イタリア財政危機による ビジネス環境動向

イタリアの政治・経済動向
2014年4月
日本貿易振興機構(ジェトロ)ミラノ事務所
内 容
①
②
③
④
2
主要政治動向
主要経済指標
貿易・直接投資
日・伊関係
① 主要政治動向
上院議事堂マダーマ宮
(上院サイトより)
下院議事堂モンテチトーリオ宮
3
(下院サイトより)
(1)レッタ前政権の退陣
2013年12月:PD(民主党)の書記長選で、マッテオ・レンツィ氏(当時 フィレン
ツェ市長)が圧勝。政権与党のトップを決める選挙とあって注目を集めたが、結果は
レンツィ氏が67.55%の得票率で書記長就任。
2014年1月:レンツィ書記長は中道右派最大の党であるフォルツァ・イタリア(FI)
率いるシルビオ・ベルルスコーニ元首相とも会談を行い、上院議会制度改革や選挙
制度改革などの政策について一致。また当時のレッタ内閣を政治や経済の構造改
革が遅れていると非難。
2014年2月13日:PDは総会でレンツィ書記長の提案文書を採択。同文書はPDが
国家的課題に立ち向かうための政治勢力を含んだ新内閣を始動させ、新たな局面
を切り開いていく必要性と緊急性があるとし、現内閣に対して退陣を迫る。
2014年2月14日:レッタ前首相は、PDからの支持が得られない以上、政権を維
持できないと判断し、ジョルジオ・ナポリターノ大統領に辞意を表明。同大統領も辞
任を承諾。議会の信任を問わずにレッタ前内閣は退陣。
4
議会の信任を問わずに突然の退陣
(2)レンツィ新政権の誕生
レンツィ書記長は、ナポリターノ大統領から組閣の指示を受け、その際の会見で
今後各党との議論の基本となるテーマを挙げ、まずは憲法(地方自治について規
定した第5条の改正を意図)および選挙制度の改革、3月には労働に係る諸課題、
4月には行政改革、5月に財政改革に早急に取り組むとし、矢継ぎ早に改革を打ち
出していくことを明言。2月22日に新内閣の宣誓式が行われ、レンツィ新内閣が正
式に発足し、39歳の最年少の首相が誕生。
上院では2月24日、下院では25日に信任投票が行われ、レンツィ新内閣は上院
(定数315)で賛成169票、下院(定数630)で賛成378票を獲得し、議会での信
任を得た(PD、NCD・新中道左派、SC・市民の選択などが賛成/FI・フォルツァイタ
リア、M5S・5つ星運動、LN・北部同盟などが反対)。
レンツィ首相は大学時代に「プローディ(中道左派連合「オリーブの木」を結成した
元首相)委員会」を組織し、最初の政治活動を行った。また同氏の家族が経営する
企業でマーケティング担当として勤務した経験も持つ。2004年には、フィレンツェ
県の首長に選出された。在任中に同県の歳出削減などを行い、文化や環境への
投資を増やした。2009年にはフィレンツェ市長選で当選。
5
39歳の最年少首相が誕生
(3)レンツィ新内閣の特徴
レンツィ新内閣では、16人(首相を除く)が閣僚に任命。レッタ前内閣の発足時
の閣僚数21人に比べて5人少なく、管轄省のない無任所閣僚の数が削減された。
レンツィ政権では前政権の7人を上回る8人の女性が登用され、閣僚の半分を女性
が占める布陣となった。平均年齢も47歳となり、前政権発足時の53歳よりも若
返った。
新内閣は、引き続き左右両派の連立内閣となり、政党別にはPDから8人が入閣
した。右派からは、新中道右派(NCD)のアンジェリーノ・アルファーノ党首が前内閣
から引き続き内務相として続投。NCDはベルルスコーニ元首相が率いた「自由の人
民(PdL)」(現在は分離してFI)から分離した政党で、同元首相の右腕とみられてい
たがアルファーノ内務相がPdLから離脱し2013年11月に立ち上げた新党。
レンツィ新内閣では優先課題となっている経済や労働分野の閣僚についてはテ
クノクラートを起用。経済・財務相には経済学者のピエル・カルロ・パドアン氏が就
任。2007年にOECDの事務次長、09年には同チーフエコノミスト就任。2013年
12月には国家統計局(ISTAT)局長に指名され、国内外で活躍。
6
閣僚の半分は女性、平均年齢も若返り
(4)レンツィ新内閣の顔ぶれ
マッテオ・レンツィ内閣閣僚名簿(2014年2月22日発足)
氏名
氏名(伊)
省庁名
マッテオ・レンツィ(PD)
Matteo Renzi
首相
フェデリカ・モゲリーニ(PD)*
Federica Mogherini
外務省
アンジェリーノ・アルファーノ(NCD)
Angelino Alfano
内務省
アンドレア・オルランド(PD)
Andrea Orlando
法務省
ロベルタ・ピノッティ(PD)*
Roberta Pinotti
国防省
ピエル・カルロ・パドアン
Pier Carlo Padoan
経済・財務省
フェデリカ・グイディ*
Federica Guidi
経済開発省
マウリツィオ・マルティーナ(PD)
Maurizio Martina
農業・食糧・森林政策省
ジャンルカ・ガッレッティ(UdC)
Gianluca Galletti
環境・国土・海洋保全省
マウリツィオ・ルーピ(NCD)
Maurizio Lupi
インフラ・交通省
ジュリアーノ・ポレッティ
Giuliano Poletti
労働・社会政策省
ステファニア・ジャンニーニ(SC)*
Stefania Giannini
教育・大学・研究省
ダリオ・フランチェスキーニ(PD)
Dario Franceschini
文化財・活動・観光省
ベアトリチェ・ロレンツィン(NCD)*
Beatrice Lorenzin
保健省
マリア・エレナ・ボスキ(PD)*
Maria Elena Boschi
憲法改正・議会関係相
マリアンナ・マディーア(PD)*
Marianna Madia
行政・簡素化相
マリア・カルメラ・ランツェッタ(PD)*
Maria Carmela Lanzetta
地方自治相
<無任所大臣>
(注)①*は女性を示す。
②政党名は、PD・民主党、 NCD・新中道右派、UdC・中道連合、SC・市民の選択(記載がない場合はテクノクラート)。
7
(資料)大統領府サイト、各種報道などより作成
(5)レンツィ新政権の政策方針
 2014年2月に憲法(地方自治について規定した第5条の改正を意図)および選
挙制度の改革、3月には労働に係る諸課題、4月には行政改革、5月に財政改革
に早急に取り組む。緊急事項は労働、司法、国税、行政政策を変えること。「学校」
を中心に考え、若者のワークシェアリングなどにも早急に対処。 また労働に対する
税金を削減。イタリアに投資を行い雇用の場を作り出す人に対し、税金が高ければ
信用してもらえないと指摘。
 イタリアは食品やワインの輸出で約310億ユーロの売上高があり、またイタリア
製であるように見せかけて実際はイタリア製ではない食品の売り上げが600億ユー
ロと言われており、そうした見せかけ製品に約半分の市場を奪われていると指摘。
そうした意味でも2015年のミラノ万博がイタリアのけん引役となるように対応すべ
きであり、同万博は将来の基準となると重要性を指摘。
 財政政策の監視と調整の枠組み「ヨーロピアン・セメスター」は重要な機会であ
ると指摘。イタリアが苦境に陥ったのは欧州のせいだと言い続けるのは明白な事実
を否定するのみならず、イタリアの制度の歴史を否定することになると、EUの財政
規律の枠組みを維持することを明示。
8
EU財政規律遵守方向示すも具体策に懸念
【参考1】レッタ前政権の実施政策
【労働者】
若者の雇用奨励策として、2013年から2016年に7億9,400万ユーロを投入。若
者雇用コスト削減を意図して、①報酬の伴う職に少なくとも6ヵ月以上就いていな
い、②高等学校レベルの卒業資格が無い、③扶養家族がいる、のどれか一つでも
条件を満たす18歳~29歳の若者の雇用を決定した雇用主に対し、18ヵ月間、税
込給与額の3分の1に相当する金額(一人650ユーロを超えない)が税額控除され
る。また各種雇用契約の手続き簡素化やニートの若者への職業訓練に奨学金1億
6,800万ユーロを投入。さらに、給与補償金庫(CIG)への10億ユーロの融資などを
決定。
【企業・消費者】
主たる住居等に対するIMU(固定資産税)を見直し、新制度を策定するため、6月
に支払期限を迎える予定だったIMUの支払いを停止。また7月に予定されていた付
加価値税の標準税率21%の1ポイントの引き上げを10月1日からに延期して実施。
企業の機械、設備等の購入を支援するために50億ユーロを充当。エネルギー効率
向上と建物耐震化工事等の経費の税控除率が費用の55%から65%に引き上げ
(エコ・ボーナス)などを決定。
9
財源不足の中で限定的な政策展開
【参考2】レッタ前政権の実施政策(2014年予算法)
 企業向け
雇用増加のため州事業税(IRAP)控除。特にIRAP課税事業者に対し、2014年12
月31日までの期間に人員増として無期限雇用契約を結んだ場合、当該人件費を
控除。
 労働者向け
所得税の控除を増やし、労災(INAIL)の保険料と社会保障分担金を減らす。また
若者と失業者対策のため、29歳までの若者の雇用と安定の特別奨励金が州と自
治県により出資される。また 若い農業経営者を奨励するために、18歳から40歳ま
での若い農業経営者に優先的に融資が行われるような措置が行われる。
 社会インフラ
戦略的インフラの再融資。サレルノ- レッジョ·カラブリアの高速道路、ベネツィア
のモーゼ計画、いくつかの主要鉄道路線など。
 知的インフラ
大学への融資基金を強化し、2014年に1億5,000万ユーロ。大学生への奨学金
も強化し、2014年に5,000万ユーロ投入。医学部専門課程への再融資として、
2014年に3,000万ユーロ、2015年に5,000万ユーロ投入。
10
【参考2】レッタ前政権の実施政策(2014年予算法)
 税制
主たる住居等に対するIMU(固定資産税)が中心となっていた固定資産向けの税
システムを廃止し、合計10億の課税負担を軽減し、統一市町村税(Imposta Unica
Comunale)を導入。同税は、主たる住居とは関係のない不動産の所有に課税、ま
た、連帯サービス税TASIとごみ処理税TARIが基本となる新たな税制度。公平性確
保の観点から、収入30万ユーロを超える収入額に対し3%が課される連帯税は
2014年、2015年、2016年にも延長。
 歳出と公共財産の合理化
商業目的に使用しないものも含め、公共不動産売却の特別計画を政府が決定す
る。審議中の法律の発布から60日以内に決定されるこの計画では、2014年から
2016年までに年間5億ユーロ以上の収入が見込まれる。
他にも2014年から2017年に合計35億2,000万ユーロ以上の削減を保証するた
め、公共支出を見直しすための一連の対策がとられる。
など
11
② 主要経済指標
12
(1)実質GDP成長率(長期)
イタリアとEU27ヵ国およびユーロ圏17ヵ国のGDP成長率の推移
6.0
4.0
2.0
0.0
1996
1997 1998 1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005 2006 2007
2008
2009
△ 2.0
△ 4.0
△ 6.0
イタリア
EU27ヵ国
ユーロ圏17ヵ国
〔注〕2013年は予測値。
〔資料〕EU統計局(Eurostat)データベースより作成
13
続く経済の低迷
2010
2011
2012 2013
(2)経常収支
(100万ユーロ)
イタリアの経常収支の推移
40,000
20,000
0
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
-20,000
-40,000
-60,000
経常移転
所得
サービス
貿易
経常収支
〔資料〕イタリア銀行統計よりジェトロ作成
14
貿易収支の黒字縮小で2002年以降赤字傾向
(年)
(3)実質GDP成長率(短期)
イタリアの実質GDP成長率の推移(四半期ベース/前期比)
(単位:%)
最終消費支出
GDP
2010
2011
2012
2013
2010 I
II
III
IV
2011 I
II
III
IV
2012 I
II
III
IV
2013 I
II
III
IV
1.7
0.6
△ 2.4
△ 1.8
0.8
0.6
0.4
0.3
0.1
0.2
△ 0.2
△ 0.7
△ 1.1
△ 0.5
△ 0.4
△ 0.9
△ 0.6
△ 0.3
△ 0.1
0.1
個人
消費
1.0
△ 0.5
△ 3.7
△ 2.2
0.0
0.0
0.7
0.3
△ 0.5
△ 0.3
△ 0.6
△ 0.6
△ 1.7
△ 0.5
△ 1.2
△ 0.7
△ 0.5
△ 0.4
△ 0.2
0.0
1.5
△ 0.3
△ 4.0
△ 2.6
0.2
0.0
1.0
0.5
△ 0.4
△ 0.3
△ 0.7
△ 0.9
△ 1.7
△ 0.5
△ 1.5
△ 0.8
△ 0.6
△ 0.6
△ 0.2
△ 0.1
総固定資本形成
政府
消費
△ 0.4
△ 1.3
△ 2.6
△ 0.8
△ 0.8
0.0
0.0
△ 0.2
△ 0.7
△ 0.5
△ 0.5
0.5
△ 1.8
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.4
0.0
△ 0.1
△ 0.2
0.2
機械
設備
0.5
△ 1.6
△ 8.1
△ 4.6
1.3
0.6
0.2
△ 0.8
0.7
△ 1.0
△ 1.3
△ 2.2
△ 3.7
△ 1.5
△ 1.2
△ 1.2
△ 2.8
0.1
△ 0.6
0.9
8.4
0.6
△ 9.5
△ 5.4
4.3
2.2
1.2
1.2
△ 0.3
0.1
△ 0.3
△ 4.0
△ 3.8
△ 2.5
△ 0.7
△ 2.4
△ 2.1
△ 0.1
△ 1.0
△ 0.2
輸送
機器
△ 0.2
△ 1.2
△ 12.6
13.1
3.9
△ 2.5
1.2
△ 6.3
6.6
1.7
△ 5.8
△ 3.7
△ 5.5
△ 3.1
△ 2.0
3.9
2.2
7.4
0.0
14.4
建設
△ 4.6
△ 3.4
△ 6.2
△ 6.7
△ 1.1
△ 0.1
△ 0.8
△ 1.4
0.6
△ 2.3
△ 1.4
△ 0.5
△ 3.3
△ 0.6
△ 1.4
△ 1.1
△ 4.1
△ 0.9
△ 0.4
△ 0.8
輸出
11.2
6.9
2.0
△ 0.0
3.0
3.9
2.5
3.4
0.8
0.6
1.2
0.8
0.3
△ 0.1
1.0
△ 0.2
△ 1.3
0.6
0.5
1.2
輸入
12.3
1.4
△ 7.1
△ 2.9
4.4
3.4
1.5
5.5
△ 1.4
△ 1.8
△ 1.4
△ 2.3
△ 2.5
△ 0.8
△ 1.6
△ 1.7
△ 1.0
△ 0.2
0.9
0.2
(出所)イタリア国家統計局(ISTAT)資料より
15
2013年第4四半期0.1%成長で10期ぶりプラス
イタリア 実質GDP成長率の推移と需要項目別寄与度
(単位:%、ポイント)
4.0
純輸出
3.0
総固定資本
政府支出
個人消費
GDP
2.2
2.0
1.7
1.0
1.7
0.9
1.2
0.5
0.7
0.0
△ 1.0
△ 1.2
△ 1.8
△ 2.0
△ 2.5
△ 3.0
△ 4.0
△ 5.0
△ 5.5
△ 6.0
2005年
2006年
2007年
2008年
(出所)EU統計局(ユーロスタット)よりジェトロ作成。
16
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
注:基準年=2005年。2013~2015年は予測。
内需が弱含みで外需依存の傾向続く
(4)鉱工業生産指数
イタリアの鉱工業生産指数の推移(長期)
110.0
105.0
100.0
95.0
90.0
イタリアの鉱工業生産指数の推移(短期)
85.0
106.0
80.0
1990 91
92
93
94
95
96
97
〔注〕①データは季節調整等の調整を行っていない。
②2005年=100をベースとしたデータ。
〔資料〕イタリア国家統計局(ISTAT)資料より作成
98
99 2000 01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
(年)
104.0
102.0
100.0
98.0
96.0
94.0
92.0
90.0
〔注〕2010年=100とした季節調整済データ。
〔資料〕イタリア国家統計局(ISTAT)資料より作成
17
1990年代前半レベルに低迷
18
合計
食料品
非食料品
〔注〕2010年=100とした季節調整済データ。
〔資料〕イタリア国家統計局(ISTAT)資料より作成
2008年初頭以降は減少傾向が続く
2013年10月
2013年07月
2013年04月
2013年01月
2012年10月
2012年07月
2012年04月
2012年01月
2011年10月
2011年07月
2011年04月
2011年01月
2010年10月
2010年07月
2010年04月
2010年01月
2009年10月
2009年07月
2009年04月
2009年01月
2008年10月
2008年07月
2008年04月
2008年01月
2007年10月
2007年07月
2007年04月
2007年01月
2006年10月
2006年07月
2006年04月
2006年01月
2005年10月
2005年07月
2005年04月
2005年01月
(5)小売売上高指数
イタリアの小売売上高指数の推移
104
102
100
98
96
94
92
(6)消費者信頼感指数
イタリアの消費者信頼感指数の推移
115.0
105.0
95.0
85.0
75.0
65.0
消費者信頼感
個人環境
経済環境
現在環境
将来環境
〔注〕2005年=100とした季節調整済データ。
〔資料〕イタリア国家統計局(ISTAT)資料より作成
19
2013年後半に入り明るい兆しを期待?
9月
7月
5月
3月
11月
2013年1月
9月
7月
5月
3月
2012年1月
9月
11月
7月
5月
3月
2011年1月
11月
9月
7月
5月
3月
2010年1月
11月
9月
7月
5月
3月
11月
2009年1月
9月
7月
5月
3月
2008年1月
55.0
(7)新車登録台数
(単位:1,000台)
イタリアの乗用車新車登録台数の推移
2,500
2,400
2,300
2,200
2,100
2,000
1,900
1,800
1,700
1,600
1,500
1,400
1,300
1,200
1,100
1970
1971
1972
1973
1974
1975
1976
1977
1978
1979
1980
1981
1982
1983
1984
1985
1986
1987
1988
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
1,000
〔注〕2012年データは暫定値。
〔資料〕ANFIA(イタリア自動車工業会)データより作成
20
1970年代の水準までに落ち込み約130万台
(年)
「2013年消費と流通に関する報告書」
(COOP発行)
(1) 健康などの幸福や生活の質を維持するために、浪費やぜいた
く品の購入を避けている。
(2)食品の節約に関して、消費者はディスカウント店やスーパー
マーケットを頻繁に利用し、安売り品、経済的な商品(赤肉から鶏肉
へ、ワインからビールへ)、ブランド品よりもプライベートブランドなど
に関心を移している。また無駄を省く意味で、簡単に長期保存が可
能な食品(サラミ、チーズなど)の消費は維持。
(3)ただし、健康への配慮は欠かしておらず、イタリア産や良質なも
のを購入する傾向にあり、有機食品の販売は不況下でも増加して
いる。
21
食品は無駄を省き「健康」には支出する一面も
(8)消費者物価
イタリアの消費者物価指数(CPI)の推移
指数
(1995年=100)
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2012年
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
2013年
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
前月比
(%)
136.6
137.7
139.8
102.8
105.9
107.2
104.4
104.8
105.3
105.8
105.8
106.0
106.1
106.5
106.5
106.5
106.3
106.5
106.7
106.8
107.0
107.0
107.0
107.3
107.4
107.8
107.5
107.3
107.0
107.2
前年同月比
(%)
―
―
―
―
―
―
0.3
0.4
0.5
0.5
0.0
0.2
0.1
0.4
0.0
0.0
△ 0.2
0.2
0.2
0.1
0.2
0.0
0.0
0.3
0.1
0.4
△ 0.3
△ 0.2
△ 0.3
0.2
3.3
0.8
1.5
2.8
3.0
1.2
3.2
3.3
3.3
3.3
3.2
3.3
3.1
3.2
3.2
2.6
2.5
2.3
2.2
1.9
1.6
1.1
1.1
1.2
1.2
1.2
0.9
0.8
0.7
0.7
〔注〕2011年の統計から、ベースが2010年=100に変更。
〔資料〕イタリア国家統計局(ISTAT)資料より作成
22
2012年年末頃から低下傾向
(9)失業率
イタリアの失業率の推移(四半期ベース)
(%)
14.0
13年1 Q
12.8%
13.0
12.0
11.0
10.0
10年1Q
9.1%
04年1Q
8.7%
9.0
8.0
07年3Q
5.6%
7.0
6.0
5.0
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
(資料)イタリア国家統計局(ISTAT)資料よりジェトロ作成
23
2013年に12%を突破
2012
2013
(年)
(10)国債利回りの推移
イタリア国債利回りの推移
16
14
13.1
12.06
12
10
8
5.65
6
4.75
5.04
4.38
4
2
0
1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
全体平均
10年物
(出所)イタリア経済・財務省資料よりジェトロ作成
24
ユーロ導入後の落ち着きも債務危機で波乱
(11)一般政府債務残高
イタリア公債の投資家別保有状況
1800000
1600000
1400000
1200000
1000000
800000
600000
400000
200000
0
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
海外投資家
その他国内
投資家
その他国内
金融機関
その他
国内銀行
(年)
イタリア銀行
(中央銀行)
(注)各年末時点におけるデータ(2013年は11月末)。
(資料)イタリア銀行資料よりジェトロ作成。
25
債務危機後に国内銀行や金融機関の保有が上昇
(12)国内銀行の国内向け貸出変化
(単位:100万ユーロ)
イタリアの国内銀行の国内貸出残高の推移
2,400,000
2,380,000
2,360,000
2,340,000
2,320,000
2,300,000
2,280,000
(出所)イタリア銀行統計よりジェトロ作成
26
債務危機以降は減少傾向が続く
(13)2014年の経済見通し
主要経済指標にみるイタリア経済の見通し
項 目
①実質GDP成長率(%)
個人消費支出
政府消費支出
総固定資本形成
財貨・サービスの輸出
財貨・サービスの輸入
②消費者物価指数上昇率(%)
③賃金上昇率(%)
④失業率(%)
⑤国際収支(億ユーロ)
経常収支
貿易収支
⑥その他重要指標(GDP比、%)
財政赤字
政府債務残高
2012年
(実績)
△
△
△
△
2.4
4.3
2.9
8.0
2.3
△ 7.7
3.0
1.0
10.7
2013年
(見通し)
△
△
△
△
2014年
(見通し)
1.7
2.5
0.3
5.3
0.2
△ 2.9
2.0
1.4
12.2
1.0
0.5
△ 0.1
2.0
4.2
4.2
1.8
1.0
12.4
△ 60
178
49
260
n.a.
n.a.
△ 3.0
127.0
△ 3.1
133.0
△ 2.3
133.2
(注)⑤の貿易収支は財のみ。⑥は「経済財政書2013(改訂版)」策定当時に既に有効となっていた法律の効果のみを算入したも
の。また政府債務残高は、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)を通じたギリシャへの融資負担や欧州安定メカニズム(ESM)に
対する負担分を含む。
(出所)①~④と⑥は経済財務省「経済財政書2013(改訂版)」(2013年9月20日)、⑤はイタリア銀行「国際収支統計」(2013年は
第1~3四半期の速報値)
27
2014年はプラス成長が期待されるも内需は脆弱
 2013年第4四半期にプラス成長を記録し、13年に入って以降は成長率も改善
傾向。政府は12年末に景気後退は底を打ったとし14年はプラス成長を予測。
 ISTAT(国家統計局)は2014年の実質GDP成長率を政府予測と比較して0.3ポ
イント低い0.7%と予測。輸出が最も高い伸びを記録すると予測し、経済成長への
回復に寄与。企業は輸出競争力を確保するため、輸出製品の価格低減に取り組
んでおり、輸出企業は競争力を維持するため、ドルに対する一層のユーロ安や、労
働コストに関わる社会保障費の抑制を意図した経済政策の導入などを期待。
 個人消費は消費者物価の上昇が緩やかになり、可処分所得が増加し、消費者
の購買力も多少高まるとみられ、前年比で増加すると予測。しかし、労働市場環境
が依然として厳しいことや、所得収入の改善にも限界があり、伸び率は微増。
 総固定資本形成は、民間企業に対する公的機関の債務返済状況の改善も含
め、低調だった資金貸し付けに改善を見通す。機械設備や輸送機器分野の急回
復が見込まれているが、建設投資は引き続き厳しい。政府は2013年4月に、
2013〜14年の2年間で約400億ユーロを公的機関から民間への負債返済に充
当することを決定。13年8月には13年に72億ユーロを追加で同様の返済に充当
することを決定しており、返済の実施が成長率に影響する可能性。
28
輸出の伸びや公的機関の債務返済がポイント
③ 貿易・直接投資
サンシーロスタジアム
(サンシーロスタジアムのウェブサイトより)
29
(1)貿易動向
イタリアの品目別輸出入
(単位:100万ユーロ,%)
輸出(FOB)
2011年
金額
輸入(CIF)
2012年
金額
2011年
構成比
伸び率
金額
2012年
金額
構成比
伸び率
機械
68,447
70,483
18.1
3.0
24,138
22,502
5.9
△ 6.8
金属製品
48,386
50,779
13.0
4.9
42,468
37,753
10.0
△ 11.1
繊維・衣料品・皮革製品
41,979
43,064
11.0
2.6
28,876
26,478
7.0
△ 8.3
輸送機器
36,518
36,142
9.3
△ 1.0
38,334
30,213
8.0
△ 21.2
食品・飲料・たばこ
24,419
26,059
6.7
6.7
27,497
27,242
7.2
△ 0.9
化学品
24,925
25,331
6.5
1.6
36,476
35,627
9.4
△ 2.3
ゴム・プラスチック・非金属鉱物製品
22,516
22,574
5.8
0.3
12,404
11,490
3.0
△ 7.4
燃料・石油精製品
16,845
20,513
5.3
21.8
10,077
10,577
2.8
5.0
電気機器
20,309
19,936
5.1
△ 1.8
13,839
13,291
3.5
△ 4.0
医薬品
15,314
17,227
4.4
12.5
19,187
19,737
5.2
2.9
コンピュータ・電子・光学機器
12,935
12,599
3.2
△ 2.6
30,904
24,667
6.5
△ 20.2
木材・木工品・紙製品・印刷物
7,503
7,628
2.0
1.7
10,158
9,220
2.4
△ 9.2
農林水産物
5,800
5,791
1.5
△ 0.2
13,013
12,291
3.2
△ 5.5
鉱物・石油・天然ガス
1,276
1,451
0.4
13.8
69,151
74,111
19.6
7.2
総額(その他含む)
375,904
389,725
100.0
〔注〕EU 域外貿易は通関ベース,EU 域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕イタリア国家統計局(ISTAT)より
3.7
401,428
378,759
100.0
△ 5.6
30
イタリアの主要国・地域別輸出入(再輸出を含む総額ベース)
31
(単位:100万ユーロ,%)
輸出(FOB)
輸入(CIF)
2011年
2012年
2011年
2012年
金額
金額
構成比
伸び率
金額
金額
構成比
伸び率
アジア大洋州
35,667
37,601
9.6
5.4
52,405
43,640
11.5
△ 16.7
日本
4,732
5,637
1.4
19.1
4,218
3,191
0.8
△ 24.3
中国(香港除く)
9,996
9,003
2.3
△ 9.9
29,574
24,695
6.5
△ 16.5
韓国
2,926
3,465
0.9
18.4
3,255
2,804
0.7
△ 13.9
ASEAN
5,584
6,616
1.7
18.5
6,902
6,408
1.7
△ 7.1
シンガポール
1,794
1,904
0.5
6.1
284
255
0.1
△ 10.3
タイ
1,199
1,470
0.4
22.6
1,413
1,102
0.3
△ 22.0
インド
3,736
3,349
0.9
△ 10.3
4,780
3,751
1.0
△ 21.5
EU27
210,666
209,214
53.7
△ 0.7
215,728
200,314
52.9
△ 7.1
ユーロ圏
160,214
157,785
40.5
△ 1.5
174,070
161,727
42.7
△ 7.1
49,267
48,713
12.5
△
1.1
62,388
55,219
14.6
△
11.5
ドイツ
43,593
43,169
11.1
△ 1.0
33,603
31,318
8.3
△ 6.8
フランス
19,890
18,291
4.7
△ 8.0
18,111
16,848
4.4
△ 7.0
スペイン
非ユーロ圏
49,718
50,627
13.0
1.8
40,656
37,606
9.9
△ 7.5
17,542
18,964
4.9
8.1
10,943
9,554
2.5
△ 12.7
英国
9,418
9,213
2.4
△ 2.2
7,518
7,125
1.9
△ 5.2
ポーランド
6,135
5,825
1.5
△ 5.1
5,295
4,851
1.3
△ 8.4
ルーマニア
スイス
20,640
22,878
5.9
10.8
11,294
11,018
2.9
△ 2.4
ロシア
9,305
9,993
2.6
7.4
16,904
18,331
4.8
8.4
中東
18,454
19,164
4.9
3.8
29,031
24,929
6.6
△ 14.1
湾岸諸国会議(GCC)
10,283
12,074
3.1
17.4
10,385
10,818
2.9
4.2
トルコ
9,634
10,618
2.7
10.2
5,979
5,257
1.4
△ 12.1
北米(NAFTA)
28,761
33,288
8.5
15.7
15,670
15,439
4.1
△ 1.5
米国
22,831
26,656
6.8
16.8
13,026
12,666
3.3
△ 2.8
アフリカ
15,989
19,015
4.9
18.9
27,759
35,169
9.3
26.7
アルジェリア
3,013
3,767
1.0
25.0
8,311
8,972
2.4
8.0
チュニジア
3,048
3,170
0.8
4.0
2,569
2,251
0.6
△ 12.4
エジプト
2,594
2,863
0.7
10.3
2,528
2,296
0.6
△ 9.2
リビア
610
2,404
0.6
293.8
3,973
12,874
3.4
224.1
中南米
14,122
15,117
3.9
7.0
12,009
9,838
2.6
△ 18.1
ブラジル
4,782
4,997
1.3
4.5
4,148
3,402
0.9
△ 18.0
合計(その他含む)
375,904
389,725
100.0
3.7
401,428
378,759
100.0
△ 5.6
〔注1〕アジア大洋州はASEAN+6(日本,中国,韓国,オーストラリア,ニュージーランド,インド)に香港および台湾を加えた合計値。
〔注2〕湾岸協力会議(GCC)は,UAE,バーレーン,クウェート,オマーン,カタール,サウジアラビアの6 カ国の合計値。
〔注3〕NAFTA は,米国,カナダ,メキシコの3 カ国の合計値。
〔出所〕イタリア国家統計局(ISTAT)より
 2012年の輸出は前年比3.7%増の3,897億2,500万ユーロとなり過去最高を
記録。しかし重要な輸出先であるEU27(構成比53.7%)が、欧州債務危機による
景気後退の影響を受けて減少。また拡大を続けていた中国(2.3%)も、中国経済
後退の影響を受けて減少するなどの下押し圧力もあり、輸出全体の伸び率は
2011年の同11.4%増に比較して低下。
 品目別にみると、燃料・石油精製品(構成比5.3%)が前年比21.8%増となり
最大の伸び率で、かつ輸出の伸びに最も寄与。原油価格の高騰やユーロ安が金額
の伸びに影響。また金属製品(13%)は同4.9%増。特に希少・半加工金属
(2.3%)が同28%増と伸びたことが寄与。輸出が拡大している医薬品(4.4%)は、
2012年も過去最高を記録。先進国人口の高齢化によって医薬品の需要が伸びて
いることが輸出拡大につながっている。
 国・地域別にみると、EU27でも特にユーロ圏(構成比40.5%)が前年比1.5%
減となり、輸出全体を押し下げ。その結果EU27向けの輸出比率は2011年の
56%からさらに低下して53.7%。また2012年に100億ユーロが見込まれていた
中国向けが落ち込み。中国向けの最大の輸出品目である機械が同22.7%減と減
少したことが響いた。しかし中国市場におけるメイド・イン・イタリーの特に高級な繊
維や衣料品に対する関心は高く、繊維・衣料品・皮革製品などの輸出は拡大。
32
輸出~欧州や新興国経済後退で伸び率が低下~
 輸入は内需低迷の影響を受けて前年比5.6%減の3,787億5,900万ユーロと
なり、2003年以来9年ぶりに貿易黒字(109億6,600万ユーロ)。
 品目別にみると総じて減少するなか、輸送機器(構成比8%)が前年比21.2%
減と最も減少し、輸入全体の下落に影響。主力の自動車(4.9%)が同26.2%減
と減少。次いで減少したのがコンピューター・電子・光学機器(6.5%)で、同20.2%
減となった。2011年に引き続き太陽光発電設備関連の電子部品の輸入減少が影
響。繊維・衣料品・皮革製品(7%)も減少。糸や生地などの繊維の輸入が衣料品
の減少幅を上回っており、国内での生産活動は低迷。
 国・地域別にみるとEU27(構成比52.9%)は前年比7.1%減となり、輸入にお
けるEU27の割合は2011年の53.7%から0.8ポイント低下。特に最大の輸入相手
国であるドイツからの輸入は主力の自動車が同34.3%減となったことが影響。EU
域外でも主要国からの輸入は軒並み減少。アジア大洋州(11.5%)は、好調を維
持していた中国(6.5%)からの輸入が同16.5%減と減少したことが影響。一方で
ベトナム(0.5%)からの輸入は通信用機器が同2.8倍増となり、アジア大洋州諸国
が減少するなかで唯一プラスを記録。
33
輸入~内需低迷が続き9年ぶりの貿易黒字~
(2)直接投資動向
イタリアの国・地域別対内・対外直接投資<国際収支ベース,ネット,フロー>
34
アジア大洋州
日本
中国
韓国
ASEAN
マレーシア
シンガポール
インド
オーストラリア
EU27
ユーロ圏
ドイツ
フランス
オランダ
ベルギー
非ユーロ圏
英国
スイス
ロシア
中東
湾岸諸国会議(GCC)
トルコ
北米(NAFTA)
米国
アフリカ
アルジェリア
エジプト
南アフリカ共和国
中南米
アルゼンチン
ブラジル
合計(その他含む)
〔出所〕イタリア銀行より
2011年
金額
N.A.
631
142
△ 67
N.A.
△4
41
66
47
N.A.
19,212
△ 99
13,529
4,251
2,525
N.A.
4,309
3
△ 18
N.A.
N.A.
36
939
899
266
148
10
52
N.A.
30
42
24,691
対内投資
2012年
金額
N.A.
27
53
△0
N.A.
0
△2
△6
17
N.A.
11,055
754
1,763
2,782
2,295
N.A.
275
323
2
N.A.
N.A.
2
197
181
74
34
6
4
N.A.
38
42
12,468
伸び率
N.A.
△ 95.8
△ 62.7
-
N.A.
-
-
-
△ 63.4
N.A.
△ 42.5
-
△ 87.0
△ 34.6
△ 9.1
N.A.
△ 93.6
10,602.9
-
N.A.
N.A.
△ 94.8
△ 143
△ 79.9
△ 72.1
△ 77.4
△ 38.8
△ 92.0
N.A.
27.5
△ 1.7
△ 49.5
2011年
金額
N.A.
289
1,144
△4
N.A.
137
678
694
452
N.A.
20,322
1,509
△ 395
1,127
1,869
N.A.
1,966
△ 309
1,198
N.A.
N.A.
650
2,247
1,974
2,820
1,182
1,107
206
N.A.
259
141
38,573
(単位:100万ユーロ)
対外投資
2012年
金額
伸び率
N.A.
N.A.
70
△ 75.6
584
△ 49.0
307
-
N.A.
N.A.
90
△ 34.1
34
△ 94.9
678
△ 2.3
122
△ 73.0
N.A.
N.A.
8,362
△ 58.9
△ 358
-
△ 139
-
4,976
341.4
765
△ 59.1
N.A.
N.A.
413
△ 79.0
127
-
1,220
1.8
N.A.
N.A.
N.A.
N.A.
363
△ 44.1
973
△ 135
746
△ 62.2
3,087
9.5
1,390
17.6
1,009
△ 8.9
97
△ 52.9
N.A.
N.A.
149
△ 42.5
365
158.0
23,155
△ 40.0
 対内投資は2011年に続き、フランス企業に大型案件がみられ、電力大手の
フランス電力公社(EDF)は、デルミ(イタリアのエネルギー企業A2Aが出資する持
ち株会社)が保有するトランスアルピナ・ディ・エネルジア(TdE)株式の50%を取得
し、出資比率を100%に引き上げた(2012年5月)。この結果EDFはエネルギー
大手のエジソンの株式を80.6%取得。ほかにも、シャルル・ド・ゴール空港で免税
店を運営するLSトラベルリテイルEMEAの子会社AELIAは、ローマ空港(フィウミ
チーノおよびチャンピーノ)で免税店を運営するAdRリテイルを買収。また投資会社
PAIパートナーズは2012年12月、同社が運営する投資ファンドによって管理され
ているイタリア企業を通じ、眼鏡製造・販売大手のマルコリンの株式78%を取得。
各分野で成長機会としてイタリア企業を活用したフランス企業の投資がみられた。
 中国の重工業企業である山東重工集団は、高級ヨット製造・販売フェッレッ
ティの株式75%を取得したことを2012年1月に発表。フェッレッティは債務を抱え,
リストラを進めている途中だった。またロシアの石油大手ルクオイルは、石油精製
ISABの株式20%をエネギー企業ERG(イタリア)から取得し出資比率を60%から
80%に引き上げ。ERGはイタリアで最大の風力発電事業者でもあり、景気後退が
直撃している石油精製事業を縮小し、将来のエネルギー開発プロジェクトを推進
するための財務基盤強化を視野に入れており、イタリア企業が新興国企業の資
金力を活用して事業再編を試みる案件が見られた。
35
対内投資~仏企業の成長機会として買収続く~
 対外投資では、イタリアが強みを持つ食品分野で、2012年12月に飲料大手の
カンパリグループが、スペイン子会社を通じてジャマイカのラム酒製造・販売ラセル
ズ・デメルカドの株式98.6%を約3億1,600万ユーロで買収。またイタリアが有力産
地を抱える眼鏡製造分野では、海外の流通部門や同業への投資がみられ、世界
企業にも成長しているルクソティカグループは、2012年8月にスペインの眼鏡販売
チェーンであるサン・プラネット・リテイル・チェーンを約2,000万ユーロで買収。
 自動車関連分野ではタイヤ製造・販売大手ピレリの同社ロシア合弁企業は、石
油化学企業SIBURからキーロフとボロネージの2ヵ所のタイヤ製造工場を2億2,200
万ユーロで譲渡を受けた。2011年12月にはキーロフ工場が、2012年12月には
特にハイエンドのタイヤを製造するボロネージ工場の譲渡が完了。また自動車製
造・販売大手のフィアットは2012年4月にセルビアの合弁会社を通じてクラグエバ
ツ市に新工場を設立。また6月には中国の広州汽車との合弁会社を通じて湖南省
長沙市に新工場を設立。フィアットは経営破綻した米国のクライスラーへの出資比
率の引き上げを続け海外展開を加速しており、国内の空洞化が懸念されている。し
かし今後は現存する国内事業を特に欧州域外の潜在的輸出先国向けに再構築す
る。また研究開発や技術革新といった重要分野については、国内活動を基盤とし
て技術や知識の開発を進め、国内での新製品開発への投資も継続するとし、現状
では国内事業継続の意向を明確にしている。
36
対外投資~縮小するも新興国対応が進む~
④ 日・伊関係
37
(1)貿易動向
イタリアの対日主要品目別輸出入 <通関ベース>
(単位:100万ユーロ,%)
輸出(FOB)
金額
繊維・衣料品・皮革製品
輸入(CIF)
2012年
2011年
金額
2012年
2011年
構成比
伸び率
金額
金額
構成比
伸び率
1,365
1,598
28.3
17.1
98
101
3.2
3.5
医薬品
742
875
15.5
18.0
203
172
5.4
△ 14.9
輸送機器
562
716
12.7
27.5
1,307
892
27.9
△ 31.8
食品・飲料・たばこ
576
694
12.3
20.5
5
6
0.2
19.3
機械
395
468
8.3
18.6
1,074
753
23.6
△ 29.9
化学品
325
364
6.5
11.9
530
489
15.3
△ 7.8
コンピュータ・電子・光学機器
176
215
3.8
22.3
332
228
7.1
△ 31.5
ゴム・プラスチック・非金属鉱物製品
121
131
2.3
8.6
211
173
5.4
△ 17.7
金属製品
61
84
1.5
37.5
181
140
4.4
△ 22.7
電気機器
75
84
1.5
11.1
119
87
2.7
△ 26.3
燃料・石油精製品
13
54
1.0
314.8
4
26
0.8
553.4
農林水産物
32
31
0.5
△ 5.5
4
5
0.2
25.3
木材・木工品・紙製品・印刷物
26
24
0.4
△ 6.4
15
14
0.4
△ 10.5
2
2
0.0
△ 33.0
6
1
0.0
△ 76.9
4,732
5,637
100.0
19.1
4,218
3,191
100.0
△ 24.3
鉱物・石油・天然ガス
合計(その他含む)
〔出所〕イタリア国家統計局(ISTAT)より
38
 2012年の対日貿易は、輸出が前年比19.1%増の56億3,700万ユーロとなり、
全体平均の3.7%を上回る増加。輸入は同24.3%減の31億9,100万ユーロとなり、
リーマン・ショック後の金融不況の影響を受けた2009年以来、3年ぶりに30億ユー
ロ台。また貿易収支も2011年の5億1,400万ユーロから24億4,600万ユーロへと
急増し、2年連続の対日貿易黒字。
 日本への輸出では、繊維・衣料品・皮革製品(構成比28.3%)が前年比で増加。
輸送機器(12.7%)は主力の自動車(6.4%)が同45.2%増と増加。食品・飲料・
たばこ(12.3%)は,ワイン(2.8%)、その他加工保存果物および野菜(1.8%)、
油・脂肪(1.7%)などが伸びており、日本におけるイタリア製品の根強い人気を反
映。医薬品(15.5%)も好調を維持。2007年からの5年間で輸出額は2.2倍増。
 日本からの輸入は、主力の輸送機器(構成比27.9%)と機械(23.6%)がい
ずれも前年比で約30%減少し輸入全体の減少に影響。多くの品目で輸入が減少
したが、繊維・衣料品・皮革製品(3.2%)は同3.5%増と増加。日本製の繊維・衣
料品はイタリアでもスタイルへの細かい配慮と高い品質が認知されている。また食
品・飲料・たばこ(0.2%)や農林水産物(0.2%)も前年比で増加。福島第1原子力
発電所被災やEUの放射線検査に関する規則の実施などの影響が徐々に緩和され
始めているが、いずれも対日輸入全体の0.2%程度に過ぎず輸入額は少ない。
39
貿易~輸入減少が響き2年連続対日貿易黒字~
(2)直接投資動向
日本企業による最近の主なイタリア進出事例
年月
イタリア企業
分野
概要
2012年1月
三菱商事
AR Industrie Alimentari S.p.A
の子会社
トマト加工品製造・販売
同社の英国子会社Princes LimitedがAR Industrie Alimentari S.p.A
の子会社株式51%を取得し、出資して設立される新会社はイタリア南部プーリア州に
立地する主力工場を保有する。トマト加工品分野における事業領域を製造から販売
まで広げ、安定的な供給の確保や品質管理強化等を進め顧客企業への対応力強化
に取り組む。
2012年3月
日本農薬
Sipcam Europe S.p.A
農薬製造・販売
日本農薬は農薬製造・販売のSipcam S.p.Aによって2011年7月に設立された持株子
会社Sipcam Europe S.p.Aが実施した第三者割当増資を引き受け同社株式10%を取
得。Sipcam S.p.Aは欧州域内の農薬・種子・肥料の販売事業強化を目的として再編を
行い、主に南欧やベネルクス諸国事業を統括するSipcam Europe S.p.Aを設立。日本
農薬は欧州販売強化を目的としており、両社の意向が一致した。
2012年4月
日本電産
Ansaldo Sistemi Industriali S.p.A
産業用モーター製造・販売
プライベートエクイティファンドの関連子会社(オランダ)からAnsaldo Sistemi
Industriali S.p.Aの全株式を取得。Ansaldo Sistemi Industriali S.p.Aは欧州に協力な販
売基盤があり、また日本電産の産業用モーター事業(NMC)で販売基盤のなかった中
東、ロシア、インド、中国にも販売実績を有しており、NMCは今回の買収で販売基盤
を固めてグローバル展開を加速する。
グループ会社であるEpson Italia S.p.a.は、デジタル捺染ビジネス強化のため、For.Tex
S.r.l.に50%出資。フォルテックス社はエプソンがF.Lli Robustelli S.r.l.と共同開発したイ
ンクジェット捺染印刷機「モナリザ」に関するデジタル捺染ビジネスにおいて、2003年
から業務提携を開始。今後アナログ捺染からの移行により、2015年にはその市場規
模が2010年の約4倍にまで拡大すると見込まれるデジタル捺染領域において、連携を
さらに強化しビジネスの拡大を図る。
2012年4月
セイコーエプソン
For.Tex S.r.l.
捺染用インクの販売、前後処理剤の製
造・販売、 デジタル捺染のケミカル処理
コンサルティング、インクジェット捺染印
刷機の販売サポート
2012年8月
NTTドコモ
Buongiorno S.p.A
NTTドコモは、ドイツ子会社を通じてBuongiorno S.p.Aの株式を公開買い付けで買収
し、買収金額は約208億円相当。同社はBuongiorno S.p.Aが運営する世界57ヵ国約
モバイルコンテンツの配信およびプラット
20億人のユーザにアクセス可能な事業基盤を活用し、国内外で培ったモバイルビジ
フォームサービスの提供と運営
ネスに関するサービス実績と事業ノウハウを展開し、海外におけるプラットフォーム事
業基盤確立に向けた体制強化を狙う。
2012年9月
ユニプレス
Magnetto Automotive SpA
(同社ブラジル拠点)
車体用プレス部品製造・販売
ユニプレスは、成長するブラジル市場において、日産自動車および他の自動車関連
企業への販売を視野に入れ、マニュエットオートモーティブのブラジ子会社マニュエッ
トオートモーティブブラジルとの資本・業務提携に関する覚書を締結し同社株式40%を
取得する。新規取引先拡大を視野に入れていたマニュエットオートモーティブと、ブラ
ジルへの新規進出検討を進めていた同社の意向が一致。マニュエットオートモーティ
ブブラジルは、 プジョーシトロエンブラジル向けに自動車パネル・車体部品の製造、
販売を行っております。
2012年9月
トプコン
GEOTOP S.r.l
精密ポジショニング・測量機器等の販売
トプコンはオランダ子会社を通じて、GEOTOP S.r.lの過半数株式を取得。GEOTOPは
イタリア全土をカバーする5つのサービスセンターを保有し、カンパーニャ州ポンペイ
にはモニタリングセンターを保有。またイタリア国内に200以上のGNSS基準局を保有
し、欧州最大級のGNSSネットワークであるNetGEOを展開している。トプコンは、イタリ
ア国内に4つの子会社(Topcon Tierra社、Topcon InfoMobility社、GEOTOP社及び
GeoPro社)を保有することにより、イタリアにおける開発・販売力の強化を図る。
2012年9月
ミズノ
Alto SpA
スポーツ用品販売
代理店を買収し、2013年にイタリアミズノを設立し、南欧地域における重要拠点として
マーケティング機能の強化と販売拡大を進める。
次世代型太陽熱発電関連事業
2011年6月に太陽熱発電の核技術である溶融塩集熱管製造のArchimede Solar
Energy S.r.l.と次世代型太陽熱発電事業開発で協力していく提携協定を締結していた
が、2012年10月に同事業分野開拓を推進するため、ASE社に15%出資。イタリア国
内における固定価格買取制度を活用した太陽熱発電の設計・調達・建設業務及び関
連事業機会を足掛かりとして、将来的には中東・北アフリカ地域へと事業拡大を図
る。
2012年10月
40
日本企業
千代田化工建設
Archimede Solar Energy S.r.l.
2012年12月
東海ゴム工業
Dytech-Dynamic Fluid Technologies
S.p.A.
自動車用ホース
自動車用ホース製造のDytech-Dynamic Fluid Technologies S.p.A.を買収。同社グ
ループの自動車用ホース事業の生産拠点は、8 カ国から15 カ国に増加。日系自動
車メーカーの重要拠点である欧州や、今後の市場拡大を見込める南米での現地生
産が可能になるとともに、海外自動車メーカーへの販路も獲得でき、世界的な供給体
制が整える(2013年2月に買収完了し、買収額は6,250万ユーロ)。
2012年12月
JX日鉱日石開発
Eni S.p.A.
油ガス田開発
英国法人を通じ、エネルギー大手のEni S.p.Aが英領北海に保有する複数の油ガス田
の権益の買収に合意。生産中の17油ガス田、開発中の1油田、既発見未開発の7油
ガス田等の権益です。今後、これら油ガス田の開発が進めば、当社の中長期的な石
油・天然ガス生産量増加に貢献することになる(2013年2月英国政府承認)。
日本企業による最近の主なイタリア進出事例
年月
2013年1月
2013年2月
2013年3月
2013年3月
(2)直接投資動向
日本企業
イタリア企業
日本通運
Franco Vago S.p.A.
日本バルカー工業
Guarniflon S.p.A.
(同社中国拠点)
分野
概要
ドイツ法人(欧州日本通運)を通じ、Franco Vago社と合意し、株式譲渡契約を締結。
Franco Vago S.p.Aは高級ファッションブランドなどの衣料品関連のフォワーディング、
フォワーディング(航空・海運・トラック)、 ロジスティクス事業を主力事業としており、イタリア国内のみならず、中国、米国を含
ロジスティクス事業
む世界各地に拠点を有し、アパレル関連の物流事業において、確固たる地位を築い
ている。今回の買収により、アパレル関連物流事業のさらなる強化を図るとともに、ア
ジア地域をはじめとする新興国においても、同事業の展開を加速させる。
ふっ素樹脂成型加工・販売
ふっ素樹脂事業拡大の一環として、Guarniflon S.p.A.との協業に合意。子会社の上海
バルカーふっ素樹脂製品有限公司(日本バルカー70%、ダイキン工業30%出資)と
Guarniflon S.p.A.との共同出資により、中国・上海市において合弁会社を設立。同社
で特殊処理を施したふっ素樹脂製品を製造・販売する。今後は中国のみならず、アジ
ア・欧州における協業も視野に入れる。
三菱商事、産業革新機構(INCJ) Solar Holding S.R.L
太陽光発電事業
Solar Ventures S.R.LからSolar Holding S.R.L.の株式を譲り受け、Solar Holding S.R.L.
を、三菱商事50%、INCJ35%、Solar Ventures S.R.L15%の合弁会社として運営す
る。Solar Holding S.R.Lがイタリア国内に保有する太陽光発電所は19ヵ所、総発電容
量は4.2万kW、総発電量は58GWhであり、イタリアの約2万世帯にクリーンな電力を供
給。今後は太陽光発電の先進国であるイタリアで、日本企業がリードする大規模なプ
ラットフォームを形成し、同国における発電事業の展開及びノウハウを蓄積する。
ナブテスコ
OCLAP S.R.L.の株式100%を取得することで合意し、契約書を締結。同社の名称を
Nabtesco Oclap S.r.l.に変更予定。グローバル展開の一環として、欧州大手鉄道車両
鉄道車両用ドアシステム等の製造・販売 メーカーとの取引拡大を重点課題として掲げており、シーメンス、ボンバルディアなど
の欧州大手車両メーカーと取引実績のあるOCLAPを買収し、世界戦略製品である新
型電気駆動式ドア開閉システムの欧州での拡販を目指す。
OCLAP S.R.L.
2013年5月
森精機製作所
Micron S.p.A.
工作機械の販売
DMG MORI SEIKI ITALIA S.R.L.(DMG MORI SEIKI EUROPE AG 100%子会社:
DMG60%、森精機製作所40%出資)を通じ、販売店であるMicron S.p.A.を買収する契
約書を締結。DMG MORISEIKIは、欧州内での協業推進に伴い直販体制に徐々
に移行しており、イタリア国内においても同様に直販体制への移行を進める。これに
より、イタリア全地域で直販体制を確立し、顧客との関係をより緊密化する。
2013年5月
ナカニシ
DENTAL X S.p.A
歯科医療用機器の製造・販売
滅菌器メーカーであるDENTAL X S.p.Aの株式80%を取得することを決定。同社は欧
州を中心に世界で減菌器の製造・販売を手掛けており、関連する技術と販路を保有。
ナカニシの販路やブランドと、対象企業の技術、販路、そして相互補完関係にある製
品シナジーを活用することにより基幹事業をより強化することを目指す。
鉄道車両用空調機器の製造・販売
鉄道車両用空調機器メーカーであるKLIMAT-FER S.p.Aの株式80%を取得する。同
社は約半世紀にわたりイタリアを中心に鉄道車両用空調システム事業を展開してお
り、高い技術力と信頼性を持つイタリア国内トップメーカー。子会社化により、欧州に
おける鉄道車両用空調システムの販売・製造・保守体制の強化を図る。
2013年12月
三菱電機
KLIMAT-FER S.p.A
〔注〕発表年月はプレスリリース年月。
〔資料〕各社プレスリリース及びトムソンロイターデータベース等よりジェトロ作成
41
対伊投資~欧州や新興市場販売も視野~
(参考)電力設備受注事例
日本企業によるイタリアでの電力設備受注事例
年月
2011年9月
2012年10月
2012年12月
2013年5月
日本企業
イタリア企業
概要
ACEA
(ローマ市配電・水道公社)
スマートグリッドシステムを受注。10kw太陽光発電システム、45kw二次電池
「SCiB」、電気自動車用給電スタンド、これらを制御するグリッド監視制御システム
(μ EMS)などを納入。今後も同社のスマートグリッドシステム計画に協力していくと
ともに、ローマ以外のスマートグリッド案件の拡販にも注力し、イタリアを中心として
欧州でのスマートコミュニティ・スマートグリッド事業拡大を狙う。
NEC
ENEL Distribuzione
(エネルグループ)
次世代スマートグリッドに向けた実証実験用のリチウムイオン蓄電システムを受
注。リチウムイオン電池を用いた蓄電システムとして欧州最大クラスとなる出力
2MW、容量2MWhを実現するもの。本実証実験により、発電量と電力消費の不均
衡を低減し電力系統のエネルギー損失を最小化することで、イタリアの配電網に
おける再生可能エネルギーの流れの最適化について有効性を検証する。
また同社は経済開発省とイタリア国内で蓄電システムの生産や、インテリジェント
な電力ネットワークの先進的なコンポーネントを開発する可能性の調査を目的と
する同意書も交わした。
東芝
(東芝電力流通システム欧州)
イタリア南部アブルッツォ州チェパガッティ市とモンテネグロのコトル市を結ぶ直流
送電システムにおいて、両国に建設する変換所の変電設備、土木工事および据
付工事の一式を受注。2013年9月から工事を開始し、変電設備については2015年
Terna
4月から順次納入する計画、同変換所は2017年9月から運転開始予定。今回受注
(エネルから分離した送電会社) したのは約400kmの直流送電システムにおいて、バルカン諸国で発電した交流電
源の電気を効率良く送電するために直流に変換する変換所の変電設備および建
設工事と、イタリアで受電する際に直流を交流に変換する変換所の変電設備およ
び建設工事。
日本ガイシ
電力貯蔵用NAS(ナトリウム硫黄)電池システムの供給に関する基本契約に合
意。欧州で初めて電力系統に大容量蓄電池が導入される案件となる。イタリア国
内の送電系統に導入するNAS電池システムを、最大で出力7万キロワット供給す
Terna
るもの。この内、初回分として3万5千キロワットのNAS電池システムを約1億ユー
(エネルから分離した送電会社)
ロで受注予定。再生可能エネルギーの最適利用のために同社が保有する送電系
統の変電所にNAS電池システムを導入し、電力需給変動への即時対応や電力系
統の安定化を図る。
東芝
(東芝電力流通システム欧州)
(注)発表年月はプレスリリース年月。
(資料)各社プレスリリース資料よりジェトロ作成
42
急増するRE電力に日本の蓄電池が貢献
 対日投資では、2012年5月には電解・電極製造・販売のインダストリエ・デノラ
による、電解製造・販売クロリンエンジニアズ(本社東京)への出資比率51%から
100%への引き上げ。11月にはホイールの製造・販売マニュエットホイールズ・イタ
リアによる、二輪車用アルミリムなどの製造・販売を行うエキセルリム(本店滋賀
県)への85.1%から100%への出資比率引き上げなどの完全子会社化の動き。
 2012年7月から開始された日本の再生可能エネルギー固定価格買取制度導
入を視野に入れ、太陽光発電事業で先行するイタリア企業の日本進出への関心
が急速に高まった。
■日伊社会保障協定締結■
日伊両政府は2009年2月6日、「社会保障に関する日本国とイタリア共和国との
間の協定」に署名。協定発効後は5年以下の予定で相手国に派遣される駐在員は、
自国の年金保険料のみを支払えばよくなり、実質的に二重加入となっている状況
が解消される。今後、両国議会での承認後、準備期間を経て発効される予定だが、
イタリア側の対応に遅れ。なお2013年9月に発表された対伊直接投資誘致計画
「Destinazione Italia (Destination Italy)」に対応を急ぐ旨が記載されており、今後
の対応が期待される。
43
対日投資~機械が堅調投資、太陽光ブームも~
<ご参考>
① イタリアの中小企業
44
企業の従業員数別構成
(単位:社、%)
企業数
構成比
伸び率
(2010)
(10/09)
従業員数
1名
2001年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2,228,205
2,500,495
2,555,566
2,566,442
2,593,079
2,607,222
2,594,698
2,606,017
58.4
0.4
2-9名
1,404,989
1,560,636
1,594,136
1,619,903
1,654,102
1,667,290
1,646,867
1,631,380
36.6
△ 0.9
10-19名
126,519
137,253
141,065
142,387
148,840
152,995
146,239
142,700
3.2
△ 2.4
20-49名
51,610
54,627
54,963
55,286
58,064
59,734
56,753
55,309
1.2
△ 2.5
50-249名
19,862
21,447
21,922
22,448
22,758
23,046
22,473
21,778
0.5
△ 3.1
250名以上
3,191
3,417
3,435
3,542
3,630
3,735
3,718
3,707
0.1
△ 0.3
3,834,376
4,277,875
4,371,087
4,410,008
4,480,473
4,514,022
4,470,748
4,460,891
100.0
△ 0.2
合計
〔資料〕イタリア国家統計局(ISTAT)資料よりジェトロ作成
※企業数の業種別内訳(2010年)※
製造業(9.9%)、建設業(13.6%)、商業・ホテル・外食等(35.9%)、その他サービス業(40.5%)
45
全体の99.9%が249名以下
中小企業規模別のEU27との比較
イタリアとEU27の企業規模別状況
付
加
価
値
イタリア
就
業
者
数
イタリア
EU27
EU27
29.4%
21.2%
22.6%
18.5%
31.7%
18.4%
46.5%
29.6%
16.2%
41.9%
21.4%
20.6%
12.3%
17.2%
19.8%
32.6%
4.8%
企
業
数
イタリア
0.1%
94.6%
6.5%
EU27
1.1%
0.2%
92.2%
零細企業(従業員1~9人)
小企業(従業員10~49人)
中企業(従業員50~249人)
大企業(従業員250人以上)
(資料) 欧州委員会の2012年中小企業アニュアルレポートのデータより作成(データは2012年予測値)
46
0.5%
EU27のなかでも目立つ中小企業の重要性
中小企業規模の欧州主要国との比較
EU27
イタリア
フ ラ ンス
ドイツ
スペイン
英国
企業の平均就業者数 【単位:人/社】
零細企業(従業員1~9人)
2.0
2.0
1.6
2.7
2.1
2.4
小企業(従業員10~49人)
19.8
17.6
19.1
19.7
18.9
23.6
中企業(従業員50~249人)
98.4
96.9
95.7
93.8
98.3
106.8
大企業(従業員250人以上)
968.4
919.9
997.9
953.8
982.7
1,337.7
中小企業合計
4.2
3.2
3.5
7.4
3.6
5.8
合計
6.2
4.0
5.5
11.8
4.8
10.7
就業者1人あたりの付加価値額 【単位:ユーロ/人】
零細企業(従業員1~9人)
32,206
24,519
58,016
42,388
28,180
48,131
小企業(従業員10~49人)
40,577
41,692
54,132
43,648
40,552
40,948
中企業(従業員50~249人)
47,824
51,575
59,741
53,491
47,962
55,887
大企業(従業員250人以上)
57,673
63,287
70,954
65,668
56,994
58,116
中小企業合計
38,738
33,236
57,221
46,497
35,247
47,813
合計
44,882
39,132
62,163
53,640
40,528
52,514
(資料) 欧州委員会の2012年中小企業アニュアルレポートのデータシートより作成(データは2010年)
47
零細企業の付加価値額上昇がカギ
中小企業に対する従来分析
①大企業の系列下に甘んじない独立心と経営能力
⇒柔軟性、想像力、果断性
②家族経営
⇒むやみに規模の拡大を求めない
③産地
⇒産地企業が内部のネットワークのもと役割分担することで、大企
業に負けないパフォーマンスと機動性を確保(地域ごとの産業集積
は通常、多数の中小企業から成り立っており、水平分業志向で役
割分担している点が日本の地場産業のスタイルや大企業下の系列
システムと異なる)
48
中小企業の現状
90年代以降のグローバル化による変化は、イタリアの産業構造を直撃。特にブラ
ンド力がなく、中国や中東欧などの製品との競争を強いられる中・低価格帯製品
の生産者の中には危機に瀕している企業もある。
①産地の行き詰まり
⇒大規模化やニッチ市場を獲得した勝ち組 or 変貌できなかった負け組へ
②EUの拡大と深化
⇒同一市場における低賃金労働力、競合製品との競争
⇒単一通貨導入および比較的高いインフレ率による競争力の低下
イタリア産業界は「メイド・イン・イタリー」のブランド力を極大化する方向で全体の
競争力強化を試みているが、これは基本的な強化策が見つからないなか、イタリ
アという国の持つ良いイメージを製品に投影するブランド戦略以外に、今のところ
良策が見つからないことの裏返しともいえる。
49
90年代以降のグローバルが中小企業を直撃
輸出競争力を持つ
中堅イタリア企業の特徴やポイント
①地方を拠点に根ざし、雇用を提供しながら国際市場に進出。
②創業者の家族や親族が経営を担う家族経営。
③コアビジネスが明確で、同分野ではイタリア国内でのリーダ―的存在。
④国内自社工場で集中生産し、生産・物流の技術革新や合理化に大きな投資。
⑤中長期的な視点で海外販路を持ち、その経験やノウハウをもとに新興市場へ。
⑥コアビジネス充実のため国内企業買収などで製品レンジを補強(多数のライン
ナップを確立し、異なる地域や国での様々なニーズに対応)。
⑦海外パートナーの選択は、経験やノウハウを駆使して発掘し(国内外の見本
市を活用している企業が多い)、海外での販売はパートナーに一任。
■詳細はジェトロサイトご参照(イタリア中堅企業の新興市場開拓調査:2011年3月)■
http://www.jetro.go.jp/world/cs_america/br/reports/07000728
50
厳しい環境下で活躍するイタリア企業も
<ご参考>
② イタリアの南北格差
51
1人当たりGDPの格差
地域
州
北部
(北西部) ヴァッレ・ダオスタ、ピエモンテ、
ロンバルディア、リグーリア
(北東部) トレンティーノ-アルト・アディジェ、
フリウリ-ヴェネツィア・ジューリア、
ヴェネト、エミリア・ロマーニャ
2011 年GDP
( 100 万ユーロ)
787,248
2011 年人口
2011年GDP/ 人
(ユーロ)
(人)
27,213,372
28,929
461,072
15,765,567
29,246
326,169
11,447,805
28,492
中部
トスカーナ、ウンブリア、マルケ、
ラツィオ
307,631
11,600,675
26,518
南部および島
アブルッツォ、モリーゼ、プーリア、
カンパーニャ、バジリカータ、カラーブリア、
シチリア、サルデーニャ
328,785
20,619,697
15,945
1,425,792
59,433,744
23,990
合計
〔資料〕イタリア国家統計局(ISTAT)資料よりジェトロ作成
52
南部(島嶼部含む)は北部の約半分の規模
失業率の格差
(単位:%)
2011年1Q
2011年2Q
2011年3Q
2011年4Q
2012年1Q
2012年2Q
2012年3Q
2012年4Q
2013年1Q
2013年2Q
2013年3Q
2013年4Q
北
部
5.5
5.4
5.9
6.4
6.9
7.5
7.6
7.9
8.3
8.3
8.5
8.7
中
部
7.0
7.0
7.9
8.5
8.9
9.3
9.5
10.3
10.7
11.1
10.9
11.0
南
部
12.9
13.1
13.9
14.8
16.0
16.9
17.2
18.1
18.9
19.5
20.1
20.8
〔資料〕イタリア国家統計局(ISTAT)資料よりジェトロ作成
伝統的工業地帯のある北西部、第三のイタリアと呼ばれ北部にキャッチアップし
た北東部・中部に対して、メッツォジョルノと呼ばれるイタリア南部は、アブルッ
ツォ、モリーゼ、プーリア、カンパーニャ、バジリカータ、カラーブリア、シチリア、サ
ルデーニャの各州から成り、北部と比べ開発が立ち遅れている。
このため、政府は南部開発のための政策を継続的に進めてきているが、いまだ
格差は解消されていない。
53
続く2ケタ台の失業率
新しいイタリア関係記事や資料
http://www.jetro.go.jp/world/europe/it/
(ジェトロウェブサイトのイタリアページへ)
【免責条項】
ジェトロは本報告書の記載内容に関して生じた直接的、間接的、あるいは懲罰的損害および利益の損失について
は、一切の責任を負いません。これはたとえジェトロがかかる損害の可能性を知らされていても同様とします。
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