■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 【スペシャルレポート】 『ECBのマイナス金利と量的緩和政策、 そしてGrexitの高まり=ユーロは下落再開』 株式 会社CKキャ ピタル 代表取締役 CEO西 原 宏 一(2015年4月16日 ) ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 1)イースター明けの焦点は再びユーロ 前号で、「欧米のイースター休暇前は、ユーロは調整局面」とご紹介した。実際、イー スター休暇前のユーロドルは1.05ドルから1.10ドルをなんども往復する「行って来い相場」 を演出。 今年の為替市場の主役はユーロ。そのユーロドルが調整に入ったため、他の通貨ペアも 調整モードに入り、イースターホリデーを控えた3月後半はどの通貨ペアも方向感なく推 移していた。 そしてEaster Mondayが明けて、欧米勢がマーケットに帰還。注目されたのが再びユーロ ドル。ユーロドルが下落を再開した要因は、ギリシャ問題の深刻化で、グレグジット (Grexit) 1 が意識されている。 2)Grexitの高まり まずイースター休暇前に米大手ゴールドマンサックスがGrexitのリスクが高まっている という記事をTHE WALL STREET JOURNALに寄稿。この記事はかなり注目されたが、イースタ ー休暇中の4月3日に発表された3月の米雇用統計では、NFP 2 が12.6万人とあまりにも悪い数 字。結果ドル売りの流れの中、ユーロドルは逆に1.10ドル台ミドルまで反発。ただ3月13 日に1.0462ドルの安値に到達した後の3月中の戻りが何度も1.10ドル台ミドルまでだった こと同様、4月の調整局面でのユーロドルの反発も1.10ドル台ミドルだったことがポイント。 (この点は後半のテクニカル分析へ) 1 2 ギリシャのユー ロ圏離脱を意味する 造語。 Nonfarm Payroll Employment(非農 業部門雇用者数) の略。 米雇 用統計の中で最も 注目される 経済指標 。 そしてイースター明けの為替市場では立て続けに、ギリシャ関連の報道が流れる。 まず4月7日には、まとまらないギリシャ問題に、米政府はギリシャ政府と債権者との協 議が合意に至るよう、仲介役になることを示唆。 4月8日にはギリシャ・チプラス首相とロシア・プーチン大統領が首脳会談。この会談で は、ギリシャはロシアには支援要請はしなかった模様。 ロイターによれば、「ギリシャ、ロシアに支援要請せず、提携強化は確約」と報道。ギ リシャのチプラス首相は8日、訪問先のモスクワでロシアのプーチン大統領と会談し、ロシ アによる提携強化に向けた確約を取り付けた。ただ、両首脳ともにギリシャはロシアに金 融支援を要請していないと言明。プーチン大統領は欧州連合(EU)の対ロシア制裁への対 抗措置の一環として導入している農産品の禁輸措置について、ギリシャのみを例外として 解除しない方針を示した。 報道のようにギリシャがロシアに接近することで、欧州諸国は神経質な展開。そんな中、 ギリシャの財務次官は、ドイツ政府に対し、ナチ時代の賠償金を払えというコメントをし、 事態は泥沼化の様相。 この状況をNewsweekは、「ナチス賠償金を要求するギリシャの破れかぶれ」と題し、下 記のように報道している。 「これ程、都合の良いタイミングはないだろう。ギリシャのユーロ圏離脱がますます現 実味を帯びる中、金融支援交渉でドイツと対立するギリシャが、形勢逆転を狙って反撃に 出た。第二次大戦中のナチス・ドイツのギリシャ占領に関して、数千億ドルの賠償金支払 いをドイツに求めている。ロイターの報道によると、ドイツのジグマル・ガブリエル副首 相兼経済エネルギー相は、この要求を「馬鹿げている」と切り捨てた。 要するにギリシャが債務危機を乗り越えるための資金をユーロ圏諸国から絞り出すため の策略だ、と断じた。国際通貨基金(IMF)に対する約4億8700万ドルの債務の返済期限が9 日に迫った今週、ギリシャ財務省は初めて公式にドイツの賠償金が3,020億ドルに上ると算 出した。これは大変な額だ。2010年にギリシャが欧州連合(EU)とIMFから財政破綻を回避 するために受けた2,600億ドルの救済策を上回っている。ギリシャが抱える3,500億ドルの 債務の返済の大きな助けになるだろう。当然のことながらドイツは、戦時賠償はとっくの 昔に解決した問題で、今になってそれを持ち出すのは、ギリシャの債務危機から注意を逸 らそうとする「非常識」な試みだと主張している。」 4月9日はギリシャのIMFに対する4億5000万ユーロの返済期限となり不安視されていたが、 これは返済。しかし前述のように、ギリシャから、ナチ時代の賠償金を払えというコメン トまで飛び出し、事態は深刻化。前週末の4月3日にはUBS銀行も、Grexitの可能性を50~60% へ引き上げ。 これらの要因でイースター明けから、いきなりGrexitの可能性が高まり、ユーロドルは 下落再開。1.0800ドルを割り込み、4月13日には、1.0512ドルまで下落。ユーロ円、ユーロ ポンド、ユーロ豪ドル、ユーロスイスといったユーロクロスも軟調になっている。 ユーロドル(日足) 3月13日に1.04ドル台まで急落した後の調整局面で5回にわたって1.10ドル台まで踏みあ げるも1.10ドル台ミドルが上抜けできず。 ここは1月23日のECB理事会の前日(1月21日)の高値1.16789ドルから3月13日の安値 1.04615ドルの半値戻しの1.10702ドルがあり、ここを抜けられず、今週にはいって反落。 ギリシャ問題が泥沼化し、Grexitの可能性が高まるユーロドルは再びパリティ 3 目指して 下落再開。 4月13日にはMorgan StanleyもEURUSDは年内にユーロドルはパリティまで下落すると予 測。これでゴールドマンサックスもモルガンスタンレーも年内にユーロドルはパリティま で急落と予想。ユーロの下落に拍車がかかっている。 さらに4月14日のFinancial Timesでは、ギリシャは「4月末までにギリシャと債権者の合 意がまとまらないと、5月と6月にIMFに返済する償還資金が準備できず、デフォルト(債務 不履行)の準備を進めている」と報道。ギリシャ政府関係者はこの報道を否定してい るが、 現状のままだとギリシャの国庫が空になるのは時間の問題で、債権者と合意できなければ、 ユーロ圏で前代未聞のデフォルトとなる可能性が高まっている。 4月末に向けて、Grexitの可能性が高まること、加えて、ECBがマイナス金利と量的緩和 でユーロ安政策を進めているユーロドルの行方に注目。 3 等 価で ある状態のことで 、為替市場 においては、通貨 ペアの為替 レートが 1 になる こと。
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