Page 1 S Sウエスタン・ユニオン・特急但更 第9号 2 1 年4月 1 日 (土

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9■ 2010年 4月 10日
白昼、書段着、平原とハードポイルド
く島 田充子 >
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(土 )発 行 §§
つて西部劇のたまらない魅力のひと
つと
にと
なる。
さて、ここでモ
づ
うひとつ好きなジャンルを持ち出し
西部劇 の何 が好きなのか考
ます。映画なら西部劇だけど、小説ならハ ー ドボ
イル ドです。翻訳家 の小鷹信光氏が、著書
『ハ
えてみると、銃撃戦、乱闘 牛
ードボイル ド以前』でアメリカ大衆小説の変遷を紹
の暴走や馬 での追跡など、活
介 してい るが、そ の 中でフ
劇 的な部分で盛 り上がるの は
ロンティアが西進 し遂 に西
間違 い ないのだが、そ の他 に
海岸 に達 して消滅した時、
魅 かれる要素がいくつもあると
西 部 劇 のヒー ロー たちは
思 った。白昼、普段着 、平原 、
西 の果てでハー ドボイルド
こオtに 肘 と放 浪をカロえると私
のヒー ロー 、私立探偵にな
なりの「西部劇 はひふ へ ほ Jが 成 立するのだが、今
ったと書 いてい る。ほお ―
回は3つ について書きます。
と感動 しつつ 気 がついた。
私が愛する西部濠 の3要 素は、ハー ドボイルドと
なつた時点で全て逆転する。つまり自昼から夜へ 、
(2004)は 、子どt,た ちが映画館で西部劇を見てい る
普段着からスー ツヘ 平原から都会 へ 或 い は野
外から屋 内へ。そうした探偵を再び西部へ 帰した
うちに映画の世界に入つてしまうというt)の で 、そこは
のが、ジェームズ クラムリーだと思う。ベ トナム帰
永遠 に自昼 が続 く世 界 だった。西部劇趣 味 の描き
還兵で飲んだくれという退廃を交えつつ 、彼 の描
方は中途半端な部分 の 多 い
く探偵はモンタナやテキサスに住み普段着を着て
自昼 の平原を行く、破天荒な西部の男達だった。
西部劇 編
『 嵐 を呼ぶ !夕 陽 のカスカベ ボーイズ』
作品 だったが 、ず っと真 っ昼
間という設 定は、西部劇 のつ
ばを押さえていると思 つた。
並
日
段 着 。 西 部劇 は、帽
子、ベ ル ト、プーツ、革
そして西部劇との係わりでぜひ言及 しておきた
いのが、ハメットの 1929年 の小説
『 血の収 穫』で
ある。これは、よそ者 の探偵 が町で対 立 する悪 の
のジャケットなど、コスチ ュー
)の で、黒澤監督 の
集団を共rplれ させるというヽ
『用
心棒』(1961)で 翻案され、
『 荒野 の用心棒』(1964)
ムの 追 究 にはお よそ事欠か
でも使われた,そ の原型となるのが
『 新任保安官』
ないジャンルのようだが、私はあえてシャツにジーノく
(1925)と いう短編で、舞台は現代 であるが 、内容
ンという普通 の部分が好きだと言 おう。綿素材 のカジ
は紛う方無き西部劇 になっている..『 用心棒』を遡
ュアル感 がとてもいい。子ども時代 、周囲 の大人 の
ること8年 、ランドルフ ス
男たちはことごとくスーツを着て会社勤めだったので 、
普段着をまとつた西部 の男たちは、とてもフイル ドで
コット主演作
『 叛逆 の用心
棒』 (1953)で 既 にこの話
自由に映 つた1,の だ。
が使 われ ていることを最
原。西 .Ilの 雄人な自然がこのジャンルに果た
す役害1は 計り知れない。どこまでも続く荒野、
近知 った。元南軍 スパ イ
の主 人公が、悪 の 2大 陣
赤茶けた岩 山、風が吹いて舞 い にがる砂座と転 がる根
営 の 対 立を煽 るのだが 、
無し草。地平線に憧れた。兄事な景観を背 に西部劇の
シーンの多くは野外で展開する。ということで、白昼の
彼 が私 立 探偵を装うあた
りにハ メットヘ の敬意が表
12原 で 普段着のシャツの袖をまくり上げる男。これが凛
され ていると思いたい。
中 の 開 拓 劇
く堀 口 頴介 >
西部劇 に描かれる時代や背景 は様 々だが、多く
だの時代 、
語られるのは南北戦争後 の“GUN― L厠 ス
つ まリガンマンの活躍や実録 決闘談だ。あまり話題
にならないのが独立戦争前後 の開拓初期 の時代を
題材 にした作 品群で、西部劇全盛期 には開拓劇 と
呼 ばれていたものがある。その 中でもひと際開拓魂
の横溢 した作 品に触れてみたい。
ミ ズ ー リ 横 断 』 (1951)
『
レ (ク ラー ク ゲイ
主人公 フ リン ト ミッチ ェツ
ブル)は 生粋 の ビー バー ハ ンターだ。自由気 ま
まに ロ ッキー 山中を駆け巡 り、ネイテ ィブ とも交
流す る。 こ うした トラ ッパ ー (罠 猟師 )力 i毎 年夏
になると交易 のために集 ま り (ラ ンデブ ー)、 三
日三晩飲 めや唄 えの ドン
チ ャ ン騒 ぎに興 じる場面
が愉 快 だ。 それ が終わ る
と男達 は何事 も無 か っ た
様 にそれぞれ の猟場 に戻
っ てゆ くの だ。 ミッチ ェ
ル は、ネイテ ィプの娘 を
妻 としたが、嫉妬 に狂 っ
た若酋長 に妻 を殺 され 愛
児 を奪われ る。 これ を追
つて彼 は森 の 中で仇 と対
決す るのだが 、 ミッチ ェ
ル の 先込銃 は、一発撃 つ
と銃 口か ら火薬 を流 し込み 、次に銃 口の先 に油布
を当て丸 い 弾丸を指で詰 め、更に長 い棒 で奥 まで
押 し込んでよ うや く発射体勢 となる。そ の 間敵は
ナイ フを振 りか ざ して襲 い掛 かつて くる。間一 髪
ミッチ ェル は、棒 を突 っ込んだ状態で引金 を引き、
棒が仇 の胸 にグサ リと突 き刺 さるのだ,,開 拓劇 な
らではの珍 しい シー ンである。最後 に主人公は 自
人社会 に戻 らず、ネイテ ィプの 国で幼 い 息子 を育
てることを決心す る。耳に心地 良いのは篇 中随所
Across The Wide Missouri"の メ
に流れ る古謡 “
ロデ ィだ。 これは、作品 の原題 に もな つている。
Jヒ 2ヨ ´ヽ
』 (1940)
『
`Di豊
1759年 フレンチ・ イ ンデ ィア ン戦争 の頃、史
上 洛 高 い ロバー ト ロ ジ ャー ズ少佐 (ス ベ ンサ
ー・ トレイ シー)率 い る レンジ ャーズの苦難に満
ちたモホー ク討伐行 を描 いた雄渾篇。暁 のモホー
ク部落 を急襲す る大 アクシ ョン場面 が 話題 を呼
んだ。心に残 る
名 シー ン は
数 々 あるが、日
的地 に 向か つ
て行 軍す る レ
ン ジ ャー ズ が
激 流 岩 を噛 む
・ ロー レ
セン ト
ンス 河 に行 く
西
部 劇
の
手を阻まれ るところ。隊員家各 自が腕 を組み胸 ま
で浸かる激流に入 つて人間 の鎖 を作 る。そ こを銃
を高 く掲げ た隊 員達 が渡 つて ゆ く。不屈 の間魂 と
絶妙 の チーム ワー ク。バ ックに英国国歌 をバーバ
ー ト・ ス トサ ー トが編 由 したテ ーマ 曲が高鳴 り、
胸が熱 くなる。この作戦 に従軍画家 として参加 し、
重傷を負 うもロジ ャー ズ少佐 の叱 咤激励 で生還
したラ ン ドン (ロ バ ー ト・ ヤ ング)が 、新 たな遠
・シー ン。
征 に旅立 つ レンジ ャーズを見送 るラス ト
少佐 との別れ を借 しむ ラ ン ドンが感慨深 げに恋
人 に言 う。「少佐 とは も う会 えないだ ろ う。だが
大陸か ら吹 き渡 つて 来 る風 に耳を澄 ませば、少佐
のあの豪気 な掛 け声が き っ と聞 こえて くるはず
だJ少 佐 も名残借 しそ うに手を振 り、夕陽 の丘の
彼方 へ 姿 を消す 。この場 面、後年作 のホーム・ ド
ラマ『 緑園 の 天使 』 (MGM)で 、エ リザ ベ ス・
テー ラー に別れ を告 げた ミッキー ルー ニー が、
全 く同 じセ ッテ ィン グ、同 じポーズで去っ てい く
のを観 て驚 い た ものだ。
月Rr L′,そ雪ョ野Eと 』 (1953)
『
原作は ピュー リンツア賞受賞作家 A B・ ガ ス
Big Skプ が原題で、邦題 も実にいい。
リーJrの “
セ ン トル イ ス か ら手漕 ぎの 河船で ミズー リ河 を
遡上 し、遥 か ロ ッキー 山脈 の麓ま で毛皮交易 の た
めに旅す る猟師達 の恋 と冒険を描いた もの。男達
の熱 い友情、未 開 の地に挑 む ロマ ン、そ して脈 々
と波打 つ フ ロンテ ィア・ス ピ リッ トが感動的 だ。
主人公 はケ ンタ ッキーの 山男 (カ ー ク ダグラス)
と相棒 の 若 者
(デ ュー イ・
マー テ イ ン)。
遠 征 途 次 、河
船 の座 礁 や ク
ロ ウ族 の 襲 撃 、
毛皮 を狙 う無
法者 との対 決
を経 て 、や つ
と山中のブ ラックフッ ト族 の国 に達 したとき、季
節は既 に晩秋であった。交易 を終えた猟師達は、
修理 した船でまた ミズー リ河を下 つてい く。ネイ
テ ィブの娘 と結婚 した若者を残 して。苦.卜 惨惰、
河船で未開地を目指す男達 の行動は、
『 赤 い河』
のキ ャ トル・ ドライブにも似て、 さしずめ リバ
ー・ ドライブとで も言えようか。そ う、これは
『赤
ハ
い河』に次 ぐ ワー ド ホークスの骨太な開拓劇
だ。前述 の
『 ミズーリ横断』がウイリアム・ウエルマン、
へ
『 北西 の道』がキ ング ヴィダー 、いずれ も
西部劇 の名匠による作品である。 ほ力ヽこも、 フ
ォー ドの『 モホークの大鼓』、デ ミルの『征服 さ
れ ぎる人々』、バー ト ランカ スター初監督作品
『 ケ ンタキー人』、ルイ ス とクラー クの探検行を
描 いた『 遥かなる地平線』 も忘れ がたい。 これ
ら異彩を放 つ 開拓劇 も昨今 は作 られな くな って
しまつたのは淋 しい限 りだ。
(ボ スター図版提供 :佐 野H 氏)(編 集発行 :口 口fl人
)