メタボ検診の真実

メタボ検診の真実
先月は更新をサボってしまいました。申し訳ありません。
今回は、少し医療ネタでいってみようと思います。通常治療されているメタボリックシン
ドロームに対し、薬物療法がいかにいい加減で、リハビリが有効かについて述べてみたい
と思います。
メタボ検診とは、2008 年 4 月、厚労省が通達した特定検診制度です。これは 40-74 歳まで
の健康保険者に対し特定検診の実施を義務化したのですが、この中身が大変で、開いた口
が塞がらない内容なのです。診断基準を下に示します。
診断基準
1. 腹囲:男性 85cm、女性 90cm以上が必須
2. 血圧:130/85mmHg以上
3. 脂質異常:中性脂肪 150mg/dl 以上または HDLc40mg/dl 未満
4. 血糖:110mg/dl 以上
の 3 項目中 2 項目以上
これに該当する場合は病気として治療しなさい!と命令しているのですが、まあ、インチ
キこの上ない内容なのです。若い職員の方々は全く興味がないでしょうから、読み飛ばし
てもらって結構ですが、この年齢の範囲に該当する職員は一読をお勧めしますよ。
1.
まず第一に腹囲。
何で女性のほうが基準が大きいのですか?これじゃ、男性は全てメタボと診断されます。
国際基準ではもちろん男性 90cm女性 80cm以上です。
何か怪しい・・・。
2.
次に血圧。
130 以上はすべて高血圧と診断し薬を飲ませなさいということらしいのです。ホントです
か?私の若い頃(30 年前)の高血圧の基準は 160/90 以上でしたよ。それが 1990 年代には
150/90 となり、2000 年代になると 140/85 と下がり、2010 年代、ついに 130/85 以上を高
血圧とするという事らしいのです。この基準でいくと 60 歳以上のなんと 6 割が高血圧とい
う病気持ちということになります。病院と製薬会社は大儲けです。
これもナンカ怪しい・・・。
3.
今度は脂質異常。
この疾患はかつては高脂血症と呼ばれていたことは皆さん御存知でしょう。診断基準も総
コレステロール:220mg以上、悪玉コレステロール(LDL)140mg以上、善玉コレス
テロール(HDL)40mg以下、中性脂肪 150mg以上とされていました。ほとんどは総
コレステロールの値で判断しており、220mg以上の人には「この値では血管の中にゴミが
貯まり、脳梗塞、心筋梗塞になりますよ!怖いですよ!」と脅し、「でも、この薬を飲めば
大丈夫ですよ」と、まるで宗教の勧誘の如くバンバン薬を出していたのです。
ところが!なんと!なんと!なのです。
「コレステロール値は少し高めの数値のほうが長生きし、むしろ低いほうが早死にする」
という結果が相次いで発表されたのです。大阪府立成人病センターによる八尾市住民 1 万
人の追跡調査では、男性は総コレステロール値が 240~279mg、女性では 200~279mg が
一番長生きだったのです。同様に日本循環器管理研究協議会の全国 300 ヶ所約 1 万人のデ
ータでも、男性 220mg 以上、女性 240mg 以上で死亡率が最も低かったのです。
そこで!
日本動脈硬化学会もあわてました。「どうすべ~、困った・・・」。すったもんだともめた
末、出した結論が「高脂血症という名前はやめて脂質異常にすればいいじゃないか。そい
で、総コレステロールの項目もはずしてしまおう」ということで、現在は、名前は「脂質
異常」
、内容も HDL コレステロールと中性脂肪のみを基準にするということになったわけ
です。
何だかな~~~
5. 最後に糖尿病
血糖 110mg以上が糖尿病らしいですよ。ホントですか?日本糖尿病学会の診断基準でも空
腹時血糖:126mg以上、75gブドウ糖負荷 2 時間後の血糖 200 以上、随時血糖 200 以上、
そして、ヘモグロビンA1c6.1%以上なのです。いかにメタボ検診の数値がいい加減かわか
ります。
更に、この糖尿病学会の診断基準も、2012 年 4 月、HbA1c6.1%以上が 6.5%以上に変
更となったのです。
何故なのでしょう。
実は、ACCORD 試験というものが原因なのです(ホンダの車の話じゃないですよ)
。2001
年、米国国立衛生研究所(NIH)
が糖尿病の患者 1 万人を集め、
標準治療群(HbA1c:7.0~7.9%)
と集中治療群(HbA1c : 7%未満)で経過を追ってみたところ、厳密に治療して HbA1c を 7%
以下にした群の人たちがバタバタと死んでいったのです。本来は 2009 年まで行う研究だっ
たのですが、人道的に許されないと判断され、2008 年 2 月、研究は中止されました。要す
るに血糖を下げすぎたら死ぬということらしいのです。
これにビックリした日本の糖尿病の専門医達、「どないすべ~~」と相談した結果、「基準
は 6.5%以上に変更しよう。理由がつけにくいから~~、そうだ、技術的な計測法を少し変
更し国際標準値(NGSP)と言う事にして、値が変わったんじゃと言う事にすべえ」としま
した。
何だかな~~。
7%以下までの厳密な治療で、バタバタ死んで行ったのに、
「6.5%以上はやっぱり糖尿病だ
から、薬飲みなさい」だって!。
何故、こういう結果になっているのでしょう。
皆さんには信じられないかもしれませんが、医療界の動脈硬化が原因なのです。厚労省は
日本政府ですから、産業活性化のためには製薬業界の売り上げ上昇に協力しますし、見返
りに天下りもします。製薬業界は大量の研究費を大学の若手研究者にばら撒きます。その
結果、コレステロールが体に悪いことを意味するデータが出た研究者には更に大量の研究
費が舞い込みます。そして、大量に研究費を持ってくる医者が教授になっていきます。そ
して更に、その教授が、地域の医師会で製薬会社まる抱えの講演会を開きます。医師会の
諸先生方は基準が下がれば下がるほど患者が増えるのですから、「そうか~~」と感心し、
翌日には「あんたはこの薬も飲んだほうがいいよ。偉い先生も言っていたし」と投薬し、
患者は大量の薬を持ち帰ります。全員がウィンウィンの関係です。患者さんだけが大変な
のです。
ここに登場する人達は皆いい人達です。全員が少しだけの「ナンカ変だな」との気持ちを
持ちながら、「世のため人のため」なのだと、納得して突き進み、メタボ検診の非常識な基
準にもなんら疑いを持ちません。そんな中、
「おかしいじゃないんですか?」と言う者がい
たら、即座に全員から避難されます。「お前は病院をつぶす気か!」と。
でも、もうそろそろ薬漬けの医療は止める時期なのです。私の独断と偏見では、血圧は 150
以上、高脂血症は総コレステロール 300 以上、糖尿病は HbA1c7%以上を基準にしています。
では、メタボはどうしたらいいのでしょう。目先の数値を変えても仕方ないのです。結局
は自分の食生活と運動で解決するしかありません。自分で自分のコントロールのできる人
は長生きします。コントロールできずに、メタボの数値がそのままの人はそれなりの寿命
となるでしょう。運動もせず、食事もコントロールせず、薬だけ飲んで数値を正常値にし
た人は、もっと早死にすると思います。
結論は、薬を減らして、しっかりリハビリです。幸いにも、我々の仕事はリハビリです。
明日から、また、しっかり、患者さんのリハビリに協力してあげてください。