糖尿病治療ハンドブック

保原中央クリニック
家庭医療科
糖尿病ってどんな病気?
糖尿病とは、摂取した栄養(糖分)と体内で分泌されるイ
ンスリンというホルモンのバランスが崩れている状態をいい
ます。
■ インスリンって何?
インスリンとは膵臓という臓器から分泌されるホルモンの
一種です。身体の中に栄養(糖分)が入ってくると、それを
吸収してエネルギーに変えたり、身体の中に蓄えたりする働
きを持ちます。
■ インスリンと栄養のバランス
摂取した栄養(糖分)に対してインスリンの量が少ないと
栄養とインスリンのバランスが崩れ、うまく栄養が身体で利
用できなくなります。その結果、利用できない栄養がいつま
でたっても血液中に残り血糖が上昇します。
血糖が上昇した血液は身体の様々な臓器に障害をもたらし
ます。
栄養
(糖分)
インス
リン
【 栄養とインスリンの量が適切】
正常
インス
リン
栄養
(糖分)
インス
リン
栄養
(糖分)
【インスリン量が過小】
【栄養量が過量】
糖尿病
■ こわ~い、糖尿病の合併症
糖尿病を長く放置していると糖尿病性網膜症(目の障害)、
糖尿病性神経症(神経の障害)、糖尿病性腎症(腎臓の障
害)に罹りやすくなります。これらの合併症が起こるまでは
無症状のことも多いので注意が必要です。
糖尿病の検査
■ HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)
1~2ヶ月間の血糖値を反映させた数値がわかります。なの
で、受診日の食事だけでは大きな変動はありません。空腹時
に測っても、食後に測っても大きな違いはありません。
糖尿病の治療を始めたばかりのころや、血糖が不安定な時
には毎月、落ち着いている時には2ヶ月毎に測定します。
HbA1c
体温で例えると・・・
8.0%
38.0℃
7.0%
37.0℃
6.5%
36.5℃
治療の目標は、「HbA1c 7.0%以下を維持すること」です。
■ 血糖値
採血時の血糖値を反映します。採血前の食事などに大きく
影響を受けます。変動が大きな不安定な数値であり、糖尿病
治療の目安としてはあまり使われません。参考値として健康
診断や受診時などに測られることもあります。
食事療法
■ 「間食」はしていませんか?
間食は血糖値を不安定にさせ、糖尿病
を悪化させます。食事は規則正しく摂取
し、できるだけ間食は控えましょう。
水分摂取する場合は、清涼飲料水や炭
酸飲料水は避け、水やお茶などを選ぶよ
うにしましょう。
■ 適切なカロリー、バランスの取れた食事
食べすぎに注意しましょう。しかし、極端な食事制限は逆
効果です。適切なカロリーを摂取しましょう。成人では1日
1600~2000kcalが良いとされています(場合によっては、
より低カロリー食が必要な場合もあります)。
また偏った食事も健康によくありません。炭水化物、タン
パク質、脂質、ビタミンなどバランスのよい食事を心がけま
しょう。
■ 朝食はしっかり摂りましょう。
1日3食しっかり摂りましょう。朝食を抜くと血糖値が不
安定になり糖尿病を悪化させる場合もあります。また肥満の
原因になる場合もあります。
1日のカロリーを抑えたい場合は、夕食を控えめにするこ
とをお勧めします。
運動療法
■ 持続的な有酸素運動が効果的です。
軽く汗ばむ程度の有酸素運動がおすすめです。例えば、
ウォーキング、サイクリング、水泳などです。1回につき30
分以上続けるとより効果的です。
初めから「毎日続けなければ!!」と気負う必要はありま
せん。休みの日に週に30分だけからでも始めてみましょう。
それだけでも続けることで、きっといいことがあります。
■ 筋力トレーニング
適度な筋力トレーニングも効果的です。筋肉がつけば代謝
が良くなり太りにくい体質や、血糖が安定しやすい体質にな
ります。
しかし、無理は禁物です。身体を壊さないように適度な運
動を心がけましょう。
食事療法と運動療法の相乗効果
食事療法と運動療法を同時に行うことで、より効果が高ま
ります。治療効果もより早く現れます。
しかし、生活習慣や仕事の都合などで
「運動はできるけれど食事を変えることは
難しい・・・」「運動する時間はないけれど、
間食だけならやめられそう」という方も
いらっしゃると思います。
まずはご自分でできるやり方で
ご自分のできることから初めてみましょう。
無理なく続けられることが一番大事です。
内服療法
食事療法や運動療法で糖尿病をコントロールできない場合、
内服療法を勧めることがあります。また、初診時の血糖値
(HbA1c)が非常に高い場合には、初めから内服療法を勧
める場合もあります。
内服薬には以下のようなものがあります。
■ メトグルコ錠®など
身体の中で分泌されるインスリンが効きやすくするお薬で
す。インスリンとは食事で得た栄養を身体でうまく利用する
ために必要なホルモンです。インスリンが効率よく働くよう
になることによって血糖値が下がります。
内服療法として、まず初めに処方されることが多いお薬で
す。1日2~3回に分けて内服します。
■ グリメピリド錠®など
身体の中(膵臓)からインスリンの分泌を促すお薬です。
インスリンの血中濃度が高まることによって血糖が下がりま
す。1日1回朝食後に内服します。
高用量を飲まれている方(特に高齢者)は「低血糖発作」
を起こすことがあり注意が必要です。
その他にも糖尿病で処方されるお薬があります。処方薬の
ことでわからないこと、不安なことがあれば主治医の先生に
相談しましょう。
インスリン療法
生活習慣の改善、内服療法でも糖尿病のコントロールが困
難な場合にはインスリン療法をお勧めする場合があります。
インスリン療法とは、インスリン製剤(注射薬)を定期的
にご自分で打っていただく治療法です。ご家族に代わりに
打ってもらうことも可能です。
■ インスリン療法に対するよくある誤解
Q)インスリン注射は痛い!
インスリン製剤に使用される注射針は太さが0.3~0.4mm
程度の非常に細い針を使用しています。ほとんど痛みは感じ
ません。
Q) インスリンをやり始めたらもう終わりだ・・・
決してそんなことはありません。むしろインスリン治療に
よりしっかりと糖尿病をコントロールすることで健康な人と
同じように過ごすことができます。インスリン治療が原因で
寿命が縮むこともありません。
Q) インスリンを始めたら、もうやめられない!
決してそんなことはありません。確かになかなかインスリ
ン治療がやめられない場合も少なくありませんが、糖尿病の
コントロールが良好であれば内服療法に変更することも可能
です。
低血糖発作にご注意!
グリメピリドや、インスリン療法を行っている患者さんに
起こりやすいです。空腹時に急に動機、冷や汗、気分不良、
めまい感などを感じたら、すぐに甘いもの(ジュース、砂糖
など)を摂取しましょう。そして、必ず主治医に相談しま
しょう。
健康診断を受けましょう!
糖尿病を持つ方は他の生活習慣病(高血圧、脂質異常症な
ど)も合併する可能性が高いです。そのため、心筋梗塞や脳
卒中の発症率が糖尿病を持たない人に比べて数倍高いと言わ
れています。
糖尿病を持たない人に比べてがんの罹患率も高いと言われ
ています。
「毎月受診して採血をしているから」と安心せずに、毎年
健康診断(人間ドック)を必ず受けましょう。がん検診(大
腸がん、胃がん、子宮頚がん、乳がん)も合わせて受けま
しょう。
糖尿病を持つ方の血圧とコレステロールの目安(目標値)
は以下の通りです。
・ 血圧
: 130/80以下
・ LDL(悪玉)コレステロール: 140以下
(心臓病の家族歴がなく、喫煙していない方の場合)
一緒にがんばりましょう!
糖尿病とのお付き合いは始まったばかりです。あせらず、
あきらめず、ゆっくりと糖尿病の治療に取り組んでいきま
しょう。
患者様が生活や仕事などと両立しながら糖尿病と付き合っ
ていけるように、より長く健康でいられるように、保原中央
クリニック家庭医療科はサポートしていきます!
ご質問があれば、遠慮なく家庭医療科スタッフ、主治医へ
お尋ねください。