大中だより

福山市立大成館中学校
大中だより
2014(平成26)年
6月9日
No.4
校長
友道健氏
事実と真実が違うことってあるの?!
今回は物事の考え方についてお話しします。中学生の皆さんには少しだけ難しい内容かもわかりませんが,考えて
みてください。事実とは真実のことであると思っていますね。私もそう思っています。しかし、世の中には時として、
事実と真実が少し違う場合があるのです。
サッカーの例でお話しします。今月にはワールドカップがあります。
世界中の人々が注目する世界最大のスポーツイベントです。この大会でかつて,アルゼンチンのマラドーナという
選手が起こした「神の手ゴール」というのがあります。1986年メキシコ大会の準決勝のイングランド戦。マラド
ーナのヘディングシュートが決まったと主審はゴールのホイッスルと吹くのです。しかし、ビデオで確認するとどう
見てもマラドーナ選手の手に当たってゴールしているのです。マラドーナ選手がゴールを決めたというのは事実です。
主審が認めたので、正式記録となります。しかし、マラドーナ選手の手に当たったゴールですから、ハンドリングの
反則となり,本来はゴールが認められないのです。しかし、主審が認めたということは、誰が何と言おうと1点とし
て認められるのです。そうしなければゲームが成立しなくなるのですね。これが真実なのです。ただし,決してズル
いことをして世の中を渡っていきなさいということを,私は言っているのではありません。
同じようなことは,たくさんあります。歴史の中には、
「事実と真実が異なる」かもしれないことが多々あるのです。
かつて教科書で「足利尊氏像」として紹介された武
者絵があります(左絵)
。これは今では全くの別人とし
て考えられています。現在の教科書では、当時の武士
の姿を紹介する程度の絵として紹介されています。ま
た、源頼朝像と言えば、たいていの方は一枚の似絵を
思い起こします(右絵)
。しかし、これも足利直義(足
利尊氏の弟)であるという説が有力となり、教科書で
は「伝源頼朝像」
(源頼朝像として伝えられています)
と紹介されています。大阪の堺にある「仁徳天皇陵古
墳」ですが、これも仁徳天皇とは別人が埋葬されてい
る可能性が高いということで教科書では「大山古墳」
と紹介されています。研究が進むと、これまで事実と
考えられたことが変わっているのです。
ここで皆さんに質問します。12月25日は何の日ですか? そうです、クリスマスですね。
伝源頼朝像
ではクリスマスとは何の日ですか? そうです。キリストの誕生日です。
このように信じられています。
これは真実でしょうか?
調べてみると興味深いことがわかってきました。
キリスト教は 4 世紀以降ローマ帝国の国教となり発展しますが、それまではローマ帝国により迫害されており、多
くの苦難の歴史がありました。当時ローマ帝国で最も信じられていた神はミトラスという太陽神です。ミトラスは冬
至(12月末)に生まれて、太陽の活動が盛んになる夏至に最強となり、次の冬至に死に再び生まれ変わると信じら
れていました。冬至はミトラスが「再び生まれ変わる日」として、牝牛を殺してその血を神様に捧げ、肉を皆で食べ
合っていたそうです。血の代わりにワインを飲む習慣もあったようです。この頃、新興宗教であったキリスト教がロ
ーマに伝わり、信者を獲得するため、ミトラスを祝福する儀式を真似したのではないかと思われるのです。初期のキ
リスト教徒は、布教のため柔軟に物事を考えていたのです。ミトラスとイエスを一緒にしてしまい、イエスの誕生日
を冬至の頃にしてしまおうとしたと思うのです。牛を殺すことはできないから、牛の代わりにパンとワインでイエス
の降誕を祝ったのです。こうしてクリスマスをつくってしまったのです。実を言うとイエスがいつ生まれたのかは不
明なのです。ちなみにクリスマスが12月25日になったのは 4 世紀だそうです。つまり、イエスが亡くなり300
年以上もたってのことです。
いかがでしょうか。事実と真実は違うことがあるのです。身の回りをしっかり見つめると、
「なぜ?」
「不思議?」
「お
かしい」と思えるようなことが案外たくさんあるのです。これに気づくことも大切なことです。不思議や疑問に気づ
くから興味や関心が高まるんです。さらに,この疑問に自分で解決を求めようとすることから、勉強の楽しさも生ま
れてくるんです。少しは歴史に興味がわいたでしょうか?
6 月 10 日(火)には,1 学年は福祉体験,2 学年は「基礎・基本」定着状況調査, 3 学年は診断テストがあり
ます。どれもがんばって取り組んでください。