「連れ高、連れ安ばかりではない」

2005 年 7 月 4 日(月)―2005 年 7 月 8 日(金)
総括 「米国の最後通牒」
需給「本国投資法おさらい」
テクニカル 「IMM円ショート 5 万枚」
当局「クリックしよう」
ID為替「連れ高、連れ安ばかりではない」
横浜湘南便り 「ほな いこか」
ドル円 110-112.50
ユーロ円 132-135
FX湘南IG (FSIG) 代表 野村雅道
(事務所 田園、山下、伊豆稲取) 中京大学講師
日経インデックス(2000 年=100) 7 月 1 日東京引け 前回 6 月 29 日からの変
化 円 92.3 弱し ドル 92.2 若干強し ユーロ 119.69 強し 7 月 1 日ドルインデック
ス IN NYBOT90.13 強し CRB303.86 強し 日経平均ドルベース 7 月 1 日東
京引け 104.71 IMM円投機筋 6 月 28 日−51845(前週比-13871)
1. (今週の予定)
4(月) ユーロ圏PPI、欧州議会
5(火) 豪 RBA金融政策委員会 、貿易収支、独 サービス業 PMI ユーロ圏
小売売上、サービス業 PMI、 米 製造業受注
6(水) RBA政策金利、日 景気動向指数、米 ISM非製造業指数、 G−8サミッ
ト
7(木) ECB理事会
8(金) 日 マネーサプライ、家計調査、機械受注、独 鉱工業生産、米 雇用統計
10 (日) ルクセンブルクEU憲法批准国民投票
(来週の予定)
11(月)
12(火) 日銀政策決定会合、企業物価指数、消費動向調査
13(水) 日銀政策決定会合、日銀総裁会見、国際収支、鉱工業生産確報、米 貿
易収支、フィラデルフィア連銀総裁講演、
14(木) 独 CPI、ユーロ圏 ECB月報、1QGDP確報、米 CPI、小売売上
15(金) 米 PPI、鉱工業生産、設備稼働率、企業在庫、NY連銀景況指数、ミシ
ガン大消費者信頼感指数
2.総括 「米国の最後通牒」
焦点はサミットでの人民元改革問題だ。胡錦涛国家主席が出席するだけに何か
具体策が期待される。米国は最後通牒のごとく、7 月 27 日に対中報復法案を可決
しすべての商品に 27%の関税をかけようとしている。
中国は今まで何もやらなかったわけでもなく輸出税をかけたり、実験として香港ド
ルの変動幅を拡大もしている。米国の狙いは切り上げやバスケット制の導入だが、
やはり中国農業に与える悪影響が大きい。中国の農業は日本より一人あたり耕地
面積が狭く非効率であり、人民元高ドル安になれば米国農業にさらに進出し農家
を疲弊させかねない。そう考えるとさらなる輸出税の引上げが影響が少なくて済むと
思われるし、変動幅の拡大程度に終わるのではないだろうか。とにかくこれは年間
1000 億ドルに上る米中間の貿易不均衡の問題である。中国は他の国とはそれほど
不均衡はない。また中国の輸出の約半分が外資系によるものだ。米国企業も中国
からの恩恵を受けており、単に為替レートの調整の問題ではないし、不均衡は日米
間のようにいつになっても改善しないだろう。
やはり中国独自の悠久のペースで解決していくのではないか。
ドイツはシュレーダー首相の不信任決議など前途は険しい。さらに次はルクセン
ブルクのEU憲法批准が注目される。EUは通貨統合で暫く落ち着けば良かったが
過ぎたるは及ばざるが如しで憲法までに踏み込んだのが混乱の原因でユーロ下落
に繋がった。しかし元々ドルマルクの最安値に近づきつつあったので最近のユーロ
安については当局としても何の問題もないだろう。不幸中の幸いといったところのユ
ーロ安だ。ECB理事会では金利は引き下げられないだろうが、景気低迷かインフレ
懸念か当局者のコメントが気になるところである。またオーストラリアRBAの金融政
策決定会合もある。
米国は先週金曜日、FF金利引上げを裏付けるようにISM製造業指数やミシガン
大消費者信頼感指数が改善した為、10 年債利回りは 4%へと回復した。今週金曜
の雇用統計では非農業者部門雇用者数は約 18 万人の増加が見込まれている。
3.需給
「本国投資法おさらい」
7 月はドル上昇しやすい月だ。確率的には過去 11 年間で 9 勝 2 敗でドルが強い。
理由としてはボーナス見合い個人の外貨投資が上げられよう。ただ翌月の 8 月はそ
の反動もあり、ドルの 4 勝 7 敗となっている。もちろん外債の利金受取の円転や日本
のリパトリもある。その時々にいろいろなニュースが出て確実さはないがあくまでも確
率だ。去年はその通りとなった。野球で打者の何百、何千の打球の行方のデータを
とって選手ごとに守備位置を変えるのと同じで、ローズシフトなどの極端なものもあ
るがローズとて流し打ちされることもあるので絶対ではない(と逃げを打つ)。
最近のドル上昇は米国金利上昇や日本サイドから見れば貿易黒字の減少、個人
外貨投資の活発化、外人の日本株投資の息切れなどもあるが、やはり大きなものは
米国本国投資法による米系企業のリパトリだろう。これは 1 年の時限立法だが、継
続されるかが注目点だ。推定されている金額は巨額でありまたその金額の予想レン
ジも大きい。1300 億ドルから 4000 億ドルで海外が米国に対抗して税優遇をして利
益を止まらせた時だ。しかし下限の 1300 億ドルでも日本の貿易黒字を超える。さら
にファイザーは 380 億ドル、エクソンは 220、GEは 210 億ドル等々と実額まで推計さ
れている。年間を通じて出るのだろうが、特に四半期末は気をつけたい。6 月末もそ
の影響か。いずれ米国資本収支にその変化は出るだろうからそれをチェックした
い。
4 テクニカル
「円ショート 5 万枚」
月足の一目均衡表も雲の上に出て日足、週足とすべて雲の上に出た。ただ日足、
週足ともに雲の上から乖離しすぎている感じはある。
日足のポイント&フィギュアーでは 102 円からの上昇のトレンドラインの平行線を引
いて上昇のバンドを作れば 112 円 30 銭あたりが抵抗ポイントとなろう。本国投資法
によるドル買いの影響も 7 月は暫し弱まるだろう。後は日本の証券会社がどのように
アグレッシブに個人向けの外貨投資を集めてくるかだろう。野村證券の「インド投
信」の即日完売のような商品が続けばドル円、クロス円を下支えしよう。
移動平均線では 200 日も反転上昇し。5,21,90,200 日すべてドル上向きとなった。
IMMでは外人の日本株投資の低迷と同じく、円ショートが増え再び 5 万枚の大台
にのった。すぐさまこれがピークに近いから円ロングに転ずるのではなく、過去の経
験でもショート 6 万枚までの高止まりが 1 ヶ月程度継続することもあった。データはI
MMのホームページでも見られるので確認願いたい。
東京市場のドル円出来高は 6 月 28、29、30 日と 100 億ドルを超えていたのも本国
投資法の影響かもしれない。
100 億ドルを超えるときは何か大玉、特殊玉が出ているのであろう。
5.リスク(想定済みにしよう) 「長引くイラク、パレスチナ、日中問題」
北朝鮮暴発(北朝鮮開国?)、イラン、地震、ビンラディン現る、日本物格上げ、米
国物格下げ、貿易戦争(FTA)、米軍イラク撤退、領土教科書靖国問題
6.当局 「クリックしよう」
「クリック 365」という東京金融先物取引所の証拠金為替取引が 7 月 1 日に始まっ
た。顧客にとって取引ツールが増えるのは望ましい。横浜中華街の 200 軒が、高級
店、中級店、裏通りの店、テーマパークがそれぞれそれなりに繁栄しているように、
業者、取引所、顧客それぞれが切磋琢磨して業界全体が盛りあっていってもらいた
いものだ。日本ほど自国通貨で貿易が出来ずにまた低金利にあえぎ海外投資を余
儀なくされるリスクを負っている国はないのだから利用する人は限りなく多い筈だ。
ただ初日取引はドル円 26 万ドル、ユーロ円 25 万ドル、ポンド円 62 万ポンド、豪ド
ル円 4 万豪ドルと、私が取引単位を間違ったのかと思うほど小さなものであった。ご
祝儀取引もなかったようだ。
戦後為替相場発足後、固定相場時代を含め東京フォレックス、メイタントラディ
ション、日短AP、上田ハーロー、マーシャル、山根、八木など数社が伝統ある経験
豊かな銀行間の外為ブローカーであった。彼らは 1998 年の外為証拠金取引解禁
後はそれぞれ各証拠金取引会社に出資、人材も輩出しているがそれら外資系を含
め主要各社が 1 社もこの「クリック 365」に参加していない。市場を熟知したプロの彼
らが参加しない問題点が何かあるのだろう。
またマーケットメーカーに外資系銀行が入っているが、マーケットメーカーではなく
参加者として顧客を抱えた大手邦銀、大手証券会社、為替証拠金会社がいなけれ
ば市場に厚みが出ない。マーケットメーカーがいなくても成り立たなくてはいけない。
銀行間の電子ブローキングシステムEBSにはマーケットメーカーはいない。いやプ
ラザ合意以降は旧東京銀行もマーケットメークをしなくなった。しなくとも厚みのある
市場が出来上がっていた。シカゴIMMやSIMEX(シンガポール)などのような活発
な取引所になって欲しいものだ。暫く時間がかかるのだろうが期待したい。(殆ど取
引のない「ロイター電子ブローキング」の失敗の二の舞は避けて欲しい。)
7.ID為替
「連れ高、連れ安ばかりではない」
固定相場時代のドル円は 360 円であったが、他の通貨は固定相場時代はどうだっ
たのだろう。ドルマルクは 3.66(ユーロ換算 0.5343)、ポンド 2.4、 ドルスイス 4.0841、
ドルフレンチ 5.55419-意外と強かった-(ユーロ換算 1.1810)であった。 (豪ドルは
1.1 台。NZドルも 1.1 台であった。変動相場移行直後はそれぞれ 1.49 近辺へ上昇
し、その後は 1 を割り下落一方の歴史であった。カナダは 1.0 近辺)
対円ではマルク円 98.36(ユーロ換算 192.35)、ポンド円 864、スイス円 88.15、フレン
チ円 64.82(ユーロ換算 425.16)となる。固定相場時代と現在の水準と較べると円は
全体的には超円高推移してきたことがわかる。
またニクソンショック以降現在までのドル長期下落時代でもポンドはドルに対して弱
含んできたことがわかる。それは英連邦通貨の豪ドル、NZドル、カナダドルもそうだ。
豪ドル、NZドルは対円では当時 1970 年台前半は 400 円以上であったが 2000 年
はその約 10 分の1の 50 円、40 円台まで下落した(カナダ円も 1971 年は 360 円で
安値は 95 年の 58 円)。ただスイスフランだけは対円で当時とほぼ変わらない水準で
今も推移している。円と極めてパラレルに動いてきたということだ。
最近ではユーロ発足後ユーロが 1.16 から 0.8230 まで弱含んだ時は円は逆に 120
円から 101 円へ上昇した。通貨は必ずしも連れて動くわけでもない。それぞれの通
貨の個性も考えたい。
日経掲載原稿
http://www.nikkei-ad.com/kinyu/saizen/kawase/index.html
内需拡大−規制緩和−市場開放−小政府−財政均衡−自己責任−公明正大
50―超円高−100―円高−150−普通円−200―円安−250−超円安−
「世界一のデフレと物価高の共存が日本の弱点」「国を選ぶ時代」
FX湘南社是 「面白く正しく」
FSIG FX湘南投資グループ 代表 野村雅道 中京大学講師
(事務所 横浜田園、山下公園、伊豆稲取)
「付録 *横浜湘南便り*」
「ほな、いこか」
久々に大阪へ出張する。少年時代は大阪に住んでいたので新大阪駅についてタ
クシーにのって大阪弁を聞くとホッとする。どのタクシーにも 5000 円以上(超えた
分)は半額という宣伝をしている。運転手に「これええですね」というと大木こだま風
に「そんなやつおらへんで」という。5000 円以上の客は殆どいないということで最終
電車を逃したサラリーマンでもめったにいないらしい。東京より通勤距離が短いのだ
ろうか。あまり営業には影響のない割引のようだ。駐車料金も安い。堂島で 1 日 800
円というのがあった。「それでも路上駐車しょんのや」と運転手はボヤく。
途中に「日本初の株の学校」というのがあった。大阪らしい。時間があったら訪れ
たかった。大阪は暑い。ムッとする湿気の強い熱さだ。この熱さは上海や香港の暑
さだ。横浜は風景が上海のバンドに似ているが大阪は雰囲気が上海に似ている。
為替の話を聞きに来て頂いた方も熱い。その熱気は去年中国で講演した時とも似
ている。寒いところより暑いところのほうが為替に興味をもたれている人が多い気が
する。沖縄でそれが最高点に達する。沖縄の海を見ながら為替をやりたくなった。
東京のJRカードは「スイカ」で大阪は「イコカ」だ。これが「イコウカ」だと大阪では
「なんやそれキショクわるいな」となってしまうのだろう。いろいろ大阪と東京の文化
精神の違いはある。JRカードのネーミングの発想もそうだが、「東京には富士山が
おますが大阪には甲子園がありまっせ」と言っていた西条凡児の言葉が良く表して
いる気がする。(西条凡児――昭和期の漫談家、凡児のお脈拝見、凡児の娘をよ
ろしく、オヤジ万歳などのTV番組の司会で有名、話術の神様、今なら仁鶴、三枝
いやそれ以上?有名な言葉は「おみやげ、おみやげ」)
参考
JR東日本スイカは(Super Urban Intelligent Card)の頭文字をとったもの
JR西日本イコカは(IC Operating Card)から。英語まで東京はキザ、大阪は本音
JR東海はイコマイカ?