山城君の酪農実習レポートはこちら

沖縄県立農業大学 畜産学科
平成 22年 11月 30日
山城 広成
は じ め に
・今回実習でお世話になった農家さんは、南城市玉城前川にある中村さんの牛舎
です。
酪農家で、経産牛66頭 乾乳牛14頭 育成牛7頭(11月現在)規模の牛
舎ですが、建て替えたばかりでまだ完成しているわけではなく、中村さん自身
が牛の世話をしながら空いた時間を利用して現在も少しづつ工事をしている状
況でした。(絶えずいろんな発想をするので工事に終わりがないとのこと)
従業員は二人いて、中村さんと3人で朝早く(5時)から夕方(19時)まで
搾乳、餌あげ、清掃、工事、又搾乳と言うふうに忙しく働いていました。
私も実習に来たからにはこの牛舎で多く学びとることはもちろんですが、迷惑
を掛けないよう少しでも役に立つように働き、中村さんに「実習生を受け入れ
て本当に良かった」と実感してもらえるように自分なりに頑張りました。
・この実習で得た経験を自分のものにするために今回やったことは、気が付いた
ことや疑問に思った事、又それについて教わった事などをその場でメモするこ
とを心がけ仕事が終われば日誌をその日のうちに必ず書きました。
しかしメモや日誌などの文字だけでは記憶が曖昧になったりして不安があるの
で、精力的にデジカメで写真を撮り、学んだことを画像でも理解できるように
しました。
・実習ではたくさんの知識や情報が同時に入ってきて、収拾がつかなくなるので
項目分けをし、写真を多く使うことで自分なりに分かりやすくまとめました。
目 次
1.
施
設
関
係
2.
使
用
機
械
3.
作
業
状
況
4.
獣
医
検
診
5.
リ
6.
創
7.
ま
サ
イ
意
ク
工
と
ル
夫
め
施 設 関 係
・施設の仕組みが分からないと作業に支障をきたし、農家さんに迷惑を掛けるので
この牛舎でまず最初に調べたのが牛舎施設の構造です。
換気扇や電動スクレーパー、電動スクリュー、照明スイッチ、点検用尿管排水口
搾乳器械などなど覚えなければいけないことが沢山ありました。
(牛舎全体の構造)
普通のつなぎ酪農牛舎は壁がなくオープンにして2頭に一台程度の割合で扇風機を
設置し強制的に風をあてているのですが、ここの牛舎では東西をビニールで囲い南
側を開け北側に大型換気扇を設置してあります。
トンネル換気と言うシステムで外から見れば牛舎内がとても暑そうに思えますが牛
舎内は絶えず涼しい風が一定に流れていていい環境だと感じました。
(東側)ビニールで閉切り
(西側)ビニールで閉切り
(南側)開放してあるのでここから風を吸い込む
(北側)大型換気扇を設置。ここが流出側
※トンネル換気の利点は扇風機が換気扇にかわることで、器械の台数を減らすことが出来
て結果として電気代を安くできる。又牛舎内は絶えず南側からの新鮮な風が流れている
ので匂いがないため蝿が少なく清潔な感じで牛にも作業環境にも良いと思いました。
(大型換気扇)
北側にある大型換気扇は全部で18台設置されていて全部稼動させると南側から風速5m
から7mの風を吸い込み北側に排出できます。大型換気扇の設置台数は牛舎内の断面積と
吹いて欲しい風速を決めると設置台数がおのずと計算できるとのことでした。
大型換気扇の台数を少なくするためにはできるだけ牛舎内の天井を低く又通路を狭くすれ
ば断面積が小さくなるのですが、この牛舎は給餌車(ミクストロン)が通行するので今以
上狭くすることができなかったそうです。
(外側)止まっている時はルーバーが閉まる。
(内部)ここから見るとかなり大きい。
風速計で実際の風速を測定した
ところ通路側で7.5mの風速が
ありました。
(水タンク)
給水は普通の水道と簡易水道(井戸の水)
の2種類使用していて、牛舎清掃や牛の
飲み水は簡易水道、ミルカー、バルクク
ーラーの洗浄及びタオルや搾乳時のバケ
ツ等を洗う時は普通の水道を使用してい
ます。理由は簡易水道の水質が普通の水
道水に比べると劣りるため搾乳に関係が
ある作業には使わないことにしたとの事。
簡易水道は水圧が低いので3個のタンク
(北側屋上)手前2tタンク、奥側1tタンク2台
(左の写真)に合計4t溜めて使っている
(飼料倉庫)
飼料倉庫は牛舎本体と隣接して作られて自動切断攪拌運搬車(ミクストロン)の格納庫に
もなっていました。沢山の粗飼料や濃厚飼料、サプリメントなどがきれいに整理されてい
て作業がやりやすいように考えられていました。
(内部)下に粗飼料、2階に紙袋関係置き場
(外側)外部は綺麗に塗装され倉庫表示してある
(飼槽通路)
この通路は給餌車(ミクストロン)が走るので幅を広くとっていました。
飼槽は中国産の御影石を張ってあり残飼片付けや清掃がとてもやり易く表面がツルツルな
ので、匂いが染み付くことがない。御影石は高額なのではと聞いたところ、当初ステンレ
スで考えていたが、そのころ鉄などの金属が急騰していたので、御影石と金額を比較した
ら御影石のほうが安いことが分かり迷わず御影石にしたとのことでした。
給餌車のタイヤで飼槽を踏むことを考えてみてもステンレスより頑丈な御影石のほうが有
利なのは言うまでもなくよく考えられていると思いました。
それからステンレス板の場合どうしても継ぎ目ができてしまうため、そこに飼料や汁が入
り込み腐敗した匂いがとれなく結果として牛の食欲が落ちるのだそうです。
ちなみに御影石とは大理石模様ではありますが大理石より硬質で吸水率が低い石材です。
(AとB列)2列とも経産牛で片側24頭つなげる。
( CとE列)C列は経産牛でE列は乾乳牛
※BとDは聞き間違いが多いので乾乳牛の場所はあえてD列としないでE列にしたとのこと。
(カウハッチ)
産まれたばかりの子牛は離乳までの間
このカウハッチで育てます。
成牛と離すことと子牛を中に浮かして
いることによってコクシジウムの進入
を防ぐ効果がある。
又ミルクや餌やりなどの作業が容易で
子牛を管理するしやすく考えられてい
ます。(F1やホルの雄は飼育期間が短
いのでここからセリに出される。)
(F列)全部で14頭分のカウハッチがあります。
(育成個別スペース)
ホルの雌は離乳する時期になると体が
ひとまわり大きくなりカウハッチでは
狭すぎるのでここに移動します。
カウハッチよりだいぶ広くなっている
のでよく動き回って運動していますが
フンカキするために中に入るとまとわ
りついたり、つつかれたりしてなかな
か作業をさせてくれない子牛がいます。
(E列)乾乳牛の列の横に4頭分あります。
(始めてウォーターカップを覚える所)
(パドック)
育成スペースにいる子牛がある程度大きくなるとこの大部屋に移して、初めて他の子牛と
生活します。ここはスタンチョンを設置してあるため種付けもここで行い分娩2ヶ月前ま
ではここで育てます。ちなみにこのパドックは自分が来た頃にはなく、10月23日に一部
完成したばかりです。(すべて中村さんの手作りです。)
(スタンチョン)パイプを曲げずに溶接で製作してある
(パドック)発泡樹脂マットをひきつめている
(搾乳機器)
搾乳機器にはミルカー、真空ポンプモーター、真空パイプ、ミルクラインなどいろいろな
装置が一体となっています。この牛舎では現在ミルカーを6基使って搾乳していますが、
今後経産牛が増えてくれば2基追加して8基にするとのことでした。ちなみにモーターの
能力は10台まで使えるそうです。
ミルカー6基と後ろに見えるパイプは真空とミルクライン
この操作盤は自動洗浄や殺菌を行ったり
問題が発生すればエラー表示で故障箇所
もこれで分かる仕組みになっています。
もちろん搾乳スイッチも全てここに集約
されていて24時間タイマー付きなので
セットしておけば好きな時間に自動洗浄
が可能です。
搾乳機器の操作盤(タイマー付き)
ミルカーはレールで牛の横まで運べるよ
うになっています。これにより一度に沢
山のミルカーが移動することが可能な為
作業効率が上がります。(レールがない
酪農牛舎も多いとのこと)
又ミルカーは自動離脱式になっているの
で外す手間がいらなくてラクで過搾乳の
心配もいりません。
ミルカーのレールが網の目のように張り巡らされている
(バルククーラー)
絞った牛乳を溜めておくタンクのことで、常時4℃になるようセットされています。
中にはプロペラがついていて定期的に攪拌して牛乳の分離や温度のムラがないように
なっています。
このバルククーラーは6tまで入ります。
タンクローリーで集乳後、洗浄は軽く
手洗いした後自動洗浄と自動殺菌を行
うので、とても清潔です。
6tのバルククーラー、左側にあるのが操作盤
(屋根裏)
牛舎内は天井に断熱材を張っているのでその上がどうなっているのか見せてもらいました。
屋根のトタンの熱で牛舎内とは違ってとても暑くムンムンしていました。牛舎内天井に取
り付けた断熱材が屋根裏の熱を完全に防いでいることを実感しました。
それから屋根裏はずいぶん広くてこのスペースがもったいないので工事がひと区切りつい
たらクーラー付きの宿泊施設でも作ろうかと言う話もしていました。
たくさんの水道パイプと電線が張り巡
らせていました。
奥の上にある光は北側の通風孔で屋根
裏の熱がこもらないようにしてある。
(ちなみに南側にも通風孔はある。)
角材以外の床は断熱材で間違って踏むと牛舎内に転落する
(糞処理施設)
この牛舎は糞と尿を分けて処理しています。
ロストルに落ちた糞尿はその時点で分別されて電動スクレーパーもしくは電動スクリュー
で尿タンクと生ふん仮置に運ばれます。糞尿が混ざった状態だと乾燥が難しくいい堆肥が
出来ないので処理に困るとのことでした。
ロストル
(糞尿分離処理断面図)
スクレーパー
フン
尿管
(電動スクレーパー)牛舎内に4台設置してある。
スクリューを回転させて仮置
場まで運搬する仕組み。
(電動スクリュー)A列のみ1台設置してある。
(E列生フン仮置き場)乾乳牛なので硬く積み上がっている。( A~C列生フン仮置き場)経産牛の生フン
(堆肥乾燥発酵施設)
まず生フン仮置き場からボブキャットで堆肥乾燥室に運びます。ここでは攪拌機がタイマ
ーでセットしている時間に攪拌して少しづつ乾燥させながら奥側に運んでいきます。
堆肥乾燥室から乾燥済みの堆肥を今度は堆肥置き場に運びボブキャットで定期的に切り返
し(掻き雑ぜる)酸素を入れることにより発酵を促進し完熟堆肥になれば販売します。
EM菌かなんか特別な菌を入れているのか聞いたところ、以前はバクタモン菌という菌を
入れて堆肥を作って袋詰めしてホームセンターとかで販売していたが、牛舎建て替えで忙
しくなった頃からは袋詰したり営業活動する暇がなくなったので今は特に菌を入れずに土
着菌で堆肥を作って近くの農家に2tダンプで販売するスタンスになっているとの事でした。
ただ、もう少し仕事が落ち着けばまた袋詰めで販売するということで、堆肥事業にも意欲
的に取り組んでいました。
(乾燥室)とても広く少し熱気がありました。
(乾燥済堆肥)発酵前で適度に乾燥している
( 攪拌機)乾燥室内で定期的に攪拌し乾燥させる
( 堆肥置場)切り返しを行い発酵~完熟堆肥となる
※堆肥置場で切り返し途中の堆肥を温度測定してみるとなんと71℃まで上がりました。
(白い湯気が出ていて堆肥自体も白く発酵していました。)
使 用 機 械
・この牛舎では運搬系の機械も多く使用していて実際にいろいろな機械を操作させて
もらいました。
機械の操作はどれも難しくて経験を積んでいないと危ないのですがその中でもミク
ストロンは車体が大きく一番操作が難しいので一回のみ試運転をしただけでした。
もう少し運転してみたいという気持もありましたが万が一事故やケガをすれば農家
さんに迷惑をかけてしまうので試運転させてもらっただけでも良かったと思います。
(ミクストロン)
ミクストロンとは粗飼料を切断しなが
ら濃厚飼料や添加飼料、水などを一緒
に攪拌してそのまま飼槽まで走行し給
餌する特殊車のことです。
運転をさせてもらいましたが走行先が
まったく見えないため、なにかにぶつ
からないかと気になりとても怖くて運
転はかなり難しいと思いました。
(運転体験)前進バックはレバーの前後でした。
又、ミクストロンは三輪でものすごく
小回りがきくためあまり場所を取らず
にカーブを切ることができます。
このミクストロンが故障すると餌あげ
が難しくなるだけではなく、餌の質自
体が変わって牛のダメージは大きく、
体調を崩す牛が続出する可能性もある
(側面)かなり大きな箱と言った感じです。
そうです。(メンテナンスがとても重要)
(後部)運転手からはまるで見えません。
(内部)攪拌のスクリューが2本あります。
(フォークリフト)
このフォークリフトは1tまでの荷を運ぶことができます。ミクストロンの中に粗飼料を
入れる時、ミクストロンの上部までフォークリフトで持ち上げるのでとても楽に仕事が出
来ます。フォークリフトがなければすべて人力でミクストロンの上まで運ばなければいけ
なくなり、とても過酷な仕事になると思います。(紙袋もこれで2階に上げます。)
当然ながらハンドルを回すと後輪の向きが変わりカーブをきることが出来るのですが、最
初はその感覚がなかなかつかめずにぶつかりそうになったりして何度もヒヤっとしました。
又荷物を持ち上げた状態でスピードを出して急ハンドルをきると横転するということで、
あせらずに慎重な運転をするよう心がけました。
(フォークリフト側面)荷物を持つため前輪が大きい
チモシーとスーダンをパレットに乗せて運搬中
(ブラシ付き耕運機)
これはロストル(フンを落とす溝の鉄筋蓋のこと)を清掃するために耕運機の刃の部分に
ブラシを付けて効率的に掃除をするためのものです。(以前は竹ホウキで掃除していた)
操作は意外と簡単ですぐに運転出来ましたが、牛の後ろをこの機械が通るため突然フンや
尿をされてよく機械を汚されました。牛がフン尿をする時はしっぽを上げるのでこの機械
でロストル掃除をする時は牛のしっぽを注意深く見ながら慎重に進めていきます。
(ブラシ付耕運機)赤い取ってのレバーがギアです
エンジン音は大きいが、牛は音に慣れていました
(ボブキャット)
生フンの運搬から堆肥の切り返し、ダンプトラックに積み込みと人力ではとても出来ない
作業をこのボブキャットは短時間で行います。
運転もさせてもらいましたが、学校で使用しているボブキャットより大きくて視界も悪く
車体の感覚がつかめなくて少し怖かったです。操作もすべてレバーで出来き学校のボブキ
ャットと違い戸惑いました。
(ボブキャット運転中) 走行(前進、バック)は左レバーでバケット操作は右レバーでした。
(バキュームカー)
フン尿別処理施設なので、尿は尿タンク
からこのバキュームカーで処理します。
今の所一日一回の処理でまにあっていま
すが、これから頭数が増えると一日二回
以上運搬しないと間に合わなくなるそう
です。(ちなみに4tバキュームカー)
(H14年式)整備が行き届きとてもきれいでした。
(2tダンプトラック)
2tダンプカーは堆肥の運搬だけでなく
右の写真にあるように粗飼料の運搬に
も使います。県酪にた頼めば草の配達
もしてもらえるのですが、㎏あたり2
円の運搬費が掛かる。そのため経費削
減のために2日に一度乾草を取りに行
っていました。
これで約2tの粗飼料で運搬を頼めば運搬費4000円かかる
作 業
・酪農牛舎は一日二回の搾乳があるため搾乳や搾乳機器の清掃など和牛農家より多く
の作業があるため作業時間(拘束時間)が長くなっています。
始業 朝5:00~終業 19:00で約14時間程度(但し休憩時間は2時間以上あります)
牛乳という食品を毎日生産しているという意識が高く牛舎内の清掃や牛床マットを
きれいにした後炭酸カルシウムを撒く、搾乳通路から出たらすぐ長靴を洗うなどな
ど衛生面の作業にも時間をかけていました。
効率化を図って機械を使った作業もいろいろありましたが、すべて教えてもらった
ので不慣れではありますが、ミクストロンの走行以外はひと通り操作出来るように
なりました。
(一日の作業の流れ)
牛は変化を嫌う習慣性の強い動物で、普段と違うことをするだけでストレスを感じ、
乳量や繁殖に悪影響が出る動物なので、できるだけ決まった時間に決まった作業を
するようにしていました。
5:00~5:10 仕事開始 掃き寄せ及びフン掻き
5:10~6:30 搾乳(プレデッピング~拭き取り~搾乳~ポストデッピング)
6:30~8:00 給餌 その他(残飼処理、子牛ミルク、全体清掃、etc…) 8:00~8:30 休憩(牛乳及びコーヒーを飲みながら雑談orミーティング)
8:30~11:10 掃き寄せ、フン掻き、TMR飼料計量、バルク洗浄 、etc…
11:10~:13:30 昼休み(昼食及びお昼寝タイム) 13:30~:14:00 掃き寄せ及びフン掻き
14:00~:14:30 ミクストロンで乾草切断、サプリメント投入、倉庫掃除 等 14:30~:15:30 日替わり作業(カウトレーナーや換気扇、カウハッチ清掃、等)
15:30~:15:50 掃き寄せ及びフン掻き 15:50~:16:00 休憩 16:30~:17:50 搾乳(プレデッピング~拭き取り~搾乳~ポストデッピング) 17:50~:18:50 給餌 その他(残飼処理、子牛ミルク、全体清掃、etc…) 18:50~:19:00 ミーティング(明日の予定など) 作業終了 (搾乳)
一日に二回必ずやらないといけない作業で、搾った牛乳代が一番の収入源という事と
それ以外に牛の状態をまじかにチェック出来るということからも一番重要な作業です。
(ディッピング作業)
・搾乳前(プレディッピング)と搾
乳後(ポストディッピング)に必
ずやる作業で殺菌を目的としてい
ますが、それ以外にも界面活性剤
(汚れ落し)や保湿効果(乳頭荒
れ予防)などの役割りもあるそう
です。
容器を軽く押すと薬液が上のカップに上がります。
(拭き取り作業)
専用洗濯石鹸できれいに洗濯及び殺菌
したタオルを使い乳頭を丁寧に拭き、
乳頭全体をきれいにし、適当に刺激を
与えることによってミルクが乳頭に降
りてきます。(拭いている途中から乳
頭が張ってくるのが分かります)
搾乳を嫌がる牛は蹴るので慎重に作業します
(搾乳作業)
搾乳は拭き取り作業によって乳頭に刺激
を与えた結果血中にオキシトシンが放出
され乳腺細胞の収縮が起き牛乳が搾れる
と言う仕組みになっているとの事でした
。 しかし牛に個体差があり、拭き取り
途中で牛乳が噴き出している牛もいれば、
拭き取り後しばらく経ってからでないと
出してくれない牛もいてとても面白いと
思いました。ミルカーをセットするとき
は牛の性格を覚えてミルカーの位置を調
整していかないと搾乳途中で蹴り落とさ
れることがよくあり、なかなか難しい作
業でした。
(哺乳)
子牛は生まれて一週間程度は母牛から搾ったミルクを哺乳瓶(実際はプラスチック製)で
あげますが、母牛のミルクが出荷する時期になると粉ミルクに変えバケツで飲ませます。
粉ミルクは全酪連のカーフトップEXと言う
強化哺育用のミルクを使っていました。
成分は違うと思いますが、色も匂いも人間
の赤ちゃんが飲む粉ミルクと同じでした。
哺乳瓶からバケツに変わる時は子牛 が戸惑い、なかなか飲んでくれない
ので指や哺乳瓶の先のゴムなどを使
って1~2日程度バケツから飲む訓
練をします。たまには2週間以上覚
えきれない子牛もいて苦労しました。
指でバケツに誘導して飲み方を教えています
ミルクをあげた後はバケツをきれ
いに洗って水を入れカウハッチに
バケツを戻しますが、哺乳後30分
以上待ってから水を置かないとい
けないとの事でした。(哺乳後す
ぐに水を飲むとミルクが薄くなる
そうです。) たまには水を一気飲みする牛もいるようです
(フン掻き)
ボロ出しともいいますが、この牛舎では
フン掻きと言っていました。一日に何度
もやる地味な作業ですがマットを絶えず
きれいにすることで、乳房炎の発症を減
らす重要な仕事です。この牛舎は繋ぎ飼
いなので決まった場所にフンをすること
を考えれば、どこでもフンを落とすフリ
ーストールの牛舎に比べれば楽に作業が
できると思いました。
(掃き寄せ)
この牛舎はくぼみ型飼槽ではなく御影石
のフラット飼槽なので、給餌した後牛が
鼻先で餌をどんどん前に押し出し最後に
は餌が遠くなって食べれなくなる状況に
なります。そこで一日に何度も掃き寄せ
を行い絶えず牛が食べやすい位置に餌を
寄せてあげます。この際にBCSの高い牛
にはあまりたくさんのTMRを置かないよ
餌を動かすだけでも又食べ始めるうしが多い
うに気を付けます。
(残飼片付け)
搾乳が終わるとすぐに給餌の準備に取り
掛かりますが、まずは残飼の片付けをし
てきれいに掃き掃除をします。
片付けた残飼は捨てることがないようB
列前半にいる廃牛予定の牛(3頭程度)
にあげて、効率良く食べてもらっていま
した。廃牛予定の牛は種の付いていない
泌乳後期の牛で、BCSも高く他の牛が食
べない残飼でもよく食べてくれます。
(乾草切断)
TMR飼料を作る最初の作業で、決まった
数量の乾草をミクストロンに備え付けら
れた重量計を見ながら正確に入れていき
ます。又切断時間も決められていて、い
つも定めた切断長になるように考えられ
ていました。
エンジンをかけて切断しながら乾草を入
れていくので、ものすごくホコリが立ち
込めるます。事前に換気扇のスイッチを
写真に写っているのは熟練したはゆたか先輩です。入れる事とマスクを着用することが重要
です。
(サプリメント各種計量)
TMRに入れるサプリメント類は飼料設計
ソフトで計算されていて、その数量を計
りを使って正確に測定します。量が少な
いので、きれいに攪拌されるようすべて
ミキサーの中に入れて混ぜた後切断の終
わったミクストロンの中に投入します。
目盛りの読み違いが無いように慎重に行います
投入時はホコリがすごい
(スクレーパー及びスクリュー操作)
フン溜め側溝や桝に溜まったフンを電動
スクレーパーやスクリューでフン仮置場
まで運びます。この機械がなければ一輪
車でフンを外に出さなければならないた
め、過酷な作業になります。
たくさんの牛を飼う場合にはとても大事
な機械だと思いました。
(尿管清掃及び詰まりチェック)
糞尿別処理システムなので、ロストルの
下には尿管が設置してあります。1日に
2回水を流して尿管をきれいに清掃しま
すが、たまには柔らかいフンが尿管の中
に入り込み流れが悪くなったりするので
絶えずチェックをして完全に汚れが取れ
るまで水洗いします。(完全に詰まるとフ
ン仮置場まで流れ出し問題です。)
(ウォーターカップ清掃及び水量チェック)
ウォーターカップの中に餌が入っていたり
汚れがこびり付いたりしていたらすぐにス
ポンジなどできれいにします。又水量も同
時にチェックしてちゃんと水が飲める状況
なのか確認します。
(牛舎全体掃除)
牛舎内はどこでも汚れていたら時間を見つ
けて掻き掃除をします。
牛舎内が汚いと仕事のテンションが下がり
全ての作業がいい加減なものになることが
よくあるそうです。また汚れは毎日見てい
ればだんだん見慣れてきてどんどん汚れて
いきますが、逆にひとたびきれいに掃除す
ると少しの汚れが気になり牛舎がどんどん
きれいになっていくものだそうです。
(牛舎内温湿度チェック)
機械室と牛舎内の扉には温湿度計が設置されている
ので、扉を開け閉めするたびに牛舎内の温度と湿度
をチェックするようにしています。
その数値によってヒートストレスの状態を把握して
換気扇の稼動台数を変えたり、
乾草の切断長を変える、または
餌の水分量を増やすなどの対策
を検討していきます。
(バルククーラー洗浄)
2日に一度タンクローリーが収乳に来て
バルクルーラーが空になります。
そのため2日に一度空になったバルクク
ーラーを洗浄します。
基本的に自動洗浄なのですが、細かな部
品や中の簡単なすすぎは人力でやります。
簡単に流した後は、洗剤を入れてスイッ
チを入れるだけで洗浄が完了します。
又搾乳前には殺菌剤をいれてさらにすす
タンク内とパッキン等を洗っています
写真の洗剤はアルカリ系洗剤(300ml)です
ぎをやることでタンク内は無菌になります。
タイマー式スイッチを回せば洗浄スタート
(生フン及び堆肥運搬)
仮置場から乾燥室、乾燥室から堆肥発酵場と運搬はボブキャットで行います。
走行スピードは遅いのですが、バケットが大きくいっきに沢山のフンを運ぶことができます。
下りはこぼさないようにゆっくりと走ります
堆肥は山盛りにしてもらくに運べます。
(強制給餌)
分娩後の母牛に必要なサプリメントなどを
強制的にポンプでルーメンに流し込みます。
中身は・・ジャンプスターター 5カップ
カウグルコン 1袋
グリセリン 600ml
イーストカルチャー 0.5kg
分娩によって足りなくなったものを強制的
にあげることでその後の体調改善に効果が
体温と同じくらいのぬるま湯で溶かして与えます
あるという事でした。又分娩後スカスカに
なったお腹は第四胃変位(通常の位置から
左右にずれる病気で一般的には四変と言う)
になることもあるため早めに飲ませたほう
がいいとのことでした。
ホースを入れる時に間違って肺に入ってい
ないか匂いと音を確認して慎重に流し込み
ます。↓
(共進会牛シャワー)
共進会に出品する牛が審査中におとなしくじっとするようにシャワーや毛づくろいをして人間
に慣れるようにしました。初日は嫌がりましたがすぐに慣れておとなしくなりました。
獣 医 検 診
・基本的に獣医は一週間に一度(火曜日)検診に来ますが、治療関係、繁殖管理はもち
ろん、飼料管理からカウコンフォートなどさまざまな面で専門的な情報を伝えてくれ、
それを参考に日々牛の飼い方を工夫していました。
(子牛コクシジウム)
← 小パドックに入っている子牛がコク
シジウムと思われる血便をしている
のを発見し、獣医に連絡したところ
すぐに駆けつけて治療をしてくれま
した。
獣医はまずコクシジュウムの種類を特定
するため、採血していました。 →
(後日2種類のコクシジウムがいたこと
が判明しました。)
← 採血の後コクシジウムに対する薬剤
を注射しました。
血便をした子牛はもちろんですが近くにい
る子牛もコクシジウムが入っている可能性
があるので、治療薬エクテシン液を一日一
回子牛の口から投与するようにと獣医から
話があり、自分がその担当になりました。
慣れてくると子牛も嫌がらずに飲んでくれ
ました。
針なし注射器を使って飲ませました。
(繁殖管理)
この写真は妊娠鑑定の状況ですが、一般
的には直腸検査法で触診にて子宮内の胎
膜の存在を調べるのですが、大城獣医は
超音波画像診断装置(エコー)を使って
いました。(より早期に判定が出来き目
で確認出来るので状態も詳しく分かる)
上の写真で獣医が左手に装着しているのが
エコーの画面で、右手はカメラを牛の中に
入れています。
(エコー画面に映った子宮)
← フレッシュチェック(アーリーチェッ
クとも言う)の状況です。
分娩後25日から45日の間に子宮の回
復状態をチェックして次の繁殖管理対
策を立てます。回復が遅い時はビタミ
ンやカルシウムもしくはグリセリン等
を飲ませたり、それ以外の原因につい
ても深く考えて対策を立てるそうです。
← 一通り診断が終わった後は牛舎に備え
付けてあるホワイトボード(繁殖管理
一覧表)の前で状態に合わせて一頭ず
つどういった対策をしていこうか検討
していきます。
高泌乳牛の中には肝臓を酷使している
可能性がある牛もいるため、強肝剤な
どの投与をする場合もありました。
リ サ イ ク ル
・牛舎では飼料を入れた紙袋やビニール、プラスチックヒモ等沢山のゴミが出ますが、
そのゴミをリサイクルとして活用していましたので、まとめてみました。
(牛舎内での分別)
← 乾草を束ねていたプラスチックヒモを
分別して袋に入れておきます。
荷崩れを起こさないよう乾草に巻いて →
いたビニールも分別します。
← 紙袋もきれいにたたんでおきます。
(県酪にて集積)
・牛舎で分別したゴミは県酪に運びます。(下の写真は県酪の集積場所)
※県酪では各農家から沢山のヒモやビニールが集まっていました。
(県酪にて圧縮梱包)
県酪では自動梱包機がありその機械で
プラスチックヒモやビニールを圧縮し
た上で梱包していました。
機械の仕組みはよく分からなかったの
ですが、とても便利な機械だと思いま
した。
↓下の写真は自動梱包機のスイッチ部
分をアップで撮ってみました。
(圧縮梱包完了搬出)
圧縮梱包された後は中国に運ばれてリサイクルされるという事でした。
沢山の量のビニールやヒモがコンパクトに梱包されて運びやすくなっていました。
創 意 工 夫
・この牛舎はオーナーの中村さんが以前に建設業をやっていたこともあり、敷地の測量
から牛舎の設計、施工まで中村さん本人がやったので、すべてが創意工夫と言え、と
ても勉強になりましたが、その中で気が付いた創意工夫を小さいことから大掛かりな
ものまでまとめてみました。
(通路防風板)
トンネル換気の牛舎なので、夏場は牛舎内
の風速をあげるために出来るだけ牛舎内の
断面積を小さくし、風速を高めるために考
えられたもので、風も直接牛のにあたるよ
うに工夫されていました。
素材は計量パイプとビニールでできていて
とても軽く、細いワイヤーで連結されてい
るので巻き上げ機1個ですべて(6枚)の
上げ下げができるようになっていました。
飼槽通路の防風板で6枚あります
写真は巻き上げ機で楽に防風板を上下できる
搾乳通路にも防風板が設置されています
(尿管清掃確認カード)
1日2回尿管の清掃をしますが、この
作業に担当者はいなく手の空いた人が
行う為、清掃が終わったのに他の人が
知らずに又清掃するのを防ぐために作
ったカードです。
清掃が終わった時点でカードを裏返す
だけで清掃が完了したことが分かるよ
うになっています。
カードの裏は「夜OK」と書いています。
(長グツ洗浄機)
搾乳通路から出る時は必ず長グツを洗
いますが、1日に何度も洗うので、普
通に水道ホースと取っ手付きブラシを
使って洗っていたのでは、時間が掛か
るので水道とブラシを合体した手作り
洗浄機がありました。これだと長グツ
を履いたままゴシゴシと擦るだけで、
短時間できれいになります。
下から水が噴出すようになっています
(ドライバー置き)
尿管チェックの際に点検口をドライバ
-で開けますが、いつでもすぐに開け
られるようにすぐ横にゴムマットの切
れ端を使ってドライバー置きを作って
いました。小さい道具はよく無くなり
それを探すのも大変なので置場を作り
使用後は元の位置に戻す習慣をつける
ことにより無駄な行動がなくなるとの
ことでした。
下に少しだけ見える丸いのが点検口
(スクレーパー防風板)
トンネル換気は換気扇から近い場所か
ら風を吸い込むので、換気扇のすぐ下
にあるスクレーパーの開口部をふさぐ
板を設置してありました。
この板をはずすと下から勢いよく風が
入り南側からの風が弱くなるのでスク
レーパーを動かす時以外は板をはめ込
んでいます。
スクレーパーを動かす時は防風板をはずします
(配合及びビート投入ケース)
ミクストロンの中に配合やビートを入れる
ために考えた大きなケースです。
ケースの中に目盛りを付けてホッパーから
直接入れフォークリフトでミクストロンの
上まで運びます。
ケースの前下にちょうつがいが付いている
ので後ろを持ち上げるだけで楽に中身をミ
クストロンに投入することができます。
(下は角材を使った手作りバンギです)
ちょうつがいの位置が分かるように少し持ち上げてみました
(電動スクレーパー操作禁止板)
スクレーパーの点検、修理時や生フン
仮置場にバキュームカーが停まってい
る場合にこのマグネット板を貼り間違
ってスイッチをいれないようにしてい
ました。
通常は横に掛けている
プラスチック板の裏にマグネットを貼っている
(フン掻き棒フック)
市販のフン掻き棒の上にフックを取り付けてありま
した。
搾乳通路にはフン掻き棒を立て掛ける場所がないた
めに置場に困るのでフックを取り付けミルカーレー
ルにぶら下げられるようになっています。
ミルカーレールは搾乳通路全体に張り巡らせてある
のでどこにでも置けてとても便利でした。
写真は少しピンボケしました。
(休憩及びミーティング室)
ミクストロン置場の上のスペースを有効利
用するため、二階に部屋を作っていました
。内部はカーペットを張っていて見た目よ
りだいぶ広い部屋でした。
中は酪農の資料本が沢山あり、すぐに調べものが出来る
宙に浮いた感じの部屋です。
(吊り下げ式カッター)
乾草をミクストロンの中に入れる時、乾草を縛って
いるヒモを切るのですが、ミクストロンの真上での
作業なので、間違ってカッターを中に落とすことの
ないように考えたそうです。
いつも同じ位置にカッターがあるので探すこともな
くとても便利でした。ちなみにおもりと滑車を使っ
た昇降式なので使った後、手をはなせば自動で上に
上がります。(カッター2本設置してあります。)
宙に浮いた感じの部屋です。
(工具室)
ミクストロン置場の横にあまり使い道の
ない三角のスペースがあったので、そこ
に工具室を作ったそうです。
限られた牛舎内を無駄なく有効に使って
いました。
又、オーナーの中村さん自身が工事をし
ているので、この工具室もいろいろな種
類の工具がところ狭しと並べられていま
した。
ま と め
・この実習では作業やミーティングの中で沢山のことを学びましたが、その中でも
とても勉強になったことを4つまとめてみました。
1. 費用対効果を意識することは家畜経営をする上でとても重要。
これは中村さんがミーティングの時絶えず言っていたことで、例をあげると良
い餌があってもその餌代に見合った効果(乳量アップや牛の健康向上など)を
金額に置き換えて比較検討し、決めるよにしなければ意味がないということで
した。もちろん餌だけの話ではなく機械や設備関係、作業行動に至るまですべ
てにおいて「費用対効果」を計算し考ることが大切な事だということです。
2.目標や問題意識、やりがいを持って仕事をしていく 。
酪農は作業時間が長く仕事もマンネリ化しやすいため、ややともすると思考能
力が落ち、ただ時間に追われて作業をする日々になりテンションが下がってし
まうことは、すべてが悪い方向に向うことになります。
この仕事をやり最終的にはどうなりたいか目標を持ち、仕事に対して絶えずこ
れでいいのか、もっといい方法がないか問題意識を持ち、仕事が順調にいった
時の達成感がさらにやりがいとなるようにする。
3. カウコンフォートを重視して乳牛のストレスを軽減してあげる。
改良の進んだ高泌乳牛はストレスが多い牛舎においてその能力を発揮すること
が出来ないためカウコンフォート(乳牛の快適性)を追求していくことが必
要で、具体的には程よい硬さのマットや牛床の広さ、飼槽の高さ、繋ぎのチェ
ーンの長さ、夏場の暑熱対策にいたるまできりがないほど沢山の項目がありそ
れらをひとつひとつ解決していけば必ず乳牛は恩返しをしてくれるそうです。
4. 作業をしながらも絶えず牛の状況を観察をする。「牛をよく見る。」
餌あげ、掃き寄せやフン掻き、搾乳に至るまで一日中牛のそばで作業をします
がその作業に追われてあまり牛を見る余裕がありません。 牛の活躍が経営を
支えている訳なので牛をよく見て異常があればすぐに対応していくというのは
当たり前のことで、牛をよく見るようにと何度も言われました。 絶えず異変
が無いか、BCS(ボディーコンディションスコア)はどうなっているのかと
意識しながら牛を見るとその牛の耳標番号や経歴等が自然と記憶に残ってくる
のだそうです。 実際に中村さんは一頭一頭の牛がどこから来て何産目でどん
な病歴があったのかとてもよく覚えていてすごいと思いました。
牛の変化を早期に発見することで、早めの対策がとれるのでとても重要なこと
だと思いました。