2 つの大きな型がある。すなわち、住宅協同組合 6 と保険会社と年金基金機関(社
会住宅に関する節も参照)である。
6
社会住宅に関する章を参照せよ。
― 84 ―
表 6. 民間の地主
個人
住宅組合
保険会社
国家年金基金
その他
2,993,000
267,000
49,000
80,000
60,000
表 7. 全地域の賃貸部門の地主(%)
個人
建設
社会及び非営利
北
68.3
8.1
23.6
中央
59.1
9.7
31.2
南
71.5
3.4
25.1
都市
60.2
8.6
31.2
他の自治体
75.2
5.2
19.6
合計
67.6
6.9
25.5
出典: Istat, Household Consumption 1995
テナント組合は、家賃・所有権・社会住宅に関する法的な助言を与え、都市の再生と財政援助
に関して相談に乗り、アドバイスをする。彼らは、国及び地域レベルの住宅政策に関して圧力
団体としても活動する。
社会住宅
イタリアにおいて Edilizia Residenziale Pubblica(「国によって建てられた住宅、もしくは、
国の財政援助によって建てられた住宅」)と定義されているものには、社会福祉的観点から見
て様々な効果を持つ多様な型の供給と多様な融資制度が含まれている。その 2 つの型は以下の
とおりである。すなわち、
-
Edilizia sovvenzionata: 国が直接供給する住宅。コストは完全に国が支払い、建設した住宅
の所有権は国にある(公共住宅)。
-
Edilizia agevolata: 賃貸住宅及び所有者・占有者住宅の建設への援助(主に財政的な援助。
伝統的には住宅ローンの利子補助金)、または、民間個人への補助金付ローンの提供。
実際、後者は基本的に、家の所有を促進するための対策であり、またそれは、わずかにではあ
るが(社会)賃貸住宅の建設をも目的としている。我々がこの部分における両方の型を扱って
きたのは、この住宅の融資と管理が歴史的に単一のシステムにおいて組織化されてきたからで
あり、ほとんどの場合同一の団体及び組織を関わらせてきたからである。
― 85 ―
他の指定がない限り、「社会住宅」という用語は、ここにおいて edilizia sovvenzionata を、
「援助付/補助金付の住宅」という用語(ステート)は、edilizia agevolata を表すために使用さ
れている。さらに明らかにするために、その用語は可能な場合イタリア語のままにしておいた。
イタリアのシステムを特徴づけてきた住宅政策の伝統的なモデルは、住宅への公的介入を主に、
市場を規制するために行うというよりもむしろ、市場を利用できない人々の必要を満たすため
に行う市場に関する並行介入と考えてきたモデルである。
イタリアにおける公共部門の住宅ストックの現在の規模は、欧州連盟(league in Europe)で
最低である。去る十年間に、それは約 100 万住宅ユニット(30 万は地方当局に、70 万は他の
公的機関に属している)であり、販売プログラムのおかげで最後の数年間に若干減少した。こ
れは、占有された住居の 5-6%、及び、賃貸住宅ストックの 20%未満、100 世帯あたり 5 戸の
社会住居―他のヨーロッパ諸国の場合、100 世帯あたりの社会住居数は 18-19 戸(オランダ 43
戸、スウェーデン 32 戸、英国 31 戸)―を意味している (Coppo 1995)。賃貸供給総数が全住
宅ストックの 22%しかないということを考慮するならば、これらのパーセンテージ数は特別な
意味を持っている。
重要な地域格差がある。大都市における社会住宅の割合は高く、ミラノのような北部の都市で
は 18%もある。
保険及び年金基金機関の住宅ストックを、社会住宅ストックに加えることがある程度可能であ
る。政府は政策上、合法的な家賃市場を維持するために、また、家賃のレートを低く抑えるた
めにも、このタイプの財源を利用しようとした。 立ち退かされた家族に、空き家になる彼らの
家の割当において優先権を与えることをこれらの組織に法的に義務づけてから数年が経つ。し
かし実際は、その法律では、この割当てが実際に実行されているかを監視する公的管理手段が
まったく備えられていない。とにかく、このタイプの住宅ストックの場合も、現在大量販売が
進行している。
このストックのサイズが非常に小さいということそれ自身が、公共部門住宅がわずかな効果し
か生んでいないということを示唆する傾向にあり、仮にこのタイプの供給への大きな需要を考
慮に入れるならば、この可能性はさらに高まりつつある。1994 年に、正式な統計によれば、
270 万家族が規定の所得レベルを下回っており、そのため、公的部門の権利を有していたと思
われる。約 70 万件の申請が、様々な事務所に存在していた(Tosi, Ranci 1995)。
公的部門は、構成要素が多様であり、それゆえ大きな多様性を有するにもかかわらず、80 年代
以降減少してきた。まず、公的部門への 90 年代の融資は、80 年代のそれよりも 4 倍少なかっ
た。1993 年に、公共住宅販売プログラムを開始した法律第 560 号が承認された。
これはすべて以下のことを意味している。すなわち、(a) 社会住宅部門は、他のヨーロッパ諸国
においてそれが果たしたのと同じ福祉的役割をイタリアにおいて果たせなかった。 (b) 需要が
あるにもかかわらず、社会的支援が大幅に不足している(そのような保護は民間部門ではまっ
たく提供されていないということを考慮すれば)。「純粋な社会的保護は、住民のうちでもっ
ともわずかな部分にしか提供されておらず、ほとんどのヨーロッパ諸国において提供されてい
るものの 15-30%に過ぎない」と見積もられてきた。同時に、公共住宅に住むほとんどのテナ
ントに対して過剰な保護が加えられている(家賃のレベルと住宅安全保障に関して)。
― 86 ―
社会住宅を担当する活動者を変える
近年、社会住宅システムに、急激な再定義が行われてきた。融資と管理に誰が責任を持ってい
るのかを示すためには、2つの異なる側面を区別する必要があり、さらに、まず戦争終結時か
ら 1990 年代まで続き、現在の状況を作り出した「伝統的な」体制を示し、そして、ここ 4、5
年の間に進んできた変化及び出現しつつある新しい状況について概説する必要がある。
伝統的な状況
社会住宅政策システムは、中央政府と地域自治体と地方自治体の責任の分担
を定める。歴史的に、中央政府が主要な役割を果たしてきた。中央政府は―各県に設けられて
いる―特殊な機関(IACP: Institute for Social Housing(社会住宅機関))を通じて活動し、公
共住宅ストックを実行管理し、テナントの権利と義務を規制してきた。1970 年代以降、州と地
方当局の責任は増え始めた。
伝統的なシステムは、融資に関する 2 つの主要な手段―edilizia sovvenzionata (直接介入)と
edilizia agevolata (援助付/補助金付の住宅)―に基づいている。edilizia sovvenzionata において、
コストは資本勘定融資により、完全に国がまかなっている。宿泊施設は、国の財産のままであ
り、低所得家族に貸し出されている。edilizia agevolata において宿泊施設は、貸し出すか売却
することが可能であり、銀行のローンにより融資を受ける。国は、その利子のすべてもしくは
一部を支払うか、資本の一部を支払う(どちらも収入に比例して)。
このシステムにおいて、融資は 1949 年に導入された fondi INA Casa 及び(1963 年以降)fondi
Gescal (Gestione case per lavoratori: 労働者の家屋の管理)として知られる強制的貢献の仕組み
によって得られる。一部会社により、一部賃金からの控除による財政的貢献は、中央の協同資
金に入れられ、CER(Comitato per l'Edilizia Residenziale: 居住用建物委員会)が利用できるよ
うにし、その後州に分配された。
Edilizia sovvenzionata 融資は、新しい宿泊施設の建設と公共部門住宅ストックの更新のために、
地方自治体か Iacp に提供される。CER の規定による利用のための最大所得は、州によって決
定される。残りは、テナントの収入にしたがって調整される。
edilizia sovvenzionata は伝統的に低所得労働者に関わってきたが、70 年代後期から、その範囲
は、ますます拡大し、低所得家族の大半を包括するようになった。1971 年に規制が、特別なニ
ーズの認識に基づいて再構成され、公的支援を受ける権利のある人々の選別が可能になった。
低所得と家族の規模が長い間主要な基準であった。州がテクアップしたとき、地域の法律が、
権利付与の制度を区別し、受益者の領域を開放した。結果として、他の社会的グループ(例え
ば、いくつかの州では、若者と移民)のニーズが確かめられた。
edilizia agevolata に関する限り、国の介入は伝統的に、ローンの利子の一部支払いと適切な土
地の利用可能化に限られてきた。融資は、中央政府によって直接提供されている。IACPs・地
方自治体・住宅組合は賃貸住宅建設の目的で、組合・公共機関・建設会社は中の中もしくは中
の下の所得家族向け所有者・占有者住宅建設の目的で、補助金付の基金を利用することができ
る。そのローンは、様々な所得帯にしたがった様々な種類の条件に基づいて提供されている。
補助金付住宅基金は、「主要な家」の建設またはリフォームを行うための収入条件に合致した
民間の個人に補助金付ローンを与えるためにも利用できる。
― 87 ―
今日まで edilizia agevolata の制度は、利子の支払いのために融資をしてきたが、現在、国と州
による新しい形の補助金には、資本の支払い補助が含まれている。この種類の融資は、建設会
社から住宅の購入を希望する、もしくは、組合から住宅の割当を希望する家族が利用できる。
edilizia sovvenzionata と edilizia agevolata の両方の支援のために、都市計画活動の一部として
建物用の土地を選択するのは、地方当局である。改築などにおいて「社会計画」が適用される
ならば、他の地域における活動も可能である。edilizia agevolata の場合に、地方当局による土
地の供給は、コストを低く抑える上で(も)重要な役割を演じている。
edilizia agevolata のシステムでは、賃貸住宅と所有者・占有者住宅の両方の融資が許されてい
るが、ほとんどは後者のために利用されている。これは、このシステムにおいて非常に重要な
役割を演じている組合にも当てはまる。
新しい状況。過去 20 年にわたり、中央政府から州と地方当局への責任の移行が進んできた。
-
州は、場所・建設・活動管理に関する計画機能、容易な信用貸しの条件の利用を可能にす
る機能、IACPs に対するさらに大きな権限を引き継いだ。
-
地方当局は社会住宅の割当の責任を、数年間割当を管理していた IACPs から引き継いだ。
-
中央政府は、とくに民間の賃貸及び社会住宅割当の分野における規制と計画全般への広範
な権限を維持した。
後に、国の議会が、地方分権の過程を完成した様々な法律を通過させた。新しいシステムでは、
公共住宅の責任は州に移行した。現在地方は、以前は州政府委員会が扱った融資をも管理しな
ければならない。
中央政府が維持した機能は次のとおりである。すなわち、社会福祉政策目標の一般的な状況内
における社会住宅の標準的な一般原則と目標の確立。住宅サービスと品質の最低基準の明確化。
国益にかなった住宅プログラムの、州と地方当局との合同計画。わが国の住宅状況に関する統
計データの収集と評価。貧困家庭用家賃市場と貧困家庭向け経済的支援の利用を奨励するため
に設計された基準の明確化。
地域の法律に則った社会住宅の管理とそれへの資金提供の規制の目標だけではなく、社会住宅
の目標をも定めなければならない州に責任が移行した現在、IACPs の役割は不確かである。こ
れらの法律は、IACPs の未来をも決定するだろう。
主流の公共住宅のほかにも、非常に困難な状況のもとでの、または、緊急状況のもとでの多数
の社会的対策が目標とされている(様々な定義がある:「深刻な住宅困難」「特殊な住宅緊急
事態」「福祉の事例」「危機に瀕している人々」「特に社会的重要性を持つ状況」等)。これ
らの場合、地方当局による援助は、通常の社会住宅の割当手順とは異なる独自の方法で供与さ
れる。関係者らは、新しい住宅棟の利用可能性を伝え、それに申し込むことを人々に勧める通
常の新聞広告を待つことなく援助を要請することができる。
この分野における活動は基本的に、中央政府や地域自治体の財源だけではなく自分自身のそれ
―とくに著名な基金、地方当局ストックの一部等―をも利用する地方当局によって実施されて
いる。それらは、さらにはっきりとした福祉的性質を持つ対策であり、それゆえ、市民的権利
としてというよりも、緊急/例外的事例の場合に用いられるものと考えられており、非常に多様
な地方の福祉制度の裁量に大きく依存し、また、それらの意思を反映している。
― 88 ―
これらのすべての理由から、この活動が依拠している形式や基準は、地方の状況の機能に応じ
て変化するが、それにもかかわらず、かなりの共通点や類似が存在する。地方当局は、次の 3
つの主要な種類の方策を採用してきた。すなわち、
(a) 公共部門の住宅ストックの「保留」割当の利用―時間が経つにつれて徐々に利用できるよ
うになってきた。
(b) いくぶん不安定な緊急宿泊施設(ホテル、寄宿舎、トレーラーハウス等)への一時的な収
容。これらの宿泊施設は、地方当局の予算に大きく依存しており、高いことが多い。
(c) 家賃補助金
一つの例:フィレンツェでは、立ち退かされ、自由市場において宿泊施設を見つけることがで
きず、同時に一定条件を満たせない市民、さらに、限界所得制限以下の深刻な住宅状況にある
人々も、これらの措置に訴えることができる。
担当の地方当局は、緊急状況に対して次のような手段を講じる。すなわち、
-
「福祉予備物件」(利用可能な地方当局所有住宅の 30%)から住宅を割当てる。この宿泊
施設の割当は、「大きな社会的問題を抱えている」「危機的カテゴリーに属する」家族と、
住居を持たず極度の欠乏状態にある他の不利な立場にあるグループに限定されている (トス
カーナ州の州法第 72 号、1997 年)。
-
「立ち退き用予備物件」(利用可能な社会住宅の 40%)から住宅を割当てる。
-
家賃補助用の支払い
-
一部地方当局が支払うホテルまたは一時的宿泊施設。
-
年金基金機関等に家族を委託し、その住宅ストックを利用させる。
これらのサービスの利用条件の大部分は、所得の違いを除けば、公共住宅の割当条件と同一で
ある。
人々を「特に緊急を要する状態」「深刻な困難」等のような様々な種類に分類する作業は、州
の法律と地方当局によって行われる。それらは、ある程度、通常の社会住宅政策の事例に優先
順位を決定する作業と類似している。
例えば、モデナでは、「住宅に関してとくに緊急な」状態(エミリア州の州法第 13 号、1995
年では、それぞれの地方当局は毎年、これらの家族に割当てるため、その住宅の 15%を保留し
ておかねばならない。)にある家族への宿泊施設の割当ての事例には、以下が含まれている。
すなわち、立ち退かされた家族、難民、転属になった軍人、他の深刻・特殊な状況;外国から
の移民;その地域に戻ってきたイタリアの移出民。
社会住宅における政策の傾向
政策の傾向は、2 つの主要な進行中の過程によって決定される。すなわち、(a) 地域や地方の政
策への権限の移行が進行中の地方分権。 (b) 伝統的なモデルの後戻りできない危機的状況を前
にして、効率の新しい基準と新しい公式を求める社会住宅制度の再定義(地方分権とは無関
係)。
― 89 ―
他の国々のように、2 つの対立する立場がある。すなわち、部門の自由化(公共住宅等を運営
してきた機関の民営化)と、いかなる場合であっても福祉目標を保証する機能を維持するであ
ろう公共部門の役割の再定義(市場の持つ福祉に関する可能性等を活かす新しい社会住宅モデ
ル)。
この 2 番目の傾向は、社会保護制度の矛盾(過剰保護の排除等)を取り除く意味がある。合理
的な意見の一致がある問題には、以下のものが含まれている。すなわち、公共部門と民間部門
のパートナーシップと統合への願望;賃貸住宅用の edilizia agevolata の促進;agevolata と
sovvenzionata の間の違いを乗り越えて、レベルを段階的に分けた援助の単一のシステムを作
ること;aides à la personne の段階的開発;家賃補助手当の分配。
社会住宅の傾向に関する事実をいくつか挙げると:
-
建設は減少し続けている:80 年代のはじめに年間 8%のすでに少なかった割合が、90 年代
のはじめに 2%弱に落ち、その後二度と上がらなかった。
-
90 年代初期の予算改革と、住宅に関する責任の州への移行の結果、中央政府の財政は、議
会が毎年取り決める予算の割当にまで縮小した。
-
州は大部分、自分自身の財源によって活動しなければならない。どのような関与を州が望
み、または、実行することができるのか、さらに、資金供給が、古い制度によって生み出
されるものにあるレベルにおいて匹敵するのか、まだ明らかではない。いくつかの州には、
市場への資金援助のほうを選び、直接的な関与からは身を引こうとする明らかな兆候があ
る。
ここ数年間に、伝統的なシステムを通じて、年間約 5 億ユーロを社会住宅に割当てることがで
きた。
-
いかなる場合でも、利用可能な短期の財源(2002 年)は実質的なものであり、8 兆 2,000
億リラ(約41億ユーロ)に上ると推定された。IACP 向けの 3 兆リラは 1992-95 年のプロ
グラムにおいてまだ使われていないお金であり、1 兆 2000 億リラ(約6億ユーロ)は 9698 年の残りに割当てるべきであり、4 兆リラ(約20億ユーロ)は公共住宅の販売による
ものである。
-
社会住宅への財政支援の大部分は、現在復興プログラムと都市再生用プログラムを通じて
導かれている。
新しい目標に関する限り、移民など、新しい型の社会的に恵まれない人々の必要を表す新しい
目標を含め、この十年間、顕著な傾向が続いており、それは、受益者にとって優先度の高いカ
テゴリーを同定するためにこれからも顕著であり続けるし、また、今よりもいっそう顕著にな
ることが予定されている。
社会住宅の適格性
今日まで、edilizia sovvenzionata 住宅の適格性は、利用手順と所得制限を規定した、地域ごと
に異なる(が、国法によって定められた制限の範囲内にある)特殊な地域の法律によって支配
されてきた。
― 90 ―
ある州の所得制限:1993 年にこれらは、「課税」所得で 1,400 万リラ(約98万円)と 2,000
万リラ(約140万円)(それぞれ実際の所得では 2,300 万リラ(約161万円)と 3,300 万
リラ(約231万円)に等しい)の間を変動した。それ以上だと諸権利が撤回される最高限度
は、「課税」所得の 2,800 万リラ(約196万円)と 4,000 万リラ(約280万円)の間であ
る。(「課税」所得は、家族の規模などに基づく割当額を控除し、所得の 40%を控除すること
によって算出される。)
住宅はときどき、困窮している人々の申請に基づいて作成されたリスト上の人々に、もしくは、
「一般棟割当」によって割当てられる。
所得最高限度のほかにも、一般的な利用条件には、市民権(または、非 EU 移民の住民カー
ド)、住民として登録されていること、または、地方当局・州の管轄内において仕事があるこ
と、住宅を所有していないことがある。
割当リスト上の位置を決定するポイントを計算する場合、一定数の「主観的」及び「客観的」
な基準が考慮される。すなわち、家族の所得、家族の種類、住宅状況、立ち退かされた状態等
である。さらに、「特殊なカテゴリー」が州によって優先事項として同定されることがある。
よく出てくるカテゴリーは、年配者、若いカップル、イタリアへ戻ってきた移出民、大家族、
避難民、移入民等である。
1992 年(法律 179/1992)以降、ある割合の edilizia sovvenzionata と edilizia agevolata の両財
源は、特定のカテゴリーの人々の住宅問題を解決する際に州が利用できるように保留されてき
た。この保留分を利用するための主観的及び客観的な選択の条件は、中央政府が定めた条件と
異なる場合がある。法律に則った CER の決議は、年配者・代家族・移民・学生を「例とし
て」引用した。州は、これらの特別なカテゴリーを様々な方法で定義している(しばしば追加
される一つのカテゴリーは、若いカップルと新しい家庭である)。一般に、それらは、「緊
急」及び「特別な場合」の行動として同定されるものと似ている。
edilizia agevolata の利用条件は、所得限界を除いて edilizia sovvenzionata の一般的な条件と似
ている。アイデアを得るために、1999 年トスカーニにおいて、edilizia sovvenzionata の所得最
高限度額は 22,260,000 リラ(課税所得)であった。edilizia agevolata の場合、最低所得は
13,000,000 リラであり、最高所得は 50,000,000 リラであった。
テナントの状態と利益
困難な状態にある公共住宅のテナントの家賃及びアパート棟の管理費の支払いを助けるために、
特別な「社会基金」が存在する。低所得の借主を助ける主要な対策は、Equo Canone 家賃管理
であった。これは、小さな社会的部門の内部において、最貧の家族に住居を与えることを目的
としており、家賃手当は最も貧窮している世帯に与えられた。補助金は、自分のアパートや公
共の建物の地域を修繕することを願うテナントが利用できる。
ここ 40 年間の公共住宅の歴史の中で様々な時に、テナントが自らの家の所有者になることが
可能であった。伝統的に、これは、分割払い購入金のような様々な方法で家賃支払いが算出さ
れる「償却」方式によって行われてきた。最近では、テナントに優先拒否権が与えられる大量
の販売計画によって行われている。
― 91 ―
公共住宅において、家族のメンバーは、世帯主が死んだ場合、または、法的隔離された場合、
住居を引き継ぐことができるが、この権利を得るには、その住宅での一定の居住年数だけでは
なく、親等数をも示さなければならない。
利用不足や過密(これらは、ストックの一致した利用ためにも利用されている)を避けるため
に、テナント同士の交換のための「移動プログラム」がある。
テナントの参加に関して、状況は州ごとに大きく異なる。マンションと同じように、テナント
は通常、アパート棟の管理に参加する。国が全体を所有している棟において、アパートはしば
しば自主管理されている。
自己管理には、建物の共通地域のわずかな保守が含まれている。地方の自主組織の委員会が、
大都市の様々な公共住宅団地に設置されてきた。これらは要求と苦情を住宅当局や地方当局に
対して行っている。
関係者 7
全国レベル
公共事業省において、一般管理部(general Direction)が全国の住宅問題を担当している。
1978 年の「建設 10 年計画」において、一貫した数量の新住宅ユニットの建設・既存のストッ
クの改築と更新、新住宅計画の実験を目的とする国家計画を策定・調整するために、以前住宅
委員会(CER: Comitato per l’edilizia residenziale)であった住宅用 DG が指名された。
しかし、全国レベルは、その機能のほとんどを失った。財政に関する供給と計画の責任は、社
会住宅に関する業務とともに、徐々に州に移行していった。権限委譲の過程は、10 年以上も続
き、達成したのは、1998 年つまりやっと最近のことである。発生した主要な変化は、もっぱら
住宅に費やされる資金を調達するための特別なチャンネルの終了、さらに、地域間における財
源の再分配における中央権力の役割の終了と関係している。
中央レベルは、全般的な規制と計画―とくに社会住宅の分野、及び、民間賃貸部門への法的枠
組みの提供において―に対していくらか権限を維持している。
州及び地方の自治体レベル
他方、70 年代初期に州に正式な機能が割当てられ、後に住宅に関する完全な責任が与えられた。
1998 年まで国は財源の大部分と、それを分配する権限を保持していた。州は、規制を承認する
責任と、住宅の建設及び援助の計画を作成する責任を有していた。
7
役割の変化については、社会住宅に関する章を参照せよ。
― 92 ―
1962 年以降自治体は、低コストの社会住宅に土地を提供するために、しばしば都市の郊外にお
いて特別な「地域」を選択・獲得・都市化しなければならなかった。しかし、これらの地域は、
社会隔離装置とするべく企画されたのではなく、むしろ他の社会的グループと並んでブルーカ
ラーの家族も居住できるように意図されたのである。このように、当初から、地方の住宅地域
には、民間の開発が含まれてきた。賃貸部門における低コストかつ補助金付の家と協同組合の
住宅(基本的に補助金付の中流階級の住宅)。
自治体はますます住宅と関わるようになってきた。彼らには、社会住宅政策の結果に関して、
さらに社会住宅に申し込んだ人々の政治的に敏感な選択に関して独占的な責任が与えられてき
た 。 か つ て こ れ は 、 社 会 住 宅 の 設 計 ・ 建 設 ・ 保 守 を 担 当 す る 特 別 な 独 立 機 関 (IACPs:
Autonomous Institutes for Social housing(社会住宅独立機関))の仕事であった。地域/地方レ
ベルへの責任の移譲とともに、IACPs は、自らの特別な場所を失い、部分的に州によって再組
織化されてきたが、基本的にまだ改革が必要であり、この改革によって、新しい枠組みにおけ
る彼らの役割が明確化されることだろう。現在、自治体とこれらの独立機関の両者の正確な役
割は、いくぶん不明瞭であり、州によって異なっている。
90 年代以降、自治体は、移民の新しい波と、社会的排除に対する高まりつつある関心とも関わ
ってきた。
非政府組織
NGO には 3 つの最も重要な種類がある。
-
住宅協同組合:8 地方の協同組合がつながりを持つ 2 つの主要な全国組織がある。すなわ
ち、Federabitazione と Lega delle Cooperative である。
-
住宅貧困、移民用住宅などの地域において、地方レベルで働く NGO。自治体と、ホームレ
スのために活動するボランティア協会のための傘組織は、Fiops(Federazione italiana
delle organizzazioni per le persone senza dimora)である。
-
テナント組合:全国レベルでは、主要な全国労働組合組織とつながりがあるテナント組合
がある。主要なものは、SICET (CISL とつながりがある)と SUNIA (CGIL とつながりがあ
る)であり、約 30 年間活動している。ほとんどの地域に存在し、一定の重要性を持つ独立
組合は、Unione Inquilini (テナント組合)である。
特別なイニシアチブ
次の 3 つの主要な種類の問題と向き合うために、試験的政策イニシアチブが全国/地方レベルで
開発されてきた。すなわち、新しいパターンの貧困と家族生活が提示する問題;都市圏の賃貸
(利用可能)ユニットの不足;住宅ストックの悪化―とくに都心部と歴史的な地区における。
第 3 は、都市再生/都市改造という目的を達成する試み、さらに、土地利用計画における新しい
方法の開発とともに、最近のプログラムのほとんどが実施された領域である。
8
社会住宅に関する章を参照せよ。
― 93 ―
再生/刷新のプログラム
90 年代の政策の永続的な流れの一つは、都市の再生/刷新と関係している。1992 年に、いくつ
かの特別な計画が、社会住宅プログラムの枠組みの中で策定された。すぐに「統合プログラ
ム」と名づけられたこのような計画は最初、全体の住宅の質の改善を目的としていた。事実、
80 年代直後に流行していた意見は「住居の不足はきっちりと解決された。住宅のニーズは、最
大の都市圏に限られている購買能力の問題に限定されるべきだ」というものであった。しかし、
それらはもはや貧困の問題ではなく、ある明確な、社会に無視されている社会的グループに限
定された問題であると考えられていた。
広範な住宅計画それ自体はもはや必要とされていなかったが、少数の地域の刷新と変化のため
に捧げられた、地方における多数の活動がむしろ、より効果的であると考えられた。
他方、我々が見たとおり、1998 年に終了した長期にわたる権限委譲の過程ですべての住宅プロ
グラムの責任は地域に移行したが、中央の行政には、インフラと、都市計画における「革新
性」への責任が残った。革新的計画は、基本的に、公共住宅の改築を目的の一部として含む都
市改造のための混合財政計画として立てられた。そして公共事業省は、質の低下した都市圏と
公共住宅団地の改造計画を財政的に支援するために、都市の間でのいくつかの競争的入札を促
進してきた。
これまで、それぞれが特別な目的を持ち、全部で 200 ほどの、住宅と都市改造/再生分野の計画
(Programmi di riqualificazione urbana, Programmi di recupero urbano, Contratti di quartiere)と、
混合したプロフィールを持つさらに大きな共同体間の開発計画(Programmi di riqualificazione
urbana e sviluppo sostenibile del territorio)の設計に融資する 4 つの主要なプログラムが立ち上
げられた。
全般的に、これらの計画は、都市計画の伝統により、強い継続性によって特徴づけられ、計画
の「物理的」次元にはっきりとした焦点を当て続けてきた。ごく最近になって、一部に EU の
都市計画に参加した結果、「統合された活動」の概念―地方的特色を帯びた貧困撲滅政策に流
れているという意味において、多次元性・パートナーシップ・参加等のこと―が、いくつかの
再生計画において相応しい場所を獲得してきた。
革新には、住宅設計の発展が含まれてきた。さらに、政府は 1989 年以来、必要な住宅基準を
上げることによって、このプロセスを促進してきた。
住宅目標と他の社会的政策を組み合わせる計画
社会住宅と公共部門の社会サービス供給との間には、顕著な分離と乖離がある。これにより、
住宅供給の効率は限定され、社会的に無視されている住民が生まれないための予防と社会的再
統合の計画が困難になっている。これに関して、多くの制度的革新が起こったことはまったく
ない。しかし、地方レベルでは、多くの地方当局が、住宅と社会福祉的援助の間によりよい相
関関係を確立しようとしてきた。
一つの重要な方策は、恵まれない立場にある住民を家賃市場に加えること、または、非公共部
門の社会住宅の供給を増やすことを確実にするために、市場において実行する仲介と保証活動
である(「社会賃貸機関」もしくは「社会機関」)。
― 94 ―
この作業を行うのは、地方当局か組合、もしくは、その両者のパートナーシップである。この
活動には、ある種の社会的付帯物が含まれることがある。介入/保証活動が非営利組合によって
実施される場合、社会的支援の体系的な提供が行われる可能性はさらに高い (Tosi 2000)。
移民/避難民
移民に関する新法(法律第 40 号、1998 年 3 月 6 日施行)―入国に関する規定のほかに、移民
の滞在と法的立場が定められている―には、移民の社会的統合を促進するための重要な対策が
含まれている。最初の 2 年に、1,385 億リラの予算がこの目的のために取り分けられた。これ
に、地域の基金が追加されている。住宅に関する限り、この法律は、イタリア市民、とくに公
共部門により住宅を供給されている人々のために存在する機会(すでに多くの地域で利用でき
るようになっているが、供給量が少ない場合、ほとんど効果がない)の利用を保証している。
またその法律は、特定の宿泊施設(centri di accoglienza: 緊急時のための、及び、一時的な利
用者のためのホステル)をも規定している。最後に、それは―「ソーシャル・ロッジング」と
いうラベルのもとで―社会住宅の他の可能性を指し示している。全体として、この法律は、自
主組合と地方当局が数年間唱え続けてきたニーズを満たし、あらゆる範囲の住宅公式の資金供
給を受ける用意がある。
住宅をはじめとする援助のための特別な基金を知事に割当てる特別なプログラムが避難民に提
供されてきた。
特別な住宅プログラム
すでに言及した 9、特別なカテゴリーのための方策に加えて、特別なプログラム―ほとんどが地
方レベル―も、以下の人々に関係している。すなわち、身体障害者(住宅の借り換えのための
財政支援)、若いカップル/家族、年配者(住宅の借り換え、居住用ホテルの提供、特別な社会
住宅等)。
現在、「『弱い』社会的カテゴリーに手の届く賃貸宿泊施設を増やすことを目的とした」(小
さな)「実験的」プログラムが、議会において議論されている。
中央政府がホームレスに提供しているプログラムはまったく存在しないが、多くの地方当局は、
これについてかなりの努力を払っている。しかし、2000 年 1 月に(ローマにおいて 8 人のホー
ムレスが、トリノにおいて 2 人が、リグリアにおいて 2 人が凍え死んだ)、中央政府は、緊急
活動に 300 億リラを使うことを決定した。「緊急援助とヘルスケアを必要な人々に与え、彼ら
に食事や屋根、医療援助を提供するための地方当局と自主組織の財源を増やすためにそれは利
用されるだろう。」
9
社会住宅に関する章を参照せよ。
― 95 ―
同時に、緊急援助を提供する努力も、ローマ市や教会組織を含む地方行政機関によって強化さ
れた。政府は命令において、主要な都市の市長を、「その分野において働く地方行政局、自発
的組合、他の非営利組織による救出・宿泊施設・援助」のために基金を使う権限、さらに、イ
ニシアチブの受益者のために「緊急宿泊施設サービス、社会事業、社会復興サービス」を創出
する権限を持つ委員として指名した。そのお金の大部分は 14 の主要都市(ローマ、トリノ、
ナポリ、パレルモ等)に届き、比例分配された。40 億は他の地方当局に届いた。
社会から無視され、「危機に瀕している」特別なカテゴリーの人々―困難な状況にある女性や
若者、麻薬中毒患者等―のための宿泊施設は、社会福祉政策の枠組みの中で、実質的に住民サ
ービス・一時的宿泊施設・移動住宅等を通して提供されている。
― 96 ―
付録:法的規定
所有権部門のための法律:
-
Legge 5 agosto 1978, n. 457 "Piano decennale per l'edilizia residenziale" (住宅のための 10
年計画).
-
Decreto Ministero dei lavori pubblici dicembre 1994 "Programmi di recupero urbano.
Modalità e criteri generali per la concessione dei contributi, per l’individuazione delle zone
urbane interessate e per la determinazione delle tipologie di intervento" (都市の再生と復興).
-
Decreto Min. Lavori Pubblici 28 aprile 1997 "Programmi di Riqualificazione Urbana” (都市の
刷新と再生).
-
Decreto del Ministero dei Lavori Pubblici 8 ottobre 1998 "Programmi di riqualificazione
urbana e di sviluppo sostenibile del territorio" (都市の刷新と再生).
-
Legge 9 dicembre 1998, n. 431 "Riforma delle locazioni ": Disciplina delle locazioni e del
rilascio degli immobili adibiti ad uso abitativo (賃貸部門:免税等)。
国の法律だけではなく、その部門は、数多くの地域の法律にも支配されている。州政府(並び
に一部地方当局)は、様々な型の免税、補助金などを提供している。責任が州に移譲された後
で、地域は現在、基金を分配し、住宅利用条件などを調査している。
賃貸部門に関して、建設許可や都市の計画・再生・回復を管理する法律を別として、主要な法
律は以下に含まれている。
-
Legge 9 dicembre 1998, n. 431 "Riforma delle locazioni"―以前の法律 Equo Canone (公正
賃貸法)及び Patti in deroga 用の法律と置き換わった新しい賃貸関連法。
賃貸部門に関する法律は国の法律であるが、―新しい法律に関して―州政府は、(a)自らの
基金を、提供された国の予算に追加し、(b)「社会基金」が提供する家賃補助手当の利用基
準を定めることができる。 地方当局は、規制された家賃契約を受け入れている地主のために、
自らの基金(ICI: 地方財産税)を追加することも可能である。
― 97 ―
参考文献
Appetecchia E (1999) Evoluzione dei sistemi di finanziamento, relazione al Convegno
Evoluzioni dell’abitazione sociale, Cecodhas, Florence (unpublished).
Censis (1993) Indagine sulla condizione abitativa in Italia. Analisi della domanda marginale,
Censis, Roma.
Censis (1997) “Casa Monitor, Mercato, famiglie e mobilità”, Censis Note e Commenti, 12,
dicembre.
Cnel (1995) La politica abitativa in Italia, Cnel, Roma.
Cnel (1997a), Gli strumenti per una nuova politica del comparto delle abitazioni in locazione,
Cnel, Roma.
Cnel (1997b), Il sistema abitativo nei paesi dell'Unione Europea, Cnel, Roma.
Coppo M (1995), Il comparto delle abitazioni in locazione nelle politiche abitative locali e
nazionali, Cnel, Roma.
Coppo M (1999), Approvvigionamento di risorse, efficacia della spesa, resa sociale, relazione al
Convegno Evoluzioni dell’abitazione sociale, Cecodhas, Florence (unpublished).
Cremaschi M (1994), “La denazionalizzazione della questione abitativa”, Urbanistica, 102.
Cremaschi M. (1997), “Casa e relazioni sociali”, in Irer, Indagine sociale Lombarda,
Cambiamenti e condizioni di vita delle famiglie lombarde, Guerini, Milano.
Dilillo L (1999), La casa e le autonomie locali, relazione al Convegno Evoluzioni dell’abitazione
sociale, Cecodhas, Florence (unpublished).
Directorate General for Research (1998), Housing Policy in the EU Member States, Working
Documents, Social Affairs Series, Bruxelles.
European Commission (1995), Europe Social Protection, Directorate-General Employment,
Industrial Relations and Social Affairs, Bruxelles.
Istat (1991), Censimento della popolazione e delle abitazioni, , Istat, Roma.
Istat (1996), Famiglie, abitazioni, servizi di pubblica utilità. Indagine multiscopo sulle famiglie
1993-94, Istat, Roma.
Istat (1998a), Famiglie, abitazioni e sicurezza dei cittadini. Indagine multiscopo sulle famiglie
1996, Istat, Roma.
Istat (1998b), Rapporto sul paese, Istat, Roma.
Ministero dei Lavori Pubblici (1996), Rapporto sulla condizione abitativa in Italia, report for
Habitat II, Istanbul 1996, Roma.
Padovani L (1995), ed., Urban change and housing policies. Evidence from four European
Countries, Daest, Venezia.
Padovani L (1996), Italy, in P. Balchin, ed., Housing Policy in Europe, Routledge, London.
― 98 ―
Pim (1998) Condizione abitativa e problemi emergenti della residenza nella Provincia di Milano,
Centro Studi Pim e Provincia di Milano, mimeo.
Ranci C (1997), La società del rischio, Guerini, Milano.
Ricci R (1997), Povertà abitativa in Italia. 1989-1993, Commissione di indagine sulla povertà,
Roma.
Seassaro L (1994), “Continuità e discontinuità nelle politiche per la casa: un’interpretazione”,
Urbanistica 102.
Sunia-Rst (1999), Abitazioni e famiglie in affitto. Indagine sul mercato immobiliare nazionale,
Maggioli, Rimini.
Tosi A. (1994a), Abitanti, Il Mulino, Bologna.
Tosi A. (1994b) (ed), La casa: il rischio e l'esclusione, FrancoAngeli, Milano.
Tosi A (1996), Housing rights, insecuritry of tenure and poverty in Italy. Report 1995 to the
European Observatory on Homelessness, Feantsa, Bruxelles.
Tosi A. (2000) “L’accesso alla casa: l’esclusione e le politiche”, La nuova città, 7, luglio.
Tosi A., Ranci C (1995), Italy 1994 Report to the European Observatory on Homelessness,
Feantsa, Bruxelles.
― 99 ―